日本胸部疾患学会雑誌
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30 巻, 7 号
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  • 酒井 哲夫, 佐々木 文彦, 石崎 武志, 高橋 秀房, 中井 継彦, 宮保 進, 三船 順一郎, 一二三 宣秀, 藤村 政樹
    1992 年 30 巻 7 号 p. 1193-1199
    発行日: 1992/07/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    慢性うっ血性心不全患者において, Acetylcholine (ACh) に対する気道過敏性に及ぼす furosemide (40mg) の吸入および静注投与の影響を検討した. AChに対する気道過敏性は, 一秒量 (FEV1.0) を前値の20%低下させるACh濃度閾値 (PC20-ACh) を指標とした. furosemide 静注投与 (N=11) においては, 著明な利尿 (自然排尿量1,014 (SEM 156)ml) を認めたにも拘わらず, 呼吸機能やPC20-AChには control に比べ有意な差を認めなかった. これに対し, furosemide 吸入投与 (N=10) においては, 明らかな利尿は得られず, 呼吸機能にも有意な差を認めなかったが, PC20-AChは, 2.74 (GSEM 1.28)mg/mlから8.47 (GSEM1.22)mg/mlへと有意な上昇を認めた (p<0.05). 以上より furosemide は, 吸入投与時にのみ, 慢性うっ血性心不全患者のAChに対する気道過敏性を緩解すると考えられた. その機序は不明であるが, 気道上皮や平滑筋でのイオントランスポートが関与している可能性が考えられた.
  • 正常例, 各種肺疾患例での検討
    本間 敏明, 陶山 時彦, 井上 雅樹, 斉藤 武文, 松木 健一, 長谷川 鎮雄
    1992 年 30 巻 7 号 p. 1200-1206
    発行日: 1992/07/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    機能的残気量の測定は, ガス希釈開放回路法またはパンティング呼吸法を用い体プレチスモグラフ法で行われているが, 後者は呼吸困難のある患者はうまくできず, 慢性閉塞性肺疾患者では過大評価される. このような不正確な評価を避けるため, 福永らの理論を応用した体プレチスモグラフBX-82を利用し, 非パンティング呼吸法で機能的残気量を計測, 従来法の値と比較した. 健康人100例 (第I群), 拘束性換気障害者72名 (第II群), 肺気腫症69名 (第III群) を対象とした. 結果は三方法ともに第I群, 第II群, 第III群内には有意差はなかった. 第III群の非パンティング呼吸法による値は他群の値と比較してやや相関が低い傾向があるため, 閉塞性換気障害の程度で分類すると, 閉塞が強くなっても他方法に比し過大評価しない傾向があると推測された. 本呼吸法による測定法は臨床的応用が可能で, 呼吸困難のある患者, パンティング呼吸法ができない患者などに有効な検査法と推測された.
  • 小林 秀一, 西村 正治, 山本 真, 秋山 也寸史, 宮本 顕二, 川上 義和
    1992 年 30 巻 7 号 p. 1207-1214
    発行日: 1992/07/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    健常成人30名を対象に吸入酸素濃度を変え高炭酸ガス換気応答検査を行い, 低酸素刺激が呼吸困難にどのような影響を与えるかについて検討した. 換気応答値及びP0.1応答値は低酸素の併用により明らかに増大した. この時の呼吸困難を換気量の増加に対して評価した場合には, 傾きでみても一定の換気量でみても, 低酸素の有無による呼吸困難の有意差はなかった. 一方呼気終末CO2分圧 (PETCO2) の増加に対して評価した場合には, 傾きでみても一定のPETCO2でみても呼吸困難は低酸素の併用により有意に増大し, しかもその増加分は分時換気量, P0.1応答値, 吸気平均気流量の増加率と有意に正相関した. 従って高炭酸ガス換気応答の際に感ずる呼吸困難の低酸素併用による増強は, その時の呼吸出力の増加によって説明しうる. 以上の結果は, 低酸素負荷が換気刺激効果とは独立した呼吸困難増強作用を有するという仮説を支持しない.
  • 藤田 次郎, 根ヶ山 清, 瀧川 圭一, 久保 昭仁, 山地 康文, 藤田 俊和, 山岸 善文, 塩谷 泰一, 高原 二郎, 入野 昭三, ...
    1992 年 30 巻 7 号 p. 1215-1221
    発行日: 1992/07/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    平成2年1月から12月の期間に当院第1内科にて入院加療を行った症例のうち, 喀痰, 咽頭うがい液, または含嗽水より Pseudomonas cepacia が検出された22例を対象に, 基礎疾患の種類, 直前に使用した抗生物質, 22例のうち肺炎を合併した12症例の臨床像, および本菌の抗生物質感受性などについて検討した. 本菌は白血病12例, 悪性リンパ腫5例, 肺癌2例, 胎生期癌1例, 骨髄異形成症候群1例, および無顆粒球症1例など, 重篤な基礎疾患を有する例に検出され, また肺炎の起炎菌となりうることが示された. 全例において本菌の出現以前に, 抗生物質の投与がなされていた. 本菌に有効な抗生物質としては, minocycline 100% (21/21), ceftazidime 50% (11/22), ofloxacin 27.2% (6/22) があげられた. 短期間に多くの患者に Pseudomonas cepacia が検出されたことから, 院内感染の可能性が示唆された.
  • 穴沢 予識, 井沢 豊春, 手島 建夫, 三木 誠, 本宮 雅吉
    1992 年 30 巻 7 号 p. 1222-1228
    発行日: 1992/07/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    喫煙や間質性肺疾患では99mTc-DTPAに対する肺上皮透過性が元進するが, 透過機序は不明である. Wister 系6週齢雄ラットに, ブレオマイシン1mg/kgを気管内に1回投与し, 経時的に投与前を含め投与後2週毎に, 99mTc-DTPAによる肺上皮透過性と組織学的所見を調べた. ブレオマイシン投与前に比べ, 投与2週後では有意に肺上皮透過性の元進が見られ, 光顕像では毛細血管の増生, 肺胞隔壁の肥厚, 間質への細胞浸潤, 肺胞腔への貧食細胞の出現が見られ, 電顕像では肺胞上皮の空胞化, 皮薄化, 剥離, 脱落, 間質の増大などが見られた. これらの変化は週を経る毎にさらに著明に見られるものや, これらの所見に加え一部が正常化するものもあった. 18週後の光顕像では線維化と蜂巣化がみられ, 33週後の電顕像では肺胞上皮の皮薄化や, 間質への膠原線維の増生が見られた. 肺上皮透過性充進機序には, 肺胞上皮の空胞化, 皮薄化, 剥離, 脱落も関与していることが示唆された.
  • スーパーオキサイド産生の自己制御に関して
    石原 陽子, 亀山 伸吉, 倉科 奈保子, 香川 順
    1992 年 30 巻 7 号 p. 1229-1233
    発行日: 1992/07/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    遊走因子により肺局所に動員された好中球は, 肺血管内皮細胞に粘着して種々の酵素, 活性酸素, プロスタノイドを産生放出して炎症反応を引き起こす. これらの一連の反応は, 生体防御作用であると共に過度の反応は肺組織に傷害を与える. しかしながら, 肺組織への好中球の集積が必ずしも肺傷害を招来するわけではない. ヒト好中球を用いた実験から, 細胞 density の増加が細胞と細胞の相互作用によりスーパーオキサイドの産生放出を抑制 (autoregulation) することが解り, その作用は細胞膜受容体刺激剤の N-formyl-methionyl-leucyl-phenyl-alanine や protein kinase C 刺激剤である phorbol myristateacetate にも認められた. そのうえ, この autoregulation 作用は細胞外Ca2+の存在の有無, あるいは〔Ca2+〕iの変動とかならずしも一致しない. これらの結果は, 肺局所へ遊走粘着した好中球が細胞膜と細胞膜の接触により活性酸素産生能を調節し, 生体に過度の傷害を与えないような機能を備えていることを示唆するものと言えよう.
  • 渡辺 憲太朗, 有冨 貴道, 吉田 稔, 菊池 昌弘, 渡辺 照男
    1992 年 30 巻 7 号 p. 1234-1241
    発行日: 1992/07/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    急性経過で死亡した原因不明の間質性肺炎剖検例11例について臨床病理学的に検索し, ことに Katzenstein らの acute interstitial pneumonia (AIP) との比較検討を試みた. 肺胞壁の肥厚は全症例にあるもののAIPにみられているような浮腫性の間質は少なく, あっても必ずしも全てがアルシャンブルー染色陽性ではなく, 少数の陽性例でも弱陽性であった. 一方肺胞腔, 肺胞管内あるいは細気管支腔内の滲出物の器質化過程は検索した全ての症例にみられた. これらの結果は初発症状から剖検までの期間がAIPにおける初発から開胸肺生検までの期間に比して長く, 滲出期よりも修復期の像が優勢であるためと解せられた. 剖検時の肺は感染, 薬剤, 酸素などの影響によって修復されうるのでその評価は慎重であらねばならないが, 合併した細菌性肺炎は11例中3例のみでありそれも限局性であった. その他原虫やウイルス感染を疑わせる封入体は1例も確認できなかった. 急性間質性肺炎の時間的経過と組織学的所見を明らかにするうえで, 今後さらに剖検, 生検ともに検討の余地がある.
  • 松下 晴彦
    1992 年 30 巻 7 号 p. 1242-1249
    発行日: 1992/07/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    慢性閉塞性肺疾患 (COPD) 患者の呼吸困難と吸気筋機能の関係について検討した. 対象はCOPD患者8例であり平均年齢64歳, 平均1秒量0.62Lである. 経横隔膜圧差 (Pdi) を食道胃バルーン法で, 横隔膜筋電図を食道誘導電極を用い, 胸鎖乳突筋筋電図を表面電極で測定した. 高速フーリエ変換を用いて高周波成分 (150~350Hz) と低周波成分 (20~47Hz) の比 (H/L比) を, さらに各々の積分値を計算した. H/L比が20%以上低下した時を呼吸筋疲労とした. 呼吸困難の評価にボルグスケールを用い, 運動負荷は, トレッドミルによる3分毎の多段階負荷法で行った. 呼吸困難が最大に達したとき運動を中断した. 8人中6人で最大負荷時に横隔膜疲労を認めた. しかし運動中の呼吸困難は横隔膜の活動よりも胸鎖乳突筋の活動と高い相関関係を認めた. また胸郭の横隔膜以外の吸気筋全体の活動が呼吸困難と強く関連していることが示唆された.
  • 渡辺 彰, 中井 祐之, 斎藤 純一, 本田 芳宏, 徳江 豊, 菅原 俊一, 沼田 由夏, 菊地 利明, 佐藤 譲二, 松原 信行
    1992 年 30 巻 7 号 p. 1250-1256
    発行日: 1992/07/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    1988, 89年の肺癌214例を併発感染の面から解析した. 感染症併発の110例 (51.4%) 中108例は呼吸器感染症であった. 腺癌以外, 臨床病期の進行例, 低栄養例, 細胞性免疫能低下例および気道閉塞例の感染併発頻度が高く, 感染併発群の長期予後は非併発群より劣悪であった. MRSAを含む S. aureus, H. influenzae, Klebsiella 属, P. aeruginosa の分離頻度が高いが, H. influenzae 以外は終末期, 気道閉塞例, 癌治療後の例で多く分離された. 評価可能の化学療法の有効率は57.7% (112/194レジメン) であり, 1970年代より有意に, 1980年代前半より若干改善した. 抗生物質の単独治療と併用治療の有効率は同等であった (57%対59%). S. aureusP. aeruginosa を起炎菌とする例や気道閉塞例, 肺血流障害例での治療効果は低く, 化学療法と共に補助・一般療法を含む対応策を再考する必要がある.
  • 藤井 忠重, 田中 正雄, 中塚 龍也, 武田 正, 吉村 一彦, 小林 俊夫, 半田 健次郎
    1992 年 30 巻 7 号 p. 1257-1264
    発行日: 1992/07/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    菌球型肺アスペルギルス症18例 (19病巣) にTl-201シンチグラフィと19例に肺血流シンチグラフィを実施し, 胸部X線像など臨床所見と対比し, 本法の臨床的意義を検討した. Tl-201の病巣部集積は18病巣に認められ, 軽度から中等度の集積であり, 空洞壁や近接胸膜の肥厚との関連が認められ, Tl-201SPECTで菌球外の周辺組織への集積が示された. Tl-201による右室壁描画は15例に認められ, 軽度から高度に描出されたが, 心電図上の右室負荷所見は乏しかった. 肺血流障害は全例に認められ, X線像に比し広範囲かつ高度な障害を示した. Tl-201シンチグラフィおよび肺血流シンチグラフィは本症の病態を把握するうえに役立つ.
  • 酒井 正雄
    1992 年 30 巻 7 号 p. 1265-1273
    発行日: 1992/07/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    慢性閉塞性肺疾患 (COPD) 患者17名, 肺線維症 (PF) 患者7名, 健常者8名の安静時エネルギー消費量 (REE), 呼吸性熱喪失量 (RHL) およびこれらと肺機能との関連を検討した. 測定は朝食後3時間で行った. COPD・PF患者では健常者に比し REE, REE/PreBMR (PreBMR=予測基礎代謝量), RHL, RHL/REEともに高値であった. 対象者全員についてみるとREEはKFEV1.0と, REE/PreBMRはFEV1.0, DLcoと, RHLおよびRHL/REEはVC, FEV1.0, DLcoと各々負の相関を示した. 従来COPD患者のBMRの上昇が報告されてきたが, 日常生活の実態に近い食後安静時のエネルギー代謝量については殆ど検討されていない. またPF患者に関するエネルギー代謝量の報告もない. 今回の検討でCOPD・PF患者ともにREE, RHLなどが増加し, これらは肺機能の低下に伴い増加することが示された. こうしたエネルギー・水分代謝の様態変化は患者の栄養・水分管理に十分な配慮が必要なことを示すものと考えられた.
  • 阪井 裕一, 小林 啓子, 宮坂 勝之
    1992 年 30 巻 7 号 p. 1274-1279
    発行日: 1992/07/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    小児の在宅人工呼吸療法に関する初めての全国規模でのアンケート調査を行った. 調査した149施設中, 在宅人工呼吸実施症例は49例 (35施設) で, 年齢は1歳から20歳までの全年齢層に分布しており, 基礎疾患は神経筋疾患が51%, 中枢性呼吸障害が33%を占め, 残りが呼吸器疾患, 頚髄損傷であった. 実施症例数は1983年の2例を皮切りに年々増加傾向にあり, また「現在は行っていないが, 条件が整えば在宅管理に移行したい症例」は全体の38%にあたる56施設から107症例が報告されており, 相当数の患者が潜在していると思われる. しかしながら, 家族に対する精神的・肉体的・経済的サポート体制は全く不十分であり, 更に在宅使用に適した機器の開発や情報交換体制の確立も望まれる. 今後, 適応症例の増加が予想され, 安全な在宅人工呼吸管理を実現する為には, 早急に体制を整備する必要がある.
  • 市木 拓, 宍戸 道弘, 矢野 守
    1992 年 30 巻 7 号 p. 1280-1284
    発行日: 1992/07/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    私達は Gell & Coombs のI・III・IV型アレルギー反応を呈した菌球型肺アスペルギルス症例を経験した. 本症例は血清IgE2, 600IU/mlと高値, アスペルギルスに対するIgE RASTscore 3, アスペルギルスに対する沈降抗体およびリンパ球刺激試験陽性であった. 本邦報告症例の免疫学的反応を文献的に検討すると, I型アレルギーの関与についての報告は少なかったが, 血清IgE高値, アスペルギルスに対するIgE RAST陽性は稀ならず認められ, これらは本症の補助診断としても着目すべきと考えられた. またアスペルギルスに対する沈降抗体, リンパ球刺激試験陽性の頻度は高く, 本症においてはI・III・IV型アレルギー反応が種々の程度に関与していることが明らかとなったが, 本症例のようにI・III・IV型アレルギー反応を同時に示したことを明らかにした症例の報告は極めて少なかった.
  • 高橋 直嗣, 井上 博雅, 古藤 洋, 高田 昇平, 大串 修, 相澤 久道, 池田 東吾
    1992 年 30 巻 7 号 p. 1285-1289
    発行日: 1992/07/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    気管支喘息と非常に類似した症状, 検査所見を呈し鑑別困難であった細気管支炎の1症例を報告する. 症例は41歳, 男性. 咳嗽・喀痰・喘鳴で発症し, 可逆性の閉塞性障害・好酸球増多を呈し, 気管支喘息が疑われ治療されたが, 喘鳴・低酸素血症の改善はみられなかった. 肺機能検査において高度の末梢気道障害が疑われ, 胸写・CTscanからも細気管支病変が考えられたこと, およびマイコプラズマ抗体価が160倍と上昇していたことより, マイコプラズマ感染による細気管支炎と診断し, erythromycin・doxycycline 投与を行い, 改善が得られた. 本症例において喀痰中の prostaglandin (PG) E2・PGF・6-ketoPGF・thromboxane (TX) B2 濃度は, 気管支喘息患者と異なり高値を示し, 症状の改善にともなって低下した. 本症例では, 喀痰中のPG, TXの濃度の測定が, 気管支喘息との鑑別に有用であった.
  • 加治木 章, 津田 徹, 山崎 裕, 城戸 優光
    1992 年 30 巻 7 号 p. 1290-1295
    発行日: 1992/07/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    Methylphenidate (リタリン®) 静注乱用者2名に高度の閉塞性換気障害と拡散障害を認めた. 胸部X線所見上1例はブラ, 無気肺を伴う肺気腫所見を示し, 自然気胸も合併した. 他の1例は間質性陰影を主体としていた. 両者とも静注乱用をはじめて約10年で労作時呼吸困難を自覚するようになった. 当時の静注乱用の仲間で現在生存している他の1名も胸部X線所見にて肺気腫を認めている事, 比較的若年で発症している事より, これらの肺障害はリタリン静注乱用によりおこったものと考えられた. 若年性の肺気腫や, 拡散障害を伴う閉塞性換気障害の症例ではこのような薬物静注乱用の可能性も考慮する必要がある.
  • 有田 真知子, 網谷 良一, 村山 尚子, 倉澤 卓也, 川合 満, 竹田 俊男, 久世 文幸
    1992 年 30 巻 7 号 p. 1296-1302
    発行日: 1992/07/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    症例は44歳, 男性. 呼吸困難と持続する多量の喀痰を主訴として来院した. 胸部レ線上, 両側の過膨張及び両肺びまん性の小粒状影と右下肺野に tram line を認め, 呼吸機能検査では, 混合性換気障害を示した. 入院後, 呼吸困難は速やかに改善するも, 多量の喀痰と閉塞性換気障害は持続した. 帰宅による環境誘発試験陽性にて過敏性肺臓炎が最も強く疑われたが, 胸部レ線所見, 多量の喀痰, 遷延する閉塞性換気障害, IgE高値, 末梢血好酸球増多等, 特異な所見を数多く認めたため, びまん性汎細気管支炎や気管支喘息を鑑別する目的で, 開胸肺生検を施行した. 生検組織像は高度の細気管支上皮障害を伴ってはいるものの, 肉芽腫性の細気管支胞隔炎を呈し, 過敏性肺臓炎に合致する所見であった. 多量の喀痰は過敏性肺臓炎としては, 極めて稀な臨床症状であるが, 高度の上皮障害を伴う細気管支病変と過敏性肺臓炎に伴ったと思われる気管支炎がその主要な原因であろうと推測した.
  • 幸村 克喜, 江部 達夫
    1992 年 30 巻 7 号 p. 1303-1307
    発行日: 1992/07/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    症例は70歳女性で, 食事療法中の糖尿病があった. 昭和61年4月の定期検査で, 胸部レ線上右上肺野に浸潤影を発見され, 種々の抗生剤治療を行うも増大し, 昭和61年10月に入院した. 肺結核症を最も疑って治療しながら, 経気管支的に肺生検, ブラッシングや洗浄液採取を行うも診断がつかず, 陰影もさらに増大し血痰も出現してきた. 昭和62年2月経皮肺生検で, Aspergillus fumigatus の菌塊が証明され, miconazole と5-FCの投与を開始して, 3~4ヵ月後ようやく効果がみられ, その後ほとんど治癒した. 本例は, 1982年 Binder らが提唱した慢性壊死性肺アスペルギルス症の1つと考えられた.
  • 熊谷 融, 阿部 欣也, 榎本 和弘, 前防 昭男, 原 秀樹, 吉本 崇彦, 平尾 文男
    1992 年 30 巻 7 号 p. 1308-1314
    発行日: 1992/07/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    症例は78歳男性. 胸痛, 呼吸困難を主訴に来院. 胸部CT上, 縦隔に巨大な塊状型の腫瘤影を認め, 心エコーにて心嚢液の貯留を確認した. 以上の画像所見, およびLDHが高値を示したことより, 心タンポナーデで発症した悪性リンパ腫が最も疑われ, VEPA療法を施行, 縦隔腫瘤影の縮小, 心嚢液の消失, LDHの低下を認め, 著効を得た. VEPA療法半クール施行後, 縦隔生検にて悪性リンパ腫 (diffuse large cell type, B cell origin) と診断された. 化学療法開始4ヵ月後, 肺炎にて死亡するまで心嚢液の再著留は認めなかった. また剖検にて, 心膜, 心房に転移を認めた. 悪性リンパ腫の心転移の報告はわが国では少なく生前診断されることはまれである. 本例は生前に心外膜転移が強く疑われ, 化学療法にて著効を得た点, 剖検にて心転移を証明しえた点で貴重な一例と考えられ, 心外膜転移の機序, 診断, 治療について文献的考察を加えた.
  • 斎藤 博之, 飯島 克順, 檀原 高, 塩田 潤, 広瀬 幸子, 植草 利公, 斉木 茂樹, 吉良 枝郎
    1992 年 30 巻 7 号 p. 1315-1321
    発行日: 1992/07/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    症例はマルファン症候群を基礎疾患にもつ26歳男性. 15歳の時に気管支拡張症を指摘され経過観察中, 両側の胸膜直下に多発性気腫性嚢胞が肺を覆い包むように出現した. エリスロマイシンの投与も行われたが, 肺の嚢胞化とともに喀痰量は著明に減少した. 気腫性病変は徐々に進行し, 27歳で慢性呼吸不全のため死亡した. 剖検所見では胸膜直下の多発性気腫性病変と, 両側下葉を中心とした著しい気管支拡張性病変を認めた. 拡張気管支の末梢は線維化巣内に巻き込まれており, 気腫性嚢胞との間に明らかな疎通性は認められなかった. 気腫性嚢胞は気管支拡張性病変を欠く領域にも認め, 両者の発生には直接的な関係はないものと考えられた. マルファン症候群を背景にもち, 病理学的には気管支拡張症と多発性気腫性嚢胞の両病変が併存し, 臨床的には気管支拡張症から多発性気腫性嚢胞へと臨床像が変貌した点が注目された.
  • 北口 聡一, 宮沢 輝臣, 峯下 昌道, 土井 正男, 高橋 浩一, 山木戸 道郎
    1992 年 30 巻 7 号 p. 1322-1326
    発行日: 1992/07/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    アセトアミノフェンによる薬剤誘起性肺炎の1例を経験した. 症例は20歳女性, 歯痛にて市販のノーシン (アセトアミノフェン計1.2g) を内服し発熱, 乾性咳嗽, 呼吸困難が出現し, 胸部X線上両肺野に粒状網状影を認めた. 気管支肺胞洗浄液にて総細胞数は著増しリンパ球, 好中球, 好酸球の増加を認めた. 薬剤誘起性肺炎を疑い抗生剤を始め全ての薬剤投与を控え Methylprednisolone を投与したところ臨床症状, 胸部X線写真, 肺機能検査にて明らかな改善をみた. リンパ球刺激試験にてノーシン及びその成分であるアセトアミノフェンが陽性を示した. アセトアミノフェン中毒はよく知られているが, 同薬剤によるリンパ球刺激試験で証明しえた薬剤誘起性肺炎の報告は本邦第1例目と思われた.
  • 寺町 政美, 宮本 信昭, 山本 恭通, 佐坂 徳浩, 中村 隆澄, 北村 文夫
    1992 年 30 巻 7 号 p. 1327-1332
    発行日: 1992/07/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    症例は41歳, 男性. 発熱, 左肩痛を主訴とし, 胸部X線写真上異常陰影の精査目的で入院となった. 血液検査で, 著しい白血球増多と血清ALPの上昇を認め, 経皮生検で, 肺大細胞癌の診断を得た. CDDP+VDSによる化学療法で, 自覚症状は消失し, 白血球数, 血清ALP値もともに正常域に戻り, 腫瘍も縮小した. 3回の化学療法後, 胸壁合併切除+左上葉切除術を行った. 切除標本では, 巨細胞を伴う大細胞癌の病理診断で, 術後病期はpT3N0M0, Stage IIIA となった. 腫瘍細胞の homogenate, および腫瘍細胞培養上清よりCSF活性が証明され, また, 術前の血清G-CSF値が105pg/mlと高値であったことから, 本例における白血球増多は, 腫瘍によるG-CSF産生が原因と思われた. 本例は, 術後2年以上を経過した現在も, 再発の徴候無く, 健在である.
  • 高橋 孝, 森 清志, 須賀 由香理, 斎藤 芳国, 富永 慶晒, 横井 香平, 宮沢 直人, 島村 香也子
    1992 年 30 巻 7 号 p. 1333-1337
    発行日: 1992/07/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    症例は68歳女性. 子宮癌肉腫切除後胸部X線像にて右下肺野に孤立性結節性腫瘤を認め右前胸壁より経皮的肺針生検を施行し, 組織学的に子宮癌肉腫の肺転移巣と判明した. 約2ヵ月後, 胸壁内腫瘤が肺針生検穿刺部位に一致して出現した. 除痛目的で腫瘤を切除し, 腫瘤は子宮癌肉腫の組織像を呈していた. このことは, 経皮的肺針生検施行後に針生検経路を通じて胸壁へ腫瘍細胞が Implantation したためと考えられた. 術後の胸部CT像にて穿刺部位の胸壁から肺内へと連続する腫瘍を認めた. 肉腫例において経皮的肺針生検による悪性細胞の播種及び胸壁への Implantation の報告はない. 本症例の如く癌肉腫例においても針生検経路を通じて腫瘍細胞の Implantation が生じ得るので経皮的肺針生検を施行する上で十分に留意する必要があろう.
  • 小林 理, 関谷 政雄, 斎藤 元
    1992 年 30 巻 7 号 p. 1338-1344
    発行日: 1992/07/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    アルコール多飲の49歳男性が, 感冒様症状出現1週間後, 肺炎を指摘され治療受けたが改善せず, 進行性の為入院となった. 胸部レ線上, 肺炎様陰影の他に結節影と一部に空洞化を認めた. 気管支粘膜は白苔に被われており, 後日気管支肺胞洗浄液より Aspergillus fumigatus (A. fumigatus) が培養された. 入院時血清でA型インフルエンザウイルス抗体価 (CF) が256倍と上昇し, HIでH3N2型が2,048倍と上昇していた. A型インフルエンザに合併した組織侵入型気管支肺アスペルギルス症を疑い様々な抗真菌剤使用したが効なく, 呼吸不全の為死亡した. 組織学的に, 気管支内腔ならびに周囲の肺実質へのアスペルギルス菌糸の侵入像を認めた. 保存血清によるアスペルギルス抗原との沈降抗体は陽性であった. 本症例の場合, インフルエンザウイルス感染による細胞性免疫の低下状態と, 気道線毛系の障害が, 浸潤性アスペルギルス症の発症に関与したと考えられた.
  • 吉本 静雄, 小西 洋, 河原 伸, 多田 敦彦, 塩見 勝彦, 竹内 誠, 神坂 謙, 三島 康男, 松山 恒男, 木畑 正義
    1992 年 30 巻 7 号 p. 1345-1349
    発行日: 1992/07/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    症例は49歳, 男性. 肺非定型抗酸菌症 (M. kansasii) に対してINH, RLFP, SMによる治療開始後, 急速に汎血球減少が進行し, 再生不良性貧血を併発した. 直ちに全ての薬剤を中止し, 蛋白同化ホルモン剤他の投与を行うも, その後長期にわたって頻回の輸血を必要とした. 化療剤の中止後, 肺非定型抗酸菌症が次第に増悪するため onoxacin (OFLX) を投与したが改善せず, 数ヵ月後には完全耐性となった. 再生不良性貧血発症3年後, 貧血が改善傾向となり, 耐性検査にて sparfloxacin (SPFX) に感受性を有していたため, 右上中葉, S6切除術を施行し, 術後SPKFXとEBを投与した. 術後シューブをきたしたが徐々に改善し, 数ヵ月後には消失した. 喀痰中への排菌も術直後に大量認めた以外は消失し, 以後経過は順調で術後2年を経過した現在, 再発の徴候は皆無である. SPFXの抗酸菌に対する抗菌力は注目に値し, 難治性抗酸菌症の治療薬として期待できる薬剤の一つであると思われる.
  • 立花 昭生, 鈴木 和恵, 畠山 忍, 永山 雅晴, 岡野 弘
    1992 年 30 巻 7 号 p. 1350-1354
    発行日: 1992/07/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    症例は58歳男性, 胸部X線写真にて右下肺野の異常陰影を認め, 気管支鏡にて右B7原発の肺扁平上皮癌と診断 (T3N3M0). 化学療法 (CDDP, PEP) により腫瘍消失. 外来で経過観察中2年後よりネフローゼ症候群を呈し, 腎生検所見は, 光顕, 蛍光所見とも膜性腎症であった. また胸膜, 右B3入口部に腫瘍の再発を認めた. Etoposide による治療により腫瘍の縮小と共に蛋白尿の減少を認めた. 本邦で過去17例の肺癌にネフローゼ症候群の合併例の報告がみられる. 経過より本症例のネフローゼ症候群の発症機序に肺扁平上皮癌の関与が示唆された.
  • 陶山 時彦, 鈴木 雅美, 野口 佳子, 土井 幹雄, 大塚 盛男, 吉澤 靖之, 長谷川 鎮雄
    1992 年 30 巻 7 号 p. 1355-1359
    発行日: 1992/07/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    症例は63歳, 男性. 胃潰瘍治療中に白血球減少, 発熱をきたし当院へ転院. 肝障害, 皮疹もありステロイドが投与されていた. 白血球数400/mm3となった第3病日より喘鳴, 呼気延長, 呼吸困難が出現. 画像上は過膨張と末梢気道の肥厚がみられた. 気管支拡張剤に反応せず呼吸不全となり, 第8病日死亡. 剖検ではカンジダ偽菌糸 (仮性菌糸) と粘液が末梢気道内腔をびまん性に充満し気道狭窄をきたしていた. 一部に細菌との混合感染による気管支肺炎がみられた. その他咽頭, 消化管, 腎にカンジダ病変がみられた. 骨髄は再生不良性貧血の像を呈していた. 一般にカンジダの呼吸器感染は気管支炎, 肺炎, 膿瘍などが知られているが, 本例はびまん性に細気管支内腔を狭窄する菌塊により喘鳴, 呼気延長, 呼吸困難を呈し, 呼吸不全となった. Compromized host が急にこのような状態を呈したときにはカンジダ症も鑑別すべきと考え報告した.
  • 田中 留美, 松澤 誠, 古川 明, 茎田 仁志
    1992 年 30 巻 7 号 p. 1360-1364
    発行日: 1992/07/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    32歳, 女性. 15歳時より胸部X線写真に異常影を指摘されていた. 今回, 咳・血痰・微熱を主訴とし, 精査・加療目的で入院した. 胸部X線写真単純及び断層像, CT像で左舌区に径約5cmの空洞とその内部に突出する腫瘤を認めた. 気管支造影を施行したところ, 空洞と気管支との交通が認められた. 左上葉切除術を行い, 組織診にて極めてまれな肺原発の成熟型奇形腫と診断した.
  • 山田 玄, 森田 祐二, 横川 和夫, 笹岡 彰一, 渡辺 英明, 加藤 誠也, 浅川 三男, 鈴木 明
    1992 年 30 巻 7 号 p. 1365-1370
    発行日: 1992/07/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    症例は37歳, 男性. 検診で胸部異常影を指摘され精査目的で当院を紹介された. 画像上両側上中肺野を中心に輪状影と結節影の多発を認め, 肺好酸球性肉芽腫症を疑った. 経気管支肺胞洗浄液中の組織球の電顕的観察から肺好酸球性肉芽腫症と診断し, 経気管支肺生検により好酸球の浸潤を伴う肉芽腫を確認した. また, 経過中, 肺病変の増悪を認め, ほぼ同時期に右眼の視力低下が出現した. しかし, 肺病変は入院後に徐々に改善を認め, その原因として禁煙が考えられた. 右眼病変は網膜の隆起を伴う浸出性病変であり, 眼科的にもきわめて稀な病変であった. 失明の可能性もあったために, ステロイドが投与された. 眼底病変の病理組織学的な証明はないが, その特異な所見と肺病変の消長に一致した経過を示したことから, 本疾患との関係が示唆された.
  • 本間 行彦, 斎木 茂樹, 土井 修, 米田 良蔵, 三上 理一郎, 田村 昌士
    1992 年 30 巻 7 号 p. 1371-1377
    発行日: 1992/07/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    1991年に厚生省「び漫性肺疾患」研究班により提出された特発性間質性肺炎 (IIP) の臨床的診断基準 (第3次改訂案) について概説した. IIP92例の臨床経過, 胸部X線, 病理所見などを中心に検討した結果, IIPは急性型と慢性型に, さらに後者は定型例 (A群) と非定型例 (B群) に分けるのが妥当と思われた. 急性型では胞隔の浮腫・細胞浸潤および硝子膜が特徴的にみられる. 慢性型の定型例は蜂巣肺に代表される狭義の間質性肺炎が主病変であり, 非定型例はこれに肺胞内の器質化性肺炎・瘢痕・線維化およびそれに伴う気腫化 (ブラなど) が加わったものと思われた. 急性型と慢性型との間の時間的連続性の有無については問題が残された.
  • 1992 年 30 巻 7 号 p. 1379-1395
    発行日: 1992/07/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
  • 1992 年 30 巻 7 号 p. 1396-1405
    発行日: 1992/07/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
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