日本胸部疾患学会雑誌
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30 巻, 9 号
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  • 新しい観点から現在の治療法を再検討する
    中島 重徳, 佐々木 孝夫
    1992 年 30 巻 9 号 p. 1617-1649
    発行日: 1992/09/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
  • 伊達 洋至, 清水 信義, 青江 基, 中田 昌男, 松浦 求樹, 伊達 学, 大森 浩介, 寺本 滋
    1992 年 30 巻 9 号 p. 1650-1654
    発行日: 1992/09/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    肺癌を含む同時性重複癌症例を10例経験した. 重複癌臓器は甲状腺4例, 胃2例, 結・直腸2例, 肺2例であった. 甲状腺癌4例中3例は一期的に手術し, 良好な結果を得た. 腹部の癌はいずれも二期的に手術を行った. 肺多発癌症例の手術方法決定には, 肺血流シンチグラフィーを用いた呼吸機能予測が有用であった. 同時性重複癌の5年生存率は26.3%であった. 特に両方の癌に根治性が期待される場合, 積極的な外科治療による予後の改善が期待された.
  • 平島 智徳, 平田 奈穂美, 松本 武敏, 木村 孝文, 福田 浩一郎, 岳中 耐夫, 志摩 清
    1992 年 30 巻 9 号 p. 1655-1661
    発行日: 1992/09/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    安定期にある慢性肺疾患患者 (CLD) 15例を対象に酸素 (O2), ニトログリセリン (NTG), プロスタグランジンE1 (PGE1) の肺循環動態と組織酸素化に対する急性効果を検討した. O2吸入 (n=15例) により平均肺動脈圧 (mPAP) が有意に低下 (p<0.01), 動脈血酸素分圧 (PaO2), 混合静脈血酸素分左 (PvO2) は有意に増加 (p<0.01). O2吸入により肺循環動態と組織酸素化を改善するのではないかと思われた. O2吸入終了後NTG投与群とPGE1投与群に分けてその効果を検討した. NTG投与群 (n=7) は, mPAP, 心係数が有意に低下 (p<0.01). PvO2は低下傾向 (p<0.1) を示し, O2-transport は有意に低下 (p<0.01). NTGは肺循環動態と組織酸素化を悪化させる可能性が高いので有効性が低いと思われた. PGE1投与群 (n=8) は平均血圧, mPAP, 肺血管抵抗は有意に低下 (p<0.01), PaO2, PvO2, O2-trasport は有意に変化し. PGE1は組織酸素化を悪化させずに肺高血圧を改善させるのではないかと思われた.
  • 西井 研治, 小谷 剛士, 宇治 秀樹, 守谷 欣明, 大熨 泰亮, 平木 俊吉, 上岡 博, 沼田 健之, 前田 忠士, 木村 郁郎
    1992 年 30 巻 9 号 p. 1662-1666
    発行日: 1992/09/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    原発性肺クリプトコックス症は, 胸部X線上, 肺癌や肺結核との鑑別が困難であり, 確診には組織診断が重要である. 最近4年間に当施設で診断目的に行った, 延べ720例の気管支鏡施行例のうち, 6例が組織学的に肺クリプトコックス症と診断された. 全例無症状で, レントゲン的には肺野孤立結節影が4例, 肺野多発結節影が2例であった. 基礎疾患を認めたものが5例 (結核, 胃癌切除後, 肝硬変, 糖尿病, 慢性関節リュウマチにてステロイド内服中) であった. 髄膜炎を併発したものはなかった. 気管支鏡で診断された5例は抗真菌剤の経口投与で改善した.
  • 米田 尚弘, 吉川 雅則, 塚口 勝彦, 徳山 猛, 夫 彰啓, 友田 恒一, 長 澄人, 成田 亘啓
    1992 年 30 巻 9 号 p. 1667-1672
    発行日: 1992/09/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    肺気腫症などのCOPD患者の栄養障害の原因を解明する目的で, 肺気腫患者25例を対象として, 安静時エネルギー消費量 (REE) を測定し, 栄養状態, 呼吸機能, 呼吸筋力等との関連を検討した. REEの平均値は1,413±251 Calで, REE/REE pred 比は1.398±0.233と亢進していた. REE/REE pred 比は, 血漿アミノ酸BCAA/AAA比 (r=-0.716, p<0.01), 筋蛋白量%AMC (r=-0.77048, p<0.05), 最大吸気筋力PImax (r=-0.803, p<0.001) と有意の負の相関を示し, REEはFEV1% (r=-0.8387, p<0.01) と有意の負の相関を示した. %RV≧200%の高度過膨張例は, %RV<200%例に比べ, REEが有意 (p<0.01) に高値であった. %標準体重90%未満症例は90%以上の症例に比べて, %RVが有意 (p<0.05) に高値であった. 以上より, 肺気腫患者の栄養障害が安静時エネルギー消費亢進と密接に関連していた. 増大したエネルギー消費量は, 気道閉塞, 呼吸筋力低下, 過膨張に基づく mechanical work load と密接に関連する事が示唆された.
  • 草島 健二, 村田 嘉彦, 大石 不二雄, 下出 久雄, 木村 文平, 杉田 博宣, 小山 明, 中野 裕康, 河端 美則
    1992 年 30 巻 9 号 p. 1673-1681
    発行日: 1992/09/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    原発性肺癌の手術例480例を対象として, 担癌肺での原因不明の慢性間質性肺炎 (UIP) の性状を検討した. UIPは30人 (6.3%) にみられ, 性別では男が26例で, 平均年齢は68歳であった. 肺癌の組織別では扁平上皮癌が17例と多く, 部位別では下葉は18例であった. 肺癌は全例末梢発生で, 間質性肺炎が存在する部位にみられ, 胸膜に近い部位から発生したと推測できる例が多かった. UIPの拡がりは胸膜下1cm 以下にとどまる限局性のものが27例と多くを占めた. UIPのタイプによりそれを, 壁在型, 気腫型 (線維化と構造破壊の混在), 気腔内滲出型に分けたところ, 壁在型8例, 気腫型22例であった. 壁在型はCT上胸膜下の濃度上昇のみを呈した場合があった. 気腫型の特徴は, 肺活量の減少がなく, CT上線維化部位に大小不揃いの嚢胞がみられる点であった. 肺癌の早期発見や術後の経過などの点で限局性UIP (特に気腫型) は重要な病変と考えた.
  • 朝田 完二, 大串 文隆, 谷 憲治, 川地 康司, 中平 誠一郎, 安岡 劭, 小倉 剛
    1992 年 30 巻 9 号 p. 1682-1686
    発行日: 1992/09/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    肺癌21例, 良性肺疾患4例 (びまん性汎細気管支炎2例, 気管支拡張症2例) に病巣部で気管支洗浄を行い洗浄液中のCA19-9を測定した. 気管支洗浄液中のCA19-9は, びまん性汎細気管支炎, 気管支拡張症では高値を示した. 肺癌患者では, 腺癌で高値を示すものがあった. 特に, 50,000IU/ml以上を示した症例は肺胞上皮癌であった. 肺癌症例で気管支洗浄液中のCA19-9が高値を示した3例の切除標本を, 抗CA19-9抗体による酵素抗体法で染色すると全例で腫瘍細胞が染色された. 以上のことより, 気管支洗浄液中のCA19-9測定は, 肺癌の補助診断に有用と考えられた.
  • 山井 孝夫, 渡辺 茂男, 本島 新司, 沼尾 利郎, 天下井 正弘, 大塚 智博, 戸田 正夫, 福田 健, 牧野 荘平
    1992 年 30 巻 9 号 p. 1687-1694
    発行日: 1992/09/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    抗原吸入誘発発作におけるロイコトリエン (LT) の役割を明らかにするため, ダニ抗原に強く感作された21名の喘息患者を対象にロイコトリエンD4 (LTD4), ヒスタミン吸入試験およびダニ抗原吸入誘発試験を行い, ダニ抗原に対する気道反応性 (PD20-Mite) とLTD4およびヒスタミンに対する気道反応性 (PD20-LTD4, PD20-Hist) との関連を比較検討した. また, 遅発型喘息反応 (LAR) の強さとLTD4およびヒスタミンに対する気道反応性との関連も検討した. PD20-LTD4とPD20-Mite の間にはr=0.596, p<0.01の有意な相関が, PD20-Hist とPD20-Mite の間にはr=0.669, p<0.001の有意な相関が得られた. さらに, PD20-LTD4と遅発相の1秒量最大低下率との間には, r=-0.724, p<0.001の有意な逆相関を認めた. 以上より, 抗原吸入誘発発作におけるLTの役割の重要性が示唆された.
  • 王 薇, 篠川 真由美, 竹本 淳紀, 長谷川 隆志, 佐藤 高久, 鈴木 栄一, 荒川 正昭
    1992 年 30 巻 9 号 p. 1695-1703
    発行日: 1992/09/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    慢性気道疾患であるびまん性汎細気管支炎 (DPB), 副鼻腔気管支症候群 (SBS), 気管支拡張症 (BE) の病態に, ロイコトリエンがどの程度関与しているかを明らかにする目的で, これらの患者の喀痰中ロイコトリエンの測定を試み,気管支喘息 (BA) 発作時の喀痰中ロイコトリエン量と比較検討した. DPB 3例, SBS 6例, BE 2例, BA10例 (アトピー型5例, 非アトピー型5例) を対象として, 自然喀出した痰を4倍量の氷冷エタノールに抽出し, 高速液体クロマトグラフィーとラジオイムノアッセイで測定した. DPB, SBS, BAのいずれの患者にも喀痰中に peptide LTが検出されたが, BAとDPBで差がなく, DPBとSBSの比較では, DPBで高値であった. LTB4は全例に検出され, DPBで多い傾向がみられた. 慢性気道疾患に伴う気管支れん縮や炎症の一部には, 気管支喘患と同様に, peptide LTやLTB4の関与が示唆された.
  • 有吉 功
    1992 年 30 巻 9 号 p. 1704-1710
    発行日: 1992/09/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    1988年4月から1991年4月までに山口大学医学部放射線科において気管支鏡検査を施行し, その際得られた検体を用いてフローサイトメトリーにより核DNA量を解析しえた原発性肺癌症例67例 (106検体) について検討した. その結果, 細胞診・組織診陽性の擦過細胞および生検組織のDNA aneuploidy 検出率は, 各々54.5%, 75.0%であったことから, 両者は解析試料として適していると考えられ, また, 組織型別では小細胞癌におけるDNA aneuploidy 検出率が77.8%と高値を示した. さらに, 腫瘍内の heterogeneity の存在がDNA aneuploidy 検出率に影響を及ぼすことから, 腫瘍内における heterogeneity の可能性と腫瘍細胞の確実な採取を念頭におくことにより, 本法は, 気管支鏡検査が可能なあらゆる肺癌症例を対象とした核DNA量解析法として, 有用な方法になりうると考えられた.
  • 湯口 恭利, 井上 真美, 滝口 裕一, 河野 典博, 沖田 伸也, 戸島 洋一, 山口 哲生, 田辺 信宏, 長尾 啓一, 栗山 喬之
    1992 年 30 巻 9 号 p. 1711-1718
    発行日: 1992/09/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    原発性肺高血圧症の2例に, 心拍同期スピン・エコー法にて Magnetic Resonance Imaging (MRI) を施行し, 横断像において右主肺動脈内腔に認められる血流信号を観察して臨床経過と対比した. 経過中臨床像の増悪をみた1例では, 症状や, 動脈血液ガス, 心胸比などの検査値の悪化に伴って肺動脈内の血流の信号の増強を認めた. 臨床像が安定していた1例では, 血流信号の増強はみられなかった. 血流の信号増強は流れの停滞を意味しており, その程度は肺血管抵抗の増大や心拍出量の低下によると考えられ, 右心不全の進行を表す指標のひとつになり得ると考えられた.
  • Williams-Campbell 型気管支拡張症の提唱
    河村 哲治, 望月 吉郎, 中原 保治, 中原 由紀子, 河南 里江子, 平田 教至, 網谷 良一
    1992 年 30 巻 9 号 p. 1719-1723
    発行日: 1992/09/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    Williams-Campbell 症候群は気管支造影で吸気時の風船様拡張と呼気時の虚脱を認め, 気管支軟骨の先天性量的欠損 (軟骨数が少ない, 軟骨自体が小さく薄い) が原因と考えられている特殊な気管支拡張症である. 今回我々は Williams-Campbell 症候群の成人例と考えられる2例を経験した. 2例とも粘液線毛輸送系の異常は認められず慢性副鼻腔炎の所見もないことから, 気管支拡張症の原因として Primary Ciliary Dyskinesia や, 副鼻腔気管支症候群は否定的であった. また本邦で報告されている Williams-Campbell 症候群のほとんどは, 特徴的な気管支造影所見を示しながら気管支軟骨の欠損が証明されておらず, しかも先天性である証明は非常に困難である. そこで我々は, 病理学的根拠の有無にかかわらず上記のような気管支造影所見を呈する症例を Williams-Campbell 型気管支拡張症と呼ぶことを提唱したい.
  • 林 真一郎, 荻野 英夫, 野元 吉二, 川崎 雅之, 宮川 洋介, 平野 裕志, 田中 希代子, 中西 真之, 一ノ瀬 幸人, 矢川 克郎
    1992 年 30 巻 9 号 p. 1724-1727
    発行日: 1992/09/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    58歳, 男性で入院時より血小板数やFDP, Fibrinogen 値が高値を示し, 且つ, 末梢血中血栓誘発因子 (Thrombosis-inducing activity, TIA) 陽性の一肺癌症例 (pancoast タイプ) を経験した. 放射線治療による腫瘍の消失に伴い, 上記検査値の正常化と共に末梢血中よりTIAの消失が認められた.
  • 室 恒太郎, 青木 稔, 和田 洋巳, 人見 滋樹
    1992 年 30 巻 9 号 p. 1728-1731
    発行日: 1992/09/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    症例は32歳, 男性. 感冒様症状と血痰を主訴として入院. 胸部X線写真で右肺の萎縮, 縦隔の右側偏位を, 胸部CTで右肺容量減少, 右肺門陰影の欠如, 右肺動脈の狭小化を認め, 右肺動脈欠損症が疑われた. 気管支鏡検査では異常を認めなかった. 血管造影・心臓カテーテル検査で右肺動脈の完全欠損を認めた. 合併心奇形はなく, 先天性右肺動脈単独欠損症と診断した.
  • 田中 春仁, 中原 康治, 酒井 聡, 味元 宏道, 冨田 良照, 後藤 紘司
    1992 年 30 巻 9 号 p. 1732-1737
    発行日: 1992/09/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    気管内腫瘤を形成し, 気道閉塞状態に陥ったホジキン病を救命し得たので報告する. 22歳女性, 1989年に右前頸部リンパ節の腫脹が出現した. 1991年1月より咳嗽, 発熱, 次第に喘鳴, 呼吸困難が強くなり当科に緊急入院した. 胸部X線とCTでは腫瘤がリンパ節と一塊になり縦隔に高度浸潤しており, 気管支鏡では気管が前後に圧排狭窄し, スリット状に開存,さらに粘膜下腫瘤が気管前方より突出していたが, 主気管支より末梢は粘膜浮腫のみを認めた. またフローボリューム検査にてFEV1.0が1.39L (58.7%), 胸郭内外混合性でかつ固定性の閉塞性換気障害を示した. 鼠径リンパ節の生検よりホジキン病と診断し化学療法を施行し, 症状は改善した. そして腫瘤の縮小と共に, 呼吸機能の正常化が図られた. 臨床経過と共にフローボリューム検査を施行し得た例は貴重な例である.
  • 久木田 香子, 白川 妙子, 小島 彰夫, 吉田 仁爾, 吉田 憲史, 徳臣 晴比古, 蔵野 良一
    1992 年 30 巻 9 号 p. 1738-1742
    発行日: 1992/09/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    44歳, 女性, 養護教員. 胸部X線写真上, 両側びまん性粒状影で発見され, その後, 著明な肺の縮小と, びまん性網状輪状影へと変化した転移性肺腫瘍の症例を経験した. 剖検の結果,原発は肝の胆管細胞癌で, 転移は両肺の他, 脾, 大網, 卵巣, 子宮, 甲状腺, 腎臓, 骨, 脳硬膜, クモ膜にみられた. 肝の組織では, 著明な線維化を伴う小管状腺癌の増生がみられた. 肺は, 気管支・血管周囲に線維性結合織の著明な増生を伴う腺癌を認めた. 周囲肺胞は収縮し, 一部気腫状変化を認めた. 本症例は, 約3年5ヵ月の経過で, 著明な肺の線維化をきたした胆管細胞癌の肺転移の症例で, 検索し得た範囲では類似する症例の報告はなく非常に稀であると考えられる.
  • 原 暁生, 坂本 理, 松本 充博, 坂田 哲宣, 興梠 博次, 杉本 峯晴, 安藤 正幸, 荒木 淑郎, 岩切 徹
    1992 年 30 巻 9 号 p. 1743-1748
    発行日: 1992/09/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    症例は53歳男性, 平成2年3月中旬より多発性関節炎の症状が出現し, 近医にてブシラミン200mg/日の投与を受けた. 8月中旬より, 全身倦怠感, 発熱, 乾性咳嗽, 呼吸困難感が出現し当科紹介入院となった. 自覚症状, 炎症所見, 血液ガス, 肺機能, および胸部X線上の混合性陰影はブシラミン中止により改善を認め, ブシラミンによる皮膚貼付試験陽性, BAL中総細胞数, リンパ球比率の増加, CD4+/CD8+比の低下並びに胞隔炎の組織所見より, ブシラミンによる薬剤性肺臓炎と診断し, ステロイド投与により著明な改善を認めた. ブシラミンによる薬剤誘起性肺臓炎の報告は本症例が3例目ときわめて稀であるが, 本剤は慢性関節リウマチの寛解導入剤として広く用いられているため, 今後注意する必要がある.
  • CT所見を中心に
    新実 彰男, 網谷 良一, 倉澤 卓也, 橋本 尚子, 加藤 元一, 坂東 憲司, 伊藤 春海, 久世 文幸
    1992 年 30 巻 9 号 p. 1749-1755
    発行日: 1992/09/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    特発性肺ヘモジデローシス (IPH) の2例につきCT所見を中心に検討した. 症例1は17歳女性. 主訴は労作時息切れ. 6歳時より鉄欠乏性貧血あり. 16歳時びまん性肺陰影とそれに伴う貧血で他院に入院し, ステロイドで軽快した. 精査のため当科入院. 胸部レ線で両下肺野優位のびまん性スリガラス影と粒状網状影を, CTで両下葉背側優位のびまん性肺野濃度上昇を認めた. 開胸肺生検で肺胞内出血, 肺胞内の多数のヘモジデリン貪食細胞の他に胞隔の著明な線維性肥厚を認めた. 症例2は7歳女性. 主訴は血痰. 3歳時より鉄欠乏性貧血と血痰があり, 6歳時他院でIPHと診断された. 精査のため当科入院. 胸部レ線・CTで両肺びまん性の多発性小結節影と右上葉の限局性浸潤影を認めたが, びまん性の肺野濃度上昇は認めなかった. 同例では肺生検を行っていないが, 呼吸機能, 血液ガスから胞隔の不可逆的変化はもし存在しても軽微と想像された. 2例のCTの肺野濃度は主として胞隔のびまん性線維性肥厚の程度を反映していたと考えられ, 慢性反復性肺胞内出血に続発する胞隔の線維性肥厚の評価にCTが有用である可能性が示唆された.
  • 新井 望, 中田 正幸, 山崎 純一, 白井 達男, 野中 博子
    1992 年 30 巻 9 号 p. 1756-1760
    発行日: 1992/09/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    多発性骨髄腫の経過中に急死し, 剖検にて両側肺動脈血栓塞栓症を認めた1例を経験した. 症例は50歳女性. 4年前より近医で多発性骨髄腫にて化学療法を受けていたが, 再発にて1990年8月当院転院. 入院後化学療法を施行していたが血清グロブリン値は上昇し, 腰痛が悪化したため一日中臥位していることが多かった. 10月21日トイレに行った後急に呼吸困難が出現し, チアノーゼ著明となり意識消失し, 心肺停止す. 剖検の結果にて両側肺動脈血栓及び骨盤静脈系に血栓が認められた. 本症例は多発性骨髄腫による過粘稠度症候群と長期臥床が誘引となり, 骨盤静脈系より肺動脈血栓症を来したと思われた. 多発性骨髄腫の経過中に肺動脈血栓塞栓症を来した症例は散見されるが, 両側肺動脈に血栓を来し急死した症例は稀であると考え報告した.
  • 鈴木 淳一, 神林 隆幸, 小泉 知展, 本田 孝行, 山田 博美, 関口 守衛
    1992 年 30 巻 9 号 p. 1761-1765
    発行日: 1992/09/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    症例は37歳の男性. 1990年7月, 特に誘因なく右側顔面から上腕にかけて腫脹が出現した. 上大静脈症候群と診断され, 同8月精査のため入院した. CT, MRI等の画像診断により上大静脈より両側内頸静脈, 鎖骨下静脈に連続する器質化した血栓を認めた. 肺野, 縦隔に異常所見なく, 上大静脈を内外より狭窄ないし閉塞する腫瘍性変化を認めなかった. 血液凝固系にも異常はなかった. 血管内視鏡により表面白色の器質化した血栓を確認した. tissue plasminogen activator を含む抗凝固療法を実施したが効果なく, 静脈造影にて側副血行路の増加を確認した. 上大静脈症候群をきたす特発性の静脈血栓症は極めてまれであり若干の文献的考察を加えて報告した.
  • 柴田 和男, 橋上 裕, 馬嶋 邦通, 吉田 公秀, 原 眞咲
    1992 年 30 巻 9 号 p. 1766-1769
    発行日: 1992/09/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    過誤腫は肺の良性腫瘍の中では頻度の高いものであるが, 多くは肺内に発生し, 気管支内腔に発育するものは比較的稀である. 我々は胸痛と呼吸困難を主訴として来院した70歳男性に, 気管支鏡で左主気管支を閉塞する可動性の良好な腫瘍を認めた. 経内視鏡的に腫傷切除術を行ったが, 易出血性腫瘍と考え, Nd-YAGレ-ザーを使用して腫瘍茎を焼灼, 切除した. 病理診断は非軟骨性過誤腫であった. 気管支内過誤腫はレーザー治療により治癒せしめ得る腫瘍のひとつと考えられた.
  • 三宅 修司, 大玉 信一, 態谷 隆志, 石川 めぐみ, 海野 剛, 高野 省吾, 赤川 志のぶ, 青木 延雄, 松原 修
    1992 年 30 巻 9 号 p. 1770-1776
    発行日: 1992/09/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    患者は47歳女性. 慢性骨髄性白血病 (CML) は治療により慢性期で安定していたが, 経過中咳嗽・喀痰とともに肺胞性陰影が一過性に出現した. その後肺胞性陰影および網状影が咳嗽・喀痰と共に再度出現. この時の検疾にて抗酸菌が検出され, 抗結核薬の治療が開始されたところ, 重篤な薬剤性肝障害を合併したため当院に転院. 喀痰・骨髄, 髄液にて抗酸菌が証明され, 全身播種型非定型抗酸菌症 (M. avium complex) と判明し, 胸部陰影は経気管支鏡的肺生検にて胞隔肥厚を伴った二次性肺胞蛋白症と診断した. 胞隔肥厚の原因としてブスルファン肺との鑑別が重要だが, 病変の分布, 経過などから肺胞蛋白症の経過中に出現した胞隔肥厚と考えた. 本例での重感染は, ツベルクリン反応が陰性であることや, クリプトコッカス髄膜炎を反復感染したことなどから, 細胞性免疫能の低下も関与していたと考える. 肺胞蛋白症の経過中胞隔肥厚をきたし, 全身播種型非定型抗酸菌症を合併した例は稀であり, 貴重な症例と考えた.
  • 石川 和彦, 久保 義一, 船田 淳一, 田口 禎一郎, 関谷 達人, 河野 修興, 日和田 邦男
    1992 年 30 巻 9 号 p. 1777-1780
    発行日: 1992/09/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    症例は28歳の男性. 胸部X線写真上右中肺野にループ状の血管様異常陰影を指摘され, 精査のため当科に入院した. 肺血管造影を施行したところ, 静脈相になってはじめて異常陰影に相当する異常血管が描出された. その走行は右上葉内側から出現し, 前方外側へ下降し, 中葉上部で迂曲蛇行しながらループを形成し上方に転した後, 左房へ還流しており, 肺静脈走行異常と診断した. その他, 右肺尖静脈の部分的狭窄を認めた. また, 右肺尖支は気管から分岐していた. 肺静脈走行異常は肺静脈系の先天性異常の中でも極めて稀な疾患である.
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