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松下 葉子, 新実 彰男, 田中 栄作, 網谷 良一, 倉澤 卓也, 川合 満, 久世 文幸
1993 年 31 巻 12 号 p.
1507-1514
発行日: 1993/12/25
公開日: 2010/02/23
ジャーナル
フリー
当科で経験した肺
M. kansasii 症6例につき検討した. 年齢は26~51歳 (平均39.6歳) で全例男性であった. 全身, 肺の基礎疾患を有する例はなかった. 胸部X線およびCTで, 病巣はS
1, S
2に好発し (右S
1・S
24例, 左S
1+21例, 左下葉1例), 比較的薄壁で散布巣の少ない単発空洞病変を呈した. 薬剤感受性はほぼ一定のパターン (TH, CS, EB, RFPに高感受性) を示し, 6例中5例はRFPを含む3~4剤による治療で良好な経過をとった. しかし残る1例はINH, RFP, EBの1年間の投与で改善が得られず, 外科的治療を要した. 6例の臨床像を, 当科で経験した肺結核症112例,
M. avium complex 症51例のそれと比較すると, 本症と肺結核症は, 比較的若年で男性例が多い傾向がある, 病巣はS
1,2・S
6に好発しかつそこに限局する例が多く2葉以上におよぶ例は少ない, という共通する特徴を有していた. 結核が強く疑われる症例でも本症の可能性を忘れず, 菌の培養, 同定を確実に行う必要がある.
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沢田 みどり
1993 年 31 巻 12 号 p.
1515-1521
発行日: 1993/12/25
公開日: 2010/02/23
ジャーナル
フリー
肺の炎症では肺胞や間質に fibrin の沈着が認められ, 凝固線溶系の関与が推察される. 放射線照射後の家兎肺の気管支肺胞洗浄液について, 凝固線溶系の諸因子を経時的に測定し, procoagulant activity (PCA) と tissue plasminogen activator (t-PA) を中心に検討した. 照射によって肺胞マクロファージ数とマクロファージ1個あたりのPCAが増加し, 肺胞領域でのPCAは照射後2週目から8週目まで高い傾向が持続した. t-PAは漸増し, 4週目にコントロール群と有意差を生じた. 放射線の照射により肺胞領域の凝固系と線溶系はいずれも活性化された. 凝固系の活性化は線溶系に先行し, かつ, 長期間持続しており, 肺胞領域の fibrin 沈着を促進し, 肺の炎症を進展させる一因になるものと推察された.
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市木 拓, 宍戸 道弘, 西谷 一志, 高次 寛治, 西山 誠一, 矢野 守, 渡辺 浩毅
1993 年 31 巻 12 号 p.
1522-1527
発行日: 1993/12/25
公開日: 2010/02/23
ジャーナル
フリー
活動性肺結核症患者123人を対象として, 血清腫瘍マーカー (CEA, SLX, CA125) を測定した. 各血清腫瘍マーカーの陽性率はCEA 16.9%, SLX 39.5%, CA125 44.4%でCA125では著明な高値を呈した症例もあった. CEA, SLXは胸部X線写真での病巣の広がりを反映して上昇していた. また血清SLX値は無空洞例では有空洞例に比べ有意に高値であった. 治療との関係でみると, 治療前に高値を呈した血清SLX, CA125値は治療開始後は有意に低下した. また血清CEA値の低下は有意ではなかったが, 8例中4例が治療後には正常化した. なお, むしろ腫瘍マーカー値が上昇する症例も2例みられたが, 臨床経過は不良であった. これらのことから治療を行いながらの血清腫瘍マーカーの経過観察は重要であり, 治療にもかかわらず血清腫瘍マーカーが上昇する症例は, 病勢の増悪か肺癌もしくは他癌の合併を考慮する必要があると思われた.
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田中 研一, 河野 茂, 前崎 繁文, 光武 耕太郎, 宮崎 治子, 宮崎 幸重, 朝野 和典, 賀来 満夫, 古賀 宏延, 原 耕平
1993 年 31 巻 12 号 p.
1528-1533
発行日: 1993/12/25
公開日: 2010/02/23
ジャーナル
フリー
肺クリプトコッカス症に対する fluconazole (KLCZ) と flucytosine (5-FC) の併用療法の有効性について, 基礎的ならびに臨床的検討を行った. 基礎的検討では, 当科における臨床分離
Cryptococcus neoformans 株8株を用いて寒天平板法による各種抗真菌剤の薬剤感受性ならびに FIC index による併用効果を測定した. その結果, FLCZを除く各種抗真菌剤に感受性を認め, 併用効果ではFLCZ+5-FCの組合わせにて相乗効果を認める株が1株, また相加効果を認める株が2株存在した. 臨床的に抗真菌剤の単剤投与が無効であった続発性肺クリプトコッカス症3例にFLCZと5-FCの併用療法を行った. その結果, 全例に真菌学的ならびに画像的な改善を認め, 併用療法が臨床的にも有効である可能性が示唆された.
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谷田 佳世, 中村 陽一, 亀井 俊彦, 尾崎 敏夫, 小倉 剛
1993 年 31 巻 12 号 p.
1534-1541
発行日: 1993/12/25
公開日: 2010/02/23
ジャーナル
フリー
気管支喘息患者の好酸球増多の機序を解明する為, 患者の単核球 (MNC), 及びT細胞を用いて, 好酸球コロニー刺激因子 (Eo-CSF) の産生と抑制を検討した. 患者MNC, T細胞にIL-2, ダニ抗原を加えて培養し, その上清を健常人の骨髄細胞に加えると, 好酸球数及びGM-CSF産生量の増加をみた. IL-5は増加している例もみられたが, 全体では有意な変化は認められなかった. IL-3も同様に, 有意な変化はみられなかった. また, IL-2にIL-4を同時に添加して培養して得られた上清を骨髄細胞に加えた場合には, 好酸球数, GM-CSF産生量の増加は認められなかった. 以上により, 気管支喘息患者のMNC, T細胞は, IL-2, ダニ抗原に対する反応性が増加しており, 主にGM-CSFの産生の増強を介して好酸球を増加させること, IL-4は, IL-2によるGM-CSF産生を抑制することによって好酸球増加を抑えることが示唆された.
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牧元 毅之, 星野 秀樹, 土屋 智, 渡辺 覚, 中野 秀彦, 成清 一郎, 笛木 直人, 江沢 一浩, 滝瀬 淳, 斎藤 龍生
1993 年 31 巻 12 号 p.
1542-1547
発行日: 1993/12/25
公開日: 2010/02/23
ジャーナル
フリー
今回我々は原発性肺癌に伴う癌性胸膜炎に対し Adriamycin の新しい誘導体である Pirarubicin (THP-ADM) の胸腔内投与を行い, その有用性について検討した. 対象は胸水細胞診にて癌性胸膜炎と診断された原発性肺癌症例20例で全例胸腔内治療歴のないものとした. Performance status (PS, Eastem Cooperative Oncology Group (ECOG)) はPS1が8例, PS2が9例, PS3が3例であった. 臨床病期分類はIIIB期が14例, IV期が6例である. 方法は原則として可能な限リチューブドレナージ法で胸水を排液した後, THP-ADM 30mg/m
2を胸腔内へ注入した. 成績は全体の奏効率が50.0%で胸腔穿刺法施行例では14.3%, チューブドレナージ法施行例では69.2%で有意差をもって後者が高かった (p<0.05) が Median Survival Time (MST) には差がみられなかった. 重篤な副作用はみられなかった. 原発性肺癌に伴う癌性胸膜炎に対してチューブドレナージ法を用いたTHP-ADMの胸腔内投与は有用であると思われた.
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西村 善博, 仲田 裕行, 松原 正秀, 前田 均, 横山 光宏
1993 年 31 巻 12 号 p.
1548-1552
発行日: 1993/12/25
公開日: 2010/02/23
ジャーナル
フリー
慢性閉塞性肺疾患 (COPD) 患者が体重減少を示すことはよく知られているが, 体重減少がどの体成分変化に起因しているのかは明らかでない. COPD患者21例 (72.6±9.5歳) を対象に, dual energy absorptiometry (DXA) により体成分分析を行い, 体成分の変化, 特に全身の骨塩量の変化 (骨粗鬆症の有無) 及びその関連因子を検討した. 骨塩量 (BMC) は1.82±0.33kgと健常者と比較し有意に低値を示した. 運動能力の指標である10分間歩行距離 (TMD) は617.8±234.0mと低値を示し, BMCとの間に有意な正相関 (r=0.508, <0.05) を認めた. また, 体重とBMCとの間には有意な正相関 (r=0.706, <0.01) が認められたが, 体重とTMDとの間には認められなかった. 体重減少, 運動能力低下と骨塩量減少との関連性が示唆され, 患者管理の上でそれに伴う骨折の危険性を考慮する必要があると考えられた.
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中村 清一, 川上 雅彦, 三上 正志, 山中 栄一
1993 年 31 巻 12 号 p.
1553-1559
発行日: 1993/12/25
公開日: 2010/02/23
ジャーナル
フリー
Immotile cilia syndrome (ICS) 15例の痰のレオロジカル及び生化学的分析を行い, びまん性汎細気管支炎 (DPB) 12例, 気管支拡張症 (BE) 11例の喀痰と比較検討した. ICSではDPBに比し, 有意に曳糸性が高く, アルブミン濃度が低く, フコース, シアル酸, IgAの濃度が高かった. 更にBEと比べると, 喀痰のレオロジカルな性状や生化学的成分の濃度には有意な差異は認められなかった. しかしICSではBEに比しシアル酸/アルブミン比が高値で, シアル酸/フコース比が低値であった. これらの成績はICSの喀痰がDPBやBEの喀痰に比し咳によるクリアランスに際し, 必ずしも有利な条件を有しているとはいえないことを示している. またICSでは分泌成分が絶対的, 相対的に多く, 逆に血管外漏出成分が少ないこと, したがって気道炎症及び気道上皮障害は軽度であることを示唆するものである.
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沢本 修一, 野本 日出男, 山田 和人, 川島 隆二, 牧野 公洋, 中込 幸一, 武井 隆, 溝部 政史, 大田 健, 真野 健次
1993 年 31 巻 12 号 p.
1560-1565
発行日: 1993/12/25
公開日: 2010/02/23
ジャーナル
フリー
肺癌の, 化学療法による骨髄抑制の予防目的に, recombinant-human-granulocytemacrophage-colony-stimulating-factor (rhGM-CSF) (ヘキスト・ジャパン) を使用したところ, 末梢血において著明な好酸球増多を認め, 最高で好酸球が白血球分画中89% (33,464/mm
3) を占める異常な高値を示した. 好酸球増多時の臨床症状としては, 発熱以外特に認めなかった. 好酸球数と血清サイトカイン濃度との関係を調べるために, 血清中のGM-CSF, interleukin-3 (IL-3), interleukin-5 (IL-5) 濃度を測定した. また, 好酸球の活性化の状態を調べるために, 血清中の eosinophil cationic protein (ECP) 濃度を測定した. その結果, 好酸球数と血清サイトカイン濃度及び, 血清ECP濃度との間には相関性は認められなかった. 本症例は好酸球数増加のメカニズム及びその時の血清サイトカイン, ECPの意義を考える上で極めて興味深い症例と考えられた.
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田ノ上 雅彦, 佐藤 隆, 吉澤 靖之
1993 年 31 巻 12 号 p.
1566-1571
発行日: 1993/12/25
公開日: 2010/02/23
ジャーナル
フリー
肺炎を繰り返した黄色爪症候群の1例を経験した. 症例は31歳の女性で, 黄色爪と慢性気管支炎があり, 経過中に胸水を認めた. 本症候群の成因は解明されていないが, リンパ系の異常が関与していると考えられている. 本邦における報告は, 今までに本例を含めて22例と少ないが, 呼吸器感染を起こしやすく, 留意すべき疾患と考えられる.
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若山 尚士, 伊藤 雄二, 野口 雅弘, 河口 治彦, 大鹿 裕幸, 鈴木 雅之, 戸谷 康信, 鳥井 義夫, 千田 嘉博, 向山 憲男
1993 年 31 巻 12 号 p.
1572-1577
発行日: 1993/12/25
公開日: 2010/02/23
ジャーナル
フリー
糖尿病, 慢性関節リウマチを有し, リウマチ肺の診断のもとステロイド剤を内服していた59歳の女性. 発熱と血痰が出現し, 胸部X線写真上, 右下肺野に徐々に腫瘤影が増大した. 胸部CT上右S
6cに辺縁不鮮明な巨大腫瘤影を呈し, 造影で内部に円形の low density area を示した. 気管支擦過検体よりアスペルギルス菌体を検出し, 肺アスペルギルス症と診断した. 1ヵ月程の間に腫瘤影が急速に増大し, 抗真菌剤を投与したが改善が不十分なため, 外科的切除に踏み切り根治を得た. 切除肺には拡張した気管支内にアスペルギルスの菌球形成を認め, 周囲に広範な炎症細胞浸潤を伴う肺アスペルギローマであった. 一般には肺アスペルギローマは『定着型』として扱われるが, 宿主の免疫反応の程度によってはこの症例のように亜急性の増悪経過をとることがあると考えられた. また, 限局的な肺アスペルギルス症では可能な限り外科的切除を早期から考慮すべきと思われた.
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毛利 雅美, 南部 静洋, 堀井 広之, 小林 有希, 山之内 菊香, 桜井 滋, 栂 博久, 大谷 信夫
1993 年 31 巻 12 号 p.
1578-1584
発行日: 1993/12/25
公開日: 2010/02/23
ジャーナル
フリー
症例は49歳女性. 発熱, 呼吸困難で急速に発症し, 胸部レ線上びまん性陰影を呈し, 炎症反応の亢進と高度の低酸素血症を認めた. 入院後, 症状は経過観察にて軽度改善したが, 病因, 病態確定目的に開胸肺生検を施行した. 組織では好酸球, 単核球浸潤による胞隔炎を, 気管支肺胞洗浄では好酸球増加を認めた. 過敏性肺臓炎との鑑別が問題となったが, 環境誘発試験, 沈降抗体は陰性であった. 開胸時の肺組織ウイルス分離培養は陰性であり, 現時点では Allen (1989) らの急性好酸球性肺炎と診断した. 自験例および本邦報告例22例における季節性分布の検討では, 春, 夏期に集中 (95.4%) しており, 夏型過敏性肺臓炎との鑑別が問題となる症例が含まれていた. 今後, 本疾患を独立した疾患概念として認識するためには詳細な臨床経過, 沈降抗体, ウイルス学的評価とともに病理組織学的にも充分な検索が必要と考えられた.
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久手堅 憲史, 川上 和義, 嘉数 朝政, 澤岻 安教, 嘉数 朝一, 普久原 浩, 中村 浩明, 兼島 洋, 斎藤 厚, 戸田 隆義
1993 年 31 巻 12 号 p.
1585-1590
発行日: 1993/12/25
公開日: 2010/02/23
ジャーナル
フリー
アセトアミノフェンの内服による薬剤誘起性肺炎の1例を報告した. 症例は63歳, 女性. 発熱に対しアセトアミノフェンを8日間, 計2,350mg内服した後, 乾性咳嗽, 呼吸困難が出現し, 両側中下肺野に間質性陰影が出現した. 動脈血ガスでは PaO
2 45.0Torr, PaCO
2 35.7Torr と著明な低酸素血症を認めた. 気管支肺胞洗浄液ではリンパ球の比率の上昇, CD4/8比の低下を認め, 経気管支肺生検では肺胞中隔の肥厚を認めた. リンパ球刺激試験ではアセトアミノフェンに対する stimulation index (S. I.) は237%と陽性を示した. 薬剤誘起性肺炎と考え, アセトアミノフェンの中止と methylprednisolone の投与を行ったところ臨床症状, 検査所見, 胸部X線写真ともに改善が認められた. これらの所見より, 本症例はアセトアミノフェンによる薬剤誘起性肺炎と考えられた. アセトアミノフェンによる薬剤誘起性肺炎の報告例は稀であり, 本症例は本邦で2例目と思われる.
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酒井 哲夫, 石崎 武志, 佐々木 文彦, 飴島 慎吾, 大西 定司, 重森 一夫, 斉藤 雄二, 中井 継彦, 宮保 進, 村上 巧啓
1993 年 31 巻 12 号 p.
1591-1595
発行日: 1993/12/25
公開日: 2010/02/23
ジャーナル
フリー
ユスリカが喘息発症に関与したと考えられる成人気管支喘息の1例を報告した. 症例は48歳女性. 6年前の春, 住居近くの河川にユスリカの異常発生があり, その後は, 春, 夏にかけてよく認められると言う. 5年前の6月頃喘鳴を初めて認めるようになり, その後毎年5, 6月頃に発作を起こしていた. 平成3年5月2日発作増悪のため入院. 入院後加療にて喘鳴発作は速やかに軽快した. 症状の安定したところでアレルギー学的検査を施行. RAST score ではユスリカ幼虫 (CTT) 4, ユスリカ成虫 (オオユスリカ) 3と陽性であった. またオオユスリカ抗原による皮内テストにては100万倍でも陽性所見を認め, しかも皮内テスト後より軽度の喘鳴発作が誘発された. 自宅近くに群飛していた虫は
Chironomus nippodorsalis と同定された. ユスリカは成人気管支喘息においても吸入性抗原になりうることが示された.
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酒井 聡, 森 義雄, 味元 宏道, 冨田 良照, 田中 春仁, 中原 康治, 広瀬 一
1993 年 31 巻 12 号 p.
1596-1600
発行日: 1993/12/25
公開日: 2010/02/23
ジャーナル
フリー
症例は38歳女性で, 1991年3月に胸部痛を認め, 左気胸の診断で当科入院となった. 1986年12月に右乳癌にて, 非定型乳房切除術を受けており, 1988年11月に, 左肺の異常陰影を指摘され, 経過観察されていた. 胸部CTでは, 左S
4とS
6の境界に空洞を伴う腫瘤を認め, 気管支鏡下肺生検では腺癌であった. 1991年4月5日に, 左上葉切除およびS
6の部分切除を行った. 切除標本では, 上下葉間に腫?が露出しており, 一部壊死を伴っていた. 病理組織検査では, 低分化型乳頭腺管癌で乳癌の肺転移と診断した. 乳癌の肺転移による気胸はまれであり, その発生原因として, 腫?の壊死による空洞形成と胸膜への浸潤が原因と考えられた.
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下元 博史, 宮地 卓也, 西脇 敬祐, 内田 安司, 横井 豊治
1993 年 31 巻 12 号 p.
1601-1605
発行日: 1993/12/25
公開日: 2010/02/23
ジャーナル
フリー
症例は60歳の男性. 1987年に多発性神経鞘腫症と診断された. 1993年胸部異常陰影の精査のため当科入院となった. 胸部X線写真は左上下肺野に限局性の気胸と左S5, S8領域に円形の結節影がみられた. 陰影は胸膜の肥厚を伴い結節影へ向かう気管支, 血管の弧状陰影 (comet tail sign) がみられ, 円形無気肺と考えられた. 気胸の治療と結節影の確定診断を得るため気腫性嚢胞切除術, 肺部分切除術を施行し病理組織学的に円形無気肺と診断した. 自然気胸に合併した円形無気肺の報告は少なく, 本症例は非常に稀な症例で円形無気肺の成因を考える上で貴重な1例と思われた.
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吉富 淳, 佐藤 篤彦, 田村 亨治, 須田 隆文, 八木 健, 中野 豊, 早川 啓史, 千田 金吾
1993 年 31 巻 12 号 p.
1606-1611
発行日: 1993/12/25
公開日: 2010/02/23
ジャーナル
フリー
浜松医科大学第2内科で1982年から1992年までに特発性間質性肺炎に施行した気管支肺胞洗浄 (BAL) 延べ118件中, BAL後の急性増悪が2件 (1.7%) 認められたことから検討を加えた. 症例1は54歳の女性, 症例2は75歳の男性で, いずれも発熱と呼吸困難の増悪を主訴として当科に入院した. BAL施行後, 呼吸困難が増悪し, 血液検査にてWBC, LDHの上昇, 胸部X線写真にてびまん性の網状影斑状影の拡大を認めた. 症例1はステロイド等の投与も無効で, 呼吸不全のため死亡したが, 症例2は抗生剤の投与のみで軽快した. BAL所見では2例とも好中球分画の増加が認められ (症例1: 6.5%, 症例2: 35.2%), 気道・肺感染症の存在が示唆された.2症例ともBAL直後に上肺野に浸潤影が出現した後に陰影が全肺野に進展したこと, 症例1の剖検で浸潤影に一致した部位にのみ巣状肺炎が認めたことから, 検査による細菌の散布が肺炎を招き, これが誘因となって急性増悪をきたしたと推察された.
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笹野 進, 大貫 恭正, 毛井 純一, 神楽岡 治彦, 足立 孝, 池田 豊秀, 石倉 俊榮, 楊 孟峰, 新田 澄郎
1993 年 31 巻 12 号 p.
1612-1617
発行日: 1993/12/25
公開日: 2010/02/23
ジャーナル
フリー
症例は74歳, 男性. 1938年肺結核, 1955年右胸郭成形術. その後, 特に問題なく経過していたが, 1988年3月発熱, 血痰, 喀血出現, 内科的治療でコントロールがつかず, 同年4月当科に入院した. 気管支動脈造影所見より出血巣は左上葉と考えられ, スポンゼルによる気管支動脈塞栓術を施行した. 1ヵ月後に再喀血し, 再度同部位に塞栓術を施行したが, その後も喀血を繰り返したため,左鎖骨下動脈の分枝結紮術を施行した. 全く喀血, 血痰なく2年9ヵ月経過後に喀血し, スポンゼルにより2回, プラチナコイルにより2回の気管支動脈塞栓術を施行した. 初回喀血後4年11ヵ月間に計9回の気管支動脈塞栓術及び胸壁動脈の胸腔内分枝の結紮術を施行し, 最終塞栓術後5ヵ月間喀血, 血痰なく経過中である.
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滝口 恭男, 内山 隆司, 佐藤 圭一, 巽浩 一郎, 木村 弘, 長尾 啓一, 藤沢 武彦, 大和田 英美, 廣島 健三, 栗山 喬之
1993 年 31 巻 12 号 p.
1618-1622
発行日: 1993/12/25
公開日: 2010/02/23
ジャーナル
フリー
34歳男性. 持続する咳嗽を主訴として当院受診し, 気管支鏡にて右主気管支をほぼ閉塞する有茎性腫瘤が認められた. 診断及び治療のため Snaring 鉗子で腫瘤を切除し, 病理学的検索の結果神経線維腫と診断された. その後生検鉗子とNd-YAGレーザーを使用して内視鏡的に腫瘍を完全に切除・焼灼した. 文献的考察の結果, 肺原発の神経線維腫は極めて稀であり, 本邦ではこれまでに7例の報告をみるにすぎなかった.
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渡辺 真純, 佐藤 光春, 大鹿 芳郎, 青木 輝浩, 高木 啓吾, 田中 勧, 尾形 利郎, 田中 博幸, 小林 英夫
1993 年 31 巻 12 号 p.
1623-1628
発行日: 1993/12/25
公開日: 2010/02/23
ジャーナル
フリー
胸部MRI検査によって大動脈から流入する異常血管を確認した肺葉内肺分画症の2例を報告する. いずれも大動脈に接する左肺S
10相当部位に腫瘤を発見され肺分画症を疑いMRIを施行し, 下行大動脈から腫瘤に向かう管腔構造を確認した. 腫瘤自体はT2強調画像で高信号域を呈し, 嚢胞性病変と考えられた. 2例とも外科的に切除したが, 症例1では5mmおよび3mm径の2本の異常動脈を, 症例2では10mm径の異常動脈を確認し, 病理組織学的にも肺葉内肺分画症と診断した. 5mmおよび10mm径の異常動脈は術前のMRIで描出されていた. 臨床症状および病変の存在部位から肺分画症を疑った場合に, 異常血管の太さ, 部位によってはこれをMRIで確認することができ, 侵襲的な大動脈造影を施行しなくとも肺分画症の診断が可能な症例があると考えられた.
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