日本胸部疾患学会雑誌
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31 巻, 1 号
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  • 寺尾 一郎, 萩原 照久, 堀江 孝至
    1993 年 31 巻 1 号 p. 1-6
    発行日: 1993/01/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    サルコイドーシス (以下サ症) の発症およびその進展にマクロファージ, Tリンパ球の活性化が密接な関係があると考えられている. 今回われわれはサ症において主にマクロファージから産生されるネオプテリンの意義について検討した. サ症における血清および尿中ネオプテリン値はステロイド剤の使用においても有意に低下せず, また胸部X線所見が進展するに従い血清および尿中ネオプテリン値も増加する傾向にあることが判明した. このことは血清および尿中ネオプテリン値は, サ症の活動性を判定する際に有用なマーカーになる事を示唆している.
  • 小池 加保児, 谷田 達男, 佐久間 勉, 小野 貞文, 芦野 有悟, 渋谷 丈太郎, 岩淵 悟, 西村 俊彦, 植田 信策, 藤村 重文
    1993 年 31 巻 1 号 p. 7-11
    発行日: 1993/01/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    肺癌症例の機能的手術適応を決定する目的で一側肺動脈閉塞試験を施行し, 体表面積当たりの全肺血管抵抗が700dyne以上を呈した32症例に検討を加えた. これらのうち13例に手術を施行し, 19例は機能的適応外として肺切除術は施行しなかった. 手術例と非手術例の間に肺換気機能検査上差異は認められなかった. 患側肺動脈閉塞中, 全肺血管抵抗が800dyne以下の症例では12例中9例に手術を施行し早期死亡例はなかった. 非手術例は高齢者が2例, 腎不全合併例が1例であった. 800dyne以上の症例では, 20例中4例に手術を施行した. 手術施行4例中2例が早期死亡例であった. 以上のことから, これまでの肺切除術の機能的限界としてきた一側肺動脈閉塞試験による体表面積当たりの全肺血管抵抗700dyneを800dyne以下と拡大することが可能との結論が得られた.
  • 淀縄 聡, 塚越 秀男, 黒沢 元博
    1993 年 31 巻 1 号 p. 12-19
    発行日: 1993/01/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    先に筆者らが報告した気道平滑筋の収縮率を気道過敏性の指標と考えても差し支えない式を用い, 9α, 11β-PGF2静脈内投与によるモルモット気道反応性の変化を検討した. 9α, 11β-PGF2を投与すると気道粘膜に浮腫を生じ, ヒスタミン静脈内投与による気道平滑筋の収縮率が増加した. これらの反応はTXA2拮抗薬により抑制されることから, 気道における9α, 11β-PGF2の作用の少なくとも一部は, TXA2を介することが示唆された.
  • サルコイド肉芽腫起因物質としての細菌細胞壁成分の関与について
    宮川 洋介, 麻生 博史, 中西 真之, 重松 信昭
    1993 年 31 巻 1 号 p. 20-25
    発行日: 1993/01/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    扁桃サルコイドーシス3症例の解析から, 扁桃陰窩に増殖菌塊となったα溶連菌がサルコイド肉芽腫の起因物質として関与していると考え, その細胞壁成分 (Streptococcal cell wall: SCW) を用いて肉芽腫形成実験を行った. アジュバントを使わずSCWの水性懸濁液をラットの足蹠に反復投与し, 所属リンパ節に非乾酪性類上皮細胞性肉芽腫を作成し得た. ラットの種により肉芽腫形成能に差があり, 個体差の重要性が考えられた. マクロファージに取り込まれたSCWは, 類上皮細胞へと成熟するにっれて酵素抗体法でSCWの局在が認められなくなり, マクロファージから類上皮細胞への分化は抗原物質の処理過程により進むと考えられた. その過程のSCWの変化所見と推定される電顕像は, サ症腫大リンパ節に認められる Hamazaki-Wesenberg body に類似の形態, 染色性を示した. サルコイド肉芽腫の起因物質にSCWなど細菌細胞壁成分の関与が示唆された.
  • 新井 望, 中田 正幸, 白井 達男
    1993 年 31 巻 1 号 p. 26-31
    発行日: 1993/01/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    縦隔に腫瘤形成を認めた悪性リンパ腫19例について治療成績を検討した. Hodgkin 病7例, 非ホジキンリンパ腫12例で, Ann-Arbor 病期分類にてI期6例, II期4例, III期3例, IV期6例であった. 治療方法は, 原則としてI期には放射線療法 (RT) 後に化学療法 (CHOP療法), II, III期には化学療法 (COP-BLAM療法) 後にRT, IV期では COP-BLAM III 療法を行った. 治療成績は, 全症例では19例中16例 (84.2%) に完全寛解 (CR) を得, 2例 (10.5%) に部分寛解を得た. HDでは100%, NHLでは75%にCRを得, I, II, III期は全例CR, IV期は50%がCRとなった. また, 50%生存期間は全症例で66ヵ月で, I, II期およびIII, IV期症例間, 骨髄浸潤の有無, bulky mass の有無にて危険率5%未満にて有意差を認めた. 縦隔腫瘤形成型悪性リンパ腫はRT及び adriamycin を含む化学療法に良好な成績を示し, 特に骨髄浸潤のない例, bulky mass のない例は予後良好であった.
  • 五十嵐 毅, 西村 正治, 秋山 也寸史, 山本 真, 小林 秀一, 宮本 顕二, 川上 義和
    1993 年 31 巻 1 号 p. 32-36
    発行日: 1993/01/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    肺気腫患者14名に対して, β刺激薬 (fenoterol 0.4mg) 及び抗コリン薬 (oxitropium bromide 0.2mg) 吸入後の呼吸機能と血液ガスに与える影響を検討した. 吸入後45分後の1秒量は fenoterol で平均21%, oxitropium で16%と共に有意な増加を示したが (p<0.01), 両薬剤間で有意差は認めなかった. しかし血液ガス所見では fenoterol のみPaO2が前値74.5±2.6SE Torrから吸入後69.3±2.7Torrへと約5Torr有意に低下した(p<0.01)が, oxitropium では72.4±2.9から71.3±2.4Torrと平均値で変化はなかった. β刺激薬によるPaO2の低下の程度は抗コリン薬吸入後のPaO2の変化とも相関があり, 一方吸入前の呼吸機能諸指標のなかでは%FRCとのみ有意な相関を示し, 1秒量や吸入後改善率との相関はなかった. 以上より肺気腫患者では抗コリン薬と吸入性β刺激薬の気管支拡張効果がほぼ同等であっても, 血液ガスに与える影響という観点からは抗コリン薬が勧められる.
  • 南部 静洋, 毛利 雅美, 松井 みづほ, 岡田 恒人, 小林 有希, 岸本 伸人, 野口 哲彦, 松田 正史, 桜井 滋, 大谷 信夫
    1993 年 31 巻 1 号 p. 37-44
    発行日: 1993/01/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    血管造影剤 (lopamidol: Iopamiron300) と Digital Subtraction 法を用いた気管支造影法 (Digital Subtraction Bronchography: DSBG) の臨床的有用性と副作用について検討した. 気管支拡張症8例, びまん性汎細気管支炎1例, 肺気腫1例, 肺癌1例, その他4例にDSBGを施行した. DSBGは肺癌の中枢気道への浸潤や気管支拡張症の区域気管支レベルの変化とともに, びまん性汎細気管支炎や肺気腫の末梢気道病変の評価についても, 従来の Propyliodone (Dionosil) を用いた気管支造影法と同様の病態解析能が認められた. Digital Subtraction 法を用いることにより気管支造影画像は呼吸や心拍の影響を受けることがなく, 目的とする気管支の情報を選択的に把握することができた. また血管造影剤の使用により気管支造影後の造影剤は2時間後にほぼ排出もしくは吸収され, 従来法のように感染, 出血の合併症は認めなかった.
  • 久保田 公宜, 加賀美 浩, 小川 純一, 八重樫 淳, 平野 春人, 大浦 雅之, 鵜浦 哲朗, 米谷 則美, 毛利 英満, 田村 昌士
    1993 年 31 巻 1 号 p. 45-50
    発行日: 1993/01/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    当教室で開発した圧補正式流量型体プレチスモグラフを用い, アストグラフでの呼吸コンダクタンス (以下Grs) と安静呼吸での特殊気道コンダクタンス (以下sGawqt) を同時に測定可能な装置を開発し, 気管支喘息患者で気道過敏性試験を施行, sGawqt法とアストグラフ法ので閾値を以下のパラメーターで比較した. 1) 気道感受性の指標としてのDmin (反応曲線が直線的の減少し始めるまでの累積メサコリン濃度), 2) 気道反応性の指標であるSsGawqtとSGrs (sGawqt, Grsが減少し始める時の傾き), 3) 前値に対し35%低下するのに必要な累積メサコリン濃度PD35. DminとPD35は, アストグラフ法と比較し, 有意にsGawqt値において, 低濃度で検出し得た. SsGawqtとSGrsには有意差は無かった. 本装置によるsGawqt法での気道過敏性試験は, 気道反応性より感受性を鋭敏に反映している可能性があり, 又侵襲が少なく, より低濃度のメサコリン吸入で気道過敏性試験を施行可能である.
  • 石坂 彰敏, 鈴木 幸男, 金沢 実, 藤田 浩文, 川城 丈夫, 横山 哲朗
    1993 年 31 巻 1 号 p. 51-58
    発行日: 1993/01/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    モルモットにエンドトキシン (LPS) を静脈内投与して急性肺損傷を発生させ, 投与量と生理学的, 血液学的指標値の変化との関連を検討した. LPS投与量は0.2μg/kg, 2μg/kg, 20μg/kg, 200μg/kg, 2000μg/kgの5段階とした. 6時間後に肺組織の採取と気管支肺胞洗浄 (BAL) を行った. 125I標識アルブミンの肺組織への漏出は2000μg/kg投与群でのみ対照群に比べて高値を示した. これに対してBAL3液中の125I標識アルブミンは2μg/kg群から高値を示した. 肺湿乾重量比は200μg/kg, 2000μg/kg投与群で高値を示した. 末梢血好中球数はLPSの投与量に関わらず投与後速やかに減少した. 組織学的に検討した1肺胞あたりの好中球数もLPS投与量にかかわらず高値を示した. BAL液中の好中球数は20μg/kg以上のLPS投与群で高値を示した. 指標によりその変化を惹起するLPS量が異なることがわかった.
  • 早川 啓史, 佐藤 篤彦, 八木 健, 清水 貴子, 宮嶋 裕明, 谷口 正実, 秋山 仁一郎
    1993 年 31 巻 1 号 p. 59-64
    発行日: 1993/01/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    Churg-Strauss 症候群11例 (男1, 女10, 平均年齢・56.3歳) の臨床像と予後を検討した. 全例, 発症前に気管支喘息の先行がみられ, 中高年発症の重症喘息患者はCSS発症のハイリスク・グループとしての側面を持つことが示された. 一方, アトピー素因を有するものは半数以下であった. 再燃例1例を含む延べ12例に主としてステロイド剤が投与され, 9例で血管炎の寛解がみられた (寛解群). 3例は血管炎による臓器障害で死亡し, 死因は2例が心不全, 1例が中枢神経障害であった. 寛解群のうち7例で後療法が施行され, この間に血管炎の再燃をきたしたものはなかった. 後療法が行われなかったか, あるいは後療法が中止された計5例中, 1例に血管炎の再燃がみられた. 以上の結果から, 少なくとも一部症例での後療法の有用性は否定し得ないが, CSSにおけるその適応と方法については, 今後の検討が必要と考えられた.
  • 久保田 馨, 古瀬 清行, 安井 一清, 河原 正明, 稲田 啓次, 山本 暁
    1993 年 31 巻 1 号 p. 65-68
    発行日: 1993/01/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    症例は36歳女性. 左S5原発の肺腺癌で, 胸部レ線上辺縁明瞭な腫瘤影, 高CT値を呈したが, 明らかな石灰化はなく, 術後の病理組織においても骨形成, 石灰化, 砂粒体等は認めず, カルシウム (Ca) 染色 (kossa 法) でも陰性であった. 透過型電顕, エネルギー分散型分析装置を用いた元素分析では腫瘍組織のCa高値で, 腫瘍内に溶解性Ca等マスクされた状態で存在したCaによって高いCT値を呈したものと考えられた.
  • 林 晴男, 植竹 健司, 小野沢 康輔, 岡村 樹, 家城 隆次, 坂巻 壽, 工藤 翔二, 川口 研二, 望月 真
    1993 年 31 巻 1 号 p. 69-75
    発行日: 1993/01/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    70歳男性において, 胸部レ線で air bronchogram を伴う腫瘤影, Sjögren 症候群, IgMκ型 M protein をみとめ, 肺原 malignant lymphoma あるいは pseudolymphoma を疑い, 開胸肺生検を実施した. 切除された腫瘍組織において Southern blot 法による免疫グロブリン Heavy chain のgene rearrangement を検索し, 単クローン性増加を証明した. 細胞異型の乏しいリンパ腫においては, 免疫組織化学による monoclonality の判断がしばしば困難なことがある. これに対し, 遺伝子解析による monoclonality の検索は, より正確かつ確実とされ, 肺原発 malignant lymphoma や pneudolymphoma, LIPなど腫瘍性増殖か否かの判断に苦慮するリンパ球増殖性疾患の鑑別診断上有用であり, 今後積極的に臨床応用していく必要がある.
  • 菅沼 利行, 阿部 良行, 尾関 雄一, 増田 秀雄, 高木 啓吾, 菊地 敬一, 尾形 利郎, 田中 勧, 玉井 誠一
    1993 年 31 巻 1 号 p. 76-78
    発行日: 1993/01/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    サルモネラ菌による膿瘍の形成は, 近年では稀なものとなっている. 今回我々はサルモネラ菌による胸壁膿瘍の1手術例を経験したので文献的考察を加え報告する. 症例は18歳の女性で, 右前胸部の有痛性腫瘤を主訴に当科に入院した. 胸部CT, Gaシンチグラフィーなどにより胸壁腫瘍が疑われ, 手術を施行したが, 術中迅速病理診断にて膿瘍と診断され, 膿の細菌培養により Salmonella newport が検出された. 術後経過は良好で現在も経過観察中である.
  • 平島 智徳, 大畑 一郎, 玉野井 優水, 児嶋 真治, 荒木 良彦, 川幡 誠一, 木村 謙太郎, 花本 澄夫, 越智 規夫, 菊井 正紀
    1993 年 31 巻 1 号 p. 79-83
    発行日: 1993/01/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    気管支結石症は本邦において森, 篠井らの報告以来140例報告されている. 今回我々は気管支拡張症に慢性呼吸不全を合併し急性増悪の為死亡, その後剖検となった57歳男性の症例を経験した. 剖検の結果, 両側肺の下葉を中心に多発する気管支結石を認めた. 肺内肺門縦隔リンパ節, 他臓器の石灰化を認めなかった. 本例の気管支結石は層状構造を示し, 弾力線維染色および銀線維染色でリンパ節や肺組織をうかがわせる所見を認めず,拡張した気管支に一致して形成されていた. 以上の所見から本例は気管支拡張症の粘液貯留に起因する多発性気管支結石と考えられた. 同様の症例は検索した範囲では認めず, 極めて稀な症例と思われた. また結石の成分は炭酸カルシウム78%, 蛋白質22%であった. 分泌物貯留に起因する気管支結石では, 炭酸カルシウムを主成分にすることが多いという報告に一致した.
  • 金子 教宏, 山田 峰彦, 大塚 英彦, 秋澤 孝則, 成島 道昭, 田中 一正, 刑部 義美, 鈴木 一, 野口 英世, 鈴木 真
    1993 年 31 巻 1 号 p. 84-87
    発行日: 1993/01/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    一過性脳虚血発作を初発症状として発見された両側多発性肺動静脈瘻に対し, Detachable balloon を用いて肺動脈塞栓術を施行した. 症例, 31歳男性. 右上下肢の筋力低下を主訴に来院. 低酸素血症・多血症・労作時呼吸困難を認め, 肺動脈造影にて右A3・左A6・A8・A10に肺動静脈瘻を認めた. 心臓カテーテル検査ではシャント率は25.8%であった. 本症例に対して Detachable balloon を用いた肺動脈塞栓術を施行した. その結果, 自覚症状・血液ガスデータ・シャント率の改善を認め, 本法は肺動静脈瘻に対して有効な治療法と考えられた. 本症例のような両側・多発性に肺動静脈瘻が存在する場合肺動脈塞栓術は有用な治療法と思われた.
  • 福岡 和也, 堅田 均, 鴻池 義純, 成田 亘啓, 飯岡 壮吾
    1993 年 31 巻 1 号 p. 88-93
    発行日: 1993/01/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    症例は重喫煙と粉塵曝露歴のある75歳の男性で右背部痛を主訴として当科を受診した. 皮膚には Café au lait spots, びまん性色素沈着および多発性神経線維腫を認め, von Recklinghausen 病と診断した. 胸部X線写真では右S2に腫瘤影を認め経皮肺生検から肺大細胞癌cT3N0M0 stage IIIA と診断し, 胸壁浸潤部位を中心として原発巣に放射線照射後, 右上葉および胸壁合併切除術を施行した. 切除標本の肉眼的所見では腫瘍組織は外肋間筋まで浸潤していたが, すべて壊死組織に置換していた. 術後約3年間再発微候なく経過したが, 肺炎による呼吸不全で死亡した. 本邦における肺癌合併 von Recklinghausen 病は1972年以降, 本症例を含めて18例報告されているが, 年齢, 性別では40~50歳代の男性が多く, 肺癌病巣の局在は右肺に, 組織型では腺癌が多い傾向にあった. 予後は7例が治療開始後1年以内に死亡しており不良であった.
  • 千葉 渉, 松原 義人, 澤井 聡, 小西 孝明, 石田 久雄, 塙 健, 小鯖 覚, 池田 貞雄
    1993 年 31 巻 1 号 p. 94-98
    発行日: 1993/01/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    23歳の女性が縦隔腫瘍の診断で入院した. 無月経の訴えから腹部超音波検査を施行したところ, 子宮の欠如が指摘された. 染色体分析では46XYであった. 左腎静脈造影検査では, ミューラー管由来の血管系の残存が確認された. 開胸手術と開腹手術を行い, 縦隔腫瘍と睾丸の摘出術を行った. 縦隔腫瘍は神経鞘腫であり, 睾丸はセルトーリ細胞の増成を認めたが, 精子形成はなかった. 両者ともに悪性所見はなかった. アンドロゲンレセプターは陰性であり, レセプター欠落型の睾丸性女性化症候群と診断した. 睾丸性女性化症候群と性腺の悪性腫瘍との関連は報告されているが, 神経鞘腫などの良性腫瘍との関連は報告されておらず, 興味ある症例と考え報告する.
  • 中村 嘉典, 駿田 直俊, 西尾 誠人, 上谷 光作, 小林 尚, 伊藤 浩二, 船迫 真人, 大畑 雅洋
    1993 年 31 巻 1 号 p. 99-102
    発行日: 1993/01/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    53歳の女性. 40歳より経口避妊薬を服用. 1年前よりときどき起きていた上腹部痛が再発し, 増悪してショック症状を呈し来院. 服薬歴, 臨床症状, 心電図, 胸部X線写真, 肺動脈造影などから肺塞栓症と診断した. 肺血流シンチグラムで右肺動脈の多発性血流欠損が確認された. 右心カテーテル検査で著明な肺高血圧を認め抗凝固療法を行ったが第28病日の右心カテーテル検査でもなお肺高血圧を認め, また低酸素血症が残存しているため, 長期予後に酸素療法が有効と考え在宅酸素療法を開始した. 今後経口避妊薬が汎用されるにつれ肺塞栓症の増加が危惧され, その使用に関しては服用者に対する血栓症についての充分な説明と発症予防のための定期検診の徹底が必要である. また, 出産年齢の女性が胸部症状やショック症状を呈したときは, 肺塞栓症を念頭においた詳細な病歴聴取が肝要であると考えられた.
  • 中村 祐之, 橋爪 一光, 笠松 紀雄, 川名 秀忠, 半澤 儁, 佐々木 一義, 岡本 一也, 小澤 享史
    1993 年 31 巻 1 号 p. 103-108
    発行日: 1993/01/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    症例は45歳, 男性. 血痰を主訴に入院. 胸部X線上右S3に腫瘤影を指摘され, 精査したが確定診断を得られず, 右上葉切除術を施行し, 切除肺の病理組織標本で, 肺放線菌症と診断された. 本邦では1964~1991年の間に52例の肺放線菌症の報告例があるが, それらの疫学, 診断法, 画像診断に関し若干の文献的考察を加えた.
  • 伊藤 寧, 本田 泰人, 寺本 信, 中川 晃, 浅川 三男, 草島 勝之
    1993 年 31 巻 1 号 p. 109-111
    発行日: 1993/01/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    症例は29歳, 女性. 近医にて右胸水を指摘され精査のため入院. 胸腔穿刺で得られた胸水は乳糜であった. 保存的治療で軽快せず, 胸管結紮術を施行し治癒した. 開胸時にも乳糜胸をきたした原因となる疾患は認められず, 特発性乳糜胸と診断した. 成人の特発性乳糜胸はわれわれの調べた限りでは本例を含めて24例で, それらを集計して報告した.
  • 乳糜胸の発生機序についての新考察
    高見 昭良, 藤村 政樹, 中尾 真二, 安井 正英, 柴田 和彦, 中積 泰人, 松田 保
    1993 年 31 巻 1 号 p. 112-116
    発行日: 1993/01/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    症例は51歳男性で, 非ホジキンリンパ腫の化学療法施行中に乳糜胸が出現した. 本症例では, 1) リンパ管造影で横隔膜部を境にして上部の胸管は描出されず, それ以下では側副路と思われる造影剤の網状放散像を認め, 2) 縦隔リンパ節腫脹が化学療法後著明に縮小したにもかかわらず乳糜胸が発生した.これらの所見は, 従来いわれている胸部胸管の障害以外に, 横隔膜部以下のリンパ節による腹部胸管の閉塞と, それに伴う胸管から胸腔へ通じる横隔膜を貫通したリンパ側副路の発達により乳糜胸が生じたことを示唆する.
  • 吉井 千春, 濱田 正勝, 田尾 義昭, 佐々木 昌勝, 岡本 隆史, 小畑 秀登, 二階堂 義彦, 永田 忍彦, 白日 高歩, 城戸 優光
    1993 年 31 巻 1 号 p. 117-122
    発行日: 1993/01/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    症例は61歳の男性. 平成3年9月健診にて胸部X線写真上, 両下肺野のびまん性網状影と右下肺野の小結節影を指摘され, 精査目的で10月8日当科入院となった. 入院後TBLBを行ったが診断がつかず, 画像上肺癌合併の間質性肺炎を否定できなかったため開胸肺生検を施行した. 病理組織では, 右下肺野の結節影は中下葉間に面したS6の胸膜直下に存在する肺内リンパ節で, 炭粉沈着と珪肺結節を伴っていた. また肺組織には線維化が斑状に存在し, usual interstitial pnenmonia (UIP) の病理組織像として矛盾なく, 診断基準と合わせて idiopathic interstitial pneumonia (IIP) と診断した. IIPに合併した肺内リンパ節の症例はこれまでに報告がなく, リンパ節内の炭粉沈着や珪肺結節の存在と合わせて考えると, 喫煙ならびに低濃度の粉塵曝露がこれらの発生に関与している可能性が考えられた. また肺内リンパ節は肺癌との鑑別に重要な疾患のひとつと思われた.
  • 梅木 茂宣
    1993 年 31 巻 1 号 p. 123-126
    発行日: 1993/01/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    2ヵ月前に感冒の既往を持つ65歳の男性で, 胸部異常影の精査のために当科外来に紹介された. 胸部X線像, TBLB標本の病理組織像より inflammatory pseudotumor (plasma cell granuloma) と診断した. 腫瘤影は6週間のステロイド剤漸減療法にてほぼ完全に治癒した. 今までに報告された本症は全て手術例であり, 本症例は内科的に診断ができ, ステロイド剤にて治療できた貴重な1例と考えられた.
  • 星野 秀樹, 中野 秀彦, 湊 浩一, 江沢 一浩, 笛木 直人, 武井 義和, 成清 一郎, 野本 泰介, 牧元 毅之, 栗原 正英
    1993 年 31 巻 1 号 p. 127-131
    発行日: 1993/01/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    症例は73歳, 男性. 右肺中葉原発の肺小細胞癌 (燕麦細胞癌), 臨床病期T2N1M0, Stage II, limited disease で, 抗利尿ホルモン分泌異常症候群 (以下, SIADH) を伴って発症し, 初回化学療法, 即ち, Cyclophosphamide, ACNU, Vincristine および Adriamycin, Cis-platinum, Etoposide による化学療法で完全寛解となり, 約2年後と5年後, 5年半後, 6年後に計4回, SIADHを伴い局所再発したが, いわゆる維持療法は行わず, 再発時に初回と同様の化学療法を行ったのみでその度奏効し, 初回化学療法後約7年 (6年11月) 生存し得た1症例を経験したので, 文献的考察を加え報告した.
  • 市木 拓, 矢野 守, 宍戸 道弘, 西谷 一志, 高次 寛治, 西山 誠一
    1993 年 31 巻 1 号 p. 132-137
    発行日: 1993/01/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    胸部CTで石灰化を認めた肺癌の3症例を報告する. 症例1は肺扁平上皮癌の63歳男性. 胸部CTで腫瘍中心部に著明な石灰化を認めた. 症例2は肺小細胞癌の57歳女性. 胸部CTでは腫瘍内部にびまん性の不定型の石灰化を認めた.症例3は70歳男性で組織型不明の肺癌であるが, 胸部CT写真で腫瘍内部の空洞壁に点状, 線状の石灰化を認めた. 症例1と2は組織学的には dystrophic calcification と考えられた. 一般に画像診断上, 腫瘤状陰影内部の石灰化は良性疾患の所見とされてきたが, 本症例のように胸部CT写真では肺癌でも石灰化を見ることがあり, 診断には注意を要する.
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