日本胸部疾患学会雑誌
Online ISSN : 1883-471X
Print ISSN : 0301-1542
ISSN-L : 0301-1542
31 巻, 7 号
選択された号の論文の19件中1~19を表示しています
  • 浅野 浩一郎, 山口 佳寿博, 河合 章, 森 正明, 高杉 知明, 梅田 啓, 川城 丈夫
    1993 年 31 巻 7 号 p. 795-801
    発行日: 1993/07/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    過酸化水素による肺血管収縮・弛緩反応の機序をラット肺動脈輪状標本を用いて検討した. 肺動脈は10-6Mから10-4Mの過酸化水素により濃度依存性に一過性に収縮した. この収縮反応は内皮非依存性であり, またカタラーゼにより消失した. トロンボキサンA2合成酵素阻害剤OKY-046は過酸化水素による肺動脈収縮反応を部分的に抑制した. 一方, トロンボキサンA2ならびにプロスタグランジンH2受容体拮抗薬ONO-3708は過酸化水素による収縮反応を完全に抑制し弛緩反応のみを誘発した. シクロオキシゲネース阻害薬インドメサシンは過酸化水素の収縮ならびに弛緩反応の両者を完全に抑制した. また過酸化水素は内皮を除去した肺動脈からの6-ケトプロスタグランジンFの放出を亢進させた. 以上より過酸化水素は肺動脈の中膜, 外膜のシクロオキシゲネース系代謝を亢進させトロンボキサンA2ならびにプロスタグランジンH2を介した一過性肺動脈収縮とプロスタサイクリンに起因する肺動脈弛緩を同時に発現させるものと結論した.
  • 鈴木 和恵, 立花 昭生, 畠山 忍, 岡野 弘
    1993 年 31 巻 7 号 p. 802-808
    発行日: 1993/07/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    空洞内に液面形成を示した肺アスペルギルス症17例を臨床的に検討した. その発生頻度は, 1983年から1991年に焼津市立総合病院で肺アスペルギルス症と診断された44症例のうち39%であった. 液面形成の発現時期により, 2つのパターンが存在する. 初発症状と同時に出現する場合と, 治療中に菌球が消失するときに出現する場合である. 前者は14例で, 強い症状と炎症反応を示した. 後者は3例で, 軽度の咳嗽と血痰を認めるのみであった. 3例中2例で, 最終的に液体も消失した. 初発時より液面形成を示すもので, 菌球型や壁在性増殖型への移行を示したものもあった. 以上より本病型は早期診断, 早期治療に重要と考え, 液面形成型肺アスペルギルス症として提唱したい.
  • 新美 岳, 長谷川 由美, 杉浦 芳樹, 飯島 直人, 吉川 公章, 西脇 洋, 森下 宗彦
    1993 年 31 巻 7 号 p. 809-815
    発行日: 1993/07/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    メチシリン耐性黄色ブドウ球菌 (Methicillin-resistant Staphylococcus aureus, MRSA) 喀痰排菌症例の臨床像を明らかにするため, 1990年, 91年の2年間の喀痰MRSA喀出症例116例を, 暫定的診断基準により気管支肺感染群, 気管支肺感染疑い群, 定着群の3群に分類し検討した. 各群で年齢分布や菌の薬剤感受性に差異はみられなかった. 基礎疾患は脳血管障害, 肺癌, 慢性閉塞性肺疾患 (COPD) が多く, 感染の発症は悪性, 非悪性にかかわらず肺疾患に多かった. 危険因子の検討では感染発症の有意な因子はみいだせなかった. 感染群での死亡者は Performance Status (PS) 3以上に有意に多くみられた. また治療後もMRSA排菌は高率で持続排菌し, 抗菌剤全身投与に抗菌剤吸入を併用しても菌消失の改善は認められなかった. 基礎疾患, 病態による気道消毒や抗菌剤投与の適切な選択と共に, 当初より定着患者を作らないための環境対策が大切である.
  • 特にK+と無機燐 (Pi) を中心に
    岩田 祥吾, 長尾 光修, 一和多 俊男
    1993 年 31 巻 7 号 p. 816-825
    発行日: 1993/07/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    健常成人8名に運動負荷を行い, 毎分動脈血Na, K, Cl, Ca, Pi, 乳酸を, 換気量, 酸素摂取量, 炭酸ガス排出量と共に測定し, 運動時の電解質変動について検討した. Na, Cl, Caは運動終了前後の数分で有意の増加を認めたが, 14%の血漿濃縮度を考慮するとK, Piと乳酸のみ有意な増加であった. 漸増運動時にKは換気量との間に有意な正の相関を認め (r=0.994, p<0.0001), 終了後2分では運動開始前値以下に低下した. VEとKのVO2に対する変曲点は全例でVE変曲点がK変曲点より早期に出現し, 運動時換気刺激因子としてKに加えその他の因子の存在を示唆すると考えられた. 乳酸とPiは運動開始後それぞれ5分, 8分目から有意に増加し運動終了後も高い値を維持した. しかし運動負荷早期には, Piは乳酸と異なりVE増加と共に上昇しVEとの間に有意な正の相関を認めた. 血漿Piの増加は乳酸性アシドーシス以外の運動筋の代謝状況も反映しているものと考えられた.
  • 安藤 守秀, 高木 健三, 原 通廣, 堀場 通明, 進藤 丈
    1993 年 31 巻 7 号 p. 826-832
    発行日: 1993/07/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    在宅酸素療法中の肺結核後遺症患者の予後に影響する因子のうち, 特に活動能力の影響を解析するため, 大垣市民病院で在宅酸素療法を実施された肺結核後遺症患者のうちから, 特に活動能力の低いもの (低活動能力群) 10名と, それに年齢, %VC, PaO2の一致する, 活動能力の保たれている患者 (対照群) 10名とを選択し, この2群について生命予後, 在宅率の比較を行った. その結果, 低活動能力群は対照群と比し在宅率, 累積生存率とも有意に低値を示し, 活動能力の低下が%VC, PaO2とは独立にこれらの患者の予後と関連していることが明らかとなった. この活動能力の低下は, 呼吸困難度及びPaCO2と関連していたが栄養状態とは有意の関連を認めなかった. 在宅酸素療法中の慢性肺気腫患者についても同様の解析を行ったが, これらの患者では年齢, FEV1, PaO2の影響を除外すると, 活動能力の低下と予後とは明らかな関連を認めなかった.
  • 内堀 繁康
    1993 年 31 巻 7 号 p. 833-839
    発行日: 1993/07/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    食道静脈瘤を合併した肝硬変患者14名17症例 (延べ17回, 男10名, 女4名) に待機的に食道静脈瘤硬化療法 (Endoscopic injection sclerotherapy) を施行し, その前後で動脈血液ガス分析, 99mTc-MAA肺血流シンチグラフィーを行い肺循環系への影響を比較検討した. 硬化剤として5%Ethanolamine oleate (EO) を用い血管内注入法にて施行した. 動脈血液ガス分析上, 17例の平均で, PaO2はEIS施行前84.0±10.2Torrが施行後71.3±11.1Torr (p<0.02) へ低下し, SaO2はEIS施行前96.3±1.2%が施行後94.3±2.6% (p<0.02) へ低下し, AaDO2はEIS施行前22.2±10.4Torrが施行後34.3±12.0Torr (p<0.002) へ開大し, それぞれ有意差を認めた. 肺血流シンチグラムでは, 17例中11例 (64.7%), サブトラクション法にて15例 (88.2%) と高率に血流低下, 欠損を認めた. これらの所見より, EIS後に無症状であっても肺血流障害が生じることが判明した.
  • 宮川 トシ, 浜上 小夜, 大畑 一郎, 越智 規夫, 岸本 進
    1993 年 31 巻 7 号 p. 840-847
    発行日: 1993/07/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    夏型過敏性肺臓炎 (SHP) 患者気管支肺胞洗浄 (BAL) 液中の抗 Trichosporon および抗 Cryptococcus 抗体産生細胞 (AFC) を, enzyme-linked immunospot (ELISPOT) 法で測定した. SHP患者のBALには抗 Trichosporon および抗 Cryptococcus IgG, IgA, IgMアイソタイプAFCが検出され, AFCの数はIgA>IgM>IgGであった. BAL細胞培養上清には, IgG, IgA, IgM抗体が検出され, AFCが多い症例は培養上清の抗体活性が高かった. IgAAFC数と培養上清のIgA抗体活性は相関した (r=0.96, p<0.001). 末梢血単核細胞 (PBMC) をPWMと培養すると培養上清に特異抗体が検出された.
    本研究により, SHP患者の肺では active に抗体産生が行われ, 産生された特異抗体の大部分は T. cutaneumC. neoformans の共通抗原を認識する. 末梢血にはメモリーB細胞が存在することが示唆された.
  • 芦野 有悟, 谷田 達男, 小野 貞文, 舟田 仁, 藤村 重文, 小池 加保児
    1993 年 31 巻 7 号 p. 848-852
    発行日: 1993/07/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    犬臓側胸膜の透過係数 (Hydraulic conductivity, k) を in situ にて測定した. 雑種成犬7頭を左第7肋間にて開胸した. 生理食塩水を満たした半球状のカプセルを排気ポンプに接続して臓側胸膜に吸着させた. カプセル内圧cmH2O (ΔP=0, -5, -10, -20) を変化させ, 胸膜を介した液体の流量 (V) を測定した. Kは Starling の式から, vとΔPから得られる一次回帰直線の傾きで求められ, 1.49±0.68 (平均±SD) mL・min-1・cmH2O-1・cm-2であった. この値はこれまで in vivo で求められた胸膜の透過係数の値の中では最小であった. 今後我々の方法により胸水代謝のメカニズムの研究に有用であることが示唆された.
  • 朝田 完二, 大串 文隆, 谷 憲治, 安岡 劭, 小倉 剛, Saburo Sone
    1993 年 31 巻 7 号 p. 853-858
    発行日: 1993/07/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    肺の線維化の機序解明を目的として, ブレオマイシン肺線維症発症における肺胞マクロファージの役割に注目し, 肺胞マクロファージの産生するIL-1について検討した. ラットにブレオマイシンを経気管的に投与後経時的に肺胞マクロファージを採取し, 分泌型IL-1と細胞結合型IL-1活性を測定し, 抗IL-1α, β抗体を用いてIL-1活性を確認した. また, 固定した肺胞マクロファージに肺線維芽細胞を加え, 増殖を3H-TdRの取り込みで測定した. 分泌型IL-1活性の増加はブレオマイシン投与1日目の培養上清のみに認められたが, 細胞結合型IL-1活性の増加は3日目以後にも認められ, 抗IL-1α抗体で中和された. この肺胞マクロファージを肺線維芽細胞と培養すると, 細胞結合型IL-1活性が強い程肺線維芽細胞の増殖を抑制し, 抗IL-1α抗体でその抑制は中和された. 以上より肺線維化の制御には細胞結合型IL-1が重要な役割を演じていることが示唆された.
  • 高橋 典明, 升谷 雅行, 堀江 孝至
    1993 年 31 巻 7 号 p. 859-866
    発行日: 1993/07/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    癌細胞に対する肺胞マクロファージの傷害機構にサーファクタントがどのように関与するかを検討するため, マウス肺胞マクロファージを用いてルイス肺癌細胞に対する抗腫瘍活性をサーファクタントの存在, 非存在下に測定し, TNF活性とアルギニン依存性腫瘍破壊機構についても検討した. さらに, 細胞内情報伝達に関するイノシトールリン脂質代謝系のイノシトール1, 4, 5三リン酸とジアシルグリセロールを測定し, サーファクタントによる影響を検討した. その結果, サーファクタントにより肺胞マクロファージのルイス肺癌細胞に対する抗腫瘍活性は増強され, TNFやアルギニン依存性腫瘍破壊機構も活性を増強した. それらは, マクロファージの活性化段階の増強であり, 細胞内伝達系のセカンドメッセンジャーであるジアシルグリセロールの産生増加に関連するものと考えられた.
  • 勝田 勢津子
    1993 年 31 巻 7 号 p. 867-871
    発行日: 1993/07/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    69歳女性. 盲腸癌の手術時に右中葉の浸潤影を発見された. 10ヵ月後, 陰影の増大とマクログロブリン血症のため入院精査した. 経過観察中, 他の部位に悪性リンパ腫の発症はなく, 全身67Gaシンチ, CT検査等でも他に原発部位は認められなかった. 経気管支肺生検による組織診とBALF中のIgM高値 (IgM/AlbはBALF中で血中の2.75倍) より肺原発悪性リンパ腫と考えた. CHOP療法は奏効せず, 右中葉切除術も上, 下葉への浸潤のため施行できなかった. 開胸時の生検組織にてびまん性小細胞型 (B細胞性IgMκ型) と判明し, 放射線療法にて陰影は消失した. 本症例は他の悪性腫瘍を合併した肺原発悪性リンパ腫でありマクログロブリン血症を伴っていた. 又, 経気管支肺生検とBALによって術前診断が可能であった.
  • 中田 晴雄, 末岡 尚子, 青木 洋介, 黒木 茂高, 加藤 収, 山田 穂積
    1993 年 31 巻 7 号 p. 872-875
    発行日: 1993/07/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    22歳の女性で, 喘鳴と呼吸困難および胸部X線写真で右上中肺野を占拠する巨大腫瘤陰影のため, 当科に入院した. 経皮的肺生検と腫瘍摘出術を受けたが, 腫瘍の壊死性変化が強く, 病理学的診断にいたらなかった. その後, 肺内に転移によると思われる多発性の結節影が出現し, 急速に増大した. 剖検所見によって, 骨外性 Ewing 肉腫と診断された. 骨外性 Ewing 肉腫は稀な疾患ではあるが, 若年者の胸壁や縦隔などから発生し, 急速に増大して胸腔内に巨大な腫瘤陰影を呈することがあるので, 注意を要すると思われた.
  • 西 耕一, 明 茂治, 大家 他喜雄, 藤村 政樹, 松田 保
    1993 年 31 巻 7 号 p. 876-880
    発行日: 1993/07/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    症例は55歳の材木業に従事していた男性で, 昭和61年5月に右前胸部痛を主訴として当院を受診した. 胸部X線写真にて胸膜肥厚および石灰化を指摘され, 開胸胸膜生検にて慢性胸膜炎との組織診断が得られた. 同時に, 胸部X線CTでは, 胸部大動脈周囲に線維化病変と考えられる soft tissue density lesion が認められ, 顕微鏡的血尿も指摘されたが, 原因は明らかにできなかった. 昭和63年12月より排尿障害が顕著となり, 平成元年1月に泌尿器科を受診すると, 後腹膜線維症によると考えられる両側尿管狭窄のため, 両側水腎症をきたしていることが判明した. この後腹膜病変は, 当初認められた胸部大動脈周囲の線維化病変と類似の画像所見を示しており, 後腹膜腔に同様な線維化病変が出現したものと考えられた. このような病態の原因は不明だが, 胸膜の線維化病変を先行病変とし, 後に後腹膜病変が生じる病態はきわめて稀なものと考えられたため, 文献的考察を加え報告した.
  • 宍戸 真司, 鳥谷 武昭, 中野 博子, 徳島 武
    1993 年 31 巻 7 号 p. 881-885
    発行日: 1993/07/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    症例は46歳男性でタクシー運転手. 小学3年生の時より粟粒結核として治療を受けていたが, 昭和32年小学6年生時に開胸肺生検にて汎発性肺胞微石症と診断された. その時点では, 気腫性ブラはなく肺胞壁は軽い肥厚がみられたのみであった. 34年後の平成2年10月24日, 急に呼吸困難を感じ胸部X線写真にて右側自然気胸を認めた. 治療目的のための胸腔鏡にて多発性気腫性嚢胞を確認した. 嚢胞の数が多く胸腔鏡下フィブリン糊治療適応外であったため, ドレナージ後ブロンカスマ・ベルナ注入療法を行った. 自然気胸治癒後の動脈血ガス所見ではPO265.4torr, PCO232.8torrと低酸素血症を呈し, 肺機能検査では拘束性障害がみられた. 確定診断後, 34年の間に気腫性嚢胞が進行し, 自然気胸を生じ且つ肺の線維化も進展していた. 肺胞微石症は病変の主座が肺胞腔内であることより, 画像診断上 air-bronchogram の所見が重要な鑑別点の一つであることを強調する.
  • 久保田 勝, 相馬 一亥, 鈴木 道弘, 花田 伸英, 高田 信和, 楠原 範之, 小林 弘祐, 矢那瀬 信雄, 阿部 直, 冨田 友幸
    1993 年 31 巻 7 号 p. 886-889
    発行日: 1993/07/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    パルスオキシメータによって経過観察することができた急性アニリン中毒によるメトヘモグロビン血症の1例を報告した. パルスオキシメータ, 自動血液ガス分析装置およびCOオキシメータを用いて同時に測定したそれぞれの動脈血酸素飽和度の値は, メトヘモグロビンが高値の時, 解離を認め, メトヘモグロビンの低下とともに近づく傾向を示し, 最終的には, ほぼ一致した. また, メチレンブルー静注時にパルスオキシメータによる動脈血酸素飽和度の値は一過性に低下した. パルスオキシメータは臨床的に有用なモニターであるが, 種々の誤差要因を考慮して使用すべきと考えた.
  • 茂木 充, 高柳 昇, 山洞 善恒, 生方 幹夫, 今井 進, 鈴木 忠, 中島 孝, 吉田 一郎
    1993 年 31 巻 7 号 p. 890-895
    発行日: 1993/07/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    47歳の女性. 33歳の時に子宮筋腫の診断で子宮全摘術・片側卵巣摘除術を受けた. 胸部X線写真にて2年前より多発肺腫瘤影が増加. 増大してきたため当科に入院した. 入院時, 左鼠径部に腫瘤を触れ, その摘出標本の組織像では軽度に核異型性のある平滑筋細胞が束状に錯走し, ごく稀に核分裂像が認められた. 開胸肺生検では, 肺腫瘤は鼠径部のものと同様の平滑筋細胞からなり, 核分裂像は見い出せなかったが, 核異型性を認めたため, 低悪性度平滑筋肉腫の転移, いわゆる benign metastasizing leiomyoma と診断した. 組織中のプロゲステロンレセプターが400fmol/mgと高値であったためプロゲステロンを投与したところ肺腫瘤は縮小した. 本症は低悪性度子宮平滑筋肉腫の肺転移と考えられている稀な疾患である. 本例では組織中にホルモンレセプターが証明され, プロゲステロン投与にて腫瘍が縮小したので報告した.
  • 多部田 弘士, 森谷 哲郎
    1993 年 31 巻 7 号 p. 896-902
    発行日: 1993/07/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    14歳, 女性. 肺炎を契機に発見された先天性右肺動脈欠損の1例. 胸部X線上, 右胸郭は縮小し縦隔が右方偏位し右肺門は狭小化していた. 肺血流シンチグラフィーで右肺の血流は欠損し肺動脈造影で右肺動脈は全く造影されなかった. 胸部造影 computed tomography (CT) と magnetic resonance imaging (MRI) により右肺動脈主枝の欠損が確認され, 後天的に一側肺動脈の完全閉塞を来たす疾患との鑑別上有用であった. 胸部CTで患側肺野に肺動脈陰影が認められ radioisotope (RI) アンギオグラフィーにより患側肺の血流は体循環系より供給されることが分かったが, 右気管支動脈造影と大動脈造影で異型体型肺動脈は確認できなかった. 133Xeによる肺換気・血流シンチグラフィーで患側肺の換気が確認されたが, 患側の換気と血流はガス交換に関与しないと推察された. 本例は心血管奇形と肺高血圧を合併していないため予後良好と考えられた.
  • 荒木 信泰, 松本 浩平, 生田 順也, 安藤 守秀, 滝 文男, 鈴木 隆二郎, 高木 健三
    1993 年 31 巻 7 号 p. 903-907
    発行日: 1993/07/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    症例は, 63歳, 男性. 平成3年2月, 原発性肺癌 (扁平上皮癌) のため右上葉切除術後に化学療法 (カルボプラチン, イフォマイド, エトポシド) を施行し, その後エトポシド (25mg/日) とPSKを服用していたが, 平成3年8月, 労作時呼吸困難, 微熱, 咳嗽を主訴に入院した. 精査の結果, 著明な低酸素血症を呈する間質性肺炎であり, エトポシドの服用を中止したところ微熱は消失し, PaO2の改善もみられた. 経気管支肺生検では胞隔の浮腫とII型肺胞上皮細胞の著明な増生が認められ, 細胞毒性による反応であることを示唆していた. なお, 低酸素血症が続くためパルス療法を施行した. その後は順調に回復し, 9月退院となった. エトポシドの血中およびBALF中リンパ球幼若化反応 (DLST) は陰性であったが, 臨床経過および組織学的所見よりエトポシドによる間質性肺炎と診断した. エトポシドによる間質性肺炎の報告はまだなく貴重な症例と考えられた.
  • 岩橋 徳明, 中野 孝司, 湯浅 隆司, 前田 重一郎, 相原 信之, 竹中 雅彦, 波田 寿一, 東野 一彌
    1993 年 31 巻 7 号 p. 908-912
    発行日: 1993/07/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    症例は49歳女性. 咳嗽, 喀痰, 呼吸困難で某医を受診した. 気管支喘息との診断で経過中, 胸部X線写真で肺炎像を指摘され, 抗生剤投与を受けるも改善しなかったため, 当科に入院となる. 胸部X線写真で移動性で多発性の浸潤影を認めたこと, 末梢血好酸球の著明な増加を認めたこと, Candida albicans に対する即時型皮内反応と特異的IgE抗体が陽性であったことより, アレルギー性気管支肺カンジダ症と診断した. amphotericin B の吸入と methylprednisolone の内服によって速やかに改善し退院したが, ステロイドの投薬を中止すると再燃した. そのため beclomethasone dipropionate と procaterol hydrochroride の併用吸入療法を開始し, 3週間後喘息発作, 胸部浸潤影ともほぼ消失した.
feedback
Top