日本胸部疾患学会雑誌
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31 巻, 8 号
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  • 伸展固定肺標本による予備実験とその検討
    関根 郁夫, 瀧澤 弘隆, 大滝 雅之, 篠崎 克己, 内山 隆司, 喜尾武 邦雄
    1993 年 31 巻 8 号 p. 913-919
    発行日: 1993/08/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    伸展固定肺標本を用いて, CT三次元表示法を呼吸器へ応用した場合の問題点について検討した. スライス厚・間隔は, 1.5mm厚・1.5mm間隔でスライス間の段差が目立たない滑らかな画像が得られた. CT値の閾値は, CT window 幅を広く取るように設定すると細かい部分まで描出が可能となるが, 反面ノイズの多い画像となり, 各構造を保ちながらノイズの少ない画像を得るのは困難であった. スライス面は管状の構造物に関してはその軸方向とより垂直に近く設定した方がより良好な解像力が得られた. 実際の症例を検討したところでは, 残念ながら十分満足のいく解像力を持った画像は得られなかったが, helical CT やMRIでの応用など, 今後生体への臨床応用の道も開けていくものと思われる.
  • 宮澤 輝臣, 土井 正男, 峯下 昌道, 倉田 宝保, 北口 聡一, 古川 典子
    1993 年 31 巻 8 号 p. 920-923
    発行日: 1993/08/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    抗結核薬の薬物アレルギーを示した19例の診断におけるリンパ球刺激試験 (LST) の有用性を評価するため誘発試験 (CT) と比較し検討した. 19例の薬物の種類別はINH7, RFP8, SM7, EB5, PAS3であった. LSTとCTとの比較ではLST陽性例のCT陽性例との一致率は84.2%であった. さらにLST疑陽性例まで含めると一致率は77.8%であった. 問題点としてはLSTの偽陰性例が, 30.0%に認められ, 特にEB, PASではその傾向が強くこの薬物ではLSTが陰性でもCTを施行せざるを得ないと考えられた. またLSTの重複陽性例が26.3%に認められ, これは薬物に対する非特異的な反応亢進の可能性も考えられ, 偽陽性が疑われたらCTを施行して確かめた方がよいと思われた. 以上, 注意して評価すればLSTは結核の化学療法における薬物の選択・変更をする指標として臨床的に有用と考えた.
  • 長谷川 直樹, 石坂 彰敏, 金沢 実, 浦野 哲哉, 佐山 宏一, 鈴木 幸男, 仲村 秀俊, 坂巻 文雄, 田坂 定智, 川城 丈夫
    1993 年 31 巻 8 号 p. 924-931
    発行日: 1993/08/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    大腸菌敗血症による急性肺損傷における血漿および気管支肺胞洗浄 (BAL) 液中のミエロペルオキシダーゼ (MPO) 活性および過酸化脂質測定の意義をモルモット実験系で検討した. 生理的食塩水を投与した対照群と大腸菌 (2×109) を投与した大腸菌群の2群で比較検討した. 過酸化脂質をチオバルビタール酸反応物質 (TBARM) として求めた. 肺損傷の指標である肺組織湿乾重量比 (W/D) および125I-アルブミンの血漿に対する肺組織の濃度比 (AL) は大腸菌群で対照群に比し高値であった. 大腸菌群では末梢血好中球の減少, BAL液中の好中球数の増加, 病理組織上好中球の肺組織への集積を認めた. 大腸菌群では血漿MPO活性の漸増, BAL液中のMPO活性およびTBARM濃度の上昇を認めた. 大腸菌群においてはBAL液中のTBARM濃度はW/DおよびALと相関した. BAL液中のTBARM濃度が大腸菌敗血症による肺損傷を反映する可能性が示唆された.
  • 塩田 雄太郎, 佐藤 利雄, 小野 哲也, 加地 正郎
    1993 年 31 巻 8 号 p. 932-935
    発行日: 1993/08/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    気管支喘息患者と健常人の血清中可溶性FcεレセプターII (可溶性CD23) と可溶性IL-2レセプター (可溶性CD25) を測定した. 気管支喘息患者の血清可溶性CD23は健常人に比し, 有意に高い値を示した (p<0.05). また, 気管支喘息患者の血清可溶性CD25も健常人に比し, 高い値を示した (p<0.02). 気管支喘息患者の血清可溶性CD23と血清可溶性CD25の間には有意の相関が見られた (r=0.52, p<0.001). 血清可溶性CD23と可溶性CD25は種々のサイトカインによって調整されていることはよく知られており, 今回の研究は気管支喘息の病態にT細胞が重要な役割を果たしていることを示唆するものであった.
  • 重森 一夫, 石崎 武志, 高橋 秀房, 佐々木 文彦, 飴島 慎吾, 酒井 哲夫, 大西 定司, 中井 継彦, 宮保 進
    1993 年 31 巻 8 号 p. 936-941
    発行日: 1993/08/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    cyclic AMP phosphodiesterase inhibitor であるシロスタゾールの肺血管トーヌスに対する影響を検討した. シロスタゾールはフェニレェブリン10-6Mにより前収縮させたラット肺動脈リングを10-6Mより濃度依存的に拡張させた (ED50 3.00×10-6M). またその効果はメクロフェナメート, 内皮剥離, メチレンブルーニ, トロ-L-アルギニンの前処置に影響されなかった. フェニレェブリン10-6Mにより前収縮させた胸部大動脈リングにおいても10-6Mより用量依存的に拡張させたがラット肺動脈リングに比べ拡張効果は増強した (ED50 1.89×10-6M). また, ラット肺動脈リングの低酸素性肺血管収縮をシロスタゾールは10-6M以上の濃度で用量依存的に抑制した. シロスタゾールは内皮機能の有無にかかわらず細胞内 cyclic AMP 濃度の上昇により血管拡張を来し, 低酸素性肺血管収縮抑制効果を示すと考えられた.
  • 副島 京子
    1993 年 31 巻 8 号 p. 942-950
    発行日: 1993/08/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    放射線照射後ラット肺を用いて, 肺内マクロファージの形態および細胞表面抗原の発現の変化について経時的に検討した. 形態学的には, 炎症が組織学的に著明となる以前の照射後2週目より, 気管支肺胞洗浄液中に腫大した泡沫状細胞群と小型細胞群を認め, 炎症の進行とともにこれらの割合は増加し, 鎮静化とともに消退した. 表面抗原の発現は, 4週目より肺胞マクロファージの major histocompatibility complex (MHC) class II 抗原陽性細胞の割合の増加およびマクロファージ亜分画の変化が認められた. これらの変化は6, 8週で著明となるが, 16週以降は鎮静化し, MHC class II の増加が最も遷延した. このように, 組織学的に炎症が明らかとなる以前, 又は炎症の早期より, 正常とは異なるマクロファージの形態上および細胞表面抗原発現の変化を生じたことは, マクロファージの機能的変化を示唆するもので, 活性化された肺内マクロファージが放射線照射後の肺障害の発症に何らかの関与をしている可能性が推察された.
  • 吉野内 猛夫, 大朏 祐治, 久保 克仁, 佐藤 博彦, 水戸川 剛秀
    1993 年 31 巻 8 号 p. 951-958
    発行日: 1993/08/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    経気管支肺生検 (TBLB) にて器質化肺炎 (OP) と診断された16例につき臨床病理学的検討を行った. 症例は高齢, 基礎疾患, 発熱と何らかの呼吸器症状を有し, 低栄養, 炎症所見陽性, ツ反応陰性, 高補体価が認められた. 病理所見では masson 体中の fibrin の有無により2種類の器質化過程を確認した. 治療は steroid 投与12例経過観察2例の内, 9例は胸部X線上陰影が完全に消失し5例は陰影が残存した. 病理所見と予後との関連では, 陰影が消失した9例は全例 masson 体中の fibrin 陰性の症例であり, 陰影が残存した5例は fibrin 陽性例であった. 以上の結果からOPの器質化には次の2種類の器質化過程が存在することがわかった. 一つは fibrin の関与する線維化で, その病因としては感染が最も考えられ steroid に対する反応性は悪い. もう一つは fibrin の存在しない或は関与しない線維化でBOOPと類似しており, 病因は不明であり, steroid に対する反応性は良好なものである.
  • 山田 耕三, 野村 郁男, 松村 正典, 野田 和正
    1993 年 31 巻 8 号 p. 959-970
    発行日: 1993/08/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    三次元CT (3D-CT) の有用性を検討する目的で, 3D-CTが撮影された29例の肺野型肺癌例のCT画像における肺血管と病変の関係, および病変の辺縁の性状について prospective に解析し, その病理所見と比較検討した. 内訳は男性20例, 女性9例であり, 年齢は38~75歳 (中央値: 65歳) であった. CTは東芝製TCT-900Sを使用し, 通常CTの撮影後, helical scan 法でCT寝台を2mm/秒で動かしながら撮影した. CT画像は高分解能条件で再構成し (WL-600, WW1900), 10mm幅の通常CTと2mm幅の thin-slice CT および肺血管と病変のみを描出した3D-CT画像を比較検討した. 肺血管が病変に巻き込まれるその描出能は通常CT画像47%, thin-slice CT 画像87%,3D-CT画像96%であり, 3D-CT画像での描出能は通常CT画像に比較して有意の差を認めた (p<0.01). また病変の形態学的特徴も, 3D-CT画像は通常CT画像より正確に描出が可能であった. 以上, 3D-CT画像は肺野小型病変の質的診断にさらに寄与する可能性が示唆された.
  • 永井 厚志, 金野 公郎
    1993 年 31 巻 8 号 p. 971-975
    発行日: 1993/08/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    軽度な小葉中心型肺気腫を対象として, 肺気腫と肺機能ならびに細気管支病変との関連性につき検討した. 肺気腫は, VC, FEV1, FEV1/FVC, Phase IIIの傾き, CC/TLC, 肺弾性収縮力と有意な相関がみられたが, 肺の拡散能との間には関連性が認められなかった. 細気管支病変は, 肺気腫や肺機能との関連性に乏しかった. 以上の所見から, 肺気腫が軽度であっても, 気腫肺に特徴的な弾性収縮力などの機能異常が出現することが明らかとなった. しかし, 肺の拡散能と肺気腫との間には関連性が認められなかったことより, 拡散能から肺気腫を早期診断することは困難であると考えられる.
  • 妹川 史朗, 佐藤 篤彦, 谷口 正実, 豊嶋 幹生, 中澤 浩二, 早川 啓史, 千田 金吾
    1993 年 31 巻 8 号 p. 976-982
    発行日: 1993/08/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    抗アレルギー剤の急性効果は一般的には認識されていない. しかし最近我々はクロモグリク酸ナトリウム (SCG) 水溶液の単独単回吸入が発作寛解期のアスピリン喘息 (AIA) 患者に特異的に急性気管支拡張効果を示すことを報告した. そこで今回SCGと同じクロモン構造を有する経口抗アレルギー剤 Amlexanox につき同様の効果があるかを検討した. AIA 8例, nonAIA 7例を対象とし, 二重盲検法にて Amlexanox 100mgまたは placebo (乳糖) を単回内服させ, 前と30, 60, 90分, 2h, 3h後にFEV1を測定した. 検査は発作寛解期に施行し, 治療薬は24h以上中止して行った. AIAでは Amlexanox 投与60分後よりFEV1は前値に比べて有意 (p<0.05) に増加 (FEV1: 1.47±0.21→1.58±0.26l) し, placebo 投与後との間に有意差がみられた. nonAIAでは両者の投与でFEV1の変化はみられなかった. 以上より Amlexanox はSCGと同様に, AIAに対してのみ有意に急性気管支拡張効果を有することが明らかとなった.
  • 田尾 義昭, 吉井 千春, 二階堂 義彦, 津田 徹, 永田 忍彦, 城戸 優光
    1993 年 31 巻 8 号 p. 983-989
    発行日: 1993/08/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    ごく最近肺クリプトコックス症3例を経験したので臨床的検討を加えて報告する. 原発性1例と続発性2例である. 診断は全例経気管支肺生検および血清クリプトコックス抗原価によった. 臨床症状, 検査所見および胸部X線より肺癌, 肺結核, 肺化膿症との鑑別が問題となった. 治療は全例診断と同時に fluconazole 投与を開始し, 1例に flucytosine の併用を行った. いずれも陰影および血清抗原価の改善をみた. また副作用はいずれもみられなかった.
  • 馬上 喜裕, 神尾 和孝, 谷垣 俊守, 林 芳弘, 桑平 一郎, 高崎 雄司, 太田 保世, 山林 一
    1993 年 31 巻 8 号 p. 990-993
    発行日: 1993/08/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    これまで, 横隔膜ペーサーに由来する閉塞型睡眠時無呼吸に対し, 経鼻式持続陽圧呼吸 (nCPAP) を導入したとの報告はない. 我々は, 横隔膜ペーサー由来の閉塞型睡眠時無呼吸を合併した原発性肺胞低換気症候群 (PAH) の1例を経験し, nCPAPによる治療前後のポリグラフィーを行った結果, 以下の知見を得た. (1) 多くの閉塞型睡眠時無呼吸の発生病態と同様, 横隔膜ペーサーに惹起された閉塞型無呼吸の発生にも, 横隔膜を代表とするポンプ筋と上気道構成筋の coordination の変化が深く関与する. 従って, 本症例にもnCPAPは有効である. (2) PAH患者に横隔膜ペーシングを行うと, 上気道閉塞の有無に拘らず, 奇異性換気運動が生ずる. 従って, 横隔膜ペーシング中のPAH患者に発症する閉塞型無呼吸の診断には, 口や鼻での気流停止, 一回換気量 (VT) および動脈血酸素飽和度の推移など総合的な観察が必要である.
  • 美藤 恵子, 水城 まさみ, 安部 康治, 杉崎 勝教, 津田 富康
    1993 年 31 巻 8 号 p. 994-1000
    発行日: 1993/08/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    症例は32歳女性. 25歳時に気管支喘息の診断を受けたが疾患, 治療に対する理解力が不良で十分な治療が施されず症状は次第に増悪. 30歳時より常に歩行時の息切れを自覚する様になり32歳時からはトイレ歩行時にも息切れを生じ日常生活にも支障を来す様になったため来院. 胸部X線写真上, 著明な過膨張所見を認め, 心電図にて右房負荷所見あり血液ガス検査ではPaO2は61Torrと著明低下. 入院後, ステロイド剤の投与を含めた適切な治療により症状は著しく軽快. 胸写も過膨張所見は軽減しPaO2も正常となった. 症状寛解期の肺機能検査において肺拡散能の低下は認められなかったが胸部X線CT上, low-attenuation area が僅かではあるが認められた. 喫煙歴なくα1-アンチトリプシンも正常の若年の喘息患者に気腫性の変化が認められたため, 喘息と肺気腫との関係において何らかの示唆を与える症例と考えられたので若干の文献的考察を加え報告する.
  • 山本 仁, 赤柴 恒人, 峰村 広, 倉科 桂司, 吉沢 孝之, 大塚 健蔵, 堀江 孝至
    1993 年 31 巻 8 号 p. 1001-1006
    発行日: 1993/08/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    症例は42歳の男性で, 以前より閉塞性睡眠時無呼吸症候群 (OSAS) の診断で, 保存的治療をうけていたが, 体重の著明な増加と共に呼吸困難が出現し, 全身の浮腫をきたして緊急入院となった. 入院時の体重は168kg, 全身に著明な浮腫, 胸部X-Pでは心肥大と胸水貯溜を認め, PaO2は37mmHg, PaCO2は66mmHgであった. 右心カテーテル検査では, 平均肺動脈圧 (mPAP) 55mmHg, 肺動脈楔入圧 (PCWP) 33mmHgを示し, 両心不全と考えられた. ポリソムノグラフィーでは, apnea index 58.3/時の閉塞型無呼吸と著明な酸素飽和度 (SaO2) の低下が見られた. 強心利尿剤の投与と並行して nasal CPAP を睡眠時に施行し, 睡眠中の無呼吸とSaO2の低下は完全に防止され, 同時に大量の利尿が出現し, 体重は急速に減少した. 治療後には, mPAP, PCWP は各々32, 23mmHgへと低下し, 呼吸困難も消失し, 入院59日目には体重96kgで退院となった. nasal CPAP は, 重篤なOSAS例に対しても有効な治療法と考えられた.
  • 土井 義之, 土田 知宏, 鈴木 孝次, 伊藤 敏雄, 久田 哲哉, 森成 元, 中原 和樹, 岡崎 俊典, 益田 貞彦, 薬丸 一洋
    1993 年 31 巻 8 号 p. 1007-1011
    発行日: 1993/08/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    5年前より血痰を認めた71歳, 女性の副横隔膜を伴う Pryce 1型の肺葉内肺分画症の1例を報告した. 胸部単純X線側面像で, 副横隔膜は右横隔膜ラインより背側後上方に至る線状影と対応し, 選択的血管造影, 超音波画像で腹部大動脈から分岐する迷入動脈が描出された. 開胸で, 右胸腔は副横隔膜により2室に区分され, 副横隔膜の裂口を介して下室肺へ達する気管支と肺静脈が存在した. 迷入動脈はS9,10から成る下室肺と一部副横隔膜を貫通し上室肺に流入していた. 本症例の副横隔膜と肺葉内肺分画症の発生時期は, 胎生6週前後と推定された.
  • 海野 剛, 大玉 信一, 澤田 めぐみ, 橘 俊一, 高野 省吾, 三宅 修司, 青木 延雄, 山本 智理子, 松原 修, 益田 貞彦
    1993 年 31 巻 8 号 p. 1012-1018
    発行日: 1993/08/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    右肺下葉の腫瘤様陰影とIgG-λ型M蛋白血症を呈した69歳の女性. 病変部から行ったBALにて形質細胞, IgGおよびIL-6の著増を認めた. 右下葉切除術を施行. 手術標本の組織像では形質細胞様細胞および小リンパ球様細胞が肺胞構造を破壊しつつ増殖しており, 免疫組織化学で形質細胞様細胞はIgGおよびλ鎖陽性, 小リンパ球様細胞はB細胞表面マーカー陽性であった. 病変部組織から抽出したDNAについてFr3AとVLJHをプライマーとしてPCR法を行い, H鎖遺伝子の単クローン性が確認された. 以上より悪性リンパ腫と診断した. 肺原発悪性リンパ腫は本例のような高分化型のB細胞性リンパ腫が多く, 偽リンパ腫やLIPとの鑑別が問題になっていたが, 最新の手法により正確な診断が為されるようになってきた. 今後症例を集積して予後や治療法を検討するためには正確な診断が欠かせないため前述のような手法を積極的に取り入れて行く必要があると思われる.
  • 押川 克久, 山中 弘毅, 北村 諭, 遠藤 俊輔, 蘇原 泰則, 望月 眞
    1993 年 31 巻 8 号 p. 1019-1023
    発行日: 1993/08/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    症例は33歳男性で, 検診にて胸部異常陰影を指摘され当科に精査入院. 胸部X線写真および胸部CTにて左肺門部下方に直径約30mmの境界明瞭で辺縁整の内部均一な充実性腫瘤を認めた. 気管支鏡検査では左B5および左B8に壁外性の圧排所見を認めたが粘膜面は正常であった. 経気管支腫瘍生検を施行したが確診に至らず, 開胸術を施行した. 腫瘍は左S8内で左B8を背側へ圧排するように存在しており, 術中迅速生検にて良性神経鞘腫と判明したため, 腫瘍摘出術を施行した. 病理組織学的所見では, nuclear palisading を伴う紡錘形細胞の密な配列を認め, 良性神経鞘腫との診断を得た. 発生母地は迷走神経肺枝と考えられた. 術後経過良好で再発を認めていない. 肺内神経鞘腫はまれな疾患で本邦では23例の報告をみるのみであり, 文献的考察を加えて報告した.
  • 吉川 隆志, 飯田 康人, 堀内 伊織, 稲葉 秀一, 寺井 継男
    1993 年 31 巻 8 号 p. 1024-1028
    発行日: 1993/08/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    ステロイド剤投与中に呼吸困難の増強を認めたアスピリン喘息患者について報告する. 症例は32歳, 男性. アスピリン喘息あり. 喘鳴, 呼吸困難が増悪し受診し, その際ハイドロコーチゾン (ソル・コーテフ®) を200mg静注したところ, 呼吸困難が急速に増強したため入院した. 皮内反応はソル・コーテフ, サクシゾン共陽性で, その他ソル・メドロール, プレドニンに対しても陽性であった. 静注誘発試験ではソル・コーテフ, サクシゾン共100mg投与により一秒量は15分後それぞれ34%, 27%低下した. 本症例の症状増悪の要因として, ステロイド剤のコハク酸エステル化が一因となっている可能性が示唆された.
  • 山田 嘉仁, 田辺 信宏, 山本 司, 吉田 康秀, 岡田 修, 長尾 啓一, 栗山 喬之
    1993 年 31 巻 8 号 p. 1029-1033
    発行日: 1993/08/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    症例は41歳男性. 労作時呼吸困難, 胸部絞扼感を主訴とし, 肺血流シンチグラムおよび肺動脈造影にて肺血栓塞栓症と診断された. ヘパリン・ウロキナーゼによる抗凝固および線溶療法を開始し, 6日目より血小板減少が認められると同時に低酸素血症を伴う呼吸困難が出現した. ヘパリン起因性血小板減少症および肺塞栓再発を考え, ヘパリン投与を中止しワーファリン投与に代えたところ, 血小板数は急速に回復し, 症状の軽快をみた. 血小板凝集能検査にてヘパリン起因性血小板減少因子の存在を証明した. 肺塞栓症の内科的治療においてヘパリンを使用する際, ヘパリンの副作用であるヘパリン起因性血小板減少症の発症に充分に注意することが重要と考えられた.
  • 篠崎 史郎, 松沢 幸範, 須沢 和美, 山口 伸二, 岡田 和義, 早野 敏英, 吉川 佐知子, 藤本 佳作, 小林 俊夫, 関口 守衛
    1993 年 31 巻 8 号 p. 1034-1039
    発行日: 1993/08/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    症例は37歳の男性. 昼間の傾眠および家人に睡眠時呼吸停止を指摘され, 精査目的で入院した. 終夜睡眠ポリグラフの結果無呼吸指数 (Apnea Index, AI) は57.5と高値を示し, 混合型と閉塞型無呼吸が優位の上部気道閉塞型の睡眠時無呼吸症候群 (SAS) と診断された. 背臥位と側臥位における体位別の検討を行った結果, AIは背臥位82.4に比べ, 側臥位では5.9と著明に低く, 無呼吸時間, SaO2の最低値, 睡眠の質はいずれも側臥位で著明に改善していた. 7kgの減量後の終夜ポリグラフの再検の結果, AIは33.2と著明な改善を示した. しかし体位別には背臥位77.3側臥位3.8とそれぞれ軽度の改善にとどまっており, AIのみかけ上の改善は側臥位睡眠時間が相対的に増加したための結果と考えられた. 上部気道閉塞型のSASには, その診断および治療効果判定に, 睡眠体位を考慮すべき症例が存在すること, また側臥位睡眠そのものが治療の一つになり得る可能性を示す重要な症例と考えられる.
  • 内田 和仁, 関口 繁男, 土井 義之
    1993 年 31 巻 8 号 p. 1040-1044
    発行日: 1993/08/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    18歳の女性が急激に進む強い呼吸困難と, 乾性咳嗽および発熱を主訴に入院した. 彼女は前日の夜, 頭痛のためバッファリンを服用し, その8時間後より症状が出現した. 入院時の胸部レントゲン写真では, いわゆる Kerley の A, B line, perivascular cuffing, hilar haze および両側胸水が認められ, 間質性肺水腫が疑われた. 入院時38℃の発熱があり, PaO2は48torrと強い低酸素血症を示した. 感染症や過敏性肺臓炎を示唆する所見はなかった. バッファリンに対するDLSTは陰性だった. 末梢血では好酸球増多はなかったが, BALF中に好酸球とリンパ球の著増を認めたことより急性好酸球性肺炎が強く疑われた. 臨床所見と胸部レントゲン所見は1週間以内にステロイドを用いずに改善した. 急性好酸球性肺炎の多くは, 胸部レントゲン上びまん性粒状影と記載されている. 今回は, kerley line の目立つレントゲン所見を呈した稀な症例を報告した.
  • 金子 教宏, 金重 博司
    1993 年 31 巻 8 号 p. 1045-1049
    発行日: 1993/08/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    症例は47歳男性. 1992年5月18日頃より右眼の視力低下が出現したため当院眼科を受診. その際虹彩の腫瘤と胸部レントゲン上異常影を認めたため呼吸器内科に紹介受診となる. 気管支内視鏡検査を行い気管支粘膜の生検および虹彩の腫瘤の摘出病理所見から右肺門原発の肺小細胞癌の虹彩への転移 (臨床病期分類, T3N2M1, stage IV) と診断した. 悪性腫瘍の虹彩への転移は比較的まれといわれている. 今回我々は, 虹彩への転移による眼症状を初発症状として発見された原発性肺小細胞癌の1例を経験したので本邦16例とともに, 文献的考察を加え検討した.
  • 岩田 勝, 近藤 征史, 安藤 正志, 田野 正夫, 稲垣 靖, 清水 康男, 鈴木 敏行, 伊藤 慶太, 松本 修一, 城山 敬康
    1993 年 31 巻 8 号 p. 1050-1055
    発行日: 1993/08/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    症例は58歳, 女性. 検診で胸部X線写真上両側肺門リンパ節腫脹 (BHL) を指摘され来院した. 経気管支肺生検にてサルコイドーシスと診断した. 6ヵ月後顔面に紅斑様皮疹が出現し, 皮膚生検にて皮膚サルコイドーシスと診断された. 10ヵ月後胸部X線写真ではBHLは消退しており, 以後再発はみられなかった. 1年後両側ぶどう膜炎が発症した. 2年後四肢の筋力低下と両手足, 指趾中心にしびれ感が出現した. 多発性単神経炎として入院, 腓腹神経生検にて sarcoid-neuropathy と診断した. プレドニゾロン30mg/日を開始し1週間後より改善傾向となった. 神経サルコイドーシスは約5%の頻度とされ, その中で脳神経を含まない末梢性脊髄神経障害単独のものは稀である. また経過中血清アンギオテンシン転換酵素値は漸次低下し, BHLとの関連が考えられた.
  • 西 耕一, 明 茂治, 大家 他喜雄, 藤村 政樹, 松田 保, 原田 憲一
    1993 年 31 巻 8 号 p. 1056-1060
    発行日: 1993/08/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    多発性の薄壁空洞様陰影を呈した若年者における胆嚢癌による転移性肺癌の1例を経験したので報告する. 症例は30歳の男性で, 発熱, 咳嗽, および全身倦怠感を主訴として来院した. 胸部単純X線写真にて, 両肺野の多発性結節性陰影および多発性薄壁空洞様陰影が認められ, 喀痰および気管支肺胞洗浄液の細胞診にて class V (腺癌) の所見が得られた. 診断時には他の臓器に悪性腫瘍の存在を示唆する明らかな所見は得られなかった. 治療としてはCDDP+VDS+MMCからなる化学療法を2クール行ったが効果は認められず, 最終的には膵頭部のリンパ節転移に伴う閉塞性黄疸をきたし, 治療開始後第204病日に死亡した. 剖検により肝内胆管へも連続性に浸潤する胆嚢癌 (乳頭状腺癌) が発見され, 胆嚢癌による転移性肺癌と判明した. このような多発性薄壁空洞様陰影を呈した若年者における胆嚢癌による転移性肺癌は比較的稀なため, 文献的考察を加え報告した.
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