日本胸部疾患学会雑誌
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31 巻, 9 号
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  • 気管支肺胞洗浄液中の増殖因子について
    矢野 平一, 吉澤 靖之, 佐藤 哲夫, 大塚 盛男, 村山 淳一, 本間 敏明, 長谷川 鎮雄
    1993 年 31 巻 9 号 p. 1061-1067
    発行日: 1993/09/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    特発性間質性肺炎 (IIP) をはじめとする線維化肺には肺癌が高率に合併することが知られている. 線維化の過程と癌の発生あるいは癌細胞の増殖とに共通のメカニズムが作用することが推測されるが, 肺癌合併の病態についての検討は病理学的検討に限られ, 発癌および発生した癌細胞の増殖についての研究はみられない. そこで線維化局所での病態を反映すると推定される気管支肺胞洗浄液 (BAL液) 中に癌細胞の増殖に関与する因子が存在するか否かを肺癌 cell line Lu-99, Lu-65, ラット肺由来線維芽細胞 (FB) を対象に3H-thymidine (3H-TdR) の取り込みにて検討した. IIP群 (n=8) の3H-TdR取り込みの平均値は正常対照群 (n=8) に対しLu-99で3.6倍 (p<0.01), Lu-65で1.8倍 (p<0.05), FBで1.2倍 (有意差なし) でありIIP症例のBALF中に肺癌 cell line 細胞の増殖を有意に刺激する因子の存在することが明らかになった. 高速液体クロマトグラフィーによる各症例 (n=5) の分画成分の検討では複数の共通する分画にLu-99, Lu-65に対する増殖因子活性が認められた.
  • 兼島 洋, 長井 苑子, 竹内 実, 斎藤 厚, 泉 孝英
    1993 年 31 巻 9 号 p. 1068-1074
    発行日: 1993/09/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    10症例の肺サルコイドーシスにおいて10年以上の臨床経過の5症例 (14.6±4.4年) と3年以下の5症例 (1.7±1.1年) についてBALFマクロファージでの Interleukin-1βと Tumor Necrosis Factor-α のmRNAの検出率を Reverse Transcription-Polymerase Chain Reaction 法で検討した. 10年以上の症例では両サイトカインの発現が全例にみられた. この結果はIPF症例, 健常人非喫煙者, 健常人喫煙者全例でも同様であった. 一方, 3年以下の症例ではIL-1βは5例全例, TNF-αは1例のみの検出で, TNF-αの検出率 (1/5:20%) は健常人非喫煙者を含め他の症例と比べて有意差があった. 肺サルコイドーシスのBALFマクロファージにおいてTNF-αがmRNAレベルで速やかに抑制制御される症例は, 慢性例以外の症例にみられ, TNF-αの遺伝子発現の制御が病変の消長に関与する因子の1つである可能性を示唆するものと思われた.
  • 阿部 良行, 塩谷 壽美恵, 鬼島 宏, 中村 雅登, 村田 尚彦, 杉浦 丹, 玉置 憲一
    1993 年 31 巻 9 号 p. 1075-1080
    発行日: 1993/09/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    本院で15年間に Pneumocystis carinii 肺炎と, 病理学的に確定診断された10症例について臨床病理学的検討を加えた. 全例が日和見感染症であり, 抗癌剤やステロイド剤の投与を受けていた. 基礎疾患としては悪性腫瘍6例, 自己免疫疾患4例であった. 初発症状は発熱が9例, 乾性咳嗽が4例に認められた. 胸部X線上急速に進行し, 両側瀰漫性の陰影をきたし, 10例中8例で致死的であった. 診療, 治療, 予後については各年代ごとに検討した. 1970年代の3例は全て剖検により診断がなされている. 80年代には本症と診断されながらも他の合併症で死亡する例が見られた. しかし, 90年代の2例は transbronchial lung biopsy 等にて本症と診断され, sulfamethoxazole と trimethoprim の合剤の投与を受け軽快している. このうち1例は喀痰塗抹標本にて早期に診断された稀な症例と考えられた. 今後は分子生物学的手法を用いた喀痰検査の導入が診断法として期待される.
  • 亀井 雅, 藤田 次郎, 山地 康文, 高原 二郎
    1993 年 31 巻 9 号 p. 1081-1088
    発行日: 1993/09/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    特発性間質性肺炎 (IIP) の病態生理における好中球エラスターゼの役割を明らかにするため, IIP患者の血漿および気管支肺胞洗浄液 (BALF) 中のエラスターゼ:α1アンチトリプシン複合体 (以下, 複合体) の定量を行い, 健常喫煙者と比較した. IIP患者のBALFにおいては, 好中球の増加は認められなかった. しかしながらIIP症例においては, 血漿およびBALF中の複合体が健常喫煙者に比し有意に高値であることを示した. また血漿の複合体は, honeycombing を伴う症例と伴わない症例とで有意差は認めなかった. 一方BALF中の複合体は, honeycombing を伴う症例で有意に高値を示した. Western immunoblot 法にて, 血漿中の複合体は, 分子量60,000の断片化した複合体であることが明らかになった.
  • 駿田 直俊, 中村 秀也, 小林 尚, 上谷 光作, 西尾 誠人, 東本 有司, 船迫 真人, 大畑 雅洋
    1993 年 31 巻 9 号 p. 1089-1095
    発行日: 1993/09/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    COPD患者の最大運動能に対する抗コリン剤 oxitropium bromide, β2刺激剤 fenoterol の吸入の効果を8名の安定期COPD患者において二重盲検法を用い評価した. fenoterol 吸入は最大運動諸指標に有意な変化をもたらさなかった. oxitropium bromide 吸入では運動時呼吸困難の改善がみられ (Borg Scale Slope: 21.4±10.2 vs 17.7±8.4, mean±SD), 最大心拍数の有意な減少を認めたが (105.4±13.2 vs 98.0±12.9), 他の諸指標には有意な変化はみられなかった. 運動時呼吸困難の改善と運動時呼気最大流速の変化の間に関連はみられなかった. COPD患者に対する oxitropium bromide 吸入は運動時呼吸困難を軽減させ, 患者の quality of life を改善させるうえで有用と思われるが, 運動時呼吸困難の改善は oxitropium bromide の安静時および運動時気管支拡張作用とは必ずしも関連せず, 他の因子による可能性が示唆された.
  • 古林 榮次郎, 大杉 隆史, 野口 弘, 寺村 昌文
    1993 年 31 巻 9 号 p. 1096-1102
    発行日: 1993/09/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    肺気相内ガス不均等分布形成のメカニズムの主要な因子である換気シーケンスを計測するシーケンシャルボラス法を考案した. RVとそれに続く高肺気量位から複数のボラスガスを吸入し, 得られた呼出曲線パターンをI~IVのタイプに分類した. 分類の有用性を検証するために血液ガス, 肺機能検査成績, レントゲン所見, 臨床診断所見のデータを計測し, 数量化理論を用いて解析した. 臨床的応用として, この方法を100例の各種疾患肺に適用することにより従来の肺機能検査では鑑別困難な病態についても重要な新たな情報が得られることを示した. シーケンシャルボラス法の呼出パターンの特徴は, 肺内ガス分布不均等における intra-regional と inter-regional の2つの異なったタイプの不均等障害を反映しており, 疾患の病態や程度について評価する上で有用なものと考えられた.
  • 峰村 広, 赤柴 恒人, 山本 仁, 鈴木 良一, 伊藤 大介, 倉科 桂司, 吉沢 孝之, 堀江 孝至
    1993 年 31 巻 9 号 p. 1103-1108
    発行日: 1993/09/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    閉塞型睡眠時無呼吸症候群患者の交通事故頻度と傾眠傾向を分析し, それらへのNCPAP治療の効果を検討した. 自動車運転歴を有するOSAS患者14例 (男性, 46±7歳) に過去3年間の交通事故及び非常に危険だった状態 (ニアミス) の有無をアンケート調査した. 治療前の事故率は42%, ニアミスは64%で, いずれも追突事故であった. Stanford Sleepiness Scale (SSS) による傾眠評価では4.7±1.0と著明な日中の傾眠傾向が認められた. NCPAP在宅治療開始11±9ヵ月後行った再調査では交通事故, ニアミスとも全く認められず. SSSは, 2.0±0.8に低下し傾眠の改善が認められた. 内田ークレペリンテストにより作業能力を評価したが治療後には, 有意に点数が上昇し, 作業能力の向上が認められた. 無治療のOSAS患者は著明な日中傾眠傾向を有し, 交通事故率が高率であった. NCPAP治療により, 交通事故, ニアミスとも消失し, 傾眠と作業能力の改善が認められた.
  • 市瀬 裕一, 春日 郁馬, 峯村 和成, 清川 浩, 内海 健太, 鳥居 泰志, 米丸 亮, 外山 圭助, 鳴戸 真美子, 野呂 光子
    1993 年 31 巻 9 号 p. 1109-1113
    発行日: 1993/09/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    10年以上肺機能検査の個人追跡をしえた者につき慢性閉塞性肺疾患早期変化検出の可能性を検討した. 10年以上連続して検査を受けた60歳以上の約1,500名中最後の受診時に呼吸困難があり, 胸部X線上閉塞性肺疾患特有の変化があり, かつ一秒率55%以下の10例を選択した. これらの例の努力肺活量, 一秒量, 一秒率を過去10年以上に遡り, 1例毎に回帰直線を算出し, 経年変化量の平均と個人の検査値の推移を健常例と比較した. 回帰直線の傾き: 一秒量/身長; 健常例-0.016±0.017, 疾患例-0.038±0.018(l/m/yr), 一秒率; 健常例0.164±0.627, 疾患例-1.522±0.638 (%/yr). ともに有意差を認めた (p<0.01). 一秒率では疾患例すべては健常例の-2SDを逸脱していた. 疾患例の一秒率の回帰直線すべてで症状発現5年以上前から健常例の回帰直線の2RSDを逸脱していた. 肺機能個人追跡は早期変化検出に有用と考えた.
  • 高杉 知明, 山口 佳寿博, 河合 章, 森 正明, 浅野 浩一郎, 梅田 啓, 川城 丈夫, 田中 剛, 安岡 周美
    1993 年 31 巻 9 号 p. 1114-1120
    発行日: 1993/09/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    ビーズ肺塞栓において血小板に由来するセロトニンが肺循環動態に及ぼす影響について検討した. 家兎の灌流肺において肺動脈本幹から直径100μmのガラスビーズを注入してビーズ肺塞栓モデルを作成した. 多血小板血漿 (PRP) を含む灌流液を用いた場合に塞栓後に灌流液中のセロトニン濃度は一過性に上昇し, 平均肺動脈圧の低下率はPRPを含まない灌流液を用いた場合に比較して有意に小さかった. 選択的セロトニンS2受容体拮抗薬を灌流液に添加すると塞栓後のセロトニン濃度の一過性の上昇, 血小板数の減少, および肺血管攣縮がいずれも抑制された. 以上の実験成績から, ビーズ肺塞栓においてビーズ表面で活性化された血小板に由来するセロトニンが, 血小板粘着を介してセロトニンの放出を促進させ肺血管を攣縮させていることが示唆された.
  • 藤井 忠重, 田中 正雄, 武田 正, 川嶋 彰, 久保 恵嗣, 小林 俊夫, 半田 健次郎, 吉村 一彦
    1993 年 31 巻 9 号 p. 1121-1128
    発行日: 1993/09/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    赤血球増多症 (真性16例を含む19例) にTl-201心筋シンチグラフィ, 99mTc-MAA肺血流シンチグラフィを実施し, 前者でTl-201肺集積, 右室壁描画 (右室肥大), 後者で肺血流障害などを検討した. 肺集積は全例が陽性で54.5%は中等度集積を示した. 右室肥大は中等度1例, 軽度16例で89.5%が陽性であった. 肺血流障害は, FEV1.0%, V25, PaO2, 循環血液量, 赤血球数などとの関連を示し, 散在性減少36.8%, 辺縁部減少78.9%, 不均等な血流分布94.7%などが認められた. 肺機能ではRV/TLC (46.6%), CV/VC (35.7%), V25 (36.8%) などの異常が多く, PaO2は50.0%が低値で前三者との関連を認めた. 以上, 真性赤血球増多症では一部の肺機能に軽度な障害を認め, 軽度ではあるが肺血流障害, 右室壁描画, 肺集積などが高率に認められた. したがって, 赤血球増多症一般, 特に心肺疾患に伴う場合には肺循環病態の把握が重要である.
  • とくにCT像の有用性について
    田中 裕士, 本間 伸一, 山岸 雅彦, 五十嵐 知文, 関根 球一郎, 本田 泰人, 阿部 庄作
    1993 年 31 巻 9 号 p. 1129-1133
    発行日: 1993/09/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    血清学的に診断され, X線学的に肺炎の合併を確認した成人麻疹11例 (基礎疾患なし10例, サルコイドーシス1例) を対象とし, 臨床像, X線像およびCT像の検討を行った. 肺炎は全例発疹期に認められ, 咳嗽は9例に, 呼吸困難は3例に見られ, 10例に低酸素血症を認めた. 胸部X線像で異常陰影が存在したのは4例のみであったが, CT像では全例に異常所見を認め, 肺野濃度の軽度の上昇 (9/11), 粒状影 (7/11), 浸潤影 (3/11) であった. 成人麻疹において肺炎の合併が疑われた場合には, CT像がその発見に有用と思われた. 基礎疾患のない成人麻疹に合併した肺炎では, 一過性の低酸素血症が出現するが, 全例6日以内に軽快し, 予後は良好であった. また, サルコイドーシスに麻疹肺炎を合併した例では, 低酸素血症および胸部陰影の遷延化を認めた. 細胞性免疫能の低下した症例に麻疹を合併した場合, 症状が長期化することが示唆された.
  • 中野 正心, 塚崎 稔, 木下 明敏, 須山 尚史, 中田 剛弘, 重松 和人
    1993 年 31 巻 9 号 p. 1134-1139
    発行日: 1993/09/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    症例は59歳, 男性, 咳嗽を訴え某病院に受診. 胸部X線異常影と気管支鏡検査異常を指摘され, 精査のため当内科に入院した. 気管支鏡所見は, 左主気管支下端部の下壁に表面平滑な広基性の淡赤色調の腫瘤を認め, 生検で過誤腫が疑われた. 内視鏡的YAGレーザーを施行し, 2回目の2, 186 Joules (50w/0.5秒/78回) 焼灼後, 鉗子にてポリープ茎を切断した. 摘出標本で, 本症と診断された. 術後6年を経過しているが再発は認めていない. 本症は極めてまれな疾患とされているが, 近年気管支ファイバースコープの広範な普及により報告例が増加しつつあるものの, 本邦では1991年までに38例を数えるに過ぎない. 今回自験例を報告し, 併せて文献的検討を行い, 本症の治療法として内視鏡的YAGレーザー治療の有用性について言及する.
  • 長岡 博志, 廣岩 香織, 永井 寛之, 黒田 芳信, 後藤 陽一郎, 田代 隆良, 那須 勝
    1993 年 31 巻 9 号 p. 1140-1145
    発行日: 1993/09/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    症例は59歳, 男性. 変形性股関節症のため当院整形外科に通院中, 高熱と右股関節痛を訴え入院したが, 翌日, 呼吸不全, ショック状態となり, 当科転科となった. 転科時, 著明な急性炎症反応を認め, 右股関節穿刺液から黄色ブドウ球菌が分離された. 第3病日の胸部X線写真では, 両側びまん性に肺水腫様陰影が認められた. 以上より右股関節炎より敗血症に進展し, 成人呼吸窮迫症候群 (ARDS) を併発したものと診断した. 敗血症性ARDSの原因として黄色ブドウ球菌感染症は稀である. 本例は人工呼吸管理下にメチルプレドニゾロンのパルス療法, 抗菌剤及びウリナスタチン投与の集中治療により救命し得たが, これは起炎菌がメチシリン感受性黄色ブドウ球菌であったこと, 右股関節膿瘍に対する適切な処置を行ったこと, および発症前に重要臓器の基礎疾患を有していなかったことによると思われる.
  • 糸井 和美, 桑原 正喜, 大久保 憲一, 松岡 勝成
    1993 年 31 巻 9 号 p. 1146-1150
    発行日: 1993/09/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    過誤腫性肺脈管筋腫症の1例を報告する. 症例は37歳の女性であり, 血痰・労作時呼吸困難を主訴として来院した. 胸部X線上び慢性の網状・粒状陰影を呈し, 血液ガス分析では低酸素血症を示していた. 肺機能上は高度の混合性障害を示し, 99mTc-MAAによる肺血流シンチグラフィーでは非区域性の不規則な血流障害を呈していた. 気管支鏡下肺生検にて過誤腫性肺脈管筋腫症の診断を得た. 全身麻酔下に両側卵巣摘出術を施行したが低酸素血症が徐々に進行するため酢酸テドロキシプロゲステロンを200mg/Dayにて投与を開始した. 酢酸メドロキシプロゲステロンの投与以来, 症状は安定している.
  • 木村 破魔子, 菊井 正紀, 露口 泉夫, 岸本 進
    1993 年 31 巻 9 号 p. 1151-1156
    発行日: 1993/09/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    本症例は52歳, 男性. 発熱, 胸背部痛で受診. 胸部X線写真で右肺下野の浸潤影, 左胸水を認め肺結核の疑いで入院, 抗結核剤使用により一時軽快したが, 発熱, 増悪を反復し, 胸水および末梢血中好酸球増多, IgE高値を認めた. 好酸球性胸水 (EPE) は多彩な基礎疾患に関連して出現し, これらの基礎疾患はまた非好酸球性胸水とも関連する. 寄生虫症は末梢血好酸球増多を伴うEPEの主な原因疾患の一つである. しかし種々の検索によっても原因疾患を確定できず, 約1/3が特発性と分類されている.本症例は入院中原因疾患を確認できず, 特発性として抗アレルギー剤, ステロイド剤使用により軽快退院した. その後免疫学的検索により宮崎肺吸虫症であったことが判明, さらに現在治癒していることが確認された. 宮崎肺吸虫症の自然治癒は, 理論的に推定されているが, 症例によって明らかにされたので報告する.
  • 田尾 義昭, 吉井 千春, 二階堂 義彦, 津田 徹, 永田 忍彦, 城戸 優光, 小舘 満太郎, 白日 高歩
    1993 年 31 巻 9 号 p. 1157-1162
    発行日: 1993/09/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    労作時呼吸困難を主訴に再発性の気胸を来たし, 開胸肺生検で診断したびまん性過誤腫性肺脈管筋腫症の2例を報告する. 症例1は38歳女性, 胸部X線像では上肺野に優位なびまん性線状網状影がみられ, 開胸肺生検組織学的所見よりLAMと診断したが, 組織のエストロゲン, プロゲステロンレセプターは陰性であった. 治療ではタモキシフェンにアレルギー症状がみられたためにプロゲステロン治療を行ったが, 徐々に増悪し呼吸不全にて死亡した. 症例2は41歳女性, 胸部X線像では全肺野にびまん性線状網状影と軽度過膨張所見がみられた. 肺組織のエストロゲン, プロゲステロンレセプター測定はできなかったが, 化学的去勢およびプロゲステロン療法により増悪をみていない.
  • 高田 信和, 荒井 進, 楠原 範之, 片桐 真人, 矢那瀬 信雄, 阿部 直, 冨田 友幸
    1993 年 31 巻 9 号 p. 1163-1169
    発行日: 1993/09/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    66歳, 男性. 咳嗽, 全身倦怠感のため, 近医を受診. 感冒と診断されて, 小柴胡湯を含む複数の漢方薬の内服を開始. 症状は一時軽快したが, 漢方薬の内服を開始20日後から, 再び咳嗽, さらに呼吸困難, 発熱が出現し, 当院に入院. 入院時呼吸不全を呈し, CRP, LDHは高値を示し, 胸部X線写真上両側中下肺野の網状陰影を認めた. 内服薬をすべて中止したところ, 上記検査所見と自覚症状は徐々に改善した. 気管支肺胞洗浄液 (BALF) では総細胞数の増加, リンパ球と好酸球の総細胞数に対する比率の増加が認められた. 経気管支肺生検では肺胞壁にリンパ球および形質細胞の浸潤が認められ胞隔炎の所見を呈していた. 小柴胡湯のリンパ球刺激試験 (LST) は血液で疑陽性であったが, BALFでは陽性であった. 経過と検査所見から小柴胡湯による薬剤誘起性肺炎と診断した. 臨床的に薬剤誘起性肺炎が疑われる症例で原因薬剤の同定が困難な場合にはBALFのLSTが有用と考えられる.
  • 岡田 明子, 吉村 邦彦, 児島 章, 広瀬 博章, 岡島 直樹, 竹田 宏, 菊地 一郎, 田井 久量, 徳田 忠昭, 岡野 弘
    1993 年 31 巻 9 号 p. 1170-1175
    発行日: 1993/09/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    Swyer-James 症候群は胸部X線上一側肺の透過性亢進を呈する疾患であるが, 本症候群と診断されたのち健側肺に扁平上皮癌を発症した1症例を経験したので報告する. 症例は48歳, 男性. X線写真上左肺野の透過性亢進を認め, 諸検査の結果 Swyer-James 症候群と診断された. 経過観察中1年半後に右肺門部腫瘤陰影が出現, 気管支鏡検査にて右上幹を閉塞する隆起性病変を認め, 同病変の組織所見より低分化型扁平上皮癌 (stage IIIA) と診断された. 健側肺に発生し, かつ低肺機能状態であることより, 全身化学療法を施行し経過観察中である. 本症候群と原発性肺癌の合併例の報告はきわめて少ないが, 本例では健側肺に肺癌が発症したことから, 換気動態と発癌の関係を示唆する興味深い症例と考えられた.
  • 坂東 琢麿, 野田 八嗣, 広瀬 仁一郎, 太田 五六, 藤村 政樹, 松田 保
    1993 年 31 巻 9 号 p. 1176-1179
    発行日: 1993/09/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    症例は49歳の男性で, 主訴は咳嗽と胸部不快感であった. 入院時胸部X線像にて左大量胸水が認められた. 本例は左胸部鈍的外傷の約1ヵ月後に左大量胸水が発見され, 胸水所見から好酸球性胸水 (胸水中好酸球77%) と診断した. 寄生虫疾患, 悪性疾患, 膠原病などが否定的であったため, 胸部鈍的外傷が原因と考え, 胸腔内にステロイド剤を投与したところ, 胸水は急速に減少し7日後には完全に消失した. 本症の成因は明らかではないが, 胸膜局所の免疫学的反応に対し胸腔内へのステロイド剤投与は安全かつ有用な治療法と思われた. しかし自然軽快例も報告されていることから, その適応および投与量について今後の検討を要する.
  • 寺嶋 毅, 仲村 秀俊, 猶木 克彦, 鈴木 幸男, 金沢 実, 川城 丈夫
    1993 年 31 巻 9 号 p. 1180-1184
    発行日: 1993/09/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    肺結核治療後に発症し itraconazole が奏効した慢性壊死性肺アスペルギルス症の1例を報告する. 症例は84歳女性で, 平成2年6月より肺結核のため約1年間抗結核剤を服用した. 平成4年2月より発熱, 咳嗽, 喀痰が出現した. 結核性の遺残空洞を認め, 喀痰より Aspergillus fumigatus が検出された. fluconazole と5-FCを投与し一時的に症状は軽快したものの再び発熱, 炎症反応は増加した. そこで itraconazole を投与し約60日の経過の後解熱し, 炎症反応の軽快, 菌消失, 血清アスペルギルス抗原の陰性化を認めた. 本例は Binder らが提唱した慢性壊死性肺アスペルギルス症と考えられ, 炎症反応も強く従来の治療薬では完治しなかったが, itraconazole にて軽快退院することができた.
  • 飯鉢 尚子, 西條 亜利子, 和頴 房代, 渡邊 晴雄, 林 孝二, 小泉 容子, 北村 諭
    1993 年 31 巻 9 号 p. 1185-1189
    発行日: 1993/09/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    症例は38歳の女性. 23歳でIDDMと診断されインスリン療法を行っていたが, 血糖コントロールは不良であった. 低血糖昏睡にて無呼吸となり挿管し, 自発呼吸が出現してすぐ抜管したが, 2日後より咽頭痛, 頸部腫脹と発熱が出現し当院へ転院となった. CTにて両側中咽頭から前上縦隔に及ぶ多数のガス像を伴う広汎な膿瘍が認められ, 下咽頭膿瘍より進展した縦隔膿瘍と診断した. 前頸部を切開しドレナージを行い, またABPC, CMZ, CLDMを投与したところ, 炎症所見, CT所見ともに著明な改善が認められた. 膿の培養ではα-streptococcus が検出された. その後, インスリン量, 食事量の調節にて血糖コントロールがつき, 第67病日に退院となった.
  • 野中 誠, 門倉 光隆, 谷尾 昇, 山本 滋, 高場 利博, 中島 宏昭
    1993 年 31 巻 9 号 p. 1190-1194
    発行日: 1993/09/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    膿胸に合併した結核性胸壁膿瘍の1手術例を経験した. 症例は45歳, 女性. 1989年, 近医にて右胸水貯留を指摘され治療を受けたが, 原因は不明であった. 1991年9月, 右肩部痛にて受診. 胸部異常陰影を認め, 当院内科へ入院した. 画像上, 右背側下部に限局した膿瘍がみられ, 同部に胸壁膿瘍を認めた. 膿瘍穿刺によりガフキーII号を検出 (培養陰性), INH, RFP, SMによる抗結核治療を開始して菌は陰性化したが, 胸壁膿瘍が増大傾向を示したため外科転科となった. 抗結核剤の継続投与とともに, 膿瘍の縮小を目的として膿瘍下縁よりドレナージを行い, その2ヵ月後に膿瘍摘出術を施行した. 術後1年の現在, 膿胸は軽快し, 胸壁膿瘍の再発は認めていない. 結核性胸壁膿瘍に対する治療は局所療法のみに従事することなく, 全身疾患の1症状として捉えるとともに, 胸腔との関連を把握したうえで適切な術式を選択することが必要である.
  • 本田 孝行, 蜂谷 勤, 早坂 宗治, 森田 正重, 中川 佐和子, 草間 靖方, 久保 恵嗣, 関口 守衛, 小林 理
    1993 年 31 巻 9 号 p. 1195-1200
    発行日: 1993/09/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    症例は56歳女性. 1983年 (49歳) に慢性関節リウマチと診断され, 1990年4月より消炎鎮痛剤に加えD-ペニシラミンを投与された. 同年8月頃から労作時呼吸困難が生じ徐々に増悪した. 胸部X線写真では両側性に淡い間質影があり, 胸部CTでも両側性多発性に中枢側から末梢側に広がるくさび状の陰影を認めた. 血液ガス所見では著明な低酸素血症, 肺機能検査では著しい混合性障害と拡散能の低下を認めた. 開胸肺生検にて細気管支壁の炎症性細胞浸潤と線維化を認めたが, 肺胞隔壁および肺胞内の所見に乏しく, 閉塞性細気管支炎と診断した. D-ペニシラミンを中止し, ステロイド剤治療を行うことにより症状の進行は止まり, ステロイド剤維持量で在宅酸素療法を行い退院可能となった.
  • 川崎 聡, 高野 敦子, 水島 豊, 森永 信一, 大田 亨, 小林 正, 北川 正信
    1993 年 31 巻 9 号 p. 1201-1206
    発行日: 1993/09/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    症例は, 第1子出産時 (平成3年7月) に特発性血小板減少性紫斑病を指摘され, 加療されていた31歳の女性. 平成4年7月初旬より乾性咳嗽が出現, 胸部X線写真にて左上肺野末梢部に肺区域に無関係な浸潤影を認めた. 胸部CTでは陰影は半球状に肺区域と無関係に分布し, その中央部はほぼ正常な像を呈していた. TBLBにて好酸球性肺炎と診断され, 無治療にて経過観察していたところ, 右中肺野に新たな円形陰影の出現を認めた. この新陰影は中央部より改善し, 輪状の陰影へと変化した. 左右両陰影はその径を拡大させながら次第に淡くなっていった. このような像を呈する好酸球性肺炎は文献的にも稀であり, 画像診断上貴重と考え報告した.
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