日本胸部疾患学会雑誌
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32 巻, 3 号
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  • 徳山 猛, 米田 尚弘, 塚口 勝彦, 吉川 雅則, 夫 彰啓, 友田 恒一, 仲谷 宗裕, 成田 亘啓, 田村 猛夏, 宮崎 隆治
    1994 年 32 巻 3 号 p. 205-210
    発行日: 1994/03/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    石綿曝露による肺線維症と悪性腫瘍, 特に肺癌, 悪性中皮腫の発症との関連性が注目されているが, 今回我々は炎症・線維化作用, 抗腫瘍活性があると考えられているマクロファージから産生される tumor necrosis factor α(TNFα) に注目し, 石綿曝露者の肺胞マクロファージから産生されるTNFαと気管支肺胞洗浄液中TNFαとを検討した. 石綿曝露者の肺胞マクロファージ tumor necrosis factorα産生能 (3,686±1,606pg/ml) は健常群 (1,838±753pg/ml) より有意に増加していた (p<0.01). BALF中TNFαも石綿曝露群で健常群と比べ有意に増加していた (p<0.05). TNFα産生能の増加は曝露開始からの期間と有意の負の相関関係が認められた (r=0.6, p<0.05). これらの結果から石綿曝露による肺局所のマクロファージからのTNFα産生の異常が石綿肺病態や石綿合併肺癌の発症に何らかの影響をおよぼしている可能性が推測された.
  • 由佐 俊和, 田宮 敬久, 山口 豊, 武田 恒弘, 小川 利隆, 木村 秀樹, 藤村 真示
    1994 年 32 巻 3 号 p. 211-215
    発行日: 1994/03/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    DNA合成系におけるサルベージ経路の酵素であるチミジンキナーゼの肺癌における悪性度を示すパラメーターとしての有用性を検討することを目的として, 84例の肺癌切除例について, その腫瘍組織抽出液中のチミジンキナーゼ活性を測定し, 次の結果を得た. 1) 腫瘍組織の活性は平均122.4nmol/g wet weight/hで健常肺組織のそれに比べ平均で4.3倍高い活性を示した. 2) 腫瘍組織のチミジンキナーゼ活性と, 組織型, 術後病期, 分化度, T因子, N因子, 腫瘍の大きさとの間にはいずれも有意の関連はみられなかったが, 腫瘍倍加時間との間には, 両者の対数をとると有意の負の直線的相関が認められた. 3) チミジンキナーゼ活性と術後再発率との間に有意の関連がみられた.
    以上より, チミジンキナーゼは肺癌の悪性度を示すパラメーターとしてきわめて有用であると思われた.
  • 井原 義尚
    1994 年 32 巻 3 号 p. 216-224
    発行日: 1994/03/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    慢性気管支炎等の慢性閉塞性肺疾患を有する毒ガス傷害者のうち72例について, 胸部X線像, 肺機能検査所見, 喀痰性状を解析し, 病像の経時的変化の検討を行った. 胸部X線所見別にみると, 炎症性変化群に比べ, 気腫性変化群において, また慢性気管支炎の臨床分類別にみると, 単純型, 感染型に比べ, 閉塞型, 感染閉塞型において, FEV1.0は有意に減少した. 次に72例を含め計93例について, 肺野CT所見の検討を行った. 肺野CT%(1-E) 値は, 胸部X線上, 正常群, 炎症性変化群に比し, 気腫性変化群において有意に低下し, FEV1.0, FEV1.0%, V50/V25との間に正の相関を認めた. 従来, 毒ガス傷害による慢性気管支炎の特徴は, 炎症の優位性と病像の多彩さにあるとされてきたが, 今回の結果から, 長期生存例における増悪群の特徴は, 気腫性変化に伴う閉塞性換気障害の進行にあると考えられた.
  • 山本 司, 岡田 修, 田辺 信宏, 安田 順一, 佐藤 圭一, 斉藤 正佳, 吉田 康秀, 加藤 邦彦, 栗山 喬之
    1994 年 32 巻 3 号 p. 225-232
    発行日: 1994/03/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    慢性閉塞性肺疾患患者 (COPD) 28例を対象とし, 酸素投与による肺血管反応性と運動時の肺動脈圧-流量関係について検討した. 症状の安定期に右心カテーテル検査を行い, 100%酸素投与前後の肺小動脈抵抗の変化率 (%ΔPAR) を肺血管反応性の指標とした. その後エルゴメーターによる多段階漸増法の運動負荷を行い, その圧-流量関係から回帰された直線の傾きを slope とした. %ΔPAR≧20%を responder (RES), %ΔPAR<5%を non-responder (N-RES) として分類し比較すると, slope はN-RESが有意に高値であり,圧-流量関係でRESの左上方に位置した.また slope と%ΔPAR (r=-0.522, p<0.01), および%ΔPARと安静時のPAR (r=-0.503, p<0.01) の間に有意の負の相関を認めた. これらの結果から, より進んだ病期にあるCOPD症例においては, 血管床の器質的な減少に伴い機能的血管収縮の要素が低下し, 不可逆的となった肺血管抵抗の増大が運動時の肺循環障害に関与しているものと思われた.
  • 滝口 恭男, 内山 隆司, 長尾 啓一, 藤田 明, 橋爪 一光, 栗山 喬之
    1994 年 32 巻 3 号 p. 233-238
    発行日: 1994/03/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    肺胞蛋白症6例 (年齢34~57歳, 男性5例, 女性1例) を対象として胸部CT像を中心に経時的変化を検討した. 入院時の胸部CTでは air-space consolidation と網状影や網状粒状影が混在する症例が多く, peripheral clear zone が全例に認められた. 肺洗浄によりCT上陰影は徐々に消失した. その際に肺門部の改善が先行する症例と全範囲で均等に改善する症例がみられた. また肺洗浄によって consolidation が網状影に変化した症例を経験した. 諸家の報告によればこの“経過に伴って消失する間質性陰影”は小葉間隔壁の浮腫性肥厚で説明されていたが今回の経時的変化に関する検討から実際の間質性変化のみでなく小葉内の蛋白様物質の不均一な分布を反映している可能性もあると思われ, 文献的考察を加え報告した.
  • 野村 将春, 中積 泰人, 藤村 政樹, 松田 保, 小西 秀男, 北川 正信
    1994 年 32 巻 3 号 p. 239-243
    発行日: 1994/03/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    患者は73歳の男性. 咳嗽, 喀痰, 右側腹部圧迫感にて来院した. 胸部レントゲン写真, 胸部CTにて右胸水と右肺野腫瘤陰影を認めた. CTでは腫瘤像への血管と気管支の巻き込み像 (comet tail sign) が見られ Rounded Atelectasis が強く疑われた. さらにMRI画像上では comet tail sign の他に様々なスライスでの腫瘤の内部構造が明らかとなった. 生検組織の炎症性所見と併せて Rounded Atelectasis と診断した. 胸部腫瘤像に対してMRIは有効な補助的検査であった.
  • 山本 俊信, 山田 保夫, 宇佐美 郁治, 児島 康浩, 黒木 秀明, 中村 敦, 川上 誠, 竹山 慎二, 武内 俊彦
    1994 年 32 巻 3 号 p. 244-248
    発行日: 1994/03/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    症例は64歳, 女性. 肺化膿症の治療中膿胸に進展したため胸腔ドレナージと抗生剤投与を行った. 経過中喀痰に食物残渣の混入を認め, 食道造影, 食道内視鏡で, 中部食道に瘻孔を認めたため膿胸軽快後, 瘻管切除術を行った. 手術所見では瘻管は胸部中部食道より右下葉につらなっており, リンパ節の癒着はなく炎症所見は軽度であった. 瘻管を切断し, 右下葉は硬化性変化, 気管支の拡張性変化が強いため下葉合併切除を行った. 組織学的には瘻管粘膜は重層扁平上皮からなり, 筋層も存在し, 気管支粘膜上皮への移行が認められた. 以上より先天性食道気管支瘻と診断した.
    先天性食道気管支瘻に膿胸を合併することはまれであり, また本症発症まで無症状であったことは興味がもたれた.
  • 荒木 信泰, 松本 浩平, 滝 文男, 鈴木 隆二郎, 高木 健三, 近藤 康博, 横井 豊治, 河端 美則
    1994 年 32 巻 3 号 p. 249-254
    発行日: 1994/03/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    症例は49歳, 女性. 湿性咳嗽, 発熱, 胸痛を主訴に来院. 胸部レ線上両側上肺野に移動性浸潤影と左側胸水を認めた. 各種抗生物質に反応せず, 経気管支肺生検では胞隔炎の所見に加えて気腔内器質化物を認め, 特発性BOOPが疑われた. 確定診断のため施行した開胸肺生検では, BOOPの所見はなく, 著明なリンパ節濾胞の増生がみられた. 臨床的には慢性関節リウマチ等の膠原病の診断基準を満たさないものの, 血中RAHA, 免疫複合体高値, 胸水中RAHA高値, 補体価低値および開胸肺生検所見より, 肺病変先行型の膠原病 (特に慢性関節リウマチ) と診断した. 特発性BOOPとの鑑別が問題となる肺内リンパ濾胞の増生は稀であり, 貴重な症例と考え報告した.
  • 樋口 雅則, 瓦田 裕二, 西尾 鐵男, 瀧井 昌英, 大久保 英雄
    1994 年 32 巻 3 号 p. 255-260
    発行日: 1994/03/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    患者は30歳の男性で, 原因不明の労作性呼吸困難を主訴として入院した. 胸部X線像で両肺野にび漫性に拡がる異常陰影を認め, 肺胞蛋白症が疑われた. 気管支肺胞洗浄液は乳糜様であり, TBLBにて肺胞腔内に蓄積するPAS染色陽性物質が証明されたことから, 肺胞蛋白症と診断した. 血清及び気管支肺胞洗浄液中のIgEとCEAは高値であった. 治療として全身麻酔下に左肺を生理食塩水で500mlずつ15回洗浄し, 2週間後に右肺を同様に洗浄した. 治療後血清CEAは順調に低下したが, 血清IgEは左肺洗浄後半減したのみであった. CEAとは異なり, IgEと本症との関連については現在まであまり知られておらず, 貴重な症例と考えられた.
  • 山上 由理子, 三重野 龍彦, 田代 隆良, 森内 昭, 那須 勝
    1994 年 32 巻 3 号 p. 261-265
    発行日: 1994/03/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    症例は34歳女性. 呼吸困難, 腹水を主訴として当科に入院した. 入院時著明な低酸素血症と肺高血圧が認められた. 画像診断では肺の過膨張とびまん性網状影が認められ, 腹部CTでは後腹膜腫瘤が認められた. 腹水は乳び腹水であった. 以上より過誤腫性肺脈管筋腫症が疑われたが, 呼吸不全が強いため肺生検は行わず腰椎麻酔下に後腹膜腫瘤生検を施行した. 迅速診断により angiomyoma の所見が得られたため引き続き両側卵巣摘除術を施行した. 摘除標本のエストロゲンレセブター, プロゲステロンレセプターは陽性であり, 術後メドロキシプロゲステロン15mg/日の経口投与を施行中である. 呼吸不全のため, 肺生検が行い得ない症例に対して, 後腹膜腫瘤生検は診断と治療 (卵巣摘除) を一期的に行い得る有用な手段と考えられた.
  • 櫃田 豊, 井岸 正, 河崎 雄司, 堀 伸二, 山本 芳麿, 佐々木 孝夫
    1994 年 32 巻 3 号 p. 266-270
    発行日: 1994/03/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    症例は68歳の女性. 開口障害および左頬部腫脹にて当院口腔外科を受診. 左頬部の筋生検標本にて非乾酪性肉芽腫を認め, 精査のため当科入院となった. MRではT1およびT2強調画像でともに高信号を呈する左咀嚼筋のびまん性腫脹が認められた. 本例は四肢・体幹の骨格筋にも腫瘤形成が認められ, またACE高値であり, TBLBにて非乾酪性肉芽腫を検出したため腫瘤型筋サルコイドーシスと診断した.
    腫瘤型筋サルコイドーシスではほとんどの場合筋肉の機能障害を伴うことはないが, 上肢屈筋群に形成された腫瘤により手指拘縮をきたした症例がいくつか報告されている. 本例は咀嚼筋拘縮により開口障害をきたしたきわめて稀な例ではあるが, 筋拘縮が本症における筋肉の機能障害の要因の1つであることを示唆した症例といえる.
  • 西 耕一, 松村 正己, 明 茂治, 大家 他喜雄, 太田 安彦, 佐藤 日出夫, 藤村 政樹, 松田 保
    1994 年 32 巻 3 号 p. 271-276
    発行日: 1994/03/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    肺性肥大性骨関節症 (pulmonary hypertrophic osteoarthropathy: PHO) は, 肺癌などの呼吸器疾患に伴い, 長管骨の骨膜新生, 関節炎, およびバチ状指などの病態を呈する症候群である. 成因は未だ明らかではない. 我々は, PHOを合併した肺癌患者において, 原発巣切除後速やかな症状の改善を認めた2症例を経験したので報告する. 2症例とも男性で, 末梢型の低分化型肺腺癌 (pT2N0M0, Stage I) であった. 術後麻酔から覚醒した時点で骨・関節の疼痛は速やかに消失し, 骨スキャン所見や骨X線所見は遅れて改善した. 2症例のうち1症例は, 骨単純X線写真では異常は認められず, 骨スキャンにおいてのみ異常が検出され, 術後1ヵ月でその異常はほぼ完全に消失した. PHOの検出および経過の評価には, 骨スキャンが良い手段であることが改めて確認された.
  • 海野 剛, 大玉 信一, 澤田 めぐみ, 高野 省吾, 三宅 修司, 橘 俊一, 吉澤 靖之, 青木 延雄, 松原 修, 田中 健彦
    1994 年 32 巻 3 号 p. 277-282
    発行日: 1994/03/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    77歳の男性が血痰を主訴に受診. 肺胞出血と診断され安静のみで軽快したが, 9ヵ月後に腎不全を伴って再び増悪した. 肺と腎以外に病変はなく, 腎生検で半月体形成性腎炎の所見をみとめた. 抗基底膜抗体は陰性. 抗好中球細胞質抗体 (ANCA) は, perinuclear pattern の陽性像 (P-ANCA) を示した. さらに, 抗ミエロペルオキシダーゼ抗体 (抗MPO抗体) をELISA法により測定し, 陽性の結果を得た. P-ANCAは, 肺胞出血や各種血管炎, 腎炎で陽性となる事が知られていたが, 従来の間接蛍光抗体法では偽陽性が多かった. 最近, その実体である抗MPO抗体を直接検出できるようになり, 半月体形成性腎炎およびこれと関連した肺胞出血, microscopic polyarteritis に特異的であることが示され. 抗MPO抗体をマーカーとすることで, これまで肺-腎症候群または特発性肺血鉄症などと診断されていた症例が抗MPO抗体関連疾患と判断される可能性や, 生検を待たずに治療方針を決定できる可能性が示唆された.
  • 押川 克久, 大野 彰二, 北村 諭, 蘇原 泰則, 藤井 丈士
    1994 年 32 巻 3 号 p. 283-287
    発行日: 1994/03/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    症例は68歳, 女性. 胸部X線写真にて右上肺野に異常陰影を指摘され, 経気管支肺生検を施行. 高分化腺癌との組織診を得, 右上葉切除術およびリンパ節郭清術 (R2) を施行した. 術後病理学的病期は, pT1N0M0, stage I であったが, 郭清リンパ節 (#2, #3, #4) には多核巨細胞を伴う2種類の類上皮細胞肉芽腫を多数認めた. いくつかの肉芽腫では壊死がみられその中にクリプトコッカスの菌体を多数認め, クリプトコッカスの感染による肉芽腫性病変と診断され, その他の肉芽腫はサルコイド反応と診断された. 本症例にみられる肺門・縦隔リンパ節のクリプトコッカスの感染は, Baker の提唱する「Primary pulmonary lymph node complex of cryptococcosis」という概念に該当するものと考えられ, 文献的考察を加えて報告した.
  • 井上 義一, 伊賀瀬 道也, 大塚 知明, 横山 彰仁, 河野 修興, 日和田 邦男
    1994 年 32 巻 3 号 p. 288-292
    発行日: 1994/03/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    60歳, 女性. 肥満, 高血圧, 糖尿病, 昼間の傾眠傾向, 無呼吸を認めていたが, 全身浮腫, チアノーゼを伴うようになり近医で呼吸不全, 右心不全を指摘され, 当院へ転院した. 入院時低カリウム血症 (2.1mEq/l), 低酸素血症 (PaO22 4.4mmHg) を認めた. 左副腎腫瘍を認め, 精査の結果, 原発性アルドステロン症に合併した閉塞型睡眠時無呼吸症候群と診断した. 原発性アルドステロン症に基づく代謝性アルカローシス, 低カリウム血症, 体液量増加が呼吸不全, 右心不全増悪の一因と考えられた. 電解質補正, 体重減少, 副腎腫瘍摘出術により睡眠時無呼吸症候群の臨床症状は軽快した.
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