日本胸部疾患学会雑誌
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32 巻, 5 号
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  • 斉藤 雄二, 佐々木 文彦, 酒井 哲夫, 石崎 武志, 中井 継彦, 宮保 進, 金森 一紀, 三船 順一郎
    1994 年 32 巻 5 号 p. 413-417
    発行日: 1994/05/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    慢性うっ血性心不全患者において, Acetylcholine (ACh) に対する気道過敏性に与える furosemide (40mg) の吸入効果における prostaglandin 系の関与について検討した. Achに対する気道過敏性は, 一秒量 (FEV1.0) を前値の20%低下させる Ach 濃度閾値 (PC20-ACh) を指標とした. Indomethacin 75mgを5日間投与後検討を行った Indomethacin 投与後における furosemide 吸入は呼吸機能に有意な変化をもたらさなかったが, PC20-Ach は median 値にて7.58mg/mlから11.9mg/mlへと有意に (p<0.01) 改善を示した.以上より慢性うっ血性心不全患者の furosemide 吸入による気道過敏性の改善効果には Prostaglandin 系の関与の可能性は低いと考えられた.
  • 森 進一郎, 福永 秀智, 丸山 征郎, 高岡 俊夫, 是枝 快房, 岩見 文行, 広津 泰寛, 溝口 亮, 川畑 政治, 納 光弘
    1994 年 32 巻 5 号 p. 418-425
    発行日: 1994/05/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    HTLV-I 感染者の肺局所における HTLV-I 感染細胞の有無を明らかにする目的で, HTLV-I キャリアの気管支肺胞洗浄液細胞から HTLV-I provirus DNA の検出を試みた. 対象は無症候性キャリア及び各種呼吸器疾患を伴った HTLV-I キャリア16例である. 全例に気管支肺胞洗浄 (BAL), を施行し, 回収分離したBAL細胞からpX遺伝子を標的にしたPCR法を施行した. 結果は, 評価可能な14例中14例の全例において BAL 細胞から provirus が検出された. provirus は無症候性キャリアのみならず各種呼吸器疾患を有するキャリアにおいて検出され, ウイルス検出の疾患特異性は認められなかった. また, 無症候性キャリアで BAL 液細胞分画正常例においても provirus が検出され, この様な症例の存在から, HTLV-I キャリアでは HTLV-I 感染細胞が肺局所に存在するものと推定された.
  • 楠原 範之, 阿部 直, 吉村 尚高, 冨田 友幸
    1994 年 32 巻 5 号 p. 426-432
    発行日: 1994/05/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    Nasal continuous positive airway pressure (n-CPAP) と炭酸ガスを負荷した際のヒト浅腹筋の生理学的反応について検討した. 健常成人10名を対象とし腹直筋, 外腹斜筋, 内腹斜筋および腹横筋に一対の fine wire 電極を挿入留置した. 15cmH2O の n-CPAP を加え, 次に呼気終末炭酸ガス濃度 (ETCO2) をモニターしながら, 15cmH2O の n-CPAP と炭酸ガスとを同時に負荷した. 続いて, 大気圧下でCO2再呼吸を行わせた. 上記検査中の筋電図について, 室内気吸入時とETCO2が7および9%時の3条件下で, n-CPAP の影響を分析した. n-CPAP には無関係に, ETCO2の上昇に伴い各筋からの電気的活動の出現率が増加し, 腹横筋で出現率が最も高く, 腹直筋で最も低かった. 3条件下のいずれでも n-CPAP により各筋からの電気的活動が増強した. 以上, n-CPAP と炭酸ガスは呼気筋である浅腹筋群を, 共働的に刺激すること, また腹横筋は主要な呼気筋であり, 腹直筋は補助的な呼気筋であることが考えられる.
  • 足立 規子
    1994 年 32 巻 5 号 p. 433-440
    発行日: 1994/05/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    肺の日和見感染症を疑った免疫不全患者41例から得られた気管支肺胞洗浄 (BAL) 液より, Polymerase chain reaction (PCR) 法を用いてニューモシスチス・カリニ (PC) 及びサイトメガロウイルス (CMV) DNAの検出を試みた. 41例中19例にPC-DNAの増幅を, 3例にCMV-DNAの増幅を認めた. このうち9例は従来の方法では診断できない症例だったが, 未治療の一例を除き, 全例でPC及びCMVに対する治療が奏効した. また, PC虫体を認めた検体については, 全例でPC-DNAの増幅を認めた. 免疫能が正常と考えられる患者16例から得られたBAL液を用いて同様の検討を行ったところ, PC及びCMV-DNAとも増幅を認めなかった. 以上より, PCR法はBAL液中のPC及びCMV-DNAの検出に極めて鋭敏であり, PC及びCMV肺炎の診断に対するBALの有用性を高めるものと思われた.
  • 血小板活性化因子の役割
    小野 貞文, 谷田 達男, 芦野 有悟, 野田 雅史, 田畑 俊二, 星川 康, 植田 信策, 西村 俊彦, 藤村 重文
    1994 年 32 巻 5 号 p. 441-445
    発行日: 1994/05/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    モノクロタリン (Monocrotaline: MCT) 投与によるラット肺組織の 3H-Thymidine 取込の変化, 及び血小板活性化因子 (Platelet-Activating Factor: PAF) の関与について検討した. MCT投与ラットでは, 投与三週間後には肺高血圧, 右心肥大, 肺動脈中膜肥厚が招来された. 特異的PAF拮抗薬であるWEB2170を投与したラットでは, 肺高血圧, 右室肥大, 肺動脈中膜肥厚の程度共に, MCTラットに比し有意に低値であった. MCTラットでは, 肺組織の 3H-Thymidine 取込は投与3日後より上昇し, 一週目以降にはコントロールラットに比し有意に増大, 2週, 3週後にも亢進していた. WEB2170投与ラットでは, MCTラットに比し低値で推移した. MCT投与による肺血管再構築および肺高血圧は, PAFを介して生じ, DNA合成促進を伴なうことが示された.
  • 川名 英世
    1994 年 32 巻 5 号 p. 446-452
    発行日: 1994/05/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    肺癌手術患者15例に術前に一側肺動脈閉塞試験と術前後の運動負荷試験を施行し, これら呼吸循環諸因子に検討を加え, 手術適応に関して考察した. 術前後の無酸素作業閾値と一側肺動脈閉塞試験時の Driving pressure (D. P: 肺動脈圧―肺動脈楔入圧), 肺小動脈血管抵抗 (PVRI) の三因子は相関した. 術後の回帰直線と術後のエネルギー代謝率の予測から, D. P=22.6mmHg, PVRI=621dyne・sec・cm-5・m2が肺切除量限界の目安として求められた. これに対応する肺動脈圧, 全肺血管抵抗は, 33.4, 885であった. D. P, PVRIと無酸素作業閾値と相関するのは, 両者が肺血管床の状態だけでなく, 肺機能, ガス交換状態, 心機能の総和を表している為である事を示した. 一側肺動脈閉塞試験の適応限界の理論的裏付けが得られた.
  • 四元 秀毅, 岡 輝明, 大江 和彦
    1994 年 32 巻 5 号 p. 453-464
    発行日: 1994/05/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    現在, 国際的に用いられている疾患分類に ICD や SNOMED コードがあるが, これらは呼吸器疾患の分類を行うのにはかならずしも適切なものではない. 本研究は, コンピューターを用いて多数の呼吸器疾患症例を解析するために, 呼吸器疾患および関連病態の系統的分類と, これに基づく疾患のコード化を行ったものである. コードは単軸方式により, 呼吸器および関連疾患を, (1) 気道・肺, (2) 胸膜, (3) 縦隔, (4) 横隔膜, (5) 胸壁, (6) 心, (7) 食道の各種疾患と, (8) 呼吸器疾患を惹起しやすい病態に大分類し, それぞれを炎症性, 腫瘍性疾患などに中分類し, さらにこれらを病変の発生部位やその他の特徴に従って細分類して作成した. また, その実用性を検討するためにこれを用いて本誌掲載の報告症例を分類し, ほぼ矛盾なく整理することができた. 本コードは多数の呼吸器疾患症例をコンピューターを用いて解析・検討する際に有用と考える.
  • 山上 祥司, 山田 保夫, 山本 俊信, 中村 敦, 武内 俊彦
    1994 年 32 巻 5 号 p. 465-468
    発行日: 1994/05/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    症例は69歳女性. 検診で胸部X線写真の右2弓突出を指摘され受診した. 単純写真, 断層写真, CT, エコーで前縦隔の嚢胞性疾患と診断し, 入院後, 嚢胞を穿刺排液し, 造影, 及び穿刺液を検査した. 良性の胸腺嚢胞を疑い, 排液で十分と考え経過観察中である. 治療後2年経過したが, 嚢胞の占拠部位は縦隔脂肪組織が描出され再発は認められなかった.
  • 藤原 寛, 栗原 直嗣, 太田 勝康, 平田 一人, 松下 晴彦, 金澤 博, 武田 忠直
    1994 年 32 巻 5 号 p. 469-475
    発行日: 1994/05/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    症例は48歳女性で福岡出身. 咳嗽および微熱を主訴として当科に来院し, 胸部レントゲンにて多発性の辺縁不明瞭な結節影が認められ, 血液検査では成人T細胞白血病ウイルス関連抗体が×1,024と高値を示した. 気管支鏡検査にて確定診断がつかず, 開胸肺生検が行われた. 組織は異型性のないリンパ球, 形質細胞, 組織球を中心としたリンパ系細胞が浸潤した肉芽組織で, 壊死を伴わず, 結節病変の内部および周辺の血管はこれらの細胞が浸潤している所見が認められた. 以上の所見より Jaffe の提唱する angiocentric immunoproliferative lesions (grade I) と診断し, プレドニゾロン, サイクロフォスファミドの併用療法を行い寛解が得られた. 本疾患はリンパ腫様肉芽腫症を悪性度により3つに分類したもので, 近年, EBウイルスとの関係が注目されている. 本例ではATLウイルスが発症に関係した可能性があると考えられた.
  • 大渡 五月, 雪竹 基弘, 菅原 啓介, 坂井 二郎, 山本 英彦
    1994 年 32 巻 5 号 p. 476-479
    発行日: 1994/05/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    親子で同時に, モクズガニを摂食. 1ヵ月後に息子が胸水貯留で発症, 10ヵ月後に母親が血痰, 咳嗽, 胸部X線上結節性陰影で発症した. 両者とも末梢血で好酸球増多を示し, 免疫血清学的検討により, いずれもウエステルマン肺吸虫症と診断され, ビチオノール投与で症状軽快し, オクタロニー法での沈降線も完全に消失した. 両者は同時期に感染したと考えられるが, 発病時期および臨床症状が異なっており, ウエステルマン肺吸虫症の宿主体内移行路を考える上で興味深いと考えられる.
  • 豊嶋 幹生, 佐藤 篤彦, 谷口 正実, 妹川 史朗, 中澤 浩二, 早川 啓史, 千田 金吾
    1994 年 32 巻 5 号 p. 480-484
    発行日: 1994/05/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    症例は16歳, 男性. 工業高校の実習にてステンレス鋼をグラインダーで削る作業を防塵マスクを着用せず行ったところ, 数時間後より咳嗽, 発熱が出現した. 胸部X線上右肺野にスリガラス状陰影, 斑状影, カーリーのBライン, 高分解能CTにて融合傾向を示す汎小葉性の肺野濃度の上昇, 気管支壁肥厚像, 小葉間隔壁の肥厚を認めた. 白血球22,500/mm3 (好酸球5%), PaO2 57.3Torr. BALにて総細胞数15.0×105/ml, 好酸球74%. ステロイド剤投与にて速やかに軽快した. ステンレス鋼には0.1%のニッケルが含まれていることから, 0.5%硫酸ニッケル水溶液吸入負荷を施行したところ, 6時間後より咳嗽, 発熱, 白血球数の増加, A-aDo2の開大を認め, ニッケル吸入試験陽性と判定した. ニッケルによる好酸球性肺炎は, 過去3例のPIE症候群の文献報告があるのみで, 非常に稀な症例と考えられた.
  • 手丸 理恵, 山下 直宏, 松井 祥子, 大田 亨, 川崎 聡, 小林 正
    1994 年 32 巻 5 号 p. 485-490
    発行日: 1994/05/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    柴朴湯による薬剤性肺臓炎の1症例を報告した. 症例は60歳の女性で, 平成4年10月12日外来にて柴朴湯を投与され一包内服したところ, 約2時間後に悪寒, 呼吸困難が出現したため, 翌10月13日外来を受診, 著明な低酸素血症と胸部X線写真上両肺野にすりガラス様陰影を認めたため, 急性間質性肺炎を疑い, ステロイドパルス療法を施行し軽快した. その後, 成分が柴朴湯と近似した煎じ薬を3日間服用したところ, 再び発熱・呼吸困難が出現し, 胸部X線写真上も両肺野にすりガラス様陰影を認めた. 再びステロイドパルス療法を施行し軽快した. 薬剤によるリンパ球刺激試験および皮膚貼布試験では, 柴朴湯に対して陽性を示し, 経過とあわせ, 柴朴湯による薬剤性肺臓炎と診断した.
  • 須山 尚史, 増本 英男, 荒木 潤, 浅井 貞宏, 池野 雄二, 池田 高良
    1994 年 32 巻 5 号 p. 491-496
    発行日: 1994/05/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    肺腫瘍塞栓は担癌患者における呼吸不全の原因としてはよく知られているものの生前に診断されることはまれである. 今回我々は肺腫瘍塞栓により多発性肺梗塞および亜急性肺性心を呈した膀胱癌の1例を経験したので報告した. 症例は86歳, 男性. 咳嗽, 喀痰, 血痰を主訴として入院. 膀胱癌にて放射線治療を受けた既往があり, 入院後再発が確認された. 胸部X線上散在性に浸潤影が認められ, 右心不全にて死亡. 剖検にて, 肺腫瘍塞栓もそれによる多発性の肺梗塞が確認され, 亜急性肺性心にて死亡したものと考えられた. 肺梗塞の原因としては四肢の静脈血栓によるものが多く, 肺腫瘍塞栓によるものはまれである. さらに肺腫瘍塞栓から肺梗塞まで進展するものは少ない. 文献的に肺腫瘍塞栓の診断およびそれに引き続いての肺梗塞の画像診断等について考案を加えた.
  • 竹田 潔, 熊谷 融, 林 清二, 谷尾 吉郎, 川瀬 一郎, 岸本 忠三, 藤原 正隆
    1994 年 32 巻 5 号 p. 497-501
    発行日: 1994/05/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    47歳, 女性. 1988年および1992年6月に左下肢静脈血栓症を生じ, 続いて1992年8月に右肺中葉に肺血栓塞栓症を併発した. ワーファリンによる抗凝固療法および保存的治療により中葉の陰影は約2ヵ月で消失した. 繰り返す血栓症について凝固, 線溶系検査を施行したところ, 凝固抑制蛋白の一つであるプロテインCが抗原量, 活性ともに減少および低下しており, プロテインC欠損症と診断した. 本例の姉も同様に再発性の下肢静脈血栓症を生じており, この姉および本例の母においてプロテインC抗原量の減少および活性の低下を認めたため, 家族性のプロテインC欠損症と診断した. 本例では, ワーファリンによるプロトロンビン時間の減少を70%前後程度にとどめているが, その後血栓症の再発は認められていない.
  • 樫山 鉄矢, 藤田 明, 渡辺 明, 鈴木 光, 中村 恭二, 木村 仁
    1994 年 32 巻 5 号 p. 502-506
    発行日: 1994/05/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    36歳男性, 約1年に及ぶ腰痛のため他院入院, Histiocytosis X と診断を受け骨掻爬移植術をうけた. その後微熱が続き, また肺野に孤立腫瘤陰影が出現. 約1年後当院受診. 新たな骨病変, 肝内腫瘤様病変が指摘されたが明らかなリンパ節病変は認められなかった. 経皮肺生検, 肝生検などを行ったが特異的な所見は得られず, 前医と同様に Histiocytosis X の疑いとして経過観察となった. さらに約1年後, 新たに腫大してきた頸部リンパ節の生検にて Hodgkin 病と確定診断された. Hodgkin 病において骨病変は進行例や初回治療失敗例に出現することが多い. また肺実質に病変を認める場合は, 縦隔などにより大きなリンパ節病変を認めることがほとんどである. 本症例においては, 長期間にわたり明らかなリンパ節病変を指摘できず, 発症してから診断に至るまで約3年を要した.
  • 春日 郁馬, 堀江 忍, 峯村 和成, 清川 浩, 内海 健太, 鳥居 泰志, 米丸 亮, 市瀬 裕一, 外山 圭助, 海老原 善郎
    1994 年 32 巻 5 号 p. 507-510
    発行日: 1994/05/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    症例は67歳, 男性. 近医で胸部X線上縦隔陰影の拡大を指摘され, 1992年2月に入院した. 縦隔に発生した悪性腫瘍を疑い縦隔鏡下に腫瘤の生検を実施し, 未分化な癌組織を認めた. 縦隔に対し放射線療法を施行後, 自宅で一時経過を観察されていた. 11月20日呼吸困難のため再入院. 化学療法により腫瘍は一時縮小傾向を示したが, 肺炎を併発し12月17日に死亡した. 剖検では組織学的に生検組織に同じく, 核小体が明確で大型の核を有する大型の癌細胞の集簇と間質へのリンパ球の浸潤を認め, 上咽頭や胸腺に発生するとされるリンパ上皮腫様癌の組織像を呈していた. しかし咽頭には腫瘍は検出されず, また萎縮変成した胸腺も存在したため, 縦隔原発のリンパ上皮腫様癌と診断した.
  • 原田 進, 原田 泰子, 丸山 正夫, 加治木 章, 北原 義也, 高本 正祇, 石橋 凡雄
    1994 年 32 巻 5 号 p. 511-517
    発行日: 1994/05/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    58歳の女性, 肺結核症による左上葉切除, 胸郭成形術および甲状腺癌切除術の既往歴あり. 胸部X線検査で縦隔腫瘍を指摘され, 術後悪性胸腺腫 (紡錘細胞型) と診断された. 術前より血清γグロブリンは低値であったが, 術後更に進行性に低下した. その後気道感染症を頻回に繰り返し, 両側肺野に広範な高度の気管支拡張をきたし, 8年後呼吸不全で死亡した. 末梢血リンパ球サブセットは, 初期では Pan T 細胞の比率は正常であったが, CD4の低下, CD8の上昇が見られ, 特に Helper T の低下, Cytotoxic T の上昇が顕著であった. しかし後期ではT細胞の全てのサブセットが低下を示し, 特に Naive T (CD45RA+CD3+T) 細胞の低下が顕著であった. 一方, B細胞は常に正常であり, NK細胞は上昇した. リンパ球サブセットの成績とPHA刺激に対するリンパ球の反応性の結果から, T細胞の機能異常が低γグロブリン血症の原因であることが示唆された.
  • 田中 康子, 武藤 始, 秋山 法久, 荒井 康男, 宮本 康文, 佐野 靖之
    1994 年 32 巻 5 号 p. 518-521
    発行日: 1994/05/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    症例は55歳, 男性. 主訴は労作時呼吸困難. 家族歴に小児喘息あり. 生来健康であったが, 労作時に増強する呼吸困難のため近医受診, 原因不明のまま約2週間経過観察されていたが症状が改善しないため精査目的で当科を紹介され受診した. 来院時, 胸部聴診で異常なく, 呼吸回数は34回/分と tachypnea であったが, 血液ガス, 呼吸機能, 胸部XP, 胸部CT, ECGとも異常なく, 肺梗塞も肺血流シンチより否定された. アセチルコリンテストで625μg/mlと気道過敏性の亢進を認めたため気管支喘息の亜型を疑い, 気管支拡張薬を投与したところ症状は著明に改善し, 以後経過良好である. 労作時に増強する呼吸困難のみで他に所見がない症例には気管支喘息の可能性を疑い気道過敏性試験を施行し, 陽性なら気管支拡張薬を投与することを考慮にいれたい.
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