日本胸部疾患学会雑誌
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32 巻, 8 号
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  • 石橋 豊, 生馬 勲, 盛岡 茂文, 森山 勝利
    1994 年 32 巻 8 号 p. 715-720
    発行日: 1994/08/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    一年間の在宅酸素療法 (HOT) を受けている患者19例において, 酸素吸入中断の肺内血行動態におよぼす影響について検討した. いずれもHOT開始前に空気呼吸下で肺内血行動態を測定し, 一年間のHOTの後, 19例中10例 (A群) は酸素吸入下で一年後の血行動態測定を行い, その後酸素吸入を2時間中止し再度測定し, 他の9例 (B群) は検査4時間前に酸素吸入を中止して測定し, その後酸素吸入を再開して2時間後再度測定した. A, B両群の振り分けは交互に行った. 平均肺動脈圧はA群ではHOT前, HOT一年後の酸素吸入下それぞれ27.2±7.2, 20.4±3.2Torrと一年後の酸素吸入下で有意な減少を認めたが, 2時間の酸素吸入中止によりHOT前値に再上昇 (26.2±5.2Torr) した. B群ではHOT前, 一年後ともに有意な変化を認めなかった. 一年後の酸素吸入再開後も低下傾向を示すものの有意な減少を示さなかった. 一年後の両群間の差の要因として, 酸素吸入中止による肺動脈圧の比較的早い再上昇, 再吸入による緩やかな回復が考えられ, HOT患者における酸素吸入の不用意な中断は肺内血行動態に明らかな変化を来し, 右心不全の引金ともなり得ることが示唆された.
  • 伊泊 大造, 鵜山 治, 松山 知弘
    1994 年 32 巻 8 号 p. 721-730
    発行日: 1994/08/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    ovalbumin で感作したモルモットと Brown-Norway (BN) ラットを用いて暴露後の呼吸抵抗 (Zrs) と肺組織中好酸球数の変化を測定した. BNラットに抗ラット intercellular adhesion molecule-1 (ICAM-1) モノクローナル抗体 (MoAb) 1A29単独あるいは1A29と抗ラットCD18 MoAb WT-3の両方を暴露前投与し, 抗接着分子抗体投与の喘息反応への影響を検討した. さらに1A29とWT-3を用いた免疫組織化学により暴露前後のBNラットにおけるICAM-1とCD18の動態を比較検討した. Zrsは暴露直後に加え暴露後7時間までに約80%のモルモットと全例のBNラットで再上昇した (late asthmatic response, LAR). LAR時の好酸球数は他の時点に比して有意に増加した (p<0.01). 抗体投与はLAR時のZrsと好酸球数の上昇を有意に抑制した (p<0.01). 免疫組織化学上,LAR時に気管上皮細胞の基底部分と肺内血管内皮細胞でICAM-1免疫反応性は亢進し subepitheliuln のCD18陽性細胞は増加した. 以上の所見は喘息反応におけるICAM-1-CD18を介した好酸球接着関与の重要性を示すと思われる.
  • 福岡 淳一
    1994 年 32 巻 8 号 p. 731-738
    発行日: 1994/08/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    40例の成人慢性喘息患者で, ステロイド剤の効果を1日4回のピークフロー値 (PEF) より retrospective に検討した. PEFの週平均値では personal best PEF に対して週平均値が60%未満が19例, 60%以上70%未満が15例, 70%以上80%未満が2例, 80%以上は4例であった. 十分量のステロイド剤投与後は全例良好な反応を示した (x2=61.6, p<0.001). PEFの日内変動では4点測定法により早朝発作と夜間発作を分離して検討できた. 早朝発作のみが22例, 早朝発作と夜間発作合併例が10例, 夜間発作のみは認めなかった. ステロイド剤投与後では夜間発作は全例で消失したが, 早朝発作は5例が残存した. ステロイド剤とβ2刺激剤の反応性から, 早朝発作と夜間発作が異なった病態を反映している可能性が示され, 喘息病態の解明には早朝発作と夜間発作を対比して検討する必要があると考えた.
  • 山口 佳寿博, 森 正明, 高杉 知明, 小山田 吉孝, 河合 章, 浅野 浩一郎, 青木 琢也, 藤田 浩文, 鈴木 幸男
    1994 年 32 巻 8 号 p. 739-746
    発行日: 1994/08/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    健常成犬ならびにオレイン酸急性肺損傷犬を用いて高濃度酸素吸入 (60%酸素) が肺内換気・血流比 (VA/Q) 分布に及ぼす影響を検討した. VA/Q分布を多種不活性ガス洗い出し法によって求め, 肺血流分布 (Q) ならびに肺胞換気 (VA) 分布の中心的・平均的位置を表わすVA/Q値 (mean Q, mean VA) を算出した. VA/Q分布の分散を示す一つ目の指標として mean Q, mean VA を中心値としたQ分布ならびにVA分布の標準偏差を求めた. VA/Q分布の分散を表わす二つ目の指標として指標不活性ガスの動脈血・肺胞気ガス分圧較差を血液, ガス分配係数に対してプロットし, そのカーブによって囲まれた面積 (aAD area) を求めた. 高濃度酸素吸入によって健常肺のVA/Q分布の分散は軽度増加したが急性損傷肺においてはシャント率ならびにVA/Q分布の分散が減少した. 以上より, 高濃度酸素吸入は健常肺のVA/Q不均等分布を増悪させるが急性損傷肺のそれを逆に改善させるものと結論した.
  • 山田 政司, 古瀬 清行, 河原 正明, 小河原 光正, 安宅 信二, 岡田 達也, 川口 祐司, 紙森 隆雄, 中尾 光伸, 上田 英之助
    1994 年 32 巻 8 号 p. 747-751
    発行日: 1994/08/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    胸部X線写真で肺結核を疑われ, 気管支鏡検査を施行し, 経気管支生検の組織診で結核と診断された15例と, 治療的診断で肺結核と診断された15例について, 生検材料よりDNAを抽出し, Polymerase chain reaction (PCR) 法を用いて結核菌の検出を試みた. 組織診陽性15例中PCR陽性は8例 (生検材料の結核菌塗抹陽性培養陽性7例, 塗抹陰性培養陽性1例), 組織診および塗抹培養ともに陰性の15例は全例PCR陰性であった. 生検材料からでもPCR法による結核菌の検出は可能であり, 塗抹陰性培養陽性の1例は培養結果を待たずに結核菌と同定できた. また塗抹陽性の7例でも迅速に結核菌と同定できた. しかし組織診は陽性であるが培養陰性の6例は結核菌を検出できず, 組織からのDNA抽出方法を工夫したり, 検出感度を高めるために nested PCR 法を用いることを考慮する必要があると思われた.
  • 望月 眞, 横山 武, 酒井 尚雄
    1994 年 32 巻 8 号 p. 752-756
    発行日: 1994/08/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    慢性型特発性間質性肺炎 (IIP) 11例 (このうち5例は原発性肺癌合併例, 他の6例は非合併例), 急性型IIP 6例, 対照として肺胞性肺炎 (AP) 5例, 計22例をそれぞれ剖検例肺につきテネイシンの局在について免疫組織化学的に検索した. 慢性型IIPの蜂窩肺部では, テネイシンは化生上皮の基底膜とともに線維性に厚く肥厚した胞隔の上皮下間質に染色され, 非蜂窩肺部では, 線維性に肥厚した胞隔の一部に染色された. 肺癌合併IIPでも肺癌非合併IIPでもテネイシンの分布はまったく同じであった. 急性IIPでは肺胞壁の他に, 器質化のはじまった硝子膜と線維素の器質化部に染色された. APでは器質化のはじまった肺胞内線維素塊に染色されたが, 肺胞壁にはほとんど染色されなかった. テネイシンは, 肺の線維化と構造改変に関与し, IIP合併発癌の promotion の1つの役割をなすと考えられた.
  • 長谷川 幹, 石原 享介, 松本 久子, 冨岡 洋海, 岡崎 美樹, 片上 信之, 坂本 廣子, 梅田 文一, 片山 覚
    1994 年 32 巻 8 号 p. 757-762
    発行日: 1994/08/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    BDP吸入中の喘息患者94例の副腎皮質機能を rapid ACTH test を用いて検討した. 患者を最近1年間の治療内容からBDP+短期ステロイド内服群 (B+S群),BDP+経口ステロイド常用群 (B+R群), およびBDP単独群の3群に分類した. ACTH負荷前の血漿コルチゾル値, 負荷後の最大コルチゾル値, および前値からの上昇はいずれもB+R群で他の2群に比べて有意に低値であったが, B+S群と単独群との間には有意差を認めず, ACTH に対する反応性から副腎皮質機能の抑制ありと判定された症例も, B+S群41例中4例 (9.8%), B+R群19例中10例 (53%), 単独群34例中1例 (2.9%) で, B+R群に有意に高率であったが, B+S群と単独群との間には有意差を認めなかった. BDPに短期の経口ステロイドを加えた治療は, その安全性からみてBDP単独による治療と同等である.
  • 池田 道昭, 山根 喜男, 萩原 昇, 大沼 菊夫, 蓮池 美樹
    1994 年 32 巻 8 号 p. 763-767
    発行日: 1994/08/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    自然気胸のドレナージ治療を外来で行った. 対象として14歳から75歳の111例を選び, 初診時に外来で胸腔ドレーンを挿入し, 約1時間の持続吸引を行った. その後, air leak が止まり肺が再膨張した患者に対してポシェット型気胸排気装置を装着して帰宅させた. 以後2~3日毎に来院させ, 約1週間後に抜管した. 一方, 初診時の吸引で air leak が止まらなかった患者は入院とした. また, 外来通院中に肺が再虚脱したものも入院とした. その治療成績は, 初診時に air leak が止まらず入院したものが14例, 初診時に創痛や再膨張性肺水腫などのために入院したものが5例, また, 外来通院中に肺が再虚脱し入院したものが11例あり, 結局, 81例 (72.9%) が外来ドレナージ治療で軽快した. 外来通院中にドレーンが抜けたものが2例あった. 抜管後1例に創感染をみた. 自然気胸の外来ドレナージ治療は, 自覚症状のない, 特に若年者には推奨すべき方法と考えられる.
  • 百道 敏久, 吉井 千春, 二階堂 義彦, 横崎 恭之, 永田 忍彦, 中田 肇, 城戸 優光
    1994 年 32 巻 8 号 p. 768-773
    発行日: 1994/08/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    症例は54歳, 女性. 労作時呼吸困難を主訴とし, 健診時の胸部X線写真で両側下肺野の線状, 網状影を指摘され, 精査のため当科に入院した. 肺機能検査では拘束性換気障害と拡散能の低下を, 胸部CT写真では両側下肺野背側に径の大きさが小さく揃った小嚢胞状変化を伴う境界不明瞭で不均一な濃度上昇域と air bronchogram および air bronchiologram を, TBLBでは肺胞隔壁の肥厚と単核細胞浸潤と肺胞内の器質化滲出物を, BALFでは総細胞数の増加, リンパ球分画の著明な増加, OKT4+/OKT8+の低下を認めた. このことよりIPFよりもBOOPの可能性が高いと考え, 開胸肺生検を施行し, ポリープ様肉芽を伴った閉塞性細気管支炎, 単核細胞の浸潤を伴った肺胞隔壁の肥厚, 器質化肺炎を認めた. 以上よりBOOPと診断し, prednisolone を投与し軽快した. IPFとの鑑別が困難であったが, BALF所見とCT所見の解析がBOOPの診断に有用であったと考え報告する.
  • 相良 勇三, 林 孝二, 白石 裕治, 小松 彦太郎, 村上 国男, 片山 透, 蛇沢 晶
    1994 年 32 巻 8 号 p. 774-777
    発行日: 1994/08/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    症例は, 57歳女性, 34年前の検診で胸部異常陰影を指摘されたが, 良性腫瘍として, 経過観察を行っていた. 腫瘍が徐々に増大してきた為, 診断及び治療を目的で入院した. 胸部レントゲン写真では左上肺野に直径42mmの境界明瞭な円形陰影を認め, 胸部CTでは slit 状の pulmonary menisucus sign を認めた. 術前に確定診断は得られず, 悪性腫瘍を否定できない為, 肺葉切除術を施行した. 摘出標本の病理診断は肺硬化性血管腫であった. 肺硬化性血管腫で, pulmonary meniscus sign を呈することは, 極めて稀である. 文献的にも本症例と同様, 比較的大きな腫瘍に slit 状の air space が見られるのが特徴であった.
  • 井上 祐一, 藤井 毅, 大坪 孝和, 森 理比古, 石野 徹, 久野 博, 河野 茂, 原 耕平, 綾部 公懿, 富田 弘志, Mitsu ...
    1994 年 32 巻 8 号 p. 778-784
    発行日: 1994/08/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    症例は, 46歳, 女性. 平成3年12月の検診で上縦隔に腫瘤影を指摘され, 精査のため入院. 胸部X線およびCTにて甲状腺下部から上縦隔にかけて径8cm大の腫瘤と, 右上葉に径2cm大の薄壁空洞陰影を認めた. 手術標本にて縦隔腫瘍は胸腺腫, 右上葉の空洞陰影は肺クリプトコッカス症と診断した. HTLV-1抗体 (PA) は2,048倍と陽性で, 末梢血にはATL細胞は認めず, HTLV-1キャリアーと考えられた. 細胞性免疫では, NK活性の低下を認めた. 胸腺腫は小リンパ球主体でATL細胞のような細胞異型性や多形成は見られなかったが, このリンパ球に provirus DNA の組み込みが認められた. HTLV-1キャリアーで肺クリプトコッカス症と胸腺腫を発症し, さらにHTLV-1キャリアーと胸腺腫との間に, 何等かの因果関係が示唆された症例を経験したので報告する.
  • 毛利 雅美, 南部 静洋, 宮崎 英明, 山之内 菊香, 栂 博久, 大谷 信夫
    1994 年 32 巻 8 号 p. 785-790
    発行日: 1994/08/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    症例は62歳, 男性. 発熱, 血痰にて入院. 胸部画像上, 両側びまん性に air bronchogram を伴う細葉中心性の浸潤影を認め, 肺胞洗浄液にて強血性の回収液と担鉄マクロファージを認め, 肺胞出血と診断. また同時に血清クレアチニン2.4mg/dl, 尿素窒素31mg/dl, 尿一般検査にて蛋白尿, 血尿を認め, 腎生検にて硝子化糸球体と軽度のメサンギウム細胞の増殖がみられた. また喘鳴の既往と軽度の閉塞性肺機能障害および軽度の好酸球増多を認めたため, 気道過敏性および可逆性試験を施行したところ陽性で気管支喘息と診断した. 抗好中球細胞質抗体 (P-ANCA) が高力価 (ELISA;×1,000↑) で陽性であり, 組織学的に血管炎の所見は証明できなかったが, メサンギウム増殖性糸球体腎炎, 肺胞出血, 気管支喘息を伴う血管炎症候群と診断した. 肺, 腎所見の急速な進行を認めたが, 副腎皮質ステロイド剤, 免疫抑制剤を投与し現在良好に経過観察中である.
  • 藤下 隆, 赤川 直次, 辻 政彦, 三輪 淳夫, 水島 豊, 小林 正
    1994 年 32 巻 8 号 p. 791-795
    発行日: 1994/08/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    58歳, 女性. 肺結核で入院加療中, 左季肋部痛が出現. 腹部超音波検査及び腹部CTにて, 腹壁と肝左葉との間に孤立性の腫瘤影が認められた. 同腫瘤の吸引細胞診検査で転移性肝腫瘍が疑われるも原発巣は同定できず, 審査開腹術が施行された. その結果, その腫瘤は肝外性で腹膜下結核腫であった. 上腹部のリンパ節結核も認められた. 腹部の結核は, 昨今我が国では比較的まれであり, 腹部の腫瘤の鑑別診断上, 貴重な症例と考えられた.
  • 雨宮 徳直, 西 耕一, 大森 俊明, 大家 他喜雄, 明 茂治, 藤村 政樹, 松田 保
    1994 年 32 巻 8 号 p. 796-802
    発行日: 1994/08/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    症例は80歳の男性で, 食欲不振, 咳漱, および労作時呼吸困難を主訴に来院し, 胸部X線写真にて右側大量胸水を指摘され, 精査のため入院となった. 胸水の原因は, 当初不明であったが, 性状は漏出性であった. 労作時呼吸困難を呈していたため, とひあえず胸腔ドレナージを行い, 胸水は一旦消失した. しかし, ドレナージ中止後3日で再度右側大量胸水を認め, 精査の結果, 肝硬変が原因疾患と判明した. 通常, 肝硬変患者に胸水が出現するときは, ほとんどの場合腹水を伴うが, 本症例では, 画像詞断で指摘できるような明らかな腹水を経過中1度も認めなかった点が稀であった. さらに, 本症例では, 経横隔膜的経路の存在が, 99mTc-sulfur colloid を用いた検査で間接的に証明され, この経路の存在が明らかな腹水を伴わずに胸水が発現した要因の一つと考えられた.
  • 岩田 政敏, 井田 雅章, 北 倫子, 堀口 倫博, 佐藤 篤彦
    1994 年 32 巻 8 号 p. 803-808
    発行日: 1994/08/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    Respiratory bronchiolitis-associated interstitial lung disease の本邦初症例を報告した. 症例は48歳, 男性. 喫煙指数は720. 半年間続く乾性咳漱を主訴に来院. 胸部X線上両側に網状陰影がみられた. CTではスリガラス状の淡い肺野濃度上昇がみられ, 小葉中心性分布を呈していた. BALではマクロファージが99.5%を占めていた. 胸腔鏡下肺生検を施行したところ, 間質の肥厚ならびに肺胞腔内の病変は小葉を中心とする分布を示し, 強拡大像で呼吸細気管支, 終末細気管支壁ならびに周囲肺胞隔壁は軽度のリンパ球浸潤と線維化により肥厚し, 肺胞腔内には褐色調のマクロファージの集簇が認められ, この所見から本症と診断した. 本症はDIPとの鑑別が臨床的に重要である.
  • 黄 政龍, 北野 司久, 神頭 徹, 鈴村 雄治, 松井 輝夫
    1994 年 32 巻 8 号 p. 809-813
    発行日: 1994/08/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    症例は19歳の男性で, 主訴は左胸痛であった. 左第5肋骨に有痛性腫瘤を認めた. 第5肋骨に骨融解性の腫瘍を認め, 肋骨部分切除術を施行した. 摘出標本の病理学的検索では, 組織球様細胞の増殖と好酸球浸潤による肉芽腫を認め, S-100蛋白陽性であり, 好酸球性肉芽腫とした. その後, 骨病変の再発 (下顎骨, 側頭骨, 頬骨, 肩甲骨, 右第11肋骨, 脛骨) を繰り返したが, 放射線照射が局所療法として有効であった. 更に初発時より画像上肺病変の存在が示唆されたが, 6年間無症状で著変を認めなかった. 今後も骨病変の再発のみならず, 肺病変も含めた長期的観察が必要と思う.
  • 中村 賢二, 礒部 威, 奥崎 健, 二井谷 研二, 村上 功, 由田 康弘, 藤原 康弘, 山岡 直樹, 長谷川 健司, 山木戸 道郎
    1994 年 32 巻 8 号 p. 814-818
    発行日: 1994/08/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    症例は51歳男性. 咳嗽を主訴とし, 胸部単純X線検査, 胸部CTで左肺門部に腫瘤を認めた. 肺門リンパ節の悪性病変を否定し得ないことより, 開胸術を施行した. 左肺門の腫瘤は#11のリンパ節に相当し, 他に腫瘍性病巣を認めずリンパ節のみ摘出した. 術後の病理組織学的検索でリンパ節内に小細胞癌の病巣を認めた. 術後他臓器等, 全身の検索を行ったが, 原発巣は見い出せず, T0N1M0の肺小細胞癌と診断した. 術後 carboplatin (CBDCA) 単剤による化学療法を月一回施行し,経過観察を行っているが, 術後約2年の現在もなお, 原発巣の出現を認めていない. 本症例のように肺門リンパ節のみ癌病巣を認め, 肺内に原発巣が証明されないT0N1M0症例は極めて稀と考えられる.
  • 渋谷 泰寛, 北村 諭
    1994 年 32 巻 8 号 p. 819-823
    発行日: 1994/08/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    一側肺に広範な浸潤影を呈した原発性肺クリプトコックス症の1例を報告した. 症例は76歳, 男性. 基礎疾患や免疫異常はない. 一般抗菌剤に反応しないため, 経気管支肺生検を行って, 組織学的に肺クリプトコックス症と診断された. 治療に, fluconazole, miconazole の点滴静注及び amphotericin B の吸入を併用し, 臨床所見の改善を認めた. 血清クリプトコックス抗原価は Crypto-test と Serodirect 法 (Eiken-test) の2種類を用いて測定した. 両者は感度に差が見られたが, 相関関係を持って低下した.
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