日本胸部疾患学会雑誌
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33 巻, 3 号
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  • 牧元 毅之, 土屋 智, 中野 秀彦, 渡辺 覚, 武井 義和, 野本 泰介, 石原 真一, 斎藤 龍生
    1995 年 33 巻 3 号 p. 241-246
    発行日: 1995/03/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    今回我々は1982年1月1日から1993年9月30日までに当院に入院し治療を行った40歳以下の原発性肺癌患者30例 (若年者群) の臨床的特徴について, 41歳以上の原発性肺癌患者978例 (非若年者群) の対照群と比較検討した. 全症例に対する若年者群の比率は約3.0% (30/1,008例) であった. 若年者群での女性の比率は53.3% (16/30例) であり, 非若年者群の27.8% (272/978例) と比較して有意に高かった (p<0.01). 喫煙率は非若年者群が72.8% (711/976例) と有意に高かった (p<0.01). 組織型は腺癌が若年者群で63.3% (19/30例) と多く (p<0.05), 扁平上皮癌は非若年者群に34.3% (335/978例) と有意に多かった (p<0.05). Median Survival Time (MST) は若年者群で約30.0ヵ月, 非若年者群は約14.6ヵ月であったが有意差はなかった. 若年者群の Stage I, II期症例は全例検診発見によるものであった.
  • 宿輪 昌宏, 浅井 貞宏, 波多 史朗, 山佐 稔彦, 宮原 嘉之, 原 耕平, 西島 教治
    1995 年 33 巻 3 号 p. 247-252
    発行日: 1995/03/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    肺気腫患者の肺血管床を評価する目的で, 正常心肺機能者1例, 肺気腫3例に対して, 濃度分解能に優れた digital subtraction pulmonary angiography (DS-PAG) を施行し, 肺血流シンチグラムによる画像と比較した. 正常心肺機能者は, DS-PAGによって肺野の末梢まで均一に濃染した肺血管床が描出された. 肺気腫例では, 肺機能検査上1秒率が70%から54%の軽度の閉塞性障害しか示さなかったものの, DS-PAG上肺動脈はほぼ正常であるが血管床が著明に減少していた. 肺血流シンチグラムの画像と比較してDS-PAGの画像のほうが肺血管床の減少をより明瞭に描出できた. 以上のことより, 肺気腫患者にDS-PAGを施行することにより, 肺動脈異常の評価のみならず肺血管床減少の評価まで可能であった.
  • 林 光俊, 永井 厚志, 小林 健司, 沢井 高志, 金野 公郎
    1995 年 33 巻 3 号 p. 253-256
    発行日: 1995/03/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    細菌学的検査陰性で結核性胸膜炎の疑われた患者8名及び癌性胸膜炎患者6名において, 胸水よりDNAを抽出し, 結核菌IS6110及び膜蛋白65Kd遺伝子を増幅する2種類の primer を用い, polymerase chain reaction (PCR) 法にて検討した. 結核性胸膜炎の疑われた患者すべてに結核菌DNAを検出することが可能であった. 悪性胸水ではPCR陰性であった. PCR法は従来の検査法では確定しえない結核性胸水の診断に, 迅速で有用な方法と考えられる.
  • 甲原 芳範, 石井 芳樹, 北村 諭
    1995 年 33 巻 3 号 p. 257-261
    発行日: 1995/03/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    1975年から1993年12月までに当科で扱った原発性肺癌患者1,350例中, 初診時第1肋骨以上に胸壁浸潤を認めた29症例の臨床的特徴について検討を行った. 性別は男性26例, 女性3例, 組織型は腺癌10例, 扁平上皮癌9例, 大細胞癌5例, 小細胞癌4例, 分類不能1例で, 遠隔転移は15例に認められた. 初発症状は呼吸器症状19例, 非呼吸器症状8例で, 検診発見が2例あった. パンコースト症候群は6例に認められた. 初発症状から診断までの期間は平均4.6ヵ月であった. 気管支鏡下生検で15例, 超音波ガイド下経皮針穿刺診で10例が診断された. 腫瘍占拠部位は後方に多く認められ, 後方と全面存在例に多彩な症状を認めた. 外科的治療は4例と少なかった. 化学療法においても放射線療法同様自他覚症状の改善を認めた. 長期生存には遠隔転移の有無と放射線療法, 外科療法の可否が重要と思われた. 平均生存期間は約7ヵ月だった.
  • 岩淵 悟, 小野 貞文, 舟田 仁, 星川 康, 植田 信策, 芦野 有悟, 小池 加保児, 谷田 達男, 藤村 重文
    1995 年 33 巻 3 号 p. 262-267
    発行日: 1995/03/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    Vasoactive Intestinal Peptide (VIP) の肺循環系への直接作用を知ることを目的とし, ラット摘出灌流肺を用い, VIPの肺血管拡張作用の有無及びその機序について検討した. VIPはKCLによる肺血管収縮に対し, 濃度依存性に拡張させた. この拡張作用は血管内皮由来平滑筋弛緩因子 (EDRF/NO) 阻害物質である L-Nω-nitro-arglnine により抑制され, NOの合成基質である L-arginine 添加により回復した. また, VIPの肺血管拡張作用は cydooxygenase 阻害剤である meclofenamate には抑制されなかった. 以上よりVIPは, 摘出灌流肺の灌流液内投与により肺血管拡張作用を有し, この作用の発現にNOが関与することが示唆された.
  • 持丸 博, 川並 汪一, 工藤 翔二, 仁井谷 久暢
    1995 年 33 巻 3 号 p. 268-274
    発行日: 1995/03/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    シリカを経気管的にSDラットに投与し, 肺胞壁の線維化と肺胞毛細血管内皮細胞の化生の発現機序について免疫組織化学的電顕的に観察した. 投与直後より肺胞毛細血管は虚脱し, 内皮細胞は広い範囲にわたり壊死を示した. 腔内にはシリカによる肉芽腫が形成され, 同部へ肺胞壁の線維芽細胞が侵入増生し膠原物質を産生した. 同病変は再生上皮細胞で被覆され間質線維化が誘導された. 投与4日目に細気管支周囲の小血管の内皮細胞がPCNA (増殖細胞核抗原) 陽性を示した. 同胞体は肺胞毛細血管に沿って遊走し壊死に陥った内皮細胞を置換した. 1ヵ月目以降, 正常では陰性の肺胞毛細血管は, Factor-VIII related antigen (F-VIII) 陽性となり, 電顕的には Weibel-Palade 小体が出現した. 一部の毛細血管には, 気管支動脈系毛細血管内皮細胞の特徴を示す有窓構造の出現を認めた. この化生は新生内皮細胞の起源が気道系血管であることを示唆すると思われた.
  • 吉富 淳, 佐藤 篤彦, 早川 啓史, 千田 金吾, 小出 幸夫, 吉田 孝人
    1995 年 33 巻 3 号 p. 275-281
    発行日: 1995/03/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    サルコイドーシス (サ症) の肉芽腫形成にはT細胞が中心的な役割を演じており, このT細胞は何らかの抗原を認識していると推定されている. サ症のT細胞の性格を明らかにする目的で, T細胞レセプターβ鎖可変領域 (Vβ) に着目し, 肺サ症11例, 健常者9例について, 末梢血と気管支肺胞洗浄 (BAL) 液のTリンパ球におけるVβ遺伝子22種の発現を reverse transcriptase-polymerase chain reaction 法を用い検討した. その結果, 肺サ症と健常者の末梢血や, 健常者のBALでは特定のVβ遺伝子の増加は指摘できなかったのに対し, 肺サ症のBAL液Tリンパ球においては11例中, 4例にVβ2, 7例にVβ6遺伝子が有意に高く (15%以上) 発現していた. 以上より, これらのVβ遺伝子を発現したT細胞が, 肺サ症の発症に関与している可能性が示唆された.
  • 本間 昭彦, 山岸 雅彦, 小場 弘之, 阿部 庄作
    1995 年 33 巻 3 号 p. 282-292
    発行日: 1995/03/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    小葉中心性肺気腫病変の肺水平断面での分布を検討する目的で, 49例を対象として, X線学的, 病理学的検討を加えた. 21例の High-resolution CT 像をもちいて肺の内層と外層における Low attenuation area の分布を定量的に評価した. その結果, 胸膜直下の1~2cmの外層に気腫性病変が少なく, 内層に多かった. さらに, 病理学的に確認する目的で小葉中心性肺気腫病変を認める28例31肺葉の伸展固定肺標本上に3層の領域を設定し point counting method を用いて気腫性病変を検討したところ外層に少なく, 内層に多かった. 次に, 気腫性病変の内外層での分布の相違に細気管支病変が関与しているかを検討する目的で, 内一外層に分布する直径1mmの細気管支の気道病変の程度について病理学的検討を加えたが, 内層と外層とで有意差を認めなかった. 小葉中心性肺気腫病変が肺の外層に有意に少ないという事実はこれまで報告されておらず, 今後, 肺気腫の発症機序を検討するうえで重要と考えられる.
  • 小野 容明, 近藤 哲理, 廣川 豊, 馬上 喜裕, 神尾 和孝, 加藤 博一, 太田 保世
    1995 年 33 巻 3 号 p. 293-299
    発行日: 1995/03/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    当院外来通院中の喘息患者を対象に喘息教室を開催し, 患者の教育効果について解析した. 45名の患者に喘息教室前後で Severity of Asthma Scores を算定したところ, 60%の症例に病状の改善を認めた. アンケート調査の結果では, 喘息に対する理解が向上し, 医療機関への信頼度が増大した. 24名の患者に心理テストを施行した. CAIでは依存性が強く自己鍛練を持続する症例に喘息教室が有効であり, 治療意欲の減退および鬱傾向にある症例には無効であることを示唆した. Y-G test では改善例に内向的, 消極的で問題を起こすことを嫌う性格を持つ症例が多かった. EPPSの樹型図から改善例, 非改善例の行動欲求に差があると考えられた. 改善例, 非改善例には心因や性格に一定の傾向があり, 心理テストは, 患者教育効果の予測に有用であると考えられた.
  • 西村 善博, 仲田 裕行, 前田 均, 横山 光宏
    1995 年 33 巻 3 号 p. 300-305
    発行日: 1995/03/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    気管支喘息患者における骨塩量を測定し, 骨塩量低下の有無や骨塩量と肺機能及びステロイド投与との関連性を検討した. 対象は代謝性疾患, 内分泌疾患等を有さない気管支喘息患者 (BA群) 103例 (男性38例, 女性65例), 健常者 (C群) 191例 (男性80例, 女性111例) である. Dual Energy X-Ray Absorptiometer (Norland XR26) を用い, 全身の骨塩量 (BMC), 第2~4腰椎骨密度 (BMD) を測定した. BA群のBMC及びBMDは男女ともにC群と比較し有意差を認めなかった. BA群を長期内服ステロイド投与群, Beclomethasone dipropionate (BDP) 吸入群, ステロイド非投与群の3群に分け比較すると, 男女ともにBMC及びBMDは3群間に有意差を認めなかった. BA群のBMCは年齢と負の相関を, 体重, VC, %VC, FEV1と有意な正相関を認めたが, 喘息罹病期間, ステロイド総投与量, 投与期間との関連性を認めなかった. 以上より, 気管支喘息患者では骨塩量低下は認められず, ステロイド歴との関連性も明らかでなかった.
  • 合田 晶, 宮本 顕二, 斎藤 俊一, 中野 剛, 西村 正治, 川上 義和, 大森 良幸, 安藤 紳一, 市田 泰三, 石部 裕一
    1995 年 33 巻 3 号 p. 306-311
    発行日: 1995/03/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    NO吸入が新しい治療法として注目されているが, その際, 毒性の高いNO2発生に配慮が必要である. このNO2生成反応への温度及び湿度の影響を検討するため, 種々のO2及びNO濃度の混合ガスを作成し, 異なる温度及び湿度条件下でNO2生成速度を求めた. さらにソーダライムによるNO2の選択的吸収効果についても検討した. その結果, (1) NO2生成は反応速度式-d [NO]/dt=2k [NO]2 [O2] に従い, 速度定数kは25℃乾燥気で2.33±SD0.12×10-38 molecule-2 sec2 cm6, 37℃では2.03±0.14 (同単位) であった. (2) この反応速度は相対湿度40%または90%の加湿により影響されなかった. (3) NO 35ppm, No2 5ppmの存在でソーダラタイムはほぼ完全にNo2を吸収したが, 同時にNOを等量吸収した. 以上からNO混合ガスからのNO2生成は湿度には影響されないが, 温度が高くなるほど遅延し, またソーダライムはNOとNO2の共存下ではNO2のみを選択的に吸収するとはいえないことが示された.
  • 田中 英樹, 平岡 直人, 馬場 正治, 川西 正芳, 藤岡 博文, 小西 得司, 中野 赳
    1995 年 33 巻 3 号 p. 312-317
    発行日: 1995/03/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    Swan-Ganz カテーテルを用いてベッドサイドにて肺動脈造影を行い診断した重症の急性肺塞栓症2例を経験したので報告し, 適応, 反省点について考察した. 1例は49歳女性で, 交通外傷手術後, 突然呼吸困難にて発症しショック状態となった. 2例目は, 48歳女性で, 腹腔鏡下胆嚢切除術施行2日後, トイレ歩行時に発症しショック状態となった. 2例ともSwan-Ganzカテーテルを挿入して全身管理を開始したが, 発症状況, 臨床症状に加え肺高血圧所見より肺塞栓症を疑った. 当院に確定診断施設がなく, また他院までの搬送は困難な状況であったため, 診断と治療方針決定目的で, Swan-Ganz カテーテルを用いてベッドサイドにて肺動脈造影を行った. 2症例とも診断後に, 血栓溶解療法にて軽快した. 急性肺塞栓症の診断は, 塞栓子の証明が最も確実である. このため肺動脈造影を行って確定診断するのがい般的であるが, 患者の状態が悪く透視室への搬送も困難な状況であれば, ベッドサイドでの Swan-Ganz カテーテルからの肺動脈造影も有用であると思われた. しかし盲目的挿入に加え選択的でないため, 再発予防のため上肢からの挿入とし, また心エコー図による心腔内血栓が無いことを確認する必要性があるものと思われた.
  • 出崎 真志, 宮地 純樹, 鈴木 勝, 久富 龍夫, 小須田 達夫, 岡 輝明
    1995 年 33 巻 3 号 p. 318-321
    発行日: 1995/03/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    症例は61歳, 男性. 両下腿の疼痛と脱力で発症した. 末梢血好酸球数の著増と, 両側肺に多発性浸潤影が出現し, 経気管支肺生検で肺胞出血の所見を呈した. 血管炎症候群を疑いメチルプレドニゾンによるパルス療法を施行した所, 肺浸潤は消失した. しかしその2週間後に大量の消化管出血が出現し, 回腸切除を行ったが, 術後に再出血し死亡した. 回腸の切除標本では小動脈の壊死性血管炎の所見と粘膜の潰瘍を認めた. 血管炎に対しステロイド製剤を投与し炎症所見が改善しても, 血管の閉塞と虚血が進行する症例は報告されており, 貴重な一例と考えられた.
  • 冬野 玄太郎, 小林 龍一郎, 伊賀 六一, 野守 裕明, 古寺 研一, 森永 正二郎
    1995 年 33 巻 3 号 p. 322-326
    発行日: 1995/03/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    症例は43歳男性. 労作時呼吸困難を主訴に来院. 胸部単純X線写真にて, 右上中肺野に腫瘤性陰影と胸水を認め入院となった. 入院時より右上肢と顔面の浮腫を認め, 胸部CT写真にて肺または縦隔の悪性腫瘍による上大静脈症候群と診断した. 入院時の特記すべき所見として, 夜間の激しいいびきと約20秒間の無呼吸を認めた. また日中は傾眠傾向にあった. それらの症候は顔面上肢の浮腫の進行と共に増悪した. 夜間睡眠時にレスピトレースを用い胸郭と腹部の呼吸運動を記録した結果, 閉塞型睡眠時無呼吸症候群と診断した. 第11病日に上大静脈症候群に対して血管内へ Expandable Metallic Stent を挿入したところ, 顔面上肢の浮腫の改善に比例して, 夜間のいびきと無呼吸および desaturation は改善した. 従って本症例の閉塞型睡眠時無呼吸は, 上大静脈症候群に伴う上気道粘膜の浮腫, 上気道周囲のうっ血, および咽頭吸気筋の活動の低下に起因するものと思われた.
  • 明 茂治, 西 耕一, 斉藤 正典, 大家 他喜雄, 藤村 政樹, 松田 保
    1995 年 33 巻 3 号 p. 327-331
    発行日: 1995/03/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    症例は45歳男性, 左胸痛と血痰を主訴に当科を受診した. 血液凝固検査でプロテインC抗原量が41%, プロテインC活性が42%と低下していた. 肺血流スキャンでは, 両側に扇状の欠損像を認めたが, 肺換気スキャンでは肺血流スキャンに対応する換気欠損を認めなかったことから, プロテインC欠損症患者に発症した肺梗塞症と診断した. 家族調査では, 本症例の母親, 長男及び次男にもプロテインC抗原量と活性値の低下が認められたが, 静脈血栓症は認められなかった.
  • 櫻田 二友, 小川 光二, 藤井 茂, 篠田 厚
    1995 年 33 巻 3 号 p. 332-335
    発行日: 1995/03/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    じん肺 (黒鉛肺) に結核腫を合併した極めてまれな症例を経験したので報告する. 症例は62歳男性で, 右肺S8に急速に増大した coin lesion の精査のために入院した. 患者は42年間の鋳物工場職歴があり, じん肺 (黒鉛肺)「管理2」に認定されている. TBLB及び経皮的針生検にても診断がつかず開胸し, 病理組織学的診断にて被包乾酪巣が証明された. じん肺の患者で coin lesion を呈するものの鑑別診断として結核腫は常に念頭に入れておくことが必要と思われた.
  • 島田 達也, 松村 克己
    1995 年 33 巻 3 号 p. 336-341
    発行日: 1995/03/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    症例は80歳の女性で, 喘鳴および粘液栓子の喀出で入院し, 右下葉の無気肺, 末梢血好酸球増多, Aspergillus (A.) fumigatus に対する即時型皮膚反応陽性および中心性気管支拡張を認めた. また気管支ファイバースコピーで気管支に粘液栓塞を, 粘液栓子中に多数の好酸球および Charcot-Leyden 結晶を認め, 粘液栓子より A. niger が分離された. 血清IgE値の上昇はなく, A. fumigatus に対するIgE (RAST) および A. niger に対する沈降抗体は陰性であった. ステロイド治療により症状および検査成績の改善を認めた. 本症例は Rosenberg のアレルギー性気管支肺アスペルギルス症 (ABPA) の診断基準を満足していないものの, A. niger を起因抗原とした稀なABPAの可能性を強く示唆している点で興味があり報告する.
  • 多部田 弘士, 森谷 哲郎
    1995 年 33 巻 3 号 p. 342-347
    発行日: 1995/03/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    アスペルギローマによる左上葉切除の既往を有する49歳の男性. 平成4年4月より咳嗽, 喀痰が出現し, 胸部X線写真上, 左S6に浸潤影を認めた. 抗生剤に反応せず陰影は徐々に増大し, 同年12月中旬, 左S6に空洞が形成された. 喀痰よリ Aspergillus fumigatus (A. fumigatus) が検出され, 臨床経過より慢性壊死性肺アスペルギルス症 (chronic necrotizing pulmonary aspergillosis, CNPA) と診断した. 発症要因として, 左上葉切除歴と左肺の著明な換気・血流低下による肺局所の感染防御能低下が示唆された. 治療は, アムホテリシンB (AMPH) の24時間持続注入療法が奏効した. 同療法における喀痰中AMPH濃度は, 血清中濃度と minimum inhibitory concentration (MIC) 値を上回っていた.
  • 泉 陽太郎, 江口 圭介, 柿崎 徹, 澤藤 誠, 山本 達也, 川村 雅文, 菊池 功次, 小林 紘一, 向井 万起男, 佐藤 勝
    1995 年 33 巻 3 号 p. 348-352
    発行日: 1995/03/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    症例は42歳男性. 検診で胸部異常陰影を指摘され当科へ精査目的で入院となった. 胸部X線写真及び胸部CTで左上肺野に4.6×3.7cm大の腫瘤状陰影が認められた. 気管支鏡検査では可視範囲に異常はなく経気管支的に生検を施行したが確診は得られなかったため開胸術を施行した. 腫瘍は左S3にあり, その一部は臓側胸膜に接していると思われた. 周囲への浸潤はみられなかった. 肺腫瘍と診断し, その大きさと部位より左上葉切除を行った. 術中迅速病理で良性線維腫と判明したため, リンパ節郭清は行わずに手術を終了した. 病理組織学的所見では紡錘形の細胞が柵状に増殖する像がみられ肺線維腫との診断を得た. 線維腫は胸腔内では胸膜または気管支から発生するものが大部分を占め, 肺の実質から発生する肺線維腫は稀な疾患で本邦では1例の報告をみるのみであるため, 若干の文献的考察を加えて報告した.
  • 畠山 忍, 立花 昭生, 鈴木 和恵, 岡野 弘, 岡 輝明
    1995 年 33 巻 3 号 p. 353-357
    発行日: 1995/03/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    症例は76歳の男性. 昭和59年に直腸癌の手術, 平成3年1月に早期胃癌の手術の既往がある. 平成4年10月血痰, 前胸部痛を主訴に当院受診. 炎症所見が強く当初抗生剤投与にて左S10の陰影は改善したが, 胸部CT写真等より肺結核も疑い抗結核薬を投与し, 気管支鏡を施行. 結核の所見は得られなかったが, 右S3aよりのTBLBにて腺癌の診断がついた. T1N0M0 stage I であったが, 手術までの2月の間に右下肺野に新たな陰影が出現し肺内転移との鑑別に苦慮した. 手術所見では原発巣以外は全て結核性の変化であった. 近年重複癌の増加とともに, 肺癌と肺結核の合併も増加しているが臨床的に診断のついた三重複癌に肺結核を合併した症例は稀であり, 手術適応を決めるに際しても肺内転移との鑑別は重要であり貴重な症例と考え報告した.
  • 田村 雅仁, 林 俊成, 長友 寛子, 吉井 千春, 田尾 義昭, 二階堂 義彦, 永田 忍彦, 城戸 優光
    1995 年 33 巻 3 号 p. 358-362
    発行日: 1995/03/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    症例は29歳の男性. 労作時呼吸困難, 臀部と下肢の紅斑のため来院. 初診時より既に胸部X線上で両肺に多発性の嚢胞性変化を伴うびまん性の線維化像があり, %VC 51%, FEV1.0% 38%, PaO2 61Torr と混合性換気障害, 低酸素血症を認めた. TBLBと臀部皮疹の生検よりサルコイドーシスと診断し, プレドニソロンの投与を開始した. 本例の嚢胞性変化は, 線維化による収縮性変化や気管支病変の結果, 二次的に生じたものと考えられた. サルコイドーシスの若年発症例で初診時より著明な線維化と嚢胞性変化を呈すのは稀であるため, 文献的考察を加えて報告する.
  • 権田 秀雄, 野田 康信, 平松 憲樹, 吉田 宏, 水藤 秀明, 竹本 正興, 鈴木 道生
    1995 年 33 巻 3 号 p. 363-368
    発行日: 1995/03/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    呼吸困難, 喘鳴を主訴に当科を受診し, 胸部X線写真では明らかな腫瘤陰影を指摘できず, 気管支鏡で左主気管支下部に壊死物で被われた腫瘍を認めたが, 生検でも確診がつかず診断に苦慮した肺悪性線維性組織球腫の一剖検例を報告した. 肺の腫瘍は, 多形性に富む多核巨細胞をまじえた異型紡錘形細胞の錯走増生巣が, 花むしろ, 柵状配列していた. 免疫組織学的には, ビメンチン, α1アンチトリプシン, LN-5等に陽性を示した. 一般に本腫瘍は, 化学療法や放射線療法への感受性が低く予後不良と言われている. しかし本例では, CBDCA, IFM, VP-16による全身化学療法が有効で, 腫瘍は縮小し症状も軽快させた. 再発に対しても, 放射線療法がいったんは奏功し, さらに延命させることができた. 化学療法, 放射線療法の有用性を示した点でも意義ある症例と考えた.
  • 花田 太郎, 桧沢 伸之, 小倉 滋明, 磯部 宏, 宮本 顕二, 成田 吉明, 川上 義和
    1995 年 33 巻 3 号 p. 369-372
    発行日: 1995/03/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    症例は43歳, 女性. 12年前に近医にて慢性関節リウマチ (RA) の診断を受け, 一年前, 当院整形外科にて左膝人工関節置換術を施行. 今回, 右膝に対しても置換術を予定していたが, 術前の胸部X線写真にて右上肺野に腫瘤影の出現を認めたため, 当科転科となった. 胸部X線写真, CTにて腫瘤は胸膜直下に存在し明らかな胸膜陥入像, 血管の巻き込み, 内部の空洞は認めなかった. 気管支鏡下擦過細胞診にては悪性所見を認めなかったものの悪性腫瘍も完全には否定しえなかったため, 胸腔鏡下腫瘤摘出術を施行した. 病理組織学的には腫瘤は壊死の周囲にリンパ球を主体とした炎症細胞の浸潤や線維性変化が取り囲むように存在し, Necrobiotic nodule (リウマチ結節) として矛盾ないものであった. 単発腫瘤として Necrobiotic nodule が出現した際には, 肺腺癌との鑑別が困難であるため, すみやかに病理学的検索を施行すべきものと思われた.
  • 田中 明, 仲原 弘, 野上 壽二, 波津 龍平, 藤田 悦生, 大川 健太郎, 東田 有智, 長坂 行雄, 大石 光雄, 中島 重徳
    1995 年 33 巻 3 号 p. 373-377
    発行日: 1995/03/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    症例は50歳の女性で無症状. 検診で胸部異常陰影を指摘された. 右肺野に三日月刀様の異常肺静脈陰影を認め, 心臓の右方偏位, 右肺動脈の低形成があり, 部分肺静脈還流異常症のひとつである scimitar 症候群と診断した. 文献上右全肺静脈が scimitar 静脈となって下大静脈に還流する型が最も多いが, 本症例では主に右肺上中葉静脈のみが下大静脈に還流していた. 本邦でのMRIによる診断例は報告されていないが, 非侵襲的であり, scimitar 症候群のような血流異常の確認には有用な検査法であると考えられた.
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