日本胸部疾患学会雑誌
Online ISSN : 1883-471X
Print ISSN : 0301-1542
ISSN-L : 0301-1542
34 巻, 1 号
選択された号の論文の23件中1~23を表示しています
  • 萩本 直樹, 桑野 和善, 野元 吉二, 國武 律子, 橋本 修一, 原 信之
    1996 年 34 巻 1 号 p. 3-8
    発行日: 1996/01/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    ブレオマイシンの細胞傷害を起こす機序は, DNA鎖の切断であると考えられている. そこでマウスのブレオマイシン肺臓炎を対象として, DNA断端の3'-OH基を組織上で特異的に検出可能な in situ biotin-dUTP end-labeling 法を用いてDNA傷害の局在と線維化との関連性を検討した. その結果, ブレオマイシン投与約1時間から12時間後は, 細気管支上皮細胞を中心にDNA傷害がみられ, その後回復するが, 徐々に線維化が進行すると共に肺胞上皮細胞のDNA傷害が増強し遷延していた. 投与直後のDNA傷害はステロイド投与によって影響を受けなかったが, 遷延する肺胞上皮細胞のDNA傷害は抑制され, 炎症による細胞傷害に伴うDNA傷害であると思われた. 組織上でDNA断端を標識し, 経時的にDNA傷害の局在の部位を解析することによって, ブレオマイシン肺臓炎の線維化の機序として遷延化する肺胞上皮のDNA傷害が重要であることが示唆された.
  • 吉野内 猛夫, 大朏 祐治, 久保 克仁, 福井 順一
    1996 年 34 巻 1 号 p. 9-15
    発行日: 1996/01/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    共にUIP型間質性肺炎像を呈する特発性肺線維症 (IPF) とリウマチ肺の鑑別点につき免疫組織学的検討を行った. 開胸肺生検及び剖検で, UIP型の間質性肺炎の病理所見の得られたIPF 6例とリウマチ肺7例を対象とした. 免疫組織学的検索は, α-smooth muscle actin (α-SMA) とS-100蛋白の各抗体を主体に用いABC法にて行った. リウマチ肺における線維化巣は, 大部分 Vimentin, α-SMA共に陽性の筋線維芽細胞増生を認めた. 一方IPFでは Vimentin 陽性, α-SMA陰性の線維芽細胞増生を認め, 又明らかな平滑筋増生を一部に認めた. S-100蛋白陽性細胞出現は, リウマチ肺で全般に目立ち, 特にBOOPパターンを伴う急性増悪例において顕著であったが, IPF例ではいずれも見出し難く, 蜂窩肺部でも同様の結果を得た. 以上の結果から, IPFとリウマチ肺におけるUIP型間質性肺炎は, 筋線維芽細胞増生やS-100蛋白陽性細胞の存在により鑑別できる可能性が示唆された.
  • 西條 亜利子, 石井 芳樹, 北村 諭
    1996 年 34 巻 1 号 p. 16-23
    発行日: 1996/01/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    モルモット摘出灌流肺を用い, サブスタンスP (SP), ニューロキニンA (NKA) の肺血行動態と血管透過性へ及ぼす作用とその機序について, トロンボキサンA2 (TXA2) 合成酵素阻害剤塩酸オザグレル (OKY-046), ニューロキニン (NK)-1/-2受容体拮抗剤FK224, 平滑筋弛緩剤パパベリンを用いて研究した. SP, NKAは肺動脈圧, 毛細血管圧, 肺重量, 肺静脈抵抗を増加させた. これらSPの肺血管に対する作用はNKAよりも強力であった. 塩酸オザグレルはSPの作用を減弱したが, NKAには影響しなかったため, TXA2はSPの作用の一部に関与するが, NKAには余り関与していないと推測された. SP, NKAはFK224によって抑制されたことより, NK-1あるいはNK-2受容体を介して肺血管に作用していると考えられた. SP, NKAは肺動脈抵抗, 毛細血管透過係数を変化させず, パパベリンはSPの作用を消失させることから肺重量の増加は肺血管特に後毛細血管の静脈平滑筋の収縮による hydrostatic pressure の上昇によると考えられた.
  • 吉澤 篤人, 上村 光弘, 杉山 温人, 工藤 宏一郎, 可部 順三郎
    1996 年 34 巻 1 号 p. 24-29
    発行日: 1996/01/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    近年, 血清中の ECP (Eosinophil cationic protein) 濃度は気管支喘息で高く, 好酸球性の炎症の程度を反映していると考えられつつある. そこで, 成人気管支喘息患者のECP濃度が喘息の増悪, 寛解といった病勢を末梢血好酸球数より鋭敏に反映するか, また他の慢性閉塞性肺疾患との鑑別に有効なマーカーであるかを検証する目的で, 成人気管支喘息46例 (アトピー性31例, 非アトピー性15例), 肺気腫10例, 慢性気管支炎11例, 健常者30例を対象とし, 血清ECP濃度と末梢血好酸球数を測定した. 喘息患者群の血清ECP濃度および末梢血好酸球数は, アトピー, 非アトピーの病型を問わず他疾患群および健常者群に比べ有意に高値を示した. また, 喘息患者11例で, 発作時, 寛解後の血清ECP濃度, 末梢血好酸球数を検討した結果, 血清ECP濃度は治療後有意な低下を認めたが (p<0.025), 末梢血好酸球数に有意な減少は認められなかった. 血清ECP濃度は末梢血好酸球数同様, 喘息と他の慢性閉塞性肺疾患との鑑別に有用であったが, 血清ECP濃度はアレルギー性の気道炎症を反映する指標として, 喘息の増悪, 寛解といった病勢を末梢血好酸球数より鋭敏に反映している可能性があると考えられた.
  • 小林 琢哉, 佐藤 功, 川瀬 良郎, 三谷 昌弘, 高橋 一枝, 中野 覚, 瀬尾 裕之, 田邉 正忠
    1996 年 34 巻 1 号 p. 30-36
    発行日: 1996/01/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    肺野末梢の小型肺癌について切除肺の伸展固定肺標本を用いて腫瘍辺縁と肺既存構造との関係について解析した. 腫瘍辺縁が既存構造により明瞭に境界される Type 1は46%に認められ, そのうち40%は腺癌においてみられ, 特に低分化型腺癌で特徴的であった. 扁平上皮癌では Type 1は中分化型. 低分化型に多くみられた. 既存構造が貫通し辺縁に notch をつくる Type 3は扁平上皮癌に多く47%を占めた. notch のみられない Type 4の58%は腺癌でみられ, 高分化型腺癌に多い傾向にあった.
  • 斉藤 正佳, 巽 浩一郎, 笠原 靖紀, 杉戸 一寿, 猪狩 英俊, 谷 俊明, 栗山 喬之
    1996 年 34 巻 1 号 p. 37-44
    発行日: 1996/01/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    トロンボキサンA2 (TxA2) の正常および病態下の肺循環系における役割を検討する目的で, TxA2アナログ (STA2) 投与に対する血管収縮反応を, 低酸素性肺高血圧ラット (Hypoxic Rat) と正常肺血圧ラット (Normoxic Rat) において, 麻酔下 in vivo と摘出灌流肺にて比較検討した. In vivo において, STA2投与は体循環系への影響は少なく, 肺循環系において著明な昇圧反応を起こした. In vivo と摘出灌流肺の双方において, STA2投与による平均肺動脈圧上昇の絶対値および相対的変化は, Hypoxic Rat で有意に強かった. これらのことより, TxA2の増加は, 肺高血圧症において特に病態悪化に関与している可能性が示唆された. また, in vivo と摘出灌流肺の双方において, STA2に対する血管収縮反応は, 両群共にCa拮抗剤により抑制を認めたが, Hypoxic Rat においてより強く抑制が認められた.
  • 林 淳弘, 巽 浩一郎, 加藤 邦彦, 佐久間 哲也, 岡田 修, 木村 弘, 栗山 喬之
    1996 年 34 巻 1 号 p. 45-51
    発行日: 1996/01/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    在宅酸素療法の種々の病態への影響を検討する上において, 医師の酸素処方量がどの程度守られているかは重要な問題と考えられる. そこで, 酸素濃縮器を使用して在宅酸素療法を施行した慢性閉塞性肺疾患・肺結核後遺症・肺線維症・肺高血圧症の症例を対象として, 酸素吸入のコンプライアンスを検討した. 医師の酸素処方量に対する, 半年毎の定期点検時の積算酸素使用量をコンプライアンスとして, 在宅酸素療法開始後1年間のコンプライアンスと, 在宅酸素療法開始時の呼吸困難の程度・動脈血液ガス値・肺機能検査値との関係を検討した. その結果, 肺高血圧症例および肺線維症例は慢性閉塞性肺疾患例に比較してコンプライアンスは低いことが認められた. また, 24時間酸素処方されている症例の中で, コンプライアンス不良群では良好群と比較して, 労作時呼吸困難の程度が軽度であることが認められた.
  • 鈴木 聡, 星川 康, 小野 貞文, 佐久間 勉, 小池 加保児, 谷田 達男, 藤村 重文
    1996 年 34 巻 1 号 p. 52-56
    発行日: 1996/01/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    亜急性の低酸素曝露が肺胞上皮のイオントランスポートに及ぼす影響を調べるために, 我々はラット摘出肺の気道をアルブミン液で満たし, 肺胞水分クリアランスを測定した. 先ず, 肺胞水分クリアランスは肺灌流を行わなくともインキュベーション2時間にわたり直線的に上昇すること, その機序が能動的Na+イオン輸送に依存していることを明らかにした. 次いでこのモデルを適用し, 48時間の低酸素曝露 (FiO2=0.1) が肺胞水分クリアランスを減少させることを見いだした. 対照群では肺胞水分クリアランスはアミロライド (Na+チャネルプロッカー) やウアバイン (Na+-K+-ATPase インヒビター) の存在下で有意に抑制されたが, 低酸素曝露肺ではこれらの抑制効果は認められなかった. このことは低酸素曝露による肺胞水分クリアランスの減少にはこれらNa+イオンの通過経路にあたる細胞膜蛋白の機能低下が関与していることを示している.
  • その頻度と成因から見た非定型抗酸菌症
    岩田 政敏, 井田 雅章, 竹内 悦子, 中村 祐太郎, 堀口 倫博, 佐藤 篤彦
    1996 年 34 巻 1 号 p. 57-62
    発行日: 1996/01/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    静岡県榛原地区 (4町: 榛原町, 吉田町, 相良町, 御前崎町) における胸部住民検診者を対象に, 中葉症候群の頻度と成因としての非定型抗酸菌症の関与について検討した. 平成4, 5年の2年間に検診を受け, 中葉症候群と考えられたのは30,588名中51名 (0.17%) であった. 50歳以上が50歳未満より (0.26%vs0.02%: p<0.001), 女性が男性よりも (0.20%vs0.11%: p=0.0527) 罹患率が高い傾向にあった. 気管支鏡等で精査した16名全例が慢性炎症によるもので, 内4名が Mycobacterium avium complex (MAC) 症であり, いずれも中高年女性の肺に基礎疾患のない一次感染型であった. 胸部X線・CT像では, 胸膜下の多発結節影と同部に限局した軽度の気管支拡張や肺の虚脱を伴った陰影を呈していたが, 空洞病変は認められなかった. 以上より, 検診で中葉症候群と考えられる症例も積極的に精査する必要があると考えられた.
  • 中野 豊, 佐藤 篤彦, 土屋 智義, 竹内 悦子
    1996 年 34 巻 1 号 p. 63-66
    発行日: 1996/01/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    症例は, 83歳の女性で意識障害と発熱を主訴に来院した. 身体所見と検査成績から肺炎および多臓器不全と診断し, 抗生物質と蛋白分解酵素阻害剤の投与を行い, 肺炎と多臓器不全は軽快したが, 意識障害は遷延した. 中心静脈栄養管理が, 長期化したため, 経腸栄養への変更を目的に, 経鼻胃栄養チューブの挿入を行った. 挿入中に異常な抵抗感ならびに咳嗽反射は認められなかったが, 聴診上, 水泡音が聴取されなかったため, 胸部X線写真で確認したところ, チューブ先端は, 右主気管支腔内から, 胸膜を穿孔した後, 胸腔内に迷入し, 気胸を併発していた. トロッカーを挿入後脱気を行い, その後の経過は良好であった. 経鼻胃栄養チューブによる肺合併症は, 医原性気胸の総説ならびにレジデントを対象としたテキストにおいて, その重要性が十分に認識されておらず, 意識障害などの危険因子を有する患者のチューブ挿入時の肺合併症の発症の予防を目的に報告した.
  • 丹羽 宏, 山川 洋右, 近藤 薫, 桐山 昌伸, 近藤 知史, 可児 久典, 正岡 昭
    1996 年 34 巻 1 号 p. 67-70
    発行日: 1996/01/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    症例は66歳女性. 菌球を伴う肺アスペルギルス症の診断で, 経口的に itraconazole 100mg/dayを8ヵ月間投与した. 軽度の膿性痰の減少はみられたが, 発熱は継続し, 胸部レ線所見の改善も得られなかったため空洞切開, 開窓手術を施行した. 組織学的には菌糸を認めたものの培養では陰性であった. 手術時に得られた体内の本剤の濃度は, 血中249ng/ml, 肺組織中81ng/g, 菌球中837ng/gと, 菌球中で極めて高値を示しその効果を裏付けていた. 菌球中で高濃度を示した理由として, 本剤は膿性分泌液中で高濃度となること, 本例のように空洞壁から根を伴い侵襲性に増殖するタイプでは薬剤が根を通して移行しやすいこと, 破壊された菌体中の脂質成分に脂溶性の本剤が溶解した可能性とが考えられた.
  • 高橋 隆二, 五十嵐 知文, 中川 晃, 大内 博文, 西野 雅彦, 村上 聖司, 吉田 豊, 阿部 庄作
    1996 年 34 巻 1 号 p. 71-75
    発行日: 1996/01/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    症例は遺伝性球状赤血球症の家族歴を有する62歳男性で, 胸部異常影を指摘されていたが放置していた. 急性胆嚢炎を併発し, 入院時, 強度の貧血と胆石, 脾腫を認めた. 末梢血の塗沫標本で赤血球の大小不同があり小型の球状赤血球が認められ, Parpart 法による赤血球浸透圧抵抗試験陽性で, 遺伝性球状赤血球症と診断した. その後, 摘脾および胆嚢摘出術を施行した. 一方, 胸部X線像, CT, MRIで後縦隔に胸椎に接して辺縁明瞭な腫瘤性病変を認めた. 超音波ガイド下生検にて骨髄巨核球系, 骨髄細胞系, 赤血球系の細胞群を認め, 胸腔内髄外造血巣と診断した. 後縦隔腫瘍の鑑別疾患として, 本症を考慮する必要があると考えられた.
  • 野守 裕明, 堀尾 裕俊, 伊賀 六一, 冬野 玄太郎, 小林 龍一郎, 森永 正二郎
    1996 年 34 巻 1 号 p. 76-79
    発行日: 1996/01/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    掌蹠角化症は手掌と足蹠の角質層の異常な増殖を生じる常染色体優性遺伝性あるいは後天性の希な皮膚疾患で, 肺癌や食道癌との合併が報告されている. 今回, 48歳男性で後天性掌蹠角化症を伴った肺扁平上皮癌の切除例を経験した. 術後病期はT4N2M1で患者は術後17ヵ月目に腫瘍死した. 掌蹠角化症に伴った肺癌の報告例を集積検討した結果, その特徴として進行した扁平上皮癌が多く予後不良であるので, 同皮膚疾患を伴った症例は通常より頻回に喀痰細胞診と胸部レントゲン写真を含めた検診が必要であると思われた.
  • 長 晃平, 小澤 志朗, 栗原 正利, 武野 良仁
    1996 年 34 巻 1 号 p. 80-84
    発行日: 1996/01/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    症例は52歳, 女性. 原因不明の胸水貯留に対し胸腔鏡検査をおこなった. 横隔胸膜に限局性に2つの小結節性病変を認め内視鏡的には悪性腫瘍の胸膜転移を疑ったが同部位からの生検は非特異的炎症像であった. また全身検索にて右卵巣に径5×5cmの腫瘍を認め同摘出術を施行し, 約2週後に胸水の消失を認めた. 病理診断は漿液性腺線維腫であり, 臨床経過とあわせ Meigs 症候群と診断した. Meigs 症候群における胸膜の結節性病変は胸水貯留機序を考えるうえで興味深い所見と考えられ報告した. 胸膜結節性病変の診断において Meigs 症候群も念頭に入れるべき疾患の一つと考えられた.
  • 甲原 芳範, 三重野 龍彦, 森内 昭
    1996 年 34 巻 1 号 p. 85-89
    発行日: 1996/01/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    症例は79歳男性. 既往歴, 結核性胸膜炎. 左肩痛を主訴に入院後, 左鎖骨上窩に腫瘤性病変が出現し, 左のホルネル症候群と左上肢の筋力低下, 筋萎縮を認めた. 左鎖骨上窩リンパ節生検で非ホジキンリンパ腫 (B細胞系, びまん性大細胞型) と診断された. 胸部X線, CT で左肺尖部の著明な胸膜肥厚像を認め, 同部位から連続性に左鎖骨上窩に進展し, パンコースト症候群を呈したものと考えた. 化学療法で腫瘍の著明な縮小と臨床症状の改善を認めたが, 4クール施行後に重症肺炎を併発し死亡した. 近年, 本邦において結核性胸膜病変に発生した悪性リンパ腫の症例が数多く報告され, 両疾患間に何らかの因果関係が推測されている. 本疾患は局所への浸潤傾向が強く, 発生部位や浸潤方向により多彩な症状を呈することが想定された.
  • 岩永 知秋, 平井 正志, 岸川 禮子, 横田 欣児, 池田 東吾, 鶴谷 秀人, 広瀬 隆士, 西間 三馨
    1996 年 34 巻 1 号 p. 90-95
    発行日: 1996/01/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    症例は67歳の男性で湿性咳嗽で入院し, 右S6, 左舌区の肺炎と呼気時の連続性ラ音, 閉塞性換気障害を認めた. 胸部CT検査で中枢気管支はびまん性に壁の肥厚と石灰化を呈していた. 気管支鏡検査では気管下部から気管支全般にわたり, 多発性の黄色プラークとそれに伴うびまん性の内腔狭窄がみられた. 気管支粘膜生検を行い, 均質な好酸性物質の粘膜下沈着が認められ, Congo-red 染色によりアミロイドであることが証明された. 肺炎は抗生剤投与により改善したが, 1年後には右下葉に肺炎を反復した. 以上よりびまん性気管気管支アミロイドーシスと診断した. 閉塞性換気障害をもとに肺炎を反復する場合, 鑑別診断のひとつとして本疾患の可能性を念頭に置く必要がある.
  • 小島 研介, 森 公介, 亀井 治人, 上岡 博, 大熨 泰亮, 原田 実根
    1996 年 34 巻 1 号 p. 96-100
    発行日: 1996/01/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    症例は63歳, 女性. 乾性咳嗽を主訴に来院. 中分化型肺腺癌の多発性肺内転移巣に, 胸部X線およびCT上薄壁空洞の形成を認めた. 化学療法が奏効し, 転移巣は消失したが, 一部は嚢胞状変化を残した. 再発時, 残存した嚢胞性病変の嚢胞壁が肥厚し小輪状影を形成したものとともに, 一旦消失した嚢胞が再度形成され小輪状影を呈したもの, 新規に小輪状影を形成したものが混在していた. 空洞形成の主因として, 腫瘍あるいは炎症性の結節が気管支の弁状狭窄をきたしチェックバルブを形成, 圧変化により生じた嚢胞壁に沿って癌細胞が増殖したものと推察された.
  • 鈴木 道明, 清水 孝一, 坂本 匡一, 岩瀬 彰彦, 青木 茂行, 松岡 緑郎, 永山 剛久, 北村 諭
    1996 年 34 巻 1 号 p. 101-105
    発行日: 1996/01/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    症例は55歳男性. 労作時呼吸困難を訴え, 初診した. 症状, 所見より混合性結合組織病とこれに伴う間質性肺炎と診断された. 入院後, 間質性肺炎が急性増悪し, ステロイドパルス療法を計3回施行し, さらにシクロフォスファミドの投与も行ったが, 治療抵抗性であり呼吸状態が悪化した. ステロイド剤にアザチオプリンを併用したところ, その後呼吸状態が改善した. 以前より混合性結合組織病に伴う肺病変は予後良好とされてきたが, 最近, ステロイド抵抗性で経過不良例の報告も多い. このような症例に対する免疫抑制剤の投与については有効薬剤の種類, 投与時期などのい定の見解がない. 本症例の間質性肺炎に対してはステロイドと併用したアザチオプリンが有効であったと考えられる. その後, アザチオプリンを継続投与し, ステロイド剤を漸減しているが, 2年の経過中, 再燃を認めていない.
  • 柏原 光介, 庄田 慎一, 成島 勝彦, 中村 博幸, 木口 俊郎, 柳生 久永, 草間 博, 松岡 健
    1996 年 34 巻 1 号 p. 106-110
    発行日: 1996/01/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    症例は46歳男性. 胸痛を主訴に当院受診し, 胸部X線にて左胸水を指摘され, 入院となった. 第3病日より発熱, 呼吸困難が出現し, 胸部X線では両側下肺野に胸水と間質性陰影が認められた. 第5病日に経気管支的肺生検と気管支肺胞洗浄 (BAL) が施行された. 病理学的所見では, 肺胞中隔の肥厚と, 肺胞内腔に多数のマクロファージの集簇が認められるDIP様の所見であった. また, BALでも総細胞数の増加が認められ, その細胞の大半はマクロファージであった. 膠原病関連の検査では抗核抗体, 抗DNA抗体が陽性, 漿膜炎, および蛋白尿が認められ, SLEと診断された. この患者の肺病変は, SLEの肺病変がその経過中に急性増悪したものと考えられた. 治療として, ステロイドパルス療法が施行され, 自覚症状は改善傾向を示し, 胸部X線所見も1ヵ月以内に軽快した.
  • 湯浅 幸吉, 清水 健, 小林 有希, 南部 静洋, 大谷 信夫
    1996 年 34 巻 1 号 p. 111-116
    発行日: 1996/01/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    Pryce I型肺分画症の1例を報告する. 症例は53歳女性で, 血痰を認めて来院し胸部異常陰影を指摘された. CT, MRI で異常血管を認め, 大動脈造影で胸部大動脈より左肺底区を還流する異常動脈を認めた. 肺動脈造影では左肺底区の肺動脈を欠如し, Pryce I型肺分画症と診断した. 手術では径13mmの異常動脈が下行大動脈から分岐し蛇行しながら左下葉へ流入していた. これを処理し, 左下葉切除を行い, 経過良好であった. Pryce I型肺分画症は比較的まれで, 本邦報告例は24例であった. 若年者, 男性の報告が多く, 女性の手術症例としては自験例が最高齢であった. また, 自験例の異常動脈径13mmは手術された報告症例のうち最大径18mmに次ぐものであった.
  • 山川 浩, 横田 勉, 田村 和夫
    1996 年 34 巻 1 号 p. 117-120
    発行日: 1996/01/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    症例は25歳男性. 血友病Aのため生後より血漿輸血を, 6歳以降は濃厚第VIII因子製剤を受けていた. 1992年4月より咳, 痰, 8月より38~39度の発熱が出現した. 入院時の白血球数2,500/μl, リンパ球数725/μl, CD4陽性細胞数9/μl, 抗HIV抗体陽性であった. 胸写上, 両肺野にび漫性に小結節陰影を, 右上肺野を中心に空洞を伴った陰影を認めた. 同部に対して経気管支的肺生 (TBLB) を施行し, グロッコト染色で嚢子壁が黒褐色に染色されカリニ肺炎と診断した. ST合剤, ペンタミジンによって一時軽快した. カリニ肺炎は通常肺門部を中心に間質性陰影を来し, 低酸素血症を来す場合が多いが, 約20%の例が非典型的な経過をとる. なかでも嚢胞ないし空洞形成を伴う例は約10%と言われているが, 今回TBLBにて診断が確定し治療にて軽快したのでここに報告する.
  • 江草 嘉弘, 礒部 威, 大橋 信之, 奥崎 健, 住吉 秀隆, 二井谷 研二, 岸槌 健太郎, 藤原 康弘, 山岡 直樹, 山木戸 道郎
    1996 年 34 巻 1 号 p. 121-125
    発行日: 1996/01/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    症例は68歳男性, 近医で胸部異常陰影を指摘され精査の結果肺癌 (腺癌) と診断され左上葉切除術が施行された. p-T2N2M0, Stage IIIA で外来観察中に突然の左視力低下を訴え眼科受診し精査の結果, 転移性脈絡膜腫瘍が疑われた. 眼球穿破の危険があった為左眼球摘出術を行った. 摘出された脈絡膜腫瘍の組織像は原発性肺癌の組織像に極めて類似しており, 原発性肺癌の脈絡膜転移と診断した. 眼球摘出後7ヵ月経過した現在QOLの低下は認めていない. 今後, 肺癌患者に於ては眼症状の有無を確認することが重要であると思われた.
  • 川崎 聡, 大達 里佳, 菓子井 達彦, 早瀬 満, 水島 豊, 小林 正, 北川 正信
    1996 年 34 巻 1 号 p. 126-131
    発行日: 1996/01/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    症例は24歳女性. 約1ヵ月間持続する発熱・関節痛・乾性咳嗽を主訴に近医受診. 汎血球減少と胸部X線上両側下肺野のびまん性陰影を指摘され, 精査加療のため当科紹介入院となった. 入院時, 精神症状および口腔潰瘍があり, 超音波検査で胸水および心嚢水を認めた. 血清学的検査では抗核抗体・抗DNA抗体・LE test 陽性で, 尿円柱も認めたことより, 全身性工りテマトーデスと診断した. 胸部CT 写真では両側下肺野を中心にびまん性の間質影を認めたほか, 右S8に径1cm大の結節性陰影2個および右S10と左S8に径0.5cm大の結節性陰影を各1個認めた. 経気管支肺生検にて, リンパ球浸潤を伴う胞隔炎と血管内の肉芽性病変を認め, 動脈炎を伴う急性間質性肺炎と診断された. Prednisolone 60mg より治療開始したところ, 速やかにびまん性間質影の消退と結節性陰影の縮小を認めた. 結節影を伴うループス肺炎の報告は極めて少なく, 画像診断上貴重な症例と考えられた.
feedback
Top