日本胸部疾患学会雑誌
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34 巻, 10 号
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  • 菊地 和博, 石井 芳樹, 北村 諭
    1996 年 34 巻 10 号 p. 1071-1076
    発行日: 1996/10/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    1985年1月から1994年12月までに当科に入院した肺癌手術症例のうち, 手術前後の肺機能データが得られた62症例の手術後の肺機能を, 術前肺機能から術前後の非閉塞亜区域気管支数を用いて予測し実測値との相関を検討した. 術後から肺機能検査施行までの期間では手術後4週以降の症例が, 閉塞性肺機能障害の有無では1秒率70%以上の症例が, 肺活量と1秒量とともにr>0.85の良好な相関を示した. 肺気腫による閉塞性肺機能障害を有する症例の中には予測値より30%以上良好な実測値を得た症例を認めた. 肺気腫を有する肺癌患者は気腫性変化の分布と程度によっては, 肺葉切除により volume reduction therapy としての効果も加味され予測値より良好な実測値が得られる可能性が示唆された.
  • 吉田 浩幸, 小林 俊介, 岡田 信一郎, 羽隅 透, 佐藤 伸之, 鈴木 聡, 斉藤 泰紀, 藤村 重文
    1996 年 34 巻 10 号 p. 1077-1083
    発行日: 1996/10/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    肺小細胞癌のリンパ節転移における細胞間接着因子の意義を知るため, 原発巣とリンパ節転移巣とから株化樹立されたヒト肺小細胞癌細胞株を対象とし, フローサイトメーターを用いてE-カドヘリン, CEA, NCAMの発現について比較検討した. E-カドヘリンは, 原発巣からの5株では全株に発現を認めたのに対し, リンパ節転移巣からの5株では全株とも陰性であった. CEAは, 原発巣からの5株全株に発現を認めたのに対し, リンパ節転移巣からの5株では1株のみに発現を認めただけであった. NCAMは, 両群共5株中4株が陽性で明らかな差異を認めなかった. また, E-カドヘリンの発現量とCEAの発現量には正の相関が認められた. E-カドヘリンとCEAは共に上皮細胞間結合に関与することから, 肺小細胞癌のリンパ節転移は上皮性の細胞間接着因子の低下が重要である可能性が示唆された.
  • 礒部 威, 山田 耕三, 尾下 文浩, 野村 郁男, 野田 和正, 亀田 陽一, 山木戸 道郎, 金子 昌弘
    1996 年 34 巻 10 号 p. 1084-1092
    発行日: 1996/10/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    近年, 径1.0cm内外の肺野末梢の小型肺癌が発見される頻度が増加したが, その画像上の特徴は明確でない. 今回我々は, 外科切除が施行された最大腫瘍径が1.0cm以下の肺野型腺癌11例を対象として, 通常CT画像と helical scan 法を用いた thin-section CT 画像における内部構造, 辺縁の性状ならびに肺血管, 気管支の関与についてCT画像と病理所見との比較検討を行った. thin-section CT では全例に2本以上の血管の関与を認め, 内部不均一像91%, 辺縁不整像91%, と高率に認められ, 病理所見に合致するものであった. 一方, 通常CTでは血管の関与が91%, 境界不明瞭が91%, 内部不均一像が82%と高率に認められ, 通常CTでこれらの所見を認める小型病変に対しては, 悪性病変を疑って thin-section CT を用いた検討と積極的な精査が必要と考えられた.
  • 滝沢 始, 鈴木 直仁, 柳川 崇, 岡崎 仁, 佐藤 誠, 秋山 法久, 幸山 正, 河崎 伸, 伊藤 幸治, 岡 輝明
    1996 年 34 巻 10 号 p. 1093-1097
    発行日: 1996/10/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    多発性筋炎/皮膚筋炎 (PM/DM) にともなう間質性肺病変 (ILD) の予後に対する重要性とその際のILDの予後決定因子をしらべることを目的に, PM/DM 51例中画像上ILDが考えられた41例を対象に臨床・病理学的検討を行った. ILDの治療反応性から3群に分け臨床検査所見を比較したところ, 進行群では有意に皮膚症状と呼吸器症状が高率であり, 筋症状は軽度で, 筋酵素も低く, 抗Jo-1抗体が陰性であった. 9例が呼吸不全で死亡し, 全員DMでCK低値, 抗Jo-1抗体陰性例で治療に抵抗し急速に進行した. 病理学的検索ができた7例はいずれもびまん性肺胞障害 (diffuse alveolar damage) の所見を呈していた. PM/DMのILDには予後不良の一群があり, その管理・治療上重要な臓器病変であることが明らかとなった.
  • 川田 博, 豊田 恵美子, 小林 信之, 高原 誠, 岩田 広香, 鈴木 直仁, 鈴木 恒雄, 工藤 宏一郎, 可部 順三郎, 高橋 光良, ...
    1996 年 34 巻 10 号 p. 1098-1103
    発行日: 1996/10/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    肺結核の集団感染の証明には従来より分離結核菌のファージ型別, 菌の薬剤感受性パターンが用いられてきたが日本でみられる型は2種のみであること, 分離菌の多くは抗結核剤に感受性があることよりこれらの方法は限界がある. 今回感染経路を明らかにする目的で肺結核家族発生の疑われる3例, 及び院内感染が疑われる2例の分離結核菌を用いRFLP分析 (restriction fragment length polymorphism analysis) を行なった. 各々のグループでRFLPパターンは同一であることが証明され家族感染, 院内感染の可能性がきわめて高いと考えられた.
  • 諏訪部 章, 伊藤 未幸, 高橋 敬治
    1996 年 34 巻 10 号 p. 1104-1108
    発行日: 1996/10/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    エリスロマイシン (以下EM) のラット肺胞II型細胞のサーファクタント代謝 (合成・分泌・再利用) に及ぼす効果を検討した. II型細胞をラット肺より分離しサーファクタント前駆物質である3H-コリンを添加した. 合成能として22時間後に合成された3H-リン脂質量とスークロース濃度勾配法により lamellar body への取り込みを, 分泌能として3H-リン脂質の上清中への放出率 (%secretion, 3時間) を, 再利用能として3H標識合成リポゾームの細胞内への取り込み率 (%uptake, 1時間) を指標とした. EM (5~50μg/ml) をII型細胞と22時間前処置した場合, PMAやATP刺激による分泌は濃度依存性に抑制された. 合成能と再利用能には影響を与えなかった. 以上よりEMはII型細胞のサーファクタント分泌を抑制することが示され, 肺胞蛋白症などサーファクタント過剰状態に対する治療的有用性が示唆された.
  • 鈴木 聡, 野田 雅史, 杉田 真, 小野 貞文, 佐久間 勉, 小池 加保児, 谷田 達男, 藤村 重文
    1996 年 34 巻 10 号 p. 1109-1114
    発行日: 1996/10/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    ラット摘出肺の肺胞上皮を介した水分輸送におけるNa+-グルコース共輸送の意義を検討するために, fluid-filled lung model を適用してアミロライド (Na+チャネルのブロッカー) とフロリジン (Na+-グルコース共輸送のブロッカー) が水分輸送におよぼす効果を判定した. 10-5~10-4Mアミロライドはコントロールの約30%に相当する水分輸送を抑制した. 10-3Mのフロリジンも同等の抑制効果を示した. Na+-グルコース共輸送を通過するNa+/グルコースの比は2.5であった. 肺胞上皮を介した水分輸送とNa+輸送の間には正の相関 (r=0.907) が認められたが, これはフロリジンの有無により影響されなかった. 以上の成績は, ラット摘出肺の肺胞上皮を介した水分輸送におけるNa+-グルコース共輸送の寄与はNa+チャンネルのそれに匹敵すること, しかしNa+-グルコース共輸送によるグルコースの移動自身は水分輸送に関与しないことを示唆している.
  • 中村 豊, 星野 誠, 宮坂 隆, 清水 邦彦, 山城 義広, 沈 在俊, 保坂 公夫, 内田 耕, 福島 保喜, 赤坂 喜清
    1996 年 34 巻 10 号 p. 1115-1120
    発行日: 1996/10/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    症例は64歳の女性. 乾性咳嗽を主訴として近医受診. 感冒ると診断され投薬を受けるも症状改善せず当院来院. 胸部X線写真にて小斑状陰影を認め, BALFで好酸球の増加, TBLBで肺胞腔への好酸球浸潤を認め慢性好酸球性肺炎と診断した. 骨髄穿刺を施行し骨髄像を検討したところ成熟好酸球の増加が主体であった. 血清ECP値は高値を示し, アストグラフ法により気道過敏性の亢進が認められた. プレドニゾロン30mg/dayの投与により臨床症状, 画像上改善がみられ, 同時に骨髄像, ECP値も正常化した. 気道過敏性は, 改善はしたが依然存在した. 血清ECP値と気道過敏性が慢性好酸球性肺炎の病勢を反映し, ステロイド剤の投与によって骨髄レベルでの好酸球の産生が抑制されたことを観察し得た1例を報告した.
  • 大滝 雅之, 多部田 弘士, 鈴木 陽一
    1996 年 34 巻 10 号 p. 1121-1124
    発行日: 1996/10/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    22歳, 女性. 発熱, 食欲低下, 咳嗽, 喀痰, 右胸痛を主訴として来院. 胸部X線写真上, 両肺野に浸潤影を認め, 喀痰よりNeisseria meningitidis が検出されたため, 本菌による両側性肺炎と診断した. N. meningitidis は本邦には常在せず, その感染症は輸入感染症とする考えもあるが, 本例は海外渡航歴がなく感染経路を特定できなかった. 本菌による呼吸器感染は稀であり, その場合でも多くは気管支炎に止まり, 肺炎にまで至る症例は極めて少ない. 本菌の易感染性要因である後期補体成分欠損は認められず, 免疫能にも異常はなかった. しかし, 本例は著明なるいそうがみられる上, 検査上も低栄養状態にあったことが分かっており, それが発症要因の一つになったと推測された. 治療にはニューキノロン系抗菌薬である DU6859a を経口投与し著効を示した.
  • 徳本 浩, 野村 繁雄, 山口 和之, 吉栖 正之, 鴨志田 正五
    1996 年 34 巻 10 号 p. 1125-1129
    発行日: 1996/10/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    症例は33歳男性. 1988年5月集検で胸部X線上右上肺野に異常陰影を指摘されたため, 他院を受診するも無症状であったため良性腫瘍として経過観察されていた. 1992年12月頃から異常陰影の増大を認めたため1993年5月当院に入院した. 咳嗽, 喀痰などの呼吸器症状はなかったが胸部X線および high-resolution CT (HRCT) で右S2bに辺縁は明瞭で, 血管の集束と胸膜の巻き込みがみられず, 軟部組織より低濃度を示す結節状陰影を認めた. 1993年右S2区域切除術を施行し, 組織学的, 免疫組織化学的, および電顕所見より血管外皮細胞腫と診断した. 胸腔外の諸臓器の検索を施行したが, 他臓器に腫瘍や転移巣は認めず, 肺原発の血管外皮細胞腫と診断した.
  • 小林 厚, 前田 光一, 夫 彰啓, 徳山 猛, 濱田 薫, 長 澄人, 国松 幹和, 成田 亘啓
    1996 年 34 巻 10 号 p. 1130-1135
    発行日: 1996/10/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    症例は68歳, 女性. 気管支喘息で経過観察中, 発熱, 右大腿部痛, 手指・足趾末端部の知覚異常および腹痛が出現した. 末梢血に著明な好酸球増多と胸部X線上左下葉に塊状影とを認めた. 筋生検で好酸球浸潤を伴う壊死性血管炎を認め, アレルギー性肉芽腫性血管炎と診断した. 本症例では便虫卵検査などから寄生虫性疾患は否定されたが, 各種寄生虫沈降抗体陽性を示し, この抗体価は副腎皮質ステロイド薬投与で臨床症状・検査所見の改善とともに低下傾向を示した. 本症例での寄生虫抗体価陽性は血管炎の病態に関連している可能性が考えられた.
  • 小林 修一, 伊藤 英司, 山田 玄, 五十嵐 知文, 吉田 豊, 相坂 治彦, 阿部 庄作
    1996 年 34 巻 10 号 p. 1136-1139
    発行日: 1996/10/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    症例は57歳, 女性. 検診の胸部X線写真で, 左中肺野外側に辺縁明瞭な径約1cmの小結節影を指摘され, 精査目的に当科入院となった. 病変は左S5胸膜直下に存在し, これに関与するA5b, V5bの拡張を認め, 肺動静脈瘻が疑われた. 肺動脈造影にて, 単発性の肺動静脈瘻と診断された. 瘻の部分は3次元CTでは, 形態的に腫瘤状を呈さず, 拡張した血管が不規則に蛇行しながら, 流出静脈に移行している様子が明確に捕えられ, 血管病変であることが明瞭に表現されていた. また, カラードップラーエコーでは病変からモザイクパターンの血流信号が得られ, 病変が臓側胸膜に接している事が示唆され, 胸腔鏡下肺部分切除を施行する上で有用だった. 遺伝性出血性末梢血管拡張症 (Rendu-Osler-Weber 病) との合併は認められなかった.
  • 渡辺 篤, 野口 雅弘, 西脇 敬祐, 矢守 貞昭, 大浜 仁也, 坂 英雄, 下方 薫
    1996 年 34 巻 10 号 p. 1140-1144
    発行日: 1996/10/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    51歳女性. 1993年4月から発熱が出現, 左上葉に浸潤影を認め, 検痰にて M. avium complex が検出され, RFP, EB, INHを投与したが無効で, PZA, OFLX, SMに変更後解熱, 陰影も改善し退院. 1994年に入り血痰が出現. 左上葉の陰影増悪し再入院となった. 左上葉は無気肺となり, 気管支鏡では左上幹に表面平滑, 光沢のあるポリープ状の腫瘤が複数存在した. 同部の生検にてリンパ球, 形質細胞の浸潤を認め, 抗酸菌染色陽性であった. EVM, SPFX, CAMの追加により, 血痰は消失, 胸部写真上陰影も徐々に改善し, 左上葉支のポリープ状腫瘤もほぼ消失した. 菌はDNAプローブ法により M. avium と確定した. 気管支内腔にポリープ状の腫瘤を形成する非結核性抗酸菌症は稀である. 気管支鏡所見は肺癌との鑑別を要する. 欧米ではAIDS患者に同様の報告があるが, 本症例はHIV抗体陰性であった.
  • 嶋津 芳典, 小幡 八郎
    1996 年 34 巻 10 号 p. 1145-1149
    発行日: 1996/10/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    鉄工所勤務の男性4名が, ステンレス製の酒造用タンク内で防錆剤の塗布作業中に, NO2ガスとフッ化水素ガスを吸入し, 2名が呼吸不全を発症し, 胸部X線で広汎な浸潤影を呈した. 呼吸不全は数日のうちに改善したが, 曝露後12ヵ月の呼吸機能検査による観察から, 末梢気道障害の遷延が疑われた. 本邦においてステンレス防錆作業による急性NO2ガス中毒の大半は, 半密閉空間での作業中に発症しており, 事故防止のためには, 防錆作業者への有毒ガス中毒にたいする知識の普及と密閉空間における送風マスク着用の徹底が必要と考えられた. 同一の条件で作業をしていた4名のうち, 非喫煙者の2名で, 症状が重症化したことから, NO2ガス中毒においては, 非喫煙者と喫煙者では感受性に差がある可能性が示唆された.
  • 家永 浩樹, 高橋 英気, 蓮沼 紀一, 田村 尚亮, 檀原 高, 泉 浩, 見上 光平, 益田 貞彦, 植草 利公, 吉良 枝郎
    1996 年 34 巻 10 号 p. 1150-1155
    発行日: 1996/10/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    3ヵ月間続く乾性咳嗽, 労作時呼吸困難のため入院した喫煙歴 (20本/日×20年) のある53歳女性. 症状出現1ヵ月前の健康診断時の胸部レントゲン写真では異常を認めなかったが, 症状出現1ヵ月後には両側びまん性の小粒状陰影を認めた. 症状は次第に増悪し更に3ヵ月後の入院時には胸部X線上陰影の増加を認めた. 胸部CT像では両側びまん性に小粒状影を認め一部は小輪状影を呈していた. 入院後10本/日程度の喫煙は続いていたが, 1ヵ月間で症状は自然寛解し, 胸部X線上も陰影の改善傾向を認めた. 胸腔鏡下肺生検でS-100蛋白陽性の異型組織球からなる肉芽腫を認め, 肺好酸球性肉芽腫症と診断した. その後も陰影の改善傾向は5ヵ月間持続している. 本例では比較的短期間に本症の発症から増悪, さらに喫煙中の自然緩解を観察することができ, 本症の自然歴を考える上で興味ある例と考えられた.
  • 生田 順也, 近藤 康博, 谷口 博之, 柳澤 聖, 後藤 邦彦, 鈴木 隆二郎, 高木 健三, 小野 謙三, 横井 豊治
    1996 年 34 巻 10 号 p. 1156-1162
    発行日: 1996/10/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    症例は61歳, 女性. 主訴は左膝関節痛, 咳嗽, 労作時呼吸困難. 胸部X線上浸潤影と斑状網状影を認め, aldolase, CKの高値を認めたが, 明らかな筋炎症状を呈さず急速に呼吸不全が進行し, 診断確定のため筋生検, 開胸肺生検を施行した. 筋生検所見は非特異的で, 開胸肺生検にて, BOOPと診断された. 入院後, 呼吸不全が悪化しステロイドパルス療法後, サイクロフォスファミドとプレドニソロンの維持療法にて良好に経過した. 経過中に入院時陰性であった抗Jo-1抗体が検出され臨床症状, 検査所見, 経過より多発性筋炎1皮膚筋炎の肺病変先行型と考えられた. BOOPは一般にステロイドに対する反応も良好な予後良好な疾患と考えられているが, 本症例のような急速進行性に悪化し呼吸不全を呈するBOOP症例に対してはステロイドパルス療法や免疫抑制剤などの積極的治療を考慮する必要があると考え報告した.
  • 坪井 知正, 陳 和夫, 大井 元晴, 高橋 憲一, 北 英夫, 大塚 直紀, 野口 哲男, 川上 賢三, 三嶋 理晃, 久野 健志
    1996 年 34 巻 10 号 p. 1163-1167
    発行日: 1996/10/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    急性増悪時に気管切開を施行されていた67歳の肺結核後遺症患者に長期在宅人工呼吸療法として鼻マスクによる陽圧換気法 (nasal intermittent positive pressure ventilation: NIPPV) の導入を試みた. 外科的気管切開口閉鎖術を施行したが, NIPPV継続下では気管切開口の閉鎖は困難であった. 一方, NIPPVを中断すれば急速に呼吸不全が進行した. そこで, 外科的閉鎖術後に一時的に換気補助をNIPPVから陰圧換気法 (chest negative pressure ventilation: CNPV) に変更した. これにより気管切開口の閉鎖に成功し, その後NIPPVによる在宅人工呼吸に移行できた. 気管切開を有する患者にNIPPVを導入する場合, 一時的なCNPVの使用は, 気管切開口の閉鎖を可能にし, より早い, より安全な在宅への移行を促進するものと思われた.
  • 中島 正光, 真鍋 俊明, 二木 芳人, 松島 敏春
    1996 年 34 巻 10 号 p. 1168-1173
    発行日: 1996/10/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    夏型過敏性肺臓炎 (夏型HP) 発症時血清IgEが高値を示し, HPの改善と供に血清IgE値も正常値へと減少し, さらに Trichosporon mucoides, (T. mucoides) に対する皮内反応 (15分値) が陽性を示した症例を経験した. 症例は56歳, 女性. 1994年7月頃より発熱, 咳嗽が持続, 10月には軽快したが翌年8月頃再度同様の症状が出現し, 経口抗菌薬の投与を受けるが軽快せず紹介入院となった. 入院後, HPも考え無治療で様子をみ, 発熱, 血清の炎症反応の軽快, 動脈血ガスの改善が得られた. さらに, 帰宅テストで陽性, その翌日施行した経気管支肺生検ではHPに一致する組織像が得られた. 血清 T. mucoides 抗体はTIMM1573株で陽性を示した. これらの事より本例を夏型HPと診断した. 発症時血清IgEは721U/dlと高値を示し,HPの改善と供に徐々に低下, 正常値となった. さらに T. mucoides に対する皮内反応ではTIMM1573株で15分値のみ陽性となった. 本例はHPとI型アレルギーとの関係を示唆する症例と考えられた.
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