日本胸部疾患学会雑誌
Online ISSN : 1883-471X
Print ISSN : 0301-1542
ISSN-L : 0301-1542
34 巻, 11 号
選択された号の論文の20件中1~20を表示しています
  • 滝沢 始, 鈴木 直仁, 柳川 崇, 岡崎 仁, 佐藤 誠, 秋山 法久, 幸山 正, 伊藤 幸治, 岡 輝明
    1996 年 34 巻 11 号 p. 1177-1181
    発行日: 1996/11/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    最近10年間に入院した膠原病患者のうち診断が確定し, かつ予後調査が可能だった715例についてその予後実態を調査した. Kaplan-Meir の累積生存率ではPM-DM, PSS, RA, SLEの順に不良であり, 死因として間質性肺病変 (ILD) は37.5%を占めた. 同時期の特発性間質性肺炎 (IIP) と比較し, 膠原病で胸部レ線上ILDあり群は有意に生命予後がよかった (p<0.01). 後者は発症時年齢が若く, 肺活量もより良好である他, 急性増悪の頻度がIIPより有意に少なかった. 膠原病の肺病変の予後不良群はPM/DMとPSSにみられ前者では発症から1年以内の急速な経過をとるものが多く, 後者では比較的長期の経過で死亡するものがあった. 膠原病におけるILDはその生命予後を規定する重要な因子であり一層の病態解析が必要と思われる.
  • 井上 雅樹, 大津 格, 萩谷 政明, 冨岡 真一郎, 青木 弘道, 角 昌晃, 本間 敏明, 長谷川 鎮雄
    1996 年 34 巻 11 号 p. 1182-1188
    発行日: 1996/11/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    肺気腫症15症例に対し6週間の入院による呼吸リハビリテーションが肺機能に及ぼす影響について検討した. 呼吸リハビリの内容は呼吸訓練, リラクセーション, 胸郭のモビライゼーション, 体操や歩行による運動を中心として施行した. 呼吸リハビリテーションにより肺活量, 1秒量等の肺機能では有意差を認めなかったが, 最大運動負荷量は平均約18%の有意な増加を認めた. またリハビリ前後での肺活量の変化率は最大運動時の1回換気量, 分時換気量の変化率と有意な相関を認めたが, 最大運動負荷量の変化率とは有意な相関を認めなかった. 一方肺活量が10% (250ml) 以上増加したものは15例中8例に認められ, リハビリ前後での肺活量の変化と全肺気量の変化の間には有意な相関を認めた. 呼吸リハビリによる肺活量や運動能の改善に関しては, 今後更に詳細な呼吸生理学的検討が望まれ, 症例に応じたきめ細かいプログラムの作製が必要と考えられた.
  • 中村 清一, 森 豊, 滝沢 潤, 川上 雅彦
    1996 年 34 巻 11 号 p. 1189-1193
    発行日: 1996/11/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    目的; 無加湿酸素が供給される呼吸同調型酸素セーバーつき酸素ボンベからの酸素吸入による, 鼻粘液線毛クリアランスにおよぼす影響を検討した. 対象; 在宅酸素療法を施行している病状の安定している25例 (男性22例) を対象とした. 年齢は72±1.0歳 (平均±SE) に分布し, 肺機能は%VC 46.6±3.0, FEV1/FVC%59.0±4,5, 室内気吸入下動脈血ガスは PaO2 55.7±2.0Torr, PaCO253.9±1.9Torr であった. 方法; 患者を二群に分けサッカリンテストの計測値 (サッカリンタイム: ST) を測定した. 一群では加湿酸素投与時のSTをコントロールとし, ついで8時間にわたり呼吸同調型酸素セーバーを装着した酸素ボンベを用いて乾燥酸素吸入させ, 他群には同様の方法でコントロールのST値を計測後, 呼吸同調型酸素セーバーを装着せず持続的に供給される乾燥酸素の吸入を8時間施行し, 再度STを測定した. 酸素吸入後のSTをそれぞれのコントロールと比較した. 結果; 呼吸同調型酸素セーバー装着による酸素吸入によっても, STの延長はみられなかった (コントロールvs酸素セーバー: 14.9±1.4vs15.6±1.5分). 呼吸同調型非装着群では3例が脱落し, STが有意に遅延した (コントロールvs非装着群16.7±2.6vs 26.6±5.4分, p<0.05). 結論; 呼吸同調型酸素供給システムでは吸入酸素の加湿はされていないが, これを8時間使用しても, 鼻粘液線毛クリアランスには影響しないことが示された.
  • 森 清志, 廣瀬 敬, 町田 優, 横山 晃貴, 澤藤 誠, 横井 香平, 富永 慶晤
    1996 年 34 巻 11 号 p. 1194-1201
    発行日: 1996/11/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    通常のCTで原発巣が胸膜面に接している肺腺癌症例を対象に Thin-section CT 検査を追加した prospective study を行い, 胸膜播種に対する診断能を検討した. 対象は最近約3年に当科で診療を受け, 明かな胸水貯留のない肺腺癌136例の内32例 (切除例25, 非切除例7) である. Thin-section CT は原発巣と隣接する胸膜面, 小葉間裂, 横隔膜ドームレベルの3箇所で撮影した. 病理学的に胸膜播種は12例 (切除例5, 非切除例7) で内2例は術前に診断できなかった. CT画像上12例に胸膜播種ありと診断され, 2例は偽陽性, 非切除7例中6例は経皮的な胸腔洗浄細胞診にて癌細胞を認めた. CT診断率は葉間100% (7/7), 縦隔75% (3/4), 横隔膜71% (5/7), 胸壁57% (4/7) で, 切除例での検討では sensitivity は葉間100%と良好であったのに対し, 他の胸膜面0~33%と低かった. Thin-section CT は肺癌の胸膜播種診断に有用で, 特に葉間胸膜面の診断には優れていた.
  • 小林 英夫, 小須田 茂, 永田 直一, Hideki Kikuma, Takahiro Morisako, Soichiro Kano, ...
    1996 年 34 巻 11 号 p. 1202-1207
    発行日: 1996/11/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    94例のびまん性肺疾患症例を対象に, 67Ga SPECTの臨床的有用性をプラナー像と胸部CTと対比し検討した. SPECTでは同一スライス内での左右差や他のスライスとの比較を用いることにより, プラナー像に比し軽度の集積の検出力が向上した. また集積分布についての空間的情報も入手しえた. CT所見との対比では, CT所見からGa集積の推測は困難なことが示唆された. びまん性肺疾患の臨床において, 従来のプラナー像に加えて67Ga SPECTの積極的な活用が望まれた.
  • 諏訪部 章, 板坂 美代子, 鈴木 博貴, 伊藤 未幸, 高橋 敬治
    1996 年 34 巻 11 号 p. 1208-1215
    発行日: 1996/11/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    好中球はスーパーオキサイド (O2-) やエラスターゼを放出し肺傷害を誘発する. 肺胞にはサーファクタントなど傷害因子に対する防御因子が存在することが示されている. 今回は肺胞II型細胞 (以下II型細胞) が好中球機能に及ぼす影響について検討した. 好中球をヒト静脈血より分離しそのO2-産生をチトクロームC還元法により評価した. II型細胞と線維芽細胞はラット肺から分離した. 好中球のO2-産生能はII型細胞の存在下で抑制された. この作用は肺線維芽細胞には認められずII型細胞特異的と考えられた. この抑制には両細胞の接触が必ずしも必要でなく, またL-NAME添加で消失したところからII型細胞の放出する一酸化窒素 (NO) など不安定で短寿命の因子を介すると考えられた. 以上よりII型細胞が好中球O2-産生を抑制することが示され, 肺胞にはサーファクタントやII型細胞など抗好中球成分が存在する可能性が示された.
  • 佐藤 功, 佐藤 明, 小林 琢哉, 佐々木 真弓, 三谷 昌弘, 高橋 一枝, 中野 覚, 田邉 正忠
    1996 年 34 巻 11 号 p. 1216-1220
    発行日: 1996/11/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    隣接する肺葉が分葉しているか, あるいは分葉不全であるかは, 側副換気や病変の伸展や退縮に大きく関与すると思われる. 肺葉の分葉については, 部分的なものを含めると分葉不全の症例が多いとされている. しかしながら摘出された肺標本をみるとき, 分葉不全の領域に何らかの隔壁構造が存在することが少なからず認められる. 今回我々は剖検肺において, 癒合した分葉不全の領域を組織学的に検討した. 21症例の28領域の検討で, 12領域では隔壁構造が認められる部分と, 隔壁構造が欠損している部分が混在していた. 他の16領域では, 厚いか薄いかにかかわらず何らかの隔壁構造が認められた. CTを始めとする臨床画像上, 線状影の存在が必ずしも分葉を表すとは限らないことが判明した.
  • 原田 大志, 高山 浩一, 肝付 兼仁, 日高 孝子, 宮崎 浩行, 桑野 和善, 原 信之
    1996 年 34 巻 11 号 p. 1221-1226
    発行日: 1996/11/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    慢性関節リウマチに合併した間質性肺炎の急性増悪例に対し, ステロイド薬による治療に併用して cyclophosphamide (CPA) の大量間歇パルス療法を行い, 良好な経過をとった症例を経験したので報告する. 症例は52歳の女性で, 当初間質性肺炎の急性増悪に対し, ステロイド薬によるパルス療法が施行された. 病巣の改善を認めたためステロイド薬を漸減したが, 減量中に原疾患の再燃をみた. そこで2回めのステロイド薬によるパルス療法後, ステロイド薬の経口投与に加えてCPAの大量パルス療法 (500mg/m2) を約1ヵ月毎に計3回施行した. その間ステロイド薬は順調に減量でき, 最終的にはステロイド薬を中止し, CPAの経口投与のみでコントロール可能となった. CPAの投与に伴う副作用は特に認めなかった. 本症例は間質性肺炎の急性増悪時にステロイド薬に併用したCPAの大量間歇パルス療法の有用性を示唆する興味深い症例であった.
  • 花岡 正幸, 久保 恵嗣, 山口 伸二, 早野 敏英, 小泉 知展, 藤本 圭作, 本田 孝行, 小林 俊夫, 関口 守衛
    1996 年 34 巻 11 号 p. 1227-1233
    発行日: 1996/11/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    約半年の経過で呼吸困難が増悪した2例が, 肺生検にて特発性間質性肺炎と診断された. 症例1はIgG, λタイプ, 症例2はIgGおよびIgA, λタイプの単クローン性免疫グロブリン血症を合併していた. 気管支肺胞洗浄液中で症例1はインターロイキン6, 症例2はインターロイキン6, 1βおよび8が高値を呈していた. インターロイキン6は単クローン性免疫グロブリン血症の血清中で上昇し, 疾患の進展に関与している. また, インターロイキン6が肺の線維芽細胞の刺激因子として働くとの報告もある. 単クローン性免疫グロブリン血症という免疫系の異常が, 間質性肺炎の発症, 進展にも何らかの影響を及ぼしていた可能性が考えられ, 文献的考察を加え報告した.
  • 大野 彰二, 萩原 真一, 小林 淳, 杉山 幸比古, 北村 諭, 金井 信行, 斎藤 建
    1996 年 34 巻 11 号 p. 1234-1238
    発行日: 1996/11/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    症例は56歳の男性で30年来, 砥の粉を用いた木工家具の塗装作業に従事していた. 50歳頃より労作時呼吸困難を自覚し, 53歳時に当科を初診した. 胸部X線写真では両側肺に大陰影と気腫性変化を認め, 経気管支肺生検にて砥の粉による塵肺と診断された. その後在宅酸素療法を導入されたが, 呼吸不全が進行し死亡した. 剖検肺では, 肺胞の虚脱に伴う高度の気腫性変化が上葉を中心に認められ, セメントが固まったような灰白色の塊状のものが気腔を占拠していた. 大陰影は炭粉沈着を伴った珪肺結節類似の硝子化結節が癒合したものであった. 灰白色の塊状物質はX線微小分析装置走査電顕にてチタン (Ti) が最も高濃度に認められた. 少量のTiでは肺の線維化を惹起し難いとされているが, 大量長期の暴露で線維化病変を形成する可能性があり, 本例では塗料として使われたTiが, 砥の粉による塵肺を重症化させた可能性が考えられた.
  • 桂 秀樹, 橋本 幾太, 平良 真奈子, 角陸 知妹, 山脇 功
    1996 年 34 巻 11 号 p. 1239-1243
    発行日: 1996/11/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    柴朴湯による薬剤性肺炎の1例を報告した. 症例は72歳, 男性. 咽頭違和感に対し柴朴湯の投与を受けた. 投与後42日目より呼吸困難, 発熱を認め来院. 呼吸不全及び胸部X線写真上びまん性線状, 粒状影を認めた. 経気管支肺生検では胞隔の軽度肥厚を伴う器質化肺炎像を呈し, 気管支肺胞洗浄ではリンパ球, 好中球, 好酸球の増加を認めた. リンパ球刺激試験では柴朴湯に対し陽性を示し同剤による薬剤性肺炎と診断した. 同薬剤の中止及びプレドニゾロンの投与により臨床症状, 呼吸不全, 胸部X線写真の改善を認めた. 当薬剤による薬剤性肺炎の報告は疑診例を含め本邦で第5例目と思われる.
  • 川崎 達也, 後藤 武近, 中村 泰三, 橋本 進一, 有本 太一郎, 岩崎 吉伸, 小野 眞, 戸田 省吾, 土橋 康成, 中川 雅夫
    1996 年 34 巻 11 号 p. 1244-1248
    発行日: 1996/11/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    症例は70歳女性. 嗄声の精査目的にて当科に入院した. 胸部単純X線写真にて特記すべき異常を認めなかったが, 気管支鏡検査で左声帯の傍正中位固定を認め左反回神経麻痺が疑われた. 胸部CT写真を撮影したところ気管前 (#3) および大動脈下 (#5) のリンパ節腫張 (直径1~2cm) を認めた. 悪性疾患のリンパ節転移, 縦隔リンパ節結核, サルコイドーシスなどを念頭におき精査を進めたが確定診断が得られなかったため, 開胸下縦隔リンパ節生検を施行した. 切除標本の組織学的検査においてHE染色では乾酪壊死を伴う類上皮細胞性肉芽腫, Langhans 型巨細胞を認め, Ziehl-Neelsen 染色でも抗酸性桿菌を認めたため縦隔リンパ節結核と診断した. 本症例は70歳と比較的高齢で他臓器結核の合併を認めず, 病変部はいずれも2cm以下と小さく, たまたま嗄声の発症が早期発見につながった極めて稀な症例と考えられた. 本邦報告例の文献的考察も加えて報告する.
  • 富澤 由雄, 黒岩 源, 須田 孝雄, 室田 直樹, 江澤 一浩, 湊 浩一, 土橋 邦生, 土屋 智, 斎藤 龍生, 森 昌朋
    1996 年 34 巻 11 号 p. 1249-1254
    発行日: 1996/11/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    症例51歳, 男性. 1995年7月上旬, 両側大腿部痛を主訴に某整形外科を受診. この時胸部異常陰影を指摘され, 8月10日当科を紹介され入院となった. なお, 7月7日の健診時の胸部X-Pでは明らかな異常は指摘されなかった. 入院後, 胸部X-Pにて右上葉の閉塞性肺炎様の陰影と胸水貯留を認め, 諸検査にて右上葉の原発性肺癌と診断された. 対症的に経過をみていたところ腫瘍は急速に増大し第13病日には右肺陰影の拡大, 気管・縦隔の左方への偏位を認めた. また白血球増多 (26,540/mm3) と血清G-CSF値の高値 (112pg/ml) を認め第21病日に呼吸不全により死亡した. 剖検肺の免疫組織学的にて低分化型腺癌であり, G-CSF染色陽性を示した. G-CSF産生肺腫瘍は比較的稀であり, 特に肺腺癌での報告は少ない. また本症例で見られた腫瘍の増殖は従来の報告に比し急速であり, 腫瘍増殖におけるG-CSFの関与も示唆された.
  • 高野 義久, 種田 和清, 郡 義明, 田口 善夫, 富井 啓介, 松村 栄久, 三野 眞里, 郷間 厳, 小橋 陽一郎, 弓場 吉哲
    1996 年 34 巻 11 号 p. 1255-1259
    発行日: 1996/11/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    我々は皮膚筋炎の精査中にサルコイドーシスの合併が判明した1例を経験した. 症例は57歳, 女性で, 発熱・乾性咳嗽・筋痛を主訴に当院を受診した. 皮膚筋炎に特徴的な皮疹と筋炎及び胸部X線上の間質性陰影から臨床的には皮膚筋炎とそれに伴う間質性肺炎が疑われた. しかし, 67Gaシンチグラフィーにて取込みのあった唾液腺と肺・筋肉から生検を行ったところ, 非乾酪性肉芽腫が証明された. また, 眼科的にはぶどう膜炎が認められ, サルコイドーシスが存在すると考えられた. 肺の組織は非乾酪性肉芽腫以外に, 膠原病に認められる間質性肺炎の像を呈していた. 特徴的な皮疹と肺の病理所見はサルコイドーシスでは説明できず, 稀な病態であるが, 本症例は皮膚筋炎とサルコイドーシスの合併と考えられた. サルコイドーシスは病理学的検査を施行しなければ判明しておらず, 病理学的検査の重要性が再認識された.
  • 内藤 龍雄, 松下 兼弘, 浅井 保行, 末次 勸
    1996 年 34 巻 11 号 p. 1260-1263
    発行日: 1996/11/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    小児の髄芽腫術後に脊髄次いで肺への転移を認めた1例を報告する. 症例は15歳, 男性. 10歳時, 頭痛, 嘔吐にて髄芽腫発症. 全摘後, 局所および全脳, 全脊髄に放射線治療をうけた. 13歳時, 仙髄へ転移し, 腰痛, 左下肢痛, 尿閉出現. 局所に放射線治療を行い, 同時に methotrexate の髄腔内注入も併用し, 諸症状は消失した. 15歳時, 熱発, 咳嗽, 胸部異常影にて来院. 経皮的肺生検にて髄芽腫肺転移と診断. carboplatin と etoposide による化学療法及び放射線療法により陰影の著しい改善をみた. 3ヵ月後, 肺病変の再発がみられたが放射線治療と vincristine による化学療法で再度, 陰影は改善した. 髄芽腫では転移巣に対しても化学療法, 放射線療法が有効であった. 今後, 髄芽腫の生存率の改善に伴い, 神経管外転移の増加が予想され, 原発巣の再発, 髄腔内播種とともに十分な注意が必要と思われる.
  • 猶木 克彦, 大角 光彦, 高杉 知明, 豊田 丈夫, 川城 丈夫, 青柳 昭雄
    1996 年 34 巻 11 号 p. 1264-1270
    発行日: 1996/11/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    M. chelonae subsp. ahscessus による肺感染症を2例経験した. [症例1] 72歳, 男性. MAC症で経過観察中, 発熱を認め入院, 喀痰検査でガフキー9号. CAM等の投与で改善した. [症例2] 61歳, 男性. M. fortuitum 症として経過観察中, 咳嗽・喀痰が多量のため入院, ガフキー7号. 抗結核薬・CAM等を開始したが, 炎症反応・胸部X線は増悪した. MIC測定後, AMKを追加し経過観察中である. 両症例とも DNA hybridization 法により, 本菌と同定された. 耐性検査では全ての抗結核薬に完全耐性を示し, ディスク法ではAMK, IPM/CS, CAM等に感受性を認めた. しかし, CAMのMIC値は, 症例1で0.78μg/ml, 症例2で100μg/ml以上であり, CAMのMIC値と実際の臨床効果に相関を認めた. 欧米での in vitro MIC 値測定により, AMK・CFX・CAMが本症に有望とされているが, 菌株により感受性に差があることも報告されており, 薬剤の選択にはMIC測定が有用と考えられる.
  • 岩田 政敏, 井田 雅章, 小田 三郎, 竹内 悦子, 中村 祐太郎, 堀口 倫博, 佐藤 篤彦
    1996 年 34 巻 11 号 p. 1271-1276
    発行日: 1996/11/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    症例は, 副鼻腔炎の手術歴のある喫煙歴のない62歳, 男性. 労作時呼吸困難と6年に及ぶ咳, 痰を主訴に来院. 両側下肺野に coarse crackle と rhonchi を聴取し, 寒冷凝集素の上昇と肺機能上閉塞性障害がみられ, 喀痰から H. influenzae が検出された. 胸部X線とCTで, 両側下肺野を中心として小葉中心性の粒状陰影と軽度の細気管支拡張と過膨張所見を認めた. 臨床所見からDPBを疑い胸腔鏡下肺生検を行ったところ, 膜性細気管支は粘膜下の線維化と炎症により狭窄ないし閉塞しており, 閉塞性細気管支炎と診断した. 外来でクラリスロマイシン (CAM) 投与中の生検1年2ヵ月後にRAを発症し, 本症を先行病変としたRAと考えた. 現在, CAMの継続投与で呼吸器症状, X線画像, 肺機能の改善が得られている. 閉塞性細気管支炎は一般的に急速に進行する予後不良の疾患とされており, CAMが本症の治療薬となりうるのか, 今後の検討が待たれる.
  • 増本 英男, 飯干 宏俊, 脇坂 ありさ, 谷口 治子, 芦谷 淳一, 伊井 敏彦, 迎 寛, 松倉 茂
    1996 年 34 巻 11 号 p. 1277-1282
    発行日: 1996/11/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    症例は52歳, 女性. 急に咳嗽, 高熱, 喘鳴, 呼吸困難が出現. ペニシリンやセフェム系抗生剤に反応なく, 緊急入院となった. 室内空気下でPaO249.8Torr. 胸部X線では小粒状影, 胸部CTではびまん性に小葉中心性の微少結節と気管支壁の肥厚を認めた. マイコプラズマによる急性細気管支炎を疑い, ミノサイクリンを開始後, 胸部CT上の小結節は消失した. その後血清学的にマイコプラズマ感染症と診断できたが, 低酸素血症が遷延し, 閉塞性換気障害の存在 (1秒率62.8%), 換気血流シンチの異常などより, 閉塞性細気管支炎への進展を疑った. TBLBや気管支造影では確診は得られなかったが, メチルプレドニゾロン1g 3日間, その後プレドニゾロン40mg/日投与により低酸素血症, 肺機能, 換気血流シンチは改善した. 閉塞性細気管支炎への移行が疑われ, 早期のステロイド投与が有効であったマイコプラズマ急性細気管支炎の1例を報告した.
  • 井田 雅章, 岩田 政敏, 堀口 倫博, 小田 三郎, 竹内 悦子, 中村 祐太郎, 佐藤 篤彦
    1996 年 34 巻 11 号 p. 1283-1288
    発行日: 1996/11/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    症例は52歳男性. 発熱, 腹痛, 下血, 膝関節痛に続き呼吸困難が出現し入院した. 入院時白血球, CRPの上昇, 低酸素血症, 血清補体価の低下, 顕微鏡的血尿と画像所見上間質性肺炎像を認めた. 血管造影で上腸管膜動脈分枝や腎動脈に microaneurysm を認め, 筋生検で fibrinoid necrosis を伴う全層性動脈炎を認めたことから, 結節性多発動脈炎とこれに伴う間質性肺炎と診断した. ステロイドとシクロホスファミドによる治療を開始し, 発熱や全身倦怠感は改善しつつあったが, 間質性肺炎は進行性で効果がなく, 発病後約50日で呼吸不全のため死亡した. 結節性多発動脈炎に伴う間質性肺炎は稀とされているが, 本例と同様の経過を辿った症例も少なからず報告されており, 文献的考察を加えて報告する.
  • 杉本 昌宏, 山脇 功, 桂 秀樹, 橋本 幾太, 稲野 秀孝, 飯塚 昌雄, 佐野 正明, 水野 武郎
    1996 年 34 巻 11 号 p. 1289-1293
    発行日: 1996/11/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    空洞性病変の経過観察中に, 癌性腫瘤により菌球様陰影を呈した空洞性肺癌の1例を報告した. 症例は75歳, 女性. 胸部X線写真上, 右肺上葉に空洞性陰影を認め肺癌が疑われるが, 経気管支生検等で確定診断にいたらず外来経過観察となった. その後, 空洞内に菌球様の腫瘤陰影が出現し, 空洞と腫瘤は徐々に増大したため, 肺アスペルギローマ, 肺癌, あるいは両者の合併等が疑われた. 再度施行した経気管支生検で扁平上皮癌が検出され, 原発性肺癌 Stage I (T2N0M0) と診断し右上葉切除を施行した. 切除標本では, 空洞壁から内腔に突出した腫瘤を認め, 空洞壁と空洞内腫瘤はいずれも扁平上皮癌で真菌類は認めなかった. 扁平上皮癌の空洞壁の一部がポリープ状に内腔に発育し, 癌性腫瘤による菌球様陰影を形成したものと考えられた.
feedback
Top