日本胸部疾患学会雑誌
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34 巻, 4 号
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  • 平岡 武典, 安藤 正幸, 志摩 清, 絹脇 悦夫, 清田 幸雄, 二塚 信, 藤田 稔
    1996 年 34 巻 4 号 p. 385-391
    発行日: 1996/04/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    熊本県松橋町の肺癌検診を契機に見つかった胸膜肥厚斑 (Pl-p) に対して, 6年間の疫学調査を行なった. 松橋町の人口は22,885人で, 検診対象者は12,108人 (52.9%) であり, うち, 9,832人 (81.2%) が検診を受けた. 胸部X線写真でPl-pの疑いがみられたものは1,357人で, うち1,114人が胸部CTを受け, 938人 (84.2%) にPl-pが確認された. これは受診者の9.5%, 松橋町住民の4.1%に相当し, とくに50歳以上の住民に高頻度にみられた. 石綿職業歴を有する者が89人おり, そのうち64人 (71.9%) にPl-pが見られたが, 全症例の6.8%を占めるに過ぎなかった. Pl-p例は1882年から1970年に存在した工場周辺に多く分布し, かつ調査時点の大気, 飲料水中の石綿線維数は対照の熊本市の市街地区より少なかったことから, その原因は過去における石綿による近隣環境曝露と推測された. 松橋町の肺癌死亡率は県全体の死亡率より低値であり, また悪性中皮腫の発生はみられていない.
  • 1984~88年と1989~93年の比較
    伊藤 和彦, 丸山 佳重, 真島 一郎, 月岡 一治, 土屋 俊晶, 近藤 有好
    1996 年 34 巻 4 号 p. 392-396
    発行日: 1996/04/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    肺結核に伴う死亡を減少させるためには, 死亡例の臨床像や背景を検討することが有意義であると考え, 排菌の認められた肺結核患者の死亡例について検討した. 1984年から1993年の10年間に, 当院を退院した肺結核患者2,333例中, 86例3.7%が死亡した. 前半と後半5年間の比較では, 後半に死亡患者における高齢者の増加, 結核関連死の減少, 悪性疾患による死亡の増加を認めた. 入院時の胸部X線での病変の範囲が広い例, performance score の悪い例に死亡例を多く認め, 入院2ヵ月以内の死亡を全体で39例45%に認めた. 前治療歴を有する患者の割合, 多剤耐性菌の頻度は減少傾向にあったが, 多剤耐性菌では結核関連死の比率が高かった. 以上より, 結核死亡例の減少を目指すには, 高齢者における早期発見, 急性期を乗り切る全身状態の管理方法の開発, 新規薬剤の開発が重要と考えられた.
  • 金森 一紀, 大久保 圭子
    1996 年 34 巻 4 号 p. 397-403
    発行日: 1996/04/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    安定期の慢性呼吸不全43例に対し肺理学療法を施行し, その効果を検討した. 理学療法は2ヵ月のプログラムに従い, (1) 患者教育, (2) 横隔膜呼吸訓練, (3) 呼吸筋強化訓練, (4) 歩行および自転車エルゴメータによる運動療法を中心に行った. 理学療法開始前の12分間歩行試験施行中のSpO2最低値が, 90%未満に低下した者をA群 (32例), 90%以上を維持できた者をB群 (11例) とし, A群の運動療法にあたっては SpO2 90%以上を維持することを目標とした. その結果, 両群とも12分間歩行距離および最大歩行距離は増加した. A群ではVC, FEV1, PaO2も有意に増加したが, B群では血液ガス・肺機能に有意な変化は認められなかった. A群のうち, 肺気腫ではVC, FEV1, PaO2が増加したが, 結核後遺症ではPaO2のみ有意に増加した. 慢性呼吸不全患者に対する肺理学療法によって, 運動耐容能の改善のみならず, 症例によっては肺機能・血液ガスの改善も期待しうると思われた.
  • 白石 素公, 吉田 稔, 有冨 貴道, 村上 英毅, 豊島 秀夫, 千手 昭司, 石橋 正義, 渡辺 憲太朗
    1996 年 34 巻 4 号 p. 404-412
    発行日: 1996/04/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    雄ラットに対し経気道的に porcine pancreatic elastase (豚膵エラスターゼ: PPE) を注入し, elastin の分解産物である血漿α-elastin 及びその架橋を構成している desmosine の変動と呼吸機能, 組織形態所見との関連について研究した. 雄 Wistar rat を3群に分け, (1) Saline 0.3ml (control群), (2) PPE 60単位 (PPE 60群), (3) PPE 120単位 (PPE 120群) をそれぞれに経気道的に注入した. 注入前, 注入 1, 3, 5, 7, 14, 28, 56日後に, 血漿α-elastin及び desmosine をELISA法により測定した. また注入56日後に呼吸機能及び肺組織形態計測を行った. 血漿α-elastin はPPE 120群において1, 3, 5, 7日目に, 血漿 desmosine はPPE 60群では1日目に, PPE 120群では1, 7日目に前値に対して有意 (p<0.05) に増加した. 全肺気量及び平均肺胞径はPPE 60群よりPPE 120群において有意に増加, 増大し初期のα-elastin と desmosine 値と相関した. 以上より, PPE投与後血漿α-elastin 及び desmosine が用量依存性に初期に有意に増加したこと, また機能的, 形態的に把握された気腫性変化と関連性のあることが示唆された.
  • 北 俊之, 辻 博, 高桜 英輔
    1996 年 34 巻 4 号 p. 413-421
    発行日: 1996/04/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    肝細胞癌 (HCC) に対する transcatheter arterial embolization (TAE) 後の肺塞栓症の合併について肺血流スキャンを用い13例のHCC患者で検討した. TAEとして右大腿動脈より刺入したカテーテルを肝腫瘍の動脈流入部直前まで到達させ Lipiodol, 塩酸エピルビシン, マイトマイシンC (以下MMC), gelatin sponge 細片を注入した. TAE前後に肺血流スキャン, 凝固線溶分子マーカー, 動脈血酸素分圧等を評価した. 13例中3例 (23%) にTAE後の肺血流スキャンで欠損を認めたが, 無症状であり欠損は4週後に消失した. TAE後, 血小板数とセロトニンは減少し, A-aDO2, fibrinogen, TAT (thrombin-antithrombin III complex) は増加したが, 血流欠損例も非欠損例も同様の傾向であった. 血流欠損例はTAE前のTATが高値を示した. TAE後の肺血流欠損の原因としては肺脂肪塞栓よりも肺血栓塞栓が考えられた. TAT高値のHCC患者はTAE後の肺塞栓症合併のリスクが高くなることが示唆された.
  • 楠本 洋, 國澤 晃, 米丸 亮, 栗山 謙, 内海 健太, 中野 優, 市瀬 裕一, 外山 圭助
    1996 年 34 巻 4 号 p. 422-427
    発行日: 1996/04/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    特発性間質性肺炎における, 細胞傷害性T細胞の果たす役割を解明するために, フローサイトメトリーを用いた two-color 解析で気管支肺胞洗浄液中のリンパ球サブセットを検索した. 対象は患者15例で, 臨床的診断基準 (第3次改訂案) を基に, 急性型 (5例), 慢性型 (10例) に分類した. 対照は健常者 (7例) とした. その結果, 慢性型は対照と差はなかったが, 急性型は, リンパ球の増加を認めた (44.2±25.2%, 12.3±8.18×104/ml; p<0.05). さらに, そのリンパ球サブセットでは, CD8陽性細胞の比率が上昇しており (61.2±15.0%; p<0.05), 特にCD8+S6F1+細胞 (活性化細胞傷害性T細胞) が増加していた (32.3±16.0%, 39.6±37.1×103/ml; p<0.05). 以上より活性化細胞傷害性T細胞が急性型の間質性肺炎に重要な役割を果たしている可能性が示唆された.
  • 田口 禎一郎, 橋本 明栄, 松田 昌三, 渡辺 誠一郎, 藤野 俊, 井上 義一, 横山 彰仁, 河野 修興, 日和田 邦男
    1996 年 34 巻 4 号 p. 428-433
    発行日: 1996/04/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    症例は, 37歳の男性. 昭和45年5月から血痰, 左胸痛を自覚するようになった. 昭和55年4月に発熱, 呼吸困難, 一過性のアフタ性口内炎, 軽度の虹彩毛様体炎および, 胸部X線写真上びまん性粒状影が出現し, 某医で急性の間質性肺炎と診断され, プレドニゾロン60mg内服を受け, 症状は軽快した. 以後13年間ステロイドを漸減投与されていたが, 平成5年9月頃から乾性咳を自覚するようになり, また検診で高血圧, 蛋白尿, 胸部X線写真上多発性結節影を指摘されたため, 精査加療目的で当院に入院した. 血液検査にてHBs抗原陽性, HLA-B51陽生, 血管造影にて多発性肺動脈瘤と両側腎動脈分枝の狭窄と瘤状変化を認め, 開胸肺生検にて壊死性血管炎を認めた. 本症例は, 結節性多発動脈炎ともベーチェット病とも診断できないものの, 両者の部分症が混在した病像を呈し, 多発性血管炎オーバーラップ症候群と診断した.
  • 作 直彦, 杉山 幸比古, 北村 諭, 藤井 丈士, 斉藤 建
    1996 年 34 巻 4 号 p. 434-438
    発行日: 1996/04/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    症例は53歳, 男性. 1981年にびまん性汎細気管支炎 (DPB) と診断され, 1987年より Erythromycin を投与開始され経過良好であった. 1992年より発疹, 発熱, 複視を自覚し入院. 肺生検にて血管炎, 腎生検にて壊死性糸球体腎炎を伴う肉芽腫を認めた. 糸球体に免疫蛋白沈着は無く, 組織学的にはウェゲナー肉芽腫症に類似していたが, C-ANCAではなくP-ANCAが陽性であった. DPBの病態である慢性気道感染症によってANCAが形成され血管炎が発症した可能性も考えられた.
  • 堀尾 裕俊, 野守 裕明, 森永 正二郎, 冬野 玄太郎, 小林 龍一郎, 伊賀 六一
    1996 年 34 巻 4 号 p. 439-443
    発行日: 1996/04/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    症例は51歳, 男性. 特発性間質性肺炎の経過観察中, 肺癌を発見された. 肺癌の病期および間質性肺炎の活動性や呼吸機能の結果より手術可能と判断し, 左上葉切除を施行した. 術後9日目に間質性肺炎の急性増悪を認めたが, 迅速な診断と早急なステロイド治療により救命し得た. 肺癌術後急性増悪例は致命的であり, その救命率はきわめてまれであるため報告した.
  • 松本 勲, 斉藤 裕
    1996 年 34 巻 4 号 p. 444-448
    発行日: 1996/04/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    症例は13歳, 男性. 腹腔動脈起始の異常動脈が肺動脈と交通する肺葉内肺分画症と診断され右肺下葉切除が施行された. 異常動脈の腹腔動脈起始例は稀であり, さらに肺動脈と交通を認めたものは本邦では4例の報告があるのみである. 本例での異常動脈と肺動脈の交通は, 血管造影所見から慢性の炎症による吻合を疑わせた. 本症例の成因について次の仮説を考えた. まず先天的に右S10に入る腹腔動脈起始の異常血管が存在した. 次に, (1) 低形成の気管支が存在した. この部に感染を伴った炎症が発生し, 結果, 気管支が閉塞し「分画」が形成された. あるいは, (2) 肺が長期間体血圧を直接受けたため肺実質の破壊を生じ, 嚢胞性変化や炎症を引き起こし異常動脈の分布する範囲に「分画」を形成した. この後天的に形成された「分画」における慢性炎症により異常動脈と肺動脈の間に交通が生じたと考えた. これらを明らかにするにはさらなる症例の蓄積と検討が必要である.
  • 秋葉 裕二, 竹内 利治, 中西 京子, 井上 仁喜, 藤内 智, 長内 忍, 中野 均, 大崎 能伸, 箭原 修, 菊池 健次郎
    1996 年 34 巻 4 号 p. 449-453
    発行日: 1996/04/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    52歳女性. 主訴は喘鳴および全身の筋力低下である. edrophonium chloride 静注による喘鳴発作の誘発が疑われたため紹介された. IgE MASTクラスでハウスダストおよびコナヒョウヒダニが陽性で, 気道の過敏性と可逆性も認め, 気管支喘息と診断した. 夕刻にかけて増強する全身の筋力低下の日内変動と, 筋電図上 waning 現象を認めたことなどから重症筋無力症の合併が確認された. 抗アセチルコリン受容体抗体は5.64nmol/lと高値を呈していた. 入院後行った edrophonium chloride 静注では, 咳嗽は誘発されたが喘鳴発作や呼吸機能の悪化はみなかった. 気管支喘息および重症筋無力症の病状は臨床的に並行しており, その機序としては, 喘鳴発作時の努力性呼吸に関連して呼吸筋疲労が悪化すること, 一方, 筋無力症状の増悪が呼吸筋力の低下を伴い, 喘息症状を悪化させることなどが考えられた.
  • 福原 徳子, 宮澤 輝臣, 土井 正男
    1996 年 34 巻 4 号 p. 454-458
    発行日: 1996/04/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    患者は62歳の女性. 発熱, 嘔吐にて近医受診時, 胸部レ線上粟粒結核と診断され, 抗結核剤の投与を開始された. 後に喀痰培養から結核菌が検出された. 3ヵ月間治療を続けていたが, 発熱, 嘔吐, 背部痛が出現したため当院来院した. 胸部レ線上, 後縦隔に位置する鶏卵大の腫瘤が認められ, 胸部CTにて大動脈瘤と診断され手術施行. 組織標本より結核性の大動脈瘤と確定した. 症状は消失し経過良好である. 本症例は本邦において結核性大動脈瘤手術成功例の9例目である. 結核性の大動脈瘤は今日では極めて稀で, 全大動脈瘤中0.3%を占めるのみであるが, 致死的な合併症なので留意すべきである.
  • 大江 秀美, 藤田 次郎, 大西 宏明, 山地 康文, 高原 二郎
    1996 年 34 巻 4 号 p. 459-464
    発行日: 1996/04/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    症例は47歳の男性. 基礎疾患である急性骨髄性白血病に対する寛解導入療法に伴う白血球減少時に, 右上葉に結節影が出現した. 白血球の回復ともに結節影は, 内部に lung ball を有する空洞陰影へと変化した. 気管支鏡下の経気管支生検にて肺アスペルギルス症と確定診断した. イトラコナゾール, フルシトシンの内服, アンホテリシンBの点滴静注による抗菌化学療法で陰影は縮小した. 地固め療法時の白血球減少時に再度結節影は増大し, 白血球数の回復ともに結節影は, 内部に lung ball を有する空洞陰影へと変化した. いずれのエピソードにおいても, 白血球減少時に結節影として出現し, 白血球回復期に空洞陰影へと変化した. 経時的に測定した血漿中の好中球エラスターゼ:α1-アンチトリプシン複合体値は空洞形成時に異常高値を呈し, アスペルギルス症の空洞形成への好中球エラスターゼの関与が示唆された.
  • 横田 樹也, 長谷川 隆志, 村上 修一, 倉茂 和幸, 丸山 倫夫, 佐藤 誠, 鈴木 栄一, 荒川 正昭
    1996 年 34 巻 4 号 p. 465-470
    発行日: 1996/04/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    症例は32歳の女性で, 呼吸困難, 乾性咳嗽のため入院した. 入院4年前より金属研磨作業に従事していた. 胸部X線写真で, びまん性粒状影を, 呼吸機能検査で著しい拘束性障害を呈していた. 職歴および経気管支肺生検の結果より超硬合金肺と考え, 金属研磨を中止させて, 経過を観察していたが, 症状や検査所見が改善しないため, 胸腔鏡下肺生検を行った. 組織学的には, 小葉中心性あるいは細気管支周囲性の線維化, その周囲の肺胞壁のリンパ球, 好酸球の細胞浸潤, 気腔内の巨細胞などが認められた. X線マイクロアナライザーにより, 病変部位に一致してタングステンおよびコバルトの沈着がみられた. 以上より超硬合金肺と診断した. プレドニゾロンの内服後, 症状や検査所見が改善し, 治療1年後には, 画像では, びまん性粒状影が残存しているが, 呼吸機能では, 肺活量が正常化した.
  • 石川 哲子, 井上 千恵子, 佐々木 晴邦, 佐藤 光三, 木村 伯子
    1996 年 34 巻 4 号 p. 471-476
    発行日: 1996/04/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    63歳, 男性. クッシング症候群と胸腰椎, 肋骨, 胸壁への多発性転移をきたして入院. 血中ACTH, コルチゾール値が高く, 異所性ACTH症候群を疑って肋骨と胸壁の腫瘍を摘出した. 組織像は細胞がリボン状または胞巣状に配列するカルチノイドに特徴的な所見が認められ, ACTH, NSE, chromo granin-A 染色陽性であり, 好銀性もみられた. 腫瘍摘出後もクッシング症候群は改善されず, 化学療法を試みるも無効であった. ステロイド合成阻害薬を投与して一時退院したが, 副腎皮質機能亢進症状が増悪して再入院となり, 発病後1年で死亡した. 剖検より胸腺カルチノイドが原発巣であることを確認. 転移巣は肋骨, 椎骨, 胸椎を始め各臓器に広範囲にみられた. さらに, 腫瘍細胞はACTHの他にCRHも産生し, 下垂体は萎縮していたが, 視床下部傍室核にCRH陽性細胞が多数認められた. 胸腺カルチノイドによる異所性ACTH症候群で腫瘍細胞がACTHとCRHを産生した例の報告は稀と思われるのでここに報告した.
  • 石浦 嘉久, 藤村 政樹, 南 真司, 上田 暁子, 岩田 実, 渡辺 和良, 品川 俊治, 安井 正英, 松田 保, 北川 正信
    1996 年 34 巻 4 号 p. 477-481
    発行日: 1996/04/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    症例は66歳, 女性. 全身倦怠と食欲不振を主訴として入院した. 入院時検査で血清CA19-9が765U/lと高値であったため全身の検索を行ったが悪性疾患は存在せず, 胸部異常陰影の精査のため施行した気管支肺胞洗浄 (BAL) で, BAL液中CA19-9の異常高値を確認した. 肺生検組織を用いたCA19-9に対する免疫特殊染色では, 肺結核と診断された乾酪性肉芽腫部分は陰性で気管支拡張病変を有する病巣周囲気管支上皮が陽性であった. いくつかの良性肺疾患で血清CA19-9が高値をとりうること, この場合CA19-9が末梢気道病変に由来することは既に報告されている. 抗結核療法で血清CA19-9値が低下したことは, 肺結核で血清およびBAL液のCA19-9が高値を示すことがあり, この場合血清CA19-9測定が肺結核の活動性の評価に有用である可能性を示唆する.
  • 大河内 稔, 秋月 憲一, 神 靖人, 市岡 正彦, 丸茂 文昭
    1996 年 34 巻 4 号 p. 482-486
    発行日: 1996/04/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    症例は44歳女性. 乳児期に肺炎の既往がある. 5年前, 貧血の精査中に血清CA19-9の高値を指摘された. 胸部CTでは右肺のS5とS7に局所性肺気腫を認め, また右上葉に嚢胞が認められた. 全身検索にて悪性腫瘍の存在は認められず経過観察をしていたが, 血清CA19-9値は嚢胞内の貯留液が増加すると上昇し, 減少すると低下する傾向が認められた. 一年前より嚢胞内に貯留液が充満し血清CA19-9が高値となったため悪性腫瘍合併の可能性が否定できず右上葉切除術を施行した. 嚢胞壁は気管支粘膜で覆われ, 壁には平滑筋, 軟骨を認め気管支性嚢胞と診断した. 嚢胞壁の上皮細胞のCA19-9染色は陽性で, 嚢胞内貯留液のCA19-9は高値であったが, 切除標本内に悪性所見は認められなかった. 術後血清CA19-9値は減少し手術後3ヵ月後に正常化した.
  • 横場 正典, 高橋 唯郎, 吉井 昭夫, 橘田 輝雄, 別所 隆, 三須 雄二, 冨田 友幸
    1996 年 34 巻 4 号 p. 487-493
    発行日: 1996/04/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    症例は27歳男性. 腹痛と嘔吐にて受診し, 腹部X線にて鏡面像を認めイレウスと診断した. 来院時の胸部X線上で右上縦隔の拡大がみられ, 胸部CTでは右S3の孤立性結節影および右傍気管リンパ節腫大を認めた. 保存的治療にてイレウスは軽快せず, イレウス解除術を施行し, 腹膜, 大網, 腸間膜に粟粒大~米粒大の白色調を呈する小結節の散在を認めた. 病理学的に Langhans 型巨細胞を伴う非乾酪壊死性肉芽腫がみられ, 術前に採取した腸液よりPCR法にて結核菌陽性で, 培養でもヒト型結核菌が同定されたため結核性腹膜炎によるイレウスと診断するとともに, 肺結核に合併した症例と判断した. 術後, 抗結核薬 (INH, RFP, EB) の投与にて各種画像所見は改善し, 抗結核薬投与後224日目に施行した腹腔鏡検査では腹膜等の小結節は認められなかった. 基礎疾患がなく健康に推移した若年男性で, イレウスを主訴とした肺結核は近年稀な症例と思われ報告した.
  • 桃木 茂, 福島 一郎, 星 俊安, 加藤 士郎, 鈴木 英彦, 木代 泉, 中元 隆明, 飯塚 昌彦, 鈴木 庄司, 嶋田 晃一郎, Ta ...
    1996 年 34 巻 4 号 p. 494-499
    発行日: 1996/04/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    症例は, 50歳の女性, 反復する頻回の喀血・血痰を主訴に来院した. 胸部X線写真にて左下肺野に浸潤影を認め, 胸部 Computed Tomography では左B8に接するように腫瘤影を認めた. 肺動脈造影にてその腫瘤は左A8とA9の間に認められた. 気管支鏡検査で左B8に暗赤色の凝血塊を認め, 洗浄液の細胞診で扁平上皮癌疑いの class IVが検出され, I期肺扁平上皮癌疑いで左下葉切除および肺門・縦隔リンパ節郭清術を実施した. 腫瘍は径1.8cmと比較的小型で, 細胞は分裂像や核の異型性を示さず, 索状配列を示し定型的カルチノイドと診断されたが, 肺内転移および肺門・縦隔リンパ節転移をきたしていた. 組織学的に比較的予後の良好とされる定型的カルチノイドでありながら, 肺内転移および肺門・縦隔リンパ節への転移が認められた本症例は臨床的に非常に興味深く, 若干の文献的考察を加えて報告する.
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