日本胸部疾患学会雑誌
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34 巻, 5 号
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  • 西村 善博, 仲田 裕行, 松原 正秀, 岩井 泰博, 前田 均, 横山 光宏
    1996 年 34 巻 5 号 p. 501-505
    発行日: 1996/05/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    剖検症例における横隔膜重量と体成分分析諸指標との関連性を明らかにするために, 体成分分析を行いその後種々の疾病で死亡し, 剖検し得た22症例 (男性13例, 女性9例, 平均年齢70.8±16.8歳) について体成分分析, 横隔膜重量, 呼吸筋力を測定検討した. 体成分分析は Dual Energy X-Ray Absorptiometer (Norland XR26) を用い, 骨塩量, 脂肪量及び除脂肪体重を測定した. 横隔膜重量の平均値は185.2±58.2gで, 横隔膜重量は体重及び除脂肪体重とそれぞれ有意な正相関を認めた (r=0.77, r=0.73, p<0.01). 呼吸筋力を測定しえた8例では横隔膜重量は吸気最大口腔内圧と有意な相関 (r=0.73, p<0.05) を認めた. 以上より, 本体成分分析法は吸気筋量を間接的に評価できる可能性のある方法と考えられ, 吸気筋力には横隔膜筋量が関与していることが示唆された.
  • 鈴木 聡, 佐久間 勉, 小池 加保児, 小野 貞文, 谷田 達男, 藤村 重文
    1996 年 34 巻 5 号 p. 506-510
    発行日: 1996/05/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    分離肺胞II型上皮細胞が培養系で辿る過程を知るために, 我々はラット培養肺胞II型上皮細胞におけるNa+-K+-ATPase とその活性調節について検討した. ウアバイン感受性から判定されたNa+-K+-ATPase のアイソフォームはα1優位で, その基本活性は培養48時間と120時間とで同等だった. しかし, 培養120時間の細胞では10mMテルブタリンによるNa+-K+-ATPase 活性化が観察されたのに対し, 培養48時間の細胞では有意な活性化は認められなかった. 一方, 10mMテルブタリンによる細胞内サイクリックAMP産生能は培養48時間の細胞でも認められた. 以上の成績は, Na+-K+-ATPase の基本活性は同等でもβレセプター刺激以降の細胞内経路とのカップリングの確立が培養時間の影響を受けている可能性を示唆している. イオントランスポートに関する研究に培養細胞系を適用するには, 培養時間の影響を考慮する必要があると考えられた.
  • 中野 覚, 佐藤 功, 高橋 一枝, 三谷 昌弘, 小林 琢哉, 瀬尾 裕之, 川瀬 良郎, 田邉 正忠, 藤田 次郎, 山地 康文, 岡田 ...
    1996 年 34 巻 5 号 p. 511-519
    発行日: 1996/05/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    最近利用可能となった99mTc-テクネガス換気シンチグラフィは他の換気シンチに比べ緊急時にも利用可能で, またSPECTに適しているとされている. 肺気腫患者においてテクネガスにおける換気異常は高分解能CT (以下HRCT) における形態の異常より早期に検出可能との報告もある. 今回我々は肺気腫患者15例において両肺を, 右上葉・中葉・下葉・左上区・舌区・下葉の6つの領域に分け, 99mTc-テクネガス換気SPECTとHRCTによる所見を領域別に比較検討した. 小葉中心性肺気腫はテクネガス, HRCTともに下肺に比べ上肺の所見が強い傾向が見られた. テクネガスのみで異常所見の見られる領域もあった. 汎小葉性肺気腫ではテクネガスで下葉に強い変化が見られ, HRCTに比べ異常の指摘が容易であった. 99mTc-テクネガス換気SPECTは肺気腫患者において初期変化や汎小葉性変化の検出に有用であった.
  • 片上 信之, 長谷川 幹, 梅田 文一, 足立 秀治, 石井 昇, 高田 佳木, 坪田 紀明, 中野 孝司, 田村 亮, 中井 準
    1996 年 34 巻 5 号 p. 520-528
    発行日: 1996/05/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    化学療法歴のない非小細胞肺癌66例に化学療法 (mitomycin C, CDDP, vindesine, MVC療法) を2コース施行した場合, G-CSF (granulocyte-colony stimulating factor) の投与時期により neutropenic fever (NF) の発生頻度, 白血球数 (WBC)の nadir 値, 1,000/mm3以下の時期, 回復日数に差があるか否かを検討した. G-CSF (50μg/m2) の投与時期を2群に無作為に分け, I群はWBC≦1,000/mm3で開始, II群は1,000mm3<WBC≦2,000/mm3で開始した. 2群間でWBCの nadir 値 (I群/II群=859/mm3/1,215/mm3), 1,000/mm3以下の期間 (I群/II群=1.5日/0.8日), 2,000/mm3迄の回復日数 (1.9日/1.6日) に有意差 (p<0.05) を認めた. 一方, 両群間にはNFの発生頻度 (I群/II群=44%/45%) と期間 (I群/II群=2.3/2.8日), G-CSFの投与日数 (I群/II群=6.3日/6.8日) に有意差はなく治療関連死もなかった. MVC療法はWBCが nadir に至ってからG-CSFを投与しても安全に施行でき, 臨床的に問題はなかった.
  • 楠本 洋, 國澤 晃, 栗山 謙, 米丸 亮, 中野 優, 市瀬 裕一, 海老原 善郎, 外山 圭助
    1996 年 34 巻 5 号 p. 529-535
    発行日: 1996/05/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    特発性器質化肺炎の炎症巣で, リンパ球が果たす役割の解明を目的とし, フローサイトメトリーを用いた two-color 解析で気管支肺胞洗浄液 (BALF) 中のリンパ球サブセットを検索した. 対象は特発性器質化肺炎 (Type 1) 5例で, 対照は健常人7例とした. 特発性器質化肺炎ではBALFリンパ球の比率と細胞数の増加を認めた (32.9±21.9%; p<0.05, 12.8±8.32×104/ml; p<0.05), リンパ球サブセットでは, CD8+細胞比率が上昇しており (56.7±13.1%; p<0.01), CD8+S6F1+細胞 (活性化細胞傷害性T細胞) の増加を認めた (32.2±11.8%; p<0.01, 42.0±26.5×103/ml; p<0.01). 以上より, 活性化細胞傷害性T細胞が特発性器質化肺炎の病態に関与している可能性が示唆された.
  • 工藤 宏一郎, 田辺 紀子, 可部 順三郎
    1996 年 34 巻 5 号 p. 536-544
    発行日: 1996/05/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    BDP 800μg/日と気管支拡張剤の併用療法にてコントロール不充分な重症成人慢性喘息患者26例を対象に, 18週間の高用量BDP療法の有用性ならびに用量依存性について検討を行った. 2週間の観察期間後BDP 1,800μg/日 (16例), 1,400μg/日 (10例) 投与の2群に分け, 症状, PEF, 肺機能, 気道過敏性, rapid ACTH テストを指標に評価を行った. その結果, 1) 両群の治療前の臨床背景に差が無く, 2) 症状点数は高用量群の減少がより大きかった, 3) %PEFは高用量群にのみ有意な改善を認めた, 4) FEV1.0, PC20 (メサコリン) では高用量群で有意に上昇した. 5) 経口ステロイドは高用量群のみに有意な減少を認めた, 6) 両群共に副腎皮質予備能の低下はみられず, むしろ経口ステロイド減量に起因する早朝血漿コルチゾール値の上昇を認めた. 以上より, 重症患者に対する高用量BDP療法の有用性と用量依存性が示唆された.
  • 森本 理香, 小山 信一郎, 田中 昭子, 堀江 孝至
    1996 年 34 巻 5 号 p. 545-551
    発行日: 1996/05/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    喘息患者において, 高張食塩水吸入によって気道収縮が誘発されることが知られているが, その機序については明らかでない. 我々は, 18匹の卵白アルブミン感作ウサギを対象に高張食塩水吸入誘発気道収縮 (HSIB) に対する各種薬剤阻止効果の面から機序について検討した. 食塩水吸入は人工換気下で超音波ネブライザーを用い, 食塩水溶液の濃度は0.9%から0.9%ごとに7.2%まで上げ, 各々の濃度を吸入する前と後にRL, Cdyn を測定した. その結果, コントロール (無処置) 群では, 濃度依存性にRLが増加し, Cdyn が低下した. 次に, 迷走神経, ヒスタミン, サイクロオキシゲナーゼ系気道収縮物質の関与を検討するため, アトロピン, クロールフェニラミン, インドメタシンで前処置し, HSIBに対する阻止効果を検討した. その結果, アトロピン前投与によりRL, Cdyn の変化は強く抑制されたが, 他の薬剤による阻止効果は認められなかった. したがって, 感作ウサギにおけるHSIBは, ヒスタミン, サイクロオキシゲナーゼ系の関与は少なく, 主に迷走神経系が関与していることが示唆された.
  • 松原 弘明, 藤島 清太郎, 佐山 宏一, 赤坂 喜清, 山澤 文裕, 石坂 彰敏, 山口 佳寿博, 金沢 実
    1996 年 34 巻 5 号 p. 552-556
    発行日: 1996/05/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    症例は75歳男性で乾性咳嗽と労作時呼吸困難を主訴に受診した. 低酸素血症と胸部X線, 胸部CTスキャン像にて両側肺野のびまん性浸潤陰影を認めた. 急性発症であり, 心不全合併のないことから臨床的にARDSと診断した. 剖検所見ではびまん性肺胞傷害であった. 経過中に施行した5回の気管支肺胞洗浄 (BAL) では, 洗浄液中のインターロイキン-8 (IL-8) 濃度は最高6,260pg/ml, 最低190pg/mlと著明な高値を示し, BAL中の好中球数と相関して推移した. 好中球遊走因子であるロイコトリエンB4 (LTB4) の上昇は認めなかった. 本例はIL-8と肺胞腔内への好中球遊走との関係を示す上で有意義な症例と考え報告した.
  • 木村 緑, 森川 哲行, 武内 浩一郎, 古家 仁, 福村 基之, 三上 理一郎, 河村 俊治, 角田 幸雄, 田代 征夫
    1996 年 34 巻 5 号 p. 557-562
    発行日: 1996/05/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    症例は49歳の女性. 咳嗽,呼吸困難を主訴として当院を受診し, 精査目的で入院となった. 胸部単純X線写真上気腫性変化及び小粒状陰影, 網状陰影を呈し, 胸部高分解能CTにてびまん性に嚢胞を認めた. 経気管支肺生検により肺リンパ脈管筋腫症と診断した. 抗エストロゲン療法にて治療を開始したが, 経過中に腹部膨満を訴え乳び腹水を認めた. 内科的治療に反応しないため Denver shunt tube を用いて腹腔頸静脈シャントを造設した. 術後1年11ヵ月間, 腹部膨満は消失し, 外来通院が可能であった. 最終的に肺炎をきたし, 呼吸不全, 心不全にて死亡し, 剖検にて約900mlの漏出性腹水を認めたが Denver shunt tuhe は開存していた. また右肺上葉に高分化型腺癌の合併を認めた. しかし文献上の記載例がなく, 偶然の合併の可能性も否定出来ない. 本例のリンパ脈管筋腫症における乳び腹水に対して Denver shunt tube による腹腔頸静脈シャント術は約2年間の長期的なコントロールが可能であり有効な治療であったと考えられた.
  • 中村 祐太郎, 岩田 政敏, 井田 雅章, 竹内 悦子, 堀口 倫博, 佐藤 篤彦
    1996 年 34 巻 5 号 p. 563-568
    発行日: 1996/05/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    Swyer-James 症候群に伴った片側性肺水腫の稀な1例を報告した. 症例は64歳, 男性. 虚血性心疾患で外来通院中, 急激な呼吸困難を主訴に来院. 胸部X線上右肺野に片側性の蝶形様陰影を呈していた. 以前の無症状時のX線写真では左肺の透過性亢進を認め, 呼気時のCTで吸気時に比べ左の肺野濃度の低下を認めた. 肺動脈造影では左肺動脈の狭小化と分岐の減少を認めた. 心臓カテーテル検査では主肺動脈圧および肺動脈梗入圧は上昇しており, 左室造影にて測定したEFは著明に低下していた. これらより Swyer-James 症候群に伴った健側肺に生じた片側性肺水腫と診断した. Swyer-James 症候群は片側性肺水腫をきたす疾患のひとつとされているが, その報告例は極めて少なく稀な病態と考えられた.
  • 吉見 通洋, 高山 浩一, 相沢 久道, 井上 博雅, 橋口 典久, 村上 純滋, 蓮尾 金博, 原 信之
    1996 年 34 巻 5 号 p. 569-574
    発行日: 1996/05/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    肺動脈塞栓術の反復により血液ガスの改善がみられた両側肺動静脈瘻 (pulmonary arteriovenous fistula, 以下PAVFと略) の1例を経験した. 症例は63歳, 男性. 数年前より持続する呼吸困難の精査のため当科に入院した. チアノーゼ・ばち状指を呈し, 胸部X線では右下肺野の血管影増強を認めた. 動脈血液ガス分析では, 室内気でPaO2 46Torrと低酸素血症を認め, 100%O2投与にてもPaO2 87Torrであり, 右左シャントの存在が疑われた. 肺動脈造影では, 両側下肺野に多数の拡張した流入動脈を伴うPAVFを認めた. 病変が両側であり, 心・肝機能低下があることより手術適応がなく, 金属コイルによる両側肺動脈塞栓術を計3回施行した. 術後著明な呼吸困難の改善が認められ, PaO2は室内気で54Torr, 100%O2 投与後には375Torrと酸素化の改善を認めた. 現在, O2 3L/minにて在宅酸素療法施行中であり, PaO2は65.6Torrと改善している.
  • 飯田 充, 大森 一光, 北村 一雄, 村松 高, 長坂 不二夫, 羽賀 直樹, 古賀 守, 大宮 俊二, 瀬在 幸安
    1996 年 34 巻 5 号 p. 575-578
    発行日: 1996/05/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    近年, 原発性肺クリプトコックス症は検診制度の普及に伴い, 発見の機会が増加しつつある. 今回我々は検診で発見された胸部異常陰影に対し, 胸腔鏡により摘出し, 原発性肺クリプトコックス症と診断した症例を経験した. 症例は37歳男性. 術前検査では確定診断が得られず, 石灰化を認めたため良性の肺腫瘍を疑い, 胸腔鏡下に肺部分切除術施行. 術後病理検査で, 肺クリプトコックス症と診断され, 術後経過も良好であり, 完全な切除が可能であったため, 抗真菌剤の投与はせずに退院した. 1年経過した現在, 外来通院中であるが, 再発もなく経過観察している.
  • 西山 典利, 木下 博明, 小林 庸次, 岩佐 隆太郎, 加藤 俊彦, 井上 清俊, 井上 健
    1996 年 34 巻 5 号 p. 579-585
    発行日: 1996/05/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    症例は76歳, 男性. 食欲不振, 全身倦怠感を主訴に来院. 右穿通性膿胸の診断で胸腔ドレナージを施行するも, 右側胸部皮下の腫瘤が縮小せず, 経皮針生検で悪性リンパ腫と診断された. 化学療法を施行したが, 肺炎, 全身衰弱のため発症後約5ヵ月で死亡した. 剖検所見は non-Hodgkin's lymphoma, intermediate lymphocytic type, B 細胞型であった. 慢性膿胸に合併する悪性リンパ腫は, 我々の検索し得た限りでは53例本邦報告例があった. 高齢者で低肺機能のことが多く, また診断の困難さもあり, 切除例は多くないが, 53例の検討からは切除例の方が予後は良好と思われた. 本疾患は未だ希な疾患といえるが, 近年報告例数が増加しており, 慢性膿胸においては念頭に置くべきであると思われた.
  • 岸本 卓巳, 大家 政志, 小崎 晋司, 藤岡 英樹, 木村 和陽, 角南 宏二, 米井 敏郎, 大熨 泰亮
    1996 年 34 巻 5 号 p. 586-591
    発行日: 1996/05/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    肝硬変症・糖尿病を基礎疾患とした Acute respiratory distress syndrome (ARDS) の1症例を経験した. 本症例は4ヵ月間に2度にわたり胸部レ線上びまん性浸潤陰影を呈し, 肺損傷スコアーが3.3点と高値であったことからARDSと診断した. ステロイドパルス療法が奏効したため救命し得たが, 2度目のARDS回復直後に急性肺炎を合併, 肝不全, 慢性腎不全の増悪により死亡に至った. 本症例の2度のARDSの発症機序は必ずしも同一ではないと思われたが, ARDSを短期間に繰り返した症例報告は稀であるので報告する.
  • 北田 清悟, 小牟田 清, 高次 寛治, 前田 恵治, 木村 亮, 五十嵐 敢
    1996 年 34 巻 5 号 p. 592-596
    発行日: 1996/05/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    症例は80歳男性. 左側胸部痛及び腫脹を主訴に来院. 胸部X線上, 左胸壁腫瘍を疑い同部位をエコーガイド下に生検した. 生検等の結果, びまん性に増殖するPAN-B染色陽性の腫瘍細胞を認め, 左胸壁原発非ホジキンリンパ腫 (びまん性B細胞性混合型リンパ腫) と診断した. 左胸壁腫瘍に対し放射線療法 (40Gy/20f) を施行し腫瘍はほぼ完全に消失し完全寛解を得た. 約1年10ヵ月後, 左大腿部に再発をみたが, CHOP療法, 放射線療法 (40Gy/20f) を施行し再び寛解を得て, 初回治療後2年6ヵ月経過しているが再発することなく健在である. 胸壁に発生する悪性リンパ腫は慢性結核性膿胸または結核性胸膜炎に合併するものが大部分であるが, 本症例は誘因となる基礎疾患が認められなかった. 基礎疾患を認めない場合でも, 胸部X線上胸壁腫瘍が疑われた時, 本症例のような悪性リンパ腫も鑑別診断の1つとして考慮に入れるべきと考えられた.
  • 佐々木 寛, 前田 真作, 須田 秀一, 太田 隆
    1996 年 34 巻 5 号 p. 597-600
    発行日: 1996/05/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    症例は38歳女性. 息切れを主訴として来院した. 右側胸水と胸壁腫瘍を指摘され, 胸水1,800ml排液したが2週間で再び同程度貯留してきた. 胸部CTでは右第5肋間で脊柱の外側に直径5cmの楕円球形腫瘤を認め, 強い造影効果があった. 肋間動脈造影では右第5肋間動脈を栄養動脈とし, 高度腫瘤濃染像を呈した. ガリウムシンチでは陰性であった. 以上の所見をもとに手術を施行した. 肉眼的には腫瘍はほぼ平滑, ピンク色をしていた. 病理学的には hyaline vascular type のキャッスルマン病であった. 胸膜直下には拡張した毛細血管やリンパ管を多く認め, 胸水の発生原因のひとつと考えられた. 術後に再伸展性肺水腫を生じたが, 人工呼吸器管理により改善した. 胸壁原発のキャッスルマン病は稀な疾患であり, 胸水の発生原因のひとつとして血液力学的な要素が示唆された症例を経験したので報告する.
  • 竹内 進, 岩田 勝, 小川 雅弘, 永田 章, 田野 正夫, 横井 太紀雄
    1996 年 34 巻 5 号 p. 601-604
    発行日: 1996/05/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    症例は, 77歳の女性. 昭和59年頃より血痰, 喀血にて入退院を繰り返していた. 平成元年, 気管支造影により気管支拡張症を確認. 平成3年7月頃より下痢, 腹痛等の消化器症状を訴えるようになり, 平成4年8月には蛋白尿を認めるようになった. 平成4年10月, 浮腫を主訴に入院. 貧血, 低蛋白血症を認め, 腎障害も進行. 下血, 喀血を併発し平成5年1月永眠された. 死後施行した病理解剖にて全身の諸臓器, 特に腎臓, 消化管に高度なアミロイドの沈着を認め, そのアミロイド蛋白はAA蛋白と同定され, 続発性アミロイドーシスと診断された. 生前にみられた腎障害, 消化器症状はアミロイドーシスによるものと考えられ, その原疾患として気管支拡張症が最も考えられた.
  • 黨 康夫, 吉澤 篤人, 久保 雅子, 越野 健, 堀内 正, 工藤 宏一郎, 可部 順三郎
    1996 年 34 巻 5 号 p. 605-609
    発行日: 1996/05/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    48歳男性. 1993年9月頃より労作時息切れを自覚. 近医で低酸素, 高炭酸ガス血症 (PaO2=43mmHg, PaCO2=70mmHg, 室内気) 及び完全房室ブロックを指摘された. 著明な肺性心に, 脊椎拘縮, 側弯及び胸郭変形, アキレス腱延長術の既往があることより, 神経・筋疾患の一つである強直性脊椎症候群と診断し, nasal BiPAP及び在宅酸素療法 (0.5リットル/分) を開始したところ, 血液ガス所見の改善 (PaO2=79mmHg, PaCO2=59mmHg, 酸素0.5リットル/分) をみた. 本症候群は, その特徴的な肋椎関節拘縮により胸郭の運動制限を生じ, 肺性心に至る高度の拘束性換気障害を来たすことがある. 日常臨床において胸郭変形, 特に側弯を伴う呼吸不全患者をみた場合, 考慮すべき疾患と考えられた. また, 換気障害の治療手段として, nasal BiPAPが有用である可能性が示唆された.
  • 中村 守男, 金澤 實, 山口 佳寿博, 秋月 正史, 佐藤 慎二, 稲田 進一
    1996 年 34 巻 5 号 p. 610-615
    発行日: 1996/05/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    症例は56歳女性. 慢性関節リウマチのため金製剤と免疫抑制剤による治療を受けていた. 発症の1ヵ月前から陰部, 肛門部の帯状疱疹に対し投薬を受けたが皮疹は遷延していた. 発熱と呼吸困難が出現したため入院した. 胸部X線像と胸部CT像で両側肺野びまん性に多発結節性陰影を認めた. 特異的な治療を要せず, 皮疹および臨床症状が軽快するとともに胸部陰影も消退した. 臨床経過, 画像所見, 血清抗体価より水痘・帯状疱疹ウイルスによる肺炎と診断した. 同ウイルスによる肺炎のうち成人例とくに基礎疾患を有する症例では重篤化する危険が高く, 早期診断と的確な対処が必要と考えられる. 成人例とくに帯状疱疹に合併した本疾患は稀である. しかし, その画像所見は特徴的であり, 胸部に多発結節性陰影をみた際に鑑別診断に加えるべきと考え報告した.
  • 島田 達也, 松村 克己, 紫藤 忠博
    1996 年 34 巻 5 号 p. 616-620
    発行日: 1996/05/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    症例は22歳の女性. 胸部検診にて右肺に多発結節状陰影を指摘され当科を受診した. その結節状病巣は, CTにて辺縁が毛羽立ち, 病巣内に顆粒状の濃淡を有する典型的な綿花状影を呈していた. 病巣からの経気管支肺生検にて肺サルコイドーシス (肺サ症と略す) と診断された. 未治療にて経過観察したところ異常陰影発見後6ヵ月目にはその綿花状影は消失した. BHLを欠き片肺にのみ多発綿花状影を呈する肺サ症は極めて稀であり, CTにおける綿花状影は肺サ症に特徴的であり, 本症の診断に有用であると考えられた.
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