日本胸部疾患学会雑誌
Online ISSN : 1883-471X
Print ISSN : 0301-1542
ISSN-L : 0301-1542
34 巻, 8 号
選択された号の論文の18件中1~18を表示しています
  • 酒井 哲夫, 石崎 武志, 中井 継彦, 松川 茂, 早川 美佳, 小澤 高将
    1996 年 34 巻 8 号 p. 843-849
    発行日: 1996/08/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    二つの作用機序の異なる急性肺傷害のメディエーターである Endothelin-1 (以下ET-1) および Leukotoxin (以下Lx) を用いて, ラット摘出灌流肺にて急性肺傷害を起こさせた際にミトコンドリア機能への影響に違いが認められるのかどうか検討した. ET-1 (0.5nmol) 処置肺では Vehicle 処置肺と比較して肺灌流圧と肺湿重量の増加がみられたが, 灌流液中へのLDHの逸脱増加はなく, 抽出ミトコンドリアのコハク酸を基質とした state 3および state 4の酸素消費量および肺組織中のATP量に変化はなかった. 一方, Lx (30μmol) 処置肺では Vehicle 処置肺と比較して肺湿重量の増加, 灌流液中へのLDHの逸脱増加とともに, 抽出ミトコンドリアのコハク酸を基質とした state 3および state 4の酸素消費量が低下し肺組織中のATP量も低下した. さらに, 流出圧負荷による圧充進型肺水腫においては, 灌流液中へのLDHの逸脱増加やミトコンドリア機能障害は認められなかった. 以上より, 各メディエーターによって肺ミトコンドリア機能障害の感受性に違いのあることがわかった. さらに, ミトコンドリア機能障害はエネルギー産生系の見地から, 特に透過性亢進型肺水腫の病態に関与しうる可能性が示唆された.
  • 秋葉 裕二, 木村 隆, 貴田岡 享, 豊島 恵理, 藤内 智, 長内 忍, 中野 均, 大崎 能伸, 箭原 修, 菊池 健次郎
    1996 年 34 巻 8 号 p. 850-855
    発行日: 1996/08/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    遺伝性運動・知覚ニューロパチーI型 (HMSN I) は末梢神経障害が主体の疾患であるが, 近年, 横隔神経障害に関する報告が散見されており, その呼吸筋および睡眠時呼吸異常について検討した. 臨床的にHMSNIと診断された5名 (男3名, 女2名, 年齢55.4歳) を対象とした. スパイログラムおよび最大吸・呼気口腔内圧 (MIP・MEP) を測定し, 頸部表面刺激法による横隔神経伝導検査を行った. さらに, 日中の眠気など, 睡眠時呼吸異常が疑われた2名に終夜ポリソムノグラフィー (ANPSG) を施行した. 5名中2名が拘束性障害を呈し, いずれも肺胞低換気を伴っていた. また, 上記2名を含む4名に, MIPの低下と横隔神経活動電位の平均潜時延長を認め, 横隔膜筋力の低下および横隔神経障害が示唆された. ANPSGを施行した2例が中枢型優位の無呼吸を示した. HMSN Iでは横隔神経障害が稀ではなく, その診断にMIP測定や横隔神経の電気生理学的検査が有用と考えられた.
  • 山口 佳寿博, 森 正明, 河合 章, 高杉 知明, 甲田 英一, 青木 琢也, 鈴木 浩一, 宮田 篤志, 西尾 和三, 鈴木 幸男
    1996 年 34 巻 8 号 p. 856-863
    発行日: 1996/08/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    種々なる病態を示す慢性閉塞性肺疾患 (COPD) のガス交換障害に拡散障害が関与するか否かを換気・血流比 (VA/Q) ならびに拡散能力・血流比 (G/Q) 分布を同時測定することによって検討した. 解析結果を自覚症状, 高分解能CT画像をもとに分類したCOPDの3基本病型である気腫化, 細気管支病変, 気道過分泌と比較し如何なる病型が如何なるVA/Q, G/Q分布異常をもたらすかを検討し以下の結論を得た. 1) CTPDの如何なる病型においてもその低酸素血症は拡散障害によって惹起されたものではなかった. 2) COPDの低酸素血症の主たる原因はVA/Q不均等分布であった. 3) 気腫性病変は高VA/Q領域を, 細気管支病変は低VA/Q領域を形成した. 4) 気道過分泌自体, あるいはそれに付随する気道病変は低VA/Q領域を形成するものと推察された.
  • 田坂 定智, 石坂 彰敏, 佐山 宏一, 脇 泰裕, 副島 研造, 中村 守男, 松原 弘明, 小熊 剛, 金沢 実
    1996 年 34 巻 8 号 p. 864-869
    発行日: 1996/08/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    Corynebacterium parvum 加熱死菌 (CP) で前処置したモルモットにおける急性肺損傷の発症に対する, 単核球系食細胞と末梢血好中球の関与を明らかにすることを目的とした. CPを腹腔内に投与し, 7日後に大腸菌エンドトキシン0.02mgを気管内に注入して急性肺損傷を作成した (対照群). 4時間後に肺を摘出し, 生理学的指標の測定, 気管支肺胞洗浄 (BAL) を行った. サイクロフォスファミドにより末梢血好中球を減少させた群では対照群と比較して肺損傷の程度に差を認めなかった. 三塩化ガドリニウムにより単核球系食細胞の機能を抑制した群 (単核球抑制群) では, 対照群に比して肺損傷が減弱し, BAL液中への好中球の集積も軽度であった. 単核球抑制群では肺組織中の単核球系食細胞数の減少を認めた. CPで前処置した個体では細網内皮系などの単核球系食細胞の活性化が急性肺損傷の発症に関与し, 末梢血好中球の関与は少ないことが示唆された.
  • 加藤 邦彦, 岡田 修, 吉田 康秀, 山本 司, 安田 順一, 田辺 信宏, 栗山 喬之
    1996 年 34 巻 8 号 p. 870-877
    発行日: 1996/08/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    慢性安定期にある72例の慢性閉塞性肺疾患患者を対象に右心カテーテル検査を行い, 100%酸素吸入による肺血管反応性と予後について検討した. 酸素吸入により肺動脈平均圧, 心係数, 肺小動脈抵抗の有意な減少を認めた. 肺血管反応性の指標として, 肺小動脈抵抗の減少率%ΔPARを用い, %ΔPAR≧15%を Responder 群 (R群), %ΔPAR<15%を Nonresponder 群 (NR群) に分類した結果, R群の生存曲線はNR群より有意に良好であった (50%生存期間R群2,571日, NR群1,432日). 両群間の背景因子では年齢, 体格, 空気吸入時の肺動脈平均圧, 心係数, 肺小動脈抵抗, 肺動脈楔入圧, 動脈血酸素分圧, 混合静脈血酸素分圧は有意な差はなく, 一秒量と肺活量が有意にNR群で低かった. %ΔPARは年齢, 空気吸入時の肺動脈平均圧, 肺小動脈抵抗, 一秒量, 一秒率, 肺活量, %肺活量と相関はなかった. 酸素吸入による肺血管反応性 (%ΔPAR) は, 予後因子の一つとなる可能性が示唆された.
  • 河端 美則, 坂本 祥一, 海野 剛, 福島 一雄, 大友 幸二, 山田 博之, 青木 俊明, 中島 由槻
    1996 年 34 巻 8 号 p. 878-884
    発行日: 1996/08/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    肺扁平上皮癌が肺実質では肺胞基底膜と肺胞上皮間に発育するとの報告を確認することを目的に免疫組織化学的手法を使用して検索を行った. 対象は肺実質で発育している扁平上皮癌41病変(男36, 女5例, 平均年齢65歳) である. 小細胞癌8病変 (男6例, 女2例, 平均年齢64歳), 腺癌71病変 (男48, 女23例, 平均年齢62歳) を対照とした. パラフィン包埋した腫瘍組織切片を対象に各種の染色を行った. 扁平上皮癌では, 細胞異型のない, p53染色陰性の2型肺胞上皮からなる腺管様構造 (非異型腺管) が90%の頻度で見いだされた. 扁平上皮癌の分化度や腫瘍発生部位での差はなかった. 一方小細胞癌では25%の陽性で, 腫瘍のごく一部にのみ見られ, 腺癌ではそれはみられなかった. 肺胞基底膜と肺胞上皮間での発育は扁平上皮癌に特徴的な発育様式であることが確認された.
  • 岩崎 吉伸, 上田 幹雄, 橋本 進一, 橋倉 博樹, 溝渕 一哉, 有本 太一郎, 伊東 宏, 原 洋, 中川 雅夫
    1996 年 34 巻 8 号 p. 885-889
    発行日: 1996/08/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    喘息患者の管理におけるピークフロー (PEF) 1日2回測定がいつ行われるべきか, その至適測定時間を検討する目的で, 喘息患者のPEFを cosinor 法を用いて解析した. 軽症から中等症の無治療喘息患者11名を対象に朝, 昼, 夕, 就寝時の1日4回PEFを自己測定させ, cosinor 法により解析した. いずれの症例も amplitude-acrophase の95%信頼楕円は極座標上の原点を含まず, 日内リズムが存在した. population mean cosinor 法により母集団のPEFを解析すると amplitude-acrophase の95%信頼楕円は極座標の原点を含まず, 日内リズムが存在すると考えられた. mesor, amplitude, acrophase の95%信頼区間はそれぞれ381±120l/m, 52±21lm, 16:28±0:55であった. PEFは午前4時30分前後に最小に, 午後4時30分前後に最大になると考えられた. 以上より, 軽症から中等症の喘息患者におけるPEF測定は早期起床および午後4時30分前後が適当と考えられる.
  • 柴田 和男, 松田 良平, 森 俊之, 太田 宏子, 吉田 祥子
    1996 年 34 巻 8 号 p. 890-893
    発行日: 1996/08/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    68歳男性の慢性有瘻性膿胸に両側肋軟骨弓の肋軟骨炎を合併した症例に対し, 両側肋軟骨弓摘除術と広背筋弁を使用した肺瘻孔閉鎖術を行った症例を報告した. 肋軟骨炎は感染肋軟骨をすべて切除することで治癒し, 両側肋軟骨弓摘除術は, 全身状態の良好でない症例においても術後合併症もなく安全に行うことができた. 肺瘻孔は縫合閉鎖後, 広背筋弁を縫着したが再発し, 気道吸引による肺炎で失った. 筋肉弁を利用した場合, 瘻孔部に縫着するだけでなく, 胸腔内誘導部の胸壁への縫合固定や膿胸腔を縮小閉鎖する必要があると考えられた.
  • 宍戸 道弘, 長尾 充展
    1996 年 34 巻 8 号 p. 894-897
    発行日: 1996/08/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    副甲状腺嚢胞は比較的稀な疾患で, 縦隔腫瘍としての報告例は調べた限りでは世界的にも現在まで19例である. 我々は気管の偏位にて発見された縦隔内副甲状腺嚢胞を経験しその画像所見を中心に報告する. 本嚢胞は甲状腺左葉下極より下方し縦隔内気管左側まで進展し, 気管及び食道を偏位させていた. CTやMRIでは単胞性の壁の薄い嚢胞として認められ, 内溶液はMRIで脳脊髄液と同様の信号強度を呈し漿液性と考えられ, 摘出手術にて確認された. technetium-99による甲状腺シンチグラムでは甲状腺左葉の下方からの圧排による上方偏位が認められ, 腫瘤の起源は甲状腺に接してその下方より生じたものと考え副甲状腺嚢胞を示唆していた.
  • 安東 優, 松木 康真, 水城 まさみ, 福田 秀明, 沖田 五月, 尾崎 達也, 中村 吉秀, 溝口 大輔, 宮崎 英士, 津田 富康
    1996 年 34 巻 8 号 p. 898-903
    発行日: 1996/08/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    症例は24歳, 女性. 気管支喘息中等発作にて救急外来を受診し入院となったが, 翌日, 呼吸困難感が増強し, 低酸素血症も進行した. 胸部単純X線写真では, 左上肺野の透過性が亢進している Unilateral hyperlucent lung で縦隔気腫, 皮下気腫も合併していた. その後 Unilateral hyperlucent lung をきたす疾患を鑑別し, Swyer James 症候群と診断した. 本症候群に関して本邦で約100例の報告があるが, 喘息発作を契機に縦隔気腫を来した報告を検索し得た限りではなかった. 非常に稀な病態と思われるが, Swyer-James 症候群の気腫化病巣は脆弱化していると考えられ, 喘息発作のように気道内, 肺胞腔内圧が亢進している状態では皮下気腫, 縦隔気腫を併発する可能性があると思われる.
  • 戸島 洋一, 山崎 琢士, 徳留 隆博
    1996 年 34 巻 8 号 p. 904-910
    発行日: 1996/08/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    小柴胡湯による薬剤性肺炎の2例を報告した. 症例1はC型肝硬変の61歳男性で, 内服開始約50日後, 発熱, 下痢, 呼吸苦で発症, 来院時PaO2 26Torrと著明な低酸素血症を呈した. 画像は上肺野優位のびまん性粒状影, すりガラス影でステロイドパルス療法に反応せず, 人工呼吸も施行したが消化管出血を合併し, 入院45病日に死亡した. BALFではリンパ球および好中球比率が増加, 死亡時の肺組織は硝子膜形成を伴わない胞隔の肥厚, II型肺胞上皮細胞の腫大を示した. 症例2は68歳男性で, 内服開始約80日後に咳, 呼吸苦, 発熱で発症, PaO2 61Torr, 両下肺野に不規則な浸潤影を認めた. BALFではリンパ球 (CD8+) の増加, TBLBでは肺胞腔内へのフィブリン, 好中球の滲出 (一部は器質化) の所見を得た. ステロイドの反応は良好で約40日で軽快退院した. 両症例とも小柴胡湯に対する末梢血DLSTが陽性であった. 症例2は小柴胡湯による薬剤性肺炎として典型的であったが, 症例1のような劇症型は稀である.
  • 川山 智隆, 澤 亜希子, 末安 禎子, 有川 圭介, 白石 恒明, 市川 洋一郎, 大泉 耕太郎
    1996 年 34 巻 8 号 p. 911-915
    発行日: 1996/08/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    本邦では非常に稀である慢性肺 paracoccidioidomycosis と考えられた日本人例を経験した. 症例は53歳, 日本人男性で, 検診の胸部X線写真異常を指摘された. 1964年から1969年の5年間ブラジルで仕事をしていた. しかし, その後は南アメリカには訪れたことがなかった. 1989年に口腔膜潰瘍および頸部リンパ節腫脹を伴った粘膜皮膚リンパ管型 paracoccidioidomycosis に罹患し, fluconazole (FLCZ) での治療歴があった. 1995年当初初診時の胸部X線写真および胸部 CT scan で両側びまん性に微細粒状影と肺気腫様変化が認められた. 細気管支肺生検で確定診断は得られなかったが, 既往歴とFLCZが著効したことで臨床的に慢性肺 paracoccidioidomycosis と診断した.
  • 中川 義久, 福島 敬和, 坂田 哲宣, 中川 和子, 菅 守隆, 安藤 正幸
    1996 年 34 巻 8 号 p. 916-920
    発行日: 1996/08/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    症例は75歳男性, 競馬場勤務. 拡張型心筋症と僧帽弁閉鎖不全症で経過観察中に, 胸部レントゲン上左S8の陳旧性炎症性陰影を指摘された. 2年間の外来観察にて, 同陰影が徐々に増大したため平成7年9月に精査入院となった. この間自覚症状はなかった. 一般検査では, 血沈35mm/hr, CRP陰性, WBC 8,400, 好酸球17%, 総IgE 3,628IU/ml, 喀痰中に多数の好酸球を認めた. 検査した範囲では明らかな免疫異常はなかった. 経気管支肺生検では悪性細胞を認めず, 直接塗抹にて, グラム陽性で抗酸性の分岐した桿菌を多数認め, 培養の結果 Nocardia asteroides と同定した. 本例は, 明らかな免疫異常の無い成人に発症し, 好酸球増多症を合併した. 稀な慢性肺ノカルジア症である. また, 職業に関連した土壌粉塵の吸入が感染源として疑われた点も重要であると考え報告した.
  • 森田 純仁, 佐藤 篤彦, 早川 啓史, 千田 金吾, 佐藤 潤, 戸舘 亮人, 塚本 克紀, 豊島 幹生, 妹川 史朗, 岩田 政敏
    1996 年 34 巻 8 号 p. 921-925
    発行日: 1996/08/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    症例は52歳の男性. 昭和55年に慢性関節リウマチに罹患した. 昭和58年より約5年間, 関節症状の緩和のため金製剤を投与された. 昭和63年7月に咳嗽・喀痰が出現し来院した. 胸部X線ではびまん性の粒状影を認め, 胸部CTでは小葉中心性の粒状影と分岐線状影が認められた. 昭和63年11月に開胸肺生検が施行され, 組織学的に濾胞性細気管支炎と診断された. 治療としてプレドニゾロンが投与された. 平成4年4月に副鼻腔炎が出現し, 平成5年6月の胸部CTでは新たに中枢気管支の拡張と壁の肥厚が認められ, 気道病変が中枢側にも進展したものと考えられた. また, CT上, 閉塞性細気管支炎の合併を示唆する散在性低吸収域も認められるようになった. 本症例は, 慢性関節リウマチ患者に付随する気道病変の進展様式を考察する上で示唆に富む症例と思われた.
  • 井上 哲郎, 種田 和清, 郡 義明, 田口 善夫, 富井 啓介, 松村 栄久, 三野 真里, 郷間 巌, 高野 義久
    1996 年 34 巻 8 号 p. 926-930
    発行日: 1996/08/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    症例は62歳男性. 4歳発症の脊髄性小児麻痺. 球麻痺と加齢が原因と思われる少量の誤嚥を約3年前から繰り返していた. 咳嗽と発熱が持続するため1994年5月当科に入院. 胸部レ線写真およびCTで散布性の小粒状影を認めたが, 陰影は比較的下肺に限局する傾向があった. 誤嚥防止の目的で輪状咽頭筋切断術を試みたところ, 誤嚥は軽減し経口摂取が可能になり, 画像所見も改善を認めた. 臨床経過および画像所見から, びまん性嚥下性細気管支炎と診断した. 本症の治療には誤嚥防止が最も必要かつ有用であるが, 実際には困難なことが多い. 輪状咽頭筋切断術は, 声帯機能を失わずに誤嚥防止を図るための, 有効な治療法の一つであると思われた.
  • 安田 憲生, 香田 雅彦, 野村 万寿美, 長島 賢司, 竹村 元三, 鷹津 久登, 湊口 信也, 後藤 紘司, 藤原 久義
    1996 年 34 巻 8 号 p. 931-936
    発行日: 1996/08/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    サルコイドーシス経過中に自己免疫性溶血性貧血を合併した1症例を報告する. 症例は, 65歳・女性で平成6年1月に両下肺野の網状陰影と縦隔リンパ節の腫脹, 皮下結節を認め, 皮下結節の生検によりサルコイドーシスと診断され, 経過観察されていた. 平成7年3月血液検査にて著明な貧血を認め, Coombs'test 陽性, 骨髄では赤芽球系の過形成が認められ, 自己免疫性溶血性貧血と診断し, ステロイド投与にて治療した. 現在ステロイドを中止し経過観察しているが, 貧血の再発は認められていない. サルコイドーシスに自己免疫性溶血性貧血を合併した比較的稀な症例を報告するとともに, 若干の文献的考察を加えた.
  • 松本 久子, 石原 享介, 藤井 宏, 羽白 高, 渡辺 勇夫, 西村 尚志, 岡崎 美樹, 長谷川 幹, 片上 信之, 梅田 文一
    1996 年 34 巻 8 号 p. 937-942
    発行日: 1996/08/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    症例は糖尿病と甲状腺機能低下症の既往のある73歳の女性. 発熱, 湿性咳嗽, 呼吸困難を主訴とし, 胸部X線上辺縁に多発する大小不同の淡い結節影を認めた. 血液ガス分析ではPaO2 48.6Torr, PaCO2 27.2Torrと著明な低酸素血症を呈していた. 胸部CTでは一部に空洞形成を伴う大小不同の結節影が, 肺野の辺縁に多発性に認められ, 一部は楔状で血管影の導入も伴っていた. 入院時の血液培養から E. Coli が同定されたことと合わせ, Septic pulmonary emboli と診断した. 塞栓源は腹部エコー, CT, Gaシンチにて左腎膿瘍と考えられた. 抗生剤の投与にて肺野の陰影は改善したが, 左腎膿瘍は軽度の縮小を呈するのみであり, 最終的に左腎全摘術を行い, 術後経過良好にて退院した. 特徴的なCT画像が早期診断の一助となったので文献的考察を加え報告した.
  • 鏑木 孝之, 松宮 晴子, 吉野 克樹, 永井 厚志, 金野 公郎
    1996 年 34 巻 8 号 p. 943-946
    発行日: 1996/08/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    症例は26歳男性. 自覚症状はなく, 胸部単純X線写真では右上葉に孤立性の境界不鮮明な浸潤景を認めた. 胸部CTでは左肺門, 縦隔リンパ節腫大を伴う. 右上葉の多発性結節陰影が認められ, Higl resolution CT でこれらの多発性結節陰影は1mm以下の小粒状影の集合として観察された. 経気管支肺生検では中位気管支粘膜下にサルコイド型 microgranuloma の形成がみられ, サルコイドーシスと診断した. 6ヵ月の経過観察で陰影は自然消失した. 胸部単純X線写真でリンパ節の腫大を伴わず, 肺野の孤立性陰影を呈するサルコイドーシスは稀であり, 鑑別診断に挙げるべき疾患として報告する.
feedback
Top