日本胸部疾患学会雑誌
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34 巻, 9 号
選択された号の論文の17件中1~17を表示しています
  • 瀬戸 貴司, 千場 博, 深井 祐治, 瀬戸 眞由美, 稲吉 厚, 蔵野 良一
    1996 年 34 巻 9 号 p. 947-952
    発行日: 1996/09/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    原因不明胸水に対して観察用と生検用のフレキシブル気管支内視鏡を同時に2本挿入し胸腔鏡検査を施行した. その方法を紹介するとともに臨床的な意義を検討した. 対象: 原因不明胸水 (滲出性, リンパ球優位, 胸水ADA低値, 胸水細胞診にて悪性細胞陰性, 胸水塗沫結核菌及び一般細菌検査陰性例) 50例. 外来検査症例は14例であった. 方法: 局所麻酔下に胸腔内に300から500mlの純酸素を挿気, 人工気胸状態とした. 観察用及び生検用フレキシブル気管支鏡を同時に挿入し検査を施行, 検査後約1時間の脱気にて帰宅も可能であった. 結果: 原因不明胸水50例中, 42例に胸腔内病変が認められ, 組織学的診断が46例に可能であった. 考察: 呼吸器内科医にとって最も慣れている器具を用いて, 容易な操作で合併症なしに, 有効な診断が得られると考えられた.
  • 吉川 雅則, 米田 尚弘, 夫 彰啓, 山本 智生, 竹中 英昭, 仲谷 宗裕, 小林 厚, 徳山 猛, 岡本 行功, 成田 亘啓
    1996 年 34 巻 9 号 p. 953-958
    発行日: 1996/09/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    慢性閉塞性肺疾患 (COPD) 患者の体重減少の詳細を明らかにするために, Dual energy x-ray absorptiometry (DXA) を用いて体成分分析を行い, 肺機能との関連についても検討した. 対象は外来通院中の男性肺気腫患者17例で, %標準体重 (以下%IBW) で体重非減少群 (A群; %IBW≧90), 軽度減少群 (B群; 90>%IBW≧80), 中等度以上減少群 (C群; %IBW<80) の3群に分けて検討した. 骨塩量 (BMC), 脂肪量 (FAT) はB, C群で, 除脂肪体重 (LEAN) はC群で健常対照より有意に低下していた. A群では3成分ともに有意な変化を認めなかった. LEANは%VC, FEV1, MVVと有意な正の相関, RV/TLCとは有意な負の相関を認めた. 以上から, 肺気腫患者では体重減少の重症度により体成分に変化がみられ, 体成分特にLEANの変化が肺機能と関連することが示唆された.
  • 坪井 知正, 大井 元晴, 陳 和夫, 野口 哲男, 北 英夫, 大塚 直紀, 関野 一, 村尾 仁, 栗山 隆信, 久野 健志
    1996 年 34 巻 9 号 p. 959-967
    発行日: 1996/09/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    鼻マスクを用いた陽圧換気法 (nasal intermittent positive pressure ventilation: NIPPV) を長期人工呼吸療法に導入した41症例 (肺結核後遺症17症例, 神経筋疾患8症例, 後側彎症7症例, COPD6症例, その他3症例) の臨床経過を調査・検討した. 41症例中, 2症例が導入7ヵ月後の突然死および導入3年4ヵ月後の肺性心により死亡し, 2症例がNIPPVから気管切開下人工呼吸へ治療が変更され, 1症例が改善しNIPPVから離脱した. NIPPV導入3年後の継続率, 生存率は各々82%, 97%であった. また在宅酸素療法開始時より算出した生存率は1~9年後が98%, 10・11年後が65%であった. NIPPV導入後, 自発呼吸時の血液ガス, 睡眠時SpO2, 肺機能, 入院日数・回数は有意に改善した. 長期NIPPV療法は高炭酸ガス血症を伴う慢性呼吸不全症例に有効であると思われた.
  • 梁 英富, 酒井 洋, 池田 徹, 日比野 俊, 後藤 功, 米田 修一, 野口 行雄
    1996 年 34 巻 9 号 p. 968-972
    発行日: 1996/09/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    1977年以降の17年間に当センターに入院した肺癌1,636例のうち, 手術または剖検によって食道を除く消化管に転移が確認されたのは30例であった. このうち生前に診断し得たのは7例, 剖検診断症例は23例であった. 組織型別の転移率は大細胞癌 (3.7%) が高く, 次いで腺癌 (2.4%), 小細胞癌 (1.7%), 扁平上皮癌 (0.7%) の順であった. 臓器別転移率は, 胃0.4%, 小腸1.1%, 結腸0.5%, 全体で1.8%で, 剖検298例では胃2.6%, 小腸5.7%, 結腸3.0%, 計9.7%であった. 剖検診断例のうち11例に, 生前何らかの腹部症状が認められていた. 便潜血反応は検査された11例中9例に陽性で, うち6例は無症状であり, 肺癌消化管転移の補助診断として便潜血反応が有用であると考えられた. また, 生前に診断し得た症例は小腸転移6例, 結腸転移1例, 主な症状は下血, 腸閉塞, 腸重積, 穿孔で4例に緊急手術が施行された. 症状発現からの平均生存期間は49日と予後不良で, 5例においては消化管転移が直接の死因であった. 進行する腹部症状が認められ便潜血反応が持続陽性の場合には, 消化管転移を念頭におく必要があると考えられた.
  • 山脇 功, 玉置 淳, 武田 祐子, 金野 公郎
    1996 年 34 巻 9 号 p. 973-977
    発行日: 1996/09/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    高張食塩水 (HTS) 吸入により惹起されたラット気管の血管透過性亢進に対する抗喘息薬である Sodium cromoglycate (SCG) の効果を in vivo で検討した. 血管透過性は血管外に漏出した Evans blue の吸光度を測定することにより評価した. 5~15%HTS吸入は血管透過性を濃度依存性に増加させた. SCG (10mg/ml) の前吸入は10%HTS吸入による血管透過性を抑制した. また, SCGはサブスタンスP吸入による血管透過性も抑制したが, PAF吸入による血管透過性には影響を与えなかった. さらに, SCGは5%HTS吸入による血管透過性亢進には無効であったが, ニュートラルエンドペプチダーゼ (NEP) 阻害薬であるフォスフォラミドンの存在下では, その効果を抑制した. よって, SCGはタキキニン拮抗様作用によりHTS誘発血漿漏出を抑制し, その効果は気道のNEP活性低下状態でより顕著となるものと考えられた.
  • 福澤 純, 赤石 直之, 田中 秀一, 笹川 憲, 牧田 圭弘, 羽根田 俊, 藤内 智, 菊池 健次郎
    1996 年 34 巻 9 号 p. 978-982
    発行日: 1996/09/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    発熱, 咳および呼吸困難を訴えた54歳の女性が農夫肺を疑われ入院した. 16年前から酪農業に従事し, 毎年4月に同様の症状があった. 入院時に胸部に fine crackle を聴取し, 低酸素血症, 肺機能検査上拘束性障害や拡散能の低下, Gaシンチグラム上肺野の異常集積および胸部レントゲン写真上びまん性小粒状影等を認めた. 気管支肺胞洗浄液ではリンパ球の増加を, リンパ球サブセットはCD4/CD8比が高値を, 経気管支肺生検では過敏性肺炎の像を認めた. 患者血清から抗 Micropolyspora faeni 抗体が検出され農夫肺と診断した. 入院後, 無治療で自覚症状と上記所見は改善した. 入院時に1,123と高値を呈していた血清可溶性インターロイキン2受容体値 (基準値190~650) は病勢が軽快するに伴い663, 298 (各U/ml) と減少した. 同検査はT細胞が関与する疾患で病勢を反映する事が知られている. 農夫肺においても同様の意義があると考えられた.
  • 桶谷 典弘, 斉藤 博之, 江部 達夫
    1996 年 34 巻 9 号 p. 983-988
    発行日: 1996/09/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    半夏瀉心湯による薬剤性肺臓炎の1例を報告した. 症例は72歳の女性で, 口内炎の治療のため半夏瀉心湯と白虎加人参湯を内服したところ, 8ヵ月後に労作時息切れと胸部X線写真上びまん性の斑状影が出現し, 間質性肺炎の疑いで入院した. 薬剤性肺臓炎を疑い, 内服薬を中止したところ, 臨床症状, 胸部X線写真の改善を認めた. 気管支肺胞洗浄の検査では, リンパ球の増加とCD4/CD8比の低下を認め, 肺生検の組織像では, 細気管支周辺および肺胞壁に, リンパ球を主とする細胞浸潤を認めた. 白血球遊走阻止試験では, 半夏瀉心湯に対し陽性を示し, 半夏瀉心湯による薬剤性肺臓炎と思われた. 当薬剤による薬剤性間質性肺炎の報告は, 本邦で第1例目と思われる.
  • 橋本 敦郎, 池脇 淳二, 山上 由理子, 山形 英司, 山崎 透, 長岡 博志, 永井 寛之, 後藤 陽一郎, 那須 勝
    1996 年 34 巻 9 号 p. 989-992
    発行日: 1996/09/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    症例は63歳男性. 繰り返す肺炎の精査中に胸部 CT scan で右下葉に腫瘤状陰影を認め, 肺癌を疑い気管支鏡施行. 右下幹入口部を閉塞するように表面不整で一部壊死物質に覆われた腫瘤を認め, 確定診断の目的で気管支生検およびその末梢の肺生検を施行. 組織学的に気管支においては好中球を中心とした炎症細胞浸潤と放線菌の菌塊を認め, 末梢肺生検ではリンパ球を中心とした慢性炎症所見を認めたことより, 気管支放線菌症およびそれによる閉塞性肺炎と診断した. 治療として, ピペラシリンの点滴治療およびアモキシシリンの内服治療を行い, 内視鏡的に著明な改善を確認できた.
  • 加藤 知子, 平潟 洋一, 小林 淳, 杉山 幸比古, 北村 諭, 広田 紀男
    1996 年 34 巻 9 号 p. 993-996
    発行日: 1996/09/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    受傷側の対側にのみ所見を認めた肺挫傷の症例を経験したので報告する. 症例は47歳男性. 主訴は左胸痛. 伐採作業中に約2mの高さから転落し, 左胸部を打撲. 翌朝より左側胸部痛が出現し, 増強したため当科に入院となった. 入院時, 低酸素血症と炎症所見, 胸部レントゲンで右中肺野から下肺野にかけて斑状影, 左第7肋骨に骨折線を認めた. 右B3bからの気管支肺胞洗浄液は血性で, 右肺の経気管支肺生検では, フィブリンの析出と, ヘモジデリンの沈着を認め, 受傷部位と反対側に発生した肺挫傷と診断した. 症状と異常陰影は経過観察で改善した. 文献的にも打撲部位の反対側のみに肺挫傷を認めることは稀であり, その機序は, 反対側では縦隔の急速な振動により, 肺の圧縮と過伸展が起こり, 細血管の損傷を来すものと考えられた.
  • 松本 久子, 網谷 良一, 渡辺 茂樹, 李 雲柱, 新実 彰男, 坪井 和正, 陳 和夫, 大井 元晴, 中村 慎一, 久世 文幸
    1996 年 34 巻 9 号 p. 997-1002
    発行日: 1996/09/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    検診時の胸部異常陰影を契機に発見され, 様々な呼吸機能異常を呈した筋緊張性ジストロフィーの1例を報告する. 症例は52歳, 男性. 20歳代から鼻にかかった話方を指摘されたことがある他は著変なく日常生活を送っていた. 入院約1年前の検診時に右横隔膜挙上・右下肺野の索状影などの胸部異常陰影を指摘され, 次第に増加してきたため入院となった. 理学所見・筋電図所見から筋緊張性ジストロフィーと診断され, 胸部異常陰影は同疾患によるものと考えられた. 高炭酸ガス血症, 低酸素血症, 肺活量の低下, 高炭酸ガス吸入による換気応答の低下などがみられた. 夜間の酸素飽和度モニターでSpO2の低下があり, ポリソムノグラフィーにて中枢性睡眠時無呼吸の存在が明らかになった. またカプサイシン吸入による咳反射の低下も確認された.
  • 後藤 眞, 佐藤 誠, 布施 克也, 佐藤 和弘, 横田 樹也, 村松 芳幸, 高橋 龍一, 鈴木 栄一, 荒川 正昭
    1996 年 34 巻 9 号 p. 1003-1008
    発行日: 1996/09/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    43歳女性. 麻酔導入薬の使用時に発見された肺胞低換気の精査目的で当科に入院. 神経学的および呼吸生理学的検査により中枢性肺胞低換気症候群と診断されたが, MRI, 血管造影で両側椎骨動脈の異常拡張, 蛇行による延髄腹側の圧迫を認め, 責任病変の可能性が疑われた. 夜間の人工呼吸管理により肺胞低換気は改善した. 在宅人工呼吸を導入し, 日中の生活に異常なく, 通院中である.
  • 新井 正, 高屋 忠丈, 伊東 祐二, 早川 和良, 戸島 敏, 渋谷 智顕, 野村 万寿美, 吉見 直己, 柴山 麿樹, 安田 洋
    1996 年 34 巻 9 号 p. 1009-1014
    発行日: 1996/09/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    症例は63歳, 女性, 主訴は胸部X線写真異常の精査, 現病歴: 平成2年5月より経過観察されていた右下肺野の腫瘤影の精査目的にて当科に紹介入院となった. 入院後のTBLBにて pseudolymphoma を強く示唆されるも, 悪性腫瘍も否定できず, 本人と家族の希望により手術を施行された. 腫瘤は境界が明瞭でS6が3×3.5×4cm, S8が2×2.5×3cm, T1N0M0で stage I であった. 病理組織標本に免疫組織学的所見 (CD19+, CD20+, IgD-, CD5-, CD10-) より総合的にMALTリンパ腫と診断された. 肺原発悪性リンパ腫とMALTリンパ腫は, 細胞形態だけからは鑑別が困難であり組織学的, 免疫学的, 遺伝子学的検討が必要であると考えられた.
  • 三井 いずみ, 市原 宏, 草島 健二, 村田 嘉彦, 大石 不二雄, 下出 久雄, 河端 美則
    1996 年 34 巻 9 号 p. 1015-1020
    発行日: 1996/09/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    急速進行性糸球体腎炎の経過中に増悪した間質性肺炎の1例を経験した. 症例は78歳の男性で1994年10月, 開放腎生検で半月体形成性糸球体腎炎と診断され, プレドニゾロン一日50mgから開始し5mgに減量中, 胸部X線上, 間質性陰影が出現し拘束性換気障害と拡散能障害を伴った. 1995年4月胸腔鏡下肺生検を施行し, 間質性肺炎 (UIP病変) の所見を得た. プレドニゾロンを一日50mgに増量し, 以後間質影の減少と呼吸機能検査上の改善がみられている. 抗ミエロペルオキシダーゼ抗体は16EU/mlで弱陽性であった. 急速進行性糸球体腎炎に合併する肺病変として, 肺胞出血は従来から認識されてきたが, 間質性肺炎, 肺線維症の報告は稀である. 今回の症例は腎組織, 肺組織の双方を得られた点で貴重であり, 抗ミエロペルオキシダーゼ抗体陽性の急速進行性糸球体腎炎と間質性肺炎の関連を考察する上で興味深い症例と思われた.
  • 大野 耕一郎, 高田 俊範, 寺田 正樹, 佐藤 誠, 鈴木 栄一, 和田 光一, 広野 達彦, 荒川 正昭
    1996 年 34 巻 9 号 p. 1021-1029
    発行日: 1996/09/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    抜歯を契機として, 頸部膿瘍から多臓器不全を伴う下降性壊死性縦隔炎を発症したが, 7ヵ月間の人工呼吸器管理から離脱し, 救命し得た1例を経験した. 症例は61歳, 男性. 抜歯の翌日より頸部蜂窩織炎を発症, 1週間後, 膿胸を伴う縦隔炎に進展し, 細菌性ショック, 多臓器不全, DICを合併した. ショックに対して, カテコラミンによる循環管理, 重症感染症に対して感受性のある抗菌薬の使用, 早期からの充分なドレナージ, そして呼吸不全に対してステロイドパルス療法が有効であった. 高濃度の酸素吸入, 長期間の鎮静・筋弛緩, 気管縦隔瘻の残存, および縦隔・胸郭内の残存器質化病変にも拘らず, 212日間という長期間の人工呼吸管理から離脱出来た極めて興味ある症例であった.
  • 秋山 靖人, 斉藤 勢也, 木村 秀, 城野 良三, 藤井 義幸
    1996 年 34 巻 9 号 p. 1030-1034
    発行日: 1996/09/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    症例は59歳, 女性. 平成7年4月より左胸痛出現し, 近医にて胸部X線写真上縦隔陰影の拡大を指摘された. 当院外科へ紹介され, 経皮的針生検にて胸腺癌 (扁平上皮癌) と診断された. 胸部CT上腫瘍は心嚢液・胸水に加え, 肺転移も認められたため (正岡分類IVb) 現時点での手術適応なしとの診断にて当科紹介された. 平成7年6月より cisplatin (CDDP, 10mg/body/day, day 1-8)+vindesine (VDS, 3mg/body, day 1, 8) 1コースと同時に放射線照射 (24Gy) を施行した. その後さらにCDDP (30mg/body, day 1-3)+VDS (同上) 1コースを追加し, 腫瘍はCT上約75%縮小を認め, partial response (PR) が得られた. 腫瘍マーカーも治療後正常値まで低下を認めた. 平成7年8月外科的切除可能と判断し, 胸腺の腫瘍は両側の肺転移巣も含めて切除した. 切除標本では組織学的に腫瘍内に広範な壊死が認められ, 術前治療の効果が確認された.
  • 白山 玲朗, 濱田 薫, 林 宏明, 友田 恒一, 伸谷 宗裕, 吉川 雅則, 米田 尚弘, 成田 亘啓
    1996 年 34 巻 9 号 p. 1035-1039
    発行日: 1996/09/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    66歳, 男性, 布団加工業. 咳嗽, 喀痰, 微熱を主訴に受診. 胸部X線で右上肺野に多発嚢胞影と浸潤影とを認めた. 喀痰から抗酸菌を検出したため, INH (400mg/日), SM (0,75g/日), RFP (450mg/日) の3者で加療したところ浸潤影は縮小, 無気肺化し, 喀痰からの抗酸菌も陰性となった. しかし治療開始後約2ヵ月で右下葉に新たな浸潤影が出現, 同部からのTBLBで器質化滲出物を伴う胞隔炎の所見を得た. 初期悪化と考え, 3者による治療を継続したところ, 約2ヵ月の経過で陰影の消失をみた. 経過中喀痰の80日培養で Mycobacterium xenopi を連続して検出し, 本例は非定型抗酸菌症と診断した. M. xenopi 感染症は本邦では稀で, 第3例目の報告であり, また非定型抗酸菌症でも肺結核症と同様に初期悪化の概念が適応される症例があると考えた.
  • 中村 仁, 中浜 肇, 西岡 安弘, 北田 修, 杉田 實
    1996 年 34 巻 9 号 p. 1040-1043
    発行日: 1996/09/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    我々は1975年にα1-アンチトリプシン欠損症を伴う肺気腫の本邦初例 (49歳, 女性) を報告し以後経過観察を行っていた. Pi Phenotype M ヌル型, 遺伝子型は M malton 型で血緑者に多数のヘテロ接合体が存在していた. 肺機能は徐々に悪化し, 1987年より在宅酸素療法中であった. 1994年10月呼吸不全のため死亡した. 剖検では, 肉眼的に肺は嚢胞状で, 組織学的には典型的な汎小葉性肺気腫であった.
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