日本胸部疾患学会雑誌
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35 巻, 10 号
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  • 陰下 敏昭, 西村 善博, 仲田 裕行, 寺島 正浩, 梶浦 恭, 前田 均, 横山 光宏
    1997 年 35 巻 10 号 p. 1035-1039
    発行日: 1997/10/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    冠攣縮性狭心症 (VSAP) 患者の冠攣縮反応と気道反応性との関連を検討するために, 冠動脈造影時のアセチルコリン (Ach) に対する冠動脈反応性とアストグラフ法によるメサコリンに対する気道反応性を測定し, 正常冠動脈患者と比較検討した. 冠動脈造影時Ach冠動脈内注入にてVSAPと診断された患者 (V群) 21名 (男11名, 女10名: 平均59.8±2.1歳) と正常冠動脈とされた患者17名 (N群) (男8名, 女9名: 平均63.4±2.4歳) を対象とした. V群の log Dmin はN群と比較し有意に低値を示した.V群におけるAch冠動脈反応閾値と Dmin との間には弱いが有意な正相関 (r=0.383, p<0.05) が認められた. 以上より, VSAP患者では副交感神経作動物質に対して冠動脈及び気道の反応性が亢進していることが示唆された.
  • 岩崎 吉伸, 久保田 豊, 横村 一郎, 上田 幹雄, 橋本 進一, 溝渕 一哉, 有本 太一郎, 原 洋, 中川 雅夫
    1997 年 35 巻 10 号 p. 1040-1046
    発行日: 1997/10/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    喘息管理におけるピークフロー (PEF) の目標値を明らかにするため症状とPEFの関係を検討した. 中等症以上の喘息患者を対象に1日4回PEFおよび喘息日誌を記録させた. PEFの指標に日内変動 (V-PEF) およびPEFの1日の最小値を best PEF で除した値 (M-PEF) を用い, 症状は喘息日誌より咳, 痰, 発作について1日毎にスコア化した. 発作時にはβ2-stilnulant を吸入させ, 1日の吸入回数 (F-β2) を記録させた. M-PEFはF-β2と強い相関を示した (r=-0.76). M-PEFとV-PEFとはM-PEFが40%以上で強い相関を示した (r=-0.82). M-PEF, V-PEFはそれぞれ80%, 10%前後で症状は消失し, F-β2は0回になった. M-PEFが40%でF-β2は2.6回であった. 以上より, 喘息患者のM-PEFおよびV-PEFの目標値はそれぞれ80%, 10%と考えられる. また,F-β2は症状の有用な指標と考えられた. V-PEFは, F-β2を参考にすることにより急性増悪の早期診断に有用である.
  • 田村 猛夏, 岡本 行功, 徳山 猛, 浜田 薫, 春日 宏友, 米田 尚弘, 宮崎 隆治, 成田 亘啓
    1997 年 35 巻 10 号 p. 1047-1053
    発行日: 1997/10/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    石綿性胸膜炎の予後について検討を行なった. 12症例の平均観察期間は, 6.5±3.7年で再発は5例 (41.7%) 7側にみられ, 対側6側, 同側1側であった. また, 再発までの平均期間は2.8±2.8年であった. 死亡例は5例で, 石綿性胸膜炎による胸水貯留発症より死亡までの平均期間は5.0±3.1年であった. 死因は肺炎2例, 急速に胸膜の線維化が進行する進行性胸膜線維症によると思われる呼吸不全2例および肺癌1例であった. 進行性胸膜線維症のうち1例は白血球減少を伴っていた. 本症は自然消褪が多く, 予後良好とされていた. しかし,進行性胸膜線維症を発症し呼吸不全で死亡する症例があり厳重な経過の観察が必要と思われた.
  • 佐藤 忍, 高田 一男, 塚本 東明, 奥村 浩, 池田 英樹, 高橋 牧郎, 佐山 恒夫, 伊藤 英三, 藤井 俊司, 木村 久男, Ta ...
    1997 年 35 巻 10 号 p. 1054-1059
    発行日: 1997/10/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    101人の在宅酸素療法 (HOT) 患者とその主介護者 (n=91) の家族機能に対する満足度 (APGAR点数) を老人クラブ会員 (老ク会員n=433) のそれと比較した. さらに, 患者のうつの程度の測定値と主介護者によるうつ状態の観察結果との関連を検討した. うつの程度はCESD点数で評価した. 主介護者のAPGAR点数は患者および対照のそれよりも有意に低かった (p<0.004). 主介護者は女性が多かったので, 年齢と性をマッチさせて女性主介護者と女性老ク会員のAPGAR点数を比べた. その結果,「困ったときの家族の対応」に対する満足度は女性主介護者で有意に低値であった (p<0.0001). 主介護者が「落ち込んでいる」と観察している患者のCESD点数は有意に高かった (p<;0.05). 患者と異なり主介護者の家族機能に対する満足度は低く,HOT患者のうつ状態を軽減する上で主介護者の役割は重要であると結論した.
  • 山口 佳寿博, 副島 研造, 松原 弘明, 小熊 剛, 井上 卓, 島田 尚登, 森 正明, 鈴木 孝司, 甲田 英一
    1997 年 35 巻 10 号 p. 1060-1066
    発行日: 1997/10/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    肺野気腫病変をCT肺密度法によって診断するのに必要な各CT指標の正常予測値とその95%信頼限界を求めるために種々の条件で非喫煙健常成人 (n=36) の胸部CT画像を撮影した. 得られた正常限界値をCOPD患者のCT画像 (n=45) に適用しその気腫病変検出感度を検討した. 各関心スライス (region of interest) の平均CT値をROI, CTヒストグラム上最も出現頻度の高いCT値を Hist. Peak, -910HU以下の低密度領域の相対面積を%LDA, 総横断面積を Area と定義し気腫化指標とした. CTスライス厚, 撮影時の肺気量, 撮影部位によらず健常成人の気腫化関連CT指標と年齢との間には有意な相関を認めず各指標の正常予測値, 95%信頼限界は年齢と無関係に定義できた. 各CT指標のうち最も気腫病変の検出感度が高かったのは%LDAであった. 気腫病変の診断には肺密度法を用いる限り高分解能CT画像は不要であり通常画像で十分なる感度が得られることが判明した.
  • 吉村 信行, 野寺 博志, 大河内 稔, 新 謙一, 月本 光一, 別府 穂積, 松原 修, 中谷 行雄, 吉澤 靖之
    1997 年 35 巻 10 号 p. 1067-1073
    発行日: 1997/10/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    症例は64歳, 女性. 35年前から60羽の鳩を自宅の庭で飼育していた. 8年前の健診で胸部X線写真上, び慢性粒状網状影を指摘された. 以後原因不明の肺の線維症として外来フォローされていたが, 乾性咳嗽と労作時息切れが出現したため精査入院となった. 胸部CTでは区域性の拡がりを示す蜂窩肺形成および気管支拡張所見を認めた. 気管支肺胞洗浄液では, Pigeon Dropping Extracts に対する抗体と鳩血清添加リンパ球の blastogenic response が強陽性を示した. 胸腔鏡下肺生検では, 細気管支炎, 胞隔炎, 小葉中心性の蜂窩肺形成を認めた. 以上より鳩による慢性過敏性肺炎と診断した.本例のごとく急性期のエピソードがない慢性過敏性肺炎は診断が難しく気管支拡張症や特発性間質性肺炎等と診断されている例も多い. 肺に線維化をきたす症例に遭遇した場合, 慢性過敏性肺炎も念頭におき, 鳥の飼育歴を含めた生活歴, 職業歴を聴取することが重要である.
  • 吉村 治彦, 石井 純, 渡部 直己, 合田 晶, 宮本 顕二, 川上 義和, 藤田 美悧
    1997 年 35 巻 10 号 p. 1074-1079
    発行日: 1997/10/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    症例は30歳, 男性. 右室自由壁に限局した血栓性疣贅を繰り返し形成し, そこからの遊離血栓により胸部X線写真上多発性結節性陰影 (敗血症性肺塞栓症) を呈した. 口腔内アフタ, 座瘡様皮疹, 血栓性静脈炎 (内頸静脈, 外腸骨静脈) と既往の両側性ぶどう膜炎と結節性紅斑, 副睾丸炎, そしてHLA-B51陽性から心血管ベーチェット病と診断した. 血栓溶解療法とプレドニゾロン, シクロスポリンを開始し, 発熱, 炎症反応は軽快, 心内血栓も消失し, 3年経過した現在も病状は安定している. 心血管ベーチェット病には種々の病態が報告されているが,本症のように右室自由壁血栓で初発し, 敗血症性肺塞栓症による多発性結節性陰影を呈した報告例は少ない. 心血管ベーチェット病のとりうる病態の多様性を考える上で貴重な症例である.
  • 安藤 博彰, 伊藤 和信, 津田 富康
    1997 年 35 巻 10 号 p. 1080-1083
    発行日: 1997/10/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    症例は73歳男性. 1994年4月12日直腸癌根治術施行. 5月13日他院へ転院. 6月3日夜より感冒様症状出現. 6月12日胸部X線で肺炎の診断, 加療を開始するも解熱せず. 胸部X線の異常陰影は次第に増悪し, 呼吸困難も増強したため6月21日精査目的で当科へ緊急入院となった. 入院時胸部X線では末梢側に優位な間質影が認められた. 本例は手術後より Fluorouracil の継続的な服薬歴があり, 同薬剤に対する薬剤リンパ球刺激試験が陽性を示したことより同薬剤による肺臓炎と診断した. 本例は Fluorouracil による薬剤性肺臓炎の最初の報告例と思われ, その発症には細胞毒性及びアレルギー性機序の両者の関与が示唆された.
  • 久保 雅子, 越野 健, 清水 久裕, 黨 康夫, 豊田 恵美子, 工藤 宏一郎, 可部 順三郎, 新野 史
    1997 年 35 巻 10 号 p. 1084-1092
    発行日: 1997/10/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    症例は, 76歳の男性. 主訴は, 労作時呼吸困難. 1994年7月, 近医で胸部X線写真上, 間質性の陰影を指摘され, 精査目的に当センターに入院. 自覚症状はなし. 経気管支肺生検 (TBLB) では, ごく軽度の円形細胞浸潤を伴う胞隔炎の所見のみ. 右B4aから得られた気管支肺胞洗浄液所見では, 好酸球増加 (26%) が見られたが, TBLB標本には, 著明な好酸球浸潤は見られなかった. 低酸素血症はなく, 無治療で経過観察とした. しかし, 1995年6月ごろ, 労作時呼吸困難が出現, 画像所見で陰影の増強, 呼吸機能検査で拡散能の低下が見られ再入院した. 入院検査所見では, LDHの上昇がみられた. 腫瘍マーカーの上昇はなかった. 開胸肺生検で, 剥離性間質性肺炎と診断した. プレドニゾロン45mg/day (1mg1kg1day) の投与を開始し, 1ヵ月後には, 画像所見, 検査所見ともに著明な改善がみられた.
  • 宮田 靖志, 岡野 良, 倉富 雄四郎
    1997 年 35 巻 10 号 p. 1093-1098
    発行日: 1997/10/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    症例は51歳女性. 約30年前にシリコンによる豊胸術を受けた. 以後, 両乳腺外側および腋窩リンパ節腫張を自覚していたが, 2年前よりリンパ節腫大が増大し, さらに, 数ヵ月前より手指腫張, 朝のこわばり, Raynaud 徴候, 労作時呼吸困難が出現した. 四肢近位筋の対称性筋力低下, 口唇生検, 筋生検, 唾液腺造影所見, 筋原性筋電図変化, 筋逸脱酵素の上昇などより多発筋炎とシェーグレン症候群の overlap 症候群と診断された. 胸部X線・CTにて胸膜下優位の二次小葉間質陰影の肥厚, 肺野濃度の上昇, 下葉容積の減少が, また, TBLBにて炎症細胞浸潤を伴う胞隔肥厚と線維化が認められ, 間質性肺炎の合併と考えられた. 本例は, シリコンリンパ節炎の増強と膠原病症状および間質性肺炎の発症に強い臨床的関連が推測され, ヒトアジュバント病が強く疑われた. 本症に伴う間質性肺炎の報告は少なく, 文献的考察を加え報告した.
  • 清水 孝一, 塩田 智美, 仲谷 善彰, 坂本 匡一, 岩瀬 彰彦, 青木 茂行, 松岡 緑郎, 永山 剛久, 河端 美則
    1997 年 35 巻 10 号 p. 1099-1103
    発行日: 1997/10/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    26歳女性が感冒様症状に対して投薬された薬剤を内服後約1日の経過で呼吸困難を呈して来院した. 入院時の胸部レントゲン写真では両側上肺野を中心とした不規則な浸潤影を認め, 胸部CT写真でも汎小葉性の肺野濃度の上昇を認めた. BALより総細胞数の増加, 好酸球分画の著増を認めTBLBで胞隔の肥厚と間質への好酸球の浸潤が見られた. 前医で投与されたバッファリン®に対するリンパ球芽球化反応試験が陽性であったために本剤の投与が関与する薬剤誘起性肺障害と考えた. 薬剤の中止により自覚症状, 血液ガス所見, 胸部レントゲン写真は速やかに改善し, その経過は急性好酸球性肺炎様であった. 治療に際してステロイド剤の投与は不要であった.
  • 吉田 良昌, 原田 修次, 荒井 信貴, 松井 祥子, 丸山 宗治, 小林 正
    1997 年 35 巻 10 号 p. 1104-1107
    発行日: 1997/10/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    症例は64歳, 男性. 成人期以降労作時呼吸困難を自覚し, 8年前健診で肺動静脈瘻と診断されるも放置していた. 発熱と意識障害が出現し, MRIにてリング状エンハンスメントを示す多発性低信号腫瘤を認め, 多発性脳膿瘍と診断された. 左肺には長径3cmの血管瘻と拡張した舌区の流出入血管2本を認めた. 本例は家族歴はないものの, 繰り返す鼻出血と消化管出血があり, Rendu-Osler-Weber 病を合併していた. 抗生物質投与にもかかわらず脳室穿破のため緊急手術となった. 肺動静脈瘻の自然経過例の報告は少なく, 治療時期についての定まった見解はないが, 本例のように, 放置すると高齢時に至死的な合併症を呈する危険性があるため, 早期に積極的な治療が望ましいと考えられた.
  • 片岡 和彦, 妹尾 紀具
    1997 年 35 巻 10 号 p. 1108-1112
    発行日: 1997/10/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    症例は25歳男性で, 検診で胸部異常影を指摘された. CT, MRIにて, 前縦隔に嚢胞性の部分と充実性の部分の混在した比較的境界明瞭な腫瘤を認め, 良性奇形腫を疑って手術を施行した. 周囲臓器への浸潤は認められず, 胸腺右葉と共に腫瘤を完全摘出しえた. 腫瘤は単房性嚢胞様で, 褐色漿液性の内容液を入れ, 切開すると壁は凹凸不整で黄白色充実性の部分が存在した. 病理学的には, 胸腺原発セミノーマと診断された. 放射線照射を追加し, 術後33ヵ月の現在再発を認めていない. 縦隔セミノーマは比較的まれな腫瘍で, 充実性の腫瘤像を呈することが普通であるが, ごくまれに嚢胞変性を来した症例も報告されている. セミノーマも著明な嚢胞変性を来しうることを念頭におくことが重要と考え, 報告した.
  • 河野 徹也, 大串 文隆, 馬庭 幸二, 中村 陽一, 葉久 貴司, 曽根 三郎
    1997 年 35 巻 10 号 p. 1113-1118
    発行日: 1997/10/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    症例は57歳男性. 約10年前より胸部異常影を指摘されていたが放置していた. 感冒様症状に続いて39℃の発熱, 呼吸困難, 低酸素血症, 胸部X線写真にて全肺野に間質性陰影を認めた. ステロイド療法と人工呼吸管理にて改善したが, 胸部間質性陰影は一部残存していた. その後感冒薬 (PL散) 投与にて同様の症状の出現を認め, この時のリンパ球幼若化試験にてPL散及びその成分であるアセトアミノフェンに対して陽性を示した. また初発時にアセトアミノフェンを含む新ルルA錠を服用していた. 肺病変の確定診断のために施行した胸腔鏡下肺生検ではリンパ球浸潤を伴う慢性間質性肺炎の像を呈し, 膠原病の肺病変が疑われた. 初診時からリウマチ因子陽性であり, ステロイド中断後に, 多発関節炎, 骨病変が出現したため慢性関節リウマチの診断基準を満たした. 以上からアセトアミノフェンによる薬剤性肺炎の合併によりリウマチ肺の増悪を来した症例と考えられた.
  • 塚越 正章, 大野 彰二, 杉山 幸比古, 北村 諭, 斉藤 建
    1997 年 35 巻 10 号 p. 1119-1123
    発行日: 1997/10/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    症例は56歳女性. 1990年に胸部X線写真上間質性陰影を指摘され, 近医に入院し鳩飼病と診断された. 鳩を処分し退院したが, その後労作性呼吸困難が出現, 増強した. 1995年1月, 精査加療目的にて当科に入院となった. 胸腔鏡下肺生検を施行し, 病理組織所見としては肉芽腫様病変と細気管支中心性に線維性病変と小型の蜂窩肺の所見を認めた. また, 上肺野に線維性病変が強く目立った. Ouchterlony 法では鳩血清に対し陽性反応を示し慢性化した鳩飼病と診断した. 鳩飼病は本邦において報告例が少なく, 更に慢性型での病理組織所見に関する報告例は数例であることから興味深い症例と考え報告した.
  • 木下 雅雄, 半澤 儁, 籾木 茂, 佐々木 一義, 橋爪 一光, 笠松 紀雄, 中村 晃, 白井 拓史, 小澤 亨史
    1997 年 35 巻 10 号 p. 1124-1131
    発行日: 1997/10/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    腫瘤を形成し, 鉄成分を主体とする稀な塵肺症を経験した. 症例は60歳の溶接に従事する男性. 主訴は胸部異常陰影. 胸部単純X線写真では左上肺野に3cm大の境界不明瞭な腫瘤陰影を認めた. 左上区に存在する境界不明瞭な腫瘤は, 胸部CT像では, 内部不均一でCT値は100以上を呈していた. 経気管支肺生検の結果は, 鉄の著しい沈着を主体とする器質化病変で, 悪性所見は見られなかった. 胸部MRI像は両側の肺野全体が無信号所見で, びまん性に磁性体の存在が示唆された. 以上より鉄による塵肺症が疑われたが, 腫瘤は増大傾向にあり悪性腫瘍を否定できないため, 審査開胸を行った. 病理組織学的検査の結果は生検結果と同様で, びまん性に鉄の沈着を認める肉芽様組織であり, 腫瘍性病変は見られなかった. 分析電子顕微鏡を用いた腫瘤の検索では, 鉄が主体であったが, 一部に珪素の存在が認められ, 腫瘤形成への関与が考えられた.
  • 重永 哲洋, 菅間 康夫, 北村 諭, 久力 権, 斎藤 建
    1997 年 35 巻 10 号 p. 1132-1135
    発行日: 1997/10/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    症例は52歳女性. 腹部膨満, 呼吸困難を主訴に来院. 胸部X線写真にて両側に胸水貯留を認め入院した. 胸部CTにて明らかな肺内病変や胸膜病変は認められず, また胸水は淡黄色で悪性細胞は検出されなかった. 血清中CA125 (2,000U/ml), SLX (65U/ml), NSE (12ng/ml) は高値を示した. このため悪性腫瘍に伴う胸水貯留も否定できないと考え胸腔鏡を施行したが, 中皮細胞の過形成の所見のみであった. 腹部CTにて骨盤腔内に一塊となった腫瘤を認め手術を行った. 腫瘍は病理学的に左卵管原発の低分化型腺癌であった. 以上より左卵管腺癌による Meigs 症候群と診断した. 報告では卵管癌は女性生殖器腫瘍の0.5%にすぎず, これによる同症候群の合併の報告も稀なため報告した.
  • 新垣 紀子, 新里 敬, 當山 雅樹, 宮里 明子, 比嘉 太, 大城 元, 兼島 洋, 斎藤 厚
    1997 年 35 巻 10 号 p. 1136-1140
    発行日: 1997/10/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    症例は61歳, 主婦. 40年前に肺結核に罹患. 1995年度の検診で石灰化を伴う左上肺野の不整形陰影を指摘された. 自覚症状がないため気管支鏡検査を施行されたが, 病変部の洗浄液塗抹では抗酸菌陰性, 経気管支肺生検では非特異的炎症所見のみであった. 画像上, 肺結核を否定しえず抗結核薬を開始された. 経過中, 1994年から1995年にぶどう膜炎, 顔面神経麻痺に罹患していたことが判明しさらにACE値上昇 (31.6IU/L), 気管支肺胞洗浄液中のリンパ球数増加, およびCD4/CD8比の上昇 (8.67) を認めサルコイドーシス (以下サ症) が疑われた. 再検討を行った胸部CTで気管支壁の肥厚, 肺血管像の不規則な腫脹, びまん性の小結節陰影などサ症として矛盾しない所見を認めた. 最終的に肝生検でサ症と診断し無治療で経過観察中だが異常陰影は改善傾向にある. 肺野型サ症で画像所見が肺結核再発と紛らわしく貴重な症例と思われたため報告した.
  • 1997 年 35 巻 10 号 p. 1141-1145
    発行日: 1997/10/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
  • 1997 年 35 巻 10 号 p. 1146-1149
    発行日: 1997/10/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
  • 1997 年 35 巻 10 号 p. 1150-1159
    発行日: 1997/10/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
  • 1997 年 35 巻 10 号 p. 1160-1161
    発行日: 1997/10/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
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