日本胸部疾患学会雑誌
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35 巻, 8 号
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  • 山崎 泰宏, 松本 博之, 武田 昭範, 高橋 啓, 佐々木 伸彦, 高橋 政明, 辻 忠克, 藤兼 俊明, 清水 哲雄
    1997 年 35 巻 8 号 p. 847-853
    発行日: 1997/08/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    肺高血圧を呈する慢性肺気腫患者8例を対象に, Pimobendan の肺循環およびガス交換におよぼす急性効果について検討した. Pimobendan の投与により, 肺動脈圧, 肺血管抵抗は有意に低下し, 心係数も有意に増加した. 体血圧, 体血管抵抗は有意な変化を認めず, 肺・体血管抵抗比は有意ではないが低下傾向を示した. 一方, 血液ガスではPaO2の低下は認めず, PaCO2も変化しなかった. 酸素供給は有意に増加し, 酸素消費量は有意の変化を認めなかった. 以上より, 慢性肺気腫患者の肺高血圧症において, 肺高血圧の軽減および組織酸素化の改善に有効性が示唆された.
  • 田辺 潤, 谷口 真, 肥後 敦子, 藤田 和恵, 大場 秀夫, 米山 浩英, 矢野 達俊, 木村 丹, 沖本 二郎, 松島 敏春
    1997 年 35 巻 8 号 p. 854-862
    発行日: 1997/08/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    市中肺炎 (CAP) 症例の臨床像を軽症群, 中等症群, 重症群の3群に分類し検討した. 1. 軽症群 (n=56): 抗菌薬のみで治癒したもの. 2. 中等症群 (n=34): 抗菌薬に加え酸素療法も必要としたが治癒したもの. 3. 重症群 (n=31): 人工呼吸を必要としたもの. その結果, 中等症以上のCAPの臨床的特徴として, 年齢は65歳以上の高齢者, 呼吸器または中枢神経疾患を基礎疾患として有すること, 症状では呼吸困難を訴えることバイタルサインの異常として脈拍数90/分以上の頻脈, 呼吸回数25回/分以上の頻呼吸を認めること, 血液検査ではAlb 3.5g/dl以下の低Alb血症, BUN 20mg/dl以上の高尿素窒素血症を認めること, room air 下の動脈血ガス分析でPaO2 60mmHg以下, SaO2 90%以下の低酸素血症を認めること, 胸部X線でより広い浸潤影を認めることであった. これらを認めた場合には重症の可能性を考え治療を開始する必要があると思われた.
  • 小林 淳, 北村 諭
    1997 年 35 巻 8 号 p. 863-866
    発行日: 1997/08/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    日本胸部疾患学会員の喫煙に関する意識を知るために, 1996年4月に開催された第36回日本胸部疾患学会総会で学会参加者3,725人を対象としてアンケート調査を行った. その結果, 回収数は2,411枚で回収率は64.7%であった. 習慣的喫煙歴は46.2%にみられ, 現在の喫煙率は22.7%で, 回答者の施設が全面禁煙であるものは7.5%にとどまった. 病院内での医師の分煙は40.5%と低率であるのに対して患者の分煙は78.9%で行われていた. また病院内でのタバコの販売は回答者の50.3%の施設で自動販売機によって, 55.2%の施設で売店によって行われていた. しかし78.5%の回答者が病院が無煙環境となることを希望し, 78.3%の回答者が医師として患者の喫煙行動に何らかの影響を及ぼすべきであると考えていた. 禁煙指導の意義を考える際に医師自身あるいは医療機関全体としての喫煙に関する姿勢を検討し, 日本胸部疾患学会員としての立場を再検討する必要がある.
  • 猪岡 望, 井上 彰, 進藤 百合子, 鈴木 沢耶, 小西 一樹
    1997 年 35 巻 8 号 p. 867-872
    発行日: 1997/08/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    症例は44歳, 男性, 気管支喘息を基礎疾患にもち, 慢性好酸球性肺炎を発症した. 発症時に好酸球多数を含む胸水貯留を認めたが, ステロイドの短期大量投与によって症状, 検査所見の改善をみた. 胸水および血清中のサイトカインを測定したところIL-5, IL-6, G-CSFの著明な増加を認め, またこれらのサイトカイン濃度は胸水中で血清中を大きく上回っていた. しかしながら同時に測定したIL-3, GM-CSF濃度は正常範囲にとどまっていた. 慢性好酸球性肺炎の発症機序は未だ不明であるが, 肺局所におけるIL-5, IL-6, G-CSFの過剰の産生がその発症に重要な役割を果たしており, これを抑制することが本疾患の治療法となりうることが示唆された.
  • 内田 和仁, 関口 繁男, 松田 州弘, 栗原 泰之
    1997 年 35 巻 8 号 p. 873-877
    発行日: 1997/08/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    バッファリンの関与が疑われた急性好酸球性肺炎の1例を報告した. 症例は21歳の大学生で1.5ヵ月前から喫煙をはじめた. 中学時代より, しばしばバッファリンを服用し, 今回呼吸困難が出現する前日にも2回服用した. 39度の発熱と強い呼吸困難を主訴に入院, 同日の気管支肺胞洗浄液の好酸球増多と, 胸部レントゲン写真で kerley's line を伴う広範なスリガラス影を認めたことより急性好酸球性肺炎と診断した. 抗菌薬やステロイド薬を使わずに自然軽快した. 入院時に, 末梢血および肺胞洗浄液のインターロイキン5値は高値を示した. 1週間後にはともに低下していたが, 肺胞洗浄液の好酸球増多は続いていた. バッファリンに対するリンパ球刺激試験が陽性だった. 急性好酸球性肺炎として報告されている症例の中に, バッファリン服用者が含まれており, 両者の関連が注目された.
  • 赤川 志のぶ, 蛇沢 晶, 宍戸 春美, 田村 厚久, 佐藤 紘二, 倉島 篤行, 毛利 昌史, 相良 勇三, 福島 鼎, 渡辺 尚
    1997 年 35 巻 8 号 p. 878-882
    発行日: 1997/08/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    健常人男性に右中葉の遷延性肺炎としてみられた肺ノカルジア症を経験した. 気管支鏡検査では悪性腫瘍を思わせるポリープ様病変が右B5biiを閉塞していた. 生検で糸状菌よりなる菌塊と判明し, Nocardia asteroides が培養同定された. 抗生剤治療に反応不良のため, 右中葉切除を施行したところ, ノカルジアの菌球が嚢胞状に拡張した気管支内腔に充満し, 一部はポリープ状となって周囲の気管支内に突出していた. 嚢胞壁の一部には潰瘍が形成され, 周囲肺にもノカルジアの散布をみとめた. 本例の難治性の原因は高度な菌球形成によると考えられた.
  • 松尾 圭祐, 荒木 雅史, 渡辺 洋一, 平木 俊吉
    1997 年 35 巻 8 号 p. 883-887
    発行日: 1997/08/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    症例は43歳女性. 喫煙歴なし. 気管支喘息の治療中で時々発作を繰り返していた. 子宮筋腫, 卵巣嚢腫の摘出術後経過観察中に血清CEA値が24.1ng/mlまで上昇したため, 悪性疾患の存在を疑い全身検索を行った. しかし胸部X線写真, 胸部CTにて気管支粘液栓の所見を認めるのみで悪性疾患は指摘されなかった. 気管支鏡検査では右肺下葉入口部に気管支粘液栓が認められ下葉入口部は閉塞していたが, 可視範囲粘膜に異常所見は認められなかった. 気管支粘液栓の除去目的でBALを施行したところ気管支の鋳型状の粘液栓が吸引され, BALF中のCEA値は6,100ng/mlと高値を呈していた. その後計5回のBALにより粘液栓は完全に除去され, 血清中およびBALF中のCEA値は著明に低下し喘息発作もなくなった. これらのことから気管支喘息による気道内におけるCEA産生亢進および気管支粘液栓内によるCEAの気道内長期貯留, 血管内への移行促進がその機序として考えられた.
  • 佐藤 哲也, 高田 信和, 土橋 ゆかり, 鈴木 光子, 大内 基史, 阿部 能明
    1997 年 35 巻 8 号 p. 888-893
    発行日: 1997/08/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    症例は25歳, 男性. 発熱および左胸部痛にて当院を受診し, 胸部X線写真で左肺門部に腫瘤影を認めた. 諸検査にても確定診断に至らず, 画像上前縦隔腫瘍が疑われ, 開胸手術を行った. 開胸時, 舌区は無気肺になっており, 腫瘤は前縦隔ではなく左S4に存在し, 同部を楔状切除した. 切除肺の病理組織標本で硫黄顆粒を認め, 肺放線菌症と診断した. 本邦における肺放線菌症報告例は, 1963~1995年の間に80例あり, 特に1980年以降は漸増傾向にある. 我々が集計した80例を臨床的に検討すると, 本症は40~50歳台の男性に好発し, 口腔内病変との合併が多く, 胸部X線写真では腫瘤影を呈する例が多い, などの特徴が認められた. また, 開胸手術による病理学的検索にて, 初めて確定診断に至る例が多かった. 診断に難渋する胸部X線写真上の腫瘤影では, 本症の可能性に留意すべきと考える.
  • 酒井 哲夫, 島田 政則, 石崎 武志, 中井 継彦
    1997 年 35 巻 8 号 p. 894-899
    発行日: 1997/08/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    症例は65歳男性. COPD急性増悪の再発にて人工呼吸管理となり, そのウィーニングに経鼻式ベンチレーター, BiPAP®を使用した1例を報告する. 安定期はH-Jの5度, 経鼻カニューラ酸素2L/min必要とし, 高炭酸ガス血症の程度はPaCO2 70Torr台であった. 右上肺野に軽度の浸潤影を認め, CO2ナルコーシスにて人工呼吸管理となる. Tピースによるウィーニングが困難で, 第6病日目に抜管し, BiPAP®による補助換気 (CPAP+PS) を行った. 抜管前後で呼吸困難なく, PaCO2は変化なかったことから, BiPAP®は呼吸努力の減負荷に役立ったと思われた. また, 気管切開術を回避することができた. 高炭酸ガス血症を伴うCOPD患者の人工呼吸器から離脱における非侵襲的陽圧換気補助の有用性を示唆する症例と思われた.
  • 近藤 薫, 小林 徹, 浦上 年彦, 春日井 敏夫, 岩田 全充, 杉野 安輝, 鈴木 由美子, 柴田 尚宏, 臼井 美穂
    1997 年 35 巻 8 号 p. 900-904
    発行日: 1997/08/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    甲状腺機能亢進症にともなう胸腺肥大の3例を経験した. 症例1は, 健診にて胸水を指摘され胸腺腫の合併が疑われた. 症例2は, 眼瞼下垂をきたし重症筋無力症 (Osserman I型) を併発した. 症例3は, 画像上胸腺肥大と縦隔リンパ節腫大を認めた. いずれも甲状腺機能亢進症をともない, まず抗甲状腺剤による機能正常化を計り, 症例1・2は, 拡大胸腺摘出術を施行した. 双方とも腫瘍性病変は見いだされず胸腺肥大であった. さらに甲状腺機能亢進症に対しては, 胸腺摘出術の効果は認めなかった. また症例2・3は, 抗甲状腺剤の投与による甲状腺機能の正常化にともない, 画像上胸腺肥大も改善された. 特に症例3は, 気管前リンパ節腫大を含め著明な改善がみられた. 甲状腺機能亢進症にともなう胸腺肥大は, 甲状腺機能亢進症の結果であって原因ではないと考えられた. それ故に外科療法を施行する前に甲状腺機能の正常化をはかり, しばらくの間, 腫瘤影の変化を観察してもよいと考えられた.
  • 小泉 昭, 橋本 修, 山村 祥智子, 森下 友起恵, 阿部 義明, 馬島 徹, 絹川 典子, 根本 則道, 河端 美則, 堀江 孝至
    1997 年 35 巻 8 号 p. 905-909
    発行日: 1997/08/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    胸腔鏡下肺生検にて診断が確定した necrotizing sarcoid granulomatosis の1例を報告した. 症例は28歳, 女性. 胸痛を主訴に来院し胸部X線上, 両側肺野に多発性の結節陰影を認め, 胸部CT上も両側肺野に非区域性で多発性の結節陰影を認めた. 気管支鏡下に擦過細胞診や経気管支的肺生検を行ったが確定診断が得られず, 胸腔鏡下肺生検を施行した. 組織学的には, 血管の内腔を閉塞するように結節性の肉芽腫が集簇し, 血管炎の所見も著明であり, necrotizing sarcoid granulomatosis (NSG) と診断した. 診断後プレドニゾロン投与により多発性結節陰影は速やかに消失した. NSGの診断には胸腔鏡下肺生検が有用であると考えられた.
  • 宮田 靖志, 岡野 良, 倉富 雄四郎
    1997 年 35 巻 8 号 p. 910-914
    発行日: 1997/08/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    症例は58歳, 女性. 平成7年5月, 咳嗽にて近医を受診. 胸部X線上, 右下葉の無気肺と左下肺の円形腫瘤陰影を指摘され来院した. 胸部CTにて上記の所見に加え, 右中間気管支内にポリープ状腫瘤を認め, 気管支鏡にて中間気管支膜様部に右下葉気管支を完全閉塞する表面平滑やや結節状の光沢を有するポリープ状腫瘤を認めた. 生検組織所見はB細胞性びまん性大細胞型非ホジキンリンパ腫であった. 肺外病変・縦隔リンパ節腫大は認められず肺原発悪性リンパ腫と診断した. 多剤併用化学療法が著効を示し完全寛解が得られた. 肺原発非ホジキンリンパ腫は稀であり, 本症の気管支病変および治療について考察を加え報告した.
  • 岸川 博文, 戸島 洋一, 徳留 隆博
    1997 年 35 巻 8 号 p. 915-920
    発行日: 1997/08/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    症例は74歳, 男性. 下肢の浮腫, 発熱, 倦怠感を主症状とし, 蛋白尿, 血尿, 白血球および血小板の増多, 貧血, 炎症反応の亢進があり, MPO-ANCAが高値であったため, microscopic PN を疑いステロイド治療を行ったところ症状は改善した. 治療後の腎生検では一部の糸球体に線維性半月体を認め壊死性糸球体腎炎の瘢痕性変化の所見であった. また両肺底に慢性間質性肺炎の像を呈していた. 退院約半年後に意識レベル低下, 栄養障害, 低Na血症のため再入院, 右肺に浸潤影が出現, 急速な呼吸不全の進行により第5病日に死亡された. 剖検で右肺は著明な肺胞内出血を伴うカンジダ肺炎であり, これが直接死因と考えられた. また両下葉に峰窩肺を呈する肺線維症, 下葉の一部の小動脈に細胞性血管炎, 腎および肝に瘢痕性血管炎を認めた. 本例は慢性間質性肺炎を伴う microscopic polyangiitis であけ, ステロイドにより血管炎の活動性は抑えられていたが日和見感染症に肺胞内出血を伴い死亡したと考えられる.
  • 小泉 知展, 山崎 善隆, 金木 利通, 平井 一也, 久保 恵嗣, 小林 俊夫, 関口 守衛, 吉村 一彦
    1997 年 35 巻 8 号 p. 921-925
    発行日: 1997/08/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    夏型過敏性肺臓炎は寒冷地方においては稀である. 今回寒冷地とされる長野県において初めてと思われる夏型過敏性肺臓炎の2例を経験したので報告する. 症例1は, 64歳男性で, 塗装業. 冬季でありながら高温多湿な職場にて発熱, 呼吸困難で発症した. 休職のみでは症状の改善が得られず, ステロイド剤の投与が必要であった. 症例2は, 51歳女性, 主婦. 築15年の木造の自宅にて咳嗽, 発熱, 呼吸困難で発症し, 入院にて症状は軽快した. 帰宅誘発試験が陽性であった. 両者とも Trichosporon mucoides, asahii 間接蛍光抗体価陽性で夏型過敏性肺臓炎と診断した. 両患者とも生活指導を徹底化し, 今までに再発を認めていない.
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