症例は25歳, 男性. 発熱および左胸部痛にて当院を受診し, 胸部X線写真で左肺門部に腫瘤影を認めた. 諸検査にても確定診断に至らず, 画像上前縦隔腫瘍が疑われ, 開胸手術を行った. 開胸時, 舌区は無気肺になっており, 腫瘤は前縦隔ではなく左S
4に存在し, 同部を楔状切除した. 切除肺の病理組織標本で硫黄顆粒を認め, 肺放線菌症と診断した. 本邦における肺放線菌症報告例は, 1963~1995年の間に80例あり, 特に1980年以降は漸増傾向にある. 我々が集計した80例を臨床的に検討すると, 本症は40~50歳台の男性に好発し, 口腔内病変との合併が多く, 胸部X線写真では腫瘤影を呈する例が多い, などの特徴が認められた. また, 開胸手術による病理学的検索にて, 初めて確定診断に至る例が多かった. 診断に難渋する胸部X線写真上の腫瘤影では, 本症の可能性に留意すべきと考える.
抄録全体を表示