現在, 国内で使用されている各種インバータ式装置について測定し, その特性の概要を知ることができた.1)省スペースインバータ周波数を高くする程, 高電圧発生装置の軽量, 小型化が可能となり, 重量は1/3〜1/10となった.2)インバータ周波数と管電圧脈動率現在, 市販装置のインバータ周波数は250Hz〜20kHzでかなり広い範囲の周波数が使用されているが, 当然の事ながら周波数が高い程, 脈動率は小さくなり理想波形である定電圧波形に近くなる.周波数一定で, 数百Hzの装置は管電流により脈動率が変化するため, mA当たりのX線強度が変化し, 低管電圧において特に著しくなる.周波数2〜5kHzで周波数可変にすることにより, 負荷の大小に関係なく, 脈動率をほぼ一定にすることができるので, mA当たりのX線強度を一定にすることが可能である.さらに軽負荷時の脈動率を減らすため, 入力電圧も変化させる装置では大負荷程, 脈動率が小さくなり, ほとんど定電圧波形とすることができる.インバータ周波数が20kHz程度になると1極当たり10m程度のケーブル使用で管電圧はほとんど定電圧となる.3)管電圧の立ち上がり, 立ち下がり特性投入時の管電圧立ち上がり時間は0.2〜1ms(管電圧の95%値)で, 従来の1次側制御の三相装置と比較するとかなりの進歩が見られるが, 1〜2msの短時間曝射まで線量との直線性を保つためには1ms以下で立ち上げる必要がある.立ち下がり特性は整流出力側の容量で決まる.したがって付加コンデンサを設けた装置では200mA以下の軽負荷になるとかなり立ち下がりが遅れてくるので, 短時間曝射の場合は可能な限り大きな管電流を選択すべきである.4)高精度の制御大電力の高速スイッチングが可能となり, さらに管電圧, 管電流のフィードバック制御により従来の単相, 三相装置と比較してはるかに高い精度で制御されるようになった.このようにインバータ式装置は従来装置では見られなかった多くの特長を有し, 本装置の開発は診断用装置として近年にない画期的な事である.今後, 高速スイッチング技術と大電力素子の開発はさらに急速に進歩すると考えられるので, これの導入によりここ数年で診断用X線装置は歯科用の小型装置から100kWの大型装置までインバータ式に移行し, 普及するものと思われる.終りに装置の提供, 測定の便宜を計っていただいた東芝, 島津製作所, 日立メディコ, シーメンス旭メディテック, 田中レントゲンの各社および日本鋼管病院, 都立駒込病院放射線科の各位に厚く御礼申し上げます.
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