無症状(検診)グループと有症状(患者)グループの生存率を比較することにより, マンモグラフィによる乳房集団検診の利益/損失計算をおこなった.集団検診の経験が3年と浅いため, 病院患者グループの生存率(約3000症例)を用いて計算をおこなった.すなわち, 検診グループ罹患者の乳癌を患者グループ乳癌のうち病理学的早期乳癌の範疇とし, 両者の生存曲線の面積差から, persons-year gainとpersons-year lostの比を求めた.この値に実際の検診で得られたファクターを乗じて利益/損失比を求めた.集団検診の質を病院検査の質と同等に保ち, しかも無症状の婦人のみを対象とした結果, 触知不能癌の発見率は患者グループの15倍であった.僅か824例の中から7例の乳癌が発見され(0.85%), この発見率は従来我が国で定説となっている値の10倍であった.何才からマンモグラフィによる集団検診をおこなうべきかは常に論議のまとである.我々の集団検診の成績では, 30才から検診を始めても, 3段階の損失評価の何れにおいても, 利益が損失を遥かに上回る結果となった.断定的な結論を得るには, 年齢別の乳癌発見率が定常値となるだけの検診数が必要であり, さらに研究を重る予定である.
抄録全体を表示