本シンポジウムにおいて総線量, 線量率, 平坦度, ファントム, 補償フィルタ, 補償部位などについてコンセンサスが得られたものと思う.しかし, 全身照射法のどれが最適であるか評価を下す段階でない.全身照射法の確立を目指すためにまず線量測定法, 線量評価など物理的な事柄を標準化, 最適化しなければならない.その意味でロングSAD法と2種類の移動法の問題点を取り上げた意義がある.総線量と線量率は生物学的立場から考察すべき問題であるが, 装置の性能, 治療室の占有時間にも関係し簡便で短時間で照射を行う意味から技術的問題点の一つである.寝台移動法, ムービングビーム法において線量率は制御の難しい問題であるがコンピュータの導入により精度が確かなものとなった.短時間で照射を行う点では寝台移動法が一歩進んでいる.線量評価点についても, 評価点をどこにするのか共通認識を持つ必要がある.骨盤部が実測も可能で線束中心に近いことから評価点として適している.線量表示もICRU(29)に準ずるなれば一点評価が妥当であろう.補償フィルタについて現在最も進んだものは, 全身のCT画像から作成する方法(Kiel大学)であるがわが国ではまだ実用化されていない.正確な補償フィルタほど設定が難しい.CT画像を利用したものは装置側に置ける程度の大きさでないと製作できない.当然位置設定が難しく, 幾何学的精度に不安がある.反面, 患者側に置く補償フィルタは大きくなり製作面からグローバルなものになる.2種類の移動法においても補償フィルタは最大の問題点である.要は何%の均等度にするかということで, ICRU(24)の勧告にある5%以内の線量誤差での全身均等照射は現実問題として困難である.±10%が妥当な均等度ではないか.しかし, 肺や水晶体, 線束中心線量は期待線量に対して5%以内の精度を目指さなければならない.BMTの前処置としてTBIは必要でないとする考え方もある.しかし, 最近の調査報告(厚生省, 柴田班)ではTBI施行例とTBI非施行例の同種骨髄移植を受けた白血病の2年生存率が69%と46%で有意な差(P=0.005)がでている.IPの発生率も19%と26%, 再発率は25%と41%で有意差はないがTBIの重要性を示唆している.TBIは決して新しい方法ではないが, 時代とともに新技術, 新素材を駆使して医療の要求に対処して行かねばならない.技術的諸問題を討論するわれわれ放射線技術学会の役割は大きい.最後に本シンポジウムを企画された野原大会会長に深甚の謝意を表するとともに, この趣旨にそってご報告いただいた演者の方々に厚くお礼申し上げて集約といたします.
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