【目的】深層学習によるモーションアーチファクト(以下,アーチファクト)削減のアプローチが脳MR画像に有効かを検証する.【方法】本研究ではアーチファクトを含んだ画像と含んでいない画像が学習データとして大量に必要である.臨床画像で学習データを集めるには多くの労力と時間を要して困難である.われわれは脳のアーチファクト画像をシミュレーションによって作成した.ボランティア20人の動きのない頭部画像を取得し,この画像を使用してアーチファクトの異なる画像をシミュレーションによって作成して深層学習を行う.得られた学習モデルのアーチファクト除去効果の検証は,別途テストデータを作成し,テストデータの入力画像と出力画像間のピーク信号対雑音比(peak signal-to-noise ratio: PSNR)と構造的画像類似性(structural similarity: SSIM)を3種類のデノイジング手法で比較した.使用したニューラルネットワークはU-shaped fully convolutional network(U-Net),denoising convolutional neural network(DnCNN)とwide inference network and 5 layers Residual learning and batch normalization(Win5RB)である.【結果】アーチファクト除去効果はU-Netが最も高く,SSIMの平均値は0.978, PSNRの平均値は32.5であった.【結語】本法は脳MRI画像の画質を劣化させずにアーチファクトを軽減できる有効な方法である.
【目的】本研究では,深層畳み込みニューラルネットワーク(deep convolutional neural network: DCNN)を用いて頭部単純X線の撮影精度を評価する方法を提案する.【方法】頭部ファントムを用いて頭尾方向に対し角度が異なる4方向(4カテゴリ)の画像データを取得した.撮影精度の指標である撮影角度,再撮影の適否についてDCNNの識別能力を検証した.DCNNにはsimple networkとVGG16を用いて入力画像サイズ,評価方法を変更し分類精度を検証した.【結果】5-fold cross-validationを用いた評価において比較的小さな入力画像サイズではsimple networkが99.75%,VGG16が80.00%を示した.【結語】本提案手法の分類精度が99.75%を示したことから,わずかな角度差と再撮影の適否について自動認識できる可能性が示唆された.
【目的】X線画像研究などにおいてヨウ素をX線被写体として容易に使用できるようにする目的で,ヨード造影剤に含まれるヨウ素がほぼ均一に付着したシートを作製する手法を開発した.【方法】最も推奨される手順は次のとおりである.(1)イオヘキソールを成分とする240 mg/mlのヨード造影剤原液を平らな面に約1.6 g添加する.(2)その造影剤を直径47 mmのメンブレンフィルタの2次側から浸潤させる.(3)約1分後に柔らかな紙などで余剰分を拭き取りそのまま自然乾燥させて使用する.【結果】この手法で形成したシートには約2.45 mg/cm2ヨウ素がほぼ均一に付着していることが確認された.ただし,周辺部は造影剤の凝集により若干高濃度になっているため,シート中央部の面積80%以下の部分を使用することが望ましい.【結論】このシートは重ねる枚数の調整によってさまざまなX線減衰率をもつ被写体を構成することができ,切断することにより空間的サイズや形状を任意に設定することができるため,ヨウ素を被写体とするX線画像研究や診断装置の性能管理などにおいて有効に使用されることが期待される.
【目的】Ethoxybenzyl(EOB)造影による増強効果比は肝線維化評価に有用である.増強効果比は肝臓に関心領域(region of interest: ROI)を設定して算出するため,ROIの設定方法が増強効果比に影響を及ぼす可能性がある.ROI設定方法の一つに,クイノーセグメントそれぞれにROIを配置する方法が挙げられるが,非常に多くの時間を要する.よって,各クイノーセグメントにROIを配置する方法に対し,再現性が得られるROI設定方法を検討する必要がある.【方法】クイノーセグメントそれぞれに一つのROIを配置する方法に対し,右葉2点,左葉2点の計4点,右葉,左葉に1点の計2点のROIを設定する方法で最もばらつきが少ないROI設定方法を検証する.ROIの大きさは1 cm2, 4 cm2,各配置領域内に収まる最大領域とする.【結果】増強効果比算出におけるROI設定方法において,ROI設定数は4カ所,かつ4 cm2以上のROIを設定することで再現性が保たれる.
【目的】生殖腺防護は,卵巣の位置や大きさに個人差があるため,遮蔽の際に体表からの位置が同定困難であり,防護用具が卵巣の位置に正しく配置されたか評価できない.そこで骨盤に対する卵巣の位置を明らかにし股関節正面,側面における生殖腺防護の有効性を評価した.【方法】MR装置で骨盤を撮影した画像から,卵巣の内縁と外縁,上縁,下縁,および骨盤の長軸と短軸,卵巣の深さを計測し,卵巣と骨盤との比に基づく卵巣の位置を算出した.骨盤のシェーマを作成し,卵巣の位置をシェーマの上に合成した.また,生殖腺防護用含鉛ゴムを使用した場合の遮蔽率を計算した.【結果】骨盤正面では卵巣は骨盤腔全体に存在していた.正面では遮蔽を左右大腿骨頭中心を結ぶ線まで尾側に配置することで,約88%遮蔽効果がある.側面では恥骨上肢から坐骨体へ遮蔽をすることで,非健側の卵巣の被ばくを99%低減することができる.しかし,生殖腺防護が上前腸骨棘を結ぶ線の高さでの配置の場合,左右の卵巣分布からの遮蔽率が13%程度となるため,防護具を使用するデメリットの方が大きくなる可能性がある.【結語】生殖腺防護は,防護具の形状による遮蔽率を指標として,防護具使用の有無を判断すべきである.
X線CT装置による三次元(3D)computed tomography(CT)検査や血管撮影装置のコーンビームCT検査によって得られる血管の3D画像は,診断や治療に広く利用されている.これらの血管の3D画像を利用して,臨床の場で検査に携わるスタッフや患者への説明および学生への血管解剖学の教育支援のためのステレオカラー血管解剖図を作成した.脳血管のように立体的に複雑な走行を示す血管は,単色では識別が困難なため,血管の分岐ごとに色分けすることにより解剖学的識別を容易にした.また,ステレオペア画像を立体視にすることで,立体的な血管走行を見ることができる解剖図にした·これまでの解剖学専門書や血管解剖学図譜では,全身の血管を色分けし,かつステレオ立体視できる全身血管の解剖図はなかったが,このステレオカラー血管解剖図によって,血管の立体的走行の観察,血管解剖学的識別を容易に行うことができるようになった.また,本血管解剖図は,利用する臨床や教育の場での要望に応じて追加改訂できるものとし,データを電子ファイル化し,電子媒体を通して放射線検査の場や在宅においても容易に血管解剖の立体観察ができるツールとした.
【目的】両側大腿骨頭置換術後の子宮頸がん症例を用いて,小線源治療時の輪郭描出に対する金属アーチファクト低減処理の有用性を検討した.【方法】治療期間内に4回の小線源治療が施行された1症例を対象とした.各治療回で取得された画像に,金属アーチファクト低減処理(single-energy metal artifact reduction: SEMAR)をしたSEMAR処理画像(SEMAR+)とSEMAR未処理画像(SEMAR−)の2種類のCT画像を用いて,放射線腫瘍医5名がhigh-risk clinical target volume(HR-CTV),膀胱,直腸について輪郭描出を行った.各々の輪郭に対して体積,Dice係数(DSC),dose volume histogram(DVH)を算出し,SEMAR処理の有無で比較を行った.【結果】膀胱の描出について,SEMAR+がSEMAR−よりも体積とDSCが有意に高くなった.HR-CTVと直腸については,体積,DSC, DVHからは,有意な差は認められなかった.【結論】両側大腿骨頭置換術後の子宮頸がん症例について,小線源治療計画CT画像に金属アーチファクト低減処理を使用することで,膀胱の輪郭描出を改善させることができた.