日本放射線技術学会雑誌
Online ISSN : 1881-4883
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78 巻, 5 号
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巻頭言
総説
  • 保吉 和貴, 大村 知己, 茅野 伸吾, 後藤 光範, 村松 駿, 本間 経康
    2022 年 78 巻 5 号 p. 449-463
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/05/20
    [早期公開] 公開日: 2022/04/11
    ジャーナル フリー

    Computed tomography(CT)装置において,CT値を決定する線減弱係数はX線エネルギーに依存して変化するため,エネルギーは直接的に画質に関係する.また,対象物の組成やサイズによって適切なエネルギーを利用することで,被ばく線量を抑えて優れた画質が得られることが指摘されている.しかし,エネルギーを変化させる代表的な因子である管電圧は,長らく120 kVpに固定されてきた.近年になって,低管電圧撮影やdual energy CTの普及により,異なるエネルギーで取得された画像を扱う状況が増加している.適切なエネルギーで撮影を行うためには,X線の減弱とCT画像形成過程に対するエネルギーの関与を理解する必要がある.そこで本稿では,はじめにX線の減弱に関する物理特性とエネルギーとの関係を整理した.次にエネルギーを変えて撮影されることが想定される状況としてヨード造影剤を使用した場合と三つの部位(頭部,胸部,四肢筋・腱)を取り上げ,エネルギーとCT画像の関係について考察した.

原著
  • 田淵 真弘, 木口 孝, 池長 弘幸
    2022 年 78 巻 5 号 p. 464-472
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/05/20
    [早期公開] 公開日: 2022/04/07
    ジャーナル フリー

    【目的】現在,医療用X線CTの分野において使用されているSNRは線形システムにおける局所的な画質評価に活用されているものの,画像全体の総合的な画質評価指標として活用されていない.また,X線CTにおいてはSNRの計算に必要な信号パワーを求めるための原画像(無雑音画像)を直接得ることができないため,どの従来法を用いても正確にSNRを求めることは不可能である.このため,本論文では,原画像を得られない状況下においても画像全体を評価できるSNRの新たな求め方であるSNR*を提案する.【方法】まず,同一撮像条件で得た一対の観測画像(有雑音画像)の共分散から求めた信号パワーと差分から求めた雑音パワーを用いて,SNR の推定値であるSNR*を求める.次に,検証実験により推定値であるSNR*の誤差を検証し提案法の正確性を証明する.続く実証実験により,実際の観測画像へ適用したSNR*の挙動と精度を確認する.【結果】検証実験において推定値であるSNR*値の真値に対する相対誤差は0.06%以下を記録し,実践においてSNR*のCV値は0.015以下と安定した精度を得た.【結語】X線CT画像のように観測画像しか得られず原画像を得られない場合においても,提案法はSNR計測を実現する.

  • 花田 洸一, 布施 拓, 藤崎 達也, 富田 史紘, 安江 憲治
    2022 年 78 巻 5 号 p. 473-483
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/05/20
    [早期公開] 公開日: 2022/03/28
    ジャーナル フリー

    【目的】入射電子エネルギースペクトルを直接求めることが難しいため,電子線の線量計算におけるモンテカルロ法では,線量分布を再現できない.本研究では,実測した線量分布と一致する深部量百分率(percentage depth dose: PDD)および軸外線量比(off-axis ratio: OAR)を計算するために用いた,Lévy分布をベースとした入射電子エネルギースペクトルを決定した.【方法】EGSnrcモンテカルロシミュレーションコードを用いて,実測したPDDと一致する位置および尺度パラメータを決定した.あわせて,公称エネルギーが4, 6, 9, 12, 15 MeVの計算したPDDOARについて,実測によるPDDとのガンマ解析を行った.【結果】位置パラメータを0.5, 尺度パラメータを0.001と決定し,入射電子エネルギースペクトルの決定式を求めた.計算によるPDDは,全領域で実測値と2 mm/2%以内で一致した.また,OARも同様に全領域で実測値と2 mm/2%以内で一致した.【結語】本研究では,Elekta社製リニアックにおける入射電子エネルギースペクトルの決定式を新たに示し,PDDおよびOARはガンマ解析で2 mm/2%以内であった.決定式を用いることで,精度の高いモンテカルロシミュレーションを実施することが可能となる.

臨床技術
  • 尾方 翔, 長友 大輔, 溝口 宏治, 手嶋 敏裕, 堀田 敦
    2022 年 78 巻 5 号 p. 484-491
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/05/20
    [早期公開] 公開日: 2022/03/24
    ジャーナル フリー

    【目的】Coronary computed tomography angiography(CCTA)において,心エコーの心機能からCT値を変動させる要因を推定し,造影剤注入条件を体重に加え心機能でも補正することで,済生会福岡総合病院のCCTAの目標CT値300–400 HUにコントロールすることである.【方法】CCTAをfractional dose(FD)21 mgI/kg/sで撮影した(従来群112例).冠動脈起始部での大動脈のCT値を測定し,心機能との相関関係を検証した.最も相関のあった因子から造影剤注入条件を補正し撮影を行い(補正群112例),造影効果と造影剤量について従来群と比較した.【結果】従来群のCT値は,平均400.8±51.5 HUであり,SV(r=−0.555)と最も高い相関であった.また,補正群では平均360±46 HUとなった.目標CT値となる症例は46%から74%と改善した.補正群の平均FDは18.5 mgI/kg/sであり,95%の被検者で造影剤を減量できていた.【結語】CCTAにおいて,心エコーで計測したSVは冠動脈の造影効果に影響を与える.造影剤注入条件を体重に加え心機能で補正することで,当院の目標CT値300–400 HUにコントロールできる可能性が示唆された.

  • 山下 祐美恵, 小野坂 哲, 大谷 侑輝, 米屋 勇佑, 谷 正司
    2022 年 78 巻 5 号 p. 492-501
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/05/20
    [早期公開] 公開日: 2022/04/01
    ジャーナル フリー

    強度変調放射線治療(intensity-modulated radiation therapy: IMRT)の評価点線量検証において,一般的に使用される吸収線量測定法(以下,絶対量測定法)に対し,基準照射とIMRTの測定電離量比を利用した評価点線量検証法が記述されている米国医学物理学会タスクグループ119を参考にした測定法(以下,TG119法)の有用性を評価した.対象は6 MV X線で強度変調回転照射(volumetric-modulated arc therapy: VMAT)を施行した頭頸部がん66プラン・肺がん46プランと,10 MV X線でVMATを施行した前立腺がん31プランである.三次元検出器を使用して各プランを絶対量測定法とTG119法で評価した.頭頸部がん,肺がん,前立腺がんにおける検証結果の平均と2SDは,絶対量測定法で0.129±2.185%,0.963±2.125%,0.259±2.019%,TG119法で0.952±2.039%,1.704±2.080%,0.524±1.274%となった.絶対量測定法とTG119法との結果の比は基準照射線量の誤差に相当した.測定手法が簡便であることを考慮すると,TG119法はより安定したVMATの評価点線量検証が可能である.

  • 荘司 学, 橘高 大介, 岡田 圭伍, 安田 光慶, 渡邊 裕之, 佐藤 久弥, 加藤 京一
    2022 年 78 巻 5 号 p. 502-510
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/05/20
    [早期公開] 公開日: 2022/03/30
    ジャーナル フリー

    安定冠動脈疾患に対する経皮的冠動脈形成術(percutaneous coronary intervention: PCI)は,ガイドラインにより,術前の検査で機能的虚血の存在が示されていることが算定要件となり,機能的虚血評価の重要性が強調されている.そのため,心臓カテーテル検査(coronary angiography: CAG)にて冠血流予備能比(fractional flow reserve: FFR)や瞬時血流予備能比(instantaneous wave-free ratio: iFR)を測定し,PCIの適応を判断している.また,冠動脈コンピュータ断層撮影(coronary artery computed tomography: CACT)より得られるFFR-CTも保険償還され,非侵襲的な虚血評価が注目されている.本研究では,軽,中等度狭窄と診断された患者のCACTデータを使用し,Ziostation2にて冠動脈支配領域解析を行い,得られた狭窄病変部以遠の左室心筋体積の左室心筋全体に対する割合(虚血左室心筋体積割合)と,CAG施行時に測定されたFFRを対比することで,CACTデータから機能的虚血情報を推定することが可能であるか検討した.結果として,虚血左室心筋体積割合はFFRと相関を示した(r=−0.57).また,FFR≤0.79のPCI群とFFR≥0.80の非PCI群において,虚血左室心筋体積割合を比較すると,PCI群のほうが有意に高値であった.FFRのカットオフ値を0.80とした場合,冠動脈支配領域解析における虚血左室心筋体積割合のカットオフ値は,ROC解析より30%であり,感度90.9%,特異度77.3%であった.これは,中等度狭窄病変遠位が支配する心筋体積が左室心筋体積全体の30%を上回る場合に虚血の可能性があると判断でき,30%未満では虚血の可能性は低いと判断できることを示し,CACTデータ解析が機能的虚血の診断の一助となる可能性が示唆された.

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