日本放射線技術学会雑誌
Online ISSN : 1881-4883
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78 巻, 8 号
8号
選択された号の論文の15件中1~15を表示しています
巻頭言
原著
  • 津田 規吏, 三井 宏太
    2022 年 78 巻 8 号 p. 809-818
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/08/20
    [早期公開] 公開日: 2022/06/21
    ジャーナル フリー

    【目的】本研究の目的は,逐次近似再構成(IR)法CT画像の解像特性と不均一領域におけるスライス面内のノイズ特性を評価することである.【方法】複数コントラストの信号(不均一領域)を有するファントムのCT画像を撮影線量を変えて取得し,異なる逐次強度設定で画像再構成した.同一条件で連続スキャンした画像の差分画像を用いてnormalized noise power spectrum(nNPS)を測定し,均一領域と不均一領域におけるノイズ特性を評価した.また,差分前の信号からtask transfer function(TTF)を測定し,解像特性とノイズ特性の関連を調べた.【結果】TTFが優れたタスク設定(高い撮影線量,弱い逐次強度,高いコントラスト)では,nNPSの高い空間周波数成分の相対的な増加を認め,解像特性とノイズ特性の関連がみられた.TTFが低下したタスクではタスクの違いによるnNPSの高い空間周波数成分の変化は小さくなる傾向を示した.【結語】測定したnNPSは各タスク設定下のTTFに依存した変化を示し,IR-CT画像の不均一領域におけるスライス面内のノイズ特性と解像特性は線形な画質特性に似た相関を有することが示唆された.

臨床技術
  • 谷 憲樹, 三尾 素平, 豊福 竜生, 前田 利宏, 井上 敏朗, 中村 裕範
    2022 年 78 巻 8 号 p. 819-828
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/08/20
    [早期公開] 公開日: 2022/06/27
    ジャーナル フリー

    脳主幹動脈狭窄および閉塞性疾患においてstretched exponential modelが脳循環予備能(cerebrovascular reserve: CVR)を評価しうるかどうかを明らかにするため,われわれはstretched exponentialパラメータとsingle-photon emission computed tomography(SPECT)を比較した.本研究では,片側性脳主幹動脈狭窄および片側性閉塞性疾患患者29名が解析された(男性25名,女性4名;平均年齢,69±11歳).患者はNormal CVR(CVR≥30%),Moderate CVR(10%≤CVR<30%)およびSevere CVR(CVR<10%)に分類された.Stretched exponential modelからdistributed diffusion coefficient(DDC)とα,monoexponential modelからapparent diffusion coefficient(ADC),SPECTからCVRと安静時cerebral blood flow(CBF)が両側中大脳動脈領域で計測され,患側/健側比はそれぞれの画像から算出された(rDDC,rα,rADCおよびrCBF).rDDCはNormal CVRと比較してSevere CVRで有意に高かった(P=0.003).rDDCは患側CVRと有意な負の相関が認められた(rho=−0.31, P=0.009).rDDCは安静時rCBFと有意な相関が認められなかった(P=0.34).われわれは,rDDCの上昇が障害されたCVRと関連することを示した.Stretched exponential modelを用いた拡散強調画像は血行力学的障害を評価する可能性がある.

  • 大下 悠樹, 竹内 野々子, 寺本 篤司, 近藤 征史, 今泉 和良, 齋藤 邦明, 藤田 広志
    2022 年 78 巻 8 号 p. 829-837
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/08/20
    [早期公開] 公開日: 2022/07/08
    ジャーナル フリー

    【目的】悪性腫瘍の中で,肺がんによる死亡者数は最も多い.最近は自身の余命に関心をもつ患者が増えてきており,これから先も増加すると考えられる.肺がんの診断には,詳細な観察ができるCT検査が欠かせないものとなっているが,CT画像から患者の余命を正確に予測することは困難である.そこで本研究では,畳み込みニューラルネットワークと機械学習法を用いてCT画像から肺がんの患者の予後予測を行う手法の検討を行った.【方法】本研究では173症例の肺がん患者のCT画像を対象とした.まず,個々の症例にて腫瘍サイズが最大となるスライスを選択し,畳み込みニューラルネットワークを利用し特徴量を抽出した.次に,information gainによる特徴量選択を行い,識別器により生存または死亡の予測を行った.識別器にはartificial neural networkとNaïve Bayesを用い,1年後から5年後における1年間隔で生存または死亡を予測した.【結果】3分割交差検証法にて予測精度の評価を行ったところ,1~5年後のすべての時期において80%前後の予測精度が得られた.また,生存曲線による評価では,実際の生存曲線と同様の傾向が得られることを確認した.【結語】これらの結果より,畳み込みニューラルネットワークによる特徴抽出と機械学習による分類処理がCT画像による肺がん患者の予後予測に有効であることが示された.

  • 小野 孝明, 市川 肇, 加藤 大貴
    2022 年 78 巻 8 号 p. 838-845
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/08/20
    [早期公開] 公開日: 2022/07/06
    ジャーナル フリー

    【目的】胸部ポータブルX線画像における体動による不鋭に対する観察者と体動検出ソフトの検出能を評価することを目的とした.【方法】4度の傾斜面で胸部ファントムを移動させ,不鋭の大きさの異なる胸部ファントム画像を取得した.ファントムを動かす方向は,縦方向(レールの走行に対して胸部ファントムの上下が平行になるように設置),横方向(レールの走行に対して胸部ファントムの左右が平行になるように設置)の2方向とした.6名の診療放射線技師が画像の不鋭に対するreceiver operating characteristic(ROC)実験を行った.その結果を用いて縦方向と横方向の不鋭の検出能を比較するためにROC解析を行い,更に感度および特異度を算出した.併せて,画像取得時に体動検出ソフトを有効にして,その検出能を観察者の検出能と比較した.【結果】縦方向および横方向の体動検出に対する観察者のROC曲線下面積(area under the curve: AUC)の平均値は,それぞれ0.918および0.943であり,方向による検出能の統計的有意差は認めなかった.感度,特異度ともほぼすべての項目において体動検出ソフトウェアのほうが観察者よりも高いスコアを有していた.【結論】体動検出ソフトウェアは,胸部ポータブルX線撮影の体動検出における有用な支援ツールであることが示唆された.

  • 森 一也, 土田 拓治, 関口 諒
    2022 年 78 巻 8 号 p. 846-855
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/08/20
    [早期公開] 公開日: 2022/07/01
    ジャーナル フリー

    【目的】DRLs 2020によりIVRの線量管理は,装置表示線量が用いられることとなった.RDSRによる線量管理の有用性が報告されているが,施設によっては導入が困難である.今回,システム構築が簡便である放射線科情報システム(RIS)を活用した線量管理ソフトウェアを開発し,IVRにおける線量管理の有用性について検証を行った.【方法】2020年7月から9月までに実施した当院のIVR(心臓領域141件,その他領域149件)を対象とした.解析項目は,患者基本情報(身長,体重,BMI),患者照射基準点線量,および面積空気カーマ積算値とし,診療放射線技師12名による解析を行った.解析方法は,手作業による解析およびソフトウェアによる解析とし,各対象における解析時間を比較した.また,ソフトウェアの解析精度の検証も行った.【結果】心臓領域およびその他領域における解析時間は,手作業で,4180.25±1161.79 s, 4366.92±1393.19 s,ソフトウェア使用で,36.25±15.32 s, 38.08±17.34 sとなり,有意な解析時間の短縮を認めた(p<0.05).また,心臓領域およびその他領域におけるソフトウェア使用時の解析精度は,96.30%,98.89%であった.【結論】IVRにおける線量管理において,RISを活用したソフトウェアは有用である.

  • 吉浦 貴之, 舛田 隆則, 佐藤 友保, 菊原 由香利, 小林 由枝, 石橋 徹, 奥 貴行, 吉田 理人, 船間 芳憲
    2022 年 78 巻 8 号 p. 856-863
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/08/20
    [早期公開] 公開日: 2022/07/20
    ジャーナル フリー

    【目的】64列multi detector computed tomography(MDCT)を使用し,小児冠動脈(coronary computed tomography angiography: CCTA)画像を後ろ向きに心電図同期,心電図非同期に分け評価し,冠動脈の描出率について検討したので報告する.【方法】2015年1月から2019年3月の期間にCT angiography検査を行った3歳以下の小児100例を後ろ向きに登録した.心電図同期撮影で検査を施行した50例を同期撮影群,心電図非同期撮影で検査を施行した50例を非同期撮影群とし,2群に振り分けた.CT装置は64列MDCT装置(Light speed VCT)を使用した(管電圧:80 kV,管電流:50–300 mA自動管電流制御機構使用,noise index:40,スライス厚:0.625 mm,回転時間:0.4 s/rotation,ピッチファクタ:0.24(同期撮影群),1.375(非同期撮影群)).心電図同期はretrospective法を使用した.被ばく線量を比較するため,コンソールに表示されるCT volume dose index (CTDIvol), dose length product(DLP)を記録した.各症例の冠動脈curved planer reconstruction(CPR)像の視覚評価を小児循環器専門医2名の医師にて3段階にスコア化し,その特徴を検討した.【結果】同期撮影群でのCTDIvol, DLP(中央値(最小値–最大値)はそれぞれ,6.74 (1.05–11.97) mGyおよび79.87 (15.90–146.65) mGy·cmであった.非同期撮影群においてはそれぞれ0.51 (0.39–0.95) mGyおよび8.15 (6.30–17.50) mGy·cmであり,有意に非同期群のほうが低い値となった(p<0.05).同期撮影群での冠動脈起始部および末梢部の描出率は,右冠動脈88%および54%,左前下行枝84%および58%,左回旋枝66%および30%であった.非同期撮影群では,それぞれ右冠動脈52%および0%,左前下行枝56%および0%,左回旋枝32%および0%となり,同期撮影群は非同期撮影群よりも有意に描出率が高い結果となった(p<0.05).【結語】64列MDCTにおいて,小児冠動脈の描出率を小児CCTA検査において心電図非同期撮影と心電図同期撮影での冠動脈の描出率を明確にした.小児冠動脈における正確な診断を行ううえでは,心電図同期撮影を行うべきである.

特別企画 会員インタビュー~学会に貢献された人々~
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