【目的】リング型半導体SPECT/CT装置を用いた骨SPECTにおけるblock sequential regularized expectation maximization(BSREM)法の至適再構成条件を画質,定量評価の精度から決定する.【方法】SIM2 bone phantomにおいてBSREM法のパラメータのγ値,β値を変化させた再構成画像についてcoefficient of variation(CV),recovery coefficient(RC),contrast noise ratio(CNR),SUVmaxとRMSESUVmaxの測定,算出を行った.それらに優れた再構成条件を用いて臨床画像を作成し,視覚的な評価を行った.【結果】γ値を高くするとCVとRCが上昇し,β値を高くするCVとRCが低下した.CNRはリング型装置のいずれの再構成条件でも,すべての球で検出可能閾値の5を上回った.定量評価に関しては,γ値5.0,β値0.3–0.9とγ値10,β値0.3–0.9においてAnger型装置よりも定量評価に優れた.これらの再構成条件で再構成した臨床画像のうち,γ値5.0,β値0.9が正常骨の均一性と,隣接する病変の分離能に最も優れた.【結語】リング型半導体SPECT/CT装置における骨SPECTのBSREM法を用いた再構成条件として,γ値5.0,β値0.9が画質および定量評価において適していると考えられた.
【目的】国際放射線防護委員会(International Commission on Radiological Protection)Publication 118では,白内障のしきい線量が0.5 Gyに引き下げられ,放射線治療計画用computed tomography(CT)でも線量の最適化が求められている.本研究では,放射線治療計画用フラット天板や頭部固定具の有無,位置決め画像撮影時のX線管位置(以後,撮影方向)に応じたCT用自動露出機構(CT-automatic exposure control: CT-AEC)の動作特性が水晶体線量に与える影響とその最適化による水晶体線量の低減について評価した.【方法】撮影方向による画像ノイズおよび水晶体線量を測定した.基準を右側面から左側面(right-left: RL)方向とした.【結果】顔面から後頭部(anterior-posterior: AP)方向の平均standard deviation値は,4.1±0.1となり,基準値としたRL方向の3.9±0.1より大きかった(P<0.05).水晶体の吸収線量は,AP方向で68.5±1.7 mGy, RL方向で73.3±2.3 mGyとなり,AP方向において8%減少した(P<0.01).【結語】AP方向で撮影することで,水晶体被ばく線量が低減する可能性が示唆された.
【目的】SPECTのSUVの算出にbecquerel calibration factor(BCF)が必要となる.放射性核種とコリメータの違いによるBCFの経時的変化を検証した.【方法】毎月,デリバリ製剤のシリンジおよび分注した線源の放射能をドーズキャリブレータで実測し,プラナー収集した画像のガンマ線カウントからBCF(cps/MBq)を算出した.また,44カ月におけるBCFの最大値との相対誤差を求めた.【結果】BCFの平均値は,123I-LPHRで46.0,131I-MELPでは124.1を示した.どの核種,コリメータでもBCFの標準偏差は3.4以下で,検出器間の差も小さかった.BCFの相対誤差は99mTc-LEHR, 123I-MELP, 67Ga-MELPおよび131I-MELPで10%以下,123I-MELPでは5%以下であった.123I-LEHRと123I-LPHRの相対誤差はやや高くなったが,7カ月以降は低下して10%以下となった.【結語】プラナー収集で求めるBCFは,多種の核種とコリメータで,経時的な安定性および再現性があった.
【目的】本研究では仮想現実(virtual reality: VR)空間にてX線透視時の患者からの散乱線の進行方向を方向ベクトルとして可視化する教材を作成することを目的とした.【方法】モンテカルロコードParticle and Heavy Ion Transport code System(PHITS)にて,X線透視時の散乱線の方向ベクトル分布を作成した.三次元可視化ソフトParaView(Kitware, Clifton Park, NY, USA)にて,散乱線の方向ベクトル分布を赤色の矢印として可視化した.VRヘッドセットであるMeta Quest 3(Meta Platforms, Menlo Park, CA, USA)を用い,散乱線の方向ベクトル分布を確認した.【結果】VR空間にて散乱線の進行方向を三次元的に可視化し,任意の方向から確認できた.また,線量分布と重ね合わせることで防護板の効果を確認できた.【結語】VR空間では,透視装置,患者ファントム,防護板と自分の視点の位置関係と紐づけて散乱線の進行方向を把握できるため,教育教材として有用であると示唆される.
【目的】MRI検査室に磁性体が持ち込まれた事例についてインシデントレポートを用いて調査し,インシデント発生の傾向を把握することである.【方法】2012年から2021年の間に,MRI検査室から報告されたインシデントレポートを集計し,磁性体の持ち込みに関する報告を対象とした.持ち込み発生率,原因,MRI経験年数,発生時期,持ち込まれた磁性体の内訳について調査した.【結果】MRI検査室から報告されたインシデントレポート248例のうち,磁性体の持ち込みに関する報告は26例であった.MRI経験年数1年以内の技師からの報告が半数を占め,第2四半期に発生件数が多かった.原因としては確認不足,知識不足の順に多い結果となった.【結語】MRI経験年数が短いほど,発生件数が多く,特に第2四半期に多い傾向を示した.
【目的】診療放射線技師の業務における焦りは,インシデント発生の一因である.本研究の目的は,診療放射線技師の焦りの生起要因と業務への影響を検討することである.【方法】焦りの生起要因(26項目)と業務への影響(11項目)について5件法で尋ねる質問紙調査を実施し,得られた148名の回答に対して探索的因子分析を行った.【結果】焦りの生起要因については「共に働く医師・看護師を意識」,「時間を意識」,「患者を意識」の3因子が,業務への影響については「検査中の確認不足」,「検査前後の確認不足」の2因子が抽出された.また,回答者の経験年数を加えた重回帰分析の結果,検査前後の確認不足には経験年数の短さと共に働く医師・看護師および時間への意識の強さが,検査中の確認不足には共に働く医師・看護師への意識の強さが影響していた.【結語】本研究より,診療放射線技師業務における焦りの生起要因と業務への影響について明らかになった.