日本臨床外科学会雑誌
Online ISSN : 1882-5133
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59 巻, 5 号
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  • 1998 年 59 巻 5 号 p. 1179-1189
    発行日: 1998/05/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
  • 伊佐 勉, 野村 謙, 中本 尊, 山内 和雄, 兼城 隆雄, 長嶺 信治, 大田 守雄, 川畑 勉, 石川 清司, 源河 圭一郎, 草野 ...
    1998 年 59 巻 5 号 p. 1190-1194
    発行日: 1998/05/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    肺切除術後患者における開腹手術18例を経験したので報告する.肺切除術は一側肺全摘術2例,肺葉切除術15例,肺区域切除術1例で,開腹手術は右開胸開腹胸部食道全摘術,膵頭十二指腸切除術,胃亜全摘術などであった. 18例中8例(44.4%)に術後合併症を認め,呼吸器合併症3例,循環器合併症4例などであった.そのうち3例が術死したが,いずれも緊急手術例または全身状態不良症例であった.しかし,気道内清浄化,呼吸訓練等の術前準備を徹底した待機手術においては,一側肺全摘術後患者の膵頭十二指腸切除術,胃亜全摘術や,左肺上葉切除術後患者の右開胸開腹胸部食道全摘術においても重篤な合併症もなく経過良好であった.肺切除術後患者においても的確な術前評価を行い,気道内清浄化,呼吸訓練などの術前準備を徹底し慎重な周術期管理を行えばmajor surgeryも可能であった.また,術後は循環器合併症のリスクも高くなる可能性が示唆された.
  • 田中 邦哉, 鬼頭 文彦, 金村 栄秀, 松尾 恵五, 石山 暁, 小尾 芳郎, 福島 恒男
    1998 年 59 巻 5 号 p. 1195-1202
    発行日: 1998/05/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    消化器手術後創感染の発症要因を上部102例と下部104例を対象に臨床諸因子,細菌学的検索より検討した.
    閉創時創面擦過細菌培養の陽性頻度は,上部では感染群,非感染群で差はなかったが,下部では感染群(83.3%)が非感染群(57.4%)に比較し高率で(p<0.05),好気性グラム陰性桿菌,嫌気性菌が高率であった(p<0.05).
    感染創からの分離菌は上部ではグラム陽性球菌が,下部では嫌気性菌が高率であり,閉創時培養との一致率は下部(33.3%)が上部(8.3%)に比較し高率であった.一方,上部では培養陰性例からの感染発症(41.7%)が下部(16.7%)に比較し高率であった.
    以上より,上部では術中創汚染の創感染発症への関与は乏しく,下部では消化管常在細菌による術中創汚染が感染発症に深く関与すると考えられた.
  • 岡本 友好, 二川 康朗, 武内 孝介, 高橋 直人, 横田 徳靖, 椎野 豊, 中村 純太, 中里 雄一, 恩田 啓二, 稲垣 芳則, 久 ...
    1998 年 59 巻 5 号 p. 1203-1207
    発行日: 1998/05/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    Redox理論に基づいた術後輸液管理の有用性について検討したので報告する.高侵襲度または肝障害合併手術症例の中で,術後2週間以内にいったんAKBRが0.7未満に低下した36例を対象とした.このうちRedox理論に基づいた輸液管理を施行した21症例(A群)と施行しなかった15症例(B群)について,術後経過について検討した. A, B群間に術前の年齢,性別と手術種類のばらつき, ICG 15分値,術中出血量,手術時間に有意差を認めなかった.術後低下したAKBRが0.7以上に回復した経過良好例はA群13/21 (62%), B群, 5/15 (33%)で有意差を認めなかったが, 2臓器以上の障害合併症例においてはA群, 4/6 (67%),B群, 1/10 (10%)と有意差を認めた.従来困難であった術後代謝状況をAKBR測定によって把握することが可能となり,術後2臓器以上に合併症を認める場合, Redox理論に基づいた糖負荷が必要であると思われた.
  • 本田 一郎, 渡辺 敏, 永田 松夫, 藤田 昌宏
    1998 年 59 巻 5 号 p. 1208-1213
    発行日: 1998/05/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    胃癌の進行程度(以下ステージ分類)は1993年の改訂で大幅に変更された. D4郭清を元にした新しいステージ分類は,一部の積極的な施設を除いて,運用は困難な状況にある.欧米では, D2郭清さえも疑問の声が出ている.本論文は現行,旧ステージ分類と,リンパ節転移の程度を,リンパ節転移個数に置き変えた旧ステージ分類とを比較検討した.転移個数を0個, 1~5個, 6~10個, 11個以上の4群に分類し,旧ステージ分類のリンパ節転移程度として用い, 3つのステージの累積生存率をみた.対象は, 1,464例の切除例中, P0, H0で粘膜内癌(m)とt4症例を除いた879例である.累積生存率は全症例にて行った.現行分類はステージIII bとIV a間に有意差がない.多変量解析では,現行分類と転移個数を組み入れた旧ステージ分類に有意差が見られた.旧ステージ分類の転移程度の分類に変わり,リンパ節転移個数分類を採用してもよい時期に来ていると考える.
  • 佐藤 美信, 丸田 守人, 前田 耕太郎, 内海 俊明, 遠山 邦宏, 奥村 嘉浩, 升森 宏次, 小出 欣和, 松本 昌久, 黒田 誠
    1998 年 59 巻 5 号 p. 1214-1221
    発行日: 1998/05/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    1988年から9年間に当科で経験した多発癌を除く,原発巣を切除した低分化腺癌21例の臨床病理学的特徴について,高分化腺癌472例,中分化腺癌162例と比較検討した.低分化腺癌の占居部位は高分化腺癌,中分化腺癌に比べて右半結腸に多かった.低分化腺癌の壁深達度は85.7%がseまたはa2以上で, 28.6%がn3以上の進行例であった.また66.7%がDukesC以上, 57.1%がstage3b以上の進行例で,いずれも高分化腺癌に比べて有意に高率であった.低分化腺癌の肝・肺転移の占める割合は高分化腺癌,中分化腺癌と差を認めなかったが,原発巣手術時,再発時で腹膜播種が多かった.低分化腺癌の71.4%で根治度Aの手術が可能で,これらの5年生存率は77.8%で,高分化腺癌,中分化腺癌と差がなかった.低分化腺癌は発見時には局所進展およびリンパ節転移において進行例を多く認めるが,十分なリンパ郭清を含む切除手術により長期生存が得られるものと考えられた.
  • 竹田 明彦, 今関 英男, 高山 亘, 鈴木 孝雄, 中島 光一, 前田 智子, 落合 武徳, 磯野 可一, 坂本 昭雄
    1998 年 59 巻 5 号 p. 1222-1228
    発行日: 1998/05/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    1990年から96年までに肉眼的周囲臓器浸潤を認めた原発性大腸癌切除は45例(大腸癌全切除例の17.4%)で23例(51.1%)に組織学的浸潤を認めた. Si, Ai症例の原発巣占居部位は左側結腸に多く,浸潤臓器は膀胱,腹壁,小腸,子宮の順であった.浸潤臓器別の肉眼的・組織学的浸潤の一致率は胃,小腸などの消化管および子宮が最も高く,膣,膀胱,腹壁の順であった.腫瘍占居部位別の一致率は下行結腸が最も低く,上行,横行結腸で高い傾向を認め,上部直腸では100%であった.切除標本における臨床病理学的因子と組織学的浸潤の関係を検討すると,リンパ節転移率のみに有意な相関性を認めたが,一般に進行度に平行して組織学的一致率も高くなる傾向を認めた.周囲臓器浸潤大腸癌症例における組織学的浸潤の有無と累積生存率との相関から根治度A・B症例では積極的な合併切除が予後向上につながるものと考えられた.
  • 植竹 正彦
    1998 年 59 巻 5 号 p. 1229-1239
    発行日: 1998/05/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    われわれは,肛門機能検査をa)痔核根治術施行群: 40例(Whitehead法31例, Milligan-Morgan法9例), b) 保存的療法施行群: 43例, c)対照群: 40例に, Whitehead法術後愁訴の検討を69例に実施した.その結果, (1)肛門管最大静止圧(以下MRP)は特に重度の痔核で高値を示した.一方,高齢者では重度の痔核で他群に対して有意に低値を示した. (2)最大随意収縮圧は各群間に有意の差を認めなかった. (3) Whitehead法術後にMRPは当初低下を示したが,その後対照群の値に帰した.肛門管長の短縮は認められなかった. (4) Whitehead法術後の愁訴,術後障害は何れも重度のものは認められなかった.以上より, (1)内肛門括約筋の過緊張(MRPの高値)が内痔核の成因になる事が示唆され,また内肛門括約筋の加齢による脆弱化も一因となる事も考えられた. (2) Whitehead法は術式を十分に理解すれば合併症も少なく,痔静脈を全切除するため重度痔核に対して有用な術式と考えられた.
  • 羽田野 和彦, 伊藤 重彦, 角田 順久, 松尾 誠司, 木戸川 秀生, 田中 賢治, 井手 誠一郎, 田川 努, 小林 誠博, 吉田 一也 ...
    1998 年 59 巻 5 号 p. 1240-1245
    発行日: 1998/05/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    肝細胞癌破裂32例に対し,臨床所見,予後に関連する因子,切除例に関する検討を行った.症状としては腹痛が最も多く, 24例 (75.0%) にみられたが, shockを伴うものは7例 (21.9%) と比較的少なかった.初期治療としてTAEが20例 (62.5%) に施行され,その後,全身状態の改善を待って3例に肝切除例を施行した.再出血は6例 (18.8%) にみられた.破裂後の予後は不良であり,非切除例における平均生存期間は130日であった.最長生存例は切除例であり, 8年4カ月生存した.肝硬変合併,びまん型腫瘍,門脈腫瘍栓陽性, PT<70%,T-Bil≥2mg/dl, Alb<3g/dl群の予後は他群に比較し有意に不良であり,これらの因子により肝癌破裂症例の予後を推測することが可能であると考えられた.
  • 森 匡, 宗田 滋夫, 橋本 純平, 吉川 幸伸, 中根 茂, 大森 健
    1998 年 59 巻 5 号 p. 1246-1249
    発行日: 1998/05/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    本邦でも成人鼠径ヘルニアに対しmeshを用いた術式が普及してきたが,われわれは1992年4月よりmeshを使用したいろいろな術式を試みてきた.その中でplug法を160例経験したので他の術式と比較検討した. 1988年1月から1996年12月までに当科で経験した成人鼠径ヘルニア385例を対象とした.その内訳はBassini法143例, McVay法12例, Lichtenstein法50例, Stoppa法13例, laparoscopic hernioplasty 5例 (TAPP 3例, TEPP 2例), 胃癌手術のため開腹時に施行したpreperitoneal approach法2例, plug法160例である. plug法は他の術式に比し良好な結果を得,特にPerFix mesh plugを使用した137例では平均手術時間32.2±12.2分,再発率1.3%, 合併症は持続的痔痛2例,血腫1例という好成績であった.以上の結果より本法は成人鼠径ヘルニアに対する標準術式として推奨できると思われた.
  • 森崎 善久, 佐野 晋司, 古家 隆司, 中村 栄秀, 藤野 啓一, 石川 雅久
    1998 年 59 巻 5 号 p. 1250-1253
    発行日: 1998/05/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    過去18年間に経験した毛巣洞症例30例を臨床的に検討した.年齢は18歳から37歳,平均23.8±5.1歳で,男性29例,女性1例であった.男性29例は全て陸上自衛官であった.発生部位は全例が仙骨尾部であった.術前診断は28例はPilonidal Sinusであったが, 2例は痔痩と感染性粉瘤であった.初発症状は圧痛を伴う腫張が13例と最も多く,続いて腫瘤が10例,痔痛のみが4例および排膿が3例であった.病悩期間は3日から180カ月,平均13.8カ月であった.治療法は28例に対して広範切除と一次縫合を行い,残る2例は切開排膿のみであった.切除術を施行した28例中14例に創の〓開が生じ,うち2例は術後30日以上の入院を要した.よって,症例によっては縫合法の工夫が必要と考えられた.
  • 迫 裕孝, 大坂 芳夫, 土屋 邦之, 井岡 二朗, 田部 志郎, 中根 佳宏
    1998 年 59 巻 5 号 p. 1254-1258
    発行日: 1998/05/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は57歳,男性で,慢性腎不全のため約17年前より血液透析を受けていた. 2~3年前から腎性骨異栄養症の症状が強くなったため,上皮小体4腺,計600mgの全摘および自家移植術を施行した.しかし,血清Ca値およびintact-PTHの高値が持続するため,第5腺の存在を疑い, 99mTc-MIBIシンチグラムを施行したところ,左上縦隔に強い集積を認めた.初回手術時,この腺は超音波検査,CT検査, 99mTc-201Tlサブトラクションシンチグラムでも確認できていなかった.再手術を施行したところ,同部位に3.2×1.6×1.2cm, 2,650mgの結節状の過形成上皮小体が発見された.腎性上皮小体機能充進症の場合,異所性上皮小体や過剰腺の発見のために99mTc-MIBIシンチグラムは有用であると思われた.
  • 金子 雅宏, 森本 健, 木下 博明, 若狭 研一
    1998 年 59 巻 5 号 p. 1259-1262
    発行日: 1998/05/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    ほぼ全域が壊死に陥った葉状腫瘍は極めて稀であるが,その2例を経験したので報告する.症例1は53歳女性.右乳房の7.0×6.Ocm大の緊満弾性,境界明瞭,可動性良好な有痛性腫瘤を主訴とし来院.皮膚に著明な発赤を認め癌を疑った.しかしmammography, 超音波検査で癌特有の所見を欠き,術中病理診断で良性の腫瘍と診断されたため,腫瘍を含めて大きく切除した.症例2は19歳女性,左乳房の2.5×2.2cm大の境界不明瞭な有痛性腫瘤を主訴とし来院. mammography, 超音波検査では腫瘤が検出されず,局所麻酔下に腫瘍摘出術を行った.いずれも病理組織学的にほぼ全域が壊死に陥った葉状腫瘍であった.広範囲の壊死を伴う乳腺葉状腫瘍はphysicalに癌と類似所見を呈するが,補助診断法で癌特有の所見を呈さないため通常の手順で診断を進めばよい.葉状腫瘍の壊死の可能性を知ればその診断がより容易となる.
  • 大徳 和之, 大出 華子, 長谷川 善枝, 関根 智久, 高嶋 一敏, 加固 紀夫, 鈴木 宗平
    1998 年 59 巻 5 号 p. 1263-1266
    発行日: 1998/05/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    異所性乳癌は稀な疾患であるが,そのほとんどが,腋窩部に発生している.前胸部に発生した異所性乳癌は本邦での報告はほとんどない.今回われわれは前胸部に発生した異所性乳癌を経験したので報告する.症例は46歳女性. 1996年1月に左側胸部のしこりに気付き,近医受診.近医にて前胸部のしこりも指摘され,側胸部の摘出生検のみうけたところ転移性リンパ節でありadenocarcinomaの診断であった.全身的に原因検索を行うも,消化器系,婦人科系には異常はみられず,当科紹介入院.穿刺吸引細胞診にてclass IVを得,異所性乳癌または潜在性乳癌疑いにて手術施行した.術中迅速標本にてinvasive ductal carcinomaの診断であったので,非定型的乳房切除術を施行する.術後標本の検討により異所性乳癌であることが判明している. 1997年9月現在患者は再発の兆候は見られず健在である.
  • 上久保 康弘, 青木 秀俊, 大場 淳一, 吉田 俊人, 安田 慶秀
    1998 年 59 巻 5 号 p. 1267-1271
    発行日: 1998/05/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    急性心筋梗塞に合併した心室中隔穿孔はいまだ手術成績が不良な疾患の一つである.従来施行されてきたDaggett法は梗塞心筋を切除しパッチにて再建するものであるが,術後高率に低心拍出症候群を呈し,これが最大の死亡原因である.われわれは当科で経験した,急性心筋梗塞に合併した心室中隔穿孔の2例に対し, Komeda, Davidらが提唱する心膜パッチを用いた左室形成術, “Endocardial patch repair with infarct exclusion”を用いた.いずれも心筋梗塞急性期に手術を施行し, 1例に冠動脈バイパス手術を同時施行した. 1例に術後遺残短絡を合併したが,血行動態には大きな影響を及ぼさなかった.本術式は心機能温存,心室瘤形成予防,術後出血の軽減等に有利であると考えられるが,心膜パッチをドーム状に縫着するため,遺残短絡の発生に注意が必要であると考えられた.
  • 大楽 耕司, 西 健太郎, 杉 和郎, 江里 健輔, 亀井 敏昭
    1998 年 59 巻 5 号 p. 1272-1276
    発行日: 1998/05/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    縦隔腫瘍は日常診療においてしばしば経験する疾患である.今回,傍気管と傍食道の2カ所に発生した気管支嚢胞の稀な1例を経験したので報告する.症例は51歳,男性.検診で胸部X線上異常陰影を指摘され当科受診となった.受診時の胸部X線では右上縦隔に辺縁平滑な腫瘤陰影を,胸部CTで右上縦隔に径3cm大の辺縁平滑なsoft tissue massをそれぞれ認めた.MRIでは連続性のない径4cm大の腫瘤を上縦隔に2個認め, T1強調像で高信号, T2強調像で極めて高信号,ガドリニウムによる造影効果は認めず嚢胞が疑われた.気管支嚢胞の診断下に摘出術を施行した.両腫瘤とも摘出は容易であった.嚢胞の内容は粘稠ゼリー状で,術後の病理組織診断では両者とも気管支嚢胞と診断された.本症例では頸部~胸部MRI(冠状断像)により頸部食道の病変をも指摘できた.本疾患に対しては多発例があることを念頭におき,術前検査には十分な配慮が必要と考えられた.
  • 金沢 成雄, 森内 博紀, 永江 隆明, 向井 憲重, 椙原 美昭, 山口 昇
    1998 年 59 巻 5 号 p. 1277-1280
    発行日: 1998/05/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    転落事故による急性期外傷性横隔膜ヘルニアの1例を早期に診断し救命しえたので考察を加え報告した.本症例は肋骨骨折,坐骨骨折,頭蓋骨骨折を合併し,受傷後早期よりショック症状を呈した.また,来院時の胸部X線写真で左横隔膜の挙上を認め,胸部CT検査で外傷性横隔膜ヘルニアを疑った.直ちに開腹し,脱出臓器を腹腔内へ還能するとともに損傷していた脾臓を摘出した.横隔膜破裂部の修復は,非吸収性の縫合糸で結節縫合を行った.本症例は脾臓損傷にもかかわらず,特に腹部症状を認めなかったが,急性期外傷性横隔膜ヘルニアの早期診断には頻回の身体所見および,経時的胸部X線のチェックが重要で胸部CT検査も極めて有用な補助検査である.
  • 森永 秀夫, 山下 巌, 斉藤 文良, 三浦 二三夫, 斎藤 寿一
    1998 年 59 巻 5 号 p. 1281-1285
    発行日: 1998/05/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    横行結腸癌を合併したきわめて稀な,間膜軸性胃軸捻転を伴う全胃,広範囲横行結腸嵌頓食道裂孔ヘルニアに対して手術を施行し,良好な経過をたどった1例を経験したので報告する.症例は88歳,女性で,主訴は心窩部痛.心電図にて心房細動,胸部X線写真にて異常陰影を認めたため,超音波検査, CT,上下部消化管造影を施行.横行結腸癌,胆石を合併し,間膜軸性胃軸捻転を伴った全胃,広範囲横行結腸嵌頓食道裂孔ヘルニアと診断した.右半結腸切除術,胆嚢摘出術,食道裂孔右脚縫縮術,胃体部前壁固定術および幽門形成術を施行した.術後経過は良好で,心房細動は消失,画像でも異常所見認めず,第34病日に退院した.
  • 飯塚 昌志, 山田 康雄, 柿崎 健二, 斎藤 俊博, 山内 英生, 國井 康男
    1998 年 59 巻 5 号 p. 1286-1289
    発行日: 1998/05/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は67歳,男性で,気管支喘息および慢性肺気腫による呼吸不全のため,当院呼吸器科に入院中,突然,腹痛が出現,出血性ショック状態に陥ったため,緊急上部消化管内視鏡を施行したが,特に出血を疑わせる所見はなかった.腹部造影CT上,腹腔内および肝被膜下への造影剤の漏出を認め,肝実質からの出血が疑われたため,緊急血管造影を施行した.右胃動脈に3個の動脈瘤が存在し,この1つから腹腔内への出血を認めた.止血用コイルによるTAEを施行し,止血が確認できたが, 1時間後再出血をきたしたため,緊急開腹術を施行し,右胃動脈瘤を含め,右胃動脈を約3cm切除した.
    胃動脈瘤破裂の報告は自験例も含め, 24例であり,ほとんどが開腹術を施行されている.しかし,全身状態が低下している患者に対してはTAEおよび血管造影が第一選択となる場合もあると考えられる.
  • 中瀬 一, 関川 敬義, 森 義之, 河野 浩二, 飯塚 秀彦, 松本 由朗
    1998 年 59 巻 5 号 p. 1290-1294
    発行日: 1998/05/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    良性幽門狭窄症に対する胃空腸側々吻合術後48年目に発生した吻合部癌の1例を報告する.症例は72歳男性. 48年前(1945年)幽門狭窄症のため胃体上部大彎に胃空腸側々吻合術が施行された. 1993年12月胃空腸吻合部の潰瘍辺縁に生検で高分化型腺癌を認め,翌年3月22日,吻合部空腸を含め胃全摘術を施行した.病理組織検査では吻合部の2カ所に潰瘍を認め,その1つからは印環細胞癌,他からは中分化型腺癌をそれぞれ認め,癌部周囲の胃粘膜下にはGastritis Cystica Polyposa (GCP)様の所見を認めた.胃切除を伴わない胃空腸吻合術後に発生した胃癌の報告は,自験例を含め本邦では33例であり,胆汁の逆流と発癌との関係を強く示唆する症例である.
  • 中坪 直樹, 山口 博紀, 佐藤 宗勝, 奥村 稔, 高橋 敦
    1998 年 59 巻 5 号 p. 1295-1299
    発行日: 1998/05/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    Crohn病は,口腔から肛門までの消化管を非連続的に全層にわたって侵し,潰瘍や線維化およびリンパ球形質細胞を主体とする細胞浸潤をともなう非乾酪性肉芽腫性炎症である.合併症として狭窄,瘻孔形成,膿瘍形成,出血などがあるが,消化管穿孔はまれとされる.しかし,本症の診断例の増加に伴い本邦でも穿孔例の報告が増加している.本症の穿孔は,治療経過中ばかりでなく穿孔性腹膜炎で発症するいわゆる急性発症例も少なくなく,腹部救急診療の領域においてもその診断,治療の重要性が高まっている.われわれは,前駆症状を認めず,突然の腹痛,発熱で発症し穿孔性腹膜炎の診断で緊急手術を施行した際, Crohn病が疑われた34歳,男性の1症例を経験した.本症の急性腹症としての意義を含め,文献的検討を行った.
  • 吉岡 輝史, 山田 恭司, 千佐 俊博, 奥村 権太, 丹生谷 直樹, 岩崎 光彦
    1998 年 59 巻 5 号 p. 1300-1304
    発行日: 1998/05/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    腸管出血を契機に回腸穿孔をきたした小腸Crohn病の1例を経験した.患者は23歳,男性. 16歳時にCrohn病と診断されていた.暴飲暴食後,腹痛出現し内科救急外来受診.腸閉塞と診断され入院加療となった.翌日,下血,筋性防御出現し腹部CT検査にてfreeairを認めたため緊急手術を施行した.開腹所見では血性腹水を中等量認め,回腸末端部より口側約70cmの腸間膜側に穿孔部が存在した.穿孔部より口側の腸管は拡張が著明で内部は大量の血塊で満たされ,さらに穿孔部周囲の腸間膜が腫大し内部に血塊が存在した.回腸部分切除術を施行.肉眼標本では腸間膜側の縦走潰瘍の一部が穿孔していた.手術・病理所見より潰瘍周囲粘膜下層の血管が破綻し,腸間膜内・腸管内に血塊が形成され腸管内圧が上昇し穿孔が起きたと推察した.腸管出血を伴ったCrohn病の穿孔は稀であると思われたため報告した.
  • 松田 光弘, 権田 厚文, 藤井 佑二, 勝浦 康光, 冨木 裕一, 櫻井 秀樹
    1998 年 59 巻 5 号 p. 1305-1308
    発行日: 1998/05/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は52歳,女性.柿を3カ月間にわたり毎日15個以上摂取していたが,腹痛,嘔吐が出現し近医受診.腸閉塞の診断で当院紹介され入院となった.小腸造影検査で下部小腸に閉塞がみられ,同部位の超音波検査で4.5cm大の音響陰影を伴う腫瘤を認めた.柿胃石による腸閉塞を疑い手術を施行した.回盲部より40cm口側の回腸にクルミ大の異物が嵌頓していたため,異物直上の回腸を切開し,異物を摘出した.結石分析では,タンニン酸が主成分であり,柿胃石と診断した.
    胃石による腸閉塞の術前診断は難しく,開腹してはじめて診断がつくことが多い.嗜好品の入念な問診を行うことはもとより,小腸造影検査を行い,閉塞のみられた部位の超音波検査で音響陰影を伴う高エコー像が認められた場合は,胃石による腸閉塞を念頭におき,診断治療することが望ましいと思われた.
  • 竹長 真紀, 内藤 伸三, 古池 幸司, 森田 晋介, 黒郷 文雄
    1998 年 59 巻 5 号 p. 1309-1311
    発行日: 1998/05/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    Meckel憩室は,胎生期の卵黄腸管の遺残で剖検例の1~2%に見られ,症状を呈するものは8~22%とされている.その80~90%は,小児期に発症し,成人発症例は稀である.今回われわれは,成人に発症したMeckel憩室軸捻転の1例を経験した.症例は, 29歳男性,腹痛を主訴に来院し,精査加療のため入院となった.入院2日目に腹膜刺激症状が出現したため,腹膜炎の診断にて緊急開腹手術を施行した.開腹すると,回盲部より約60cm口側の回腸に憩室の軸捻転による憩室壊死をおこしていたため,憩室切除ならびに腹腔ドレナージを行った.術後経過は順調で15日目に軽快退院となった.
  • 石田 秀之, 龍田 眞行, 川崎 高俊, 桝谷 誠三, 宮 章博, 里見 隆, 吉岡 寛康, 星田 義彦
    1998 年 59 巻 5 号 p. 1312-1316
    発行日: 1998/05/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は59歳,女性.嘔吐,体重減少を主訴に当院を受診した.入院後保存的治療をするも症状は軽快せず.胃十二指腸透視および注腸造影に異常なく,血清CEA値と血清CA19-9値が高値を示した.小腸2重造影で空腸癌と診断し手術を施行した.
    最近10年間に本邦で論文報告された自験例を含む145例の原発性小腸癌を集計したところ, 16.8%の症例で血清CEA値が上昇し, 37.1%の症例で血清CA19-9値が上昇していた.特に血清CA19-9値は22.8%の症例で100U/ml以上の高値を示した. CA19-9は小腸癌の有用な腫瘍マーカーとなり得ることが示唆された.
  • 能浦 真吾, 古川 順康, 中口 和則, 岡島 志郎, 陶 文暁, 吉原 渡
    1998 年 59 巻 5 号 p. 1317-1322
    発行日: 1998/05/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は72歳の女性,右下腹部痛を主訴に当院内科を受診した.腹部エコーにて,回盲部腫瘤を認め,注腸造影検査により,虫垂は造影されず盲腸にポリープ様の欠損像を認めた.腹部CTで,盲腸の壁肥厚,先端は嚢胞性変化を認め,当科紹介となった.腹部所見は,右下腹部に圧痛を認め,鶏卵大の腫瘤を触知した.血液検査にて貧血を認め,腫瘍マーカーはCEAが高値を示していた.以上より,虫垂癌と診断し,右半結腸切除術を施行した.回盲部は一塊となり,虫垂周囲には膿瘍形成が認められた.病理組織検査の結果,虫垂原発の高分化型腺癌と診断した.
    化学療法は施行せず,術後約2年経過するが,再発の徴候を認めず経過観察中である.
    原発性虫垂腺癌は,頻度は0.08%と稀な疾患で,症状は急性虫垂炎と類似するため,術前診断に難渋することが多い.若干の文献的考察を加え,報告する.
  • 金 達也, 島野 吉裕, 四宮 洋一, 中野 博重
    1998 年 59 巻 5 号 p. 1323-1327
    発行日: 1998/05/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    卵巣粘液嚢胞腺癌原発の腹膜偽粘液腫に虫垂粘液嚢胞腺癌が併存した1例を経験したので若干の文献的考察を加え報告した.
    患者は65歳の女性で下腹部痛と下腹部膨満感を主訴に来院した.腹部超音波検査,腹部CT検査の結果,左卵巣嚢腫が原発の腹膜偽粘液腫と診断し,手術を施行した.超手拳大の左卵巣嚢腫が破裂し,内部よりゼリー状粘液が腹腔内にびまん性に広がっていた.左卵巣嚢腫摘出,虫垂切除を行い,腹腔内の粘液塊を可及的に除去した後,補助療法として低分子デキストラン溶液およびシスプラチンを腹腔内投与した.病理組織学的検査では左卵巣,虫垂ともに粘液嚢胞腺癌の像を呈していた.手術時の肉眼所見,組織所見より総合的に判断して両者は独立して発生した腫瘍であると考えられた.
    患者は術後7年以上生存しておりデキストランとシスプラチンによる補助療法が有効であった.また卵巣原発の腹膜偽粘液腫においては虫垂の同時切除が必要であると思われた.
  • 栗原 毅, 小島 康知, 貞本 誠治, 中塚 博文, 羽路 一, 谷山 清己
    1998 年 59 巻 5 号 p. 1328-1331
    発行日: 1998/05/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    原発性早期虫垂癌の術前診断は極めて困難であり,術後の病理組織学的検索によって初めて癌と診断される場合が多い.今回われわれは1986年7月から1996年12月までの10年6ヵ月間に虫垂原発の早期癌を2例経験したので報告する.症例1,症例2とも急性虫垂炎の診断にて虫垂切除術を施行.症例1は病理検査にてm癌であったが,切除断端陽性であったため,後日回盲部切除術D2を施行した.症例2は術中虫垂根部に腫瘤性病変を認めた為,根部まで完全に切除.摘出した虫垂根部に扁平隆起性病変を認め, sm癌と診断.後日回盲部切除術D2施行. 2症例とも追加切除標本に残存腫瘍組織も,リンパ節転移も認めなかった.
    以上2症例より術中肉眼所見の重要性と,成人の虫垂炎症例では,悪性腫瘍も考慮した病理学的検索が必要であると考えられた.
    また1997年7月までに検索し得た本邦の原発性早期虫垂癌19例に上記2症例を加えて,若干の考察を加えた.
  • 神谷 紀之, 望月 康久, 菊池 光伸, 円谷 彰, 山本 俊郎, 杉山 貢
    1998 年 59 巻 5 号 p. 1332-1335
    発行日: 1998/05/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は71歳,18年来の血液透析中の女性.腹膜炎の診断で開腹手術を行ったところ盲腸と上行結腸に限局性壊死を認めた.右半結腸切除術を行い,肉眼的に血流が良好だった小腸横行結腸端々吻合で再建した.しかし術後4日目の透析中に血圧低下を来し翌日腹痛が出現,縫合不全の診断で再開腹し横行結腸人工肛門造設術を行った.
    切除腸管は病理組織学的に動脈閉塞は認めず,非閉塞性腸間膜虚血(NOMI)による壊死型虚血性腸炎と診断した.また縫合不全の原因は,透析中の血圧低下による腸間膜灌流圧低下と考えられた.
    慢性血液透析患者に発症した虚血性腸炎は本邦では過去15年間に57例の報告があった.平均透析年数は8.2年で, 58.7%が右側結腸であった.主訴は腹痛のみが多く,下血を伴わないことが多かった.壊死腸管切除後は人工肛門を造設し2期的吻合を行うことが望ましく,周術期には透析による血圧低下に注意が必要である.
  • 馬渕 秀明, 西口 完二, 谷川 允彦, 中田 英二, 奥沢 正昭, 太田 雅之, 井上 仁, 児玉 慎一郎
    1998 年 59 巻 5 号 p. 1336-1340
    発行日: 1998/05/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    家族性大腸腺腫症(FAP)に合併するデスモイドは完全摘出が困難で高頻度に再発をきたすため,その治療に難渋させられる.今回われわれは消化管吻合部にデスモイドが発生した非常に稀なFAPの1例を経験したので報告する.症例は同一家系に難治性デスモイドの発生を認める28歳男性のFAP症例で,大腸全摘,回肛吻合および一時的回腸人工肛門造設術を行った.待期的に人工肛門閉鎖術を行ったところ,術後腸閉塞症を併発したため再開腹した.閉塞機転は人工肛門閉鎖後の吻合部に生じたデスモイドであったため再吻合は断念し,吻合部切除と回腸瘻造設を行った.近年積極的な手術療法によりFAPの大腸病変の予後は改善されたが,さらなる予後向上のためには高率に合併し不良な予後因子の一つであるデスモイドに対する対策が重要で,特に本例の如く難治性デスモイドの発生を有するFAP家系に対してはデスモイドの発生予防を考慮した術式選択が肝要と考える.
  • 坂本 洋一, 村上 貴久, 三品 壽雄, 加藤 紘之
    1998 年 59 巻 5 号 p. 1341-1345
    発行日: 1998/05/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は45歳,男性. 1994年5月に進行大腸癌の診断で横行結腸切除術を施行した.以後,外来通院中に1995年5月にS状結腸間膜再発を認め低位前方切除術を施行した.しかし1996年1月に骨盤腔内再発が確認され入院となった.家族歴は3親等以内に癌患者が7人. 1996年2月7日に両側上下臀動脈をコイル塞栓し大腿動脈より各対側の内腸骨動脈にカテーテルを留置し,リザーパー本体を下腹壁皮下に埋没した. 2月19日からCDDP, 5-FU, leucovorinの動脈内投与を開始, 4月1日より6週間で合計50Gy/25回の放射線外照射を施行した. 5月初旬には腫瘍も軟化し5月21日の大腸内視鏡検査では腫瘍の瘢痕化を確認した.照射部の中等度皮膚炎以外は著明な合併症もなく6月5日に退院した.以後,外来で週1回の投与を施行した. 1997年現在,腫瘍は増大傾向だが一時的にでも症状緩和,腫瘍の縮小が得られたことは有効と判断した.
  • 島田 謙, 上野 聡一郎, 大島 行彦, 中村 秀夫, 比企 能樹, 柿田 章
    1998 年 59 巻 5 号 p. 1346-1349
    発行日: 1998/05/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は70歳男性.下血・肛門痛を主訴に来院した.注腸検査および大腸鏡検査にて直腸の2型の腫瘍を指摘された.生検にて直腸未分化癌と診断,腹会陰式直腸切断術を施行した.病理組織学的検査にてneuroendocrine characterを有する未分化癌と考えられ, small cell undifferentiated carcinoma (SCUC)と診断された.後日施行した電子顕微鏡による検索では,神経内分泌顆粒を認め,直腸内分泌細胞癌と診断した.
    消化管内分泌細胞癌は,生物学的悪性度が高く予後不良とされている.肺小細胞癌に形態が類似してはいるが,多剤併用の化学療法が有効であったとの報告は少ない.生検で低・未分化癌であれば,内分泌細胞癌を疑い,現在,有効な治療法は無いが,リンパ節転移や血行性転移を考え,手術や化学療法も含めた集学的な治療が必要と考えられた.
  • 柴田 佳久, 加藤 岳人, 松尾 康治, 尾上 重巳, 鈴木 正臣, 千木良 晴ひこ
    1998 年 59 巻 5 号 p. 1350-1353
    発行日: 1998/05/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は65歳男性. 20年来の痔瘻があり, 56歳時に痔瘻の手術を受けた.その後は硬結がみられたのみであった.術後9年を経て1996年肛門出血を主訴とし,他医で肛門部腫瘍を指摘され紹介された.肛門左側に痔瘻手術創を含む4cm大の硬結を伴う腫瘤を認めた.皮膚には腫瘍の露出はなかった. CT・MRIでは管外性発育を思わせる腫瘍として描出され,直腸肛門鏡所見では肛門管粘膜は一部びらん様で,生検にて表層粘膜に腺癌を認めた.肛門癌と診断し,肛門左側周囲組織を広範に切除する腹会陰式直腸切断術(D2)を行った.切除標本では,腫瘍は一部粘膜に露出しIa様で,その中心に痔瘻手術痕に一致し歯状腺付近に開口する瘻管がみられ管外へと延びていた.病理組織学的には,腫瘍の中心に瘻管を有し,開口付近の粘膜は高分化腺癌であり,瘻孔の深部は粘液癌であった.痔瘻手術後に発生した痔瘻癌と診断した.
  • 渡辺 学, 炭山 嘉伸, 武田 明芳, 柁原 宏久, 中村 光彦, 碓井 貞仁
    1998 年 59 巻 5 号 p. 1354-1357
    発行日: 1998/05/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    門脈臍部に発症した特発性血栓症に対し,肝円索より内視鏡を挿入することにより,低侵襲に血栓摘除術を行った1例を経験した.症例は73歳,女性.他院での腹部超音波検査にて門脈内臍部に腫瘤を認め,平成8年1月当科受診.各種画像診断より門脈血栓症と診断し,肝円索より門脈内視鏡を用いて血栓摘除を行った.術中の迅速病理診断では良性の病変であり,固定検体の病理診断でも同様であった.また,血栓摘除部分に狭窄や変形を認めることなく安全に手術を終了することができた.術後経過良好で,現在も門脈内に腫瘤像の再発や狭窄像も認めていない.本手技は低侵襲で門脈内の観察が可能であり,門脈血流遮断時間の短縮にもつながり,不必要な肝機能障害を回避でき有用な治療法の一つになると考えられた.
  • 唐土 善郎, 植村 忠廣, 丸山 修一郎, 大谷 順, 山本 雅彦, 曽田 益弘
    1998 年 59 巻 5 号 p. 1358-1363
    発行日: 1998/05/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    胃神経内分泌細胞癌は,腺癌と比べ, 5Fu, Mitomicin (以下MMC)等の抗癌剤の有効性が低く,肺の小細胞癌に準じて, Etoposid, Cisplatin等が適応と考えられる.特に肝,腹膜への転移が多く,さらに転移後の進行が早いため,著しく予後が悪い.肝転移巣は腺癌では大半がavascularないしhypovascularであるのに対し,神経内分泌細胞癌ではhypervascularなものがある.これは肝動脈塞栓術の適応と考えられる.この症例はEtoposid, Cisplatin等の動注と肝動脈塞栓術により,術後1年9カ月の生存を得た.早期に転移巣を発見し,治療を開始するためには, 3カ月ごとの超音波またはCT等の画像診断が必要と思われる.
  • 西島 弘二, 薮下 和久, 木村 寛伸, 前田 基一, 小西 孝司, 辻 政彦
    1998 年 59 巻 5 号 p. 1364-1368
    発行日: 1998/05/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は42歳の男性.多発性肝転移を伴う横行結腸癌に対し,横行結腸切除術,肝動脈内tubingを施行した(H2, P0, se, n0,tub1, ly0, v0).術後2カ月間, MMC, 5-FUによる持続肝動注化学療法を施行したところCT上肝転移巣は消失し, CRと判定された.術前CEA値も17.5ng/mlより正常値に復し,以後UFT400mg/日経口投与にて経過観察を行った.術後2年3カ月目にCEA値が17.7ng/mlと上昇し, CTにて肝S6の転移巣が判明したため,肝S6部分切除術,再度の肝動脈内tubingを行った.術後5カ月間, 5-FU, MMC, ADMによる肝動注化学療法を施行したところ, CEA値は正常値に復した.以後, CEA値, CTによる経過観察を続けているが,初回手術後12年間,再燃,再発の徴候は認めていない.
  • 中根 茂, 宗田 滋夫, 橋本 純平, 吉川 幸伸, 森 匡, 大森 健, 大嶋 正人
    1998 年 59 巻 5 号 p. 1369-1373
    発行日: 1998/05/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    術後高CO2血症が遷延した腹腔鏡下胆嚢摘出術の2例を経験したので報告する.症例1: 44歳の男性.右季肋部痛と黄疸を繰り返していた.胆石を指摘され,腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行した.術中PETCO2はそれほど高くなかったが覚醒中にPETCO2は上昇し術後3日後まで続いた.約1年7カ月後肺炎と無呼吸のため入院した.この入院中にミトコンドリア病による中枢性の肺胞低換気と診断された.約2年後に下肢筋力低下のため再入院した.その後呼吸状態は悪化し挿管され,最後は十二指腸潰瘍からの穿孔性腹膜炎にて死亡した.症例2: 65歳の女性で症例1の母親である.背部痛と右季肋部痛,全身倦怠感を訴えていた.腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行したが息子と同様の術後経過を示した.睡眠時の無呼吸に対し夜間経鼻的持続陽圧呼吸が行われ睡眠時無呼吸と倦怠感は改善した.
  • 谷合 央, 長谷川 洋, 小木曽 清二, 長澤 圭一, 籾山 正人, 永井 英雅
    1998 年 59 巻 5 号 p. 1374-1377
    発行日: 1998/05/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    αフェトプロテイン(以下AFP)は,肝細胞癌やyolk sac tumorで産生されることが知られているが,肝以外の原発性消化器系癌でAFPを産生するものは少なく,胆嚢癌でもその報告例は稀である.今回われわれは,血中AFPが異常高値を示した胆嚢癌を4例経験した.肉眼所見で,いずれも乳頭状に胆嚢内腔を充満する様に発育した隆起性病変であった.病理組織学的には腫瘍組織の多くが, hepatoid patternを示し,抗AFP染色で陽性像を認め,胃癌取扱い規約のα-fetoprotein産生腺癌に類似したものであった.自験例では,特有の発育形態,組織型を示した.また切除によって良好な予後を得ており,積極的に手術を行うべきであると考えた.
  • 清水 鉄也, 平野 聡, 児嶋 哲文
    1998 年 59 巻 5 号 p. 1378-1381
    発行日: 1998/05/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    外傷性膵炎による稀な結腸狭窄の1手術例を経験した.患者は45歳,男性.心窩部痛,背部痛を主訴とし,精査にて慢性膵炎および下行結腸狭窄を認めた. 3年前に外傷性膵炎の既往があり又,結腸狭窄部の生検繰り返すも悪性細胞は認められず膵炎による結腸狭窄と術前診断した.手術所見では,膵体尾部は横行結腸・下行結腸・脾臓と一塊となり腫瘤形成していた.膵離断,膵石除去後胃膵吻合施行した.結腸狭窄の原因として,稀ではあるが膵炎も念頭に入れる必要があると考えられた.
  • 山崎 聖二, 小森山 広幸, 根本 賢, 生沢 啓芳, 萩原 優, 品川 俊人
    1998 年 59 巻 5 号 p. 1382-1384
    発行日: 1998/05/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は60歳女性,主訴は右下腹部痛.平成7年7月頃より時々腹痛を自覚したため,同年12月に近医を受診,注腸造影検査により,回盲部の変形を指摘された.平成8年5月に当院を受診,大腸内視鏡検査にて虫垂根部に隆起性病変を認めた.その性状は虫垂口を中心とする粘膜下腫瘤の形態を示し,虫垂口は開大し,発赤のある腫瘤の一部が露出していた.生検にては確定診断に至らず,継続する腹痛のため,虫垂根部腫瘤の診断の下に虫垂とともに盲腸部分切除術を施行した.切除した虫垂は灰白色,弾性やや硬であり,病理組織診断は異所性子宮内膜症であった.
    腸管子宮内膜症は比較的稀な疾患であり,虫垂に発生したものは少ない.若干の文献的考察を加え報告する.
  • 左古 昌蔵, 磯崎 博司, 原 均, 藤井 敬三, 西口 完二, 谷川 允彦
    1998 年 59 巻 5 号 p. 1385-1388
    発行日: 1998/05/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    外性子宮内膜症のうち皮膚に発生する頻度は,全子宮内膜症のうち約1.1%とされ,そのうち臍部に発生するものは約30%ときわめて稀である.今回われわれは,臍部に発生した子宮内膜症の1例を経験したので報告する.症例は46歳,女性.臍窩部に大豆大の腫瘤を自覚し,月経時に腫瘤中央部から出血を認めるようになり当科を受診した.腹部理学的所見では,臍部に大きさ2.5×2.3cm,中央部にDelleを有する茶褐色調の充実性の腫瘤を認めた.臍部子宮内膜症の診断のもと,開腹腫瘤摘出術を施行した.臍再建術は下腹部から遊離皮弁を採取し円錐形に形成した後,臍窩とし筋膜および皮膚に縫合した.病理組織診断では,臍部真皮組織に相当する部位に大小の嚢胞状を呈した子宮内膜組織に類似した腺腔構造と間質の増生を認めていた.本例では婦人科手術の既往のないことより,播種による発生は否定的であり,リンパ・血行性転移による発生が有力と考えられた.
  • 富山 光広, 進藤 学, 真名瀬 博人, 佐川 憲明, 田中 栄一, 加藤 紘之
    1998 年 59 巻 5 号 p. 1389-1392
    発行日: 1998/05/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は65歳女性.右下腹部の重苦感と腫瘤を主訴として来院した.白血球数は正常域にあったがCRP, 赤沈値が充進していた.腫瘤は約4cm大で中央に石灰化様陰影を伴っていた.生検を行うも確定診断には至らなかったが, 1995年5月16日,右半結腸切除術を施行した.術後の病理学的検査にて腸間膜リンパ節結核と診断された.
    本疾患の多くは,軽度の炎症性反応を伴った腹部腫瘤として発症するが,臨床像は多彩で術前診断は困難であることが多い.したがって,本疾患が疑われた場合には,早い時期に生検を行い病理学的確定診断を得て,治療に結びつけることが肝要であると考えられた.
  • 中村 好宏, 石部 良平, 池江 隆正, 平 明
    1998 年 59 巻 5 号 p. 1393-1396
    発行日: 1998/05/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    稀とされる上膜間膜静脈血栓症(以下, SMVT)の手術例を経験した.症例は38歳男性で,腹痛・悪心・嘔吐を主訴に当科紹介となった.腹部単純Computed Tomography (以下CT) で腹水および著明な腸管および腸間膜の浮腫を認め,発症より約96時間後に開腹したところ,大量の血性腹水および壊死腸管が見られた.また末梢の腸間膜静脈内に大量の血栓を認めた.壊死腸管を切除し,端々吻合したところ残存小腸は120cmとなった.術後の造影CTで門脈内血栓を認めたため,血栓溶解療法および抗凝固療法を行い血栓の消失をみた.血栓の再発は,術後管理の上,最も警戒を要するもので,その予防および早期発見が肝要である.
  • 伊藤 久美子, 菊地 一公, 菅原 睦, 浅川 全一, 折居 史佳, 佐藤 信司
    1998 年 59 巻 5 号 p. 1397-1400
    発行日: 1998/05/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    小腸間膜裂孔ヘルニア(以下,本症)は比較的稀な疾患で本邦報告例は約130例にすぎない.最近,術後腸重積を起こした本症の1例を経験したので報告する.
    症例は14歳男性.手術歴なし.平成9年1月25日心窩部痛, 26日嘔吐・腰周囲痛出現し入院. 27日朝腹膜刺激症状にて緊急開腹.回腸末端より約80cmの小腸間膜に径4cmの裂孔を認め,回腸末端から約70cmの回腸が嵌頓していた.腸切除は施行せず,裂孔閉鎖のみ施行.術後5日目より食事開始,術後10日目腹部膨満感出現.小腸ニボー像を認めた.翌日のイレウス管造影にてTreitz靱帯より約10cm肛門側空腸に蟹の爪様の閉塞像を認め再開腹.腸管は前回手術創に癒着していたが血行障害は認めず,腫重積は用手的に整復可能であった.術後経過は順調であった.本症は稀であるが急性腹症の際,常に念頭におく必要がある.
  • 照屋 剛, 高江 洲裕, 外間 章, 野原 正史, 武藤 良弘
    1998 年 59 巻 5 号 p. 1401-1404
    発行日: 1998/05/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は79歳男性で腹部膨満感と悪心を主訴で来院し,イレウスの診断で入院となった.イレウス管留置等の保存的治療を開始したが,症状の悪化を認めたため,発症後7日目に開腹手術を行った.開腹すると回腸末端より約50cm口側の小腸が, S状結腸間膜の左側の腹膜葉(以下左葉)欠損部に生じたヘルニア嚢内に約10cmの長さで嵌頓していた.頓頓腸管は容易に用手的に整復できた.嵌頓腸管部の循環障害はなく,ヘルニア門を縫合閉鎖して手術を終了した.
    S状結腸間膜内ヘルニアは内ヘルニアのなかでも稀な疾患である.これまでの本邦報告例は全てS状結腸間膜の右側の腹膜葉(右葉)での発症例であり,文献的に検索したかぎり自験例は初めての左葉発症例と考えられる.
  • 黄 泰平, 田中 康博, 松尾 吉庸, 本多 正治, 伏見 博彰, 高尾 哲人
    1998 年 59 巻 5 号 p. 1405-1408
    発行日: 1998/05/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    大網原発の神経鞘腫はきわめて稀である.今回,その1切除例を経験したので報告する.症例は54歳の男性. 1996年9月19日,突然の腹痛のため緊急入院.腹部CT検査にて胃に接して尾側へ発育する巨大な腫瘍を認めた.多嚢胞性でありenhanceされる充実性成分を認めた.腹部血管造影検査では右胃大網動脈は著明に拡張し,腫瘍への栄養血管を分枝していた.大網原発の腫瘍と診断し, 1996年10月11日摘出術を施行した.摘出標本は大きさ24×22×9cm,重さ約3.6kgであった.病理組織学的所見では神経鞘腫で悪性所見は認めなかった.術後経過は良好で,術後2週間目に退院した.大網原発神経鞘腫はわれわれが検索し得た限りでは本症例を含め本邦および欧米で計8例の報告があるにすぎない.
  • 笹本 彰紀, 山口 晃弘, 磯谷 正敏, 堀 明洋, 金 祐鎬, 北川 雄一
    1998 年 59 巻 5 号 p. 1409-1413
    発行日: 1998/05/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は67歳,女性.糖尿病,脳梗塞で加療中に心窩部不快感が出現し,腹部超音波検査にて腹腔内腫瘍を指摘され外科に紹介となった.腹部CT・MRI検査,上部消化管造影,超音波内視鏡検査,腹部血管造影から壁外性に発育した胃平滑筋肉腫を疑い手術を施行した.血管に富み暗赤色の腫瘍は胃小網を中心に存在し容易に摘出できた.病理組織学的所見より平滑筋肉腫と診断した.小網原発の平滑筋肉腫は極めて稀な疾患であり,自験例を含めた本邦報告例20例について統計的および文献的考察を行った.
  • 畝村 泰樹, 山崎 洋次, 竹村 隆夫
    1998 年 59 巻 5 号 p. 1414-1418
    発行日: 1998/05/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    粘液溶解療法は根治不能の腹膜偽粘液腫のQuality of lifeを向上させるといわれている.われわれは腹腔内投与の安全性が確認され,容易に入手できるdextran製剤を用い同療法を施行し効果を得た.症例は62歳男性,腹部膨満による症状が著明なため,低分子デキストラン®およびMDS®による粘液溶解を試みた.前者を腹腔内に500ml投与後4日目に1,740ml,後者を200ml投与後3, 5, 6日目に5,615mlの粘液の排出を認め,症状の軽減を認めた.患者は初診から16カ月後に腹腔内感染を併発し死亡したが,この間食事摂取は良好で,腹満や腸閉塞による症状はみられなかった.デキストラン製剤を使用した粘液溶解療法は患者のQuality of lifeを向上させ,試みるべき治療と考える.またその作用機序についても言及した.
  • 内田 正昭, 金森 弘明, 山口 恵実, 東儀 公哲, 三島 巌
    1998 年 59 巻 5 号 p. 1419-1422
    発行日: 1998/05/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    虫垂が右鼠径ヘルニアに嵌頓した稀な1例を経験したので文献的考察を加えて報告する.
    症例は36歳男性.鼠径部痛にて当院受診.鼠径部に膨隆なく当初診断に苦慮したが,鼠径部超音波およびCT像にて先端が盲端に終わる腸管様構造物が描出されたため緊急手術を施行した.手術所見は,右外鼠径ヘルニア内に先端が絞拒壊死に陥った虫垂を認め,鼠径ヘルニア内虫垂嵌頓の診断で,同一創にて虫垂切除術およびヘルニア根治術(Iliopubic tract repair)を施行した.摘出虫垂の病理組織学的診断はhemorrhagic infarctionであった.術後経過は良好で第10日目に退院した.
    鼠径ヘルニア嵌頓はしばしば経験されるが,その内容物は小腸,大網が主で虫垂は稀である.この診断には本症を念頭に,鼠径部超音波およびCTによる所見が有用である.
  • 山本 協二, 梅澤 昭子, 徳村 弘実, 今岡 洋一, 大内 明夫, 松代 隆
    1998 年 59 巻 5 号 p. 1423-1427
    発行日: 1998/05/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    Spigelヘルニアはほとんどが後天性に発生するもので,下腹部に好発する.上腹部発生例の報告は本邦では見られず,欧米では3%にすぎない.しかも季肋部発生例は1例しか見られなかった.今回われわれは右季肋部に発生したSpigelヘルニアを経験したので報告する.症例は69歳女性で,腹部外傷の既往はない.肺炎罹患時の咳発作中に痔痛とともに右季肋部が膨隆したという.膨隆は立位と臥位で見られるが,左側臥位で消失した.触診上腹筋の広範な欠損を認めた.腹部CT所見では右季肋部の腹直筋外側で内腹斜筋と腹横筋の欠損像を認め,外腹斜筋直下に腸管のガス像がみられたことより腹壁ヘルニアと診断した.開腹所見では右外腹斜筋の腹腔側にヘルニア嚢を認めた.ヘルニア門は10×4cm,ヘルニア嚢は12×5cmであった.ヘルニア内容物は手術時には認められなかった.ヘルニア門を内腹斜筋,腹横筋とともに結節縫合にて閉鎖し, polypropylene meshで補強した.
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