日本臨床外科学会雑誌
Online ISSN : 1882-5133
Print ISSN : 1345-2843
ISSN-L : 1345-2843
59 巻, 8 号
選択された号の論文の49件中1~49を表示しています
  • 富山 泉, 加瀬 昌弘, 佐藤 秀之, 蔵田 英志
    1998 年 59 巻 8 号 p. 1961-1964
    発行日: 1998/08/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    術前未碓診の肺末梢腫瘤に対して行った胸腔鏡下生検56例について,CT上の腫瘤径と胸膜からの距離を比較し,ワイヤー留置によるマーキングの有用性について検討した.
    マーキング非施行40例のうち局在診断が容易であった31例では,多くが胸膜直下の病変で,胸膜嵌入や腫瘤の透見により局在が確認された.胸膜から離れていても過誤腫や転移性肺腫瘍など境界明瞭な硬い腫瘤は確認が容易であった.これに対し局在診断が困難であった9例ではほとんどが胸膜から5mm以上離れた病変で,微小腫瘤や不整形腫瘤であった.このため小開胸による用手触診を行ってもかすかな硬結としてしか触知できず確認に難渋した.一方術前にCTガイド下にマーキングワイヤーを留置した16例では,ワイヤーの脱落していた1例を除き胸膜からの距離や腫瘤の性状にかかわらず切除が容易であった.以上より,胸膜から離れた微小腫瘤や不整形腫瘤ではマーキングを利用すべきと考えられた.
  • 江本 宏史, 渡辺 明彦, 澤田 秀智, 山田 行重, 辰巳 満俊, 阪口 晃行, 藤本 平祐, 成清 道博, 平尾 具子, 中野 博重
    1998 年 59 巻 8 号 p. 1965-1969
    発行日: 1998/08/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    R2以上のリンパ節郭清を行った食道癌切除126例につき転移リンパ節群と転移個数の予後に及ぼす影響について検討し,他の予後因子も含め多変量解析を行った.生存率は,転移リンパ節群別ではn2, n3間で差を認め,転移リンパ節個数別では, 0個, 1~3個, 4~7個, 8個以上の4群としたところ, 0個, 1~3個群間と1~3個, 4~7個群間で差を認めた.さらに, n1, n2症例間においても1~3個群は4~7個群に比べ有意に差を認め転移リンパ節群が,比較的近位に留まっていても転移個数の多い症例は予後不良であった.年齢,性差,肉眼型,占居部位,深達度,転移リンパ節群,転移リンパ節個数の7因子の多変量解析では,転移リンパ節個数が最も重みのある予後因子であった.
    今回の検討より,食道癌において転移リンパ節個数は,予後に影響する重要な予後因子と考えられた.
  • 田澤 賢一, 黒田 吉隆, 木村 寛伸, 前田 基一, 薮下 和久, 小西 孝司, 辻 政彦, 山下 弘子, 三輪 淳夫
    1998 年 59 巻 8 号 p. 1970-1976
    発行日: 1998/08/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    われわれは, 1973年1月から1995年12月までの23年間に胃平滑筋肉腫を22例経験し,臨床病理学的に検討した.
    検討の結果,以下の特性が示唆された. 1)術前内視鏡所見として,粘膜潰瘍形成は良・悪性鑑別に重要であった. 2) Mitotic Index (M. I)が11以上の場合,腫瘍径の増大,再発頻度の増加を認めた. 3)全例にリンパ節転移は認めず,手術侵襲の増大に伴う治療成績の向上は認めなかった. 4)再発死亡の3例は,胃外型, 100mmを超える巨大腫瘍であり, M. Iは11以上であるという項目を共通に認めた.
    現段階では,有効な化学療法はなく,腫瘍発見時,再発時における腫瘍の積極的な外科的切除が重要であり,必ずしもリンパ節郭清は必要ないと考えられた.
  • 山村 義孝, 小寺 泰弘, 清水 泰博, 鳥井 彰人, 平井 孝, 安井 健三, 森本 剛史, 加藤 知行, 紀藤 毅
    1998 年 59 巻 8 号 p. 1977-1983
    発行日: 1998/08/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    根治度C胃癌552例中35例(6.3%)が術後5年以上生存した.この長期生存例の特徴と癌遺残の判定に伴う問題点について検討した.根治度Cの因子別の5年生存率(以下, 5生率と略記)は,切除断端癌遺残7.5% (268例), T4遺残7.1% (28例),肝転移4.4% (91例),転移リンパ節遺残3.7% (190例),腹膜転移1.2% (249例)であった.根治度Cの因子が1因子である症例の5生率は9.7% (329例), 2因子例は1.8% (168例), 3因子以上の症例は0% (55例)であり, 5生率は合併する因子の数と相関した. 5年生存の理由は,化学療法の効果(40.3%),癌遺残についての肉眼判定の誤り(22.6%),腫瘍の発育の遅延(14.5%),組織判定の材料が不適当(14.5%),癌遺残部の切除(1.6%),ほか(6.5%)であった.以上より,手術に際しては癌遺残の因子を出来るだけ減らすよう努めるべきであり,その判定には肉眼所見だけではなく適切な材料による組織所見も加味すべきであると思われた.
  • 山本 篤志, 河野 博光, 船越 真人, 大城 久司
    1998 年 59 巻 8 号 p. 1984-1988
    発行日: 1998/08/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    1989年1月から1996年12月の間に経験した高齢者(80歳以上)胃癌38例(手術例16例,非手術例22例)の予後を検討し手術の是非に関して考察した. 3年生存率は,早期胃癌では,手術例100%,非手術例(EMR例) 75.0%,非手術例(経過観察例) 51.4%であったが有意差は認めなかった.進行胃癌では,手術例57.8%,非手術例11.1%で,両者には統計学的有意差を認めた(p<0.05).根治度別3年生存率は,根治度AまたはB9例が100%,根治度C7例26.8%で統計学的有意差を認めた(p<0.05).根治度C例と進行胃癌非手術例の3年生存率には有意差を認めなかったが, 50%生存期間は根治度C例19カ月,進行胃癌非手術例4カ月と根治度C例で生存期間の長い症例が多かった.早期胃癌では非手術例でも良好な予後が得られる可能性があるが,進行胃癌では根治度AまたはBで良好な予後が得られる可能性があるものの,根治度Cでは短期間の生存期間が延長できるだけであり慎重に手術適応を決定すべきである.
  • 高瀬 真, 長尾 二郎, 斉田 芳久, 草地 信也, 柁原 宏久, 能戸 保光, 中村 陽一, 仲 威和郎, 中村 寧, 炭山 嘉伸
    1998 年 59 巻 8 号 p. 1989-1994
    発行日: 1998/08/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    最近過去12年間に当科で経験した大腸穿孔手術症例44例につき検討したので報告する.症例は,男性23例,女性21例で,平均年齢は69歳であった.症状は,全例腹痛を訴え,その他腹満感,嘔気嘔吐などの症状を認めた.腹部所見は,圧痛をほぼ全例に認めBlumberg徴候,筋性防御は36例に認めた.症状発生から手術までの期間は平均39時間であり,入院期間は, 62.1日であった.また術前ショック状態,総タンパクの低下した症例は予後不良であった.腹腔内遊離ガス発生症例は, 26例であり全体の59.1%であった.穿孔部位は, S状結腸がもっとも多く30例,次いで直腸,盲腸,横行結腸の順であった.原因疾患は,医原性17例が多く,それにつづき,憩室炎11例,大腸癌,特発性であった.死亡症例は5例であり,いずれも腹膜炎による敗血症,多臓器不全のため失った.また最近では敗血症に対し,血液濾過によるエンドトキシン吸着を行っており, 1症例を救命しえた.
  • 中崎 隆行, 飛永 晃二, 武冨 勝郎, 君野 孝二, 森永 真史, 柴田 良仁, 岸川 正大
    1998 年 59 巻 8 号 p. 1995-1999
    発行日: 1998/08/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    大腸低分化腺癌23例を高・中分化腺癌473例と臨床病理学的に比較検討した.低分化腺癌は女性に多く,右側大腸に多くみられた.深達度は全てss以上で,リンパ節転移,腹膜播種が高率であった.低分化腺癌では癌巣の間質量は大部分が中間型,硬性型であった. 5年生存率は32.6%,治癒切除例でも50.0%と予後不良であった.低分化腺癌でp53発現と予後との関係はなかったが,間質量が硬性型のものは髄様型,中間型のものに比べ予後不良であった.
  • 湊 栄治, 寺邊 政宏, 小池 宏, 藤岡 正樹, 入山 圭二
    1998 年 59 巻 8 号 p. 2000-2004
    発行日: 1998/08/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    11年後に局所再発した上皮小体癌の1例を若干の文献的考察を加え報告する.症例は70歳男性・頸部腫瘤を主訴として来院した. 59歳時に上皮小体癌の診断にて,右甲状腺を含めた腫瘍摘出術および頸部リンパ節郭清が施行されている.来院時,前頸部に胡桃大の可動性良好な腫瘤を触れ,血清カルシウム値13.4mg/dl, PTHのC末端1.8ng/mlと高値を示した.頸部CTでは2cm大の境界比較的明瞭な腫瘤を認め, MRIでこの腫瘤はT1でlow, T2でhigh intensity, Gd-DTPAにより不均一に造影された.穿刺吸引細胞診ではclass Vであった.以上より腫瘤摘出術を施行したところ,上皮小体癌の前頸部軟部組織内再発であった.上皮小体癌は稀な疾患である.予後は比較的不良で,5年生存率は50~67%といわれているが,本症例のように緩徐な経過をたどる例もみられるため,長期的なfollowが必要である.
  • 和田 徳昭, 藤崎 真人, 小島 勝, 高橋 孝行, 平畑 忍, 前田 大
    1998 年 59 巻 8 号 p. 2005-2008
    発行日: 1998/08/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    乳腺浸潤癌のうちアポクリン癌は稀な組織型であるが,今回規約上にない浸潤性を認めないアポクリン化生を示した乳管癌を経験したので報告する.
    症例は57歳女性.主訴は検診乳房超音波異常.来院時左乳輪直下に0.8×0.7cmの硬結を触知した.マンモグラフィーでは異常はなく,超音波検査では乳輪直下に辺縁の不明瞭な低エコー像を示す陰影を認めた.穿刺吸引細胞診にて悪性細胞を認め乳癌(T1aN0M0)と診断した.乳頭乳輪も含めて切除するBp (2.0cm)+Axを施行し残存乳房に照射を加えた.病理組織ではすべての腫瘍細胞がアポクリン化生を示すが乳管内にとどまり浸潤部分を認めなかった.
    本症例は非浸潤性アポクリン癌という名称がふさわしいが,規約分類上存在しないため,アポクリン癌とは別に非浸潤性乳管癌, apocrine typeとした.
  • 北川 敦士, 重里 政信, 関井 浩義, 内藤 泰顯
    1998 年 59 巻 8 号 p. 2009-2011
    発行日: 1998/08/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は26歳男性.激しい右胸部痛を主訴に当科受診.胸部X線にて胸水を伴う自然気胸と診断し胸腔ドレナージ施行, 20ccの血性胸水が排出され特発性血気胸と診断した. 6時間後,急激にドレーンより新鮮な血液が排出されショック状態に陥ったため緊急開胸術を施行した.手術所見では,肺尖部壁側胸膜より動脈性出血を伴う異常血管が認められ,結紮術により止血に成功した.特発性血気胸は一度出血が進行するとショック状態に陥り重篤化することがあり早期の開胸止血術が必要な疾患と考えられる.
  • 平原 浩幸, 相馬 孝博
    1998 年 59 巻 8 号 p. 2012-2016
    発行日: 1998/08/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    横隔膜の破裂が横隔膜心嚢面に限局しておこる外傷性心嚢内横隔膜ヘルニアの頻度は非常に稀である.症例は51歳の男性で, 5年前に歩行中乗用車にはねられ,左血胸のため他科にてドレナージが施行された.食事後の前胸部異常音を主訴に当科に紹介された.胸部CTにて消化管が横隔膜上にあることが確認され,左側に発生した外傷性横隔膜ヘルニアと診断して胸腔鏡手術を開始したが,横隔膜の破裂部位は心嚢面に限局しており,心嚢内に脱出した外傷性心嚢内横隔膜ヘルニアであった.胸腔鏡では修復は困難であったため,小開胸後心膜を切開した.腹腔臓器(胃,大網,大腸の一部)を還納した後,ヘルニア門を直接縫合した.診断にはCT検査が有用であるが, pneumopericardiumが存在しない場合術前に外傷性心嚢内横隔膜ヘルニアと確診することは困難と思われた.
  • 藤田 博文, 山本 隆久, 熊谷 仁人, 三浦 順郎
    1998 年 59 巻 8 号 p. 2017-2021
    発行日: 1998/08/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は50歳の男性. 1996年4月8日,突然腹部全体の疼痛出現し,当院搬送される.既往歴にて胃十二指腸潰瘍があり,また来院時現症にて腹部全体に筋性防御を認めたため,上部消化管穿孔による汎発性腹膜炎の診断にて緊急手術を施行した.術中所見にて胃体上部から噴門部にかけ巨大な潰瘍と穿孔部位を認め,穿孔部縫合閉鎖術,胃瘻造設術,腹腔内ドレナージ術を行った.術後経過良好であったが, 4月18日,突然の吐血と出血性ショックを認め,出血性胃潰瘍の診断にて広範囲胃切除術を行った.摘出標本の病理組織学検査にて,扁平上皮癌と診断されたため,上部消化管内視鏡検査を行ったところ,胸部中部食道に潰瘍限局型の腫瘍を認め食道癌と診断された.根治術を考慮し, 6月11日,再度開腹したが腹膜播種を認めたため切除は断念した.胃壁転移病巣の穿孔にて発見された食道癌はわれわれが検索した限りでは過去に報告が無く,今回,若干の文献的考察を加え報告する.
  • 野口 洋文, 堀見 忠司, 市川 純一, 岡林 孝弘, 西岡 豊, 長田 裕典
    1998 年 59 巻 8 号 p. 2022-2027
    発行日: 1998/08/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    極めて稀とされる有茎性発育を呈した胃平滑筋肉腫の1例を経験したので報告する.症例は75歳女性.腹部腫瘤および心窩部痛を主訴として来院した.上部消化管造影検査,上部消化管内視鏡検査,腹部CT所見より,胃原発の粘膜下腫瘍が疑われ,超音波内視鏡検査にて胃外性に発育した胃平滑筋肉腫と診断し,手術を施行した.腫瘍は大きは17×12×9cmと巨大で,胃体部後壁より胃外性に有茎性に発育していた.腫瘍茎部根部の胃壁を楔状に切除した.腫瘍割面は黄白色の充実性で内部に壊死を伴っていた.病理組織学的所見より胃外発育型胃平滑筋肉腫と診断された.本症例は遠隔転移や他臓器浸潤は認められなかったものの,核分裂像が強拡大で10視野中8であり,腫瘍の大きさが17cmであるため,予後不良と考えられるが,現在のところ再発徴候はなく,良好に経過している.
  • 長谷川 誠, 小沢 邦寿, 和田 信昭, 大岡 出, 菅野 勇, 長尾 孝一
    1998 年 59 巻 8 号 p. 2028-2036
    発行日: 1998/08/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    胃平滑筋芽細胞腫の本邦報告例は現在300例を超える.しかしこの中でも有茎性の発育を示す症例は少なく今回われわれが検索しえた範囲では自験例を含め32例であった.また胃平滑筋芽細胞腫で腹腔内出血を呈した症例も本邦では19例と少なかった.今回われわれは珍しい腹腔内出血を呈した,胃外発育型有茎性平滑筋芽細胞腫の1例を経験したので報告する.
    症例は39歳男性で,主訴は強度の腹痛で,腹膜炎の診断で近医より救急車にて紹介来院した.腹部所見では腹部は全体に膨満しており板状硬で,上腹部を中心に腹部全体に著明な圧痛と反跳痛を認めた.腹部CT検査では腹腔内液体貯留と胃前壁にhigh density areaを認めた.確定診断には至らなかったが,腹膜炎の診断にて緊急開腹手術を施行した.開腹時腹腔内に約500mlの血液を認めた.原因を検索したところ,胃角部前壁大彎側に14cm×11cm×2cm大の暗赤色の有茎性腫瘍を認め,その一部より出血が認められた.正常胃の漿膜筋層を含めて模状切除を行った.患者は術後11日目に軽快退院した.病理組織学的診断は胃平滑筋芽細胞腫であった.
  • 落合 正宏, 船曵 孝彦, 神保 康子, 神野 治, 内村 正史, 丸田 祐司, 津田 真吾, 浦口 貴, 今津 浩喜, 長谷川 茂, 松原 ...
    1998 年 59 巻 8 号 p. 2037-2042
    発行日: 1998/08/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    Gastritis cystica polyposa (以下GCP)を伴った残胃初発癌の3症例の経験を報告した.症例1は67歳男性で,胃潰瘍術後30年で吻合部大彎側半周に芋虫状に隆起したGCPと,その大彎線上に中分化腺癌を認め,深達度はseであった.症例2は60歳男性で十二指腸潰瘍術後33年で吻合部ほぼ全周に無茎性に隆起したGCPが存在し,その大彎部分に中分化腺癌,深達度mpを認めた.症例3は36歳男性.胃潰瘍術後24年で吻合部全周および小彎縫合線に沿って脳回転様に隆起したGCPが存在し,吻合縫合両線の交点部に低分化腺癌,深達度mpを認めた.病理組織学的にはいずれのGCPも腺窩上皮の過形成,偽幽門腺の嚢胞状拡張,粘液腺の粘膜下層侵入などの特徴を備えていた.これら3例のp53染色では癌部は全例陽性,非癌非GCP結膜では全例陰性であったのに対し, GCP結膜では粘膜中層に限局して陽性細胞が散見され,発癌との関連が示唆される所見と考えた.
  • 山中 秀高, 松田 信介, 鈴木 英明
    1998 年 59 巻 8 号 p. 2043-2048
    発行日: 1998/08/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    小腸平滑筋肉腫は術前診断,術式,生物学的悪性度の評価が問題となる疾患である.今回われわれはリンパ節および大網転移を伴った空腸平滑筋肉腫の1例を経験したので報告する.
    症例は68歳の女性で主訴は下血.腹部超音波, CT, MRI検査にて腹腔内腫瘤を3個認め,腹部血管造影で1個は上腸間膜動脈空腸第1枝, 2個は右胃大網動脈から栄養されるhyper vascular tumorであった.小腸透視で空腸潰瘍を認め,空腸平滑筋肉腫と大網転移の診断で手術施行.術中,空腸腫瘍と上腸間膜動脈空腸第1枝に沿うリンパ節腫大および大網転移を認め,リンパ節郭清を伴う空腸部分切除,大網部分切除術を施行.組織学的には空腸平滑筋肉腫とリンパ節および大網転移で, Mitotic indexは各々2個, 1.6個, 1.7個でProliferative cell nuclear antigen labeling indexは各々50%, 75%, 65%であった.
  • 櫻井 丈, 四万村 司, 河合 敬雄, 山口 邦彦, 山田 恭司, 岩崎 光彦
    1998 年 59 巻 8 号 p. 2049-2053
    発行日: 1998/08/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は68歳,女性昭和43年に子宮頸癌にて子宮全摘術,放射線治療を受けている.平成7年8月より腹痛,嘔吐を反復し放射線腸炎によるイレウスと診断され開腹手術を施行したところ回盲部より約1m口側にわたり回腸に放射線腸炎によると思われる狭窄を認めこの部位を切除した.切除腸管の口側にPTP (press through package以下PTPと略す)の陥入を認め,放射線腸炎に合併したPTP誤飲によるイレウスと診断された.
    子宮頸癌に対する放射線治療の成績の向上に伴い合併症としての腸炎も増加している.また薬剤包装シートPTPも普及にともない誤飲による腸管障害の報告が増加している. PTPは辺縁が鋭利で誤飲により重篤な腸管障害を来たす危険があり改良する必要性があると思われた.
  • 恵木 浩之, 中村 雄二, 大下 彰彦, 藤崎 成至, 山中 達彦, 田部 康次
    1998 年 59 巻 8 号 p. 2054-2057
    発行日: 1998/08/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例1は42歳の男性.昭和59年特発性大腸潰瘍にて手術を施行した際,腸型Behcet病と診断された.平成8年3月下旬,腹部膨満感と腹痛が出現し,消化管穿孔を疑い当科入院し手術を施行した.回腸末端に穿孔部を認め,前回手術を施行した際の回腸結腸吻合部を含めた部分切除術を施行した.
    症例2は54歳の女性.近医にてBehcet病と診断され内服加療にて経過観察されていた.平成9年4月10日激しい腹痛が出現し,腸管穿孔と診断し緊急手術を施行した.上行結腸から下行結腸にかけて多発性穿孔を認め,拡大右半結腸切除術を施行した.
    このように腸型Behcet病は穿孔をきたしやすく緊急手術となることが多く,そのため術後の再発や合併症の可能性も高い,よって,腸型Behcet病と診断が付いた場合は,定期的に検査を行い,病変が悪化するようであれば予防的な手術も必要と考える.
  • 冨田 隆, 勝峰 康夫, 久留宮 隆, 久瀬 雅也
    1998 年 59 巻 8 号 p. 2058-2062
    発行日: 1998/08/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    発症後早期に腸閉塞をきたした狭窄型虚血性大腸炎の1例を経験したので報告する.症例は56歳,女性.下血と下腹部痛を主訴に入院,画像診断で下行結腸下部に長さ6cmの高度な狭窄が認められた.注腸透視後イレウス症状が増強したため経肛門的に減圧を試みたが改善なく,発症後4日目に結腸切除術を施行した.切除標本では粘膜側の壊死は全周におよび,組織学的に粘膜と粘膜下層に高度な出血壊死がみられ,この虚血性変化が一部腸管の全層に波及した狭窄型虚血性大腸炎と診断された.術後経過は良好である.通常,狭窄型虚血性大腸炎は潰瘍の瘢痕収縮が徐々に進行し,腸閉塞が発現する発症後1~3カ月目に手術が行われることが多い.本症例は全周性の虚血性変化が一部腸管の全層に波及したため,狭窄症状が急激に進行し早期の手術が必要であった.従って,結腸狭窄の診断に際し,稀ではあるが発症早期に腸閉塞をきたす虚血性大腸炎の存在を念頭に置く必要がある.
  • 浜田 貴幸, 小原 則博, 金高 賢悟, 小野原 義明, 天野 実, 河合 紀生子
    1998 年 59 巻 8 号 p. 2063-2066
    発行日: 1998/08/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    腹部大動脈瘤術後の虚血性腸病変は術後早期に発症することが多く,長期経過後に発症するのは極めて稀である.
    症例は65歳,女性.平成6年5月24日腎下部腹部大動脈瘤にて人工血管置換術を施行した.術後9カ月後に急性胆嚢炎によりショック状態に陥る.保存的治療にて軽快するも2週目に下血,腹痛が出現した.画像診断にて下行結腸から直腸上部にかけ,全周性狭窄, thumb printing像を認め,虚血性大腸炎と診断した. 3カ月間の保存的治療にても狭窄消失せず手術適応と判断され,平成7年6月20日左半結腸切除,横行結腸による人工肛門造設術を施行した.病理組織学的所見では粘膜側は潰瘍を形成し,漿膜下の出血,炎症細胞浸潤,線維化,一部に穿孔も認め,壊死型虚血性大腸炎と診断した.
  • 大谷 眞二, 谷口 哲也, 松井 孝夫, 岸本 弘之, 日野原 徹, 清水 法男
    1998 年 59 巻 8 号 p. 2067-2070
    発行日: 1998/08/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    下行結腸の固定異常を伴った巨大横行結腸症の1例を経験した.症例は28歳女性.腹痛,悪心,便秘,下痢などの症状を繰り返すため当院で精査された.注腸造影上,横行結腸は最大径20cmと著明に拡張していた.巨大横行結腸症の他に消化器症状の原因が特定できず,保存治療が無効のため,開腹手術が施行された.下行結腸は後腹膜に固定されておらず,横行結腸中心に約50cm長にわたり著明な拡張が認められた.その口側,肛門側には異常所見はなく,拡張結腸切除(結腸左半切除術)が行われた.病理組織検査で神経節細胞の異常はなかった.術後,消化器症状は軽快した.本例は左半結腸の固定異常に捻転症などの後天的な要因が加わって巨大横行結腸症を呈したのではないかと推察された.
  • 平山 克, 和田 直文, 寺澤 孝幸, 島田 友幸, 寺島 秀夫, 高橋 雄大
    1998 年 59 巻 8 号 p. 2071-2075
    発行日: 1998/08/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は69歳の男性.既往歴として25年前に胃潰瘍にて結腸前Billroth II法による広範囲胃切除を受けている.発熱,腹痛,嘔気を主訴として来院した.入院後の検査にて横行結腸癌と診断されたが,急激に発熱が出現し,白血球数, CRP値,肝・胆道系酵素値の上昇を認めた. CT, MRI,超音波検査による画像所見と併せて,横行結腸癌の輸入脚浸潤による急性輸入脚閉塞症と診断した.直ちに内視鏡下に輸入脚へのドレナージチューブの挿入を試みたが不成功に終わったため,同日,手術的に輸入脚のドレナージを施行した. 13日後に横行結腸癌に対して根治手術を施行した.しかし,退院後まもなく癌性腹膜炎,多発肺転移を来たし,根治手術後2カ月で死亡した.
    輸入脚閉塞症は,胃切除後合併症の中でも比較的稀であるが,横行結腸癌を原因とする本症の報告例は,われわれが調べ得た限りでは本症例以外は1例のみであった.
  • 下田 貢, 小暮 洋暉, 堀江 健司
    1998 年 59 巻 8 号 p. 2076-2079
    発行日: 1998/08/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    結腸癌に合併した腹壁膿瘍は比較的稀である.今回われわれは,腹壁膿瘍で発症した下行結腸癌の1例を経験したので報告する.症例は, 48歳男性.発熱と左側腹部痛を主訴として来院した.左側腹部に腫瘤を触知し,下部消化管内視鏡検査で下行結腸に3型の腫瘤と全周性の狭窄を認めた.腹部超音波では約5cm大のechogenic massとして描出され, CTでは約5cm大の低吸収域とair fluid levelを認めた.下部消化管造影では下行結腸にapple core signがみられ,腫瘍の肛門側から左腹壁側にバリウムの流出と貯留を認めた.以上から,下行結腸癌の腹壁浸潤による膿瘍の形成と診断し,横行結腸人工肛門造設,経皮的膿瘍ドレナージ術を施行した.全身状態の改善後に左半結腸切除術を行った.腫瘍の大きさは70×60mmであり,穿通部位は明らかではなかった.組織学的には粘液癌と診断された.
  • 加治 正英, 上野 桂一, 中野 達夫, 矢ヶ崎 亮
    1998 年 59 巻 8 号 p. 2080-2083
    発行日: 1998/08/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    大腸憩室の後腹膜への穿孔は特異な病態を呈することがある.今回,頸胸部皮下気腫を伴うS状結腸憩室穿孔の1例を経験したので報告する.症例は85歳女性.下腹部痛を主訴に来院.頸部から左胸部にかけて捻髪音を認め,腹部は全体に膨隆していた.胸部X線写真では,頸部から左胸部にかけての皮下気腫と右胸水貯留を,腹部X線写真では横隔膜下にfree airを認めた.腹部CT像では下大静脈から腎周囲脂肪組織に広がる後腹膜気腫を認め,汎発性腹膜炎疑いにて,緊急開腹手術を施行した. S状結腸は後腹膜に固定され,これを開放したところ,膿瘍および便汁が腹腔内に流出したため,S状結腸憩室穿孔による腹膜炎と診断した. S状結腸憩室穿孔より後腹膜膿瘍となり,頸胸部皮下気腫を来した例は非常に稀であり今回報告した.
  • 竹林 正孝, 野坂 仁愛, 若月 俊郎, 岡本 恒之, 鎌迫 陽, 谷田 理
    1998 年 59 巻 8 号 p. 2084-2088
    発行日: 1998/08/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    大腸癌のなかでも,扁平上皮癌は極めて稀であり,結腸に限定すると, 1919年にSchmidtmannが報告して以来,自験例を含めて42例にすぎない.われわれはS状結腸原発の扁平上皮癌を経験したので報告する.症例は67歳の男性.高度便秘を主訴とし,大腸精査を施行した.大腸内視鏡施行時の生検で扁平上皮癌と診断され,腫瘍マーカーのSCC値も高値を示した.全身を検索し他部位に病変はないことから,術前にS状結腸原発の扁平上皮癌と診断し, S状結腸切除術を施行した.切除標本では,大きさ85×86mmの隆起型を呈する高度浸潤癌であった.病理組織学的には,軽度の角化傾向を示す中分化型扁平上皮癌で,腺管形成および粘液の分泌等は認められなかった.文献的考察を加えて報告する.
  • 吉谷 新一郎, 中川 秀人, 原田 英也, 松下 昌弘, 冨田 冨士夫, 高島 茂樹
    1998 年 59 巻 8 号 p. 2089-2093
    発行日: 1998/08/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    腸重積により癌腫が肛門外に脱転したS状結腸癌の1例を経験したので報告した.
    患者は62歳,女性.排便後の下血および約20cmにわたる腸管の肛門外脱出を認めたため来院した.脱出腸管の先端部にはBorrmann 2型の腫瘤が認められ,生検から腺癌と診断された.注腸では蟹爪様の所見,骨盤腔CTスキャンではtarget signを呈し腸重積を指示する所見が得られた. S状結腸癌を先進部とした腸重積症の診断で手術を施行した.術中,癒着のため重積腸管の完全整復は困難で,手術は重積した状態で3群リンパ節郭清を伴ったS状結腸切除術を施行した.腫瘍は3.5×2.5cm, Borrmann 2型,深達度mpの中分化腺癌で, n0, ly1, v0, ow (-), aw (-), stage Iであった.腸重積によって癌腫が肛門外に脱出したS状結腸癌の報告は自験例を含め21例と比較的稀でこれらを集計しその臨床的特徴について考察を加えた.
  • 室 雅彦, 成末 允勇, 金 仁洙, 宇田 憲司, 井谷 史嗣, 金子 晃久, 貞森 裕
    1998 年 59 巻 8 号 p. 2094-2098
    発行日: 1998/08/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は67歳女性. 1992年4月に胃印環細胞癌にて胃亜全摘術を施行している. 1995年12月,健診にて便潜血を指摘され来院した.大腸内視鏡検査を施行したところ大腸には4カ所のIIa+IIc病変を認め,同部の生検の結果,すべてに粘膜,粘膜下に印環細胞癌を認め胃癌よりの転移と考えられた.これより結腸亜全摘術を施行した.開腹時腹膜播種はなく, 16番リンパ節の腫大を認めた.胃癌切除後の多発大腸ポリープを呈した転移性大腸癌は稀な症例である.
  • 岩橋 順子, 早川 直和, 山本 英夫, 川端 康次, 村山 明子
    1998 年 59 巻 8 号 p. 2099-2103
    発行日: 1998/08/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は68歳女性.主訴は粘液便・眩量・起立不能.近医受診時,貧血・脱水・軽度低Na血症を呈していた.直腸診で肛門縁直上に全周性の腫瘍を触知した.内視鏡検査では腫瘍表面は白色調の結節状で粘液が付着し,生検結果はgroup IVであった.腹部CT検査で内部不均一な腫瘍が骨盤内を占拠し,肝右葉前区域および肝左葉外側区域内に各々長径約2cmと0.7cmの低吸収域を認めた.貧血・腎機能障害は術前に補正できたが,眩量は改善しなかった.腹仙骨式直腸切断術・肝部分切除術を施行した.直腸腫瘍は長径12cmで,歯状線から15cmの部位に位置していた.肝病巣は軟らかな多房性嚢胞状で粘液を含んでいた.直腸腫瘍の病理組織型は,一部絨毛腺腫・腺管絨毛腺腫で,大部分は高分化型腺癌であった.肝病巣は直腸癌の転移であった.術後徐々に眩量は消失し,歩行可能となった.本症例の肝転移巣は肉眼的に特徴的であった.
  • 菅野 圭一, 六本木 隆, 横田 徹, 坂元 一郎, 大和田 進, 森下 靖雄
    1998 年 59 巻 8 号 p. 2104-2108
    発行日: 1998/08/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    潰瘍性大腸炎(以下UC)に伴う若年性直腸癌の手術症例を経験したので,本邦のUCに伴う30歳以下の大腸癌の検討と併せ報告した.症例は28歳女性で, 10年にわたる全大腸炎型のUCで寛解再燃を繰り返していたが,肛門部痛により直腸癌が発見された.腫瘍は肛門管に及び,また腟の後壁に浸潤し,内陰部動静脈に転移リンパ節の浸潤が見られたため,全大腸切除,膣後壁と右内陰部動静脈合併切除および回腸人工肛門造設術を行った.組織型は低分化腺癌であった.本邦でのUCに伴う30歳以下の大腸癌は35例で,そのうち低分化腺癌は3例であった.自験例は癌合併のリスクが高かったと考えられ,術後のQOLの維持をはかるためには大腸内視鏡によるサーベイランスを行い,早期発見治療に努めるべきであったと考える.
  • 有本 裕一, 水上 健治, 山田 忍, 谷村 慎哉, 福長 洋介, 久保 尚士, 高 勉, 藤本 泰久, 東野 正幸, 奥野 匡宥
    1998 年 59 巻 8 号 p. 2109-2114
    発行日: 1998/08/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    直腸原発内分泌細胞癌の2例を経験した.‹症例1›61歳の男性.直腸癌 (Ra) の術前診断にて手術するに,肝腫瘍を認め低位前方切除術,肝切除術を施行.術後病理組織所見にて内分泌細胞癌(肝は転移)であることが判明した.術後約2カ月半で癌性悪液質が急速に進行し術後約4カ月で死亡した.剖検にて肝,胸・腹膜,左副腎,皮膚に多発転移巣を認めた.‹症例2›76歳の女性.直腸癌 (Rb) で術前組織診にて内分泌細胞癌と判明したが,イレウスにて手術した.術中,肝腫瘍を認め,腹会陰式直腸切断術のみ施行.術後, FAMのone shot肝動注を施行するも術後2カ月目のCTにて肝全域に多発性転移巣が確認された.術後6カ月目の現在通院中である.内分泌細胞癌は,早期より血行性あるいはリンパ行性転移をきたす生物学的悪性度の極めて高い腫瘍である.治療は外科治療に加え,肺小細胞癌に準じた化学療法の併用など病期に応じた治療法の検討が望まれる.
  • 小森 康司, 松浦 豊, 河野 弘, 北川 喜己, 野田 徳子, 伊藤 直人, 石川 和夫, 横山 真也
    1998 年 59 巻 8 号 p. 2115-2118
    発行日: 1998/08/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は58歳男性.平成8年8月31日午後2時頃,作業中,ハンマーにて鉄釘を叩いていたところ,鉄片が腹壁を貫通.徐々に腹痛出現し,近医受診.腹部単純X線写真にて腹腔内に鉄片を確認し,当院に紹介された.腹部CT検査にて肝S3 (前外側区域)に鉄片が迷入していたが,腹腔内出血は認められなかった.軽い腹痛は残すものの,全身状態は安定しており,後日,待機手術として異物除去の予定とした.しかし受傷約8時間後激しい腹痛と共に血圧低下し,ショック状態に陥った.腹部超音波検査にて左横隔膜下に液体貯留を認め,肝損傷による腹腔内出血と診断し,緊急手術施行.上腹部正中切開すると,約1,300mlの血性腹水を認め,肝S3 (前外側区域)の表面に鉄片が刺入したと思われる約6mmの裂創を認め,そこより出血していた.鉄片除去後,裂創縫合.術後経過良好にて第17病日に退院した.
  • 林 昌俊, 広田 俊夫, 市橋 正嘉, 多羅尾 信, 後藤 明彦
    1998 年 59 巻 8 号 p. 2119-2122
    発行日: 1998/08/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    異所性肝は稀な肝の発生異常である.最近腹腔鏡下胆嚢摘除術時に発見した異所性肝の2症例を経験したので報告する.
    2症例とも胆石症の診断で腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行した.胆嚢体部にそれぞれ褐色,表面平滑な結節を認めた.主肝との連続性はいずれも認めず胆嚢と共に摘出した.
    病理組織学的検査ではいずれも正常小葉構造を有する肝組織像を認め,異所性肝と診断した.
  • 田辺 義明, 畝村 泰樹, 大平 寛典, 三澤 健之, 小林 進, 山崎 洋次
    1998 年 59 巻 8 号 p. 2123-2126
    発行日: 1998/08/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    総胆管穿孔は小児の先天性胆道拡張症に合併することがあるが,成人の総胆管穿孔はまれである.われわれは総胆管結石を伴った総胆管穿孔の1例を経験したので報告する.症例は68歳男性.発熱および上腹部痛を主訴に来院した.上腹部CT,超音波検査で総胆管結石とMorison窩の液体貯留を認め緊急入院した.保存的治療で腹部所見は軽快傾向にあったが,白血球の増加および発熱が続き,総胆管結石,腹腔内膿瘍の診断で緊急手術を施行した.胃切除,胆嚢摘出術の既往のため腹腔内の癒着は強固であった.膿瘍腔は感染胆汁で満たされており,三管合流部よりやや十二指腸側の総胆管前壁に径3mmの穿孔を認めた.さらに穿孔部近傍の十二指腸側総胆管内に径15mmの結石を認め,戴石後T-tubeを挿入した.術後経過は良好であった.本症例における穿孔の発生機序は特定できないが結石の関与が考えられた.
  • 上松 俊夫, 北村 宏, 岩瀬 正紀, 山下 公裕, 小倉 廣之, 中村 徹
    1998 年 59 巻 8 号 p. 2127-2131
    発行日: 1998/08/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    胆管穿孔は先天性胆道拡張症のまれな合併症の1つであるが,そのほとんどが小児期に発生し成人例はきわめて少ない.われわれは総肝管穿孔で発症した先天性胆道拡張症の成人例を経験したので報告する.症例は腹痛を主訴とする27歳の女性. USとCTで肝外胆管の拡張と腹水を認めた.ダグラス窩穿刺にて胆汁性腹水を,逆行性膵管胆道造影検査にて戸谷Ic型の先天性胆道拡張症と膵管胆道合流異常症を認めた.開腹すると総肝管右後壁に直径3mmの穿孔を認めた.胆管胆汁中のアミラーゼ値は20,900IU/mlと異常高値であった.肝外胆管切除術,胆嚢摘出術,肝管空腸吻合術を施行した.病理組織検査では,総肝管に限局性全層性の小壊死を認めた.成人例でも小児例と同様に膵管胆道合流異常症による膵液の逆流に加え,何らかの機序による急激な胆管内圧の上昇が胆管穿孔を引き起こすと考えられた.
  • 石川 真, 長瀬 通隆, 関野 昌宏, 鬼束 惇義
    1998 年 59 巻 8 号 p. 2132-2135
    発行日: 1998/08/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    胆管癌の発生と肝吸虫の感染には関連性が指摘されている.今回肝吸虫症を伴った総胆管癌の1例を経験したので報告する.症例は74歳男性で,尿の黄染を主訴に来院,血液検査にて胆道系酵素の上昇を認め,腹部US,CT検査にて肝内胆管から総胆管までの拡張と総胆管内に腫瘤影を認めた. PTCDを施行した後,造影検査を施行したところ三管合流部やや下方に完全閉塞部位が認められた. PTCD施行時に採取した胆汁中から肝吸虫の虫卵と異型細胞が検出された.以上から肝吸虫を伴った総肝管癌と診断し膵頭十二指腸切除術を施行した.病理組織診断は乳頭状腺癌であった.肝吸虫に伴う胆管癌の多くは肝内胆管癌であり,総胆管癌の報告は非常にまれである.癌発生には肝吸虫による機械的刺激よりも,肝吸虫に由来する何らかの代謝産物が関係したものと考えられた.
  • 野中 杏栄, 越野 秀行, 野崎 達夫, 橋村 千秋, 北原 信三, 柴 忠明, 野中 博子
    1998 年 59 巻 8 号 p. 2136-2141
    発行日: 1998/08/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    adenomyomatosis (ADM)による二房性胆嚢に早期胆嚢癌を合併した比較的稀な症例を経験した.症例は79歳女性.腹部超音波およびCT検査で胆嚢底部に細かい石灰化を伴うsolid and cystic patternの凹凸不整の腫瘍像を呈し,造影CTで周囲のみ若干濃染される38×25mm大の腫瘍像を認めた. segmental type (S型)のADM合併した胆嚢癌を疑い胆嚢摘出術を施行した.切除胆嚢には慢性胆嚢炎のRokitansky-Ashoff sinus (RAS)が体底部に多数認められ,筋層の肥厚を伴いS型ADMを示す.胆嚢底部の腺癌は10mm弱で,粘膜の癌は筋層内浸潤とともにRAS内にも拡がる深達度mpの高分化腺癌であった.更にRAS腺上皮にはmucinous papillary adenoma様所見と異型上皮も見られ,本症例では腺上皮が増殖の過程において種々の形質を獲得した可能性が示唆された.
  • 明石 諭, 中島 祥介, 金廣 祐道, 青松 幸雄, 大橋 一夫, 中野 博重
    1998 年 59 巻 8 号 p. 2142-2146
    発行日: 1998/08/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は58歳女性.心窩部痛を主訴に来院. CA19-9値の異常高値および画像診断にて肝尾状葉の胆管細胞癌と診断した.腫瘍は径5cm大で下大静脈への浸潤が疑われたもののリンパ節の腫大は認めなかったため,リザーバーを留置し, 5-FU 500mg, ADM 20mg, MMC 4mgによる肝動注化学療法(1回/2w,計6回)を施行した,化学療法により腫瘍は径2cm大へと縮小し, CA19-9値の著明な低下も観察した.しかし, CA19-9値の低下には限界があり,根治を目的に肝切除術を施行した.病理学的検査においても腫瘍部分の多くは壊死に陥っており,術前の化学療法の有効性が確認された.
    胆管細胞癌に対する化学療法の確立された薬剤使用法に関する十分な検討はなされておらず,またその有効性は低いと一般的に認識されている.本症例は術前肝動注化学療法の有効性が画像的,血液学的そして病理学的にも確認され,貴重な症例と考え報告した.
  • 浦上 秀次郎, 嶋田 昌彦, 川本 清, 松本 秀年, 森 光生, 渡辺 衛
    1998 年 59 巻 8 号 p. 2147-2151
    発行日: 1998/08/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    非機能性膵ラ氏島腫瘍は特有な症状がないため,術前診断は困難な場合が多い.われわれは膣壁腫瘍を契機として診断され,手術時に肝転移および腹膜転移を有し長期生存している1例を経験した.症例は当院婦人科にて膣壁腫瘍の部分切除後,脾臓に9cm大の腫瘍を指摘され,脾腫瘍切除目的で当科にて手術を施行した(手術時29歳).膵尾部より発生した腫瘍が脾に直接浸潤し,肝両葉に小豆大の転移巣を多数認め,大網にも栂指頭大の腫瘤が認められた.膵尾部脾合併切除術を行い,病理組織診断にて肝転移,腹膜転移を有する非機能性膵ラ氏島腫瘍と診断され,膣壁腫瘍も転移巣と考えられた.術後,肝動脈よりMMC 30mgとgelformの動注塞栓療法を行い, UFT 400mg/day, PSK3g/dayを投与した.術後10年の現在,肝転移の増大による腹部腫瘤の触知,腹水および食道静脈瘤を認める.
  • 今村 敦, 斉藤 隆道, 中本 博之, 松井 康輔, 松井 陽一, 印牧 俊樹, 高井 惣一朗, 權 雅憲, 上辻 章二, 上山 泰男
    1998 年 59 巻 8 号 p. 2152-2156
    発行日: 1998/08/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は49歳女性. 34歳時より糖尿病の診断の下に,インスリン自己施注による加療を行っていた. 45歳時,慢性膵炎の診断を受けた際膵頭部に嚢胞性病変を指摘され,以後経過観察を受けていた.平成8年より嚢胞の増大傾向が認められ, ERP検査では主膵管との交通を認める膵頭部多発性嚢胞を認めた.超音波内視鏡検査で粘液性嚢胞腺腫の疑いの診断を受け手術加療目的で当科入院となる.膵頭部多発性嚢胞に対して膵頭十二指腸切除術を施行した.病理組織学的には膵頭部を中心に多発性に嚢胞性病変が認められ,漿液性膵嚢胞腺腫の診断を受けた.従来,漿液性嚢胞腺腫は大膵管系との交通は非常にまれとされ, ERP検査上明らかに交通の認められたものは他に報告例は認められない.今回われわれは高度に主膵管と交通を認めた膵頭部漿液性嚢胞腺腫の1例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.
  • 小橋 研太, 松田 忠和, 高倉 範尚, 中山 文夫, 古口 契児, 船曵 定実
    1998 年 59 巻 8 号 p. 2157-2160
    発行日: 1998/08/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    節外性リンパ腫の中でも非常に稀な膵悪性リンパ腫の1例を経験したので報告する.症例は, 60歳男性で腹部腫瘤を主訴に受診した.腹部US, CTにて膵頭部に充実性腫瘤を認め, ERCPでは膵管の平滑なnarrowingと腫瘍内への造影剤の漏出を認めた.血管造影ではencasementは認めず圧排伸展像のみを認めた. non-functioning islet cell tumorもしくはsolid cystic tumorとの術前診断で,幽門輪温存膵頭十二指腸切除術施行した.病理学的免疫学的検索にてdiffuse lymphoma, B cell and medium sized cell typeと診断された.術後, CHOP療法を2 course行った.しかし術後87日目より多発性硬化症を合併し術後243日目に死亡した.
  • 萩原 淳, 湯ノ谷 誠二, 佐藤 敏美, 宮崎 耕治
    1998 年 59 巻 8 号 p. 2161-2165
    発行日: 1998/08/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    術前,術中を通し,診断し得なかった脾原発悪性リンパ腫の1例を経験した.症例は68歳男性, 2年前より胆石発作を繰り返していたが,この胆石症の経過観察中に,腹部CTにて脾門部に2個の腫瘤を認め,腹部超音波,超音波内視鏡,腹部MRI,血管造影などを施行したが,これらの画像診断によっても確定診断が得られず,手術を施行した.当初,脾門部腫瘤に対して核出術を試みたが,出血のためこれらの腫瘤を含め脾臓摘出術を施行した.術後標本整理の段階で,脾割面に径1.2cmの腫瘍を初めて確認し,最終的に脾門部リンパ節転移を伴う脾原発悪性リンパ腫(diffuse, small or medium-sized cell type, B細胞型)との病理組織診断を得た.
    脾臓原発悪性リンパ腫の単発例としては本邦報告例中,最小であったので報告する.
  • 江本 健太郎, 高橋 忠照, 呑村 孝之, 大森 一郎, 林 始, 加藤 良隆
    1998 年 59 巻 8 号 p. 2166-2169
    発行日: 1998/08/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    直腸癌の副腎転移はしばしば認められるが,外科的切除が可能であった孤立性副腎転移は非常に稀である.今回われわれは自験例を中心に本邦報告例7例について文献的考察を加えて報告する.
    症例は63歳の女性.平成8年2月直腸癌腔浸潤の診断にて腹会陰式直腸切断術および腟子宮合併切除術を施行した.病理組織学上,中分化型腺癌でありStage IIIaであった.その後外来通院中に, CEAが徐々に上昇,平成9年4月CT上,左副腎腫瘍を認めた.内分泌検査では異常を認めず,転移性副腎腫瘍の疑いにて同年5月,摘出術を施行した.組織学的検査の結果,直腸癌の副腎転移と診断した.術後7カ月後の現在,再発は認められていない.
    本邦報告例においていずれも腫瘍摘出後,長期の生存が得られていることから,発見次第積極的に手術することが望ましいと思われた.
  • 河野 修三, 池上 雅博, 笹屋 一人, 大森 秀一郎, 山崎 洋次
    1998 年 59 巻 8 号 p. 2170-2173
    発行日: 1998/08/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は67歳の男性.平成9年7月24日に直腸の全周性狭窄に対する精査のために入院した.下部消化管内視鏡検査では肛門縁より4cmの部位に高度狭窄を認めたが粘膜は発赤所見のみで腫瘍性病変を認めなかった.狭窄部からの生検でも悪性所見は得られなかった.腹部CT検査では前立腺部に小さな石灰化像を認めたが,骨盤腔内および腹腔内に腫瘤性病変を認めなかった.組織生検を目的に手術を施行した.仙尾関節右側より肛門縁6時の位置までの皮切をおき,直腸周囲の紐状の硬結を一部切除した.病理組織検査の結果より前立腺原発の中分化型腺癌と診断した. PAPも900ng/mlと上昇していたため泌尿器科でホルモン療法を施行し狭窄は完全に消失した.
    前立腺癌が原因となり直腸狭窄をきたすことはまれであるが,本症例では腫瘤を形成せず直腸狭窄をきたした.
  • 石崎 雅浩, 岡野 和雄
    1998 年 59 巻 8 号 p. 2174-2179
    発行日: 1998/08/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    われわれは虫垂間膜から発生し虫垂に強固に癒着した巨大腹腔内デスモイド腫瘍の1例を経験したので報告する.
    症例は17歳の女性で,急速に増大した腹部腫瘤を主訴に当院婦人科に紹介された.来院同日より著しい腹痛を来たし卵巣腫瘍の茎捻転を疑われ緊急手術となった.腫瘤 (20.0×15.5×13.0cm, 2,500g) は虫垂および回盲部に浸潤し,下腹部骨盤腔全体を占めていた.両側の卵巣には異常はなかった.腫瘍および結腸・回腸をそれぞれ約20cmずつ含め回盲部切除術を施行した.病理組織学的にはデスモイド腫瘍と診断され,虫垂間膜から発生したものと推測された.術後経過は良好で術後約3週間で退院し,術後2年後の現在でも再発を認めていない.
    デスモイド腫瘍は本来良性疾患とされているが,局所再発率が高く慎重なフォローアップが必要と考えられる.
  • 尾崎 信三, 堀見 忠司, 岡林 孝弘, 公家 健志, 中城 徹, 永野 克二, 野口 洋文
    1998 年 59 巻 8 号 p. 2180-2184
    発行日: 1998/08/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    われわれは2例の腸間膜原発脂肪肉腫を経験した.症例1は56歳の男性で腹部膨満感を主訴に入院した. 1979年の初回手術時は主病巣は巨大で小腸腸間膜に存在しており,その他散在性に小結節性病変を認め,主病巣は小腸と合併切除した.その後再発を繰り返し3回の手術を施行したが,心不全にて1989年8月に死亡した.症例2は61歳の女性で,下腹部から左季肋部の痔痛を主訴に入院した.腹部CTでは腸間膜に高吸収域を認め, MRIでは同部位はT1強調画像で中等度の信号, T2強調画像では高信号を呈していた.これらの所見から小腸腸間膜の軟部組織腫瘍,特に脂肪腫あるいは脂肪肉腫が疑われた.開腹所見として黄色の腫瘍が小腸腸間膜にび漫性に浸潤しており,この腫瘍は上腸間膜動静脈を巻き込んでいた.根治的切除をあきらめ,組織診断目的に腫瘍の部分切除を施行した.その結果,病理組織診断はLiposarcomaで,術後2カ月の現在特に腫瘍の増大等認めていない.
  • 内藤 明広, 川原 勝彦, 岩田 宏, 田那村 収
    1998 年 59 巻 8 号 p. 2185-2188
    発行日: 1998/08/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    慢性被包性腹膜炎は以前腸管膜包裏症と称され線維性被膜により腹腔内臓器が覆われる比較的稀な疾患である.本症の2例につき報告する.
    症例1は69歳,男性.心窩部不快感で当院受診.消化管の悪性腫瘍を疑い開腹術施行.小腸全体がゴム様被膜に覆われていた.病理では非特異性炎症と診断された.
    症例2は49歳,男性.食欲不振と腹部膨満感のため当院受診.肺結核の既往あり.著明なイレウスで緊急手術施行.腸管全体が線維性の薄い被膜で覆われていた.病理では非特異性炎症と診断,結核性変化は認められなかった.
    慢性被包性腹膜炎の術前診断は困難だが,開腹手術の既往がなくイレウス症状を呈する患者は,本症である可能性がある.
  • 岡野 正裕, 三国 聡, 上林 正昭, 栗林 弘
    1998 年 59 巻 8 号 p. 2189-2192
    発行日: 1998/08/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    後腹膜脂肪肉腫は症状発現が遅く,発見される頃には巨大腫瘍となっていることが多い.再発のため計4回の手術を行い,初回手術から5年を経た現在も生存している1例を経験したので報告する.症例は79歳,女性で, 1992年10月腹部膨満感,右下腹部痛を主訴に入院,腹部CTでは境界明瞭で,内部が不均一な腫瘤を認め,第1回目の手術を行った.摘出標本は40cm,重さ10kgであった.腹部CTで骨盤腔に約10cm大の腫瘍を認め, 1996年1月第2回目の手術を行った.腫瘍摘出と子宮全摘出術を行った. CTで左上腹部に腫瘍の再発を認めたため, ll月に第3回目摘出術を行った.摘出標本は大きさ20cm,重さ2kgであった. 1997年8月再発にて第4回目の手術を施行,腫瘍は14cm, 0.4kgであった.本症の治療は外科的切除が原則であり,再発を認めた場合には積極的に摘出術を行うことが必要であると思われた.
  • 成瀬 博昭, 片山 良彦, 宮本 康二, 池田 庸子, 加納 宣康, 稲田 潔
    1998 年 59 巻 8 号 p. 2193-2196
    発行日: 1998/08/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    予後不良と言われる胆嚢癌と肺癌の異時性重複癌に手術を施行し良好な経過をとっている症例を経験したので報告する.症例は60歳男性. 1990年7月,十二指腸と結腸に浸潤する胆嚢癌にて胆嚢摘出,肝床切除,膵頭十二指腸切除および結腸右半切除術を施行した.病理診断は低分化腺癌, ss, n1.術後MMC (10mg),ファルモルビシン(20mg)の2回の投与とUFT (300mg/日)の内服加療が開始された.経過は良好であったが術後4年,右S6に肺腫瘍を指摘され,気管支鏡検査にて腺癌と診断した.他に転移を疑う所見はなく94年6月右下葉切除, R2aのリンパ節郭清術を施行した.病理診断は高分化腺癌, p0n0. CEA, CA19-9の染色結果などより異時性重複癌と診断した.第2癌が肺癌の場合でも可能であれば積極的な治療を試みるべきであると考えられた.第1癌の術後化学療法と第2癌発生との関連の分析は困難であった.
  • 松友 寛和, 後藤 明彦, 仁田 豊生, 市橋 正嘉, 多羅尾 信
    1998 年 59 巻 8 号 p. 2197-2200
    発行日: 1998/08/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    75歳,女性. 1995年5月24日朝より腹部激痛を自覚,増強するため救急搬送された.右上腹部に腹膜刺激症状を認め,腹部CTでは胆嚢,右腎の腫大と胆石を認めた.白血球数14,800/μl,血糖746mg/dlと高値であった.腹膜炎の診断で,緊急開腹術を施行した.胆嚢は緊満,腫大し数個の結石を触知した.さらに右腎を露出するに,腎表面には小顆粒状の膿瘍が多発,一部に膿が漏出していた.胆石胆嚢炎および膿腎症と診断し胆嚢と右腎を摘出した.胆嚢は体部から底部に30×35mmの不整形の隆起性病変が認められた.また腎の大部分は暗赤色に変色していた.病理組織学的に,胆嚢の隆起性病変は乳頭腺癌と診断された.また尿管の断端近傍から腎孟にかけて移行上皮癌が認められ,尿管と胆嚢の同時性重複癌と診断された.尿管癌により尿管の機能低下を来し,逆行性感染から膿腎症を発生した可能性が示唆された.
feedback
Top