日本臨床外科学会雑誌
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59 巻, 9 号
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  • 永野 靖彦, 吉本 昇, 三浦 靖彦, 南湖 正男, 江口 和哉, 中島 進, 片村 宏, 山口 孝治, 北川 正明, 細井 英雄
    1998 年 59 巻 9 号 p. 2203-2207
    発行日: 1998/09/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    1992年から1996年までの5年間に当科で経験した85歳以上の消化器癌患者手術例29例について検討した.疾患は胃癌13例,大腸癌14例,胆嚢癌2例であった.術後合併症は約半数の14例に認められ,せん妄や肺合併症の頻度が高かった.平均術後在院日数は38日で, 22例(76%)は軽快退院し,在院死亡は7例で全て高度進行癌であった.術前検査所見と術後合併症発生頻度に相関は見られなかったが,長時間手術,大量の術中出血が合併症発生の危険因子になり得ると考えられた.大腸癌は胃癌と比較し,合併症発生率および在院死亡率が明らかに低かった.超高齢者といえども,高度進行胃癌を除けば良好な結果が得られた.また進行癌は合併症発生率が極めて高いが,その60%以上にperformance statusの改善がみられており, quality of lifeの改善が可能と考えられる場合は手術を考慮すべきであると考えられた.
  • 吉村 吾郎, 櫻井 武雄, 尾浦 正二, 玉置 剛司, 梅村 定司, 粉川 庸三
    1998 年 59 巻 9 号 p. 2208-2214
    発行日: 1998/09/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    遠隔転移を有しない閉経前乳癌44例を対象として,術後補助化学療法として投与されたCEF (cyclophosphamide, epirubicin, 5-fluorouracil) が卵巣機能と骨代謝に及ぼす影響について検討を行った.平均4.9サイクルのCEFが投与され,治療前後で血中ホルモン値と腰椎骨塩量を測定した. 44例中22例(50%)が無月経となり,無月経群では閉経期レペルにまでestradiolは低下し, FSHは上昇していた.無月経発現と年齢には相関があり, 40歳未満で無月経例はなかったが, 40歳以上では加齢とともに無月経の頻度が増加した.月経継続群の腰椎骨塩量は治療前後で有意差を認めなかったが,無月経群では6カ月で3.9%低下した(前値1.063±0.111g/cm2, CEF後1.021±0.111g/cm2, p<0.01). CEF療法による卵巣機能抑制により,急激な骨量減少を来すことが確認された.
  • 小長井 直樹, 前田 光徳, 佐伯 直純, 工藤 龍彦, 石丸 新
    1998 年 59 巻 9 号 p. 2215-2218
    発行日: 1998/09/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    成人心房中隔欠損症の術後遠隔期における血行動態の推移を検討する目的で,術後12~60カ月経過した20例に心臓カテーテル検査を行い術前と比較した.
    術前の平均肺動脈圧は高齢者で高い傾向があったが,シャント率やQp/Qsとは関係なかった.平均肺動脈圧は術前22.1±8.9mmHgから遠隔期15.9±3.6mmHgへ,平均肺対体血圧比は0.19±0.18から0.10±0.05へと有意に低下し,肺動脈の不可逆的な閉塞性変化は生じていないと思われた.
    全例術後に心不全症状を呈することなく,良好なquality of lifeを得ており,高齢者でも積極的に手術治療を選択することが望ましい.
  • 羽賀 將衛, 大谷 則史, 川上 敏晃
    1998 年 59 巻 9 号 p. 2219-2222
    発行日: 1998/09/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    腹部大動脈瘤および腸骨動脈瘤に対する,瘤空置・バイパス術の有用性について,瘤切除・人工血管置換術と比較し,検討した.対象は,過去3年間に当科において手術を施行した,腹部大動脈瘤および腸骨動脈瘤50例で,内訳は男性40例,女性10例,年齢は48歳から82歳までの平均69.9歳.これらに対し, 25例に瘤切除・人工血管置換術, 25例に瘤空置・バイパス術を施行した.大動脈遮断時間は瘤切除群に比べ瘤空置群において有意に短く,術中出血量は瘤空置群において有意に少なかった(p<0.05).手術時間および血小板減少率は,両群間に差はなかった.瘤空置・バイパス術は,瘤切除・人工血管置換術に比べ手術侵襲の軽減を図ることができ,特にハイリスク症例において有用な術式と考えられる.
  • 木戸川 秀生, 伊藤 重彦, 中谷 博之, 鹿島 清隆, 井手 誠一郎, 中村 昭博, 小林 誠博, 吉田 一也, 梶原 啓司, 大江 久圀
    1998 年 59 巻 9 号 p. 2223-2229
    発行日: 1998/09/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    大腸癌イレウスについてイレウスを呈しない大腸癌と比較し,特にその長期予後に関して検討した.当科において経験した大腸癌症例357例のうちイレウスを初発症状とした79例(21.1%)をイレウス群,イレウス症状を呈しなかった非イレウス群278例(79.9%)を対照とした.なおイレウス症状とは臨床的に腹痛,嘔吐,腹部膨満などを呈し,立位腹部単純X線像で鏡面像を呈し何らかの減圧処置を要した症例とした.イレウス群は高齢者に多く,下行結腸に発生する頻度が高かった.また深達度が深く,腹膜播種性転移陽性が多かったが,腫瘍型,リンパ節転移,肝転移,静脈侵襲,リンパ管侵襲,組織型,進行度では両者に差はみられなかった.全生存率は有意にイレウス群が不良であったが,治癒切除例では両群間に差はみられなかった.多変量解析では根治度,性別,リンパ節転移の有無,深達度が大腸癌の予後因子として重要であった.
  • 棚田 稔, 佐伯 俊昭, 高嶋 成光, 多幾山 渉, 栗田 啓, 横山 伸二, 久保 義郎
    1998 年 59 巻 9 号 p. 2230-2234
    発行日: 1998/09/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    1980年1月より1993年12月までに当院外科で切除した大腸癌716例において,他臓器浸潤大腸癌の臨床病理学的特長と治療方針について検討した.
    si・ai症例(n=49)はse・a2症例(n=379)に比べ,予後不良であったが,根治度A症例(n=22)に限ると5, 10年生存率は47%, 47%とse・a2症例(n=274)の65%, 51%と比べ差を認めなかった. Si・Ai症例(n=72)では根治度A症例(n=41)の5年生存率は54%で,予後因子はリンパ節転移のみであった.根治度B, C症例(n=31)では5年生存例はなかった.また, Si・Ai症例の組織学的正診率は68%で尿管,膀胱,前立腺,精嚢,腟の正診率が悪かった.しかしながら,組織学的癌浸潤と炎症性癒着の鑑別は不可能であり,また再発例の検討で局所再発の頻度が高いことを考えあわせると,現時点では他臓器浸潤が疑われ根治度Aの手術が可能な症例には積極的に浸潤臓器の合併切除を施行すべきである.
  • 馬場 信年, 秋山 弘彦, 亀田 彰, 大田 耕司, 向田 秀則, 平林 直樹, 久松 和史, 岩森 茂
    1998 年 59 巻 9 号 p. 2235-2241
    発行日: 1998/09/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    早期直腸癌46例を臨床病理学的に解析し,適切な早期直腸癌に対する外科的治療法について検討した.粘膜内癌(m癌)は22例であり, 10例に局所切除, 12例にリンパ節郭清をともなう直腸切除(直腸切断を1例含む)を施行したが, 22例,すべて脈管侵襲は認められず,12例,いずれもリンパ節転移はなかった.また,直腸切除例では, 12例中3例 (25.0%) で術後合併症を認めたが,局所切除例には合併症はなかった.以上より, m癌は局所切除が適応であると考えられた.一方,粘膜下層に浸潤する癌(sm癌)24例のうち, 6例に局所切除を, 18例にリンパ節郭清をともなう直腸切除(直腸切断を6例含む)を施行したが, 24例中10例 (41.7%) にリンパ管侵襲を認め,直腸切除例18例中5例 (27.8%) にリンパ節転移を認めた.そして局所切除6例のうち1例 (16.7%) に局所再発を認めた.リンパ管侵襲やリンパ節転移および局所再発を認めたのは,すべてsm中層以深に浸潤した例であった.以上より, sm癌,とくにsm中層以深に浸潤する例ではリンパ節郭清が必要であろうと考えられた.術前の深達度診断を正確に行うため超音波内視鏡検査 (EUS) を9例の早期直腸癌に施行したところ,術式選択に補助診断として有用であることが示唆された.
  • 海東 恵子, 山下 良平, 小杉 光世
    1998 年 59 巻 9 号 p. 2242-2245
    発行日: 1998/09/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は28歳女性.頸部超音淑検査で甲状腺左葉背側にhypoechoic massを指摘された.経皮的吸引細胞診で確定診断が得られなかったため, 1997年5月16日,腫瘍摘除術を行った.腫瘍は下咽頭左側壁より発生し,線維性被膜に被われて圧排性に発育していた.組織学的に腫瘍細胞は胞体内に特徴的な好酸性顆粒を有し,抗S-100蛋白抗体染色陽性であった.術後経過良好で第5病日に退院した.本症例の顆粒細胞腫は下咽頭壁筋層より発生したものと考えられたが,このような頸部顆粒細胞腫の報告例は極めて稀である.本腫瘍は組織学的に良性とされるが,臨床的に再発したり悪性の経過をとることがあり可及的切除が望ましい.
  • 朝倉 奈都, 沖津 宏, 田渕 寛, 津田 洋, 佐尾山 信夫, 吉田 冲
    1998 年 59 巻 9 号 p. 2246-2249
    発行日: 1998/09/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    乳腺線維腫症は稀な疾患であり,本邦においては数例の報告があるのみである.今回われわれは乳腺線維腫症の1例を経験したので文献的考察を加え報告する.
    症例は56歳女性で,左乳房の腫瘤を主訴に来院した.上外側部に発赤と陥凹を伴う6×4cmの境界不明瞭な腫瘤が触知された.臨床所見, mammography,乳腺エコー検査においては乳癌との鑑別は困難で,穿刺吸引細胞診では悪性の所見は認められないものの,やはり悪性は否定できず, Quadrantectomyを施行した.術後病理診断は乳腺線維腫症であった.術後27カ月の現在,再発の徴候はない.乳腺線維腫症は浸潤性増殖を示し,しばしば局所再発を認めるが,転移はしないとされている.よって今後も厳重な経過観察が必要である.
  • 全並 秀司, 伊藤 寛, 山下 年成, 佐藤 陽子, 水野 幸太郎, 本多 弓余
    1998 年 59 巻 9 号 p. 2250-2253
    発行日: 1998/09/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    比較的稀な乳腺原発の非上皮性悪性腫瘍である間質肉腫(stromal sarcoma)の1例を経験したので報告する.症例は48歳,女性.右乳房AB領域に3.0×3.0cmの表面平滑,境界明瞭で可動性良好な硬いdimplingを呈する腫瘤を触知した.穿刺吸引細胞診で脂肪肉腫が疑われたことから,確定診断の目的で局所麻酔下に腫瘤摘出術を施行した.病理組織学的診断では乳腺原発の間質肉腫と診断され,胸筋温存乳房切除術および腋窩郭清を施行した.リンパ節転移はなく,化学療法は施行せず外来で経過観察中である.
  • 伊藤 寛, 全並 秀司, 山下 年成, 佐藤 陽子, 水野 幸太郎, 本多 弓〓, 岩瀬 弘敬, 高橋 智
    1998 年 59 巻 9 号 p. 2254-2257
    発行日: 1998/09/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    比較的稀な乳腺悪性葉状腫瘍(本症)の1例を経験した.症例は45歳,女性, 6カ月間に急速に増大した左乳房の腫瘤を主訴として来院した.術前に施行した穿刺吸引細胞診にて高度の異型核,腫大した不整な核小体とクロマチンの粗造な分布をみたことから,本症を疑い,非定型的乳房切除術を施行した.病理組織学的検査にて確定診断し,免疫組織学的検査にてc-erbB-2蛋白染色では陽性の所見がみられた.術後1年6カ月の現在,局所再発,遠隔転移の兆候はみられていない.本症の多くの症例では手術後に確定診断される症例が多いが,自験例では術前に本症を良性例と鑑別する上で穿刺吸引細胞診は有用であったと考えている.c-erbB-2遺伝子と本症との関連についてはいまだ不明の点が多く今後の検討を待ちたい.
  • 斉藤 正信, 高田 譲二, 三澤 一仁, 真鍋 邦彦, 秦 温信, 佐野 文男
    1998 年 59 巻 9 号 p. 2258-2262
    発行日: 1998/09/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    われわれは極めて稀な多彩な組織像を伴った骨・軟骨化生乳癌の1例を経験したので報告する.症例は55歳女性・左乳房の陥凹を主訴に当院を受診した.触診,マンモグラフィー,超音波と吸引細胞診で乳癌と診断した.腫瘍はC, D, E領域にあり3.9×3.7cm, T2a, N0, M0, Stage IIであったため,非定型的乳房切断術を施行した.病理組織学的検索にて腫瘍は骨・軟骨化生,アポクリン化生,紡錘細胞の浸潤と多彩な組織像を伴う浸潤性乳癌例でt2, n0, m0,stage Iと診断された.術後1年を経過するが再発を認めていない.
  • 恵木 浩之, 田部 康次, 大下 彰彦, 藤崎 成至, 山中 達彦, 中村 雄二
    1998 年 59 巻 9 号 p. 2263-2266
    発行日: 1998/09/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    乳房の発赤,腫脹を特徴とする乳癌を炎症性乳癌 (inflammatory carcinoma of the breast) という.炎症性乳癌は,通常の乳癌と比較し予後不良で特殊な病型に分類されている.以前は手術単独療法のみでは5年生存率数%と成績が非常に悪かったため手術が禁忌とされる時代もあった.その後研究が進むにしたがって,手術と化学療法を中心とした集学的治療で50%を越える5年生存率を示す報告もみられるようになってきた.
    本症例は60歳女性.乳房腫瘤の急速な増大と著明な発赤,腫脹を主訴に当科受診,炎症性乳癌と診断した.われわれは本症例に対し,術前後に化学療法 (CAF) を併用した手術療法を施行した.炎症性乳癌は全身療法,動注療法を含めた化学療法を併用した集学的療法が効果的であると言われており,積極的に導入するべきであり,今後さらなる工夫により治療法の発展が必要である.
  • 水沼 和之, 市場 康之, 今岡 泰博, 石崎 康代, 日山 享士, 片山 幸治, 住元 了, 江藤 高陽, 高橋 信
    1998 年 59 巻 9 号 p. 2267-2270
    発行日: 1998/09/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    稀と考えられる異所性乳癌の1例を経験し報告した.症例は67歳女性で左腋窩腫瘤を主訴に来院した.生検の結果,髄様癌で周囲に乳腺組織を認めるも,固有乳腺との連続性は認められなかった.全身検索にて,他に原発と認められる病変を認めず,臨床的にも異所性乳癌が疑われたため,広範囲局所切除とLevel IIIのリンパ節郭清を行った.術後10カ月経過し,無再発生存中である.
  • 國友 隆二, 宇藤 純一, 平田 智美, 原 正彦, 北村 信夫
    1998 年 59 巻 9 号 p. 2271-2274
    発行日: 1998/09/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    腎動脈下腹部大動脈瘤と進行S状結腸癌を合併した症例に対し,一期的手術を施行した.本症例では再発肺癌も合併しており,手術時期を逸さない為にも一期的手術が必要であった.手術は,大動脈瘤切除・人工血管置換を先行させ,引き続き左半結腸切除術を施行した.グラフト感染予防策としては,術前十分なcolon preparationを行い,手術では汚染による感染防止のために人工血管置換後,後腹膜を特に密に閉鎖し,さらにガーゼで被覆してから結腸手術に移った.また,結腸切離時GIAを用い腸液による術野の汚染を防止すると共に,吻合開始まで腸粘膜が術野に露出しない様にした.術後経過はグラフト感染もなく順調であった.本症例は,たとえ下部大腸進行癌と腹部大動脈瘤が合併していても,グラフト感染予防に細心の注意を払えば,同一術野においても一期的手術が可能なことを示唆するものと考えられた.
  • 斉藤 誠, 三角 俊毅
    1998 年 59 巻 9 号 p. 2275-2278
    発行日: 1998/09/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は73歳の男性.突然の胸背部痛を主訴に近医受診し,吐血も認めたため,精査目的にて当院紹介入院となった.緊急内視鏡検査にて下部食道右壁に露出血管を伴う潰瘍を認めたため,止血術を施行.翌日の内視鏡検査にて止血は確認されたが,潰瘍底に気泡の発生を認めたため,食道潰瘍穿孔と診断された.内視鏡で逆流性食道炎の所見は認めず,食道潰瘍の既往歴や飲酒習慣もなかった.ただ受診3日前に急性上気道炎の診断で,近医にて投薬(抗生物質,非ステロイド抗炎症薬:以下NSAID) を受けており,この男性は水分摂取なしに薬を服用する習慣があったため,食道内に長時間残存した内服薬が原因で食道潰瘍を生じ,穿孔したものと考えられた.保存的治療にて経過観察中,壁側胸膜外膿瘍を認めたため, CTガイド下ドレナージ術を施行し,その後治癒退院となった.薬剤性食道潰瘍穿孔とその保存的治療について,若干の考察を加えて報告する.
  • 堤 謙二, 宇田川 晴司, 梶山 美明, 木ノ下 義宏, 秋山 洋, 鶴丸 昌彦
    1998 年 59 巻 9 号 p. 2279-2283
    発行日: 1998/09/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    左主気管支浸潤を認めた胸部食道癌にバイパス術を行い,術後放射線療法施行,初回手術から3年経過の後,食道を切除し得た症例を経験したので報告する.症例は68歳男性, 1992年9月より嚥下困難出現し当院受診,精査にて食道Im>Iu, 2Typeの進行扁平上皮癌の診断.遠隔転移無く全身状態良好で11月手術施行.術中所見にて左主気管支にA3,切除不能であったが,嚥下困難等考慮しバイパス術施行した.術後少量CDDPを併用した放射線療法施行 (60Gy).退院後外来にて定期検査施行していたが,術後3年経過し再発所見無く放射線治療が著効していると思われ,且つ食道外瘻が本人のQOLを低下させていると判断し, 1996年2月,左開胸下に残置食道切除術を施行した.左主気管支との間は強固な癒着を示すも何とか剥離可能であった.摘出標本に癌遺残無く,縦隔リンパ節にも転移無し. 1998年1月現在再発徴候無く経過している.
  • 金 柄老, 西 敏夫, 川崎 勝弘, 柳生 俊夫, 岸渕 正典, 森 武貞
    1998 年 59 巻 9 号 p. 2284-2288
    発行日: 1998/09/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は, 37歳女性.弟の上腸間膜静脈血栓症を契機に先天性アンチトロンビンIII (以下, ATIIIと略記)欠乏症と診断されており,入院時のATIII活性は56.8%であった.今回,胃角部のIIC胃癌の診断にて幽門側胃切除術を施行した.周術期の血栓予防のため手術前日よりATIII濃縮製剤の投与を行い,術後1週間はATIII活性値を80%以上に維持した.術中,術後に血栓症の発生を認めることなく退院となった.本症においては手術が血栓症のリスクを増大させることがわかっている.手術時にはヘパリンなどによる一般的な抗凝固療法では不十分であり, ATIII濃縮製剤によるATIII値の是正が重要と考えられた.
  • 森永 秀夫, 唐木 芳昭, 宗像 周二
    1998 年 59 巻 9 号 p. 2289-2294
    発行日: 1998/09/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    十二指腸水平脚の粘膜下腫瘍に対し,手術を施行し良好な経過をたどった1例を経験した.腫瘍の組織学的所見,および免疫抗体染色にてgastrointestinal stromal tumor (GIST)と考えられた. GISTの若干の文献的考察を加え報告する.症例は49歳,女性.心窩部痛,眩量を主訴に来院.上部消化管内視鏡にて,十二指腸水平脚に出血を伴う粘膜下腫瘍を認めた.外科的治療の適応と考え,十二指腸部分切除を行った.術後8カ月を経過した現在においても吻合部狭窄,再発は認めず,経過は良好であった.腫瘍は管内外性に発育し,膵頭部との境界は明瞭であった.組織学的所見としては,細胞は紡錘形の核と細胞質を有し,充実状~胞巣状に配列,核分裂像はほとんど認めなかった. SMA, desminが(-), S-100蛋白, NSEが(+/-) で,神経系腫瘍(GANT)が考えられた.
  • 井上 智博, 泉 勝, 大和田 進, 竹吉 泉, 小川 哲史, 森下 靖雄
    1998 年 59 巻 9 号 p. 2295-2299
    発行日: 1998/09/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    十二指腸乳頭部腺腫は比較的稀な疾患とされている.今回われわれは,十二指腸乳頭部腺腫に多発性大腸腺腫内癌を合併した1症例を経験したので報告する.症例は67歳男性で,発熱と黄疸で入院し,精査により十二指腸乳頭部腫瘍と大腸腺腫と診断された.乳頭部腫瘍に対しては局所切除と乳頭形成術を行い,現在再発の徴候はない.本症の治療には一定の見解は無いが,悪性所見を認めないときには局所切除と乳頭形成術を選択すべきと考える.また大腸腺腫の合併も考慮し,下部消化管検査は必須である.
  • 福田 直人, 館花 明彦, 吉良 邦彦, 秋山 竹松
    1998 年 59 巻 9 号 p. 2300-2304
    発行日: 1998/09/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は29歳,男性.腹痛・嘔吐を主訴に緊急入院となった. 2日目より水様性下痢出現し, 6日目に腹部CT上,高度の腹水・腸管浮腫・麻痺性イレウスを認めたため,急性腹膜炎の診断で緊急開腹術を行った. 1,800mlの漿液性腹水と小腸の高度炎症がみられ,特に壊死性であった部分90cmを切除し,空腸瘻・回腸瘻を造設した.切除標本の組織検査でフィブリノイド壊死と好中球浸潤が粘膜下小動脈に認められ,結節性多発動脈炎と診断された.術後,腎不全を合併したが血液透析で回復した.また原疾患に対してはステロイド投与により治療を行った.小腸壊死を合併する結節性多発動脈炎例は比較的稀である.自験例を含めて本邦報告例を集計し,文献的考察を加えた.
  • 伊藤 慶則, 林 周作, 石川 雅一, 加藤 克己, 宇佐見 詞津夫, 小谷 彦蔵
    1998 年 59 巻 9 号 p. 2305-2309
    発行日: 1998/09/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    今回われわれはRecklinghausen病に合併した小腸のstromal tumor (ST)により穿孔性腹膜炎をきたし,さらに術後に肝膿瘍を併発した1例を経験したので報告する.
    症例は, 53歳女性.既往歴にRecklinghausen病がある. 1997年3月中旬より時々腹痛があり, 4月3日夜,腹部全体に疼痛が増強したため,当院受診し入院となった.腹部CTでfree airを確認したため,緊急手術となった.開腹すると,小腸腫瘍を認め,その口側腸管で穿孔を来していた.小腸部分切除術および腹腔ドレナージを施行した.切除標本の病理組織学的検索で腫瘍はSTと診断された.術後経過においては,術後6日目より発熱をきたし,術後19日目に腹部CTを施行すると,肝のS6に直径3cmのlow density areaを認め,肝膿瘍と診断した.経皮経肝的に膿瘍内ヘドレナージチューブを留置し,保存的治療にて軽快した.
  • 門野 潤, 浜田 信男, 石崎 直樹, 渋谷 寛, 田中 紘輝, 平 明
    1998 年 59 巻 9 号 p. 2310-2313
    発行日: 1998/09/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    Press through package (PTP)は現在薬包として本邦で広く用いられているが,消化管異物としての問題も生じている.今回われわれはPTP誤飲による回腸穿孔症例を経験した.自験例を含む報告例16例の集計を加え報告する.症例は75歳,男性で平成9年7月19日より黒色便を認め, 7月21日より下腹部痛が出現した. 7月22日汎発性腹膜炎の診断のもと緊急開腹術を行い回腸末端に穿孔部を認め回盲部切除を行った.切除腸管内の穿孔部にPTP (塩化カリウム製剤)の角が刺入していた.
    PTPの誤飲予防の啓蒙,投薬方法, PTPの形状,材質の工夫が必要であると考えられた.不注意による誤飲が多く,精神状態の如何に関わらず高齢者の消化管異物の鑑別疾患として念頭に置く必要がある.
  • 高橋 祐, 長谷川 洋, 小木曽 清二, 長澤 圭一, 谷合 央, 籾山 正人
    1998 年 59 巻 9 号 p. 2314-2317
    発行日: 1998/09/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    小腸悪性腫瘍は特異的症状に乏しく早期発見が困難なことが多い.今回われわれは虫垂周囲膿瘍との鑑別に苦慮した回腸原発の悪性リンパ腫の1切除例を経験したので報告する.症例は20歳女性.平成8年11月より微熱,腹痛が時折出現し,平成9年2月下旬より右下腹部に腫瘤を自覚するも放置. 3月中旬右下腹部痛が出現し入院となった.入院時McBurney点に一致して辺縁平滑な硬い腫瘤を触知,同部に強い圧痛,反兆痛を認めた.また中等度の貧血と軽度の炎症反応も認めた. US, CTにて急性虫垂炎による虫垂周囲膿瘍を疑い検査を進めたが,最終的には回腸原発腫瘍,特に悪性リンパ腫を疑い手術を施行した.回盲部に手拳大の腫瘤を認め,結腸右半切除術を施行した.病理組織検査で悪性リンパ腫と診断された.術後の検索では他臓器に病変は認められず,回腸原発と診断された.
  • 内藤 明広, 川原 勝彦, 岩田 宏, 田那村 收
    1998 年 59 巻 9 号 p. 2318-2322
    発行日: 1998/09/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    好酸球性腸炎は,消化管への好酸球浸潤を伴う炎症を来たす比較的まれな疾患で,時に末梢血好酸球の増加を来たす.好酸球性腸炎による穿孔性腹膜炎により3度の手術を施行した症例を報告する.
    症例は25歳の男性で,好酸球性腸炎による穿孔性腹膜炎のため, 1990年12月, 1995年9月および1996年5月に,計3回の開腹手術を受けた.当院での初回の手術で,小腸部分切除術を施行,病理検査で好酸球性腸炎と診断された.術後はステロイドの内服にて経過観察している.穿孔を繰り返した好酸球性腸炎の報告は比較的まれである.
  • 彭 英峰, 山田 克己, 国府 育央, 山本 正之, 北野 秀武, 辻 求
    1998 年 59 巻 9 号 p. 2323-2326
    発行日: 1998/09/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    今回われわれは稀な虫垂goblet cell carcinoidの1例を経験したので報告する.症例は71歳の男性,右下腹部痛を主訴に受診した.急性虫垂炎の診断で虫垂切除術を行った.病理検査で虫垂goblet cell carcinoid (ss, ly1, v0) と診断されたため,結腸右半切除術, D2郭清を追加した.切除標本に腫瘍細胞の遺残を認めず,リンパ節転移も認めなかった.術後1年を経過し,再発の徴候はない.
    虫垂goblet cell carcinoidは組織学的特徴に基づいてカルチノイドの1亜型と分類されてきたが,臨床的に悪性度は高く,腺癌の1亜型と考えるのが妥当と思われる.従って積極的に外科的郭清を行うべきであると考える.
  • 佐藤 幸雄, 地主 和人, 野村 英樹, 有廣 光司
    1998 年 59 巻 9 号 p. 2327-2330
    発行日: 1998/09/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    虫垂癌はまれな腫瘍で高齢者に好発するとされている.今回われわれは急性虫垂炎症状に対し手術により診断された2例の若年者の原発性虫垂癌症例を経験した.症例1は21歳,男性.慢性虫垂炎の急性増悪による限局性腹膜炎の下に開腹したところ,虫垂由来の腹膜偽粘液腫の状態で,虫垂切除,大網切除および可及的に粘液除去を施行.病理組織学的にも虫垂粘液嚢胞腺癌による腹膜偽粘液腫と診断された.症例2は33歳,女性.急性虫垂炎の診断の下に開腹したところ,虫垂は20cm大に腫大しており虫垂切除を施行したが,病理組織学的に高分化虫垂腺癌と診断されたため後日リンパ節郭清を伴う回盲部切除を施行した.虫垂腫瘍はまれな疾患であるが,虫垂炎の診断・治療に際してはたとえ若年者でも念頭に置き,切除した虫垂の病理組織学的検索は年齢に関わらず必ず行い治療方針を誤らないことが重要と思われた.
  • 平 成人, 曽我 浩之, 小島 茂嘉, 瀬野 晋吾
    1998 年 59 巻 9 号 p. 2331-2333
    発行日: 1998/09/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    Meckel憩室炎の微小穿孔から,汎発性腹膜炎をきたした1例を経験した.症例は41歳,男性.初発症状として上腹部痛を自覚,続いて腹部全体にわたる疼痛と嘔吐があり当院入院となった.汎発性腹膜炎と診断し,緊急手術を施行した.開腹にて,多量の膿性腹水と, S状結腸腸間膜に癒着したMeckel憩室を認め,憩室を含めた回腸の楔状切除を行った.肉眼的・組織学的に,穿孔部を指摘できなかったが,諸所見から微小穿孔の存在は確実と思われた.
    本症例の臨床経過は,胃・十二指腸潰瘍穿孔や虫垂炎穿孔に類似していたが,圧痛点が鑑別のポイントとなった.
  • 延澤 進, 松本 日洋, 長堀 正和, 酒井 英樹, 田中 昇, 古川 穣治
    1998 年 59 巻 9 号 p. 2334-2338
    発行日: 1998/09/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は68歳女性で,貧血と心窩部不快感を主訴として来院した.注腸検査で横行結腸にapple core signを認め,大腸内視鏡で全周性3'型の癌と診断した.腹部CT,超音波検査で肝転移や腹膜播種の所見はなかった.術中に横行結腸癌とは別に胃角小彎の漿膜下に胃壁から連続した腫瘍を認め,胃周囲のリンパ節に転移を疑わせる腫大が見られたためD1郭清を伴う幽門側胃切除術も併施した.病理組織診の結果,大腸癌は深達度ssの高分化乳頭状腺癌で,胃壁固有筋層内に境界明瞭で大腸癌の組織型と一致した転移巣を形成し,胃周囲のリンパ節にも転移が見られた.大腸癌の胃転移は過去に10例の報告を認めるのみできわめて稀である.同時性転移に対して合併切除された症例は本例が第1例目である.本例は術前に高値を示したCEAが術後正常化したことより,合併切除により予後の改善が得られるかどうか今後注意深く経過観察していきたい.
  • 船田 幸宏, 中野 眼一, 菊池 隆一, 内田 雄三
    1998 年 59 巻 9 号 p. 2339-2343
    発行日: 1998/09/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    大腸原発悪性リンパ腫,小腸迷入膵はともに稀な疾患である.今回われわれは,空腸迷入膵を合併したS状結腸原発悪性リンパ腫の1例を経験したので報告する.症例は71歳女性.主訴は排便時出血.消化管精査を行ったところ, S状結腸に潰瘍を伴う腫瘍を認め,生検で悪性リンパ腫の診断を得た.全身検索では他に異常なく, S状結腸原発悪性リンパ腫の診断にて, S状結腸切除術を施行した.術中,空腸に1cm大の腫瘤を2個認め,局所切除術を施行した. S状結腸の腫瘍は4.0×3.5cm大であり,病理組織学的にはdiffuse medium cell typeの悪性リンパ腫であった.深達度はssでリンパ節転移は認めなかった.免疫組織化学的検索からB-cell typeと診断された.空腸の腫瘤はHeinrich II型の迷入膵であった.術後1年10カ月の現在,再発の兆候なく,外来にて経過観察中である.
  • 和田 義人, 林田 啓介, 枝国 信三
    1998 年 59 巻 9 号 p. 2344-2347
    発行日: 1998/09/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    大腸癌を合併した全内臓逆位症の稀な1例を経験した.症例は73歳,男性.全身衰弱,著明な貧血を主訴に入院された.腹部超音波検査,胸部X線撮影で全内臓逆位症を,また注腸,大腸内視鏡で下行結腸癌と診断し,腹部血管造影では,下腸間膜動脈末梢枝に腫瘍濃染像を認めた.その後,保存的療法にて全身状態が改善したため手術を施行した.術中所見では,内臓は鏡面像を呈し,下行結腸から横行結腸へ浸潤する腫瘤を認めたため右半結腸切除術を施行した.
    内臓逆位症は比較的稀な先天性奇形で,それ自体に病的意義はないが,手術が必要な場合は手術操作に影響を及ぼすことも考えられる.しかし,術前に病変の局在部位,臓器の位置関係や血管の走向を十分確認すれば,手術は安全にかつ,速やかに施行できると考えられた.
  • 長尾 二郎, 炭山 嘉伸, 斎田 芳久, 草地 信也, 柁原 宏久, 奥村 千登里
    1998 年 59 巻 9 号 p. 2348-2352
    発行日: 1998/09/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    潰瘍性大腸炎の長期経過観察中に,大腸癌を合併した2例を経験した.
    1例は56歳の男性.発症より10年を経過した全大腸型,慢性持続型潰瘍性大腸炎で,腹部膨満が出現し,内視鏡検査でS状結腸癌と診断された.全結腸切除術,回腸嚢肛門管吻合術を施行.病理結果は低分化腺癌, ss, ly3, v0, n2 (+), stage IIIbで,他にm~smの7個の病変を認め,すべて低分化腺癌であった.術後3カ月で癌性イレウスのため胃瘻・空腸瘻造設術を施行.初回手術から139日目に癌性腹膜炎で死亡した.2例目は44歳の女性.発症より25年を経過した左結腸型,再燃寛解型潰瘍性大腸炎. 2カ月前より下痢・下血が出現,大腸内視鏡検査で直腸癌と診断された.全結腸切除術,回腸嚢肛門管吻合術,回腸瘻造設術施行.病理結果は粘液癌,se, ly-3, v-2, n3 (+), stage IVであった.術後1年で右卵巣転移,癌性腹膜炎にて子宮・両側付属器切除,回腸切除術,回腸瘻造設術を施行, 3カ月後に癌性胸膜炎にて死亡した.
    潰瘍性大腸炎の長期経過例におけるtotal colonoscopyによるcancer surveillanceが一般的となっている中で,症例1は3年間,症例2は4年間の間隔があり,早期発見の機会を失ったことと,組織型が低分化腺癌,粘液癌であったことで,2例とも術後早期に再発死亡した.
  • 増田 勉, 稲次 直樹, 吉川 周作, 高村 寿雄, 榎木 登, 中野 博重
    1998 年 59 巻 9 号 p. 2353-2359
    発行日: 1998/09/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    消化管原発の悪性リンパ腫のうち直腸原発のもの,特にBurkitt lymphomaは非常に稀である.
    症例は54歳,女性.便潜血反応検査陽性のため近医にて大腸精査を受け直腸Rb領域に乳房状粘膜下腫瘍様病変を認め,カルチノイドの診断のもと内視鏡的切除施行.病理組織学的診断は悪性リンパ腫,切除断端陽性にて当院紹介となった.低位前方切除術施行.組織学的進行度はsm3, n0, P0, H0, M (-), stage Iであった.またstarry sky-appearanceを認め,免疫染色の結果, B cell type, Burkitt lymphomaと診断した.術後約半年であるが無再発生存中である.
    1981年より1996年までの本邦報告例84例を集計し,自験例を加えた85例について臨床病理学的検討を行い,あわせて記載のあったリンパ節転移例29例に自験例を加えた30例について肉眼型,腫瘍最大径,深達度について検討したので報告する.
  • 江畑 智希, 服部 龍夫, 小林 陽一郎, 宮田 完志, 湯浅 典博, 深田 伸二
    1998 年 59 巻 9 号 p. 2360-2364
    発行日: 1998/09/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    各種画像で明瞭に描出されたにもかかわらず,術中超音波検査,切除標本で肝腫瘤を認識できなかった症例を経験した.
    症例は38歳男性.腹部超音波検査,CT検査で偶然肝S6に径1.5cmの肝腫瘤が発見された.周囲肝は脂肪肝で,腫瘤は超音波では高輝度,単純CTでは低吸収域, MRIT1像では高信号,T2像では等信号であった. Angio-CTで腫瘤内の門脈血流は周囲肝と同等で,動脈血流は低下していた.高分化型肝細胞癌の術前診断で,手術を施行した.術中超音波検査,切除標本割面像で腫瘤像は認識できなかった.病理組織学的には30~50%の脂肪滴を認める中等度脂肪肝で,腫瘤像を示唆する所見は得られなかった.
  • 佐藤 弘, 高安 肇, 若山 達郎, 奥山 正治
    1998 年 59 巻 9 号 p. 2365-2369
    発行日: 1998/09/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は42歳女性. 1984年より肝静脈狭窄を伴うBudd-Chiari症候群で経過観察中であった. 1994年8月AFP 238ng/ml, 1995年2月AFP 1,000ng/mlと上昇し, 3月の腹部CTで,肝外側区域にSOLを認め, 4月の血管造影で,肝S3にhypervascularな腫瘍を認め,肝細胞癌と診断した.術前の血液検査では,軽度の貧血と血小板減少を認めるが,肝機能は良好であった. HBsAg (-), HCV抗体(-)であった. 1995年5月24日肝外側区域部分切除術施行.
    術後経過は,順調で術後17日目に退院した.切除標本の病理所見では,腫瘍は単結節型のEdmondson II型の肝細胞癌であった.また,肝実質に肝硬変の所見はなかった. Budd-Chiari症候群に肝細胞癌を併発する頻度は,諸家の報告により様々ではあるが,肝炎ウイルスに感染していない例は,数少ないと考えられ,肝の欝血による肝細胞障害と再生が病因である可能性が示唆された.
  • 安藤 英也, 長谷川 洋, 小木曽 清二, 西尾 秀樹, 村田 透, 長澤 圭一
    1998 年 59 巻 9 号 p. 2370-2375
    発行日: 1998/09/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    内胆汁瘻の一つである胆嚢胃瘻は比較的まれである.今回われわれはイレウスを契機に発見された1例を経験したので若干の文献的考察を加え報告する.症例は77歳女性で,悪心嘔吐を主訴に来院した.腹部単純写真で, niveauとpneumobiliaを認め,腹部超音波検査では胆嚢内に結石像を認めたため,胆石イレウスが疑われ入院となった.しかし腹部CTで腸管には結石像は不明で胆石イレウスは証明できなかった.胃透視では明らかな瘻孔は認めなかったが,胃内視鏡検査で胃角部小彎前壁側に瘻孔を認め同部より造影を行ったところ胆嚢が造影された.また, ERCPでは造影剤が胆嚢より瘻孔を介して胃前庭部へ漏出するのを認めた.以上より胆嚢胃瘻と診断し胆嚢摘出術,瘻孔閉鎖術を施行した.
  • 松本 英男, 平井 隆二, 植村 忠宏, 山野 寿久, 村上 正和, 太田 徹哉, 土井原 博義, 清水 信義
    1998 年 59 巻 9 号 p. 2376-2381
    発行日: 1998/09/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    膵貯留性嚢胞が脾に伸展し仮性嚢胞を形成,さらに脾嚢胞を合併し,嚢胞性膵腫瘍との鑑別を要した症例を経験したので報告する.
    症例は47歳の男性で,慢性膵炎の経過中に嚢胞性膵腫瘍を疑われ当科紹介となった.腹部US, CT, MRIで膵尾部に13×12cmの壁は一部肥厚し,内部に隔壁様の充実性部分を認める嚢胞であった. ERPでは主膵管と嚢胞との交通は認めなかった.嚢胞性腫瘍を否定できず,膵体尾部・脾切除術を施行した.
    組織学的には,膵と隣接した嚢胞壁に膵管上皮が残存しており貯留嚢胞と診断された.しかし,脾側の嚢胞壁は脾実質で構成され,被膜は認めなかった.膵貯留嚢胞が脾内へ仮性嚢胞を形成,さらに圧排による血行不全のため脾梗塞をおこし,この後に脾嚢胞が形成されたと考えられた.
  • 三方 律治, 今尾 貞夫, 石渡 進, 鈴木 基文
    1998 年 59 巻 9 号 p. 2382-2384
    発行日: 1998/09/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    2年間続く右陰嚢内容の腫脹を主訴に46歳の男性が当科を受診した.精巣や精索と離れて小鶏卵大の弾性硬の腫瘤を触れ,超音波走査でも同様の所見が得られた.腫瘍切除術を行い,病理組織学的には神経鞘腫であった.本症例は陰嚢内神経鞘腫としては,日本で4例目の報告である.
  • 唐澤 幸彦, 武田 智博, 前場 隆志
    1998 年 59 巻 9 号 p. 2385-2389
    発行日: 1998/09/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は47歳,女性.右下腹部痛,嘔吐を主訴に入院した.触診上,右下腹部に圧痛と軽度の筋性防御を認めた.白血球数は14,900/μlと増加し,腹部X線写真ではniveau像を認めた.腹部CT検査では小腸内容の充満像を認め,子宮が左に圧排されていたが原因の特定には至らなかった.虫垂炎を疑い開腹したところ中等量の淡血性腹水と拡張した小腸を認めたが,回盲部には異常を認めなかった.口側の小腸を検索したところ回腸末端より約30cmと35cmの回腸に絞扼痕を認め,さらに右子宮広間膜に約3cmの裂孔を認めた.子宮広間膜裂孔ヘルニアによるイレウスと診断したが,腸管壊死を認めなかったため,裂孔を単純閉鎖し手術を終了した.本症は報告例が少なく極めて稀な疾患であり,内ヘルニアによるイレウスの中でも診断が難しい疾患と思われる.開腹歴のない女性のイレウスでCT上,拡張腸管による子宮の圧排像を認めた場合,本症を考慮する必要がある.
  • 藤田 博文, 山本 隆久, 熊谷 仁人, 三浦 順郎
    1998 年 59 巻 9 号 p. 2390-2393
    発行日: 1998/09/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は20歳の男性. 1996年7月30日,トラック運転中,他車と衝突し,近医搬送される. X線検査にて右脛骨骨折を認め,その後,次第に増強する左下腹部痛も出現したため,同日,当科転院となる.当科入院後,腹部超音波検査およびCT検査にて左後腹膜血腫を認め,また血圧低下,頻脈も出現したため,後腹膜臓器損傷あるいは後腹膜血管損傷の疑いにて同日,緊急手術を施行した.術中所見にて左後腹膜血腫を認め,これらを除去したところ,左総腸骨静脈に約3.5cmの裂創を認め,左総腸骨静脈損傷と診断された.腹部臓器損傷あるいは骨盤骨折を伴わない腹部鈍的外傷による総腸骨静脈の単独損傷はわれわれが検索した限りでは本邦報告例は無く,今回,若干の文献的考察を加え報告する.
  • 西塚 至, 高橋 正純, 池 秀之, 大木 繁男, 嶋田 紘, 原 正道
    1998 年 59 巻 9 号 p. 2394-2399
    発行日: 1998/09/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は53歳男性.上腹部痛を主訴に来院. CT検査で左副腎頭側に3.5×2.2cmの卵円形のenhanceされる腫瘤像を認め,腹部血管造影で栄養血管は左下横隔動脈と同定した.神経原性腫瘍の診断で後腹膜腫瘤摘出術を行った.術中腫瘤摘出時に血清エピネフリン3,680pg/ml,ノルエピネフリン17.716pg/mlの上昇に伴い血圧の上昇(218/100)を認め,α-ブロッカー投与による管理を必要とした.病理組織学的にパラガングリオーマと診断した.本症の29%は悪性で,神経脈管へ容易に浸潤する.悪性例の非根治切除例の5年生存率は19%である.術前の悪性度診断が不確実な現在,本症に対しては早期の根治的切除が必要と考えられた.また血行が豊富で術中高血圧を来すことから,切除に際しては,高血圧の管理と血管を同定した愛護的操作が重要と考えられた.
  • 荻澤 佳奈, 前田 清, 西森 武雄, 須浪 毅, 西口 幸雄, 山下 隆史, 曽和 融生
    1998 年 59 巻 9 号 p. 2400-2403
    発行日: 1998/09/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    比較的稀な腸間膜裂孔ヘルニアの1例を経験したので報告する.症例は22歳,女性.下腹部痛を主訴に某院へ入院.卵巣嚢腫の茎捻転の診断にて開腹手術をうけたが,小腸に広範な壊死が認められたため,本院へ転院となった.腹部CT検査では,小腸は壁の肥厚と拡張がみられ,内部にair-fluid levelを伴い,骨盤腔内の小腸には血管をとりまくような腸管の変形がみられた.緊急手術を施行したところ,回腸腸間膜に欠損部を認め,この部に回腸が嵌頓,さらに捻転しているのが確認された.腸間膜裂孔ヘルニアと診断し,小腸部分切除を施行し,術後経過良好であった1例を報告した.また,成人における腸間膜裂孔ヘルニアの本邦報告13例を集計し,若干の文献的考察を加えた.
  • 渡部 克也, 山崎 安信, 須田 嵩, 牧野 達郎
    1998 年 59 巻 9 号 p. 2404-2409
    発行日: 1998/09/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    後腹膜に発生した巨大な滑膜肉腫の1例を経験したので報告する.症例は55歳,女性.平成7年頃より下腹部腫瘤を自覚.平成9年1月に後腹膜腫瘍を疑われ,当院へ紹介された.腹部CT, MRI検査では,腫瘍は左後腹膜に存在し大動脈から左腸骨動脈を13cmにわたり巻き込み,また左腎は水腎症となっていた.血管造影検査で腫瘍は乏血管性であり, CT下針生検で悪性腫瘍を疑われた. 3月17日開腹手術を行った.腫瘍は後腹膜に存在し約14×9cm,左腎門部および尿管を巻き込んでいた.腫瘍をごく一部残し腫瘍摘出術,左腎摘出術を施行した.病理組織学的検査で腫瘍は多房性で内部には暗赤色の液体貯留を認めた.充実性部分の腫瘍細胞はshort spindleで滑膜肉腫と診断した.左腎孟および尿管に腫瘍細胞浸潤を認めた.術後経過は順調で現在外来で経過観察中である.
  • 寺岡 均, 由井 三郎, 浅井 毅, 土肥 浩義, 緒林 誠
    1998 年 59 巻 9 号 p. 2410-2415
    発行日: 1998/09/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は51歳女性.右下腹部腫瘤および腹部膨満感を主訴に来院,精査の結果腹膜偽粘液腫と診断,平成7年9月5日手術施行した.盲腸・上行結腸外側より右腸腰筋に到る後腹膜腔に,内部がゼラチン様物質で充満した嚢胞状の腫瘤が存在した.腫瘤と腹腔内は交通があり,腹腔内にも同様の物質を多量に認めた.腫瘤と上行結腸は剥離困難で, S状結腸には播種と思われる小結節を認め,虫垂は過去に切除されており確認できなかった.嚢胞を含めた右半結腸切除, S状結腸切除,大網切除,両側卵巣摘出,および腹腔リザーバー留置を行い,腹腔内を5%ブドウ糖液で洗浄, CDDP 100mgを散布した.病理組織学的にはmucinous cystadenomaであった.術後5%ブドウ糖液による腹腔内洗浄を繰り返し行い, CDDP 200mgの腹腔内注入と5-FUの全身投与も行った.後腹膜腔に主病変を認める腹膜偽粘液腫は極めて稀であると考えられたので,若干の文献的考察を加えて報告した.
  • 矢野 浩巳, 伊藤 幹彦, 箱島 明, 藤原 靖之
    1998 年 59 巻 9 号 p. 2416-2419
    発行日: 1998/09/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    孤立性腸骨動脈瘤破裂による動静脈瘻は稀な合併症である.今回われわれは,下肢の静脈還流障害および虚血症状にて来院し,動脈造影にて診断し緊急手術にて治癒せしめたので報告する.症例は83歳男性.主訴は左下肢腫脹,チアノーゼおよび疼痛.左下腹部に拍動とスリルを伴う腫瘤を認めた. DSAにて最大横径80mmの左総腸骨動脈瘤と,早期に左総腸骨静脈,下大静脈が造影され動静脈瘻の診断にて同日手術を施行した.術中所見は動脈瘤後壁にて径5×5mmの小孔を認め動脈側より縫合閉鎖し,人工血管によるバイパス術を行った.腸骨動脈瘤破裂に伴う動静脈瘻は,様々な症状にて発見される事が多く慎重な診察が必要であり,いったんこの疾患が疑われれば迅速な動脈造影等の検査と早期治療が必要と考えられた.
  • 田崎 達也, 四方 裕夫, 末田 泰二郎, 渡橋 和政, 平井 伸司, 和田 秀一, 横山 隆, 松浦 雄一郎
    1998 年 59 巻 9 号 p. 2420-2423
    発行日: 1998/09/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    今回われわれは,急性虫垂炎が原因で人工血管感染が生じた症例を経験した.症例は50歳男性. 1990年,閉塞性動脈硬化症に対して人工血管による腹部大動脈-右大腿動脈バイパス術を施行した. 1995年に右下肢の化膿性膝関節炎,大腿骨骨髄炎,腓腹筋・大腿筋炎が生じたが,感染巣不明のまま抗生物質,切開排膿により軽快,退院した. 1997年に人工血管閉塞,末梢足背部・第III趾に化膿性病変が生じ, 11月8日に人工血管除去を行った. 11月10日に創部より膿と腸液様物質の流出があった. CT所見では後腹膜腔にガス像を認め,腸穿孔を疑い開腹した.虫垂が壊死しており,また,膿瘍形成,小腸穿孔が認められ,虫垂切除,小腸部分切除を行った.虫垂は病理学的に壊疽性虫垂炎の像を呈しており,これが人工血管感染・閉塞の原因と考えられた.術後,炎症は鎮静し,再発の兆候なく健在中である.
  • 河田 俊一郎, 村上 信一, 野口 剛, 橋本 剛, 内田 雄三, 卜部 省吾
    1998 年 59 巻 9 号 p. 2424-2427
    発行日: 1998/09/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    患者は62歳の男性で嚥下障害を主訴に来院した.上部消化管造影および上部内視鏡検査にて下部食道より噴門部にかけての2型の腫瘍とBorrmann 5型胃癌を認めた.内視鏡下生検にてそれぞれ扁平上皮癌と印環細胞癌と診断され,衝突癌を強く疑った.切除標本では下部食道より胃噴門部にかけての6.0×5.0cm大の2型の腫瘍と8.5×5.5cm大のBorrmann 5型胃癌とが食道胃境界部より2cm胃側の部位で相接していた.病理組織学的検査では食道扁平上皮癌と胃印環細胞癌とが薄い線維性組織で境され,互いに隣接しており,互いに交錯する像や移行像は認めなかった.転移巣においては互いに独立した組織像が存在した.
  • 米沢 圭, 横尾 直樹, 北角 泰人, 山口 哲哉, 岡本 清尚
    1998 年 59 巻 9 号 p. 2428-2432
    発行日: 1998/09/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は74歳の女性,下血を主訴に来院し上行結腸癌の診断にて入院中,肝腫瘤・腸間膜腫瘤の合併を認めた. 30年前に右卵巣切除術の既往があることより,異物性肉芽腫も疑われたが,確定診断には至らなかった.右結腸切除術・肝部分切除術を施行し,両腫瘤を摘出した.病理組織診にて,両者とも異物巨細胞・組織球を認める異物性肉芽腫と判明した.原因の特定には偏光顕微鏡が有用であり,肝腫瘤では‘Maltese cross’と呼ばれる澱粉顆粒に特徴的な複屈折像を呈す異物を含み,腸間膜腫瘤ではガーゼの綿繊維に一致する異物像を認めたことより,各々の確定診断に至った.澱粉顆粒による異物性肉芽腫の本邦報告例は国内では極少数であるが,海外では多数におよび,その予防には術前の手袋表面の充分な洗浄が必要とも言われている.頻度は少ないが,開腹術の既往を有する原発巣不明の腫瘤に対しては,本症を念頭に置く必要があると思われる.
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