日本臨床外科学会雑誌
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60 巻, 11 号
選択された号の論文の49件中1~49を表示しています
  • 山本 裕, 田中 克浩, 園尾 博司, 宇田川 潔, 国末 浩範, 山本 滋, 紅林 淳一, 下妻 晃二郎
    1999 年 60 巻 11 号 p. 2817-2821
    発行日: 1999/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    血中Caの測定が容易になり,それにともないPHPの発生頻度も増加してきた.今回われわれは,当科におけるPHP 53例を対象に,術前診断を中心に検討した. Ca 5.90×0.8mEq/l, P1.2±0.3mEq/lで,全例に高Ca血症, 67.9%に低P血症を認めた. PTHの感度は, intact-PTH 953%, C-PTH 38.9%, HS-PTH 95.2%で, C-PTHの感度は低かった.摘出腫瘤の最大径は2.3±1.1cm, 重量は1,241±2,061mgで, intact-PTHは重量と, HSPTHは両者と相関を認めた.病型は,骨型17.0%,結石型47.2%, 化学型35.8%であり,組織診断は,腺腫92.5%,過形成7.5%で,癌は認めなかった.腺腫49例の術前部位診断は, US 85.7%, CT 77.5%, TI-Tc 81.8%, Tc-MIBI 95.2%(異所性腺腫100%), MRI 58.3%の感度であり, Tc-MIBIは最も有用な検査であった.異所性腺腫は16.7%に存在し,そのうち87.5%は胸腺内に存在しており,異所性腺腫の検索はまず胸腺から行うのが有効と思われた.
  • 大杉 治司, 東野 正幸, 徳原 太豪, 高田 信康, 西村 良彦, 竹村 雅至, 船井 隆伸, 李 栄柱, 藤田 みゆき, 田口 伸一, ...
    1999 年 60 巻 11 号 p. 2822-2830
    発行日: 1999/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    3領域リンパ節郭清施行胸部食道癌225例を対象に頸部リンパ節転移診断および郭清の適応について検討した.胸部より頸胸境界部郭清を先行し,頸部よりの郭清が必要であったNo. 100, 104および101, 102リンパ節の一部を頸部リンパ節とすると,頸部リンパ節転移は17例 (8%) に認められた.その平均転移リンパ節個数は11.5個と多く, 17例のうち無再発長期生存例は無かった. 6例では深達度があさく,転移リンパ節個数も少なかったが,いわゆるlymphatic disseminationの例が多く,特にEi例では頸部郭清の意義は低いと思われた.頸部リンパ節は胸部・腹部のリンパ節より有意に小さく,最長径5mm以上を転移陽性とした場合, sensitivity; 80%, specificity; 68%で診断が可能であった.従って,頸部の詳細な超音波検査が重要で,頸部リンパ節転移ありと判定された例には,術前合併療法の工夫が必要と思われた.
  • 長坂 不二夫, 大森 一光, 北村 一雄, 並木 義夫, 村松 高, 羽賀 直樹, 四万村 三恵, 根岸 七雄, 瀬在 幸安
    1999 年 60 巻 11 号 p. 2831-2835
    発行日: 1999/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    1969年から1997年に当科で切除した神経芽細胞腫を除く縦隔神経原性腫瘍62例(男性39例,女性23例,平均年齢35.9歳)を対象として検討を行った.腫瘍の局在は縦隔の右側37例,左側25例で, Th 4より頭側に存在する症例が多く,経時的な観察により36.8%で胸部X線写真上,腫瘤の増大を認め,有症状例での腫瘤は大きい傾向であった.発生神経は交感神経32例,肋間神経21例,迷走神経5例,横隔神経1例などであり,完全切除の方針で手術を施行した.しかし, 5例は全摘できなかったものの再発しておらず,また,悪性例も認められなかった.一方, Horner症候群などの術後合併症は23例に認めた.以上より本症は完全摘出が最も望ましいものの,特に機能障害が問題となる反回神経,横隔神経,および上部交感神経では神経機能の温存を考慮するべきであり,手術は低侵襲性の点から胸腔鏡下切除を第一に選択すべきと考える.
  • 巽 博臣, 浦 英樹, 山口 浩司, 福井 里佳, 黒川 城司, 角 隆巨, 樽見 研, 向谷 充宏, 及川 郁雄, 傳野 隆一, 平田 公 ...
    1999 年 60 巻 11 号 p. 2836-2840
    発行日: 1999/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    術前画像診断にて深達度T2以上と診断し,開腹時に腹腔洗浄細胞診(以下, cy)を施行した原発胃癌切除49例を対象に, cy陽性例の臨床病理学的特徴について検討した.本検討ではClass III以上を細胞診陽性として判定することとし,この場合,対象全例におけるcy陽性率は38.8% (19/49) であった. cy陽性率と相関を認めた腫瘍側因子として, P因子陽性,組織学的漿膜浸潤陽性および浸潤性増殖様式 (INFγ) を挙げることができた.一方, P因子陰性cy陽性を5例に認め,経過観察中の1例を除く4例は術後2年以内に腹膜再発にて死亡した.以上より,胃癌の進行とともに潜在的腹膜播種の危険性が高まると考えられ, cy陽性例に対しては腹膜再発の可能性を念頭においた重点的補助療法が必要であると考えられた.
  • 木村 臣一, 高倉 範尚, 志摩 泰生, 貞森 裕, 青木 秀樹, 大石 正博, 稲垣 優, 八木 孝仁, 岩垣 博巳, 日伝 晶夫, 田中 ...
    1999 年 60 巻 11 号 p. 2841-2846
    発行日: 1999/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    大腸癌肝転移初回治癒切除症例33例を対象として予後因子,切除後の再発形式を検討した. 33症例中24例が再発し,うち残肝再発のみ7例,肝外再発のみ6例,残肝および肝外再発が11例であった.残肝再発は全例2年以内に再発し,原発巣の脈管侵襲,転移時期,転移個数,肝切除術式が予後因子となった.肝外再発には原発巣のリンパ節転移,肝転移の存在範囲が,累積生存率に関しては原発巣のリンパ節転移,脈管侵襲,肝転移の最大径が予後因子となったが,肝切除術式は予後因子とはならなかった.以上より,残肝再発を減少させるためには系統的切除につとめる必要があるが,系統的切除で残肝再発を減少させても,生存率の改善にはつながらず,肝外再発の予防,早期発見・早期治療も重要である.
  • 保田 尚邦, 三田村 圭太郎, 町田 健, 平山 伸, 鈴木 一也, 松本 裕史, 根岸 健, 神坂 幸次, 樋渡 克俊, 松沢 達治
    1999 年 60 巻 11 号 p. 2847-2850
    発行日: 1999/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    1989年1月から1997年12月までに当科で経験した大腸癌初回手術症例407例のうち他臓器重複癌症例38例 (9.3%) と非重複癌369例を臨床病理学的に比較検討した.男女比,年齢,癌の家族歴,大腸腺腫合併率に両群間で差はなかった.重複癌別では全体で胃癌が42.5%と最も多かった.女性では子宮癌と乳癌が比較的多く,これらは左側大腸癌と重複していた.同時性重複癌は13例,異時性は25例で,そのうち他臓器先行は22例であった.大腸癌の占居部位では直腸が19例 (47.5%) と最も多かった.両群の予後に差はなかった.以上より,大腸・他臓器重複癌症例に臨床病理学的な特徴は認めなかったが,大腸癌,他臓器癌ともに根治術を施行することで良好な予後が期待された.癌症例に対して発見後は重複癌症例が増加していることから第2第3の重複癌の可能性もあり長期観察することが必要で,特に子宮癌や乳癌の術後は左側大腸癌の重複を念頭に入れることが大切と考えられた.
  • 鈴木 修一郎, 山岸 文範, 森田 誠市, 土屋 康紀, 岸本 浩史
    1999 年 60 巻 11 号 p. 2851-2855
    発行日: 1999/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    局所麻酔下での成人鼠径ヘルニア手術において,笑気ガス麻酔を併用し,術中の疼痛,不安,局麻剤中毒の問題において,果たしてその併用が有用か否か検討した.対象は再発嵌頓例を除いた成人鼠径ヘルニア96例で局所麻酔単独64例,笑気併用32例である.手術は全例に可能であった.術中疼痛は笑気併用により疼痛の緩和が見られ, Wong-Bakerフェイススケール0, 1, 2が90.6%と局麻単独群80%に比べ良好であった.また術中鎮痛剤の追加使用量(1.9±6.3mg vs 7.3±10.0mg),追加頻度(9.4% vs 40.6%)も局麻単独群に比べ少なく,術中疼痛の改善を示していた.両群とも術中の呼吸循環動態は安定し,局麻剤中毒の問題もなく,術中の管理は容易であった.術中の不安は程度の差はあるものの33%が感じており,不安に対する対策が必要である.笑気ガス麻酔併用により術中疼痛,不安の緩和,局麻剤,鎮痛剤使用量の減量,局麻剤中毒の予防につながり,より有用である.
  • 岸渕 正典, 弥生 恵司, 金 柄老, 西 敏夫, 川崎 勝弘, 森 武貞
    1999 年 60 巻 11 号 p. 2856-2859
    発行日: 1999/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    皮膚の炎症性乳癌様変化と高度のリンパ節転移を伴った純型乳腺粘液癌の1例を経験したので報告する.症例は49歳の女性.左乳腺の腫脹・硬結を主訴に受診,炎症性乳癌の疑いで入院した.術前にepi-ADM (110mg)による局所動注化学療法を施行し,腫瘍の縮小と炎症所見の消失を認めたため,胸筋温存乳房切除術を施行した.病理組織検査にて純型粘液癌と診断した.腋窩リンパ節に多数の転移を認めた.術後CPA+5'DFUR+MPA+TAM療法によるadjuvant therapyを施行し, 18カ月経過した現在無再発生存中である.純型粘液癌の場合,一般に悪性度も低く予後は良好な症例が多いが,自験例のように粘液癌でも進行すれば,高度の局所浸潤ならびに高度のリンパ節転移を伴い生物学的に悪性度が高くなることがあるので早期発見・早期治療の重要性が示唆された.
    epi-ADM: epirubicin, CPA: cyclophosphamide, 5'DFUR: doxifluridine, MPA: medroxyprogesterone acetate, TAM: tamoxifen
  • 星野 丈二, 和泉 裕一, 浅田 秀典, 久保田 宏, 久保 良彦
    1999 年 60 巻 11 号 p. 2860-2863
    発行日: 1999/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    大動脈瘻による大量喀血を来たした肺アスペルギルス症の1例を経験したので報告する.症例は75歳,男性.陳旧性肺結核,荒蕉肺,膿胸で他院に通院中喀血を伴い,当院内科に精査入院となった.入院中喀血量が増加し,徐々に大量喀血となり内科的治療では止血が困難と判断され,左肺摘除の目的で当科へ転科となった.術中胸膜胼胝剥離の際,突然動脈性の大量出血がおこりショックとなった.右大腿動脈より大動脈遮断バルーンを挿入し,大動脈遮断下に膿胸腔を開き充満した血腫を排除し内腔を観察したところ,下行大動脈に1.0×1.5cmの穿孔を認めた.肺と大動脈の瘻孔が,大量喀血の原因と考えられた.病理組織で肺アスペルギルス症と診断された.
    肺良性疾患においても喀血を呈する症例では外科的切除が必要となることが多い.大動脈壁との瘻孔は稀であるが重大な合併症であり手術に際して留意すべき病態である.
  • 田中 芳憲, 大杉 治司, 高田 信康, 西村 良彦, 船井 隆伸, 木下 博明
    1999 年 60 巻 11 号 p. 2864-2868
    発行日: 1999/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    傍食道型裂孔ヘルニアの再手術例を経験したので報告する.
    症例は77歳女性.平成7年3月,嚥下困難と食後の心窩部痛に対し,前医でNissen法によるヘルニア修復術を施行された.しかし同年8月頃より同様の症状が再現し体重減少も著明となった.当科で精査の結果,胃穹隆部・体部が噴門部の腹側より縦隔内に反転脱出していたが食道炎は認めず,また食道内への異常な酸やビリルビンの逆流を認めなかった.以上より傍食道型裂孔ヘルニアで胃食道逆流症はないと診断した.平成10年3月再開腹したところ,胃は幽門洞を腹腔内に認めるのみで胃体部より口側は食道胃接合部腹側のヘルニア門より縦隔内に脱出していた.このためヘルニア嚢の切除とヘルニア門の縫縮および胃底部の横隔膜への固定を施した.これにより症状は消失し,経口可能となり,体重も復した.食道裂孔ヘルニアの外科治療に際しては,ヘルニアの形態や食道機能障害の評価が重要であると思われた.
  • 笹本 彰紀, 山口 晃弘, 磯谷 正敏, 堀 明洋, 金岡 祐次, 高橋 吉仁
    1999 年 60 巻 11 号 p. 2869-2873
    発行日: 1999/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は47歳男性.平成4年11月,健康診断の上部消化管造影で胃底部前壁に隆起性病変を指摘された.生検の結果, hyperplastic polyp (Group I) と診断され経過観察となった.平成6年12月3日の上部消化管造影で病変の増大を認め,精査・手術目的に入院となった.表面に発赤・白苔を伴った亜有茎性の腫瘍で生検で確定診断は得られなかったが,超音波内視鏡像とを総合して胃粘膜下腫瘍と診断した.腫瘍核出術を行い,術中迅速標本で固有筋層への浸潤を認めるカルチノイドの診断を得たので, D2郭清を伴う噴門側胃切除術を施行した.胃カルチノイドが有茎性,あるいは亜有茎性に発育することは比較的稀ではあるが,胃カルチノイドの存在も念頭におき生検の随時施行や再検査による追跡が必要であると思われた.
  • 山内 孝, 宗田 滋夫, 根津 理一郎, 橋本 純平, 吉川 幸伸, 森 匡, 打越 史洋, 遠藤 俊治, 大嶋 正人
    1999 年 60 巻 11 号 p. 2874-2878
    発行日: 1999/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    腹腔鏡下に摘出診断し得た有茎性壁外発育型胃神経鞘腫の1例を報告する.症例は75歳女性.発熱を主訴に近医を受診,精査の後,腎孟腎炎と胃粘膜下腫瘍を指摘され当院紹介となった.超音波内視鏡において胃噴門部大彎側に,第4層より外層に20×25mmの低エコー像を認め,内部は不均一でまた一部石灰化と思われる像が認められた.平滑筋肉腫などの悪性疾患が除外診断できなかったため,まず腹腔鏡下にて摘出術を施行した.腫瘍は胃噴門部大彎側壁外に有茎性に発育していたため,茎部の切除のみにて摘出し得た.術中迅速病理診にて神経鞘腫と診断され,茎部も正常細胞のみであり,手術を終了した.永久標本にても,核の異型性は殆どなく良性神経鞘腫との確定診断を得た.胃粘膜下腫瘍は術前診断の困難さから治療方針の決定に難渋することが多いが,腫瘍の場所,形状によっては腹腔鏡下にて安全かつ容易に摘出,診断を行うことができると考えられた.
  • 森 尚秀, 正木 裕児, 衛籐 隆一, 山本 光太郎, 丹黒 章, 岡 正朗
    1999 年 60 巻 11 号 p. 2879-2883
    発行日: 1999/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は64歳,女性.胃体上部~中部の3型胃癌(乳頭腺癌)よりの出血にて緊急手術を施行した.開腹時,多発性肝転移(H3),腹膜播種(P3)およびリンパ節転移(N2)を認め,胃全摘術, 1群リンパ節郭清を施行した.術後5カ月後, 5-Fluorouracil (5-FU)持続点滴静注+cis-Diammine dichloroplatinum (CDDP)の少量連日投与(4週間1コース)したところ,肝転移巣, No. 16 b 1リンパ節および腹膜播種巣は消失した.その後も同部の再発に加え, Virchowのリンパ節転移の出現をみたが,その都度同様の化学療法1コースで著効が得られ,計3回の画像上のCRが確認できた.術後34カ月後に永眠されたが,化学療法施行中,重篤な合併症もなく,約25カ月間は外来通院が可能であった.予後が極めて不良のstage IVb胃癌で良好なQOLが保たれつつ長期生存が得られる症例は稀であるので,若干の文献的考察を加え報告する.
  • 新川 弘樹, 藤田 尚久, 井上 孝志, 仲 秀司, 安原 洋, 和田 信昭
    1999 年 60 巻 11 号 p. 2884-2887
    発行日: 1999/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は61歳,男性.乗用車同士の衝突事故をおこし,他院より紹介受診した. CTで腹腔内液体貯留を認め,緊急手術を施行,腸間膜出血に対し縫合止血を施行した.術後5日目より経口摂取を開始したが,術後10日目より嘔吐が始まり,経鼻胃管による持続吸引を開始,上部消化管造影で十二指腸水平部の通過障害を認め, CTで同部腹側に5cm大の血腫を確認した.胃管持続吸引,高カロリー輸液を30日間継続したところ.血腫は3cm大まで縮小し,その結果通過障害は改善,術後55日目に退院した.
    血腫による十二指腸狭窄は最近では保存的治療が主流で,高カロリー輸液を行い,1カ月程度でも保存的治療が可能と考えられた.
  • 大森 健, 宗田 滋夫, 橋本 純平, 吉川 幸伸, 森 匡, 大嶋 正人
    1999 年 60 巻 11 号 p. 2888-2893
    発行日: 1999/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    患者は49歳,男性.激しい上腹部痛を訴え精査加療目的に入院となった.腹部は平坦,軟で上腹部に圧痛を認めた.筋性防御,腹膜刺激症状なし.背部痛を認めた.
    入院時検査所見ではWBC, CRPの上昇を認め,アミラーゼ,トリプシン,ホスホリパーゼA2,リパーゼの高度の上昇を認めた.腹部CT所見で急性重症膵炎と診断し,膵動注療法を11日間施行した.膵炎は軽快したが,嘔気,嘔吐を訴え,上部消化管内視鏡にて十二指腸壊死,十二指腸狭窄と診断した. 20日間保存的療法を施行したが改善傾向なく,幽門輪温存膵頭十二指腸切除術 (PPPD) を施行した.術後縫合不全を認めたが保存的に軽快し,術後68日目に退院となった.
    膵炎による十二指腸狭窄は非常にまれであり,本邦では自験例を含め47例であった.本邦報告例を集計し考察を加える.
  • 中村 文隆, 道家 充, 宮崎 恭介, 成田 吉明, 樫村 暢一, 松波 己, 加藤 紘之
    1999 年 60 巻 11 号 p. 2894-2897
    発行日: 1999/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は72歳,女性.数年前からの右下腹部痛を主訴に入院となった.注腸バリウム検査では盲腸は内側より半円球状に圧排されており,虫垂は描出されなかった.内視鏡検査では,盲腸の内側に表面平滑な粘膜下腫瘍様の半球状の隆起性病変が認められた.腹部CT検査では8.0×6.0cmの嚢胞性病変を認めた.以上より虫垂粘液嚢胞と診断し,腹腔鏡下回盲部切除術を行った.虫垂は緊満し,内腔に黄白色の粘液が充満していた.病理学的には,虫垂の粘膜上皮は大部分で脱落していたが,残存上皮は異型の乏しい円柱上皮細胞で構成され,虫垂粘液嚢胞腺腫と診断された.虫垂粘液嚢胞は,術前に良性悪性の質的診断は困難であり,明らかに良性と判断できる場合を除いて,悪性をも考えた根治性のある術式が選択されるべきであり,腹腔鏡下手術は根治性と低侵襲性の両面から有用であると思われる.
  • 矢野 雅文, 安積 靖友, 足立 雅尚, 宮村 一雄, 邦本 幸洋, 中本 光春
    1999 年 60 巻 11 号 p. 2898-2901
    発行日: 1999/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は75歳の女性.突然の腹痛にて近医を受診,保存的に加療されるも症状増悪しショック状態となったため当院紹介となった.画像診断,臨床所見より絞扼性イレウスの診断にて緊急手術となった.開腹時所見では多量の血性腹水と,小腸係蹄を結ぶ様に巻ついて絞扼していたMeckel憩室を認めた.他に索状物や癒着は見られなかった.憩室を含む壊死腸管切除を施行した.病理組織学的検査では憩室は腸管の全層を有しMeckel憩室と診断した.このように腸管を結ぶ様に絞扼したMeckel憩室は全長が長く先端は太い嚢状で可動性があることが特徴と言われている.今回のような例は極めて稀で検索しえた範囲では本例を含め本邦では3例のみであった.
  • 橋本 毅一郎, 品川 裕治, 和田守 憲二, 清水 良一
    1999 年 60 巻 11 号 p. 2902-2905
    発行日: 1999/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は13歳男性.上腹部痛,嘔吐を主訴に1998年1月27日紹介受診となった.来院時,発熱,軽度の筋性防御を伴う持続的な上腹部痛,白血球増多およびCRPの上昇を認めた.腹部X線, CTにて小腸の拡張と腹水も認めたため,絞扼性イレウスを疑い,緊急手術を施行した.全麻下に腹腔鏡を挿入し,暗紫色に変色した腸管と血性腹水を確認した後に開腹へ移行した.トライツ靭帯より約10cm肛門側から40cmにわたる空腸が壊死に陥っており,小腸腸間膜の癒着と索状物による絞扼性イレウスであった.絞扼を解除し,壊死腸管を切除後,空腸を端々吻合し手術を終了した.術後第20病日で軽快退院した.本症例のように若年者で開腹歴がなく,原因不明の腸間膜癒着による絞扼性イレウスは極めて稀と考えられ,その診断,治療に関して若干の文献的考察を加えたので報告する.
  • 佐藤 徹也, 林 剛一, 増尾 光樹, 望月 智行, 真田 裕
    1999 年 60 巻 11 号 p. 2906-2910
    発行日: 1999/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は24歳,男性.手術の既往歴はない.以前より年2~3回の腹痛発作があり,今回も嘔気,嘔吐を主訴に当院を受診し,腸閉塞の診断で入院し,上部消化管造影,注腸検査で腸回転異常症を,臍炎反復の既往から卵黄腸管遺残を疑い,これらに起因する腸閉塞と診断して開腹した. Non-rotation of the midgutと, Bauhin弁から50cm口側の回腸に臍と連続する卵黄腸管遺残が存在し, Ladd氏手術,遺残卵黄腸管切除術,虫垂切除術を行った.病理組織学的検索で遺残卵黄腸管には異所性胃粘膜が認められた.本例はいずれも腸閉塞の原因となりうる腸回転異常症と卵黄腸管遺残の合併例である.中腸軸捻転や十二指腸狭窄がみられなかったことから,腸閉塞には卵黄腸管遺残の関与が考えられた.先天性疾患の成人発症例での診断は必ずしも容易ではなく,腸閉塞の原因究明の第1歩は,乳児期からの詳細な病歴聴取にあると思われた.
  • 鈴木 聡, 三科 武, 金田 聡, 石塚 大, 竹石 利之, 石山 貴章
    1999 年 60 巻 11 号 p. 2911-2915
    発行日: 1999/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    慢性関節リウマチ (RA) に,胃・十二指腸潰瘍穿孔以外の腹膜炎が合併することは稀である.今回, RAの経過中に回腸穿孔,空腸壊死で,2度の開腹術を要した1例を経験した.症例は69歳,女性で5年前からプレドニン20mgの内服治療を受けていた.下腹部痛を主訴に来院し,急性虫垂炎の診断で開腹すると,回腸に1カ所,径2mmの穿孔が認められたが原因は不明であった.穿孔部閉鎖術を施行し,術後経過は比較的良好であったが, 7週目に空腸壊死をきたし再度緊急開腹術を施行した.切除空腸90cmの病理検索では,腸管には特異的炎症所見や血管炎・血管閉塞像はなく,アミロイド沈着もなかった.術後は多臓器不全で死亡し,解剖所見で小腸の多発穿孔を認めたが,血管炎やアミロイド沈着は認めなかった. RA患者に,小腸穿孔や分節的な小腸の血行障害による壊死を認め,腹膜炎が発症する病態は極めて稀と考えられた.
  • 中崎 隆行, 小松 英明, 光武 範吏, 谷口 英樹, 中尾 丞, 栄田 和行
    1999 年 60 巻 11 号 p. 2916-2918
    発行日: 1999/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    原発性小腸軸捻転症の2例を経験したので報告する.症例1は11歳男性で腹痛,嘔吐を主訴として来院した.腹膜刺激症状出現し,急性腹症の診断にて手術を行った.回腸末端の小腸の捻転がみられ壊死腸管を約1m切除した.症例2は14歳女性で腹痛を主訴として来院した,下腹部の圧痛と腹膜刺激症状を認め,腹部CT検査にてwhirl-likepatternがみられ,小腸軸捻転症疑いにて緊急手術を行った.回腸末端部に小腸軸捻転があり,壊死腸管を約1.6m切除した.腸回転異常を合併しない原発性小腸軸捻転症は稀とされ,術前の正診率も低く死亡率も高いとされている.開腹歴のない腸閉塞では本症も念頭にいれ,より早期の診断,手術が必要である.
  • 二村 直樹, 鬼束 惇義, 林 勝知, 阪本 研一, 広瀬 一, 下川 邦泰
    1999 年 60 巻 11 号 p. 2919-2923
    発行日: 1999/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    虚血性小腸狭窄は稀な疾患である.今回われわれは,腹部血管造影後に発症した虚血性小腸狭窄の1例を経験したので報告する.症例は72歳,男性.肝硬変の経過観察中に肝癌を指摘され,肝動脈化学塞栓術(TAE)を目的として入院となった.腹部血管造影ではカテーテルの選択的挿入が不能で, TAEはできなかった.血管造影後に腹痛が出現し,翌日の腹部CT検査で脾梗塞,両側の腎梗塞と診断された.腹痛が持続し,経過とともに小腸ガス像,鏡面像が増強した.血管造影より69日目に行った小腸造影で小腸中央付近に約7cmの狭窄が認められた.臨床経過から,塞栓による虚血性小腸狭窄と診断し,手術を行った.回腸末端から口側約2mの部位に狭窄があり,狭窄部を含めて小腸切除術を施行した.標本では狭窄部で壁肥厚を認め,病理組織検査では粘膜下までの潰瘍と潰瘍瘢痕を認めた.血管造影後の急性腹症では虚血性小腸炎も念頭に置くべき疾患と考えられた.
  • 村上 望, 平野 誠, 宇野 雄祐, 野澤 寛, 橘川 弘勝, 増田 信二
    1999 年 60 巻 11 号 p. 2924-2928
    発行日: 1999/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    小腸結核は,結核症の減少とともに日常診療においては稀な疾患となっている.今回われわれは,肺結核症の治療中に腸結核が穿孔した症例を経験したので報告する.症例は51歳男性で,下腹部痛の精査にて回腸終末部に結核による活動性潰瘍を認めた.肺結核も認め,抗結核療法を開始したところ下腹部痛が増強したため,汎発性腹膜炎の診断にて開腹を行った.開腹すると,回腸末端部から60cmの小腸に穿孔を認め,腸液の漏出に伴う汎発性腹膜炎の状態であった.また腸間膜の臓側腹膜には小粟粒大の結核結節が散在していた.回腸80cmと回盲部切除術を施行した.経過は良好で術後28日目に結核治療目的に転院となった.結核治療中においては腸結核およびその穿孔の危険性も念頭において治療を行うことが肝要と思われた.
  • 小林 克敏, 小村 伸朗, 岡本 友好, 田畑 泰博, 長 剛正, 青木 照明
    1999 年 60 巻 11 号 p. 2929-2932
    発行日: 1999/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は78歳男性.悪性リンパ腫化学療法中に約1lの大量下血にて当科紹介入院.上下部消化管内視鏡にて出血源認められず,出血巣シンチグラフィーにて空腸よりの出血が疑われた.開腹にて小腸部分切除術を施行したが,術後4日目に多臓器不全にて永眠された.病理組織学的検査にて空腸脂肪腫からの出血であったことが確認された.小腸脂肪腫は消化管腫瘍の中で極めて稀な疾患である.また,腫瘍の大きさに関わらず下血.血便症状を引き起こす腫瘍であり,本症例は悪性リンパ腫に対する化学療法による汎血球減少と出血傾向を契機として大量下血をきたした症例と考えられた.化学療法施行中の消化管出血の場合,原疾患による出血の他に今まで無症候に経過した小腸脂肪腫の様な良性腫瘍からの出血も念頭に置いて診断,治療にあたることが必要と考えられた.
  • 岡林 雄大, 上岡 教人, 金子 昭, 直木 一朗
    1999 年 60 巻 11 号 p. 2933-2936
    発行日: 1999/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は87歳,男性.当院内科への定期検診の際軽度の腹痛の訴えがあり,胸部X線検査では気腹の所見を,腹部X線撮影では拡張した小腸を認めたため当科へ紹介された.上部消化管の穿孔を疑い,緊急手術を施行したところ空腸および腸管膜に気腫状の変化が認められた.術中所見から腸管嚢腫様気腫 (PCI) と診断し,腹腔内遊離ガスはPCIに起因するものと考えられた.また,自然気腹を生じていたため,小腸部分切除術を施行した.
  • 宇田 憲司, 成末 允勇, 金 仁洙, 室 雅彦, 井谷 史嗣, 金子 晃久, 佐々木 寛
    1999 年 60 巻 11 号 p. 2937-2940
    発行日: 1999/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    小腸平滑筋肉腫の転移形式としては肝転移が最も多い.しかしながら予後不良のため,肝転移巣を切除し得たとの本邦報告は33例と少ない.われわれは原発巣切除後10年以上経過後に肝転移を来たし, 2回の肝切除を施行し得た小腸平滑筋肉腫の1例を経験したので,肝転移巣切除の意義を含め文献的考察を加え報告した.患者は65歳,男性で小腸平滑筋肉腫切除後11年目に肝腫瘍を発見された.腫瘍はMRIでは境界明瞭,類円形の腫瘤で,血管造影ではhypervascularであった.エコーガイド下針生検にて平滑筋肉腫肝転移と診断し,肝切除術を施行した.肝切除後1年目に残肝に再肝転移を認め,再度肝切除術を施行した.切除腫瘍はいずれも病理組織学的に平滑筋肉腫肝転移と診断された.再肝切除後1年の現在再発を認めない.小腸平滑筋肉腫肝転移は可能であれば,積極的に切除することで良好な予後が期待できると考えられた.
  • 田邊 匡, 梨本 篤, 藪崎 裕
    1999 年 60 巻 11 号 p. 2941-2944
    発行日: 1999/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は66歳男性.貧血症状で初発し,検診で貧血と便潜血を指摘,当院にて上部消化管内視鏡検査を施行したところ, 36年前に施行された胃切除・Billroth-II法再建(B-II)の輸入脚内に径約5cmの粘膜下腫瘍を認めた.肉腫を疑い手術施行,手術所見では肝転移,腹膜播種,リンパ節転移なく,腫瘍基部の全層切除により切除しえた.切除標本では,腫瘍径5.5×3.5×2.0cm,割面は充実性の粘膜下腫瘍で,病理所見より空腸原発の平滑筋肉腫と診断した.第11病日に退院し,現在外来通院中である.上部空腸に多いといわれる小腸平滑筋肉腫ながら, B-II輸入脚内に発生した例は極めて稀であるため,若干の文献的考察を加え報告した.
  • 特に小腸粘膜下動脈瘤 (cirsoid aneurysm) 破裂との関連と術中色素注入法について
    石川 徹, 関川 敬義, 茂垣 雅俊, 前田 宜包, 松本 由朗, 江口 英雄
    1999 年 60 巻 11 号 p. 2945-2949
    発行日: 1999/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は56歳男性.急性リンパ性白血病のため化学療法を受けていたが,突然大量の下血を呈しショック状態となった.緊急選択的血管造影で上行結腸出血と判断,開腹するも出血点を見いだせず,人工肛門を造設した. 4日後,人工肛門口側より大量出血があり,再度血管造影を施行し上腸間膜動脈領域の回腸に造影剤の血管外漏出像を認めた.病変部位同定と切除範囲を確実にするため血管造影カテーテルを留置し,術中色素注入により出血病変を含む回腸部分切除術を施行した.回腸の粘膜が一部欠損し,粘膜下層からの太い動脈壁の破綻による大量出血で, Dieulafoy様潰瘍と診断した.同様な所見を呈する疾患に小腸の粘膜下動脈瘤 (cirsoid aneurysm) 破裂があるが,これらはほぼ同じ病態と考えられた.
  • 長島 敦, 吉井 宏, 奥沢 星二郎, 北野 光秀, 土居 正和
    1999 年 60 巻 11 号 p. 2950-2953
    発行日: 1999/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    穿孔をきたした原発性小腸癌を経験した.症例は61歳,男性で腹痛を主訴に来院した.腹部理学的所見上汎発性腹膜炎を認め,腹部超音波検査,腹部CT検査で左下腹部に小腸と思われる腸管の壁肥厚像および腫瘤形成像を認めた.小腸腫瘍による汎発性腹膜炎の診断で緊急手術施行した.トライツ靭帯より約150cmの小腸に全周性径約4cmの腫瘤を認め,その潰瘍底に約2mmの穿孔部が認められた.腫瘤を含め小腸部分切除術を施行した.リンパ節転移,肝転移,腹膜播種は認めなかった.
    腫瘍は病理組織学的に中分化型腺癌と診断された.穿孔部周囲はnecroticであり,癌性潰瘍の壊死による穿孔と考えられた.術後経過は良好で,患者は第19病日に退院した.
  • 笠間 和典, 加納 宣康, 山田 成寿, 草薙 洋, 渡井 有, 武士 昭彦
    1999 年 60 巻 11 号 p. 2954-2958
    発行日: 1999/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    今回われわれは成人型腸重積症にて発症した横行結腸脂肪腫に対して非観血的整復後に腹腔鏡下結腸切除術を施行した症例を経験したので報告する.症例は20歳,女性.腹痛を主訴に来院し,入院時のCT,超音波検査にて横行結腸脂肪腫による腸重積症と診断し直ちに非観血的整復術を施行した.整復後9日目に腹腔鏡補助下結腸切除術を施行した.皮切は約4cmと小さく,術後の患者の満足度も高かった.脂肪腫による成人腸重積症は大開腹手術を施行されることが多いが,整復後に腹腔鏡下に切除することが患者のQOLのために,最も望ましいと考えられた.
  • 岩田 譲司, 武藤 文隆, 李 哲柱, 栗岡 英明, 細川 洋平
    1999 年 60 巻 11 号 p. 2959-2963
    発行日: 1999/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    慢性特発性大腸偽性腸閉塞症 (chronic idiopathic colonic pseudo-obstruction, 以下CICP) の1例を経験したので報告する.本症は,腸管の器質的な通過障害や腸管の機能異常の原因となる基礎疾患がないにもかかわらず,腹部膨満や腹痛,嘔気,嘔吐などの腸閉塞症状を繰り返す疾患群をいう.全消化管の運動異常である慢性特発性偽性腸閉塞症 (chronic idiopathic intestinal pseudo-obstruction, 以下CIIP) の部分症状と類似するが病態や治療方針は異なる.
    CICPの本邦報告例は少なく, 1998年までの成人報告例は自験例を含めて29例であった.今回,われわれは2度の大腸切除後に腹部症状が軽快しなかったCICPの1例に対して大腸亜全摘を行い,良好な術後経過が得られたので本症の治療方針を中心に文献的考察を加えて報告する.
  • 田村 昌也, 木元 文彦, 村田 修一
    1999 年 60 巻 11 号 p. 2964-2969
    発行日: 1999/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    盲腸癌を合併した成人腸回転異常症の1例を経験した.症例は55歳の男性で,腹部膨満感および腹痛を主訴として来院.イレウス管造影,注腸造影,腹部CT,腹部血管造影より, nonrotation typeの腸回転異常症を伴った盲腸癌と術前診断した.開腹時,回盲部,上行結腸は正中部に存在し,回盲部に骨盤底への播種を伴う腫瘍を認めた.結腸の固定は腫瘍部とS状結腸間膜のみであった.手術は胆嚢摘出術, D1郭清を伴う回盲部切除術およびLadd靭帯の切離を施行した. 1989年以降の成人腸回転異常症例67例を検討した結果,消化管腫瘍精査の過程で発見されたのは12例(17.9%)であった.
  • 出雲 明彦, 江口 徹, 木村 寛, 廣田 伊千夫, 金城 満, 木村 専太郎
    1999 年 60 巻 11 号 p. 2970-2975
    発行日: 1999/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は82歳女性. 2年前に他医にてS状結腸の径2cmの有茎性ポリープに対し内視鏡的ポリープ切除術を施行された.病理組織学的検査にてlp, adenocarcinoma, mod, sm 2, ly 1, v 1, ce(-)であったが,本人が追加切除を拒否したため経過観察中であった.血尿の精査にて当院泌尿器科入院,腹部CTにて脾臓背側に径3cm大の腫瘤陰影指摘され外科転科となる.精査の結果,他臓器,特に大腸には異常認めず,脾臓原発の腫瘍の診断にて1996年10月腹腔鏡下脾臓摘出術を施行した.切除標本では腫瘍は脾背側に位置し,大きさは径3×4cmで,割面は境界明瞭な内部に壊死を伴う黄白色充実性腫瘍であった.組織学的には内視鏡的に切除されたポリープとほぼ同様の組織像を呈したため, polypectomy後の大腸sm癌の異時性の孤立性脾転移と診断された.稀な異時性の脾転移を呈した早期大腸癌であり,若干の考察を加えて報告した.
  • 長島 淳, 硲 彰一, 吉村 清, 檜垣 真吾, 赤澤 哲子, 岡 正朗
    1999 年 60 巻 11 号 p. 2976-2980
    発行日: 1999/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    潰瘍性大腸炎の長期経過例は,大腸癌発生のリスクが高いことが知られている.今回,潰瘍性大腸炎の発症から15年を経て,術前深達度診断が困難であったびまん浸潤型直腸癌を合併した症例を経験したので報告する.症例は33歳男性. 18歳の時に粘血便で発症し,潰瘍性大腸炎と診断された.以後,慢性持続型で経過していたが, 1997年3月,大腸内視鏡検査にて,肛門縁より10~15cmの部位に発赤を伴う比較的扁平な隆起性病変が発見された.生検にてGroup IV,超音波内視鏡にてM'の診断のもと,左半結腸直腸切除・結腸肛門管端々吻合術が施行された.手術所見では,術前診断に反し腫瘍は筋層を越えて浸潤していた.本症例は,潰瘍性大腸炎に合併した大腸癌の進行度診断が困難であることを再確認させられた,教訓的症例であった.
  • 竹内 英司, 小林 陽一郎, 宮田 完志, 湯浅 典博, 服部 龍夫
    1999 年 60 巻 11 号 p. 2981-2985
    発行日: 1999/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    術中implantationが原因と考えられる直腸癌の局所再発を評価するために1992年1月より1997年12月までの6年間に当科で直腸癌の診断で初回切除術を施行された209例を対象とした.切除例のうち7例(3%)が局所再発の診断で再手術を施行され,うち2例(1%)が術中implantationが原因の再発と診断された.症例1は, 73歳,男性で,低位前方切除術施行中に切除断端が陽性であったため腹会陰式直腸切断術に変更された症例であった.術後4年2カ月で会陰再発をきたし切除術が施行された.症例2は48歳,男性で,直腸癌穿孔による汎発性腹膜炎で緊急にDSTによる低位前方切除術が施行された症例であった.術後8カ月で吻合部再発をきたし腹会陰式直腸切除術が施行された.以上より術中に腫瘍が露出したと考えられる症例では術中implantationの予防のための十分な洗浄と,早期発見のための厳重な経過観察が必要と考えられた.
  • 金澤 成雄, 永江 隆明, 藤原 隆, 向井 憲重, 木元 正利, 角田 司
    1999 年 60 巻 11 号 p. 2986-2990
    発行日: 1999/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    直腸肛門部に発生する悪性黒色腫は比較的稀な疾患であるが,その予後は極めて不良である.症例1は70歳,女性.約9カ月前より便に血液の付着があったが放置していた.しだいに肛門痛と下血が増強し,来院.肛門管の10~2時方向に弾性軟,易出血性の隆起性腫瘤を認め,一部肛門より脱出していた.生検で悪性黒色腫と診断,腹会陰式直腸切断術を施行した.経過は良好で,化学療法を施行し,術後65日目に退院した.症例2は80歳,女性.約1年間の下血を主訴として来院.入院時胸部X線では両側肺野にわたり0.5cm~1.5cmの多発陰影を認め,直腸視診で肛門縁に接する直腸左側後壁に潰瘍を伴う腫瘤を触知した.生検で悪性黒色腫と診断,腹会陰式直腸切断術を施行.経過良好で術後31日目に退院した.両側肺野の転移巣は不変であり,術後化学療法は施行しなかった.自験例とあわせて本疾患の診断と治療における問題点を検討するとともに,予後向上のため常に本疾患を念頭におき,直腸診による早期診断が重要であることを強調した.
  • 藤竹 信一, 野崎 英樹, 清水 稔, 前田 佳之, 片岡 将
    1999 年 60 巻 11 号 p. 2991-2995
    発行日: 1999/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は68歳,女性.巨大進行乳癌の末期とも思われる状態で入院となった.内分泌化学療法が奏効し全身状態は著しく改善し退院するに至った.この間に施行した腹部超音波検査にて肝S2区域に高エコーの腫瘤が認められさらに精査を進めた.単純CTでは低吸収域の腫瘤像として描出されdynamic CTでは早期相において一部が血管と同程度に造影され早期のwash outも見られた.脂肪変性を伴う肝細胞癌の疑いもあり経皮的肝生検を施行したところ病理組織学的に肝血管筋脂肪腫と診断されたので経過観察とした.肝の血管筋脂肪腫は稀でしばしば肝細胞癌との鑑別が問題ともなる.今回,乳癌治療中に発見された1例を経験したので文献的考察を加え報告した.各種画像診断の進歩に伴い今後も他疾患診療中に発見される例が増加するとも思われるが,経皮的肝生検も含めた諸検査によって確定診断に至るよう努め治療方針を検討する必要があると思われた.
  • 池田 剛, 五嶋 博道, 谷川 寛自, 根本 明喜, 林 実夫, 川口 達也
    1999 年 60 巻 11 号 p. 2996-3000
    発行日: 1999/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は83歳,女性.全身倦怠感,右上腹部痛を主訴として来院.右上腹部に弾性軟で可動性良好の10×8cmの腫瘤を触知した.超音波検査で胆嚢は腫大し,壁は全周性に肥厚し, CTでは正中腹壁直下に位置していた. DICでは総胆管の軽度拡張を認めたが胆嚢は造影されなかった.胆嚢と総胆管の位置関係を明確にするためにMRCPを施行した. MRCPで胆嚢は頸部で内下方に偏位しており,胆嚢の位置異常が明瞭に描出され胆嚢捻転症と診断した.開腹すると胆嚢は暗赤色で腫大し,時計方向に180度捻転しており,単純胆摘を施行した.本邦267例の報告では, 70歳代の女性に好発し,臨床所見では一般の急性腹症に比し発熱の頻度が少ない.術前に胆嚢捻転症と診断されたものは11.2%であったが,最近10年間では23.5%と向上してきている.診断はUS, CT所見を熟知するとともにMRCPが確定診断に至る有力な診断法となることが示唆された.
  • 大井 正貴, 浦田 久志, 内田 恵一, 荒木 俊光, 本泉 誠
    1999 年 60 巻 11 号 p. 3001-3005
    発行日: 1999/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は, 2歳11カ月,男児.主訴は心窩部痛,嘔吐および発熱.血液検査にて高アミラーゼ血症,腹部US, CTにて肝門部胆管から総胆管下部に至る拡張を認め,膵炎を伴う先天性胆道拡張症と診断し,保存的治療を行った.入院4日後に,突然上腹部膨満と筋性防御が出現し,胆汁性腹膜炎を疑い,緊急開腹を行った.総胆管には嚢腫状拡張,一部に壊死性変化を伴う2カ所の穿孔部を認めた. Tチューブドレナージと腹腔内ドレナージを行い,腹膜炎は軽快した.術後のTチューブ造影にて,膵管胆管合流異常を合併していることを確認した.初回手術3カ月後に,肝外拡張胆管切除術,肝管空腸吻合術を施行した.
    穿孔を合併した先天性胆道拡張症の原因,治療について考察した.
  • 上原 圭介, 長谷川 洋, 小木曽 清二, 塩見 正哉, 籾山 正人, 伊神 剛
    1999 年 60 巻 11 号 p. 3006-3010
    発行日: 1999/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    上腸問膜静脈血栓症の1例を経験したので,本邦報告例と合わせて検討し報告する.症例は65歳,男性.イレウスの診断で保存的治療施行中に腹痛が増強,腹部造影CTにて上腸間膜静脈内に血栓を認め,上腸間膜静脈血栓症による小腸壊死を疑い,発症6日目に手術を施行した.開腹すると血性腹水と壊死空腸を認め,約100cmの空腸を切除し,上腸間膜静脈本幹内血栓に対し,血栓除去を施行した.上腸間膜静脈本幹内血栓の再発は術後早期に認められたが,側副血行路の発達により肝への門脈血流は正常に保たれ,血栓除去は必ずしも必要ではなかったと考えられた.逆に辺縁静脈に沿う血栓を残したことにより縫合不全をきたしたと考えられたことから,本症の治療には辺縁静脈に沿う血栓の完全摘出が重要と考えられた.
  • 藤井 努, 末永 裕之, 桐山 幸三, 谷口 健次, 平井 敦
    1999 年 60 巻 11 号 p. 3011-3014
    発行日: 1999/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は57歳,男性.腹痛,嘔吐にて近医を受診したところ,臍部を中心に腫瘤を触知するとのことで,当院を紹介された.腹部CTで胃の背側,脾の前面に一塊となった小腸を認めた.網嚢腔への内ヘルニアを疑い,同日緊急手術を施行した.開腹すると,横行結腸間膜に直径約5cmの欠損孔を認め,その中に,回腸末端を除く,ほとんど全ての小腸が嵌入していた.整復は容易で,腸管に壊死所見は認められなかった.用手整復後欠損孔を閉鎖し,手術を終了した.術後経過は良好であった.
  • 松本 浩次, 渡辺 心, 児島 邦明, 深澤 正樹, 別府 倫兄, 二川 俊二
    1999 年 60 巻 11 号 p. 3015-3018
    発行日: 1999/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    今回われわれは,比較的稀な腸間膜悪性リンパ腫の1例を経験したので若干の文献的考察を加え報告する.
    症例は54歳,男性.主訴は腹部腫瘤. LDHの上昇を認め,隣部を中心に直径20cm大の弾性硬,可動性良好な腫瘤を触知.腹部CTでsandwich signを伴い,腹部血管造影では上腸間膜動脈造影でhypovascularであった.開腹時,小腸腸問膜内に15cm大の腫瘤および膵下縁より上腸間膜動脈に沿ってリンパ節腫脹を認め可及的に主腫瘍のみを摘出した,病理組織学的診断は悪性リンパ腫(diffuse, large cell, B cell type)であった.リンパ節表面マーカーCD 10が陽性であることよりfollicular typeからdiffuse typeへのtransformationが考えられ予後不良と判断し,術後化学療法を併用した.腸間膜悪性リンパ腫は,術前診断は困難で,予後不良な疾患とされている.根治手術可能率は低く本例も含め外科手術治療に執着するよりも速やかな化学療法への移行が望ましいと思われた.
  • 渡辺 浩, 川村 統勇, 川村 武, 松田 寿夫, 河野 洋一, 川村 雅俊
    1999 年 60 巻 11 号 p. 3019-3023
    発行日: 1999/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    大網原発の類上皮平滑筋肉腫の1例を経験したので報告する.患者は69歳,女性.高度の貧血を指摘され近医より紹介となった.腹部CT検査では左上腹部に径11cm大の腫瘤が認められ,血管造影検査にて腫瘍がおもに左胃大網動脈より栄養され,一部に腫瘍濃染像も認められた事より大網原発腫瘤を疑ったが開腹すると,腹腔内には多量の血液貯留が認められ,大網内には易出血性の比較的軟らかい腫瘤が存在した.手術は腫瘤摘出術を行った.切除標本では大きさ13×9×4cm,重量250g,薄い被膜に取り囲まれた多房性腫瘤であった.病理組織学的には空胞状の細胞質を有する類円形または紡錘形腫瘍細胞よりなっており,大網原発類上皮平滑筋肉腫と診断された.文献的にも大網に発生した同腫瘤の報告は極めて少なく特に腫腔内出血による貧血を契機に発見された症例は2例のみであった.
  • 仲宗根 朝紀, 渡部 誠一郎, 山口 栄一郎
    1999 年 60 巻 11 号 p. 3024-3027
    発行日: 1999/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は65歳,男性. 1998年12月15日,右下腹部腫瘤を主訴として来院.右下腹部に4×4cm大の球状の腫瘤を触知した.腹部CT, MRI検査では,腹壁筋層から皮下組織に突出する腫瘤影を認め,腹壁腫瘍が疑われた. 1999年1月頃,腫瘤の増大と臥位時の消失が認められ,腹部CT検査で腹直筋外縁と内腹斜筋,腹横筋内縁との間隙(Spigel腱膜)から皮下組織に突出した低吸収性の腫瘤影を認め, Spigelヘルニアと診断した.手術時の所見ではヘルニアはSpigel腱膜より発生し外腹斜筋腱膜を貫いて皮下組織まで突出しており, Spigelヘルニアと確診した.腹横筋と内腹斜筋腱膜を腹直筋外縁と前鞘に層々に縫合,鼠径管後壁をMarlex meshで補強した.術後経過は良好であった.
  • 宮崎 恭介, 中村 文隆, 道家 充, 成田 吉明, 樫村 暢一, 松波 己, 加藤 紘之
    1999 年 60 巻 11 号 p. 3028-3031
    発行日: 1999/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は46歳,女性.心窩部痛,右鼠径部腫瘤を主訴に1998年5月10日,当院消化器科受診.消化器疾患精査の目的で胃および大腸内視鏡を施行するも異常を認めず,腹部CTで右鼠径部リンパ節腫脹が疑われたため,リンパ節生検目的にて外科紹介となった. 5月25日,局所麻酔下のリンパ節生検で大腿ヘルニアであることが判明したが. mesh-plugを用いることにより局所麻酔下のままで一期的に大腿ヘルニア修復術を行い得た.患者は手術直後より心窩部痛が消失し, 24時間後に帰宅した. 1998年9月現在再発は認めていない.
    大腿ヘルニアにおいてmesh-plug法は, plugを大腿管に挿入するという簡単な操作で確実にヘルニア門を閉鎖することができる術式で,絞扼所見のない大腿ヘルニアに対しては局所麻酔下でできる利点も加えると,第一選択術式であると考えられた.
  • 矢野 正雄, 白木 康夫, 猪口 正孝
    1999 年 60 巻 11 号 p. 3032-3034
    発行日: 1999/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    成人大腿ヘルニアに対しては,従来鼠径法であるMc Vay法などが行われている.術後の再発は現在でも低下しているとはいえない.われわれは成人大腿ヘルニアに対してmesh plug法での手術を行い良好な成績を得たので報告する.手術方法は鼠径法アプローチ後ヘルニア嚢を翻転し, mesh plug挿入固定,さらに平板meshにて大腿輪を補強するものである.全例とも再発は現在認めていない.本法は手術も簡単であり,術後のQOLも良好なことより今後Mc Vay法に代わる術式となりうるものと思われる.
  • 富永 春海, 吉川 澄, 道清 勉
    1999 年 60 巻 11 号 p. 3035-3038
    発行日: 1999/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    食道偽肉腫,肝細胞癌併存の1例に対し,一期的に根治術を施行し得た症例を経験した.症例は72歳男性.嚥下障害にて来院.食道透視,食道内視鏡,胸部CTにて食道Imに有茎性の腫瘤を認めた-また腹部CT,超音波検査にて肝S8に腫瘤を認めた.呼吸機能低下のため,非開胸食道抜去術,肝部分切除術を施行した.患者は術後70カ月目に,肝細胞癌再発のため死亡した.食道偽肉腫肝細胞癌の併存症例の報告は文献的に検索し得なかった.食道肝同時性重複癌症例の報告は本症例を含めると23例であった. 11例は両癌に対し手術が施行されていた.食道肝同時性重複癌症例は高齢者で肝機能障害を伴い術前状態不良の症例が多い.しかし手術可能な症例に対しては手術を施行出来れば,本症例の様に5年以上生存する例もあり,外科的治療の考慮が必要と思われた.
  • 国府 育央, 金 容輝, 福田 和弘, 山本 正之, 矢野 外喜治, 山田 克己
    1999 年 60 巻 11 号 p. 3039-3043
    発行日: 1999/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    きわめてまれなvon Recklinghausen病(以下, R病)に乳癌と無症候型褐色細胞腫を合併した1例を経験したので報告する.症例は, 46歳,女性.主訴は,左乳房腫瘤.思春期より皮膚の腫瘤と色素斑が出現した.家族にR病はいない.左CA領域に4.0×4.0cmの腫瘤を認め,穿刺吸引細胞診で乳癌と診断(Stage II)し,手術(Bt+Ax)を施行した.病理組織学的所見は,乳頭腺管癌, n1α(1/13). ER, PgRはともに陽性であった.また,皮膚腫瘤は,神経線維腫であった.術後,腹部CTにて右副腎に腫瘤を認めた.血中カテコールアミンは正常であったが,尿中カテコールアミンは高値を示し, 131I-MIBGシンチにて右副腎部に一致して異常集積像が認められた.患者に,高血圧は認めず,無症候型褐色細胞腫を疑い,右副腎摘出術を施行した.病理組織学的所見は,褐色細胞腫であった.患者は,術後7カ月現在乳癌の再発を認めず健存している.
  • 植松 正久, 岡田 昌義
    1999 年 60 巻 11 号 p. 3044-3050
    発行日: 1999/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    患者は左頸部に小丘疹と色素沈着(café au lait spot)を有し,既往に尿路結石症を有する56歳の女性である.検診で胸部異状陰影が指摘され,精査で,右下肺野(S9領域)の肺癌と診断され,右肺下葉切除術が施行された.
    肺癌の術後に高Ca血症と腎結石症が指摘されたため,術後3年3カ月が経過した後,当院に再入院となった.諸検査の結果,甲状腺右葉に接する腫瘤が認められ,副甲状腺癌の診断で,手術が施行された.また,同時に施行された前頸部のcafé au lait spot部の生検組織から,神経線維腫(neurofibroma)という診断も得られた.本症例では, von Recklinghausen病に合併した,肺・副甲状腺重複癌と確定診断された.厳重な外来follow-upが開始され,現在,肺癌(第1癌)術後8年8カ月,副甲状腺癌(第2癌)術後5年5カ月が経過しているが,元気に外来通院中である.
    von Recklinghausen病には,種々の悪性腫瘍の合併することが知られている.一方,高Ca血症を呈する副甲状腺機能亢進症にも種々の悪性腫瘍の合併することも散見されている.今回,われわれはvon Recklinghausen病に合併した肺.副甲状腺重複癌を経験したが,これらの病変を合併した症例の報告は本邦最初である.この病態について詳細に報告し,今後の課題にしたいと考えている.
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