日本臨床外科学会雑誌
Online ISSN : 1882-5133
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61 巻 , 12 号
選択された号の論文の57件中1~50を表示しています
  • 矢野 浩巳, 工藤 龍彦, 小長井 直樹, 前田 光徳, 三坂 昌温, 松本 正隆, 田代 浄, 石丸 新
    2000 年 61 巻 12 号 p. 3149-3155
    発行日: 2000/12/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    当施設において開心術を行った活動期感染性心内膜炎16例を対象とし,発症より手術までの時間,炎症所見,原因菌,手術所見,手術方法,合併症,早期および晩期成績などを検索し,検討を加えた.進行する心不全,持続する敗血症,大きな塞栓症以外の症例では, 2~4週の抗生剤投与で有意に炎症反応(WBC, CRP)を抑えることができ,開心術を安全に行いえた. Staphylococcus,真菌感染例に対しては更に早期からの手術が必要であった.感染が弁尖部や腱索に限局している例に対しては機械弁置換術を行い,早期,晩期成績ともに良好であった(生存率0.87).しかし,重症感染例に対しては感染巣の完全除去と積極的な再建が必要と考えられた.合併症に対しては,早期の診断と治療が必要であり,他科との密接な連携による迅速な治療が肝要と考えられた.
  • 峯岸 晶子, 小林 慎, 加固 紀夫, 畑中 亮, 高谷 俊一, 鈴木 宗平
    2000 年 61 巻 12 号 p. 3156-3163
    発行日: 2000/12/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    Basedow病に合併した甲状腺乳頭癌の生物学的特異性を明らかにする目的で過去15年間に当科で手術を施行したBasedow病非合併甲状腺乳頭癌(PCa) 210例とBasedow病合併甲状腺乳頭癌(BCa) 11例を比較検討した.術後の予後因子としてpT, N, Ex因子,また免疫組織学的にPCNA陽性率とc-Fos, c-Mycの発現率を各々比較検討した.その結果, BCaではPCaと比較して腫瘍径は小さいものの腺内に多発する傾向があり,高度なリンパ節転移をきたす例もある一方で,腺内多発,リンパ節転移陽性症例においても術後転移再発例はなく,予後は良好であった.免疫組織染色の結果, Basedow病組織ではPCNA平均陽性率, c-Fos, c-Myc発現率ともに高く, BCaの癌組織ではより高率に発現していた.以上のことより, BCaにおける腺内多発傾向はBasedow病における甲状腺組織の細胞増殖能充進状態が一因になっている可能性が示唆された.
  • 伊藤 隆夫, 樫塚 登美男
    2000 年 61 巻 12 号 p. 3164-3170
    発行日: 2000/12/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    1999年までの過去11年間に138例の乳房温存療法を行ったが,同期間の乳癌手術総数578例の23.9%に相当した.術式変更や他病死を除く135例のうち乳房内再発3例と遠隔転移例3例の合わせて6例(4.4%)を認めたので,その検討を試みた.再発例に特徴的であったのは低年齢(平均40.7歳)であった(p<0.025).乳房温存療法における5年健存率はStage I 93.5%, Stage II 82.2%で腫瘤径の大きなものが予後不良であった(p<0.01).
    乳房内再発と紛らわしかった6例にはfat necrosisが多かった.乳房円状部分切除術で断端陽性率は13.8%あり,そのうち乳管内進展例は94.7%を占めた.乳房内再発防止対策として,術前の画像診断(MMG, US, CT, MRI)による適応の見直し,術中迅速病理検査による断端の確認,術後放射線照射の励行に努めている.
  • 前田 清, 小坂 博久, 西口 幸雄, 八代 正和, 山田 忍, 雪本 清隆, 沢井 正光, 平川 弘聖
    2000 年 61 巻 12 号 p. 3171-3176
    発行日: 2000/12/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    近年,悪性胆道狭窄や食道狭窄に対してexpandable metallic stent (EMS)留置の有用性が報告されているが,今回われわれは切除不能な狭窄を伴った左側大腸悪性疾患9例に対し, EMS留置術を試みた. 9例中7例に留置可能であった.留置可能であった7例ともEMS留置直後より排便がみられ,翌日より経口摂取可能となった.合併症としては1例に腫瘍のステント内増殖のため,再狭窄症状がみられたが, EMS追加留置により改善した.その他の症例には特に合併症を認めなかった.転帰については4例が癌死しているが,ステント留置から死亡までの間,再狭窄症状は認められなかった.残りの3例は健存で最長では留置後11カ月経過しているが,特に問題なく,経過している.本法は人工肛門造設術と比べると低侵襲であり,また,肛門からの自然排便が可能となることは精神的,肉体的苦痛を軽減し,末期患者のQOL向上につながると思われた.
  • 渡邊 正志, 中崎 晴弘, 長谷部 行健, 滝田 渉, 大城 充, 戸倉 夏木, 下島 裕寛, 鈴木 康司, 小林 一雄, 野中 博子
    2000 年 61 巻 12 号 p. 3177-3182
    発行日: 2000/12/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    モノクローナル抗体Ber-EP4は中胚葉由来の細胞と上皮性細胞との鑑別に有用であるとされている抗体であるが,われわれが経験した混合型肝癌症例について, Ber-EP4,サイトケラチン染色(サブクラスNo.8)を用いた免疫組織学的検討を行ったので報告する.対象と方法:当科で切除した混合型肝癌8例(mixed type 5例, combined type 2例, double cancer 1例)を対象とした.結果:混合型肝癌におけるサイトケラチン染色は胆管細胞癌において肝細胞癌部にくらべ強染される傾向であったが, Ber-EP4染色では両部位の染色性に差がなく,陽性のものは両部位とも陽性,陰性のものは両部位とも陰性であった.考察:症例ごとの既存の肝障害,ウィルス感染の有無を考慮するとBer-EP4染色は混合型肝癌の起源を推測する際の指標になりうるものとも考えられた. Ber-EP4染色は肝内悪性腫瘍が原発性か転移性かを考慮する際にも有用な抗体と思われた.
  • 樋口 卓也, 森本 芳和, 角村 純一, 宮崎 実
    2000 年 61 巻 12 号 p. 3183-3188
    発行日: 2000/12/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    総胆管の拡張をきたした胆石症例(径10mm以上)に対し,術前にmagnetic reasonance cholangiography (MRC)検査を施行し,開腹所見をもとにその有用性と問題点について検討した.対象症例は1996年6月より当科にて手術を施行した総胆管の拡張を伴う胆石症例27例で,男13例,女14例,平均年齢は68.2±11.2歳である.
    術前検査として,腹部超音波検査(US),腹部CR検査を全例に施行し,胆道系の評価としてintravenous cholangiography (IVC)・endoscopic retrograde cholangiopancreatography (ERCP)あるいはpercutaneous transhepatic cholangiography (PTC)を,また,禁忌症例を除く22例にMRC検査を施行した,総胆管の最大径は10~45mm (15.9±7.9mm)であった.
    使用機種はShimazu Magnex α II (0.5-T)を用いfirst spin echo法によった.測定時体表コイルを併用し,息止め時間は10秒であり,測定回数は9回とした.造影剤は使用していない.
    対象症例の手術内容は,総胆管切石術が20例,胆嚢摘出術6例,胆管空腸吻合術1例であり,総胆管結石を21例で認めた.胆摘術のみの症例は術中造影検査にて総胆管に結石のないことを確認している.
    開腹所見と術前の画像検査所見を比較検討すると,US検査では総胆管内結石の有無を正診しえたのは27例中11例 (40,7%) であり,CT検査の正診率は62.9%であり,IVCでは68.4%であった.
    MRC検査の正診率は86.3%であり,開腹既往歴,造影剤アレルギー症例および黄疸症例においても胆道系ならびに結石像の鮮明な画像がえられ,また,3mm以下の微細結石症例の検索を可能であった.しかしながら,胆嚢内の結石嵌頓,すなわちnegative cholecystogram を示す症例においても胆嚢が過大に描出され,また傍乳頭部憩室の検索には限界がみられた.
  • 奥田 栄樹, 大杉 治司, 徳原 太豪, 高田 信康, 竹村 雅至, 木下 博明
    2000 年 61 巻 12 号 p. 3189-3193
    発行日: 2000/12/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    われわれは1996年4月より1997年12月までに,食道癌切除術を64例に施行し,そのうち3例に術後脳血管障害を認めた.脳血管障害例の内訳は脳梗塞2例(75歳・男性, 76歳・男性)と一過性脳虚血性発作1例(74歳・男性)であり, 3例とも抗凝固療法にて軽快した.そこで1998年1月以降は, 75歳以上または脳梗塞既往を有する食道癌症例に対して術後予防的抗凝固療法を行っている.その結果,食道癌切除術施行40例中5例に対して抗凝固療法を行い,脳虚血性障害を発症していない.一般に食道癌術後早期には呼吸管理として,輸液量の制限からやや脱水傾向にあり,脳虚血性障害を起こしやすい状態にあると思われる.それゆえ食道癌根治術後は脳梗塞既往例や高齢者に対しては術後抗凝固療法による予防が肝要と思われた.
  • 井上 陽一, 城戸 哲夫, 狭間 研至, 出口 寛, 小川 達司, 田中 康博
    2000 年 61 巻 12 号 p. 3194-3198
    発行日: 2000/12/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    下咽頭癌術後頸部乳麋瘻に対して胸腔鏡下胸管クリッピング術を施行し,乳麋瘻を治癒せしめた症例を経験した.症例は52歳,男性.下咽頭癌のため咽喉頭全摘,頸部拡大リンパ節郭清術が施行された.術当日から左頸部の乳麋瘻を認め, OK432の局所注入による硬化療法を行ったが乳麋瘻の漏出が続くため,胸腔鏡下胸管クリッピング術を施行した.術前にリンパ管シンチグラフィーを施行し,胸管の走行異常のないことを確認した.胸腔鏡を右胸腔に挿入,食道奇静静脈間の胸管を同定し,横隔膜直上の胸管根部で胸管を三重にクリッピングした.術当日より乳麋の量は著減し,クリッピング施行後8日目には乳麋瘻は完全に停止した.頸部外科領域の術後乳麋瘻に対して胸腔鏡下胸管クリッピング術は乳麋瘻を確実に停止させる方法と思われる.
  • 井上 慎吾, 張 文誠, 安留 道也, 山田 治樹, 江口 英雄
    2000 年 61 巻 12 号 p. 3199-3201
    発行日: 2000/12/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    患者は31歳の授乳中の女性で,径2cmの左乳腺腫瘤を自覚し来院した.触診,超音波検査では境界明瞭な腫瘤であったため,線維腺腫を疑った.生検にて被膜を持つ黄色腫瘤であった.病理組織検査では,わずかな間質に分泌傾向を示す密な管状腺房様構造を示す上皮細胞増殖を認め,授乳性腺腫と診断された.授乳性腺腫は稀な疾患で,組織学的には分泌期乳腺,線維腺腫との鑑別,臨床的には悪性腫瘍,線維腺腫,葉状腫瘍との鑑別が必要となるが,稀な疾患のため術前診断されることが少ない.妊娠・授乳時に出現する乳腺腫瘍に対しては,本疾患を考慮すべきである.
  • 三田 圭子, 遠山 竜也, 山下 啓子, 大本 陽子, 岩瀬 弘敬, 小林 俊三
    2000 年 61 巻 12 号 p. 3202-3205
    発行日: 2000/12/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    症例は47歳女性.検診にて右乳房腫瘤を指摘されて当科受診.画像診断上乳癌を否定できず,穿刺吸引細胞診を施行したところ粘液成分と異型性の乏しい上皮細胞を認めた.手術は乳腺部分切除術を施行し,術後の病理検査にて乳腺mucocele-like tumor (MLT)との診断を得た.乳腺MLTは,小唾液腺に発生する嚢胞性の良性疾患の Mucocele と類似の形態像を示す疾患である.最近,早期の粘液癌のような病変を含んでいたり非浸潤癌を伴うことがあるとの報告がされ,良悪性の境界病変と位置づける見方も出てきている.免疫組織学的に本疾患の悪性度を検討すると, ER弱陽性,変異型p53, Ki-67, C-erbB-2/HER2 はそれぞれ陰性であり,当症例の生物学的な悪性度はきわめて低いことが示唆された.今後多数の症例を用いた悪性度の検討が必要である.
  • 植木 匡, 杉本 不二雄, 石塚 大
    2000 年 61 巻 12 号 p. 3206-3209
    発行日: 2000/12/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    今回われわれは照射既往のない乳腺血管肉腫の1例を経験したので報告する.症例は19歳の女性で,左乳房A領域に有痛性腫瘤を触知し平成10年1月に当科初診した.触診では表面平滑で弾性軟の腫瘤であった.超音波検査所見では1.32cm×0.68cmの内部均一で低エコーな腫瘤であった.腫瘍切除術を施行したところ,腫瘍は嚢胞で切除時に穿破し内容液は褐色漿液性であった.周囲の褐色部を含め嚢胞膜を病理検査に提出し,直径約5mmの乳腺血管肉腫の診断を得た.そのため,腋窩リンパ節郭清を伴わない乳房部分切除術を追加した.腫瘍切除後2年6カ月経っが再発は認めない.本邦での3cm以下の乳腺血管肉腫は本症例を含め8例と少なく若干の文献的考察を加え報告する.
  • 吉田 貢一, 八木 真悟, 山田 哲司, 北川 晋, 中川 正昭, 車谷 宏
    2000 年 61 巻 12 号 p. 3210-3213
    発行日: 2000/12/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    症例は41歳,女性.右乳房腫瘤を主訴に来院した.右乳腺AC領域に1.5cmの腫瘤を触知した.腫瘍摘出術を施行し,高分化型乳腺血管肉腫の病理診断を得た.乳房扇状部分切除術,および腋窩リンパ節郭清を施行し,術後から5年経過した現在,無再発で生存中である.
    乳腺血管肉腫は稀な疾患であり,その予後は極めて不良である.そのため,病初期に診断し,切除することが本症の治療においては極めて重要となる.
  • 佐伯 宗弘, 中村 広繁, 本城 総一郎, 谷口 雄司, 牧原 一彦, 応儀 成二
    2000 年 61 巻 12 号 p. 3214-3218
    発行日: 2000/12/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    化学療法後に上大静脈合併切除再建を施行した胸腺Hodgkin病の1切除例を報告する.症例は39歳,女性で主訴は発熱と乾性咳嗽であった.全身所見で頸静脈と前胸部静脈の怒張を認めた.胸部CTでは上大静脈に浸潤する大きさ65×50mmの前縦隔腫瘤を認め,針生検で胸腺腫疑いと診断され,化学療法を2クール施行した.腫瘍の著明縮小を認めたため拡大胸腺胸腺腫摘出術,上大静脈合併切除再建,心膜・肺合併切除,縦隔リンパ節郭清を施行した,術後の病理組織で胸腺Hodgkin病と診断され,当院内科で化学療法 (COPP) を追加した.胸腺Hodgkin病は稀な疾患であるが,胸腺腫との鑑別に注意を要する.本症例は上大静脈症候群を合併しており,化学療法と外科治療の併用が有効であった.
  • 近藤 大造
    2000 年 61 巻 12 号 p. 3219-3222
    発行日: 2000/12/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    症例は38歳,女性.時々軽い左背部痛を覚えていたところ,住民検診で胸部異常影を指摘され来院した. CTでは左胸腔の半分以上を占拠する内部不均一,境界明瞭,圧排充実性の巨大腫瘤を認めた.手術は左後側方開胸でおこなった.腫瘍の胸壁との癒着は軽度で,左下葉のS6-10 の臓側胸膜から肺外性に発育して,肺動脈,気管支へ浸潤していたため肺全摘,系統的肺門縦隔リンパ節郭清を施行した.腫瘍は大きさ21×11×7cm,重量1750gであった.割面は灰白調で壊死はなく,リンパ節転移もなかった.病理組織学的には線維芽細胞様の紡錐形細胞がpatternless patternを示し,免疫染色ではEMA, cytokeratin, S-100陰性, vimentin陽性の所見からCD34陰性であったが, solitary fibrous tumorと診断した.現在,術後5年再発なく健在である.
  • 廣瀬 光, 門川 佳央, 細村 直弘, 吉富 彰一, 木村 貴彦, 八木 誠
    2000 年 61 巻 12 号 p. 3223-3226
    発行日: 2000/12/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    当院で3例の下咽頭癌咽頭喉頭頸部食道全摘出例に対し,エンドステープラーを用いて遊離空腸に二重折りパウチ加工を加え再建を行った.全例生着し,再建に基づく合併症は見なかった.遊離空腸は,粘膜の連続性を保てると言う組織学的な優位性に加え,微小血管吻合技術の普及した現在,血行再建が安全確実に行えるようになり,再建組織として第一選択とされる状況にある.しかし,嚥下運動の第2相が損なわれてしまう咽頭喉頭全摘出においては,再建組織はもっぱら重力によって通過する食物塊の流路導管となるのみであり,機能的再建に到っていない現状では,再建時のデザインの工夫の余地が残されていると考えられる.ステッキ状の端側吻合による再建が一般的だが,今回筆者らは,再建操作を担当するにあたり,簡便に二重折り加工を行い,概念的には大きな口径差のある欠損部分を直線的な端々吻合として再建できるように術式を工夫したので,報告する.
  • 上原 圭介, 長谷川 洋, 小木曽 清二, 塩見 正哉, 籾山 正人, 伊神 剛, 太平 周作
    2000 年 61 巻 12 号 p. 3227-3231
    発行日: 2000/12/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    von Recklinghausen病 (以下R病) に合併した gastrointestinal stromal tumor (以下GIST)の2例を経験したので報告する.症例1は49歳,男性で主訴は吐血.上部消化管内視鏡検査にて十二指腸水平部に隆起性病変を認め, CTではTreitz靱帯付近に充実性腫瘍を認めた.開腹すると十二指腸上行部に粘膜下腫瘍を認め,十二指腸空腸部分切除術を施行した.症例2は68歳,男性.直腸癌にて低位前方切除術を施行時,小腸粘膜下腫瘍を発見したため,小腸部分切除術を施行した.免疫組織化学的検査では,腫瘍はともにc-kit陽性を示し,狭義のGISTと診断した. R病に合併する非上皮性腫瘍の大部分は神経原性とされてきたが,免疫組織化学的検査の発達により,今後,狭義の GIST の範疇に含まれる症例が増加すると考えられた.
  • 立本 昭彦, 香川 茂雄, 國土 泰孝, 村岡 篤, 津村 眞, 鶴野 正基
    2000 年 61 巻 12 号 p. 3232-3235
    発行日: 2000/12/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    症例は77歳,男性,突然の上腹部痛と吐血により当院緊急外来を受診した.既往歴として30年前,胃潰瘍のため他院で胃切除術(Billroth II法)を受けていた.緊急内視鏡検査では,残胃内に暗赤紫色,蛇腹様の柔軟な腫瘤を認め,腹部CTでは残胃内の小腸重積像を認めた.以上より空腸残胃重積症と診断し緊急手術を施行した.輸入脚空腸が順行性に残胃内に重積していたため,重積腸管を徒手的に整復し,再発予防のため過長な輸入脚を固定,さらに, Braun吻合を付加した.術後,再発傾向もなく経過良好である.
  • 倉持 純一, 五関 謹秀
    2000 年 61 巻 12 号 p. 3236-3238
    発行日: 2000/12/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    症例は53歳女性,上腹部痛および蕁麻疹を主訴として来院した.上部消化管内視鏡にて胃幽門洞前壁に2型進行癌を認めたが,アニサキス幼虫がその潰瘍底に迷入し周堤は浮腫状を呈していた.鉗子を用いアニサキス虫体を除去し,症状は改善した.後日胃癌に対し幽門側胃切除術を施行した.病理組織学的にはアニサキスによる炎症細胞浸潤や肉芽腫性変化は認められず,漿膜面の変化もなかった.本症例はアニサキス幼虫が進行胃癌に迷入しておりまれな1例である.
  • 田中 正文, 初瀬 一夫, 相原 司, 大渕 康弘, 渡邉 覚文, 望月 英隆
    2000 年 61 巻 12 号 p. 3239-3242
    発行日: 2000/12/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    症例は80歳,男性.右上腹部痛を主訴として近医受診.急性腹症の診断にて当院紹介緊急入院.入院時,収縮期血圧70mmHgとショック状態で,右上腹部に圧痛および筋性防御を認めた.腹部超音波で胆嚢の腫大と胆嚢壁の肥厚,胆石および腹水を認めた.腹部造影CTで膵頭部領域が不整に造影される所見を認め,後腹膜出血を疑った.緊急腹部血管造影を施行したところ,前上膵十二指腸動脈瘤破裂と診断され,プラチナコイルで流入動脈を塞栓・止血した.以後 全身状態は改善した.18病日の腹部CTでは膵頭部の腫瘤と総胆管結石を認め,随伴性膵炎が動脈瘤の成因として関与したものと考えられた.52病日に胆嚢摘出術,総胆管切石術, T-tubeドレナージ術を施行した.前上膵十二指腸動脈瘤破裂に対しプラチナコイルによる塞栓・止血で救命しえた1例を報告した.
  • 田中 聡也, 北原 賢二, 中村 哲也, 宮崎 耕治
    2000 年 61 巻 12 号 p. 3243-3247
    発行日: 2000/12/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    症例は66歳の女性.特発性血小板減少性紫斑病(以下ITP)のためプレドニン内服中,黄疸を主訴に近医を受診した.閉塞性黄疸の診断で経皮経肝胆道ドレナージを施行.精査の結果,十二指腸乳頭部癌と診断され,当院紹介となった.入院時プレドニン15mg/日内服下で血小板は13.2万/μl.ステロイドの減量目的で免疫グロブリン輸注後,プレドニンを半量とし脾臓摘出術を先行した.脾摘後,血小板数は43.4万/μlまで増加し,プレドニンを5mg/日まで減量,血小板数18.2万/μlの状態で幽門輪温存膵頭十二指腸切除術を施行した.術後,合併症を起こすことなく軽快退院した. ITPが十二指腸乳頭部癌に併存した症例に,脾摘術および免疫グロブリン輸注を行うことでステロイド剤の投与量を減量させ,安全に手術が可能であった.この段階的併用療法は,侵襲の大きな手術を必要とするITP患者の治療として有用な戦略であると考えられた.
  • 尾形 章, 大野 一英, 升田 吉雄, 遠藤 文夫, 増田 益功, 笹田 和裕
    2000 年 61 巻 12 号 p. 3248-3252
    発行日: 2000/12/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    比較的稀な疾患である十二指腸球部進行癌4例を経験した.各症例の主訴は上腹部腫瘤2例,黄疸1例,労作時呼吸困難1例であり,消化器症状は比較的軽度である例がほとんどであった.手術は膵頭十二指腸切除術2例,幽門側胃切除および十二指腸球部切除術1例,胃空腸吻合1例であった.切除例3例すべて3型腫瘍で,浸達度はss, se, siであり,組織型はtub2 2例, pap 1例, muc 1例で比較的分化度の高い症例であった.いずれの症例もP, N, H因子が進行していることから根治手術は難しい状態であったため,予後として2年生存例を認めなかった.
  • 川渕 義治, 多幾山 渉, 久保 義郎, 棚田 稔, 栗田 啓, 高嶋 成光
    2000 年 61 巻 12 号 p. 3253-3257
    発行日: 2000/12/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    症例は59歳男性.健診で便潜血陽性を指摘され近医受診.下部消化管内視鏡で回腸末端に腫瘍径10mmで筋層浸潤を認めない I sp 型の隆起性病変を指摘され,当院に紹介された.生検にて carcinoid tumor と診断された.画像診断上明らかなリンパ節転移や遠隔転移を認めなかったため,近傍リンパ節郭清を伴う腹腔鏡補助下回盲部切除術を施行した.切除標本では回腸末端Bauhin弁の1cm口側に1.0×0.9cm卵円形境界明瞭で粘膜下層にとどまる脈管侵襲に乏しいカルチノイドを認め chromogranin A染色は陽性であった.また回腸末端の辺縁動脈に沿うリンパ節に転移を認めた.
    回腸カルチノイドは,腫瘍径が小さく筋層浸潤を認めないものでも転移率が高いといわれている.近傍リンパ節までの転移にとどまり遠隔転移を認めない症例には,近傍リンパ節郭清を伴う腹腔鏡補助下回盲部切除術がよい適応であると考えている.
  • 大平 洋一, 佐藤 慶一, 田中 和郎, 佐野 勝英, 良元 和久, 高橋 恒夫
    2000 年 61 巻 12 号 p. 3258-3262
    発行日: 2000/12/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    症例は37歳男性,下腹部痛を主訴にて入院.入院時には下腹部に圧痛を伴う手拳大の表面平滑な腫瘤を触知した.血液検査では軽度の炎症所見がみられた.また,腹部CT, MRIでは骨盤腔内に石灰化を伴う軟部腫瘤がみられ,上腸間膜動脈造影で腫瘍の濃染像が認められた.以上のことから,術前診断として小腸腸間膜あるいは小腸原発の腫瘍を疑い開腹手術を施行した.手術は中部小腸腸間膜に約10cm大の腫瘤が認められ,腫瘤を含め小腸部分切除術を施行した.腫瘍は白色調,弾性硬の球状腫瘤で,病理組織像では線維芽細胞と膠原繊維が主体であり小腸腸間膜から発生したデスモイド腫瘍と診断された.術後経過は順調で術後第16病日に軽快退院した.デスモイド腫瘍は稀な疾患であり,文献的考察を加え報告した.
  • 和久 利彦, 大澤 亙
    2000 年 61 巻 12 号 p. 3263-3266
    発行日: 2000/12/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    症例は39歳男性.平成9年12月腸閉塞にて入院.上部消化管内視鏡検査・大腸内視鏡検査で異常を認めなかったが,小腸造影にて中・下部小腸に髪集中を伴った10個の潰瘍,多発辺縁硬化,管腔狭小化を認め,非特異性多発性小腸潰瘍症と診断した. Mesalazineのみの保存的治療を開始したが,平成10年7月の小腸造影にて瘢痕化した8個の潰瘍を認めた.平成11年6月, 2カ月間のMesalazineの服薬中止による腸閉塞で入院.小腸造影にて偽憩室を伴った管腔狭小化のみを認めた.非特異性多発性小腸潰瘍症に対する薬物療法は無効とされているが,われわれの症例は, Mesalazine単独の保存的治療により著明な改善を得られた稀な1例と考えられた.
  • 近松 英二, 小林 建仁, 所 昌彦, 太田 俊介, 広松 孝
    2000 年 61 巻 12 号 p. 3267-3270
    発行日: 2000/12/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    症例は89歳男性.右下腹部痛を主訴に来院.胸部単純X線写真で腹腔内遊離ガス像,腹部CT検査で腹腔内遊離ガス像および右下腹部に直径約5cmのiso-density massを認め,消化管腫瘍の穿孔の診断で緊急手術を行った.開腹すると回腸末端部に穿孔を伴う腫瘤および腸間膜リンパ節の腫大を認めたため,回盲部切除を行った.切除標本では潰瘍底が一部穿孔したII型の腫瘍であった.病理組織学的検索ではlymphoma stady group分類のB-cell type malignant lymphoma, non-Hodikin, disease, follicular lymphoma medium size cell typeと診断された.術後経過は良好で,腹膜炎の侵襲からは脱却したが,退院も間近となった約2カ月後,突然癌性リンパ管炎様の胸部所見を呈し死亡した.高齢のため化学療法を施行しなかったが,術後の全身精査にてstage Iであったことからもなんらかの化学療法を施行すべきであったと反省させられた1例であった.
  • 中村 隆俊, 大谷 剛正, 国場 幸均, 金澤 秀紀, 相原 成昭, 柿田 章
    2000 年 61 巻 12 号 p. 3271-3275
    発行日: 2000/12/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    症例は73歳,女性.腹部膨満感,嘔吐出現し当院受診.上部内視鏡検査および大腸内視鏡検査上異常所見なく,経管小腸造影検査にて小腸に狭窄を伴う腫瘍を認め,その後イレウスを併発し入院となる.入院後,小腸部分切除術を施行した. Treitz靱帯より肛門側100cmの部位に全周性,狭窄状の主腫瘍を認め3カ所に壁内転移がみられた.組織学的には漿膜下層まで浸潤する未分化な腫瘍で,免疫組織化学的検索で,神経内分泌細胞分化が確認され,神経内分泌細胞分化を伴った小腸原発の未分化癌と診断された.術後3カ月で再びイレウスにて入院.小腸壁内転移疑いおよび腹膜播腫,大動脈リンパ節転移,癌性腹水を認め胃空腸吻合,胃ろう造設術を施行した.その後,癌の急速な進展により発症より6カ月で死の転機をとった非常にまれな小腸未分化癌の1例であった.
  • 蛭川 浩史, 島村 公年, 岡本 春彦, 畠山 勝義
    2000 年 61 巻 12 号 p. 3276-3281
    発行日: 2000/12/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    症例は54歳男性.早期胃癌に対する胃全摘術後,繰り返すイレウスのため小腸癒着剥離術を施行し,イレウス管を腸管内スプリントとして挿入した.第3病日から嘔吐が出現し,腹部CT,超音波検査にて腸重積症が疑われたため,緊急手術を行った.開腹所見では小腸に3カ所の腸重積を認めた. 1カ所は順行性で肛門側の2カ所は逆行性であった.逆行性の2カ所の腸重積は用手的に整復し得たが,順行性の部位は腸切除を要した.順行性の腸重積は,イレウス管の挿入により襲状となった腸が,肛門側腸管内に嵌入したものであり,逆行性の腸重積はイレウス管抜去に伴い嵌入したと考えられた.イレウス管留置中の3カ所の腸重積症例の報告は本邦報告例では自験例以外に1例認めたのみであった.イレウス管を挿入,抜去する際には腸重積症の発症を充分に念頭に置く必要がある.
  • 籾山 信義, 望月 康久, 久保 章
    2000 年 61 巻 12 号 p. 3282-3284
    発行日: 2000/12/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    症例は72歳女性.右下腹部痛を主訴に来院. 12歳時に虫垂切除術, 32歳時に腸閉塞のため回盲部の癒着剥離術を施行されている.初診時,右下腹部に圧痛を伴う腫瘤を触知した.腹部CT検査から絞扼性イレウスと診断し,同日緊急手術を施行した.盲腸内尾側に径2cmの異常裂孔が存在し,この部位にTreitz靱帯から200cmの回腸が嵌頓していた.裂孔を開放すると小腸は容易に還納され,盲腸窩異常裂孔への内ヘルニアと診断した.嵌頓していた小腸の長さは30cmで,軽度のうっ血を認めたが壊死はなく,腸切除は施行しなかった.裂孔を閉鎖し,手術を終了した.盲腸窩ヘルニアは内ヘルニアのなかでも比較的稀な疾患であり,発生原因に関しては不明な点が多い.本症例は回盲部に2度の手術歴があり,ヘルニア発生との関連が注目された1例であった.
  • 栗原 毅, 江藤 高陽, 倉吉 学, 徳本 憲昭, 今岡 泰博, 先本 秀人, 住元 了, 高橋 信
    2000 年 61 巻 12 号 p. 3285-3290
    発行日: 2000/12/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    われわれはS状結腸癌切除後9年8カ月を経過して肝転移を認めた1例を経験し,これを切除しえたので報告する.
    症例は50歳の男性で,健診の腹部エコー上,肝S3に径40mm大のSOLを指摘され,精査加療目的で紹介となった. 9年8カ月前当科においてS状結腸癌の診断でS状結腸切除を施行していた.胸腹部CT,上部,下部内視鏡検査では他に原発巣となる所見はなく, 1999年7月26日肝左葉外側区域切除を施行した.切離面に組織学的に癌の露出は認めなかった.組織標本において高分化型腺癌を認め,組織像は9年8カ月前に切除したS状結腸癌に類似していたこと,他に原発巣を認めなかったことよりS状結腸癌の肝転移と診断した.
    本症例のように大腸癌は術後数年経過後に再発が確認される症例もあり,大腸癌治癒切除後のfollow upは長期にわたり厳重に施行することが大切である.
  • 山崎 震一, 山崎 健二, 久保田 芳郎
    2000 年 61 巻 12 号 p. 3291-3294
    発行日: 2000/12/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    宿便性潰瘍と考えられた4症例を経験したので文献的考察を加え報告する.症例は38歳から84歳までの男性1例,女性3例である.全症例とも便秘傾向があり,排便時の突発的な顕出血で来院した症例である.緊急大腸内視鏡検査で直腸下部に限局性の粘膜出血や屡欄,比較的浅い潰瘍などがみられた.また,出血は一過性であり,便通指導だけで全例治癒した.基礎疾患には鬱病,知的障害,高血圧症,気管支喘息などがあった.生検組織像は表層上皮や腺管の脱落,壊死,問質への出血やフィブリン侵出,炎症性細胞の浸潤などの所見がみられた.
  • 館花 明彦, 福田 直人, 永山 淳造, 山川 達郎, 秋山 竹松, 酒井 滋
    2000 年 61 巻 12 号 p. 3295-3298
    発行日: 2000/12/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    症例は73歳,男性.既往歴は特にない.平成11年1月6日,下血を主訴に当院受診.食欲,排便は良好,直腸診にて腫瘤を触知しなかった.内視鏡検査にて肛門縁より約6cmの中部直腸に,滲出性出血のある3分の1周性の潰瘍性病変を認めたが,病理組織学的に悪性所見はみられなかった.保存的治療では緩解しないため, 2月19日に直腸切除術を施行した.摘出標本の直腸潰瘍は肉眼的に潰瘍底2cmほどの不整形で,組織学的に悪性所見はなく, Crohn病や潰瘍性大腸炎に特徴的な所見はみられなかった.本例は感染性疾患はなく,またBehcet病の所見もなく,非特異性直腸潰瘍と診断した.しかし疾患単位としては,急性出血性直腸潰瘍,宿便性潰瘍,直腸粘膜脱症候群などにあてはめられず,いわゆる“分類困難な潰瘍”と診断された.
  • 平原 典幸, 仁尾 義則, 田村 勝洋
    2000 年 61 巻 12 号 p. 3299-3303
    発行日: 2000/12/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    3年間,平滑筋腫として経過観察されていた直腸原発gastrointestinal stromal tumor (GIST)の1例を経験したので報告する.症例は71歳,男性.主訴は肛門周囲違和感,下腹部痛. 3年前,近医にて直腸平滑筋腫と診断され,経過観察されていたが,肛門周囲違和感,下腹部痛を生じて来たため当院受診.精査にて悪性が否定できず,腹会陰式直腸切断術を施行した.腫瘍は境界明瞭で,周囲組織への浸潤は認めなかった.切除標本の免疫組織学的検索にて, GIST uncommitted typeと診断された. 1年経過した現在も再発の徴候は認めていない.
    GISTは最近の新しいカテゴリーであり,悪性度の定義も未だ定説はなく,免疫組織学的分類の臨床的意義について文献的考察を加え報告する.
  • 中村 康子, 長谷川 茂, 桜井 洋一, 落合 正宏, 船曵 孝彦
    2000 年 61 巻 12 号 p. 3304-3309
    発行日: 2000/12/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    症例は54歳女性.主訴は肝腫瘤精査目的.既往に平成5年2月左乳癌にて非定型的乳房切断術,平成6年7月胆嚢結石症にて腹腔鏡下胆嚢摘出術(以下LapC)施行.その後平成9年1月に施行したCTにて肝S6, S7に腫瘤が出現し増大傾向が認められたため精査目的に入院.入院時自覚症状は無く,血液検査所見も正常であった. CT, MRIでは,腫瘤はリング状造影効果を認め転移性肝癌を疑ったため,手術(肝後区域切除術)に踏み切った.病理組織所見の結果はinflammatory pseudotumor (IPT)であった.また細菌検査にてKlebsiella oxytocaが検出された.肝IPTの成因については明らかではないが,画像診断等について,若干の文献的考察を加え報告する.
  • 川村 秀樹, 近藤 征文, 岡田 邦明, 石津 寛之, 大沢 昌平, 西田 靖仙, 村岡 俊二, 佐藤 利宏
    2000 年 61 巻 12 号 p. 3310-3313
    発行日: 2000/12/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    十二指腸乳頭部癌は比較的予後良好とされるが再発をおこすことも稀ではない.今回,十二指腸乳頭部癌に対する膵頭十二指腸切除後5年で肝再発を生じ肝拡大右葉切除術を施行,肝切除後さらに5年以上経過した現在まで再発なく生存している稀な症例を経験した.症例は41歳,女性. 1989年10月13日,十二指腸乳頭部癌の診断で膵頭十二指腸切除, D2を施行した.病理組織検査は papillary adenocarcinoma, pat Acbpd, panc0, dul, n0, stage IIであった.
    5年後の1994年11月,発熱のため来院しCTで肝右葉S8を中心とする約10cmの内部に壊死を伴う単発の肝転移を認め肝拡大右葉切除術を施行した,十二指腸乳頭部癌の肝再発は予後不良であるが,切除可能な場合には積極的切除が長期生存につながることがある.自験例は肝再発に対する肝切除が奏効した極めて稀な症例と考えられる.
  • 折田 創, 高田 丈, 榊原 敬, 鎌野 俊紀, 鶴丸 昌彦, 片見 厚夫
    2000 年 61 巻 12 号 p. 3314-3320
    発行日: 2000/12/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    腹膜播種で診断された,原発巣不明の肝細胞癌の1例を経験したので報告する.症例は56歳男性.腹部膨満感を主訴に近医受診.血性腹水を認め精査加療目的で当科入院した.腹水細胞診ではClass II,画像診断では腹膜播種の所見を認めるものの,原発巣を指摘できなかった. 30年にわたるアスベスト曝露歴があるため悪性腹膜中皮腫を疑い,試験開腹術を施行した.血性腹水約4000ml,腹膜,腸間膜に1cm大,易出血性の腫瘍を多数認めた.腫瘍は病理組織学的検索にて肝細胞癌と診断された. CDDP腹腔内投与にて腹水軽減し一時退院するも,癌性腹膜炎にて死亡した.原発巣の検索のために剖検を行ったが肝内には腫瘍を認めず,またその他の部位にも原発巣は認められなかった.可能性として異所性肝細胞癌や肝細胞癌の腹腔内へ脱落が考えられたが,確定診断に至らなかった.
  • 笠島 浩行, 西澤 雄介, 野田頭 達也, 藤田 正弘, 高屋 誠章, 佐々木 睦男
    2000 年 61 巻 12 号 p. 3321-3325
    発行日: 2000/12/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    症例は69歳男性.腹痛,嘔吐にて来院.腹部に圧痛および筋性防御を認めた.腹部単純X線で小腸ガス像が,腹部US, CTで胆嚢周囲に腹水貯留が認められたため,汎発性腹膜炎の診断にて緊急手術を施行した.腹腔内には胆汁性腹水が中等量認められ,胆嚢壁の一部には白色調の変色域と同部からの胆汁流出が認められた.胆嚢穿孔による胆汁性腹膜炎と診断し,胆嚢摘出術を施行した.術中胆道造影では,総胆管結石,膵胆管合流異常を認めなかった.胆汁細菌培養は陰性であった.切除標本では胆嚢は壁肥厚なく,胆石は認められなかった.病理組織学的検査では胆嚢炎の所見は乏しく,白色調の部分の漿膜下に壊死が,周辺の血管には血栓形成が認められ,胆嚢部分梗塞による特発性胆嚢穿孔の1例と考えられた.
  • 福島 忠男, 亀田 久仁郎, 長田 俊一, 高橋 徹也, 高橋 利通
    2000 年 61 巻 12 号 p. 3326-3329
    発行日: 2000/12/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    症例は69歳男性. 10日前より心窩部痛があり,近医で投薬を受けていたが,次第に食事摂取困難となり来院した.心窩部から右季肋部に圧痛を認め,血液学的所見では白血球数13850/μml, 血小板数92000/μml, CRP35.5mg/dlと重症感染が示唆された.腹部CTで胆嚢の腫大はなかったが横隔膜下に腹水を認め,胆嚢は肥厚し,胆嚢炎を呈していた.明らかな結石は認められなかった.開腹すると膿性の腹水を多量に認め,胆嚢底部に膿苔があり,穿孔していた.病理組織学的所見では穿孔部付近では胆嚢壁の全層にわたり出血と好中球の浸潤が認められ,穿孔部では胆嚢壁の壊死が認められた.細動脈に動脈硬化が認められた.外来患者に発生する無石胆嚢炎の基礎疾患として動脈硬化の存在が注目されている.動脈硬化による細動脈の閉塞による虚血により無石胆嚢炎がおこるとされる.本症例でも動脈硬化による虚血が原因と考えられた.
  • 岡本 光順, 後藤 悦久, 片野 素信, 中田 一郎, 佐藤 茂範, 田渕 崇文
    2000 年 61 巻 12 号 p. 3330-3334
    発行日: 2000/12/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    黄色肉芽腫性胆嚢炎は,稀な胆嚢の炎症性疾患であり,胆嚢癌との鑑別が困難なことが多い.今回われわれも,胆嚢癌との鑑別が困難で,なおかつ結腸との瘻孔を合併した黄色肉芽腫性胆嚢炎の1例を経験したので報告する.
    症例は69歳,女性.右季肋部痛と微熱のため近医受診し胆石症を指摘され入院したが,胆嚢癌の疑いが生じ当科紹介となった.腹部CTで胆嚢壁の不規則な肥厚と胆石を認め,さらに経皮経肝胆嚢造影で胆嚢と結腸との間に瘻孔が存在していることを確認した.腹腔動脈造影では静脈相で胆嚢壁と肝床部に濃染像を認めた.以上より胆石を伴う胆嚢癌を疑い手術を施行した.術中迅速病理診断で胆嚢壁に癌細胞が認められず炎症所見であった為,胆嚢摘除術のみを施行した.術後,切除標本より黄色肉芽腫性胆嚢炎と病理学的に診断された.胆嚢癌を疑った場合,本疾患の存在を念頭に置いて,検査,治療にあたる必要性があると考えられた.
  • 新谷 康, 池田 義和, 藤原 清宏, 森 匡, 岡本 公子
    2000 年 61 巻 12 号 p. 3335-3339
    発行日: 2000/12/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    粘液産生胆管癌は,臨床レベルにおいても認識されるほどの多量の粘液を産生する胆管癌と定義されている.今回,急性膵炎を契機に発見された粘液産生胆管癌の1例を経験した.症例は64歳,男性.腹痛,嘔吐を主訴に当科を受診した.血液検査で白血球増多,肝機能異常,高アミラーゼ血症を認め,急性膵炎と診断され緊急入院となった.腹部超音波検査, CTで総胆管の拡張および肝門部に3cm大の腫瘤を認めた. ERCPでは肝門部胆管壁の不整と拡張した総胆管内に数珠状の透亮像を認めた.超音波下針生検で粘液癌と診断した.手術はS5+S4a兼尾状葉切除術,肝管空腸吻合を施行した.切除標本は径4×3cm大のゼラチン様腫瘤が尾状葉に認められた.組織学的には乳頭状に増殖する粘液癌であり,細胞外に粘液が貯留し粘液湖を形成していた.肝管分岐部粘膜面への腫瘍浸潤を認め同部で腫瘍と胆管との交通が示唆された.現在術後3年が経過したが,再発はなく膵炎発作も認めない.粘液産生胆管癌が産生する粘液による急性膵炎は稀であり,文献的考察を加え報告する.
  • 小出 紀正, 水野 伸一, 浅野 英一, 高橋 泰夫, 下地 英機
    2000 年 61 巻 12 号 p. 3340-3344
    発行日: 2000/12/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    症例は63歳,男性. 1995年9月14日下腹部痛が出現し,当院を紹介受診した.汎発性腹膜炎の診断で緊急開腹術を施行した.S状結腸穿孔を認め, S状結腸切除術,人工肛門造設術を施行した.術前腹部CTおよびUSにて嚢胞を有する右副腎腫瘍を疑ったが,緊急手術のためそのままとした.その後腫瘍のわずかな増大傾向を認め, 1996年3月14日精査治療目的で入院した.術前画像診断と内分泌学的検査から副腎または副腎外の褐色細胞腫と診断し,腫瘍摘出術,右副腎摘出術を施行した.病理組織学的検査で副腎外褐色細胞腫と診断した.経過中高血圧クリーゼは起こさなかったが,嚢胞内に高濃度のカテコールアミンが含まれていた.
    無症候性嚢胞性褐色細胞腫では内容液に高濃度のカテコールアミンを含んでいる可能性を念頭において処置しなければならないと考えられた.
  • 濱口 真帆, 山下 啓子, 遠山 竜也, 岩瀬 弘敬, 山下 年成, 小林 俊三
    2000 年 61 巻 12 号 p. 3345-3349
    発行日: 2000/12/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    症例は62歳の女性で, 10年前の臍ヘルニア手術時に左副腎に腫瘤を指摘されたが経過観察されていた. 1997年頃から糖尿病,高血圧を指摘され,同年11月に腹痛をきたし,臍ヘルニアの再発と再度左副腎腫瘤を指摘された.血中ノルアドレナリン(NAd),尿中ノルメタネフリン(NMN)高値で機能性腫瘍が疑われたが, MIBGシンチでは集積なく, CT, MRIでは内部均一で増大傾向がなかったため, 1998年1月に臍ヘルニアの再手術が行われた.翌年4月にはMIBGシンチでは集積がなかったものの,血中アドレネリン(Ad), NAd,尿中メタネフリン(MN), NMNのすべてが異常高値となったため,褐色細胞腫の診断で腹腔鏡下左副腎腫瘍摘出術を施行した.摘出した腫瘍は被膜形成良好で, 2.4×2.3×1.6cm大,割面は褐色で小嚢胞を認め褐色細胞腫と診断された.副腎偶発腫瘍の診断には,尿中代謝産物のスクリーニングが有用であるといえる.
  • 大西 一朗, 鎌田 徹, 森田 晃彦, 竹田 利弥, 小矢崎 直博, 神野 正博
    2000 年 61 巻 12 号 p. 3350-3354
    発行日: 2000/12/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    非常に稀な非機能性副腎皮質癌の1例を報告する.症例は45歳,女性. 1カ月前から左季肋部痛あるも放置,痛みが増強し,発熱を認めたため当院受診,腹部エコーにて10cm大の腫瘍を指摘され入院となった.血管造影所見等から左副腎原発と推察され,内分泌学的検査を行うも副腎ホルモンはいずれも正常であった.非機能性副腎腫瘍の術前診断で開腹,腫瘍は左腎への直接浸潤も疑われ,一塊として摘出した.病理組織所見では,円型核と淡明~好酸性顆粒状胞体を有する円形~多角形細胞の増殖があり, nuclear gradeはII>IIIで, 1~2/10HPFのmitosisを伴うことから副腎皮質癌と診断された.治癒的切除と考えられるが血行性遠隔転移再発が多く,外来通院にて補助化学療法を施行する予定である.
  • 伊澤 光, 藤本 高義, 金 成泰, 西原 政好, 吉田 哲也, 金井 俊雄
    2000 年 61 巻 12 号 p. 3355-3359
    発行日: 2000/12/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    膀胱破裂は稀な疾患であるが,近年,放射線治療症例の増加に伴い放射線性膀胱炎に起因する膀胱破裂は増加傾向にある.
    症例は80歳,女性. 18年前に子宮頸癌に対して広汎子宮全摘術および放射線療法を受けた.平成11年6月7日下腹部痛を主訴として内科を受診し緊急入院した.腹部単純X線検査で小腸の拡張と鏡面形成像を認め,癒着性腸閉塞と診断され,保存的加療を施行されたが軽快せず,外科を紹介された.腹膜刺激症状が強くCRPも高値であったため緊急手術を施行した.下腹部の癒着を剥離した際,膀胱カテーテルの先端が露出していて,膀胱の破裂が認められた.また,破裂部を被覆する小腸に高度な狭窄を認め,膀胱破裂に伴う癒着性腸閉塞と診断した.
  • 田中 弘之, 指宿 一彦, 山本 淳, 河野 通一, 中島 健, 谷口 正次, 古賀 和美
    2000 年 61 巻 12 号 p. 3360-3364
    発行日: 2000/12/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    今回われわれは,外膀胱上窩ヘルニアを腹腔鏡下に診断し, mesh plug法で修復した1例を経験したので文献的考察を加えて報告する.症例は76歳,女性.主訴は右鼠径部腫瘤.全身麻酔下に腹腔鏡を挿入し気腹すると,ヘルニア門は右内側臍ヒダより内側に存在したため外膀胱上窩ヘルニアと診断し得たが,通常みられる円形の陥凹したヘルニア門と異なりスリット状を呈し,腹腔鏡下でも診断が困難であった.患者の希望のためmesh plug法にて修復し手術を終了した.術後経過は良好で術後1年経過した現在も再発は認めていない.外膀胱上窩ヘルニアは本症例を含め9例の報告がされているが,外膀胱上窩ヘルニアに対するmesh plug法の報告は本例が第1例目と思われるので報告する.
  • 畑 泰司, 衣田 誠克, 矢野 浩司, 岡村 純, 岡本 茂, 門田 卓士
    2000 年 61 巻 12 号 p. 3365-3368
    発行日: 2000/12/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    女児の鼠径ヘルニア手術時に精巣を認め,精巣性女性化症候群と診断しえた症例を経験したので報告する.症例は7歳女児.左鼠径部腫瘤を自覚し近医を受診,左鼠径ヘルニアの診断で手術目的にて当院に紹介受診となった.既往歴は2年前に右鼠径ヘルニアにて高位結紮術を施行,この時ヘルニア嚢内に腫瘤を認め腹腔内に還納されている.入院時の現症および検査では異常所見は認めなかった.手術時にヘルニア嚢外側に精巣を認め,その後の検索で精巣性女性化症候群の確定診断を得た.本症候群は社会的な性の決定に関しても早期に発見,適切な対応が望まれ,鼠径ヘルニアの合併症例も多いことから,女児で両側に鼠径ヘルニアを認めるものは本症を念頭に置き治療に臨むことが必要である.
  • 松尾 洋一, 林 周作, 宇佐見 詞津夫, 石川 雅一, 加藤 克己, 植田 拓也
    2000 年 61 巻 12 号 p. 3369-3373
    発行日: 2000/12/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    比較的稀な鼠径部子宮内膜症の1例を経験した.症例は40歳女性で,月経に一致した右鼠径部の疼痛を伴う腫瘤を認めた.病歴と画像診断より本症を疑い手術を行った.腫瘤は子宮内索より発生しており,広範囲にわたる腫瘤摘出術を施行した.病理組織学的所見で子宮内膜症と確定診断した. 1年3カ月後の現在に至るまで再発を認めていない.本症の本邦報告例は自験例を含め41例で,その好発年齢は平均で39.0歳,右側に多い傾向がある.術前に本症と診断したのは32%で,月経に一致した疼痛を伴う腫瘤という病歴がその診断に有効である.治療はほぽ全例に腫瘤摘出術が行われているが, 1例に再発を認めている.手術に際しては取り残しのない広範囲の腫瘤摘出術が重要であると考えられた.本症例の概略と41例の集計に検討を加え報告する.
  • 吉川 正人, 岩瀬 和裕, 桧垣 淳, 三方 彰喜, 田中 靖士, 岸本 朋乃, 鳥飼 慶, 上池 渉
    2000 年 61 巻 12 号 p. 3374-3377
    発行日: 2000/12/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    症例は25歳女性. 2年前の卵巣嚢腫摘出術による癒着性イレウスを発症,右傍腹直筋切開による回腸部分切除術を施行した.術後は良好に経過していたが, 4カ月後にイレウスを再発した.胃管留置による保存的治療を開始後,第3病日の腹部単純レントゲン検査ならびに腹部単純CT検査にて腹腔内遊離ガス像を認め,同日,開復した.前回の吻合部近傍と口側腸管との癒着,閉塞を認めたが,腸管穿孔は認めなかった.浸水法によるleak test,術中上部消化管内視鏡検査でも穿孔はみられなかったのでイレウス解除術のみを施行した.術後経過は良好であった.イレウスに併発する気腹症に際してはイレウスの解除が肝要と考えられた.
  • 加賀谷 正, 向後 正幸, 高山 悟, 藤田 省吾, 島村 善行
    2000 年 61 巻 12 号 p. 3378-3381
    発行日: 2000/12/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    肝硬変にて加療中の患者に発生した上腸間膜静脈血栓症を経験したので報告する.患者は3日前からの腹痛を主訴に来院した.腹痛は次第に増強し腹膜刺激症状が出現, CT検査にて門脈内血栓,腸間膜の著明な浮腫を認め上腸間膜静脈血栓症の診断にて開腹術を行った.明らかに鬱血性壊死をおこした小腸のみを切除して閉腹した.全身状態を整え2日後に再開腹し,壊死の疑わしい部分を追加切除した後に吻合を行った.術後はワーファリンによる抗凝固療法を行い,現在まで1年10カ月間再発は認められていない.
    本症例は食道静脈瘤を合併しており,門脈圧亢進が原因となり上腸間膜静脈血栓症をおこしたと考えられた.一般に肝硬変患者には凝固障害のため血栓症はおこりにくいと思われがちであるが,門脈圧亢進状態は上腸間膜静脈血栓症の一因となることに留意すべきである.
  • 大熊 利之, 岩谷 和法, 池上 克徳, 本郷 弘昭
    2000 年 61 巻 12 号 p. 3382-3384
    発行日: 2000/12/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    症例は45歳,女性.発熱,腹痛を主訴に近医から急性虫垂炎疑いにて当科へ紹介された.来院時,両側下腹部中心に筋性防御とBlumberg signを認め,血液生化学検査で著明な白血球数の増多とCRP値の上昇,腎機能障害を認めた.原因ははっきりしなかったが,急性腹膜炎の診断で虫垂切除と腹腔ドレナージ術を施行した.術後経過は良好であった.術後に血清学的にクラミジア抗体が陽性であり腹膜炎の原因はクラミジア感染によるものであると判明した.クラミジア感染症は現在増加傾向にある.成人女性で原因不明の腹膜炎の際に本疾患も考慮すべきであると考えられた.
  • 柳 健, 恩田 昌彦, 田尻 孝, 内田 英二, 斎藤 忠生, 高橋 健
    2000 年 61 巻 12 号 p. 3385-3389
    発行日: 2000/12/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    血清CA19-9が術前に高値を示した成熟型巨大後腹膜奇形腫の成人例を経験し,摘出組織中におけるCA19-9の局在を免疫組織化学的に確認しえたので,若干の文献的検討を加え報告する.症例は35歳の男性,主訴は上腹部圧迫感,上腹部痛であった.術前血清CA19-9は110U/mlと高値を示した.腫瘍は超音波, CT, MRIで左上腹部に存在する巨大な単房嚢胞性腫瘤で内部不均一,一部に石灰化を認めた.後腹膜腫瘤の診断にて腫瘤摘出術を施行,腫瘍の大きさは17.5×15.3×10.3cmで重量は1,581g,表面は平滑で単嚢胞性,嚢胞壁内は表皮様で内部は黄土色の粥状成分で満たされていた.組織学的には3胚葉成分よりなる成熟型奇形腫であり,腫瘍組織内の腸管上皮,気管支上皮にCA19-9の局在を確認しえた.摘出後,血清CA19-9は速やかに正常化し,術後5カ月と短期ではあるが現在再発の徴候は認めていない.
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