日本臨床外科学会雑誌
Online ISSN : 1882-5133
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61 巻, 3 号
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  • 2000 年 61 巻 3 号 p. 571-586
    発行日: 2000/03/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
  • 小西 敏郎, 比企 能樹, 山口 俊晴, 佐藤 裕俊, 林田 康男, 船曵 孝彦, 三輪 晃一, 幕内 博康, 川原田 嘉文, 吉雄 敏文, ...
    2000 年 61 巻 3 号 p. 587-594
    発行日: 2000/03/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    高齢社会に移行しつつあるわが国では,医療費の抑制が必須とされ,その一つの対策にDRG (diagnosis related groups)/PPS (prospective payment system) の導入が注目されている.診断群分類調査研究班・消化器外科グループでは,消化器外科疾患におけるDRG/PPS導入の妥当性の検討を目的として,全国11外科施設に胆石症で入院した患者の治療費を調査した.胆嚢胆石症の手術では,腹腔鏡下胆摘術は開腹胆摘術,および腹腔鏡下胆摘術から開腹胆摘術にコンバートした手術に比べて有意に低額であった.術後に合併症を伴うと,注射・検査・処置・入院料が高くなり,総入院費が有意に高くなった.また術後合併症のない腹腔鏡下胆摘術の入院費用は施設によって53万円から93万円と大きな差があり,その原因として入院期間の長短が大きく影響していた.良性疾患の胆嚢胆石症では治療経過を一定することでPPSを適応できる可能性がある.
  • 井上 聡, 森 武生, 高橋 慶一, 安野 正道
    2000 年 61 巻 3 号 p. 595-598
    発行日: 2000/03/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    (目的)本邦においても, HIV感染患者は急増しており,医療従事者が日常診療においてHIV感染患者に遭遇することも多くなる.本稿では外科領域における, HIV患者に対する診療,特に手術適応を中心に文献的考察を加えて述べる.(対象)都立駒込病院では開設以来,肺葉切除2回,腫瘤生検2回,人工関節置換術2回,癒着剥離術1回,肝動脈カニュレーション1回,人工肛門造設術,植皮術が各1回の計9例10回の経験がある.(結果)当院の症例では患者の免疫状態,手術時間,出血量と合併症の有無の間に相関は認められなかった.(結論)当院では以前よりCD4値による手術適応を採用している.症例の中には適応外の例もあったが,良好な結果が得られた.免疫状態を重要視するのは当然であるが,患者のQOLを考慮すると,インフォームドコンセントが得られれば手術適応はもっと柔軟性を持たせるべきであろう.
  • 今村 秀, 安蘓 正和, 加藤 秀典, 三井 信介, 坂田 久信
    2000 年 61 巻 3 号 p. 599-604
    発行日: 2000/03/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    原発進行・再発乳癌に対して, Doxifluridine (5'-DFUR), Medroxyprogesterone acetate (MPA), Cyclophosphamide (CPA) の三者併用療法(DMpC療法)を行い,その抗腫瘍効果を検討した.進行・再発乳癌12例中, CRは2例, PRは6例あり,奏効率66.7%であった.再発乳癌症例だけでも, CR 2例, PR 4例で同じく奏効率66.7%であった.転移部位別効果は,軟部組織で奏効率75%,骨で奏効率62.5%,肺で奏効率75%といずれも高かった.術前治療でも腫瘍縮小効果があった.副作用は白血球減少が25%にあり,容易にコントロールできた. DMpC療法の奏効率はCAF療法に比べても遜色がなかった. DMpC療法は副作用の少ない化学内分泌療法にも関わらず,高い抗腫瘍効果を持つ優れた進行・再発乳癌治療法である.
  • 坂本 和裕, 加瀬 昌弘, 孟 真, 蔵田 英志, 冨山 泉, 佐藤 秀之
    2000 年 61 巻 3 号 p. 605-608
    発行日: 2000/03/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    1994年8月から1999年3月までに当院にて胸腔鏡下手術を行った嚢胞性縦隔腫瘍10例について検討を行った.年齢は16~70歳(平均43.8歳),男性5例,女性5例,最大腫瘍径は2~9cm (平均5.3cm)であった.診断は胸腺嚢胞3例,心膜嚢胞3例,気管支嚢胞2例,食道嚢胞1例,嚢腫状奇形腫1例であった.気管支嚢胞2例,嚢腫状奇形腫1例の計3例で術中に嚢胞の破裂を起こした.術後合併症は肺炎1例,創感染1例で,いずれも嚢胞破裂を起こした症例であった.術後ドレーン留置期間は1~7日(平均2.6日),破裂を起こした1例で浸出液が多く7日間留置した.術後在院日数6~14日(平均9.8日)であった.嚢胞性縦隔腫瘍は胸腔鏡下手術のよい適応であるが,現時点では気管支嚢胞,食道嚢胞,嚢腫状奇形腫を疑った場合は周囲組織との癒着の可能性,嚢胞破裂の危険性を踏まえた上で,状況に応じて小開胸を併用するのが安全である.
  • 井谷 史嗣, 成末 允勇, 金 仁洙, 宇田 憲司, 室 雅彦, 金子 晃久, 佐々木 寛, 渡邉 和彦
    2000 年 61 巻 3 号 p. 609-613
    発行日: 2000/03/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    胃食道逆流症15例(72.3±9,5歳)に対して腹腔鏡下Nissen噴門形成術を施行し,手術成績および短期予後につき検討した.術前診断はLos Angeles分類でのgrade A 3例(胃軸捻転合併1例,食道裂孔での狭窄例2例), grade B 1例, grade C 7例, grade D 4例であった.手術は54ないし60Frブジー挿入下にラップ形成を行うfloppy Nissen法を施行した.手術時間は128.8±43.3分(最短60分),出血量は74.0±93.0g,胃軸捻転合併1例を除いた14例の経口摂取開始は1.1±0.3日,術後在院日数は7.9±1.7日であった.術後観察期間は9.9±6.8ヵ月(中央値: 9ヵ月)と短期ではあるが, 15例中11例で症状が消失し, 2例で軽快をみた(有効率86.7%).再発を2例に認めたが,再手術により良好に経過している.以上により胃食道逆流症に対する腹腔鏡下Nissen噴門形成術は低侵襲なだけでなく治療効果の面からも非常に有効な術式と考えられた.
  • 青儀 健二郎, 平井 敏弘, 吉田 和弘, 井上 秀樹, 峠 哲哉
    2000 年 61 巻 3 号 p. 614-617
    発行日: 2000/03/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    当科で経験した腹腔鏡下胃粘膜下腫瘍切除症例を検討し,問題点と術式の改良について検討した.平成5年11月から平成11年3月の5年4ヵ月間の腹腔下腫瘍切除症例16例を対象とした.腫瘍主占拠部位はC9例, M5例, A2例で,前壁3例,後壁5例,小弯7例,大弯1例であった.発育形式は腔内型12例,腔外型4例,病理組織学的診断は平滑筋腫10例,平滑筋肉腫2例,境界領域4例であった.また腔外型の平均手術時間172.7分に対し腔内型225.5分であり,腔内型は位置同定や大きい場合切除が困難なためと思われた.術式改良として,噴門部腔内型腫瘍は術中内視鏡による点墨併用下に小弯よりアプローチし,増大傾向にある腔内型腫瘍は積極的に切除することとし,位置同定および切除は容易となった.術式の改良により腹腔鏡下胃粘膜下腫瘍切除術の有用性がさらに高まった.
  • 安井 昌義, 小林 研二, 藤谷 和正, 竹政 伊知朗, 辛 栄成, 吉川 宣輝, 吉岡 靖雄
    2000 年 61 巻 3 号 p. 618-622
    発行日: 2000/03/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    胃癌症例の外科的切除に際して上腹部CT撮影検査は一般的に行われているが,腹腔内リンパ節の転移の有無についての診断は未だに確立していない.われわれは胃癌症例のCT画像によるリンパ節転移の診断基準を考案し,その基準からリンパ節転移診断の正確性を評価することを目的とした.対象は国立大阪病院外科にてリンパ節郭清を伴う外科的切除を施行した進行胃癌72例である.リンパ節の大きさと転移の有無の関係, CT画像と組織診断を一致させた転移陽性リンパ節と転移陰性リンパ節各25個の比較から, CT上の転移陽性リンパ節の診断基準を1)長径1cm以上, 2)辺縁整であることとし, CT画像によるリンパ節転移診断能を求めた.小弯領域・大弯領域・腹腔動脈領域の正診率はそれぞれ56.5%, 47.8%, 75.0%と低値であった.現状では, CTによるリンパ節転移診断能は低いと考えられた.
  • 吉川 時弘, 加藤 英雄, 新国 恵也, 塚原 明弘, 坂田 純
    2000 年 61 巻 3 号 p. 623-627
    発行日: 2000/03/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    胃粘膜内癌(m癌)の手術例311例と内視鏡的粘膜切除例(EMR)227例の治療成績を年齢,治療法別に比較検討し,以下の結果を得た.
    1. 手術例の5生率は70歳未満では95.1%であり, 70歳未満のEMR例の88.2%に比し有意に良好であった.一方, 70歳以上では手術例とEMR例の生存率に差はなかった. 2. 術式別の5生率は幽門側切除が92.7%,全摘80.2%, であった.年齢別には, 75歳以上で幽門側切除77.2%,全摘16.7%であり, 75歳以上の全摘例の予後が不良であった. 3. m癌手術例のリンパ節転移率は2.3%, 術前の予想深達度をsm以上としたのは21.5%であった. 4. 死亡例の死因は手術例, EMR例に差はなかった. 5. 75歳以上の高齢者に対してはEMRが可能であればEMRを行い,その組織診断から術式の検討を行うなどの,治療戦略が必要である.
  • 若原 正幸, 田中 千凱, 種村 廣巳, 大下 裕夫, 菅野 昭宏, 日下部 光彦
    2000 年 61 巻 3 号 p. 628-631
    発行日: 2000/03/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    転移性小腸癌は極めて稀な疾患である.最近穿孔にて発症した上顎癌の回腸転移を経験したので文献的考察を加え報告する.症例は63歳,男性. 1997年12月他院にて左上顎癌の手術既往あり. 1999年3月嘔気,嘔吐,腹痛を主訴に来院.腹膜刺激症状著明であり腹部CT検査にてfree airを認め緊急手術施行した.手術所見にて腹腔内に多量の膿性腹水の貯留を認め,回腸末端部より20cm部位に輪状狭窄があり,その狭窄部内に穿孔部を認め,回盲部切除を施行した.病理組織検査にて低分化型扁平上皮癌と診断され,以前に手術された上顎癌の病理組織像と比較したところ一致した.術後経過順調にて退院したが,胸部CTにて肺転移を認めた.上顎癌の転移経路については血行性に胸部縦隔を通過し,小腸転移する経路が推察されるが,本症例においても異時性ではあるが肺転移をきたしていたことより血行性の可能性が強く示唆された.
  • 吉岡 伸吉郎, 則行 敏生, 柴田 諭, 沖政 盛治, 片岡 健, 浅原 利正, 土肥 雪彦
    2000 年 61 巻 3 号 p. 632-635
    発行日: 2000/03/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    右乳癌根治術後15年でPancoast症候群を呈して再発した症例を経験した. 1979年2月1日他院で定型的乳房切除術を受け,術後より右肩,右前胸部にかけてのしびれと疼痛が持続していたが, 1993年より疼痛が増強し右眼瞼下垂が出現, 1994年には右手の運動障害と筋萎縮も生じた.同年6月に右鎖骨上リンパ節腫大があり,穿刺吸引細胞診で腺癌転移と診断された.胸部CT上Pancoast型肺癌を疑って右上葉切除と右鎖骨上リンパ節を含めた同側縦隔リンパ節郭清を行ったが,乳癌術後15年目の肺転移,リンパ節転移と判明した.術後補助療法を行い再発後5年経過した現在,非担癌生存中である.
  • 宇田 憲司, 金 仁洙, 室 雅彦, 井谷 史嗣, 金子 晃久, 佐々木 寛, 渡辺 和彦, 成末 允勇
    2000 年 61 巻 3 号 p. 636-639
    発行日: 2000/03/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    von Recklinghausen病に合併した異時性両側乳癌の1例を経験したので報告する.第1癌,左乳癌:患者は47歳女性で, 2年前より左乳房に腫瘤を認め,腫瘤が次第に増大するため当院を受診した.左乳房に7.0cm大の腫瘤を認めた.また全身に多発性神経線維腫およびCafe'au lait斑を認めた.乳癌の診断で胸筋温存乳房切除術を施行した.組織学的には乳頭腺管癌でリンパ節転移は認めなかった.第2癌,右乳癌:左乳癌切除後3年目に,右乳房に2.5cm大の腫瘤を認めた.乳癌と診断し胸筋温存乳房切除術を施行した.組織学的には乳管内成分を伴う乳頭腺管癌で,リンパ節転移は認めなかった.臨床的,病理組織学的に両側乳癌と診断した.
  • 敷島 裕之, 長 靖, 金子 行宏, 本原 敏司, 塚田 守雄, 加藤 紘之
    2000 年 61 巻 3 号 p. 640-643
    発行日: 2000/03/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    症例は54歳の女性,左腋窩腫瘤を主訴に当科を受診,摘出生検にて腺癌のリンパ節転移の診断を受けた.第一に乳腺からの転移を疑ったが,臨床上,両側乳房とも異常は認めなかった.しかし腋窩リンパ節転移の免疫染色でラクトアルブミンが陽性であり,また他臓器原発巣が発見されないことから,潜在性乳癌と考え,左胸筋温存乳房切除(lt-Bt-Ax-Ic)を施行した.切除乳腺を病理組織学的に詳細に検索したが悪性病変は認められなかった.その後2年を経過して左内胸リンパ節に転移巣が出現し,放射線治療,化学療法を施行した結果,術後3年を経た現在,健在である.潜在性乳癌の診断上,リンパ節の免疫染色は有力な情報を提供し得るものと思われれた.
  • 金子 猛, 古田 凱亮, 西海 孝男, 森 俊治, 磯部 潔
    2000 年 61 巻 3 号 p. 644-647
    発行日: 2000/03/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    症例は85歳女性,左手のしびれと冷感を主訴に来院した.右手に対して左手は正常圧比0.5であった.血管造影では特徴的な左腋窩動脈の漏斗状閉塞を認め,側副血行路の増生を認めた.閉塞部位に対し血行再建術を行い,これにより症状は軽快した.病理診断は巨細胞性動脈炎であった.本疾患は多核巨細胞を含む肉芽腫性変化であり,大動脈から中等大の動脈におよび,側頭動脈が好発である. 60歳以上の高齢者に多く,血管造影では先細り狭窄の特徴的所見がみられるが,大動脈炎症候群との鑑別が重要とされる.
  • 堂脇 昌一, 幕内 博康, 千野 修, 島田 英雄, 亀谷 武彦, 津久井 優, 大谷 泰雄, 田島 知郎, 斉藤 拓郎
    2000 年 61 巻 3 号 p. 648-652
    発行日: 2000/03/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    Pryce I型肺分画症の1例を経験したので報告する.症例は76歳男性,嚥下時痛を主訴に来院.精査にて胸部中部食道0-IIa+IIc+IIb型深達度sm1の表層拡大型食道癌と診断した.術前の胸部X線,胸部CTにおいて下縦隔左側に石灰化を伴う腫瘤が認められたが,肺結核の既往もありリンパ節腫大と診断した.高齢であり,活動性も悪いため非開胸食道抜去術を施行した.術中に石灰化リンパ節と思われた腫瘤より動脈性出血をきたし,異常血管と判断して同部を縫合止血した.術後の血管造影,換気Scan, 3D CTでPryce I型肺分画症の診断を得た. Pryce I型肺分画症は稀な疾患であり本邦報告例は32例にすぎない.本症例は76歳まで無症状で経過しているという点と食道表在癌を合併し術中の縦隔操作中に発見された点で興味深い1例と考えられた.
  • 山本 達人, 足立 格郁, 佐藤 仁俊, 都志見 睦生, 安藤 静一郎, 都志見 久令男
    2000 年 61 巻 3 号 p. 653-656
    発行日: 2000/03/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    食道魚骨が甲状腺に穿通した稀な症例を経験したので報告する.症例は70歳,女性.魚骨を誤飲後, 5日目に頸部痛,微熱が出現し近医を受診,食道魚骨の診断で当院紹介となった.頸部X線撮影で線状の石灰化陰影を認めた. CT検査では,甲状腺後方に線状の石灰化異物を含む低吸収域が描出された.超音波検査でも線状の高エコーを認めた.魚骨の甲状腺刺入と頸部膿瘍と診断し頸部襟状切開で手術を開始した.魚骨は,食道外に存在し甲状腺右葉に後方より刺入していた.食道損傷部は認めず,魚骨摘出と甲状腺右葉を部分切除しドレナージを施行した.術後経過は良好で,術後21日目に軽快退院した.食道魚骨の多くは内視鏡的摘出によって軽快することが多いが,穿孔,穿通を来す場合もある.その診断と治療方針の決定においてCT検査,超音波検査は有用であると思われた.
  • 熊谷 元, 四方 裕夫, 末田 泰二郎, 渡橋 和政, 渡 正伸, 松浦 雄一郎
    2000 年 61 巻 3 号 p. 657-660
    発行日: 2000/03/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    今回われわれは, 18歳,女性の食道重複性嚢胞に対し胸腔鏡下切除を行った1例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.心窩部痛を主訴に近医を受診し,胸部X線写真, CTにて中縦隔下部の縦隔腫瘍を指摘された.精査・加療目的にて当科紹介入院となった.画像検査にて食道下部左側に径約3cmの嚢胞状腫瘤を認め,食道嚢胞と気管支性嚢胞が疑われた.術前には超音波内視鏡検査より食道嚢胞と考えられたが確定診断できなかったため,診断兼治療目的にて胸腔鏡下切除術を施行した.再発予防のために可及的切除と残存粘膜の焼灼を行った.嚢胞の内容物は,粘稠な灰色のムチン性の粘液であった.切除標本の病理診断にて,食道重複性嚢胞と確定診断された.食道重複性嚢胞と気管支性嚢胞の鑑別は切除標本からのみ行えることより外科的切除が必要であるが,良性疾患であることより胸腔鏡下手術の良い適応と考えられた.
  • 佐溝 政広, 奥本 聡, 和田 隆宏, 堀田 芳樹
    2000 年 61 巻 3 号 p. 661-664
    発行日: 2000/03/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    今回われわれは腸重積にて発症し,十二指腸から結腸までの広範な病変を認めた消化管lipomatosisの1例を経験したので報告する.患者は49歳,男性.下腹部痛にて発症し当院入院となった.腹部CT検査上,上行結腸内に小腸が陥入した腸重積像を認め,上行および下行結腸内に脂肪腫を思わせる円形のlow density massが描出されていた.腸重積症と診断し,回盲部切除術を施行した.術中,小腸全域に多発性の腫瘤を認めた.術後に再度精査し,十二指腸~下行結腸にまで拡がりをもつ消化管lipomatosisと診断した.消化管脂肪腫は,そのほとんどは単発であり,多発性のものは極めて稀である.われわれが検索しえた範囲では海外で20例,本邦では7例の消化管lipomatosisを認めるに過ぎず,本例は本邦8例目と思われる.また,十二指腸から結腸までの広範な病変を認めた症例は海外で1例のみであり,極めて稀な疾患と考えられた.
  • 西岡 将規, 笠松 哲司, 宮内 隆行, 倉立 真志, 矢田 清吾
    2000 年 61 巻 3 号 p. 665-669
    発行日: 2000/03/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    ヘリカルCTが診断に有用であった3点式シートベルトによる小腸穿孔の4例を経験したので報告する.症例1:79歳,女性.ヘルカルCT検査で微量の腹腔内遊離ガス像を認めた.穿孔部は回腸末端より220cm口側であった.症例2:55歳,男性.ヘリカルCT検査で腹腔内液体貯留と腹腔内遊離ガス像を認めた.穿孔部は回腸末端から160cm口側であった.症例3:22歳,男性.ヘリカルCT検査,胸腹部単純X線写真で腹腔内遊離ガス像を認めた.穿孔部はトライツ靱帯より30cm肛側であった.症例4:61歳,男性.ヘリカルCT検査で液体貯留と腹腔内遊離ガス像を認めた.穿孔部はトライツ靱帯より180cm肛側であった.全例に穿孔部縫合閉鎖を施行し,予後は良好であった.小腸穿孔の場合,腹腔内遊離ガスは微量であり,発症早期の検出にはヘリカルCTが有用であった. 3点式では小腸穿孔を生じることがあり,今後4点式, 5点式シートベルトを考慮する必要があると思われた.
  • 仲田 裕, 木村 勝彦, 冨岡 憲明
    2000 年 61 巻 3 号 p. 670-674
    発行日: 2000/03/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    症例は狭心症,糖尿病で加療中の81歳男性.便秘のため自宅で浣腸を行った後,下痢と腹痛が続き入院した.腹部全体の自発痛と腹部膨満を認めたが,腹膜刺激症状はなかった. 9時間後に腹痛が増強し圧痛を認め, CTで門脈内ガス像を認めた.門脈ガス血症は消化管内のガス圧の上昇に伴い,数時間の経過で発生した.腹部血管造影で上腸間膜動脈末梢部の造影が不良であり,消化管壊死をきたす疾患の存在を疑い緊急手術を施行した. 80cmの壊死小腸を含め180cmの小腸を切除し端々吻合したが, 48時間後に死亡した.本症例は血管造影の所見と摘出標本に血管病変を認めなかったことから,非閉塞性腸管虚血症と診断した.非閉塞性腸管虚血症は腸管の低灌流に引き続いて発生する動脈攣縮によるものであり,その診断と治療はいかに早い段階で血管造影を行うかが重要である.
  • 向川 智英, 奥村 徹, 杉森 志穂, 三崎 三郎, 中野 博重
    2000 年 61 巻 3 号 p. 675-679
    発行日: 2000/03/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    最近われわれは狭窄型虚血性小腸炎の1例を経験したので報告する.症例は74歳,男性.平成8年9月15日食思不振,腹痛を主訴に来院し,イレウスと診断され入院となった.保存的治療により一時軽快したが,食事摂取のたびに症状が再燃した. 11月18日の注腸造影検査で盲腸が先細り状となり,空気の圧迫注入にてもバリウムの通過性は認められず,外科に紹介された.緊急手術にて回腸末端部から一部盲腸にかけて約10cmにわたる著明な瘢痕性狭窄を認めた.肺結核の既往があるため腸結核を疑い回盲部切除術を施行した.病理組織学的に狭窄部腸管はUl-II, Ul-IIIの潰瘍を形成し,粘膜に著明な炎症細胞浸潤,粘膜下層に血管の増生,高度の線維化が認められ,狭窄性小腸炎と診断された.腸管虚血の成因としては動脈硬化,肝硬変に伴った門脈圧亢進による静脈灌流障害,脱水などが推察された.
  • 青竹 利治, 天谷 博一, 打波 大, 藤井 秀則, 堀内 哲也, 千葉 幸夫, 多保 孝典
    2000 年 61 巻 3 号 p. 680-684
    発行日: 2000/03/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    小腸悪性リンパ腫は回腸に好発し,そのほとんどがB細胞由来である.今回,われわれは穿孔にて緊急開腹術を施行した空腸のT-cell lymphomaの1例を経験したので報告する.症例は73歳女性.平成9年9月30日に腹痛,嘔吐,下痢をきたし近医へ入院した.精査の結果,小腸腫瘍と診断され手術待機中であった. 12月4日上腹部激痛が出現,右上腹部を中心に圧痛,反跳痛および筋性防御を認めた.腹部CT検査では横隔膜下に遊離ガスを認め,穿孔性腹膜炎の診断で当科へ紹介,緊急開腹術となった.トライツ靱帯より約30cm肛門側の空腸に穿孔を伴う腫瘤を触知し,空腸切除術を施行した.病理組織学的検索の結果,小腸原発悪性リンパ腫stage III, intestinal T-cell lymphomaであった.術後約2カ月にて左腋窩,腹部にリンパ節転移が出現した. CHOP療法を開始したが無効であったため, EHOC療法, bleomycin局注に変更,リンパ節は縮小傾向にある.
  • 上原 圭介, 長谷川 洋, 小木曽 清二, 塩見 正哉, 籾山 正人, 伊神 剛
    2000 年 61 巻 3 号 p. 685-688
    発行日: 2000/03/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    症例は27歳,男性で,腹痛を主訴として来院した.臍周囲を中心に反跳痛が存在し,腹部単純X線写真ではニボーを認め,腹部CTでは臍直下の小腸に著明な壁肥厚を認めた.以上より汎発性腹膜炎と診断し緊急手術を施行した.開腹するとTreitz靱帯より40cm口側にMeckel憩室が存在した.小腸は炎症による線維性の癒着のために同部で狭窄し,そのすぐ口側の拡張した回腸に穿孔部を認めた.病理組織学的にMeckel憩室の異所性胃粘膜より分泌された胃酸による潰瘍穿孔と診断した.成人におけるMeckel憩室の潰瘍穿孔は比較的稀な病態であり,若干の文献的考察を加え報告した.
  • 平岡 圭, 森田 高行, 藤田 美芳, 宮坂 祐司, 仙丸 直人, 加藤 達哉, 加藤 紘之
    2000 年 61 巻 3 号 p. 689-692
    発行日: 2000/03/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    症例は59歳,男性.下血,めまいを主訴に来院した.小腸造影X線検査にて回腸に直径約2cmの隆起性病変を認めたため回腸腫瘍の診断にて回腸切除術を施行した.腫瘍は1.8×1.8×1.5cm大で,回盲部より約60cm口側に認められた.術中,明らかな腹膜播種,肝転移,リンパ節転移は認められなかつた.病理組織学的所見より平滑筋芽細胞腫と診断された.その後,肝転移,腹膜転移が出現しいずれも切除を施行したが,初回手術より4年2カ月後,全身転移を来して死亡した.小腸の平滑筋芽細胞腫は比較的稀で,その良・悪性の判断は困難とされているが,本例のように予後不良な経過をたどるものも存在するため,慎重な経過観察が必要である.
  • 花井 雅志, 小林 陽一郎, 宮田 完志, 竹内 英司, 加藤 万事, 米山 文彦
    2000 年 61 巻 3 号 p. 693-697
    発行日: 2000/03/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    症例は72歳女性.肺癌の診断で当院呼吸器外科に入院中,嘔吐が出現し大腿部の膨隆を認めたため,大腿ヘルニア嵌頓の診断でヘルニア根治術を施行した.翌日肺癌に対し右上葉切除術を施行した.病理組織学的には大細胞癌を伴う低分化型腺癌であった.術後経過良好であったが,肺切除術から8日目に再度嘔吐が出現し,腹部レントゲンにて鏡面像を認め腸閉塞と診断した.イレウス管からの小腸造影でTreitz靱帯から30cmの空腸に狭窄部を認め, CT,エコーにて層状の腹腔内腫瘤を認めた.以上から肺癌の小腸転移による腸重積を疑い,開腹術を施行した.開腹するとTreitz靱帯より30cmに重積を起こした空腸を認め小児手挙大の腫瘤を形成していたため,小腸部分切除術を施行した.切除標本で小腸に5.0×4.5cmの腫瘤を認め,病理組織学的には肺癌の小腸転移であった.
  • 大楽 耕司, 西 健太郎, 森景 則保, 久我 貴之, 善甫 宣哉, 江里 健輔, 亀井 敏昭
    2000 年 61 巻 3 号 p. 698-701
    発行日: 2000/03/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    胃癌手術後,比較的稀な皮膚瘻形成で発見された盲腸癌の1例を経験した.症例は80歳男性.心窩部痛・吐気・嘔吐を主訴に当院を受診した.精査にて胃癌と診断され,幽門側胃切除術を施行した.術後11日目より40年前に施行された虫垂切除の皮膚瘢痕部より膿排出を認めた.瘻孔造影で造影剤が上行結腸に流出し,大腸皮膚瘻と診断された.大腸内視鏡検査では癒着による変形のため回盲部の照診は不十分となった.保存的治療を行ったが軽快・再燃を繰り返し,術後5カ月目に瘻孔部からの流出物が病理学的に悪性と診断された.このため回盲部癌の診断のもと,回盲部切除術と瘻孔掻爬を施行した.術後経過は良好で第23病日に退院した.大腸皮膚瘻形成症例には,炎症性疾患のみならず,大腸癌の可能性も考慮する必要がある.
  • 進藤 久和, 石川 啓, 三根 義和, 吉田 一也
    2000 年 61 巻 3 号 p. 702-705
    発行日: 2000/03/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    消化管アミロイドーシスによる大腸穿孔を2例経験した.症例1は49歳,男性. 21年間の透析歴あり.腹痛で近医入院中,穿孔性腹膜炎の診断で,緊急手術を行った.結腸脾彎曲部に径約10mm大の穿孔を認め,結腸切除術,人工肛門造設術を施行した.症例2は55歳,女性. 38歳から,関節リウマチの治療中.イレウスで当院内科入院中,穿孔性腹膜炎の診断で,緊急手術を行った.横行結腸中央部に針穴状の穿孔を認め,穿孔部周囲を切除し,縫合閉鎖した.ともに病理組織で穿孔部周囲の血管壁や筋層に,好酸性無構造物の沈着を認め, Congo red染色陽性で,アミロイドの沈着と考えられた.症例1は,透析アミロイドーシスによる大腸穿孔で,現在生存中.症例2は,関節リウマチに続発したアミロイドーシスによる大腸穿孔で,術後7日目に死亡した.
  • 遠近 直成, 杉本 健樹, 高野 篤, 小林 道也, 松浦 喜美夫, 荒木 京二郎
    2000 年 61 巻 3 号 p. 706-709
    発行日: 2000/03/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    直腸の放射線性狭窄および癒着が原因で発生した閉塞性大腸炎の1例を報告した.症例は68歳の女性.約2年前に子宮頸癌に対して放射線治療を受け,以後便秘傾向が強くなった.平成10年2月24日下腹部痛を訴え入院し,その2日後には汎発性腹膜炎の所見を呈したため開腹手術を行った.腹膜翻転部より5cm口側の直腸が仙骨前面に癒着しており,その口側に8cmにわたる全周性壊死が存在した.癒着部より肛門側直腸は壁の硬化と狭窄化が認められた.病理組織学的には全層性壊死の所見であり,肛門側の狭窄部には腫瘍性病変はなかった.閉塞性大腸炎の原因のほとんどが大腸癌で,自験例のごとく良性狭窄が原因で発生した例は稀である.
  • 鈴木 善法, 道家 充, 中村 文隆, 宮崎 恭介, 樫村 暢一, 松波 己, 近藤 哲, 加藤 紘之
    2000 年 61 巻 3 号 p. 710-713
    発行日: 2000/03/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    今回われわれは, S状結腸憩室炎腸間膜内穿破の1例を経験したので若干の文献的考察を加え報告する.
    症例は75歳,女性.下腹痛,嘔気を主訴に当院を受診した.一時帰宅したが,下腹部痛増強のため翌日再診となった.既往歴ではS状結腸憩室を指摘されていた.入院時現症では腹部に腹膜刺激症状は強く認めなかったが,検査所見ではWBC24,300/mm3, CRP20.0mg/dlと高度の炎症所見を認めた.腹部CTでは骨盤腔内に大量のairを伴う内部不均一な腫瘤を認めた.注腸造影ではS状結腸から造影剤の腸管外漏出像を認めた.既往歴よりS状結腸憩室炎穿通を疑い,開腹術を施行した.手術所見ではS状結腸腸間膜内に大量の便塊を認め,穿通部を含めたS状結腸を切除し,一期的端端吻合を施行した.摘出標本で憩室炎の穿通と診断された.
  • 杉山 眞一, 谷川 富夫
    2000 年 61 巻 3 号 p. 714-717
    発行日: 2000/03/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    症例は71歳,男性.平成11年2月21日夕方,腹痛出現.徐々に増強し,翌22日近医を受診.翌23日,腹部超音波施行したところ,右側腹部にtarget signを認め,腸重積疑いにて当センター紹介受診.
    同日,当センターにて注腸造影施行.横行結腸右側にカニ爪様陰影欠損を認め,腸重積と診断.高圧浣腸にて整復試みるも,整復不可能.当日緊急手術施行した.
    開腹すると横行結腸右側に約3~4cmに渡る腸重積の状態.用手的に整復試みるも,整復できず,先行部が腫瘍である可能性を否定できず,約20cmに渡って結腸切除術施行.
    切除標本にて腸管長軸方向に幅35mm,全周性の粘膜面の浮腫,発赤を認めた.よく観察すると炎症性腫瘤を形成したその粘膜表面にアニサキスと思われる虫体を認めた.
  • 藤田 知之, 望月 靖弘, 大橋 昌彦, 代田 廣志, 桜井 道郎, 島田 寔
    2000 年 61 巻 3 号 p. 718-722
    発行日: 2000/03/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    今回われわれは臨床的に比較的稀な,腹部大動脈炎症候群とネフローゼ症候群を伴った大腸癌の1例を経験したので報告する.症例は72歳,女性.昭和55年より当院内科にてネフローゼ症候群,高血圧,高脂血症,平成3年より鉄欠乏性貧血のため薬物治療中であった.平成10年8月,貧血の増悪を認め,腹部CT検査で偶然に,腹部大動脈の狭窄,左腎の萎縮が認められ腹部大動脈炎症候群と診断され,術前IV-DSA検査を施行したところ,左腎動脈ならびにそれより末梢の大動脈の描出がなく,側副血行路を認めた.入院時,下肢血圧の低下を認め,血液検査では,鉄欠乏性貧血を認める他, CEA, CA19-9が上昇し,大腸内視鏡検査にて盲腸癌の診断を得た.手術は同年10月,結腸右半切除術, D2リンパ節郭清術と右腎生検を施行した.術後,下肢の血流低下などはなく現在外来通院中である.
  • 徳永 信弘, 貞廣 荘太郎, 安田 聖栄, 向井 正哉, 田島 知郎, 幕内 博康
    2000 年 61 巻 3 号 p. 723-726
    発行日: 2000/03/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    大腸穿孔をきたした大腸多発癌の1例を経験したので報告する.症例は79歳の女性で突然の腹痛にて近医を受診し腹部単純X線写真にて腹腔内遊離ガス像認められたため当科紹介となった.緊急開腹手術施行したところS状結腸の腸間膜対側に穿孔がみられ穿孔部の肛門側約30cmの範囲に母指頭大の腫瘤を3個と5cm大の腫瘤を1個触知しS状結腸切除術を施行した.切除標本には進行癌が3病変と早期癌1病変,腺腫1病変が認められ穿孔は進行癌の中心部にみられた.術後の検索では残存大腸に2個の腺腫と1個の腺腫内癌が認められた.
    大腸多発癌の報告は多いが穿孔をきたした報告は少ない.文献的考察を加え報告した.
  • 中崎 隆行, 小松 英明, 谷口 英樹, 中尾 丞, 栄田 和行, 高原 耕
    2000 年 61 巻 3 号 p. 727-729
    発行日: 2000/03/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    症例は63歳女性で大量下血のために入院となった.緊急大腸内視鏡検査でS状結腸の約1cmのポリープから拍動性の出血がみられた.クリッピングにて止血を行った.内視鏡的切除を施行したが,病理組織で中分化腺癌でsmに深く浸潤しており,根治手術を行った. S状結腸切除術を行い,標本に腫瘍の残存はなかったが,近傍にリンパ節転移を認めた.大量下血によって発見された大腸早期癌は稀であり,文献的考察を加え報告する.
  • 延澤 進, 松本 日洋, 遠藤 久人
    2000 年 61 巻 3 号 p. 730-733
    発行日: 2000/03/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    転移を伴わない多発性細菌性肝膿瘍の治癒後,根治手術を施行したS状結腸癌の1例を若干の文献的考察を加えて報告する.
    症例は47歳女性で,平成10年8月30日に下血,左下腹部痛,高熱を主訴に当院内科に,入院.精査の結果,肝右葉の多発膿瘍と全周狭窄を伴う2型のS状結腸癌と判明.抗生剤の連日投与後, 10月14日, S状結腸癌に対する根治手術を施行した.術中肝エコーと術直後の肝CTでは肝膿瘍は消失し,結果的には炎症性癒着であった膀胱の一部と小腸を合併切除した.病理組織診の結果は,深達度ssの高分化腺癌で,リンパ節転移はなかった.術後経過は良好で,術後約1年を経過した現在,癌の再発および肝膿瘍の再発は認めていない.
  • 雨宮 剛, 長谷川 洋, 小木曽 清二, 塩見 正哉, 籾山 正人, 太平 周作
    2000 年 61 巻 3 号 p. 734-737
    発行日: 2000/03/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    症例は77歳,女性.肺炎にて入院中,腹満,食欲低下が出現したため,注腸検査を行いS状結腸にapple core signを認めた.大腸内視鏡検査では同部位に2型の病変を認め,生検で腺癌と診断された.腹部CTでは脾臓に数個のSOLを認め, USでも数個のhigh echoic areaを認めた.他臓器への転移は認めなかった.以上より, S状結腸癌,孤立性脾臓転移と診断しS状結腸切除,脾臓摘出術を施行した.手術所見は, SS, H0, P0, N1(+)であった.脾臓には白黄色の結節性病変を数個認めた.腫瘍の病理組織学的所見では,高分化腺癌, INFβ, ss, ly2, v2, n2(+)であった.脾臓の病変も同様の組織像を呈し, S状結腸癌の転移と診断された.
  • 中村 寿彦, 土田 敬, 大浜 和憲
    2000 年 61 巻 3 号 p. 738-742
    発行日: 2000/03/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    Currarino症候群はCurrarinoらが直腸奇形,仙骨欠損,仙骨前腫瘍の三徴を有する症候群として1981年に報告した疾患である.常染色体優性遺伝と考えられ,家族歴で約半数にCurrarino症候群に関連した奇形を認めるとされている.今回,われわれはCurrarino症候群の父子例を経験したので報告する.直腸奇形ではわれわれの症例のように直腸狭窄の例が多く,直腸狭窄の症例の場合には本疾患も念頭におき精査を進めるべきと考えた.
  • 太平 周作, 長谷川 洋, 小木曽 清二, 塩見 正哉, 籾山 正人, 伊神 剛
    2000 年 61 巻 3 号 p. 743-746
    発行日: 2000/03/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    症例は51歳男性. 6年前に直腸平滑筋肉腫の診断で腹会陰式直腸切断術を行った.会陰部痛が出現したため,腹部CTを施行した所,骨盤内の腫瘤が発見された. MRIでは前立腺浸潤を強く疑った.骨盤内臓全摘術を施行した.病理組織学的診断は直腸gastrointestinal stromal tumor (以下GIST) uncommitted typeであった.術後経過は良好で7ヵ月後の現在再発の徴候は認めていない.
    直腸GISTの局所再発切除例は3例であったが,そのうち2例は初回手術後5年以上経過してからの再発であった.いずれもuncommitted typeであった. GISTの症例をさらに積み重ねることで細分類の悪性度判定,再発形式,予後判定における意義が明確になると考えられた.
  • 城間 寛, 比嘉 淳子, 長嶺 信治, 比嘉 昇, 大城 淳, 盛島 裕次
    2000 年 61 巻 3 号 p. 747-751
    発行日: 2000/03/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    症例は50歳,女性. 1カ月前から軽い腹痛と微熱を認めていた.次第に腹痛が強くなるため当科を受診した.立位腹単では下腹部に嚢胞性腫瘤が認められ,その中にAir fluid levelが見られた.腹部CT検査でも同様の像であった.大腸内視鏡検査では直腸S状部にBorrmann 2型の腫瘍が認められた.注腸造影検査で,造影剤が腫瘍の近傍から漏出し,腹単, CTで見られた嚢胞性腫瘤の中が造影され,さらに瘻孔を介して上行結腸が造影された.直腸S状部癌による卵巣嚢腫および上行結腸瘻孔形成と診断し,手術を行った.手術は直腸および卵巣嚢腫,回盲部が強く癒着していたため,同部を一塊として切除し,回腸-上行結腸,下行結腸-直腸とを一期的に縫合した.術後経過は良好であった.本症例は直腸S状部癌が,卵巣嚢腫に穿孔し,さらに癒着の中に瘻孔を形成し上行結腸に穿破した極めて稀な1例である.
  • 石崎 直樹, 浜田 信男, 門野 潤, 中村 登, 平 明
    2000 年 61 巻 3 号 p. 752-756
    発行日: 2000/03/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    leucovorin (LV)の5-FU効果増強作用を利用した5-FUとLV併用療法は,結腸直腸癌に対する有効な化学療法である.またUFTと経口でのLV併用療法は静注5-FU/LV療法に匹敵するという報告もある.われわれは高度の進行結腸直腸癌症例に対し周術期にUFT/LV内服療法を行い,画像および組織上有効と判定された2例を経験したので報告する.症例1は50歳の膀胱浸潤直腸癌症例で, UFT 300mg/m2/dayとLV 100mg/dayを1クール(28日)行い,画像上腫瘍の著明な縮小化を得た後,骨盤内臓全摘術で根治術を得た.化学療法の組織学的効果判定ではGrade Ibであった.症例2は55歳の男性.肝転移を伴う結腸癌穿孔で結腸切除と腹膜炎の緊急手術後,同治療を2クール行った.化学療法後のCTで肝転移巣は縮小し, CEAも著明に低下した.症例2の軽度な下痢以外副作用は認めなかった.従ってUFT/LV内服療法は,進行結腸直腸癌に対する有効な周術期補助化学療法と考えられた.
  • 山本 聖一郎, 固武 健二郎, 清水 秀昭, 奥村 拓也, 五十嵐 誠治, 小山 靖夫
    2000 年 61 巻 3 号 p. 757-761
    発行日: 2000/03/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    肛門周囲膿瘍にて発症した直腸癌の2症例を経験した.肛門周囲膿瘍は稀な疾患ではないが約1%に直腸癌を合併するとされ,当院で経験した下部直腸癌144例中2例(1.4%)が肛門周囲膿瘍にて発症した.肛門周囲膿瘍症状を呈する直腸癌症例は局所再発の危険性が高いとされるが,両症例とも良好な局所コントロールが得られている.いずれの症例とも肛門周囲膿瘍に対して切開ドレナージ,洗浄にて局所の炎症が消退した時点で根治術を施行,手術では局所再発の予防のために炎症範囲(膿瘍腔)を含め,その外側の健常組織で膿瘍を切除した. 1例では死腔が広範となり,二期的に後大腿筋膜皮弁・薄筋弁移行術を施行した. 1例は術前より認めた肺転移のため術後2年3カ月で癌死したが死亡時に局所再発は認めず,他例は術後3年10カ月が経過したが無再発生存中である.
  • 木村 充志, 池沢 輝男, 浅野 昌彦, 岩塚 靖, 内木 研一
    2000 年 61 巻 3 号 p. 762-765
    発行日: 2000/03/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    症例は74歳女性.中部胆管癌で膵頭十二指腸切除を施行した.術後1週間目にドレーンより出血があり,開腹手術を行ったが,出血点はわからなかった.術後2週目に再びドレーンより出血あり.血管造影で右肝動脈の仮性動脈瘤と診断し,塞栓術によって止血した. 4週目より大量の吐下血が間欠的にあり,血管造影を行ったところ,動脈瘤がまだviableである事がわかった.術後5週目に止血のために手術を施行した.右肝動脈前枝に小指頭大の動脈瘤を認め,これが胆管空腸吻合部に穿破していた.この中枢,末梢の動脈を結紮し,動脈瘤は切除した.破綻した吻合部は修復を行った.
  • 山本 重孝, 田中 康博, 伊藤 壽記, 弓場 健義, 川本 誠一, 大西 裕満
    2000 年 61 巻 3 号 p. 766-770
    発行日: 2000/03/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    症例は67歳の女性.食後の腹部膨満感と嘔吐を主訴に来院した. 48歳時早期胃癌で幽門側胃切除術を施行されていた.上部消化管内視鏡検査で胃十二指腸吻合部の口側に全周性の腫瘍を指摘され,生検にてSignet-ring cell carcinomaと診断された.平成10年10月23日に手術を施行した.腫瘍は周囲の諸臓器に直接浸潤していた.残胃全摘と膵頭部を含む尾側膵・脾合併切除,肝左葉部分切除,横行結腸間膜部分切除,空腸部分切除,および広範囲郭清を行った.術後1日目よりドレーンから胆汁流出がみられ,肝逸脱酵素と胆道系酵素の急激な上昇を認めた. CT検査にて肝左葉, S5および右門脈周囲の広範囲に低吸収域を認め肝梗塞と診断された.肝庇護剤の投与により術後2週間目には肝機能は正常化したが,ドレーンからの胆汁流出は長期間持続した.術後の血管造影検査では総肝動脈の完全閉塞と門脈左枝の閉塞を認めた.肝梗塞巣が縮小し,平成11年7月11日に退院した.
  • 山中 幸二, 臼井 隆, 曳田 知紀
    2000 年 61 巻 3 号 p. 771-774
    発行日: 2000/03/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    症例は84歳,女性,皮下膿瘍を主訴に受診し治療と精査目的のため入院した.老人性痴呆症のため痛みなどの症状の訴えが乏しく,右前胸部に皮下膿瘍があり発赤,腫脹しており,切開にて排膿がみられた.排膿は右第10, 11肋間の皮下より出ており,瘻孔を形成していた.瘻孔造影にて胆嚢とそれに続き結腸が描出された.胆嚢内には結石がみられ,胆嚢皮膚瘻・胆嚢結腸瘻を合併した胆石症と診断し,胆嚢摘出術,横行結腸部分切除術を行った.
  • 柳父 宣治, 佐藤 友信
    2000 年 61 巻 3 号 p. 775-778
    発行日: 2000/03/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    症例は83歳,男性. 67歳時に腎細胞癌にて右腎摘出術を受けており, 80歳時に肺転移を診断されている.血液検査で貧血を認め,腹部超音波検査で膵尾部に直径7cm大の腫瘍を認めたため精査した.腎細胞癌の膵転移による腹腔内出血と診断し,膵体尾部切除と脾摘出術を施行した.腫瘍は膵と薄い結合組織を介して接し,膵の被膜内に存在していた.本邦34例の集計では腎摘出後の膵転移までの期間は平均9.1年であり,腎細胞癌は異時性再発までの時間が比較的長いのが特徴である.腎細胞癌の術後は長期にわたる経過観察が重要であり,転移性膵腫瘍に対しては孤立性の場合はもちろん他臓器転移を認めてもslow growingである場合は手術療法の適応となりうると考えられる.
  • 山村 浩然, 八木 真悟, 山田 哲司, 北川 晋, 中川 正昭, 車谷 宏
    2000 年 61 巻 3 号 p. 779-783
    発行日: 2000/03/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    “Normal-sized ovary carcinoma”の術後孤立性脾転移の1例を経験したので報告する.症例は48歳,女性.平成6年3月23日,子宮筋腫と子宮内膜症に対し子宮全摘術と左付属器摘出術を施行.左卵巣は正常大であったが,病理組織学的に低分化腺癌を認めた.平成8年7月より血清CA125値が上昇し,腹部MRI, CTにて脾門部に腫瘍性病変を認め,卵巣癌の孤立性脾転移と考え平成9年6月26日手術施行.脾門部に腫瘍を認めたが,その他に卵巣癌の再発所見はなく脾摘術を施行,病理組織学に腫瘍は低分化腺癌で,卵巣癌の脾転移と診断された.悪性腫瘍の孤立性脾転移は極めて稀であり,本邦報告例は自験例を含め64例である.また,原発巣が卵巣癌で“normal-sized ovary carcinom”と考えられたのものはなく,本例が最初の報告である.原発癌が卵巣癌の場合には脾摘後化学療法が施行され比較的良好な成績が得られている症例もあり,積極的に脾摘術を施行すべきと考える.
  • 橋本 和彦, 龍田 眞行, 宮 章博, 星田 義彦, 古河 洋, 里見 隆
    2000 年 61 巻 3 号 p. 784-788
    発行日: 2000/03/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    症例は51歳女性.平成4年左乳癌にて非定型的左乳房切除術を施行.平成8年7月定期検査の腹部エコーで左後腹膜腫瘍を指摘された.他には乳癌再発所見は認めなかった.腹部CT, MRI,血管造影, Gaシンチ,内分泌検査などを施行した結果,非機能性左副腎腫瘍を疑い,平成8年8月左副腎腫瘍摘出術を施行した.摘出標本は10×10×5cm,重量320g,被膜を有し,既存の副腎と連続しており,割面は内部均一,充実性,灰白色調であった.病理組織学的所見より,副腎原発神経節神経腫と診断した.術後2年10カ月後の現在無再発生存中である.乳癌術後の定期検査で偶発的に発見された副腎腫瘍であるが,腫瘍径が大きく,転移性腫瘍も否定できなかったため,手術の意義を認めた.
  • 佐藤 尚紀, 田中 隆士, 竹之下 誠一
    2000 年 61 巻 3 号 p. 789-792
    発行日: 2000/03/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    尿膜管嚢胞は,従来稀な疾患とされているが画像診断の進歩に伴い近年その報告は増加している.今回われわれは,若年者に発症した感染性尿膜管嚢胞の1例を経験したので報告する.症例は22歳の男性.主訴は下腹部痛と熱発であった.触診上,下腹部に腫瘤を認め,腹部CT, 超音波検査により感染性尿膜管嚢胞と診断した.抗生物質を7日間投与したが改善しないため,膿瘍穿刺ドレナージを施行したところ症状および炎症所見が著明に改善した.本症例においては,嚢胞は臍,膀胱のどちらとも交通はなく,嚢胞内容の培養も陰性であった.
  • 岩波 弘太郎, 蒔田 富士雄, 橋本 直樹, 鴨下 憲和, 小林 光伸, 竹吉 泉, 大和田 進, 福里 利夫, 森下 靖雄
    2000 年 61 巻 3 号 p. 793-797
    発行日: 2000/03/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    症例は76歳,男性. 1998年1月,上腹部痛を主訴に来院した.内視鏡検査で角部小彎の胃癌と診断され,手術目的で入院した. CT検査で,膵体部と胃壁の間に5cm大の嚢胞状腫瘤を認め,胃癌および膵嚢胞の診断で手術を施行した.開腹すると小網内に7×5cm大の嚢胞性腫瘍が存在し,胃および膵との連続性はなかった.幽門側胃切除D2郭清を施行し,同時に小網腫瘍をen blocに摘出した.摘出した小網嚢腫は7×5×4cm大で,赤褐色の薄い被膜に被われた多房性嚢胞性腫瘍で,内溶液は淡血性であった.病理組織所見では,胃癌は高分化型腺癌で,小網腫瘍は嚢胞状リンパ管腫と診断された.小網リンパ管腫の本邦報告例は自験例を含めて34例と稀で,悪性腫瘍との合併は自験例が3例目であった.小網リンパ管腫は特異的な臨床症状がなく,術前の確定診断も困難とされる.治療の基本は腫瘍摘出で,予後は良好である.
  • 南 光昭, 青木 洋三, 植阪 和修, 平林 直樹, 榎本 勝彦, 嶋本 哲也
    2000 年 61 巻 3 号 p. 798-802
    発行日: 2000/03/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    大網捻転症は大網が捻転し,その末梢が血行障害に陥るものであり,比較的稀な疾患である.今回われわれは捻転を起こす病因がない特発性大網捻転症2例を経験したので報告する.症例1:40歳,男性.急性虫垂炎の診断にて開腹したところ,漿液血性の腹水が大量に貯留し,大網の一部が時計方向に5回捻転し,末梢側は壊死に陥っていた.症例2:70歳,女性.便秘にて,下剤を服用したところ,右下腹部痛が出現し,急性虫垂炎と診断した.手術所見は大網の一部が時計方向に3回捻転し,壊死に陥っていた.誘因としては症例1は,会社員で仕事中に回転椅子で体を捻転する事が多く,急激な体位変換が一誘因として関与した可能性も考えられた.症例2では下剤の服用による,腸蠕動の充進が誘因と考えられた.急性虫垂炎との鑑別は難しいが,右下腹部痛を主訴とする急性腹症の場合本疾患も考慮に入れる必要がある.
  • 伊藤 浩明, 酒向 猛, 松岡 慎, 太田 竜夫, 大島 健司, 大野 元嗣
    2000 年 61 巻 3 号 p. 803-808
    発行日: 2000/03/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    肺癌の小腸転移による穿孔性腹膜炎に対し手術治療を行った2症例を経験したので報告する.[症例1]63歳男性.検診で胸部異常陰影を指摘され,右上葉の肺癌と気管・食道浸潤,副腎・脳転移と診断された.経過観察していたところ,通院3ヵ月目に突然腹痛が出現し,穿孔性腹膜炎の診断で緊急手術を行った.術後25病日に退院したが, 35病日に死亡した.[症例2]73歳男性.右肺癌・胸水貯留,脳転移と診断され,脳転移に対し放射線治療を行っていたが,入院1ヵ月後に突然腹痛が出現し,緊急手術をうけた.術後食事摂取可能となったが, 25病日に癌死した.
    肺癌の小腸転移による穿孔は終末期の経過中に発生することが多いためその予後は不良であるが,一時的にせよQOLの改善が期待できるため,全身状態を考慮しつつ外科的治療を行うべきと思われる.
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