日本臨床外科学会雑誌
Online ISSN : 1882-5133
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61 巻, 7 号
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  • 李 哲柱, 城野 晃一, 栗岡 英明, 牛込 秀隆, 岡本 雅彦, 安井 仁, 牧野 弘之, 清水 正啓, 吉村 了勇, 岡 隆宏
    2000 年 61 巻 7 号 p. 1649-1654
    発行日: 2000/07/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    乳腺腫瘍におけるテロメラーゼ活性と各種生物学的因子との相関を検索した. 1996年から1999年までに手術切除された乳癌45例,線維腺腫8例,乳腺症4例,葉状腫瘍2例合計59例を対象としTRAP法を用いてテロメラーゼ活性を測定した.さらに, DNA ploidy patternの解析や細胞周期とテロメラーゼ活性との関連を検討した.乳癌においては,腫瘍径,腋窩リンパ節転移,進行度,組織型,ホルモンレセプターとの関連についても検討した.その結果,テロメラーゼ活性は乳癌において有意に高値であり (p=0.0108), 細胞周期においてはS期と正の相関を認めた.また乳癌の組織型における差は認められなかったが,腫瘍径が大きいほど,臨床病期が進行しているほど有意に活性が高かった.またリンパ節転移陽性例で有意差はないものの活性が高い傾向が認められ,テロメラーゼ活性が予後因子となりうる可能性が示唆された.
  • 門倉 光隆, 野中 誠, 山本 滋, 片岡 大輔, 川田 忠典, 高場 利博
    2000 年 61 巻 7 号 p. 1655-1660
    発行日: 2000/07/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    過去9年間の原発性肺癌切除症例のうち,新規約で「完全切除」に包含されることになった絶対的治癒切除(絶治) 90例および相対的治癒切除(相治) 72例を検索対象とし,発見動機, TN因子,腫瘍径,病理組織学的所見などから術後再発に関与する因子について検討した.絶治であってもその17%が術後平均24カ月で,相治の60%が21カ月で再発転移をきたし,相治術後再発1例を除く再発全例に脈管浸潤をみとめ,脈管浸潤のない症例に再発はみられなかった. 5生率は絶治が有意に良好であったが,多変量解析では絶治・相治ともに脈管浸潤とT因子が有意な再発関連因子と判断された.したがって,腫瘍がより小さなうちに発見するとともに対応遅延による腫瘍の発育浸潤を回避し,確実な縦隔リンパ筋郭清を伴う根治的切除を速やかに行うことが前提となるが,術後に有意な予後因子を検出し得た場合,補助療法を検討するなどの対応で再発予防や予後改善に寄与し得ると考えられた.
  • 川口 晃, 小玉 正智, 谷 徹, 柴田 純祐, 内藤 弘之, 目片 英治, 遠藤 善裕, 阿部 元, 花澤 一芳
    2000 年 61 巻 7 号 p. 1661-1669
    発行日: 2000/07/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    滋賀医科大学第1外科における111例の胸部食道癌症例を対象として臨床病理学的検討を行った.中部食道癌が全体の68.2%を占め, stage 3, 4が61.7%, 早期癌の頻度は22%であった.上縦隔へのリンパ節転移率はUt症例において60%と高率で,特に左右反回神経に沿ったリンパ節に高率に転移を起こす傾向にあった.頸部へのリンパ節転移はUt症例, Mt症例において20%, 19.4%に,また腹腔内リンパ節への転移はLt症例 (47.8%) で高率に認められた.
    表在癌におけるリンパ節転移はsm2より認められた. sm1までの症例では原病死は認められず, m3, sm1症例に対する内視鏡下切除の適応の検討が必要である.
    2領域徹底郭清群と3領域郭清群における予後の比較では両者に有意な差は認められず,左右反回神経領域の郭清を行うことを前提とした頸部郭清の意義は見出せなかった.
  • 森田 晃彦, 鎌田 徹, 中本 愛, 大西 一朗, 竹田 利弥, 小矢崎 直博, 神野 正博
    2000 年 61 巻 7 号 p. 1670-1674
    発行日: 2000/07/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    消化管間葉系腫瘍は発生学的に不明な点が多く,今まで確固たる分類がなかった.近年,その多くが, CD34やKitといった免疫染色で染まる, interstitial cells of Cajal (ICC)に由来するgastrointestinal stromal tumors (GIST)だろうとわかってきた.今回,当院における過去5年間の胃の間葉系腫瘍6例を,臨床病理学的および免疫組織学的に再検討した.再評価前診断は,平滑筋腫2例,平滑筋肉腫2例, gastrointestinal autonomic tumors (GANT) 2例であった.今回の検討により,免疫組織学的に全例が, CD34(+), Kit(+), Desmine(+), S100(-)α-SMA(-)という結果から, Cajal細胞由来のGISTと再評価後診断され,筋原性腫瘍と神経原性腫瘍は1例もなかった.今後,胃間葉系腫瘍の分類がその発生に基づいて変わることが予想され,新しい知見に基づいた胃間葉系腫瘍の再評価,悪性度や予後の再検討の必要があると考える.
  • 大西 一朗, 小西 孝司, 荒川 元, 加治 正英, 木村 寛伸, 前田 基一, 薮下 和久, 辻 政彦
    2000 年 61 巻 7 号 p. 1675-1679
    発行日: 2000/07/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    原発性十二指腸癌は,消化器癌の0.8~2%とされ,極めて稀である.当科ではこれまでに経験した原発性十二指腸癌7例はいずれも下行脚に位置し,最大径50mm以上の大きな進行癌であったが,リンパ節郭清を伴う膵頭十二指腸切除により,全例切除が可能であった. 6例が膵浸潤陽性で,うち3例にリンパ節転移を認めたが, 5例の5年生存が得られ, 5年累積生存率は66.7%と他の膵頭部領域癌と比べて良好であった.膵浸潤陽性であっても長期生存が得られていることから,十二指腸進行癌の治療にあたっては決して諦めることなく,治癒的切除をめざした積極的手術療法が行われるべきと考えられた.
  • 近森 文夫, 渋谷 進, 高瀬 靖広
    2000 年 61 巻 7 号 p. 1680-1685
    発行日: 2000/07/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    腹腔鏡下虫垂切除術(LA)の有用性を初期治療成績とアンケート調査によるニーズ評価から検討した.対象は1997年10月から1999年8月までのLA施行62例で,年齢は7~81歳. LAは3孔式で,臍部10/12mm,右側腹部5/7mm,恥毛部上端5/7mmのトラカールを挿入した.虫垂間膜と虫垂根部を1-0絹糸で体内結紮し,超音波凝固切開装置で虫垂を切離し摘出した.開腹移行率は3.2%. 手術時間は壊疽性98±38分(n=15), 非壊疽性65±18分(n=47)であった (p<0.01).合併症として初期にトラカール刺入部出血1例,腹腔内膿瘍1例を経験した.アンケートでは術式として89.0%が開腹虫垂切除よりもLAを選択すると回答した. LAは手技的に確立され,急性虫垂炎に対する1オプションとして十分成立するものと思われた.虫垂切除術の説明に際しては, LAについても必ず説明し患者の治療選択権を尊重すべきである.
  • 福田 賢一郎, 中瀬 有遠, 安岡 利恵, 増山 守, 加藤 誠, 米山 千尋, 渡辺 信介
    2000 年 61 巻 7 号 p. 1686-1692
    発行日: 2000/07/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    当院では腹部外傷初期治療のプロトコールに従い,臓器温存の立場から積極的に非手術的治療を行ってきた.今回その治療成績と,肝損傷形態と合併症の関係について検討した.当院において昭和60年1月から平成11年7月までに,入院して手術もしくは非手術的治療を行った130例を対象とした.肝損傷形態は日本外傷学会肝損傷分類でIa型12例, Ib型82例, II型6例, IIIa型5例, IIIb型25例であった.腹部外傷初期治療プロトコールに従い130例中116例(TAE施行12例を含む)に非手術的治療を施行しえた.非手術的治療で合併症を認めたものは9例(7.8%)で,そのうちbilomaを形成し処置を要したもの7例,遅発性破裂1例,肺塞栓1例であり,その損傷形態はIb型3例, IIIb型6例であった. Ib型, IIIb型の肝損傷は保存的治療での合併症を起こすことが多いので厳重な監視下に置くことが肝要である.
  • 吉井 一博, 里 輝幸, 赤木 重典
    2000 年 61 巻 7 号 p. 1693-1697
    発行日: 2000/07/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    1987年4月から1999年3月までに当科で経験した大腿ヘルニア症例30例を対象とし,臨床的検討を行った.平均年齢73.2歳,男女比は2:28で,高齢の女性に多くみられた.主訴は鼠径部膨隆など局所症状23例,イレウス症状4例,他症状3例であった.部位は右側18例,左側10例,両側2例であった,診断は全て身体所見によりなされた.他症状例,両側例の片側は受診時に鼠径部の触診により診断された.嵌頓は5例(16.7%)に認め,緊急手術もこの5例に施行された.うち2例に腸管壊死を認め,この2例に腸切除併施を要した.腸切除例の1例に創感染の術後合併症を認め,創治癒が遷延した.嵌頓症例は非嵌頓例より術後在院日数が長かった.大腿ヘルニアは高齢の女性に多く,日常診察で注意を払うことによって,嵌頓を防ぐ努力をすべきである.
  • 大津 一弘, 古田 靖彦, 塩田 仁彦
    2000 年 61 巻 7 号 p. 1698-1703
    発行日: 2000/07/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    われわれの経験した小児消化管異物216例について検討した.基本方針としては食道異物は速やかに食道より摘出,胃より肛側の異物は経過観察が原則であるがボタン電池はマグネットカテーテルで,鋭利な異物は内視鏡で摘出する.手術適応は穿孔やイレウスである.自然排出に要する時間は2週間以内に約90%が排出される.異物の大きさと自然排出との関連は明らかではなかった.消化管異物摘出法は内視鏡,マグネットカテーテル,バルーンカテーテルによるがマグネットカテーテルのみでは摘出不可能な症例に対してはバルーンカテーテルの併用が有効であった.手術症例は4例であり2例は開いた安全ピン, 2例は胃石である. 2例の食道異物による縦隔炎は保存的に治療可能であった.臨床家に求められる消化管異物の診断,治療の原則について言及した.
  • 福井 貴巳, 横尾 直樹, 吉田 隆浩, 東 久弥, 白子 隆志, 北角 泰人
    2000 年 61 巻 7 号 p. 1704-1708
    発行日: 2000/07/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    非反回下喉頭神経を認めた,バゼドウ病合併甲状腺乳頭癌の1例を経験したので報告する.症例は16歳,女性.バゼドウ病で抗甲状腺剤内服治療中,右甲状腺に腫瘍を認めた. T3・T4は低下, TSHは上昇しており,サイロイドテスト,マイクロゾームテストは陽性,サイログロブリン抗体は陰性であった.頸部CTにて右葉上極の腫瘍と気管および食道後方の血管像が,甲状腺シンチグラムにて右葉上部の201T1集積像と99mTc欠損像が認められ,穿刺吸引細胞診にて乳頭癌との診断を得た.手術時,気管前リンパ節に転移を認めたため,甲状腺全摘術と右側のmodified neck dissectionを施行した.反回神経は,左側は通常の走行部位に確認できたが,右側は迷走神経から直角に分岐して喉頭へ向かっていた.摘出標本では,右葉上極に2.2×2.0×1.8cm大の腫瘍を認めた. 131I療法を施行後,経過観察中であるが,現在再発徴候は認めていない.
  • 原田 洋明, 木村 正美, 松下 弘雄, 兼田 博, 久米 修一, 上村 邦紀
    2000 年 61 巻 7 号 p. 1709-1711
    発行日: 2000/07/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    症例は54歳男性.甲状腺乳頭癌に対し平成元年10月の初回手術以降,平成5年2月までに計4回の局所再発に対する手術を行い,平成4年1月に頸部および上縦隔に外照射を行った.平成6年12月に肺転移が判明し, CDDP少量反復投与を開始, 1995年2月から3回の内照射,平成8年10月からは養子免疫療法および,上縦隔リンパ節に外照射を施行した.しかし種々の治療にもかかわらず再発転移巣は徐々に増悪した.平成10年12月,肺転移からの喀血を認め, QOLを考慮し気管支動脈塞栓療法を施行した.これによりその後は明らかな再出血はなくコントロールがついた.またこの頃から増大傾向を示した皮膚腫瘤を切除したところ甲状腺乳頭癌の皮膚転移であった.甲状腺乳頭癌の再発経過は長く, 131I内照射以外の有効な治療法の確立と, QOLを念頭に置いた対応が重要であると思われた.
  • 山田 雅史, 黒田 宏昭, 宮崎 純一
    2000 年 61 巻 7 号 p. 1712-1714
    発行日: 2000/07/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    男性乳房Paget病を経験したので報告する.症例は65歳の男性で,右乳頭部腫大とびらんで来院した.びらん部の擦過細胞診はClass Vで, Paget細胞も認めた.乳腺組織に腫瘤は認めず,乳頭部限局の乳癌の診断のもとに,乳房摘出術および腋窩リンパ節郭清を行った.切除標本にて病巣は乳頭部びらん部より深さ4mmのみに限局し,大きさは12×12×4mmであった.乳腺組織に癌細胞は認めなかった.組織学的には充実腺管癌であった.また,表皮の基底層に明るい胞体をもったPaget細胞を認めた.本症例は,乳腺に腫瘤を認めなかったが,乳頭部に腫瘤を形成し,乳管外浸潤が著明で,いわゆるPagetoid癌と考えられた.リンパ管内への浸潤も認めており,今後十分なる経過観察が必要と考えられた.
  • 奥村 輝, 徳田 裕, 斎藤 雄紀, 久保田 光博, 幕内 博康, 田島 知郎
    2000 年 61 巻 7 号 p. 1715-1721
    発行日: 2000/07/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    von Recklinghausen病は神経系悪性腫瘍の合併頻度が高く,上皮性悪性腫瘍の合併は比較的稀である.今回乳癌を合併した1例を経験したので本邦報告例の集計とともに報告した.症例は54歳,女性.全身にcafé au lait斑を認め,左乳房腫瘤を主訴に来院した.穿刺吸引診にてclass Vを得,胸筋温存乳房切除術を施行した.病理組織は乳頭腺管癌でt2n2m0 stage III ER(-), PR(-)であった.またc-erbB-2, p53に対する免疫組織化学的染色法にて陽性所見を認めたが, R病に併存した乳癌とp53との関連性を報告している文献は認めず興味ある所見と思われた.補助化学内分泌療法施行したが再発し,術後3年で死亡した.本邦報告例は54例で, stage II以上が多く,皮膚病変により発見が遅れるためと考えられた.注意深い観察が必要と考えられた.
  • 伊澤 光, 平井 健清, 金 成泰, 西原 政好, 岡崎 誠, 藤本 高義
    2000 年 61 巻 7 号 p. 1722-1726
    発行日: 2000/07/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    副乳癌は乳癌の中でも非常に稀な疾患である.今回,左腋窩部のリンパ節炎と紛らわしかった副乳癌を経験したので報告する.
    症例は44歳女性で,左腋窩部の有痛性腫瘤を主訴として近医を受診し,精査目的で当科紹介された.リンパ節炎と診断し腫瘤を生検したところ,病理組織学的に髄様癌とその隣接部に乳腺組織を認めたため副乳癌を疑い,後日,手術創皮膚を含めた左腋窩の広範切除と左乳腺のaxillary tail部分切除および同側腋窩リンパ節郭清術を施行した.摘出組織内には癌腫の遺残はなく,また原乳腺との連続性を示唆する所見はみられず副乳癌と確定診断した.リンパ節転移は無かったため,局所への放射線療法のみ施行し,現在外来にて経過観察中である.
  • 伊藤 雄一郎, 井上 啓爾, 宮田 昭海, 天野 実, 河合 紀生子, 川野 洋治
    2000 年 61 巻 7 号 p. 1727-1732
    発行日: 2000/07/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    症例は, 44歳女性.主訴は,右胸部腫瘤触知.既往歴で8年前に右乳房部,左肩前壁に8mm大の腫瘤を認め,切除生検を施行した.組織診断は多発性脂腺嚢腫症であった.今回右乳房B領域に別の腫瘤が形成されたが,前回と同様のものと考え放置していた.その後,増大するため受診となった.確定診断の為に切除生検を施行.術中迅速病理で粘液癌との診断であったが,乳腺原発かエクリン汗腺原発かの同定は困難であった.後日,乳腺原発との確定診断の後にAuchincloss法を施行した.乳癌の特殊型である粘液癌は比較的稀であり,大部分が明らかに乳腺原発と診断できる.今回われわれは,エクリン汗腺の粘液癌と鑑別困難な乳腺原発の粘液癌を経験した.病理学的検討から総合的に乳腺原発の粘液癌と判断した.胸部皮下の粘液性腫瘍は皮膚原発のみならず乳腺原発も考慮しなければならないと考えられた.
  • 広松 孝, 小林 建仁, 所 昌彦, 太田 俊介, 近松 英二, 徳丸 勝悟
    2000 年 61 巻 7 号 p. 1733-1737
    発行日: 2000/07/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    症例は68歳男性, 1992年2月14日, S状結腸癌イレウスにて人工肛門造設後, S状結腸切除術を施行した.肝転移はなかった.病理学的には,中分化型腺癌でリンパ節転移はなかった. 1993年8月,左S9に結節状陰影を認め左肺部分切除術を施行した. 35×36mmの腫瘍で結腸癌の転移と診断された. 1994年4月,右肺S8, S4に結節影を認め,右S8区域切除, S4部分切除を施行した.病理では同様に転移と診断された. 1995年8月,右下葉にmass lesionを認め,右肺中・下葉切除を施行,一部横隔膜に浸潤していたためこれを合併切除した.中葉には径25mmの転移巣,下葉には径70mmの原発巣を認めた.術後現在まで再発徴候なく,健在である.結腸癌の肺転移に関しては積極的な手術的治療が有効と考えられ,若干の文献的考察を加えて報告する.
  • 佐々木 幸則, 鈴木 寿彦, 渡辺 新吉, 渡部 秀一, 本田 毅彦
    2000 年 61 巻 7 号 p. 1738-1742
    発行日: 2000/07/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    症例は34歳,男性.既往歴に25歳時に交通事故によるハンドル外傷がある.平成11年1月22日に突然の胸痛・冷汗を主訴として某病院を受診した.胸部X線写真上は,右横隔膜の軽度の挙上と不鮮明化を認めていたが,その最中に心筋梗塞による心停止をきたし,心肺蘇生を施行し当院に搬送され救命した.その後の胸部X線写真で右肺の虚脱,右肺野全体を占める腸管ガス像を認めた.以上より交通外傷時の横隔膜破裂が,今回の心肺蘇生を契機に横隔膜ヘルニアをきたしたと診断し,臨時手術を施行した.開胸開腹下で横隔膜はほぼ欠損し,胸腔内に胃・大網・小腸・大腸が移行していた.腹腔内臓器を還納し,右横隔膜を再形成し手術を終了した.
    本疾患は診断が付き次第手術適応となるが,多発外傷に伴う場合あるいは潜在期が長期間に渡る場合も多く本症例の如く危機的状況でも詳細に既往歴を聴取し,本症例を念頭において対処する必要があると考えられた.
  • 井口 智浩, 野島 真治, 中屋敷 千鶴, 藤井 雅和, 小林 哲郎, 榎 忠彦, 善甫 宣哉, 江里 健輔
    2000 年 61 巻 7 号 p. 1743-1749
    発行日: 2000/07/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    症例は62歳男性.逆流性食道炎の診断でプロトロンプ阻害剤などの加療をうけていたが,中部食道狭窄を呈し嚥下困難を主訴とし入院となった.著明な食道狭窄および低栄養状態で,水・流動食がかろうじて通過できる状態であった.食道透視では上部食道の著明な拡張を認め, 24時間pHモニタリングにてpH4以下が26.3%, 5分以上の持続回数は9回であった.逆流性食道炎に伴う食道狭窄と診断し左開胸Collis-Nissen変法および狭窄部にwall stentを留置した.術後経口摂取可能となり, 21病日退院となった.下部食道内pHはpH4.0以下0.9%と著明に改善していた.
  • 御江 慎一郎, 蓮田 慶太郎, 岡 武志, 中島 公洋, 穴井 秀明
    2000 年 61 巻 7 号 p. 1750-1754
    発行日: 2000/07/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    われわれはBarrett食道を合併し粘液癌,印環細胞癌,腺癌を共存した食道癌の1例を経験した.
    症例は, 77歳,男性.嚥下困難,咳嗽を主訴に近医より当院呼吸器科に紹介された.胸部CTにて食道壁の肥厚を指摘され食道癌疑いにて精査,加療目的で当科入院となった.
    局所,および全身精査の結果,粘液癌,印環細胞癌,腺癌を共存した上部から下部にかけての進行食道癌の診断であったが,手術可能と判断した.
    手術は右開胸,上腹部正中切開にてアプローチし,食道亜全摘術,胆嚢摘出術を施行,幽門形成術を施した胃管を挙上し胸腔内経路で吻合し再建した.
    摘出標本の病理所見ではmucinous carcinomaが主体でtubular adenocarcinoma, signet ring cell carcinomaが混在し,さらに下部食道は円柱上皮に覆われ,扁平上皮の島状遺残があり,粘膜下層に食道固有腺が認められたので, Barrett食道に合併したものと思われた.組織学的にはa2, n2(+), M0, P10で進行度はstage III, 根治度はow, ewがそれぞれ(+)であったためCurability (C) 0であった.
    術後,局所および縦隔に放射線治療(計40.5Gy)を追加し, 107病日目に軽快退院となった.術後9カ月を経過した現在,画像上,データ上再発や転移を思わせる所見はない.
    本邦ではわれわれが検索した範囲では粘液癌,印環細胞癌,腺癌を共存した食道癌は1例しかなく,非常に稀な1例を経験したので報告する.
  • 松崎 博行, 長谷川 健, 霧生 孝司, 安部 美寛, 内藤 正規, 小芝 章剛
    2000 年 61 巻 7 号 p. 1755-1758
    発行日: 2000/07/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    症例は, 42歳,男性.突発する激しい上腹部痛を主訴に当院を受診.来院時の腹部CTで,腹腔内遊離ガス像と門脈内ガスを認め,消化管穿孔による汎発性腹膜炎と診断,緊急手術を行った.開腹時,多量の汚い腹水と,胃角部に穿孔を認めた.胃潰瘍穿孔の診断で広範囲胃切除を行った.術後経過は良好で,門脈内ガスは術後5日目に消失した.
    門脈内ガス血症は,重篤な腸管壊死の徴候とされている.近年,各種画像診断法の発達により少量のガスが描出できるようになると,臨床的に意義の少ない門脈内ガス血症も報告されるようになった.しかしながら,未だその様な症例の報告は少なく,門脈内ガス血症は重篤な腹腔内病変の存在を示唆する,稀ではあるが,重要な徴候であると考える.門脈内ガス血症を認めた場合,期を逃さない適切な治療が必要と考える.
  • 桜井 嘉彦, 宮北 誠, 古川 潤二, 石川 洋一郎, 三井 洋子, 西川 眞史
    2000 年 61 巻 7 号 p. 1759-1763
    発行日: 2000/07/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    乳癌の胃転移2例を経験したので報告する.症例1は45歳,女性.左乳癌術後3年目に腹水貯留にて入院した.入院時の胃内視鏡検査で粘膜下腫瘍様の隆起性病変を認め,生検の結果,浸潤性小葉癌の胃転移と診断された.化学療法を施行したが,術後5年目に癌死した.症例2は58歳,女性.左乳癌の術前胃内視鏡検査で,中心陥凹を伴う辺縁なだらかな隆起性病変が多発しており,生検の結果,浸潤性小葉癌の胃転移と診断された.術後6ヵ月目に,肝門部転移による肝不全で死亡した.進行乳癌症例や乳癌の既往歴がある場合は,乳癌からの消化管転移の可能性を念頭において精査する必要があると考えられた.
  • 吉田 基巳, 松山 秀樹, 杉山 勇治, 手塚 秀夫, 安原 清司, 増田 浩
    2000 年 61 巻 7 号 p. 1764-1769
    発行日: 2000/07/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    症例は68歳,男性.両上肢の振戦としびれ,構音障害を訴えに多発性脳梗塞の診断で入院,同時に巨大な腹部腫瘤を指摘され,腹部CT検査, MRI検査で巨大な嚢胞性腫瘤と診断された.開腹所見では,腫瘤は直径約30cmの軟らかい嚢腫で胃体中部後壁と連続していた.胃後面,膵臓前面,横行結腸間膜前葉に対面する網嚢腔に直径数mm大までの白色腫瘤を多数認め播種と判断した.腫瘍と膵尾部,脾臓,横行結腸との癒着を認めたため,胃全摘術,膵尾部切除術,脾摘術,横行結腸切除術を施行した.病理組織学的所見で悪性神経鞘腫を疑ったが,免疫染色では,筋原性,神経原性のマーカーは陰性, CD34が陽性であったことより胃原発malignant gastrointestinal stromal tumor (GIST), uncommitted typeと診断した.今回われわれが経験した症例は,平滑筋および神経への分化を示さない胃原発の狭義のGISTの悪性例であり,本邦では9例目で,そのうち腹膜播種を伴ったものは3例目で貴重な症例と考えられる.
  • 長谷 龍之介, 沼田 昭彦, 平 康二, 子野日 政昭, 伊藤 紀之, 加藤 紘之
    2000 年 61 巻 7 号 p. 1770-1774
    発行日: 2000/07/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    今回われわれは食道癌術後に再建胃管に発生した胃管癌の3切除例を経験した.症例1は63歳,男性.昭和58年食道亜全摘術施行,胸骨後経路胃管で再建した. 9年後,再建胃管に3型進行胃癌を認め,幽門側胃管切除を施行したが術後2年2ヵ月で胃管癌局所再発により死亡した.症例2は62歳,男性.昭和62年食道亜全摘術施行,胸骨後経路胃管で再建した. 7年後,再建胃管にIIa+IIc型早期胃癌を認め,幽門側胃管切除を施行した.術後4年経過した現在も生存中である.術後症例3は83歳,女性.昭和57年食道亜全摘術施行,胸骨後経路胃管で再建した. 13年後,再建胃管にIIa型早期胃癌を認め, EMRを施行した. 2年6ヵ月経過した現在も生存中である.スクリーニングにて早期に発見できた2症例は再発の兆候なく生存中である.食道癌術後は胃管癌の発生を念頭に置き長期にわたる定期的内視鏡検査が必要であると考えられる.
  • 古川 浩, 多田 哲也, 桑原 史郎, 中川 悟
    2000 年 61 巻 7 号 p. 1775-1779
    発行日: 2000/07/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    症例は16歳の女性.腹痛,嘔吐で当院内科に入院.腹部単純X線所見から上部消化管閉塞の疑いで保存的治療を行った. 2日後に腹痛増強し,胸部立位単純X線でfree airを,腹部CTで十二指腸の閉塞と腹水を認め,上腸間膜動脈性十二指腸閉塞症,消化管穿孔による汎発性腹膜炎の診断で外科転科,緊急手術となった.開腹にて上腸間膜動脈性十二指腸閉塞症に伴う胃拡張,胃底部の壊死性変化による胃穿孔と診断,胃部分切除, Treitz靱帯切離術を施行し,術後経過良好であった.腹痛を伴うSMA症候群では胃穿孔の合併も念頭におくことが重要と思われる.
  • 山田 治樹, 江口 英雄, 藤井 秀樹, 安留 道也, 松本 由朗
    2000 年 61 巻 7 号 p. 1780-1785
    発行日: 2000/07/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    全内臓逆位症症例の外傷性膵十二指腸損傷に対して,膵頭十二指腸切除術を施行し救命しえた1例を報告する.症例は46歳の女性.交通外傷による腹部打撲にて,救急車で当院に搬送された.胸部単純X線検査で右胸心と右横隔膜下に胃泡が認められ,腹部CT検査で内臓逆位と共に,膵頭部の腫大ならびに血腫と十二指腸壁の損傷が認められた.外傷性膵十二指腸損傷と診断し,受傷後約3時間目に緊急開腹した.開腹所見では,腹腔内臓器の位置はすべて左右逆転しており,血性腹水が約500ml,左傍結腸溝周囲に胆汁を混じた液体の貯留が認められた.さらに膵頭部と十二指腸下行脚は完全に離断していた.以上の所見により膵頭十二指腸切除術を施行した.膵頭十二指腸切除術を施行するにあたって,内臓逆位は特に障害とはならなかった.
  • 広利 浩一, 吉田 彰, 石川 靖二
    2000 年 61 巻 7 号 p. 1786-1791
    発行日: 2000/07/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    狭窄病変を伴った胃・十二指腸Crohn病は本邦では26例の報告例を認めるにすぎない.今回われわれは,十二指腸狭窄を示した高齢者のCrohn病の1切除例を経験したので報告する.症例は66歳,男性.約8年前より食後嘔吐が出現するが放置, 1週間前より食事摂取困難となり来院.上部消化管内視鏡において十二指腸に発赤した小隆起性病変の集簇を認め,また著明な狭窄を示し,十二指腸内への内視鏡挿入は不可能であった.上部消化管造影では,十二指腸球部より下行部にかけて約3cmにわたり,全周性の狭窄を認めた.胃十二指腸部分切除を施行.肉眼的には,十二指腸は幽門輪よりほぼ全周性に浮腫性に肥厚し,縦走潰瘍および敷石状変化を認めた.病理組織学的所見では著明な全層性の炎症性変化および非乾酪性肉芽腫が散見され,十二指腸Crohn病と診断した.術後1年の現在再発の所見なく,健在である.
  • 岡田 章一, 泉 俊昌, 齊籐 貢, 玉木 雅人, 広瀬 和郎, 山口 明夫
    2000 年 61 巻 7 号 p. 1792-1797
    発行日: 2000/07/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    症例は81歳,女性.腹痛と下血を主訴に受診.胃・全大腸内視鏡検査で出血源を認めず,回腸内に血液貯留を認めたため小腸からの出血を疑った.症状は保存的治療にて軽快し,いったん退院するも,発症後47日にてイレウス症状出現し再入院となった.小腸造影にて上部空腸に長さ30cmにわたる管状狭窄を認め,血管造影にて上腸間膜動脈は空腸第1枝を分岐後に閉塞を認めた.以上より虚血性小腸狭窄症と診断した.血液検査上,著しい低アルブミン血症を呈し中心静脈栄養でも改善しないため, 99mTcアルブミンシンチグラフィを施行した.シンチグラフィでは小腸狭窄部に一致した漏出所見を認め,蛋白漏出性腸症と診断した.本例に対して小腸部分切除を施行.狭窄部はTreitz靱帯より25cm肛門側の空腸で長さ33cmの管状狭窄であった.粘膜面にはUl-IIの潰瘍を伴っていた.虚血性小腸狭窄が原因による蛋白漏出性腸症は極めて稀であり,画像上蛋白漏出を証明できた貴重な1例を報告した.
  • 依田 紀仁, 田中 直行, 橋本 龍二, 宮地 和人, 高田 悦雄, 砂川 正勝
    2000 年 61 巻 7 号 p. 1798-1802
    発行日: 2000/07/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    症例は58歳女性,平成9年7月初旬より下血と全身倦怠感が出現し当院受診. Hb6.9g/dl, RBC249×104/μlと高度貧血を認め入院となった.入院後の上部・下部消化管検査では異常は認めなかった.小腸造影でTreitz靱帯より約10cm肛門側の空腸に深い潰瘍を伴う2型の腫瘤像を認めた.小腸内視鏡検査を施行し,同部位に潰瘍を伴う粘膜下腫瘍を認めた.生検を施行したが組織診断は得られなかった.超音波検査で約2cm大の腫瘤を認め,超音波ガイド穿刺吸引細胞診を施行した.結果はSpindle cellを認め筋原性腫瘍と診断され,平成9年8月27日小腸部分切除術を施行した.病理学的所見はstromal tumor, smooth muscle type, borderlineであった.下血を主訴とし腹部超音波ガイド穿刺吸引細胞診を施行し質的診断の補助となった小腸腫瘍を経験したので報告する.
  • 福田 直人, 館花 明彦, 永山 淳造, 秋山 竹松, 山川 達郎
    2000 年 61 巻 7 号 p. 1803-1806
    発行日: 2000/07/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    症例は19歳,女性.発熱,嘔気,嘔吐を主訴に近医受診,下腹部に腫瘤を認めたため当院に紹介入院となった.血液生化学検査ではWBC13300/mm3, CRP9.8mg/dlと炎症反応が亢進していた.腹部CT, US検査では内部に液体と気体を伴う長径約14cmの腹腔内腫瘍を認めた.腹腔内膿瘍としてまず抗生物質の投与を行った.血管造影では下腸間膜動脈からの腫瘍濃染像を認めたが, CFでは異常所見認められなかった. 23日目に開腹術を行ったところ,トライツ靱帯より15cmの空腸腸間膜対側に13.0×15.5×5.5cm大の巨大腫瘍を認め,中心壊死および空腸粘膜面との瘻孔を形成することにより膿瘍を合併していた.これに対して腫瘍を含めて空腸部分切除術を行った.病理組織学的には平滑筋肉腫であった.
  • 伊藤 慶則, 神谷 保廣
    2000 年 61 巻 7 号 p. 1807-1811
    発行日: 2000/07/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    症例は77歳,女性.右下腹部痛を主訴に近医を受診し,急性虫垂炎を疑われ,当院紹介となり,緊急手術を施行した.開腹すると,虫垂は約12×4cm大の腸詰様に腫大し,虫垂根部で時計針方向に360度捻転していた.虫垂粘液嚢腫軸捻転症と診断し,虫垂切除術を施行した.術前診断は困難であるが,腹部CT検査などにより,右下腹部の嚢胞性病変および回盲部へ向かう嘴状の像が認められれば,本症の診断が可能であると思われる.
    今回われわれは,極めて稀な虫垂粘液嚢腫軸捻転症を経験したので,本邦報告例を集計し,文献的考察を加えた.
  • 竹谷 剛, 金丸 仁, 横山 日出太郎, 橋本 治光, 白川 元昭, 吉野 吾朗
    2000 年 61 巻 7 号 p. 1812-1815
    発行日: 2000/07/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    虫垂杯細胞カルチノイドの1例を経験したので報告する.
    症例は54歳男性.右下腹痛および血便を主訴に,当科を受診した.右下腹部に鶏卵大の腫瘤を触知し,同部位に強い圧痛を認めた.超音波, CT上,回盲部付近に約5cmの腫瘤像を認め,腫瘤形成性虫垂炎の術前診断で開腹した.回腸を巻き込んだ硬い腫瘍と,結腸間膜に転移を思わせる硬いリンパ節を触知したため虫垂癌と術中診断し,回盲部切除,リンパ節郭清を行った.
    術後の病理組織学的検査により虫垂杯細胞カルチノイドと診断されたため補助化学療法を施行,術後11ヵ月を経過した現在,再発はみられていない.
  • 福岡 岳美, 花岡 農夫, 李 力行, 大内 慎一郎, 田中 雄一, 瀬戸 泰士
    2000 年 61 巻 7 号 p. 1816-1819
    発行日: 2000/07/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    81歳の女性で, 1年前から痴呆症状がみられていた. 10日前から腹痛があり,腹満感が増強してきたため当院を受診した.腹部の筋性防御が著明で,腹部単純X線写真,腹部CT検査で遊離ガス像を認めた.消化管穿孔の診断で緊急開腹術を行い,腹腔内には混濁した腹水を認め,下行結腸からS状結腸にかけて異物により多発穿孔を起こしていた.左結腸切除,洗浄ドレナージ,および横行結腸人工肛門造設を行った.切除した結腸にはビニール製の紐が充満しており,後に,患者がビニール製のゴザを蕎麦と思い食べたことがわかった.異食は痴呆の1症状であるが,痴呆患者は訴えが乏しく,重篤な状態になってから受診するため注意を要する.痴呆老人が腹痛を訴えて受診した場合は,異食の可能性も念頭に入れて,診察にあたる必要があると思われた.
  • 内藤 明広, 川原 勝彦, 岩田 宏, 安藤 由明, 羽田 裕司
    2000 年 61 巻 7 号 p. 1820-1824
    発行日: 2000/07/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    症例は66歳,女性で1998年6月に下腹部痛および嘔吐のため,入院した. 1997年2月に腹部大動脈瘤のため,人工血管置換術を受けている.大腸内視鏡と注腸によりS状結腸の全周性の狭窄が認められた.約2カ月の保存的治療でも狭窄は改善されず, 1998年9月に低位前方切除術を施行した.組織学的検索では,虚血性腸炎による壊死,線維化の所見が認められたが,悪性所見は無かった.その後,患者は閉塞性動脈硬化症による壊死のため,右大腿切断術を施行後,退院となった.自験例について文献的考察を加え報告する.
  • 石村 健, 若林 久男, 森 誠治, 臼杵 尚志, 前場 隆志, 前田 肇
    2000 年 61 巻 7 号 p. 1825-1828
    発行日: 2000/07/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    潰瘍性大腸炎では高度の大腸狭窄をきたすことは稀で,本邦では8例の報告をみるに過ぎない.今回,潰瘍性大腸炎による広範な横行結腸狭窄を認めた1例を経験したので報告する.患者は37歳,男性.昭和54年に腹痛,下痢を認め近医を受診し,潰瘍性大腸炎と診断された.平成10年10月8日より腹痛,嘔吐を認めたため近医を受診し,大腸内視鏡検査で横行結腸の全周性狭窄,注腸造影検査で肝彎曲部寄りの横行結腸に約10cmの全周性の高度狭窄が認められ,悪性腫瘍の合併を否定しえなかったため結腸右半切除術を施行した.病理組織検査の結果,粘膜,粘膜下層に好中球を主体とした炎症細胞の浸潤,固有筋層の肥厚,粘膜下層から漿膜下層にかけての線維化が認められた.悪性所見は認められなかった.
  • 戸谷 直樹, 藤江 由香, 福田 久乃, 小川 匡市, 立原 啓正, 山崎 洋次
    2000 年 61 巻 7 号 p. 1829-1832
    発行日: 2000/07/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    症例は, 72歳男性.発熱と咳漱を主訴に内科に入院後,急激な両下肢痛を認め急性両側腸骨動脈閉塞症の診断で血栓除去術と大腿-大腿動脈バイパス術を施行した.術中に摘出した血栓よりグラム陰性桿菌を検出し,感染性心内膜炎の塞栓子によるものと判断して抗生剤治療を行っていた.その経過中に急速に増大した腸骨動脈瘤と横行結腸の早期癌が指摘された.細菌性動脈瘤と横行結腸癌の合併と診断し,一期的手術を施行した.手術は,動脈瘤人工血管置換術を先行し,後腹膜を密に縫合して術野を隔離してから横行結腸部分切除を行った.術後は順調に経過し,術後58日目に僧帽弁形成術を行った後軽快退院した。細菌性動脈瘤と大腸癌の併存症例に対して,一期的手術を選択し,良好な結果を得たので報告する.
  • 星野 敏彦, 遠藤 正人, 青木 泰斗, 三好 弘文, 角田 洋三, 落合 武徳
    2000 年 61 巻 7 号 p. 1833-1836
    発行日: 2000/07/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    α-fetoprotein(以下AFP)は,原発性肝細胞癌,悪性奇形腫の有力な腫瘍マーカーであると同時に,胃癌,膵癌,胆道癌,十二指腸癌,大腸癌など他の消化器癌でも高値を示すことがあるがその多くは前腸由来臓器の癌であり,後腸由来の大腸癌で高値を示すことは極めて稀である.今回われわれは横行結腸のAFP産生癌を経験したので報告する.患者は73歳男性,主訴は全身倦怠感,精査ののち横行結腸癌の診断となり横行結腸切除術,胃部分切除術,回腸部分切除術を施行した.組織型はpoorly differentiated adenocarcinomaであり,後に施行された酵素抗体間接法による免疫染色によりAFPが多数の腫瘍細胞に強陽性であった.われわれが調べた限りにおいて, AFP産生性大腸腫瘍は,自験例も含め本邦で38例であった.
  • 猪熊 滋久, 石田 秀行, 大澤 智徳, 傍島 潤, 中村 浩一, 出月 康夫
    2000 年 61 巻 7 号 p. 1837-1841
    発行日: 2000/07/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    結腸癌治癒切除後の骨盤内再発に対し,治癒切除し得た報告は極めて少ない.今回, S状結腸癌術後の腹壁・骨盤内再発に対し,治癒切除し得た興味ある1例を経験したので報告する.症例は38歳,女性.他院にてS状結腸癌に対しS状結腸切除 (D2) 施行, DukesBの高分化腺癌であった.術後経過観察中にCEA値の上昇とともに増大する骨盤内腫瘍を認め,精査・加療目的で当科紹介入院.触診上腹壁に3cm大の腫瘤,またCT, MRIにて直腸子宮窩に径5cm大の腫瘤を認めた以外に再発を疑う所見を認めなかった.初回手術後19ヵ月目に再開腹した.直腸,子宮,両側付属器とともに腫瘍をen blocに切除し,腹壁の腫瘤も同時に切除した.病理組織学的には,前回手術時の組織像とほぼ同一の高分化腺癌で,再発と診断した.術後経過は良好で,外照射50Gyを行い,退院.術後11ヵ月経過した現在,転移・再発の徴候を認めていない.
  • 杉山 昌生, 坂梨 四郎, 小川 博暉, 馬場 信雄
    2000 年 61 巻 7 号 p. 1842-1847
    発行日: 2000/07/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    症例1は, 17歳女性で,肛門周囲痛を主訴に来院した.肛門周囲膿瘍疑いで入院したが,膿瘍ではなく実質性腫瘍だったため,一部を切除し,検索した結果,肛門括約筋原発と考えられる胞巣型横紋筋肉腫と判明した.腹会陰式直腸切断術を施行し,術後,補助化学療法(VAC療法)と放射線療法を行った. 6年9カ月,再発なく経過している.症例2は, 21歳女性で,左鼠径リンパ節腫張と肛門周囲痛を主訴に来院した.肛門周囲腫瘍による肛門狭窄のため,人工肛門造設した.また,一部を切除検索し,胞巣型横紋筋肉腫と判明するも,既に骨転移,リンパ節転移をきたしており,術後3カ月で癌死した.また,本邦報告例25例について検討した.近年,化学療法の改善にて生存率がよくなったものの,やはり,完全な腫瘍の切除と,適切な術後補助療法が必要である.
  • 小森山 広幸, 榎本 武治, 田中 一郎, 萩原 優, 品川 俊人
    2000 年 61 巻 7 号 p. 1848-1852
    発行日: 2000/07/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    症例は37歳,女性.平成10年6月,検診にて肝臓の嚢胞性疾患を指摘され受診した.血液生化学検査において肝機能障害,腫瘍マーカーの上昇は認めなかった.腹部CT,超音波検査では肝後区域に6cm大の多房性嚢胞性腫瘍を認めた.画像では嚢胞壁は薄く平滑であるが,一部は不均一に厚く,腫瘍性変化を疑った.確定診断を目的に超音波ガイド下に腫瘤を穿刺し内容液を吸引した.貯溜液は漿液性でCEAは2,210ng/ml, CA19-9は120,000U/mlを示した.肝嚢胞腺腫と診断したが,肝嚢胞腺癌も否定し得ず腫瘍切除を行った.摘出標本で肝嚢胞腺腫の診断を得た.肝嚢胞腺腫は稀な疾患で現在までに34例が報告されているにすぎない.術前に肝嚢胞腺腫と肝嚢胞腺癌を鑑別するのは困難であるとされ,また肝嚢胞腺腫が癌化したと考えられる肝嚢胞腺癌の報告もある.肝嚢胞腺腫に対しては外科的切除が必要である.
  • 長 剛正, 中村 純太, 富田 春郎, 金田 利明, 遠山 洋一, 古川 良幸, 平井 勝也
    2000 年 61 巻 7 号 p. 1853-1856
    発行日: 2000/07/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    胆嚢癌や肝内および肝外の胆管癌などの胆道癌の多くは腺癌であり,稀にその一部に扁平上皮癌の成分を有する腺扁平上皮癌がみられることがあるが,胆道系の扁平上皮癌は極めて稀な疾患である.今回,われわれは黄疸を主訴に来院された63歳の男性に下部胆管原発の扁平上皮癌を認め,膵頭十二指腸切除術を施行した症例を経験したので文献的考察を加え報告する.その発生に関しては胆管上皮の扁平上皮化生からの癌化説や,あるいは腺癌の扁平上皮癌化説が優勢である.今後,同様の症例を集積し検討を加える必要があると思われた.
  • 永野 靖彦, 長堀 薫, 田中 邦哉, 池 秀之, 渡会 伸治, 嶋田 紘
    2000 年 61 巻 7 号 p. 1857-1861
    発行日: 2000/07/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    症例は71歳の女性.平成5年5月18日上行結腸癌で結腸右半切除, D3郭清を施行した.病理診断は深達度ssの高分化腺癌で, ly0, v0, n0であった.平成9年7月31日,肝S4の転移巣に対して拡大左葉切除術を施行した.平成10年6月黄疸の精査により,膵頭部後面の2.5cm大の腫瘤による閉塞性黄疸と診断した.大腸癌肝転移からの膵頭後面リンパ節転移と診断し,平成10年6月24日膵頭十二指腸切除術を施行した,患者は術後1年を経過し明らかな再発を認めることなく生存中である.大腸癌肝転移からのリンパ節再発に対しても,他に再発巣が認められないときは,積極的な手術適応も考慮に入れられるべきであると考えられた.
  • 酒井 哲也, 崔 修逸, 豊川 晃弘, 長畑 洋司, 衣笠 達也, 深野 茂
    2000 年 61 巻 7 号 p. 1862-1866
    発行日: 2000/07/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    遅発性脾破裂は,急性脾破裂と異なり保存的治療が奏効することは極めて稀である.今回,遅発性脾破裂に対し保存的治療を行ったが再出血したため動脈塞栓術を行い,止血しえた症例を経験したので報告する.
    症例は64歳男性.転倒し左側胸部を強打し, 3日後当院受診.第2頸椎棘突起骨折,左第1, 2, 8, 9, 右第2助骨骨折の診断で入院となった.受傷後10日目急にショック状態となり,腹部CTにて脾実質内血腫および腹腔内出血を認め遅発性脾破裂と診断し保存的治療を行った.しかし,受傷後12日目再び急激な血圧低下と貧血の進行を認め,腹部CTにて再出血を確認し脾動脈塞栓術を行った.その後の経過は良好で第65病日に退院した.
    遅発性脾破裂においても注意深い観察のもと,急性脾破裂と同様に保存的治療は可能であり,特に動脈塞栓術は極め有効な治療方法の一つと考えられた.
  • 瀬戸 達一郎, 猿渡 香子, 山田 武男, 谷内 法秀, 後藤 敏, 小出 直彦, 浜口 實
    2000 年 61 巻 7 号 p. 1867-1871
    発行日: 2000/07/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    腹腔内に破裂した脾膿瘍の1例を経験したので報告する.症例は71歳,男性で腹痛,嘔吐を主訴に内科を受診した.理学的所見にて腹部は板状硬,びまん性に圧痛を認め汎発性腹膜炎の様相を呈していた.血液検査で白血球核左方移動とCRPの高値を認めた.腹部超音波, CT検査では脾臓の軽度腫大とその内部に膿瘍を疑う占拠性病変を認め,腹水の貯留も認められた.以上より脾膿瘍および汎発性腹膜炎を疑い,同日緊急手術を施行した.左上腹部は炎症所見が高度で膿の貯留を認め,脾膿瘍が腹腔内に破裂したものと考えられた.脾摘を施行し,腹腔内を洗浄後,ドレーンを挿入して手術を終了した.術後敗血症,多臓器不全のため,第50病日に死亡した.脾膿瘍の死亡率は抗生剤の普及により改善しているが,われわれの症例のように破裂を来した場合の死亡率は高率である.救命のためには早期診断,早期治療および術後合併症の予防が重要であると考えられた.
  • 根本 洋, 池田 忠明, 水上 博喜, 金田 万里子, 石橋 一慶, 酒井 均, 出浦 照國
    2000 年 61 巻 7 号 p. 1872-1876
    発行日: 2000/07/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    症例は48歳男性.腹膜炎,左腎摘出術の既往がある. 44歳時より腎機能障害がみられ,平成10年12月に血液透析が導入されたが,本人の希望により腹膜透析を行うことになり腹腔鏡下CAPDカテーテル挿入術を選択した.術中, 2mm硬性直視鏡ミニサイトゴールド®を挿入し腹腔内を検索したところ,癒着は高度であった.それをマイクロシアーズ®で剥離した後, 10mmポートよりCAPDカテーテルを挿入した.カテーテルをダグラス窩に誘導した後,腹膜の縫縮をエンドクローズ®で行った.皮下トンネルはそれぞれの刺入部を利用し作成した.腎不全患者に行われるCAPDカテーテルの挿入は,従来腹部手術の既往のあるものは除外される傾向にあった.しかし,この分野への腹腔鏡の導入により腹腔内癒着症例に対してその技術を応用した報告も散見されるようになった.今回われわれは腹腔内高度癒着症例に対し, 10mmのトラカールをカテーテルの挿入口として利用し又細径器具を用いることで最少かつ最小の手術創で同手技を成しえたので報告する.
  • 佐藤 哲也, 遠山 啓亮, 野川 辰彦, 橋爪 聡
    2000 年 61 巻 7 号 p. 1877-1881
    発行日: 2000/07/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    子宮内膜症は,子宮内膜組織が異所性に増殖する疾患で,子宮以外の臓器に発生する外性子宮内膜症のうち,腸管子宮内膜症の報告が増加している.今回,比較的稀な腸閉塞をきたした回腸子宮内膜症の1例について報告し,本邦報告例23例について検討した.
    症例は25歳女性で,右下腹部痛で来院した.腹部所見より急性虫垂炎,限局性腹膜炎が疑われ,緊急手術を施行した.虫垂および卵巣は肉眼上正常で,回腸末端に輪状狭窄を認め小腸壁の生検と狭窄形成術を施行した.病理診断は腸管子宮内膜症であった.術後腸閉塞が改善せず回盲部切除術を施行した.
    腸管子宮内膜症は診断が困難であるため,腸閉塞の原因疾患として念頭におき,診療にあたる必要がある.
  • 佐藤 真輔, 内田 陽介, 酒井 康孝, 前川 博, 菅野 雅彦, 坂本 修一, 冨木 裕一, 坂本 一博, 溝渕 昇, 鎌野 俊紀, 鶴丸 ...
    2000 年 61 巻 7 号 p. 1882-1887
    発行日: 2000/07/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    症例は31歳女性. 1996年に子宮内膜症と診断されホルモン療法を施行し,一度は軽快したが, 1997年より月経に一致した排便時痛,左背部痛が出現. 1998年12月当院婦人科で,腹腔鏡下卵巣チョコレート嚢腫摘出術を施行したところ,直腸, S状結腸は左卵巣と癒着し,ダグラス窩も強固に癒着していた.術後,大腸X線,内視鏡検査により腸管子宮内膜症と診断された.狭窄症状が強く,手術適応と考えられたが,この時点での手術は困難と考え, LH-RH analogを用いた術前ホルモン療法(酢酸leuprorelin 3.75mg/month)を5カ月施行した.ホルモン療法後は,排便時痛は消失したが,再発の可能性が高いと判断し, 1999年6月1日,低位前方切除術,左尿管部分切除術を施行した.開腹時,腹腔内の癒着は著明に改善しており,術前ホルモン療法は非常に有用であったと考えられた.
  • 唐司 則之, 鍋谷 圭宏, 松田 充宏, 松崎 弘志, 渡辺 義二, 佐藤 裕俊
    2000 年 61 巻 7 号 p. 1888-1894
    発行日: 2000/07/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    乳癌術後tamoxifen (TAM)投与中に子宮内膜癌を発症した2例を経験した.症例1は70歳でTAM投与中7年3カ月頃に不正出血出現,子宮内膜掻爬診で悪性で,高分化腺癌, Ib, n(-)だった.症例2は66歳, TAM投与1カ月頃より時々不正出血を認め,繰り返し子宮内膜細胞診にて癌で,腺扁平上皮癌, Ib, n(-)だった.文献上,ほとんどが早期癌で予後良好のため, TAM併用乳癌症例では子宮内膜の定期的検査は必ずしも厳密に行う必要はないと考えられる.しかし,症状出現の場合は,子宮内膜の生検を含む経過観察を十分に行うべきである.
  • 海江田 衛, 浜田 信男, 石崎 直樹, 井畔 能文, 荒田 憲一
    2000 年 61 巻 7 号 p. 1895-1899
    発行日: 2000/07/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    症例は46歳,男性.感染性心内膜炎の診断で僧帽弁置換術を施行された.術後27日目に突然の腹痛と吐下血が出現し,腹部造影CT検査で上腸間膜動脈瘤破裂と診断され,緊急手術が行われた.上腸間膜動脈を遮断した後に瘤を切開し,内側より縫合止血し得た.また,十二指腸空腸脚に動脈瘤の穿破を認め,同部の十二指腸を含め瘤を可及的に切除した.これより遠位側腸管の虚血はみられず,血行再建術は施行しなかった.病理学的には動脈硬化性変化はなく,感染性心内膜炎からの感染性塞栓に起因した動脈瘤と考えられた.術後に動脈瘤の再発,再出血がみられ, 2度の開腹止血術と1度の動脈塞栓術を必要とした.上腸間膜動脈瘤破裂例はオリエンテーションがつきにくく,縫合止血のみの手術となり再出血を引き起こす事が多い.本症例のごとく感染が関与している場合はさらに治療に難渋する場合が多く,早期の適切な外科的処置と術後の厳重な経過観察が重要であると考えられた.
  • 石崎 康代, 中塚 博文, 眞次 康弘, 豊田 和広, 大城 久司
    2000 年 61 巻 7 号 p. 1900-1903
    発行日: 2000/07/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    腸間膜裂孔ヘルニアは内ヘルニアの1つで,腸間膜に生じた異常裂孔に腸管が嵌入する比較的稀な疾患である.われわれは上行結腸の腸間膜という極めて稀な部位での腸間膜裂孔ヘルニアを経験した.症例は91歳女性.臍下部痛を主訴に近医受診し,イレウスの診断にて当院紹介入院となった. long tubeによる保存的治療を行ったが症状の改善が得られなかったため発症後12日目に手術を行った.腹腔内を検索すると後腹膜への固着が不十分な上行結腸の腸間膜の一部に約4cm大の異常裂孔が存在し,トライツ靭帯から約100cm肛門側の小腸が約70cmにわたって背側へ向かって嵌入していた.腸管の血流障害は認めずヘルニアの整復および裂孔の閉鎖を行った.術後経過は良好で術後21日目に退院となった.
  • 市川 英幸, 高木 哲, 池野 龍雄, 久保 直樹
    2000 年 61 巻 7 号 p. 1904-1908
    発行日: 2000/07/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    特発性大網捻転症は急性腹症として発症する比較的稀な疾患であり,本邦においても自験例を含め48例の報告があるにすぎない.今回われわれは本症の1例を経験したので報告する.
    症例は69歳の男性,右下腹部痛を主訴に来院した.来院時,発熱,白血球増多, CRP上昇,右下腹部に圧痛,筋性防御, Blumberg徴候を認めた.入院翌日の腹部超音波検査で右回盲部に腹水があり, CT上低吸収域と高吸収域が混在する腫瘤像があった.穿孔性急性虫垂炎の診断で開腹した.中等度の血性腹水があり,大網は反時計回りに2回転捻転しており,特発性大網捻転症であった.手術は大網壊死の切除と虫垂切除を施行した.病理組織学的にはうっ血と出血が認められた.術後2日目一過性の精神症状を出現したが,術後9日目に退院した.
    特発性大網捻転症は稀な疾患であるが急性腹症に遭遇した場合,本疾患も鑑別診断の1つとして診察を行うことが重要である.自験例を含め,本邦報告例について文献的考察を加え報告した.
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