日本臨床外科学会雑誌
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61 巻, 9 号
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  • アンケート調査によるD2リンパ節郭清との比較
    荒井 邦佳, 岩崎 善毅, 大橋 学, 高橋 俊雄
    2000 年 61 巻 9 号 p. 2247-2251
    発行日: 2000/09/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    進行胃癌に対する大動脈周囲リンパ節郭清(D4郭清)が男性性機能に及ぼす影響について, D2郭清例を対照としてアンケート調査を行った. D4郭清の範囲は, No.16 a 2 inter, pre, lateroおよびNo.16 b 1 inter, prelateroであり,術中に転移が疑われた場合以外にはNo.16 b 2の郭清は行っていない.
    アンケートの回収率は71%で79例(D4群: 37例, D2群: 42例)が解析された.その結果, D2郭清例に比較してD4郭清例では勃起障害と射精障害ともに術後3カ月以上に亘って回復が遅延する症例が有意に多くみられたものの,勃起障害(D2群: 14%, D4群: 18%)および射精障害(D2群: 20%, D4群: 18%)の頻度に差はなかった.その発現機序については,神経切除が直接的な原因とは考えがたく,精神的な要因など新たな原因を追求していく必要があると考えられた.
  • 細谷 好則, 渋澤 公行, 小林 伸久, 横山 卓, 上野 勲夫, 腰塚 史朗, 土屋 一成, 和気 義徳, 金澤 暁太郎, 永井 秀雄
    2000 年 61 巻 9 号 p. 2252-2260
    発行日: 2000/09/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    食道癌の抗癌剤感受性試験の臨床応用に対する検討を行った.感受性試験には組織培養法にMTTを組み合わせたhistoculture drug response assay (HDRA)を用い, cisplatin (CDDP), 5-fluorouracil (5-FU)での腫瘍発育阻止率[Inhibition Index:I. I. (%)]を算出した.まず,手術で摘出した12標本で検討したところ, 83%で判定が可能であった.有効率(I. I. が50%以上)は, CDDPおよび5-FUでそれぞれ20%, 38%であった.一般に報告されている食道癌の化学療法の奏効率と,有効率が近似しており,食道癌でのHDRA法による感受性試験の導入の妥当性が示唆された.次に,未治療の進行食道癌患者に対し内視鏡による生検材料を用いて感受性試験を行い,術前化学療法の効果と比較した.対象は15例で, CDDPおよび5-FUのI. I.は手術標本のI. I.に比べ有意に高かった.術前化学療法のX線縮小率と5-FUのI. I.に相関を認めた(r=0.8).摘出標本での術前化学療法の組織学的効果とCDDPのI. I.にも相同性が認められた.感受性結果と転帰との評価には症例数を追加する必要があると考えられるが,感受性が高い症例で長期生存を認め,術前生検材料を用いた感受性試験の臨床応用の可能性が示された.
  • 加瀬 肇, 戸倉 夏木, 鷲沢 尚宏, 下山 修, 河野 明彦, 石井 紀行, 斉藤 直康, 寺本 龍生, 小林 一雄, 平野 敬八郎
    2000 年 61 巻 9 号 p. 2261-2268
    発行日: 2000/09/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    stage II, III胃癌術後縫合不全合併例16例を対象とし, Tリンパ球に対する抗原提示能からみた生体免疫能の変化とその予後に及ぼす影響を,免疫学的指標の推移と5年生存率より,非合併例30例をコントロールとして検討した.術後2週までのSIRS陽性日の合計は縫合不全群で平均9.2日(コントロール群2.1日)と明らかな差が生じた.サイトカインの変動では縫合不全群でIL-6の二相性の上昇とIL-2産生能の低下遷延を認め,リンパ球サブセットのCD 4+2 H 4-細胞比の低下は3カ月間持続し, CD 11b+CD 8 bright+細胞比は1カ月まで上昇した. 5年生存率ではstage II, IIIともに縫合不全群が低下し,特にstage IIIでは顕著であった.胃癌術後の縫合不全による長期SIRS合併により,後期適応免疫はTh 2サイトカイン優位となり,長期に細胞性免疫能低下をきたし,再発や予後にも影響を及ぼす可能性が示唆された.
  • 菅原 元, 山口 晃弘, 磯谷 正敏, 原田 徹, 金岡 祐次, 高橋 吉仁, 李 政秀, 芥川 篤史, 鈴村 潔, 赤川 高志, 臼井 達 ...
    2000 年 61 巻 9 号 p. 2269-2275
    発行日: 2000/09/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    リンパ節郭清を伴う膵頭十二指腸切除術を施行した十二指腸乳頭部癌49例を対象として,臨床病理学的検討を行い,外科的治療成績向上のために予後規定因子を明らかにするとともに,適切なリンパ節郭清も検討した. 49例の累積5年生存率は57.1%であった.単変量解析,多変量解析で検討した結果,有意な予後規定因子は十二指腸浸潤,膵臓浸潤,リンパ節転移であった.肉眼的に潰瘍形成を伴う乳頭部癌は膵臓浸潤と十二指腸浸潤とリンパ節転移を高率に認め,腫瘤形成型乳頭部癌に比べ有意に予後が不良であった.乳頭部癌に対しては上腸間膜動脈根部リンパ節郭清を重点とした2群リンパ節郭清を伴う幽門輪温存膵頭十二指腸切除術が標準術式として適切である.
  • 稲吉 厚, 坂本 快郎, 徳永 伸也, 村本 一浩, 中村 匡彦, 守安 真佐也, 有田 哲正, 八木 泰志
    2000 年 61 巻 9 号 p. 2276-2281
    発行日: 2000/09/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    最近の6年間に経験した,非寄生虫性肝嚢胞症例のうち,エコーガイド下に塩酸ミノサイクリンの単独1回注入例6例と塩酸ミノサイクリンと炭酸ガスの併用1回注入例8例において, 1年以上経過観察を施行し,治療効果を比較検討した.その結果,塩酸ミノサイクリン単独群では6例中4例で80%以上の縮小率が得られたが,他の2例では70%以下の縮小率であった.しかし,塩酸ミノサイクリンと炭酸ガス併用群では,全例で90%以上の縮小率が得られたことから, 1回注入療法で十分であり,低侵襲で短期間の治療が可能であると考えられた.また,併用療法後の経過観察によると,経過とともに肝嚢胞は徐々に縮小し,ほぼ1年後には著明な嚢胞縮小が得られたことから,効果判定は1年経過後にすべきであり,早期の再注入は避けるべきであると考えられた.
  • 藤岡 秀一, 吉田 和彦, 柳澤 暁, 畝村 泰樹, 鈴木 旦麿, 小林 進, 三澤 健之, 青木 照明, 山崎 洋次
    2000 年 61 巻 9 号 p. 2282-2287
    発行日: 2000/09/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    膵管状腺癌切除例61例に対して, Vascular endothelial growth factor (VEGF), Thymidine phosphorylase (TP), basic fibroblast growth factor (bFGF)について免疫組織染色を行い, microvessel count (MVC),再発形式,予後との関連について検討した.単変量解析ではts, pw, stage, curability, MVC, TP, bFGFの7因子が有意(P<0.05)で,多変量解析ではpwとbFGF (P=0.007, 0.048; hazard ratio=3.8, 2.2)の2因子が独立した予後因子であった. MVCとの比較ではTP (P=0.008)とbFGF (P=0.022)が有意にMVCと相関し, VEGFとの間には有意な相関を認めなかった.再発形式ではTP (P=0.0006), bFGF (P=0.005), MVC (P<0.0001)が有意に肝転移率と相関した.本研究から膵管状腺癌における腫瘍血管新生はVEGFよりもTPとbFGFに依存し,術後肝転移を促進している可能性がある.
  • 田中 暢之, 角田 元, 小河原 忠彦, 岩浅 武彦, 松本 由朗
    2000 年 61 巻 9 号 p. 2288-2292
    発行日: 2000/09/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    1997年9月より1999年11月までの27カ月間に,再発・嵌屯例を除いた成人鼠径・大腿ヘルニア36例にmesh-plug法(本法)を施行し,硬膜外麻酔(硬麻)の18例と,局所麻酔(局麻)の18例について臨床所見を比較した. Rutkowらの原法に準じて手術を施行した.術後疼痛は軽微で, mesh感染例はなく,観察期間中に再発例は認められなかった.入室から手術終了までの所要時間は硬麻群よりも局麻群が短かく,術中の循環動態も局麻群が硬麻群に比べて安定しており, poor risk症例に対してもより安全に施行できた.術後鎮痛剤の使用は局麻群と硬麻群では有意な差は認めなかったが,局麻群では術後導尿も不要で,麻酔の手技が簡単で機材も安価であり,経済負担も軽減した.以上の結果から本法による成人の鼠径・大腿ヘルニア修復は局麻の方が硬麻より有用であり,本法における標準的麻酔法になると考えられた.
  • 大内田 次郎, 豊田 清一, 上田 祐滋, 佐藤 勇一郎, 林 透
    2000 年 61 巻 9 号 p. 2293-2296
    発行日: 2000/09/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    症例は48歳,女性.左乳房腫瘤を主訴に当科を受診した.左乳房内上部領域に1.5cm大の腫瘤を認め,穿刺吸引細胞診の結果,粘液癌を否定できず腫瘤摘出術を施行した.病理組織所見で悪性粘液瘤様腫瘍と診断されたため乳房扇状部分切除術を施行したが,切除断端に腫瘍細胞を認めたため全乳房切除術を施行した.切除標本では乳管の拡張は広範囲にみられ,異型過形成ならびに乳管内癌と診断される部分が散在性に認められた.乳腺粘液瘤様腫瘍は低悪性度であることから縮小手術が妥当といわれているが,本例のように腫瘍病変が広範囲に進展している症例もあることから,詳細な臨床的,病理学的検索の上,適切な術式を選択することが必要である.
  • 小澤 広太郎, 木下 学
    2000 年 61 巻 9 号 p. 2297-2301
    発行日: 2000/09/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    症例は53歳,男性.一昨年,左腋窩に鶏卵大の腫瘤が出現し当科を受診するも,自然消退傾向を示したため自己判断にて放置.平成11年5月14日腫瘤の急速な増大を主訴に当院再診.腫瘍は左腋窩に10cm×15cmの大きさで,弾性硬,境界明瞭,辺縁整,可動性は不良であった.各種検査の後,肉腫を含めた軟部組織腫瘍の疑いにて腫瘍切除を施行したところ,病理検査にて悪性黒色腫のリンパ節転移と診断された.母斑切除の既往などを再度詳しく問診すると5年前に背部の母斑切除の既往があり,前院に問い合わせた結果悪性黒色腫であった.なお,本人や家族には告知されていなかった.術後経過は良好で,一旦退院後他院皮膚科にて治療中である.以上,腋窩腫瘤で見つかった遅発再発性悪性黒色腫の1例を報告する.
  • 大城 敏, 久貝 忠男, 砂川 一哉, 友利 寛文, 仲間 司, 砂川 亨
    2000 年 61 巻 9 号 p. 2302-2307
    発行日: 2000/09/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    症例1は48歳,男性.胸部異常陰影を指摘され,左縦隔腫瘍の診断にて手術を施行した.手術は開胸下に腫瘍とそれに付着する索状物をen blocに摘出した.病理組織診断は神経鞘腫であった.術後,左反回神経麻痺による嗄声を認め,腫瘍は反回神経分岐部より中枢側に発生した迷走神経由来の神経鞘腫であったと判断した.症例2は51歳,女性.胸部異常陰影を指摘され, CT, MRI等より,反回神経分岐部より末梢側に発生した右迷走神経由来の神経原性腫瘍と術前診断し,手術を施行した.手術は胸腔鏡下に腫瘍の上下の迷走神経を切断し摘出した.病理組織診断は神経鞘腫であった.術後は嗄声などの合併症もなく退院した.胸腔内迷走神経原性腫瘍は,術前診断が困難であり,頻度は低いが悪性例の報告もあることから,完全切除が望ましいが,術後合併症の問題などから,症例ごとに治療方針を考慮しなければならない.本邦報告65例の検討と共に報告する.
  • 上原 忠大, 豊見山 健, 与那覇 俊美, 當山 勝徳
    2000 年 61 巻 9 号 p. 2308-2311
    発行日: 2000/09/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    肺原発のグロームス腫瘍の1例を経験したので報告する.症例は71歳,男性. 1997年7月,心窩部痛を主訴に来院し,胃内視鏡検査で胃炎を指摘,制酸剤投与で軽快した.この時の胸部単純X線写真で左下肺野に異常陰影を指摘され,胸部CT検査で左S10に位置する径2cmの腫瘤陰影が認められた.気管支鏡による細胞診で診断が得られず,同年10月開胸術を施行した.術中迅速で悪性を否定,左下葉部分切除を行った.病理組織所見上,光顕像ではグロームス腫瘍およびカルチノイドも考えられたが,電顕像や免疫染色で腫瘍細胞が平滑筋細胞の特徴を有していたことから,グロームス腫瘍が最も考えられた.われわれが検索し得た範囲では世界で8例目と稀な症例であると思われたため若干の文献的考察を加えて報告する.
  • 梅森 君樹, 小谷 一敏, 牧原 重喜
    2000 年 61 巻 9 号 p. 2312-2316
    発行日: 2000/09/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    症例1は69歳,男性.肺癌(扁平上皮癌)で右下葉切除術を施行した.術後9日目に発熱あり,胸水の培養にてmethicillinresistant Staphylococcus aureus (MRSA) を検出し,バンコマイシン (VCM) を使用した. 12日目にCTにて両肺側にびまん性の網状陰影を認め, 30日目には呼吸困難,低酸素血症を伴い,胸部X線, CTにて陰影の増悪を認めた.気管支肺胞洗浄液中好酸球が20%と増加を認め,ステロイドパルス療法を施行した.自覚症状の改善と血液ガスおよび胸部陰影の著明な改善が得られた.症例2は83歳,男性.肺癌(腺癌)にて左上葉切除術を施行した.術後30日目に咳と発熱があり,末梢血白血球19,620/μl,好酸球65.5%と上昇,胸部X線, CTで右上葉に間質性陰影が出現した.プレドニンを30mg/日にて開始,著効をみた.肺癌術後健側に微細な間質性陰影がすれば,本症をも疑いステロイド・パルス療法を考慮すべきものと考えられた.
  • 前浦 義市, 斎藤 眞文, 上田 進久, 松永 征一, 岡本 茂
    2000 年 61 巻 9 号 p. 2317-2320
    発行日: 2000/09/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    食道癌切除時の郭清されたリンパ節に悪性リンパ腫をみとめた稀な症例を経験したので報告する.症例は67歳男性.嚥下困難を主訴として上部消化管造影にて食道癌を疑われ精査,加療目的にて入院となる.造影所見ではMtに長径4.0cmの陰影欠損をみとめ,内視鏡では表在隆起型の所見を示し,生検で中分化扁平上皮癌と診断された. CTでは領域リンパ節の腫大,他臓器浸潤はなく,また遠隔転移もないため一期的手術が可能と診断し,胸部食道亜全摘,胃管利用胸骨後再建(頸部吻合,D2) を行った.術後の病理診断では中分化扁平上皮癌, pT1bpN0M0, stage I, aw(-) ow(-), ly1, v0だったが105番リンパ節に悪性リンパ腫 (NHL, diffuse mixed type) を併存していた.免疫組織学的検討ではMT-1陽性であり, T cell typeと診断された.術後経過は良好であり5年10カ月の現在いずれの腫瘍の再発もみとめていない.
  • 久瀬 雅也, 濱田 賢司, 高橋 宏明, 岡村 一則, 小坂 篤, 勝田 浩司
    2000 年 61 巻 9 号 p. 2321-2325
    発行日: 2000/09/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    症例は68歳男性,心窩部不快感を主訴に来院した.内視鏡検査にて胸部下部食道に腫瘍を認め,生検にて低分化扁平上皮癌と診断された.胸部食道全摘,および術後胆嚢炎予防のために胆嚢摘出術を施行.腫瘍は肉眼的に一部黒色調を呈する4.0×3.5cm大の2型腫瘍で組織学的に悪性黒色腫と診断された.胆嚢にも3mm大のポリープ様病変を認め転移と診断された (pT2N2M1, pStage IVb). 他に原発巣を認めなかったことから食道原発と考えられた.術後化学療法を施行したが大動脈周囲リンパ節および肝転移が出現し,術後5カ月で死亡した.食道原発悪性黒色腫は稀な疾患で,その予後は極めて不良である.また悪性黒色腫の胆嚢転移は極めて稀で,本邦報告例は3例にすぎず,食道原発例の報告はない.胆嚢転移を伴った食道原発悪性黒色腫の切除例を報告し若干の文献的考察を加えた.
  • 大塚 英郎, 和田 靖, 阿部 道夫, 浅野 重之, 新谷 史明
    2000 年 61 巻 9 号 p. 2326-2330
    発行日: 2000/09/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    出血による著明な貧血を呈し,可及的早期に外科的切除を必要とした巨大な胃inflammatory fibroid polypの1例を経験したので報告する.
    症例は64歳男性.心窩部痛および黒色便を主訴に来院.上部消化管内視鏡検査にて胃体部小彎に約7cmの巨大な胃粘膜下腫瘍が認められ,表面にびらん・出血を伴っていた.腹部超音波検査,超音波内視鏡検査,腹部CT検査などから脂肪腫を疑い,内視鏡下に止血術を繰り返した.しかしながら,入院後に貧血が急速にすすんだため,保存的治療を断念し,入院第12病日に幽門側胃切除術を施行した. 7×5×2cm の粘膜下腫瘍であり,病理組織学的検査の結果,好酸球をはじめとする炎症性細胞の浸潤と線維化が著明で,巨大な胃inflammatory fibroid polypと診断された.
  • 溝江 昭彦, 小林 和真, 山口 淳三, 井沢 邦英
    2000 年 61 巻 9 号 p. 2331-2334
    発行日: 2000/09/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    胃粘膜下膿瘍と潰瘍性変化を合併し複雑な組織像を呈した胃迷入膵の1例を経験したので報告する.患者は47歳,男性.飲酒,刺身食後に蕁麻疹が出現し近医を受診.胃内視鏡検査にて胃病変を認められ,当院を紹介された.胃X線検査,胃内視鏡検査で胃体上部を中心にヒダの腫大と壁の硬化を伴うなだらかな隆起性病変を認めた.腹部MRI検査では胃壁の肥厚像がみられたが, Gaシンチで集積像を得られなかった.上記の術前検査所見および術中の肉眼・触診所見より4型胃癌を強く疑い,リンパ節郭清を伴う胃全摘術を施行した.切除標本では,胃体上部小蛮を中心に粘膜側に潰瘍性変化を合併する粘膜下腫瘍を認めた.割面は淡黄色調の腫瘤と周囲の線維性変化を広範囲に認めた.組織学的には,周囲に胃粘膜下膿瘍を形成した胃迷入膵組織と判明し,悪性所見は認められなかった.
  • 榊 芳和, 渡辺 恒明, 阪田 章聖, 木村 秀, 須見 高尚
    2000 年 61 巻 9 号 p. 2335-2340
    発行日: 2000/09/25
    公開日: 2009/02/20
    ジャーナル フリー
    胃原発腺扁平上皮癌は比較的稀な腫瘍であり,その発生頻度は胃癌手術の0.26~0.53%と報告されている.今回,われわれは81歳男性の胃腺扁平上皮癌の1例を経験した.術前診断は胃噴門部に発生した扁平上皮癌であった.膵尾部・脾臓合併切除を伴う噴門側胃切除術を施行した.切除標本では,胃上部を中心に10×10cmの3型の胃癌が認められた.組織学的検索で比較的分化した腺癌と中分化型扁平上皮癌が混在し腺扁平上皮癌と診断した.異所性に扁平上皮細胞は見られず,未分化癌様の細胞も認められなかったことより腺癌の扁平上皮化生が起こったものと思われた.進行度はStage III A (pSI・pN0・sP0・sH0・sM0)であった.腫瘍径が大きくても本症例の如くリンパ節転移,腹膜播種をきたしていない場合もあり,可能な限り治癒切除をめざすことが必要と思われる.
  • 皆川 輝彦, 加瀬 肇, 河野 明彦, 小林 一雄
    2000 年 61 巻 9 号 p. 2341-2346
    発行日: 2000/09/25
    公開日: 2009/02/20
    ジャーナル フリー
    当科における10年間の胃癌529症例のうち, 5例の胃小細胞癌を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.症例の平均年齢は76.2歳(73~81歳)で,男性1例,女性4例であった. Bormlann 2型3例, 3型2例で全例術前生検にて胃腺癌と診断され,手術施行した.病理組織学的には,癌細胞が充実性,索状に増殖し, N/C比が高く,核分裂像が多いといった小細胞癌の特徴が認められた.電子顕微鏡にて神経分泌顆粒を全例に認め,胃小細胞癌と診断された.小細胞癌の発育様式は粘膜下進展優位で,生検では診断されないことが多く,今回も術前診断が得られなかった.組織学的に早期より脈管侵襲が高度に認められるとされており,今回も,脈管侵襲が高度な症例が多く,特にリンパ管侵襲が高度であった.胃小細胞癌の発生頻度は胃癌の0.1~0.2%とされているが,当科では0.95%であった.
  • 岩瀬 和裕, 桧垣 淳, 尹 亨彦, 三方 彰喜, 田中 靖士, 岸本 朋乃, 鳥飼 慶, 高橋 剛, 藤井 仁, 上池 渉
    2000 年 61 巻 9 号 p. 2347-2351
    発行日: 2000/09/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    .症例は64歳,男性で,胃癌に対する幽門側胃切除術, Billroth I法再建術後に吻合部通過障害を併発したが,経口摂取可能となり術後42日目に退院した.退院5日後に脱水症状を呈して再入院となった.連日900kcal/日以下の補液により脱水は改善したが,再入院後6日目にWernicke脳症様の神経症状とBase excess値-9.6mmol/1の代謝性アシドーシスが認められた.重炭酸ナトリウムによる補正は困難で,ビタミンB1 (Vit B1) の投与により神経症状とアシドーシスは急速に改善した. Vit B1投与前の血中Vit B1値は測定感度以下であった.胃切除術後など不顕性Vit B1欠乏状態が併存する症例においては,非高カロリー補液といえどもVit B1欠乏性代謝性アシドーシスが惹起され得る可能性がある.
  • 半田 和義, 大江 大, 酒井 信光, 高屋 潔
    2000 年 61 巻 9 号 p. 2352-2356
    発行日: 2000/09/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    症例は72歳男性. 51歳時に腹部大動脈瘤手術の既往を認めており,突然大量の下血にて当院救急センター受診した. CT, 動脈造影等の精査にて,人工血管近位吻合部の瘤状の変化と人工血管の拡張を認め,大動脈十二指腸瘻の診断となった.
    手術は,人工血管を抗生剤に浸した後,解剖学的ルートで再建,吻合部周囲には大網を充填した.本症は,死亡率も高く,先行する前触れ出血を見逃さず,十分な術前検索を行い,また,血行再建にも十分留意する必要があると思われた.
  • 大城 望史, 板本 敏行, 藤高 嗣生, 住元 一夫, 田中 恒夫, 福田 康彦
    2000 年 61 巻 9 号 p. 2357-2361
    発行日: 2000/09/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    症例は78歳男性.基礎疾患に閉塞性動脈硬化症,脳梗塞があった.総腸骨動脈の血行再建および血栓除去術後,血便,腹部膨満を主訴に当科紹介された.虚血性腸炎によるイレウスおよび腸管壊死を疑い,緊急開腹術を施行した.広範囲にわたる腸管壊死と多発性腸管穿孔を認めたが,血管は十分に開存しており,非閉塞性腸間膜虚血症 (nonocclusive mesenteric ischemia: NOMI) と診断し,広範囲小腸切除,大腸全摘術を行った.
    NOMIによる消化管穿孔はまれであり,予後は極めて不良である. NOMIによる広範囲腸管壊死および多発性腸管穿孔の症例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.
  • 松村 弘人, 羽鳥 慎祐, 鹿原 健
    2000 年 61 巻 9 号 p. 2362-2367
    発行日: 2000/09/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    症例は50歳男性, 28歳時上腸間膜静脈血栓症で空腸が壊死に陥り約150cm切除された.その後両下肢深部静脈血栓症を発症したため凝固系の検査を行い先天性低AT-III血症と診断した. 45歳左下肢動脈閉塞を発症した以外平穏であったが1998年7月腹痛出現しイレウス症状にて入院.上腸間膜静脈血栓症の再発を強く疑ったが早期には確診しえず腹痛の持続と下血が生じたため入院8日目に手術を行ったところ小腸が二箇所血栓症にて壊死に陥っていた.術後はAT-III製剤を使用しさらなる再発はみなかった.腸間膜静脈血栓症では凝固系の精査(とくにAT-IIIの測定)を必ず行う必要がある.
    先天性AT-III欠乏症では静脈血栓を発生し易いし再発も多い.無症状で経過しているものは血栓症への誘因,要因を避ける指導でよいが一度でも静脈血栓症を発症した場合には再発防止に備えクマリン系薬剤の継続投与が必要である.
  • 井上 秀樹, 澤村 明廣, 山口 佳之, 山下 芳典, 平井 敏弘, 峠 哲哉
    2000 年 61 巻 9 号 p. 2368-2371
    発行日: 2000/09/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    症例は27歳,男性.臨床経過より慢性虫垂炎として経過観察されていたが,右下腹部の持続的な自発痛,圧痛および同部位に腫瘤を触知したため,大腸内視鏡検査を施行した.虫垂開口部に立ち上がり急峻な隆起がみられ,腫瘍性病変,大腸の炎症性疾患,慢性虫垂炎が疑われた.体外式超音波検査では虫垂壁のびまん性の肥厚はみられたが,虫垂開口部の隆起は認められなかった.以上より慢性虫垂炎を疑ったが,他疾患との鑑別のため,虫垂切除術および盲腸部分切除術を施行した.病理学的検査の結果,虫垂の慢性炎症の所見に一致したものであり,腫瘍性変化は認めなかった.大腸内視鏡検査でみられた隆起は,慢性虫垂炎の壁硬化と腹腔内への固定が,検査時の空気注入により,隆起性変化としてみられたものと考えられた.
  • 花城 徳一, 石川 正志, 西岡 将規, 菊辻 徹, 柏木 豊, 三木 久嗣
    2000 年 61 巻 9 号 p. 2372-2376
    発行日: 2000/09/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    Meckel憩室は卵黄腸管の遺残による先天性小腸憩室である.今回われわれは急性虫垂炎と同時期に発症し,診断が困難であったMeckel憩室によるイレウスの1例を経験したので報告する.症例は5歳,女性.主訴は右下腹部痛. 1年前より軽度の腹痛が数回みられたがすぐに軽快していた.平成11年10月18日に悪心,嘔吐が頻回にみられた.翌日下腹部痛が出現し増強してきたため当院を受診した.急性虫垂炎の診断で同時手術を施行し,カタル性虫垂炎の診断を得た.術後1日目より嘔吐を繰り返し,臍右側に疝痛も認めた.イレウスチューブ造影で小腸に高度な狭窄を認めたため術後16日目に手術を施行した.回腸末端より50cmの部位にMeckel憩室が存在し,先端部が回腸末端部に癒着していた.癒着によってできたループの中に回腸が20cm嵌入していた.若年者のイレウスは本症を念頭におく必要がある.若年者の開腹手術時にMeckel憩室を検索する重要性を再確認した.
  • 河原 秀次郎, 山崎 一也, 向井 英晴, 柏木 三喜也, 青木 照明
    2000 年 61 巻 9 号 p. 2377-2380
    発行日: 2000/09/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    63歳,男性.平成3年11月脾彎曲部近傍の横行結腸癌のため他院で左半結腸切除術が施行され,さらに平成10年12月S状結腸早期癌のため同院でS状結腸部分切除術が施行された.平成11年5月下旬より下腹部痛が出現し, 6月10日イレウスの診断で同院に緊急入院した.精査によりS状結腸術後吻合部狭窄によるイレウスと判明し,術後吻合部再発の可能性を考慮し当科に紹介された.大腸内視鏡検査では,吻合部と思われる部位に全周性狭窄がみられたが,生検所見を含めて明瞭な腫瘍性成分は検出されず,バルーンを用いた内視鏡的拡張術を試みた.その後,精査により術後虚血性変化による良性狭窄と判明し,吻合部は左精巣動脈より栄養されていた.術後良性狭窄は3カ月以内に生じることが多く本症例のように術後6カ月経過して生じることは極めて稀である.術後の虚血性変化に伴い吻合部周囲の血管新生によって血行支配に変化が生じたことが原因と考えられた.
  • 大塚 恭寛, 吉田 英生, 松永 正訓, 菱木 知郎, 大沼 直躬
    2000 年 61 巻 9 号 p. 2381-2385
    発行日: 2000/09/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    比較的稀な小児S状結腸軸捻転症(以下,本症)を2例経験したので報告する. ‹症例1›腹部膨満を主訴とした12歳女児で,腹部単純X線と注腸造影にてS状結腸過長症に合併した本症と診断した.全身状態が良好で腹膜刺激症状を認めなかったため,大腸ファイバースコープによる内視鏡的整復を施行した.しかし, 1年後に捻転の再発を来したため,待機的にS状結腸切除端々吻合を施行した.術後7年の現在,経過良好である. ‹症例2›腹痛を主訴とした9歳女児で,腹部単純X線と注腸造影にて本症と診断した.全身状態が不良で腹膜刺激症状を認めたため,緊急開腹を施行すると,過長なS状結腸が腸間膜根部を軸に時計軸方向に360度捻転して壊死に陥っていた. S状結腸を切除の上,一期的吻合を避け,両断端を腸瘻とし, 3カ月後に端々吻合を施行した.術後2年の現在,経過良好である.
  • 山内 孝, 宗田 滋夫, 根津 理一郎, 橋本 純平, 吉川 幸伸, 打越 史洋, 出口 貴司, 大嶋 正人
    2000 年 61 巻 9 号 p. 2386-2390
    発行日: 2000/09/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    症例は30歳男性で下血と下痢を主訴に当院受診.血液検査にて著明な貧血(Hb 5,6g/d1)を認めた.上部,下部内視鏡にて異常所見はなく, Meckel憩室症などの小腸病変を疑い, 99mTcO4-胃粘膜シンチグラフィーを施行. 99mTcO4-が胃壁から分泌される時期に一致して右下腹部にhot spotを認め,異所性胃粘膜を有するMeckel憩室が疑われ,腹腔鏡補助下Meckel憩室切除術を行った.憩室は回腸終末部より85cmの腸間膜対側に存在し2×5cmであった.憩室内には異所性胃粘膜と潰瘍性病変が認められた. Meckel憩室よりの出血は小児においてよく認められているが成人では比較的稀とされている.また本邦報告例では,成人のMeckel憩室からの出血は大量である場合が多く,本症は成人における大量下血を来す鑑別疾患の1つとして念頭に置くべきと考えられた.
  • 澤木 正孝, 松崎 正明, 神谷 勲, 赤座 薫, 竹下 洋基, 高瀬 恒信
    2000 年 61 巻 9 号 p. 2391-2395
    発行日: 2000/09/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    症例は47歳男性.既往歴として9年前に腸管型Behçet病で結腸右半切除術を受けた.平成8年7月頃より右下腹部痛,発熱が出現し,当院を紹介受診した.注腸検査,大腸内視鏡検査にて吻合部潰瘍による狭窄を認め,腸管型Behçet病再発と診断された.腸切除術を施行した.吻合部に境界明瞭なpunched-out ulcerを認め,穿通していた.術後腸瘻となった.絶食,高カロリー輸液,痩孔洗浄などの保存的治療では効果を認めず,再手術にて瘻孔部を含めた腸切除術を施行した.肉眼的に吻合部はpunched-out ulcerであり,病理組織像では非特異的な血管周囲の好中球を主とする炎症像を認め,腸瘻の原因は縫合不全というより潰瘍の再発と考えられた.
    本疾患は結合織反応の弱い非特異的炎症所見が主体であるため手術後の合併症や潰瘍再発率が高いとされる.腸管型Behçet病の手術にあたっては周術期を含め潰瘍再発の可能性を念頭にした治療が肝要と思われた.
  • 大町 貴弘, 高橋 直人, 岩渕 秀一
    2000 年 61 巻 9 号 p. 2396-2400
    発行日: 2000/09/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    症例は29歳男性,下腹部痛,肛門痛を主訴に前医受診したが,下腹部痛強度のため精査目的に当院紹介となった.既往歴は特になく,外傷等の既往はなかった.
    身体所見上,下腹部に強い圧痛と筋性防御を認め,血液検査所見は軽度の炎症所見のみで,胸腹部単純X線写真に異常は認められなかった.腹部CTでS状結腸周囲に遊離ガスを認め,消化管穿孔による腹膜炎と診断し緊急開腹術を行った.術中所見は,S状結腸の腸管膜対側に3cm×4cmほどの菲薄化した腸管壁を認め,この一部が穿孔していた.病理所見は穿孔部の粘膜の嵌入はなく途絶し,筋層は鋭的に断裂していた.穿孔部に肉芽,膿瘍はなく急性炎症像が見られ,組織学的に特発性大腸穿孔と診断した.
    本症例は,穿孔部に比べ,筋層の広範囲な欠損を伴っており,筋層断裂と穿孔までの時間経過が示唆され,この点では本邦でも報告が少なく比較的稀な症例と考えられた.
  • 平能 康充, 渡辺 透, 原田 猛, 山脇 優, 神林 清作, 佐藤 博文
    2000 年 61 巻 9 号 p. 2401-2404
    発行日: 2000/09/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    宿便性大腸穿孔は稀な疾患であり,便秘傾向のある高齢者や長期臥床患者,或いは精神科的疾患にて内服加療されている患者に多いとされている.今回われわれは健常な日常生活を送っていながら宿便性大腸穿孔をきたした2例を経験したので報告する.症例1は69歳,男性.腹痛を主訴に来院.単純X線写真および腹部CT検査にて遊離ガス像を認め,大腸穿孔による汎発性腹膜炎の診断にて緊急開腹術を施行した. S状結腸の穿孔および腹腔内および腸管内に多量の糞便を認めた.症例2は56歳,女性.腹痛を主訴に来院.腹部CT検査にて腹腔内に多数の微小遊離ガス像を認め,大腸穿孔による汎発性腹膜炎の診断にて緊急開腹術を施行した. S状結腸の穿孔および腸管内に硬便を認めた. 2症例ともに穿孔部位を含めたS状結腸切除および人工肛門造設を施行した.手術所見,病理組織学的所見より宿便性大腸穿孔と診断した.
  • 正木 裕児, 岡田 敏正, 三上 芳喜
    2000 年 61 巻 9 号 p. 2405-2407
    発行日: 2000/09/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    症例は上腹部痛を主訴に来院したWerner症候群の49歳女性.腹部は板状硬で,腹部CTにてfree airを認めたため消化管穿孔による汎発性腹膜炎の診断にて緊急手術を施行した.開腹所見によると,横行結腸穿孔が認められ,穿孔部切除および人工肛門造設術を施行した.特発性横行結腸穿孔と診断したが術後の病理組織学的検査で,穿孔部周辺に著明なリンパ球浸潤が認められ,好酸性の核内封入体が認められた.免疫組織学的検査で核内封入体はCMV抗体に陽性であった. Werner症候群の患者に発生したCMV感染による結腸穿孔の報告はなく,原因が明らかでない消化管穿孔の診断において日和見感染症であるCMV感染も鑑別診断に挙げる必要があることが示唆された.
  • 武内 拓, 久永 倫聖, 辰巳 満俊, 藤井 久男, 中島 祥介, 中野 博重
    2000 年 61 巻 9 号 p. 2408-2413
    発行日: 2000/09/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    今回われわれは繰り返す再発に対して外科的切除し得たS状結腸原発gastrointestinal stromal tumor (以下GISTと略す)の1例を経験したので報告する.症例は55歳男性,左下腹部に腫瘤を自覚して近医を受診.腹部CT, MRIで腎下極から骨盤腔に及ぶ腫瘍を認めた.血管造影では,下腸間膜動脈の狭窄および圧排を認めた.エコーガイド下生検で平滑筋肉腫と診断され,原発巣は小腸あるいはS状結腸と考え手術を施行した.開腹時には巨大な腫瘍がS状結腸および空腸と強固に癒着し,大網と脾臓に播種性転移巣を認めた. S状結腸,空腸を含めて切除し,大網部転移巣の摘出と脾摘を加えた.摘出標本の病理組織学的所見,免疫染色においてS状結腸原発のGISTと診断された.以後3年9カ月を経過した現在まで5回の再発を認め,計6回の外科的切除を施行し無再発生存中である.本症例は,病理組織学的にも悪性度が高く,現在も厳重にfollow upを行っている.
  • 池永 雅一, 関本 貢嗣, 大植 雅之, 山本 浩文, 三宅 泰裕, 冨田 尚裕, 門田 守人
    2000 年 61 巻 9 号 p. 2414-2418
    発行日: 2000/09/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    症例1: 26歳,男性.主訴:腹痛.現病歴:他院で上行結腸癌と診断されるも局所浸潤が高度であり,吻合術のみ施行された.根治術を希望され当科紹介された.膵頭部への浸潤を認め右半結腸切除術,膵頭十二指腸切除術(Child 変法)を施行した.症例2: 27歳,男性.主訴:腹痛,血便.家族歴に母が30歳で直腸癌で死亡.現病歴:大腸多発癌と診断され当科紹介となる.家族歴より遺伝性非ポリポーシス大腸癌のClinical criteria B-a, cに合致する.大腸亜全摘術を施行した.各症例において,遺伝子不安性(MSI)の解析を行ったところ,症例1では陰性,症例2では陽性であった.いずれも30歳未満の若年発症ではあるが,その発癌過程は異なるものと推測された. MSIと多重癌の関係が示唆されており,若年発症かつMSI陽性例では,今後異時性多重癌を考慮した厳重なるsurveillanceが必要と考えられた.
  • 山内 昌哉, 藤井 久男, 小山 文一, 寺内 誠司, 杉森 志穂, 榎本 泰三, 中野 博重
    2000 年 61 巻 9 号 p. 2419-2423
    発行日: 2000/09/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    症例は15歳の男児で腹痛,下痢を主訴に近医を受診した.サルモネラ腸炎と診断され,治療を受けるも腹痛の改善なく,腹部に手拳大の腫瘤を触知するようになった.大腸床視鏡検査にて横行結腸に全周性の隆起性病変を認め,biopsyにて印環細胞癌が検出されれため,当科を紹介され受診した.開腹所見では横行結腸脾変曲部に全周性手拳大の腫瘤を認め,さらに第4群リンパ節転移および腹膜播種を広範に認めた.肉眼形態は悪性リンパ腫に似た,病変が長軸方向に長く,中央がやや拡張した大動脈瘤型の特異な形態を示した.手術は,横行結腸切除術およびCDDP 75mg腹腔内投与を施行した.病理組織学所見はstage IV (se, n4(+), H0, p3, M(-)) mucinous carcinoma, ly2, v0, infβであった.術後5-FU+CDDP化学療法が奏効し,術後20カ月で,外来で化学療法を行っている.
  • 山口 由美, 蘆田 啓吾, 柴田 俊輔, 石黒 稔, 西土井 英昭, 村上 敏
    2000 年 61 巻 9 号 p. 2424-2427
    発行日: 2000/09/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    症例は78歳,女性.下血を主訴に来院した.注腸造影,大腸内視鏡検査で下部直腸 (Rb) に潰瘍を伴う腫瘍性病変を指摘された.生検にて直腸未分化癌と診断され,腹会陰式直腸切断術を施行した.腫瘍細胞は,免疫染色でNSE, synaptophysin陽性であり,電子顕微鏡による検索では神経内分泌顆粒が証明され,直腸内分泌細胞癌と診断した.患者は術後早期に局所再発,多発肝転移,骨転移を起こし,病態が急速に悪化し,術後80日で死亡した.
    内分泌細胞癌は,きわめて生物学的悪性度が高く,外科的治療のみでの治癒は期待できない.生検で未分化癌,低分化腺癌と診断された場合,内分泌細胞癌を念頭に置いた積極的検索を行い,手術のみならず,化学療法,放射線療法をまじえた集学的治療が必要と考えられる.
  • 倉地 清隆, 鈴木 昌八, 今野 弘之, 矢島 周平, 大関 武彦, 中村 達
    2000 年 61 巻 9 号 p. 2428-2433
    発行日: 2000/09/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    21歳の男性が肝腫瘤のため入院した.右恥骨原発のEwing肉腫とその肺転移に対し切除を受けた既往症がある.術後経過観察中の腹部CTで肝Segment (S) 3とS4に径10mmと5mmの造影される腫瘤を認めた.患者の都合により10カ月間経過観察したところ,腫S3の腫瘍径は30mmに増大した.腹部CTおよび血管造影検査では動脈相早期より内部から辺縁へ向かう著明な腫瘤濃染像を呈した.肝以外には病変は確認されなかった.臨床経過からEwing肉腫の肝転移の可能性が否定できないため,肝外側区と肝S4の肝部分切除術を施行した.病理組織学的には両腫瘤ともに肝限局性結節性過形成と診断し,悪性像は認められなかった.術後8カ月の現在まで再発なく健在である.
    肝限局性結節性過形成は,経時的な変化に乏しい肝良性腫瘍である.自験例のように短期間に増大傾向を示したFNHの報告は4例と稀であり,文献的考察を加え報告する.
  • 畑 泰司, 立石 秀郎, 東野 健, 岡本 茂, 岡村 純, 門田 卓士
    2000 年 61 巻 9 号 p. 2434-2438
    発行日: 2000/09/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    肝切除術後にブタ蛔虫の内臓幼虫移行症による肝好酸球性肉芽腫症と診断された症例を経験したので報告する.症例は51歳,男性.海外渡航歴はないが,牛肝,鶏肉の生食習慣がある. HBs抗体陽性のため腹部超音波検査を施行したところ肝S6に約20mm大の腫瘤を認め, MRIにて肝腫瘍が疑われた.血管造影およびAG-CTでは同部位にhyper vascular tumorを認め,肝細胞癌と診断された.肝S6部分切除術を施行したが,組織学的に肝細胞癌は認めず,肝好酸球性肉芽腫の像を呈していた.このため寄生虫症を疑い,免疫血清学的検査を行ったところ,ブタ蛔虫抗体が強陽性を示し,内臓幼虫移行症と診断された.肝腫瘍の診断,治療においては本疾患を含む肉芽腫性疾患も念頭に入れておく必要がある.
  • 長堀 薫, 永野 靖彦, 簾田 康一郎, 関戸 仁, 渡会 伸治, 嶋田 紘
    2000 年 61 巻 9 号 p. 2439-2442
    発行日: 2000/09/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    術中に偶発的に右肝動脈を損傷した場合はどのように対処すべきであろうか.自験3例では膵頭部領域癌に対する肝十二指腸間膜の郭清時に右肝動脈損傷した. 1例は癌浸潤のため左肝動脈を合併切除した.再建は肝側断端からの逆流が認められなかった2例の右肝動脈単独損傷例と左肝動脈合併切除例に行い,いずれも術翌日に肝右葉に動脈波はみとめなかった.動脈損傷に起因する術後合併症は左肝動脈合併切除例のみでみられ,多発性肝膿瘍が軽快しないまま癌死した.肝動脈損傷時には胆管の虚血が問題となる右肝動脈損傷時には左肝動脈-translobar collaterals(肝内シャント)-切離部より遠位の右肝動脈-胆管壁の動脈を経由して血液が供給されるようになるとされる.自験例,文献報告例の臨床結果とあわせ,右肝動脈が損傷されても左肝動脈が温存されていれば動脈再建は不要と考えられた.
  • 大槻 憲一, 西尾 和司, 中島 祥介, 金廣 裕道, 久永 倫聖, 長尾 美津男, 中野 博重
    2000 年 61 巻 9 号 p. 2443-2448
    発行日: 2000/09/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    症例は, 58歳男性. C型慢性肝炎にて経過観察中,肝S8領域に結節状の腫瘤を認め肝細胞癌の診断のもと肝部分切除を施行した.病理組織診断の結果,悪性リンパ腫 (small cell type) であった.肝原発悪性リンパ腫は稀な疾患であり,その治療法は確立されてはいない.本症例は外科的切除と化学療法の併用により約2年無再発生存中であり,良好な成績が期待された.
  • 楠瀬 浩之, 渡部 祐司, 佐藤 元通, 吉川 浩之, 河内 寛治, 宮崎 龍彦
    2000 年 61 巻 9 号 p. 2449-2452
    発行日: 2000/09/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    高CA19-9, CA125血症を呈する感染性脾類表皮嚢胞の報告は稀である.われわれは腹痛,発熱を契機に感染性脾膿瘍と診断され,血中両マーカーがそれぞれ8,400U/ml, 178.4U/mlと高値を示した20歳女性に腹腔鏡下脾摘術を施行した.嚢胞は11×9cmで700mlの混濁した膿汁を認め,嚢胞液中CA19-9, CA125はそれぞれ1.1×106U/ml, 1.8×104U/mlと異常高値を示した.組織所見では,類表皮嚢胞と診断され,免疫染色ではCA19-9が嚢胞壁上皮に一致して濃染し,同部からの血中への逸脱によるものと思われた.術後CA19-9, CA125の推移はそれぞれ,術後6カ月後の外来検査で100U/ml, <35U/mlと低下した.このような症例は術前良悪性の鑑別が困難なため,脾摘が妥当と考えられるが,まず腹腔鏡下脾摘による低侵襲な診断的治療を行うべきである.
  • 田代 健一, 山内 眞義, 高尾 良彦, 大越 英毅, 山崎 洋次, 青木 照明
    2000 年 61 巻 9 号 p. 2453-2457
    発行日: 2000/09/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    症例は44歳,男性. 10年前より胆嚢結石, 3年前より胆嚢ポリープを指摘されていた.腹部超音波検査にて胆嚢ポリープの増大(20mm大)が認められたため手術目的のため当科入院となった.ポリープは分葉状に発育しており,胆嚢癌の診断のもとに開腹手術を施行した.開腹時,肝は黒色を呈していた.胆摘施行し分化型腺癌の診断を得たため,肝床切除およびリンパ節廓清を追加し根治術とした.術後経過は順調であったが,抱合型ビリルビンの軽度上昇が続いた. BSP試験の再上昇と切除肝組織の所見から症例をDubin-Johnson症候群(以下DJS)に合併した胆嚢癌と診断した.
    本症例はDJSに胆嚢癌とコレステロール結石を合併しており,根治術が施行された症例は検索し得る範囲では1例のみで極めて稀な症例であり文献的考察を加え報告する.
  • 櫻井 康弘, 中澤 一憲, 山下 隆史, 十倉 寛治, 浅田 健蔵, 竹林 淳
    2000 年 61 巻 9 号 p. 2458-2462
    発行日: 2000/09/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    症例は65歳,女性.主訴は黄疸.閉塞性黄疸に対し,経皮経肝胆道ドレナージ術(以下PTBD)を施行した.胆道造影を行ったところ総胆管末端で逆U字形の完全閉塞を示し,結石の嵌頓が疑われた.しかし,胆汁細胞診にて扁平上皮癌および腺癌細胞が検出された.そこで, PTBD,内視鏡的逆行性胆管造影によるはさみうち造影を行ったところ,下部胆管に不整な全周性の狭窄,超音波内視鏡検査にて不整な充実性腫瘍が描出された.なお,結石はみられなかった.下部胆管腺扁平上皮癌の診断のもと,膵頭十二指腸切除術を施行した.膵内胆管に3×2cm大の黄白色,結節浸潤型の腫瘍を認めた.組織学的には腺扁平上皮癌であった.術後1年を経過しているが,肝転移を認め,化学療法を施行中である.
  • 村山 明子, 早川 直和, 山本 英夫, 川端 康次, 國料 俊男, 梛野 正人, 神谷 順一
    2000 年 61 巻 9 号 p. 2463-2468
    発行日: 2000/09/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    今回われわれは,術前のMRCP所見および術中所見から膵癌の合併を診断し得た膵石症の1切除例を報告する.症例は55歳男性.もともと大酒家で, 6年前より糖尿病およびアルコール性慢性膵炎にて近医で治療中であったが,治療抵抗性の疼痛が出現したので当院紹介となった.術前のMRCPで主膵管の不整な拡張と分枝の描出不良を認め,術中超音波所見から広汎に浸潤する癌の存在を強く疑い膵全摘術を施行した.病理組織標本にて,膵頭部を主体とした中分化型管状腺癌を認め,膵尾部の一部にも同様の癌の浸潤像が認められた.患者は術後早期に出現した多発肝転移のため術後約3カ月で死亡した.本症例は膵癌の膵管内進展という面で示唆に富む膵管像を呈した.膵石症,慢性膵炎に対してはこのような膵管の特徴的な所見をも考慮に入れた慎重なフォローアップを行うとともに,術式決定の際にも注意する必要がある.
  • 飯合 恒夫, 福田 喜一, 酒井 靖夫, 畠山 勝義
    2000 年 61 巻 9 号 p. 2469-2472
    発行日: 2000/09/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    症例は73歳,男性.平成10年5月14日腹部膨満感を主訴に当院内科受診,イレウスの診断で同日入院した.腹部CT検査で膵尾部に腫瘤をみとめ,結腸脾彎曲部,脾臓,左腎臓に浸潤していた. CA19-9は916.5U/mlであった.膵尾部癌の大腸浸潤によるイレウスと診断し,横行結腸に人工肛門を造設しイレウスを解除したのち, 6月26日根治術を施行した.膵尾部を原発とする腫瘍であり,尾側膵切除術,左半結腸切除術,脾摘出術,左腎摘出術,胃部分切除術で切除しえた.病理組織診断は高分化型腺癌であった.術後経過は順調で7月25日(29病日)に退院したが,平成11年11月6日に再発死した.
  • 金子 猛, 海野 直樹, 内山 隆, 今野 弘之, 中村 達
    2000 年 61 巻 9 号 p. 2473-2476
    発行日: 2000/09/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    症例は72歳女性. 3年前に上行結腸癌に対し右半結腸切除術を施行.その後当院にて経過観察していたが, CTにて脾動脈瘤が3年前と比して5cm大にまで増大しているのを認め,手術目的で入院した.開腹所見では転移性病変,膵炎による変化を認めず,瘤とその末梢および中枢の脾動脈を同定できた.脾動脈は高度に蛇行して長く,血行再建可能と判断し,瘤切開および瘤の中枢側と末梢側で脾動脈を端々吻合した.脾動脈瘤の手術は解剖学的理由から脾動脈結紮ならびに脾摘が行われることが多いが,脾摘による術後合併症として,膵液瘻の発生,動脈瘤の位置が中枢よりであると膵体尾部の血行不良を引き起こすおそれもあり,血行再建がより有用と思われる.脾動脈瘤の血行再建について文献的考察を加え報告する.
  • 大久保 雅之, 山田 昂, 山田 育男, 橋川 観, 鍵本 紀久雄
    2000 年 61 巻 9 号 p. 2477-2481
    発行日: 2000/09/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    症例は36歳,女性.以前より時々左背部痛があり,健診にて脾臓の異常を指摘され来院した.腹部超音波検査では,脾全体に境界不明瞭な高エコー域と低エコー域が混在していた.腹部CTでは,脾に無数の低吸収性腫瘤がびまん性に存在していた.造影CT, 血管造影検査で腫瘤の造影効果は認めなかったが, Dynamic CTを25分の間隔をおき2回施行したところ,腫瘤はゆっくりと造影されており,びまん性脾血管腫症と診断可能であった.左背部痛を伴っていたため,脾臓摘出術を施行した.血流に乏しい脾血管腫症の画像診断は一般に困難であるが,自験例でばDynamic CTが診断に有用であった.
  • 松岡 功治, 吉田 晋, 山本 光太郎, 丹黒 章, 岡 正朗
    2000 年 61 巻 9 号 p. 2482-2487
    発行日: 2000/09/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    今回われわれは,高CA19-9血症を呈した,極めて稀な脾嚢胞の1切除例を経験したので報告する.症例は, 21歳女性で歩行中に突然左上腹部痛が出現し,近医を受診したところ腹腔内腫瘍が疑われたため精査加療目的にて当科紹介入院となった.入院時現症としては,腫大した脾臓が触知され,腹部超音波, CTおよびMRIでは巨大な脾嚢胞が確認された.また血液検査にて,血清CA19-9が16,706U/ml, CEAが34.5ng/mlと高値を呈したため全身の悪性疾患の検索を行ったが,脾嚢胞以外には異常所見を認めなかった.そこで原因疾患をCA19-9産生性脾嚢胞と考え,悪性腫瘍の存在も否定できなかったため,腹腔鏡下に摘脾術を施行した.嚢胞の大きさは最大径12cmで,嚢胞内CA19-9は102,820U/ml,CEAは1,169.3ng/mlと異常高値を示した.組織学的には類表皮嚢胞と診断され,免疫染色では, CA19-9, CEAともに嚢胞内上皮に陽性所見を認めたが,悪性所見は認められなかった.術後の経過は良好で間もなく血清CA19-9, CEAともに正常化した.
  • 西岡 将規, 石川 正志, 花城 徳一, 菊辻 徹, 柏木 豊, 三木 久嗣
    2000 年 61 巻 9 号 p. 2488-2492
    発行日: 2000/09/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    シスプラチン(CDDP)術中腹腔内投与により急性腎不全をきたしたが,副腎皮質ステロイドにより腎機能の著明な改善がみられた症例を経験したので報告する.患者は70歳,男性.進行胃癌に対して胃全摘術を施行し,術中にCDDP 50mgを腹腔内投与した.術前腎機能は正常であったが,術後5日目に無尿となり,BUN 96.9mg/d1, Cr 6.24mg/dlとなったため同日より血液濾過(HF)導入となった. HF開始後約2週問で利尿期に入ったが腎機能は改善せず,週に2, 3回のHFを必要とした.術後55日目より4日間ステロイドパルス療法を施行し,パルス療法後24日目にはCr 1.42mg/dlまで改善, HFより完全に離脱することができた.患者は術後192日目に呼吸不全により死亡したが,剖検時の腎生検では尿細管壊死の所見はみられなかった.現在CDDPによる急性腎不全に対する有効な治療法は確立されていないが,ステロイドパルス療法は有効は治療法の1つであると考えられた.
  • 小澤 平太, 島田 謙, 高橋 毅, 吉田 宗紀, 比企 能樹, 柿田 章
    2000 年 61 巻 9 号 p. 2493-2497
    発行日: 2000/09/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    肝腫瘍と鑑別を要した褐色細胞腫の1例を経験したので報告する.
    症例は50歳女性で,背部痛を主訴に近医を受診し,腹部CTで肝腫瘤を指摘され当科紹介となった.入院後の腹部血管造影検査やERCP時に発作性の血圧上昇がみられ,内分泌学的検査と併せて褐色細胞腫の診断が得られた.手術は開腹により右副腎上極に連続した巨大褐色細胞腫を摘出した.組織学的にはリンパ節転移は無かったが,部分的に静脈侵襲がみられpotential malignancyと考えられた.文献的には,褐色細胞腫の中で肝腫瘍と鑑別を要する症例は少ない.本症は臨床症状に乏しかったが,検査に伴う高血圧発作や内分泌学的検査,入念な画像検査により正確な術前診断が得られ,腫瘍の摘出が可能であった.
  • 千田 嘉毅, 長谷川 洋, 小木曽 清二, 長澤 圭一, 永井 英雅, 高橋 祐
    2000 年 61 巻 9 号 p. 2498-2502
    発行日: 2000/09/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    症例は16歳男性,上腹部痛を主訴に来院し,イレウスの診断で入院した.入院2日目に腹痛の増強,腹水の出現を認めたため.絞扼性イレウスの診断で開腹手術を施行した.約40cmの小腸係蹄が索状物に絞扼されており,索状物と壊死腸管を切除した.索状物は臍腸管嚢胞と思われた.
    臍腸管嚢胞自体には炎症や,腹壁へ達する索状物,癒着などを認めず,それ自体が小腸に巻き付き,結び目を作って絞扼しており,結節形成に特異な形態を呈していた.このような症例は臍腸管遺残症の代表であるMeckel憩室でさえ海外で6例,本邦で2例の報告をみるにすぎず,本例の如く臍腸管嚢胞によるものはわれわれの検索し得た範囲では他に報告例はなかった.
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