日本臨床外科学会雑誌
Online ISSN : 1882-5133
Print ISSN : 1345-2843
ISSN-L : 1345-2843
62 巻, 12 号
選択された号の論文の51件中1~50を表示しています
  • 石川 浩一
    2001 年 62 巻 12 号 p. 2849-2855
    発行日: 2001/12/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
  • 森岡 恭彦
    2001 年 62 巻 12 号 p. 2856-2858
    発行日: 2001/12/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
  • 内藤 明広, 川原 勝彦, 岩田 宏, 安藤 由明, 羽田 裕司
    2001 年 62 巻 12 号 p. 2859-2864
    発行日: 2001/12/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    二次性上皮小体機能亢進症は,慢性腎不全の合併症として大きな位置を占め,透析技術の進歩に伴い長期生存の透析患者が増加するのに伴い,症例数も徐々に増加している.われわれは当院の症例をもとに,上皮小体の数および位置異常について検討した.
    1989年1月から2000年12月までの間に当院外科で治療した二次性上皮小体機能亢進症全83症例中, 9例(10.8%)で過剰上皮小体例, 11例(13.3%)で過少上皮小体例, 8例(9.6%)で異所性上皮小体を認めた.剖検例をもととした正書の記載に比し,上皮小体の数および部位異常の頻度が明らかに高いと思われた.また,異所性上皮小体の診断としてCT, scintigramの画像診断が有用であると思われ,術前にこれらの検査の施行は必須と思われた.
  • 泉山 修, 長谷川 正
    2001 年 62 巻 12 号 p. 2865-2869
    発行日: 2001/12/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    いかなる人工弁においても弁置換術後の種々の合併症により,再弁置換術を余儀なくされることがある.当科で過去11年間に12例の再弁置換術を経験したので報告する.再弁置換術の適応は,機械弁AVR後の血栓症が2例,機械弁AVR後の開放制限が2例,生体弁MVR後の生体弁機能不全症が5例,機械弁MVR後の血栓症が2例,機械弁TVR後の血栓症が1例であった.再弁置換術の人工弁としては大動脈弁位と三尖弁位SJM弁血栓症の2例に対しては生体弁を用いたが,他はSJM弁を用いた.ショック状態で搬送された機械弁MVR後の血栓症に対して, IABPおよびPCPS下に緊急手術を施行したが, MOFにて病院死した.他の11例は独歩退院した.術前状態の良好な再弁置換術は安全に施行可能である.また,弁置換術後は注意深い経過観察による合併症の早期発見が重要である.
  • 岩切 章太郎, 古川 幸穂, 佐藤 寿彦, 寺本 晃治, 佐原 寿史, 岡崎 強, 塙 健, 山下 直己, 松井 輝夫, 桑原 正喜, 松原 ...
    2001 年 62 巻 12 号 p. 2870-2873
    発行日: 2001/12/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    現在,自然気胸に対する胸腔鏡手術(以下TS)は外科治療の主流であるが,開胸手術と比較して術後再発率の高いことが問題である. 1994年6月~1999年12月に当科で施行した自然気胸に対するTS症例156例(167側)のうち,主に再発・再手術例について検討し,再発原因について考察した.再発は22側(13.2%)にみられた.このうち再手術を施行した16例では,初回手術時のブラ・ブレブ切除線近傍に再発原因が推定された症例が13例(81.2%)と多数を占めた. Kaplar-Meier法にてTSの再発時期を検討してみると早期再発と晩期再発がみられた.さらにその再発様式には両者間で違いがみられ,早期再発においては切除線近傍に再発原因が推定されたのが12例中11例(91.7%)と,晩期再発の4例中2例(50%)より有意に高値であった.これは全再発・再手術例の68.7%を占めた.これらの事実より, TSでは初回手術時に切除線近傍の肺胸膜を補強することにより再発を防止できると考えられた.
  • 上原 圭介, 長谷川 洋, 小木曽 清二, 坂本 英至, 柴原 弘明, 伊神 剛, 太平 周作, 森 俊治
    2001 年 62 巻 12 号 p. 2874-2877
    発行日: 2001/12/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    Gastrointestinal stromal tumor (GIST)症例38例を対象とし,無再発群25例と再発群13例の2群に分類して,臨床病理学的検討を行った.無再発群と再発群の問で,腫瘍最大径(p=0.0151), 腫瘍壊死の有無(p<0.0001),核分裂像(p=0.0013)で有意差を認めた.また現在一般的となりつつある免疫組織学的分類の臨床的意義につき検討を試みたが, c-kit陽性腫瘍が89,5%と多く,免疫組織学的分類と悪性度の間に相関関係を見いだせなかった.
    GISTは免疫組織化学検査の進歩により病理学的見地よりつくられた概念であるが,現状では免疫組織学的分類は臨床的な意義に乏しく,良悪性の判断は従来通り腫瘍最大径,腫瘍壊死の有無,核分裂像などで判断せざるを得ないと考えられた.
  • 松山 南律, 小玉 敏宏, 和田 直樹, 大川 博永, 岸田 尚夫, 蓑原 靖一良, 佐々木 進次郎
    2001 年 62 巻 12 号 p. 2878-2881
    発行日: 2001/12/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は72歳,男性,糖尿病.冠動脈三枝病変に対し左内胸動脈と大伏在静脈による冠動脈バイパス術を施行した.術後14日目から発熱,前胸部発赤・創部の〓開を認め,滲出物の細菌培養の結果メチシリン・セフェム耐性黄色ブドウ球菌(以下MRSA)性胸骨・縦隔炎と診断した.胸骨肋軟骨切除と大胸筋充填術を施行し一旦軽快したが,症状の再発が見られたため再手術後103日目に大網充填術を施行し完治した.心臓手術に合併する創部感染は縦隔さらには心臓周囲へと進展し重篤な合併症になることから厳重な注意が必要である.今回は起因菌がMRSAで難治性のため再々手術となったが,抗炎症効果を持つ大網を充填することにより完治させることができたので報告する.
  • 内田 靖子, 本田 宏, 小池 太郎, 笠島 武
    2001 年 62 巻 12 号 p. 2882-2887
    発行日: 2001/12/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    乳腺腺筋上皮腫(adenomyoepithelioma: AME)は比較的稀で一般的には良性の腫瘍といわれている.今回われわれは局所再発・遠隔転移を繰り返し不幸な転帰をたどった61歳女性の症例を経験したので報告する.この症例は1989年頃より右乳房の創のやや上方にしこりを自覚していたが放置. 1997年3月同腫瘤に痛みを伴うようになったため当院受診.腫瘍摘出生検を施行し, adenomyoepithelioma: AMEの病理診断を得た.半年後の同年9月局所再発をきたし,再度腫瘤摘出を行った. 1999年1月両側下肺野に転移を認め両側胸腔鏡下肺部分切除術を施行した. 1999年7月胸部CTで右肺切除断端近傍に4cm大の腫瘤を認め,再々発を強く疑った.再切除を検討したが残存肺機能が悪く,この時点での手術は困難と判断し,経過観察となった. 2000年4月肺炎を併発し,入院.同年7月1日呼吸不全のため永眠された.
    本邦ではこれまでにAMEの遠隔転移・死亡例の報告はなく,本症例がはじめての報告となる.
  • 福永 亮朗, 高橋 弘, 下沢 英二, 杉浦 博, 長谷 龍之介, 加藤 紘之
    2001 年 62 巻 12 号 p. 2888-2891
    発行日: 2001/12/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は63歳,女性.右乳頭血性分泌,右腋窩腫瘤を主訴に当院受診.生検にて乳腺扁平上皮癌の診断を得たため,胸筋温存乳房切除術を施行した.術後病理組織学的検索にてsquamous cell carcinomaの診断を得た.病理学的に腫瘍部と皮膚との交通を認めず術後の全身精査で他に原発巣を認めなかったため,乳腺原発と考えられた.エストロゲンレセプター,プロゲステロンレセプターは陰性であった.術後9カ月の現在再発を認めず経過観察中である.
  • 松本 春美, 宮崎 治, 鹿島 健, 高木 睦郎, 安井 誠一, 村上 修
    2001 年 62 巻 12 号 p. 2892-2895
    発行日: 2001/12/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    右外腸骨静脈の腫瘍性狭窄に対し,ステント挿入が有効であった症例を経験した.症例は59歳,女性.右下肢の著明な浮腫を主訴に当科を受診.下肢の重苦感強く, 15分程度の歩行も困難であった.血管造影では右外腸骨静脈は約45mmにわたり狭窄を示し,最大狭窄部では約80%の狭窄を示していた.腹部CT検査では,右の水腎症と右骨盤腔に3cm大の腫瘍を認めた. 7年前に他院にて子宮癌および卵巣腫瘍の手術既往があり,再発を疑い開腹手術を施行した.術中所見では,腫瘍が右外腸骨静脈に強固に癒着しており剥離困難なため,バイパスは困難と判断し,術後早期のステント留置を決定した.右外腸骨静脈内をballoonにて拡張後, expandable stentを留置した.施行後,内腔は1cmに拡大し,下腿周囲長および臨床症状の著明な改善が得られた.ステント挿入はバイパス不能例に対しても有効な手段であると思われた.
  • 四方 裕夫, 上田 善道, 土島 秀次, 野中 利通, 渡邊 洋宇, 松原 純一
    2001 年 62 巻 12 号 p. 2896-2899
    発行日: 2001/12/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    von Recklinghausen病は多発性の神経線維腫と皮膚色素斑を主徴とする常染色体優性遺伝の疾患である.合併する悪性腫瘍として神経線維肉腫,悪性神経鞘腫などの非上皮性悪性腫瘍は散見されるが,上皮性悪性腫瘍中でも肺癌の報告は少ないとされる. von Recklinghausen病の51歳男性が,拡張型心筋症を疑わせる心陰影拡大と心房細動で加療中,血痰と咳漱を主訴とし来院.胸部X線写真で右肺上葉に空洞を有する異常陰影を認めた.胸部CTでは空洞壁は厚く不整で空洞性腫瘍を疑わせた.開胸生検を行い扁平上皮癌と診断を得て右上葉切除を行った.広範な胸壁浸潤が認められたため,非完全切除となり術後放射線療法を追加した. von Recklinghausen病に合併した肺扁平上皮癌を経験し,他の33例の本邦報告と合わせ検討した.
  • 志田 敦男, 山寺 仁, 中林 幸夫, 石田 祐一, 穴澤 貞夫, 山崎 洋次
    2001 年 62 巻 12 号 p. 2900-2904
    発行日: 2001/12/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は48歳,男性.平成11年1月より咳漱,発熱が出現し次第に呼吸困難も出現し, 2月17日に当院へ紹介され入院した.来院時胸部単純X線写真で左胸水を認め,腹部CTで直径6cm大の仮性膵嚢胞を認めた.血液生化学的検査で,慢性膵炎急性増悪と診断し保存的に治療していたところ,第20病日に突然吐血し,胃内視鏡下止血術を試みたものの止血できず緊急開腹手術を施行した.術中に仮性膵嚢胞の胃穿通を確認し,胃全摘術を施行した.
    慢性膵炎に合併した仮性膵嚢胞の報告は多いが上部消化管大量出血に至る胃穿通を生じた報告は少ない.
  • 中村 俊幸, 牧内 明子, 前澤 毅, 安達 亙
    2001 年 62 巻 12 号 p. 2905-2908
    発行日: 2001/12/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は81歳の男性.上腹部痛を主訴に2000年6月10日に当院を受診した.腹部触診にて右上腹部全体に巨大な腫瘤を認め,同年6月12日入院となった.上部消化管内視鏡では胃体下部後壁に粘膜下腫瘍を認めた.腹部CT,腹部MRI検査で胃の後壁から連続する巨大な腫瘍を認め,血管造影では主に左胃動脈,左右胃大網動脈に栄養されていた.経皮的に行った穿刺吸引細胞診ではclass III,筋原性または神経原性の間葉系腫瘍が疑われた.以上より胃原発の粘膜下腫瘍と診断し手術を施行した.腫瘍は胃後壁から発生した粘膜下腫瘍であり,左上腹部全体を占めていた.横行結腸間膜の一部に腫瘍の浸潤を認めたため,胃部分切除および横行結腸部分切除を行った.病理組織検査にてgastrointestinal autonomic nerve tumorと診断された.
  • 江本 節, 吉川 澄, 藤川 正博, 藤井 眞, 濱田 栄作, 川野 潔
    2001 年 62 巻 12 号 p. 2909-2912
    発行日: 2001/12/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は45歳,女性. 1993年8月,右乳癌に対して非定型乳房切除術を施行した.術後定期的に外来通院するも1998年3月より上腹部膨満感や嘔吐が出現するようになり,胃透視にて幽門狭窄を認め,内視鏡で粘膜面正常なるも壁伸展不良を認めた.胃癌の診断にて6月胃亜全摘術を施行した.術中,横行結腸漿膜の2カ所に腹膜播腫と思われる小結節を認めたため,これを摘出した.切除標本の病理所見はmetastatic poorly differentiated adenocarcinoma, se (m: intact), n1, PM(+), DM(-), P1であり,乳癌からの転移と考えられた.術後経過良好であり,化学療法としてCEF1クール施行した後,退院した.以後,外来にて経口の内分泌化学療法を施行し,術後3年の現在,無再発生存中である.乳癌の胃転移は少なく若干の文献的考察を加えて報告する.
  • 酒徳 光明, 家接 健一, 中島 久幸, 清原 薫, 小杉 光世, 寺畑 信太郎
    2001 年 62 巻 12 号 p. 2913-2917
    発行日: 2001/12/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は79歳,女性.平成11年9月心窩部不快感を主訴に来院した.胃内視鏡検査にて胃体上部後壁に隆起性病変を,胃体上部前壁に粗ぞう凹凸な粘膜を,胃角前壁に中心陥凹を有する粘膜下腫瘍様病変を認めた.生検では,それぞれ中分化腺癌, MALTリンパ腫疑い, MALTリンパ腫疑いであった. H. Pylori除菌後に胃全摘術(D2)を行った.切除標本では胃体上部後壁に2.5×1.8cmのI型早期胃癌(tub2, sm1, ly0, v0, n0),胃体上部前壁には組織学的にMALTリンパ腫を認めた.胃角前壁には中心陥凹のある4.0×2.8cm大の粘膜下腫瘍様病変を認めた.中心陥凹の一部に分化型腺癌を認めるが,浸潤部はクロモグラニン陽性の小細胞が髄様に筋層直上まで増殖し内分泌細胞癌と診断した(sm2, ly1, v1, n1).術後経過は良好で術後23日で退院した.胃内分泌細胞癌は早期癌でも再発をきたしやすいとされており,慎重に経過観察中である.
  • 藤井 大輔, 栗田 啓, 高嶋 成光
    2001 年 62 巻 12 号 p. 2918-2922
    発行日: 2001/12/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    慢性関節リウマチの経過観察中に早期胃癌を発症し,それに対する幽門側胃切除術施行時に得られた小腸片より続発性消化管アミロイドーシスの確定診断を得た1例を経験した.症例は72歳,女性.近医にて慢性関節リウマチの治療のために入退院を繰り返していた.健康診断目的で受けた胃内視鏡にて早期胃癌を認めたため,治療目的で当院へ紹介された.早期胃癌の診断の下に幽門側胃切除術を行った.手術施行時に得られた空腸の一部を病理標本として提出,検討した.組織学的には,粘膜下層に分布する小型~中型の血管壁に好酸性物質の沈着,硝子化を散存性に認めた.同部位の特殊染色結果はAA typeのアミロイドーシス蛋白の沈着を示し慢性関節リウマチに続発した消化管アミロイドーシスと考えられた.消化管アミロイドーシスは,本症例のように胃癌が併発していることもあり,慢性関節リウマチに対しては定期的に内視鏡検査を行う必要があると考えられた.
  • 塚山 正市, 平野 誠, 村上 望, 宇野 雄祐, 野沢 寛, 吉野 裕司, 太田 尚宏, 橘川 弘勝, 増田 信二
    2001 年 62 巻 12 号 p. 2923-2926
    発行日: 2001/12/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は74歳の女性で,胸焼けを主訴に来院し上部消化管内視鏡検査で胃前庭部小彎に発赤した不整陥凹を認めた.生検の結果,中分化型腺癌を認め,平成11年6月14日に幽門側胃切除術および2群リンパ節郭清術を施行した. 4.3×3.5cm大のO-IIc+IIa型病変で,病理組織学的には大部分が高分化型腺癌であったが,腫瘍中央最深部 (sm 3) において細胞異型が強く,クロマチンに富み,著明な核分裂像を伴った小型腫瘍細胞の増殖を認めた.それらは, Chromogranin A染色陽性, Grimelius染色陽性であり胃小細胞癌と診断した.
    本症例では小細胞癌は腫瘍中央最深部に存在し,さみだれ状に入り混ざるように分化型腺癌に取り囲まれており,小細胞癌が腺癌から発生した可能性を示唆するものと思われた.
  • 高島 健, 川本 雅樹, 奥 雅志, 平田 公一
    2001 年 62 巻 12 号 p. 2927-2930
    発行日: 2001/12/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は79歳の男性。心窩部痛にて近医受診し,精査加療目的で当院へ紹介入院となった.血液生化学検査では貧血および低タンパク血症を認めたが, AFP, CEA, CA19-9は全て正常範囲内であった.胃X線および内視鏡検査で胃体上部小彎後壁に最大径6.0cmのBorrmann2型癌を認めた.手術所見はT2, N1, P0, H0, M0, Stage IIで,胃全摘術+D2郭清,脾合併切除術を施行した.切除標本で左胃静脈内に粥状の腫瘍塞栓を認めた.病理組織学的には乳頭状あるいは管状構造を示す腺癌部と充実胞巣状構造を示す肝様部が認められ,免疫組織染色では肝様部がAFP陽性を示した.以上の所見から胃肝様腺癌 (hepatoid adenocarcinoma), ss, med, INFα, ly2, v2, n1(+)と診断された.静脈内腫瘍塞栓は肝様部と同様の組織像を呈していた.術後14カ月経過の現在,再発転移の徴候はない.血清AFP値の上昇を伴わない胃肝様腺癌は比較的稀であると考え,文献的考察を加えて報告した.
  • 谷 明夫, 伊藤 幹也, 首藤 邦昭, 橘 正人
    2001 年 62 巻 12 号 p. 2931-2934
    発行日: 2001/12/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    術前に診断可能であり,手術可能であった胃癌の脾穿通の症例報告は稀である.われわれは胃癌の脾穿通の1例を経験し,術前に単純CTで診断しえたので報告する.症例は60歳男性で,食欲不振と体重減少にて当院を受診.初診時, Hb7.5g/dlと高度の貧血を認めた.胃内視鏡検査にて胃体上部後壁のBorrmann III型の進行胃癌と診断した.術前のCT検査で脾臓の空洞化を認めニボー像を有したため脾穿通と診断しえた.膵尾脾切除,左横隔膜部分切除を伴う胃全摘術を行い,術後は良好に経過した.
  • 塩田 喜代美, 植木 孝宜, 塩崎 敦, 青井 重善, 平井 二郎, 中路 啓介, 宮内 卓
    2001 年 62 巻 12 号 p. 2935-2938
    発行日: 2001/12/25
    公開日: 2009/08/24
    ジャーナル フリー
    CA19-9産生胃粘液癌の1例を経験したので報告する.症例は70歳,男性.外来で血清CA19-9の異常高値を指摘され,上部消化管内視鏡検査を行ったところ,胃体下部大彎側にBorrmann 2型の胃癌と診断された.平成12年2月16日幽門側胃切除およびD2郭清術を施行した.切除標本において組織学的にmucinous carcinomaと診断,免疫組織学的にも抗CA19-9抗体に染色された.術後,血清CA19-9値は劇的に低下し, CA19-9産生胃癌,粘液癌と診断された. CA19-9産生胃癌の本邦報告例は,検索しえた限りでは10例しかなく,なかでも粘液癌は非常に稀で3例報告があるのみである.通常の胃癌との予後の比較検討はなく,予後については今後のさらなる症例の蓄積が待たれる.本症例は,術後1年経過した現在も再発兆候を認めず,血清CA19-9値の再上昇もないが,再発についてはさらなる厳重な経過観察が必要と考えた.
  • 和久 利彦, 岡田 博文, 高木 英幸, 元井 信
    2001 年 62 巻 12 号 p. 2939-2942
    発行日: 2001/12/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は52歳の男性.心窩部不快感ありて当院外来受診.上部消化管内視鏡検査で,胃前庭部小彎後壁よりに2型胃癌を認め, 2群リンパ節郭清を伴う幽門側胃切除術を施行した.病理組織所見では粘膜下層にまで,小さく均一でN/C比の大きな未分化な細胞が増殖し, Grimelius染色陽性,免疫組織化学的にはChromogranin A陽性, NSE陽性で早期胃神経内分泌細胞癌と診断した.胃神経内分泌細胞癌は比較的稀であり,その予後は極めて悪い.早期の症例は自験例を含め29例と稀であるが,リンパ節転移を認めない症例は予後良好であった.リンパ節転移が生じる前に発見され手術がなされるのが現時点では有効な治療法と考えられた.
  • 村田 透, 長谷川 洋, 都築 豊徳, 小木曽 清二
    2001 年 62 巻 12 号 p. 2943-2948
    発行日: 2001/12/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は, 47歳の男性.食欲低下および腹部膨満感を主訴として近医を受診後,当院に紹介入院した.入院時の上部消化管造影,内視鏡検査では胃幽門輪から十二指腸球部にかけて高度の狭窄を認めた.腹部超音波, CT, MRIの各画像検査では胆嚢壁肥厚と胆嚢周囲の腫瘤を認めた.胆嚢癌との鑑別に苦慮したが明らかな悪性所見は認められず,胆嚢炎の波及による十二指腸狭窄と術前診断し,胆嚢摘出術,胃切除術(Billroth-II法再建)を行った.切除標本は病理組織学的に,胆嚢は慢性炎症,胃と一部合併切除した十二指腸はクローン病と診断した.また,術後の消化管の検索では,小腸大腸ともに異常を認めなかった.胃十二指腸に病変のおよぶクローン病は稀で特に本例のように十二指腸にのみ病変を認めるクローン病の本邦報告例は本症例を含めて4例と少ない.原因不明の十二指腸狭窄を認めた場合,本疾患も鑑別診断に入れて画像診断を行う必要があると考えられる.
  • 今野 文博, 並木 健二, 松本 宏, 三井 一浩, 吉田 龍一, 桂 一憲
    2001 年 62 巻 12 号 p. 2949-2952
    発行日: 2001/12/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    患者は65歳,土木作業員の男性.突然の腹痛を主訴に受診.汎発性腹膜炎の診断で緊急手術を施行した. Treitz靱帯から1.6mの空腸腸間膜対側に径5mmの小穿孔を認めた.他の腸管に異常は認めなかった.魚骨による穿孔を疑い楔状切除し縫合閉鎖した.約10カ月後,全く同様の所見で当科受診.再度,開腹術を施行した.前回穿孔部の約10cm口側に前回同様の小穿孔が存在した.約8cmの腸管を切除し端々吻合した. 2度の穿孔時の血液検査の共通点は, CPKとLDHの異常高値で,きつい肉体労働によるものと推察された.繰り返す腸穿孔であり基礎的疾患の存在を念頭に諸検査を行ったが,小腸造影にて空腸に憩室が数個存在し,憩室の穿孔と診断した.病理的にも特異性潰瘍疾患は否定され,憩室で矛盾のない所見とされた.小腸憩室は比較的稀な疾患で短期間に穿孔を繰り返した報告は渉猟されない.しかも,きつい肉体労働による腹圧の上昇が穿孔の誘因と思われ興味深かった.
  • 中村 将人, 丸山 憲太郎, 古川 順康, 岡島 志郎, 陶 文暁, 吉原 渡
    2001 年 62 巻 12 号 p. 2953-2956
    発行日: 2001/12/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は36歳の男性,腹痛を主訴に来院した.腸閉塞症を伴い,入院後保存的に加療したが症状増悪し,手術を施行した.まず腹腔鏡下に精査したところ,小腸に癒着する後腹膜の腫瘤を認めた.癒着した小腸の圧迫による絞扼性腸閉塞症と診断し,開腹下に腫瘤を摘出し腸閉塞を解除した.病理組織検査の結果,腫瘤はアニサキス虫体を中心とした好酸球性肉芽腫であった.
    小腸壁から後腹膜に穿通,肉芽を形成し,その圧迫により絞扼性腸閉塞症を生じた非常に稀な小腸アニサキス症を経験したので若干の文献的考察を加えて報告する.
  • 徳留 なほみ, 与儀 喜邦, 井手 秀幸, 東 秀史, 片岡 寛章, 瀬戸口 敏明
    2001 年 62 巻 12 号 p. 2957-2961
    発行日: 2001/12/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    多発性小腸潰瘍をきたし,消化管穿孔で発症した続発性アミロイドーシス症例を経験した.
    症例は61歳,女性. 30年来の慢性関節リウマチ (RA) の既往があった.狭心症の加療目的で当院第1内科に入院中,血便と突然の下腹部痛をきたした.胸腹部X線上free airとイレウス像を認め,消化管穿孔の診断で当科に紹介され,緊急手術を行った.開腹時回腸に穿孔が存在したほか,周囲腸管の充血,浮腫を認めたため,回盲部切除術を施行した.術後一時重篤な合併症をきたしたが,保存的加療で軽快した.切除標本では粘膜面に多発する不整形の潰瘍がみられた.病理組織学的に血管周囲に好酸性物質が沈着し, KMnO4処理後のCongo-red染色所見でAAアミロイドーシスと診断された.
    アミロイドーシスの消化管穿孔例は本邦で過去25例と稀である.基礎疾患としてRAが最多なため, RAの既往がある急性腹症症例では本疾患も念頭におく必要がある.
  • 石橋 敬一郎, 松本 潤, 南 智仁, 由里 樹生, 増子 宣雄, 高見 実
    2001 年 62 巻 12 号 p. 2962-2965
    発行日: 2001/12/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    腸重積症で腸切除を要したアレルギー性紫斑病の1例を経験したので報告する.症例は5歳,女児.上気道症状より発症.大腿後部の紫斑出現後,腹痛,嘔吐,下痢を認め,アレルギー性紫斑病と診断された.当院小児科入院後,ステロイド治療するも腹部全体に圧痛,筋性防御が明らかになり,超音波検査上target signを認めた為,腸重積症の診断で外科転科し手術となった.回盲部から約20cm口側で回腸-回腸型腸重積および腸管懐死を認め,小腸部分切除施行した.術後経過は良好であったが,腎機能障害が出現,次第に増悪,第22病日一日尿蛋白量6.14mg,眼瞼下浮腫も認められた為,腎炎と診断し小児科転科となった.アレルギー性紫斑病は全身小血管の広範な急性炎症性変化であると考えられており,充分な全身検索および治療が必要であると考える.
  • 林 忠毅, 世古口 務, 山本 敏雄, 大澤 一郎, 飯田 拓, 伊藤 史人, 櫻井 洋至, 中村 菊洋
    2001 年 62 巻 12 号 p. 2966-2970
    発行日: 2001/12/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は15歳,男性.右下腹部痛を主訴に来院した.来院時,体温37.1°C, Mc Burney点を中心に軽度の自発痛と圧痛および反跳痛が認められた.全身の表在リンパ節の腫脹は認めず,腹部所見では肝・脾ならびに腫瘤は触知しなかった.末梢血検査では白血球数8,900/mm3と白血球数の増多は軽度であった. CRPは陽性であった.腹部超音波検査および腹部CTでは右下腹部,虫垂の部位に腫瘤が認められたため急性虫垂炎の診断にて手術を施行した.虫垂は根部より約3cmの正常な部位と,先端部に8.5×5×5cmの腫瘤を認めた.周囲のリンパ節腫大は認めず,虫垂切除術を施行した.病理組織学的にはびまん性,大細胞型, B細胞性の悪性リンパ腫(LSG分類)であった.術後全身化学療法(CHOP, 6クール)を行い,術後13カ月の現在再発の徴なく社会復帰している.
  • 金 容輝, 山本 正之, 福田 和弘, 国府 育央, 矢野 外喜治, 山田 克巳
    2001 年 62 巻 12 号 p. 2971-2976
    発行日: 2001/12/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    小児腸重積症は,しばしばみられる疾患であるが,その多くは回腸結腸型であり器質的原因を有するものは稀とされていた.今回,われわれが経験した結腸結腸型は極めて稀であり,その原因が若年性大腸ポリープによる症例は本邦でも少ない.また,内視鏡的ポリープ切除により治癒しえたので報告する.
    症例は6歳,男児.腹痛,鮮血便のため入院となった.腹部所見で膀左側に腫瘤を触知しCT検査にて腸重積と診断され,高圧浣腸で整復するが,再度重積を生じたため,当科紹介となった.注腸造影では下行結腸S状結腸移行部にカニの爪状陰影を認め,先進部に径2.5cm大のポリープ様陰影があったため,大腸内視鏡検査を施行した.下行結腸脾曲側に山田IV型の径2.5cm大ポリープがありポリペクトミーを施行した.その後,症状なく, 4日目に退院した.病理組織所見は若年性ポリープであった.
  • 上甲 秀樹, 矢野 達哉, 増田 潤
    2001 年 62 巻 12 号 p. 2977-2980
    発行日: 2001/12/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は48歳,男性.便秘,腹部膨満感を主訴に来院した. S状結腸軸捻転を認め,大腸内視鏡下のガス吸引にて症状軽快した.しかしながらその後も同症状を繰り返したため入院した.腹部単純X線写真,注腸透視にて著明に拡張したS状結腸を認め,慢性特発性大腸偽性腸閉塞症と診断し,腹腔鏡補助下S状結腸切除術を施行した.術後経過は良好で便通も良好となり,腹部膨満感も消失した.
  • 土橋 隆志, 松本 収生, 嶋 廣一
    2001 年 62 巻 12 号 p. 2981-2985
    発行日: 2001/12/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は59歳の男性で,便秘と左下腹部痛を主訴に近医を受診し,腸閉塞の診断で当院紹介となった.大腸内視鏡検査および注腸造影検査にて腸重積による大腸閉塞と診断し,緊急手術を施行した.下行結腸に腸重積を認め,下行結腸切除術を施行した.切除標本では,下行結腸憩室が内翻し,これが先進部となり腸重積を起こしていた.内翻した結腸憩室が原因となった結腸腸重積症の報告は非常に稀であり,若干の文献的考察を加え報告する.
  • 中井 克也, 松村 理史, 溝渕 昇, 大坊 昌史
    2001 年 62 巻 12 号 p. 2986-2989
    発行日: 2001/12/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は60歳の女性.腹痛を主訴に来院,腸閉塞の診断のもと入院となった.腹部CT検査で上行結腸部に腫瘤を認め,これによる腸閉塞と診断し,イレウス管挿入,吸引療法を施行し症状は改善した.しかし,イレウス管挿入後6日目に突然左上腹部に疼痛を訴え同部に腫瘤を触知した. CT検査を施行したところ,イレウス管留置部の腸重積と診断し同日緊急手術を施行した. Treitz靱帯より約90cmの空腸が約30cmにわたり肛門側空腸へ腸重積を起こしていた.イレウス管先端は回腸末端まで進んでおり,腸重積はその中ほどにおこっていた. Hutchinson手技にて用手整復し重積を解除し,また同時に上行結腸に癌が認められ右半結腸切除術を施行した.今回われわれはイレウス管が原因と考えられる腸重積の1例を経験したので若干の文献的考察を加え報告する.
  • 松本 壮平, 児島 祐, 福本 晃久, 吉田 英晃
    2001 年 62 巻 12 号 p. 2990-2993
    発行日: 2001/12/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は71歳,女性.慢性心不全の治療で,当院内科に入院中,便潜血陽性を認めた.注腸検査で上行結腸に隆起性病変を発見し外科紹介となった.上行結腸癌の診断で結腸右半切除術を施行した.組織診断では,多数の核分裂像を伴った,充実性の小型の細胞からなる腫瘍を認めた.免疫染色ではシナプトフィジン, NCAM染色が陽性,ケラチン,クロモグラニン,グリメリウス, LCA染色陰性で内分泌細胞癌と診断した.術後経過は良好で,術後22日目に退院した.術後4カ月目に肝転移を認めるもPMCTおよびPEITを施行し,術後1年5カ月現在,無再発生存中である.
    大腸内分泌細胞癌は極めて生物学的悪性度が高いため,本邦報告例の集計では,リンパ節転移,肝転移をおこすものが多く,予後不良である.本症例のように術後肝転移をきたしたにもかかわらず,長期生存が得られたものは少なく,手術のみならず,集学的治療を行うべきであると考えられた.
  • 伊藤 康博, 山本 裕, 夏 錦言, 高原 哲也, 飯田 修平
    2001 年 62 巻 12 号 p. 2994-2997
    発行日: 2001/12/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    総腸間膜症に合併したS状結腸軸捻転症(以下,本症と略す)の1例を経験したので文献的考察を加え報告する.症例は75歳,男性で,腹痛,嘔気,嘔吐を主訴に来院した.腹部単純X線写真上著明に拡張した結腸ガス像を認め,さらに注腸造影検査においても拡張した結腸と鳥の嘴状陰影(brid beak's sign)を認めた.大腸内視鏡により腸管内容を吸引,減圧し,症状も改善したが, 2日後に再発したため, S状結腸切除術を施行した.手術所見では,拡張したS状結腸を認め,下行結腸は後腹膜に固定されておらず,同様に盲腸から上行結腸にかけての後腹膜への固定も不十分であったたが,一部腹膜への線維性の癒着を呈していた.切除したS状結腸の病理組織学的検索では, Auerbach神経叢のganglion cellに異常を認めなかった.総腸間膜症に合併する本症の本邦報告例は,自験例を含め6例である.
  • 中崎 隆行, 山田 義久, 橋爪 聡, 谷口 英樹, 中尾 丞, 栄田 和行, 高原 耕
    2001 年 62 巻 12 号 p. 2998-3001
    発行日: 2001/12/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    今回,われわれは比較的稀とされている直腸原発のGIST uncommitted typeの1例を経験したので報告する.症例は85歳女性.下血のため近医より当院紹介入院となる.直腸診では肛門縁直上より前壁を中心に腫瘍を触知し,骨盤MRI検査では直腸と腟の間に腫瘍を認めた.直腸の粘膜下腫瘍(平滑筋肉腫疑い)の診断にて2000年10月11日,腹会陰式直腸切断術,両側付属器,子宮,膣後壁合併切除を行った.腫瘍は8×7cmの腫瘍で粘膜下腫瘍の形態を示し,病理所見では腫瘍は紡錘形の細胞増生よりなり,免疫組織学染色ではSMA, S-100は陰性でCD34, KIT陽性であることより, GIST uncommitted typeと診断した.
  • 清水 徹之介, 冨士原 彰, 小林 正直, 秋元 寛, 森田 大, 福本 仁志
    2001 年 62 巻 12 号 p. 3002-3007
    発行日: 2001/12/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    アメーバ性肝膿瘍腹腔内破裂の1例を報告する.【症例】37歳男性,不特定多数の女性と接触があった. 1カ月前より全身倦怠, 6日前より悪寒・発熱を認めていた.安静時に突然右季肋部激痛が出現し,腹部全体に広がった.肝S7に10cm大の膿瘍,腹腔内に液貯留を認めた.腹腔穿刺で膿性腹水を認め,検鏡にて赤痢アメーバ虫体を確認し,本症と診断した.経皮経肝膿瘍ドレナージ(PTAD)後に開腹し,腹腔洗浄ドレナージを行った.直ちに化学療法を開始し,速やかに解熱した.膿瘍の縮小は順調で, 1カ月後に軽快退院した.
  • 高濱 靖, 上山 直人, 吉川 雅章, 今西 正巳, 本郷 三郎, 中島 祥介
    2001 年 62 巻 12 号 p. 3008-3011
    発行日: 2001/12/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は59歳,女性.知的障害のため1966年から入院加療されていた.突然の黒色の嘔吐を認めた.腹部に圧痛と反跳痛があったが,筋性防御は認めなかった.腹部CTで,肝に多量の門脈内ガス像を認めた.緊急開腹術を行ったところ,腸管壊死はなかったが,回腸が紫色に変色しており,拍動も触知せず,血流障害が疑われた.術中に血流は回復したため,腸切は行わず,術後経過は順調で退院した.術後腹部血管造影検査を行ったが,異常は認めなかった.
    門脈内ガス血症は主に腸管壊死に伴ってみられる合併症で,その際の死亡率は高く,早期の外科処置が必要である.自験例のような腸管壊死を伴わない門脈ガス血症の例も報告されており,鑑別診断が重要であるが,腸管壊死が完全に否定できない門脈内ガスを伴う症例に対しては外科的手術を行うべきと考えられた.
  • 中野 芳明, 門田 卓士, 衣田 誠克, 東野 健, 高橋 秀典, 岡本 茂
    2001 年 62 巻 12 号 p. 3012-3016
    発行日: 2001/12/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は73歳女性.左乳癌(混合型粘液癌)の1年目のルーチン上腹部超音波検査で径8mmの肝腫瘤を認めたが,質的診断ができず,経過観察していた.術後5年目より急速に増大したため,腹部血管造影検査を行い乳癌肝転移と診断した.他臓器に転移を認めず,腫瘤は単発であったため,肝部分切除を行った.病理組織学検査では,乳頭腺管癌であった.粘液癌には,純型と混合型があり,混合型の予後は浸潤性乳管癌と同程度であることから転移が疑われたら,手術時の病理組織標本を見直し,純型か混合型かを確認することが必要である.経過観察中に倍加時間が急に短くなる症例(本症例は12カ月から50カ月までは18.1カ月, 51カ月から64カ月までは4.4カ月であった)があり転移が疑われたら頻回の検索と血管造影などの積極的な検査が必要であると思われた.
  • 谷村 葉子, 水野 伸一, 浅野 英一, 下地 英機
    2001 年 62 巻 12 号 p. 3017-3020
    発行日: 2001/12/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は47歳,女性. 1998年10月上腹部痛を主訴に当院受診した.腹部超音波検査,腹部CTにて胆嚢内に多発する隆起性病変と総胆管の嚢胞状の拡張および肝S3に2個, S6, S7, S8にそれぞれ1個ずつ嚢胞性病変を認めた.内視鏡的逆行性胆管膵管造影にて膵・胆管合流異常と総胆管の拡張,左外側前枝胆管末梢の嚢胞状拡張を認めた.末梢肝内胆管拡張を伴う先天性胆道拡張症と診断した.術後の肝内結石や胆管炎の予防のため肝外胆管切除と同時に肝外側区域切除も施行した.
  • 辻 勝成, 高井 惣一郎, 里井 壮平, 北出 浩章, 權 雅憲, 上山 泰男
    2001 年 62 巻 12 号 p. 3021-3025
    発行日: 2001/12/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は82歳,男性.平成2年8月,右季肋部痛を自覚.精査の結果,胆嚢腫瘍および胆石を指摘.胆嚢癌の診断にて平成2年12月,胆嚢摘除・肝床切除・胃局所切除術を施行.病理所見は肝・胃への浸潤を伴う高分化型管状腺癌, t4 (si, hinf2, binf0, pv0, a0), n0, H0, P0, M(-), stage IVaと進行胆嚢癌であった.術後6年を経過した平成8年11月頃より黄疸・肝機能異常を認め,精査の結果,旧肝床部の腫瘤,肝門部・肝十二指腸間膜リンパ節の腫大,総胆管・肝内胆管の拡張を指摘.胆嚢癌の再発の診断にて平成8年12月, S4a・5肝部分切除・総胆管切除・十二指腸楔状切除・胆管空腸吻合術を施行.病理所見は旧肝床部の高分化型管状腺癌の再発による胆管・十二指腸浸潤であった.その後,肝転移,骨転移を認め,初回手術より9年4カ月後に死亡した.以上,非常に稀な長期生存stage IVa胆嚢癌を経験したので,文献的考察を加えて報告する.
  • 吉本 裕紀, 清水 良一, 佐伯 俊宏, 林 秀知, 原田 俊夫, 和田守 憲二
    2001 年 62 巻 12 号 p. 3026-3029
    発行日: 2001/12/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は46歳男性.初回入院時亜急性胆嚢炎に対し,開腹胆摘術を施行した.術中胆道造影では総胆管の軽度変形はあるものの急性炎症の波及によるものと判断した.術後3カ月目に閉塞性黄疸のため入院,精査後,胆摘に伴う良性胆道狭窄症の診断にて手術を行った.術中迅速でリンパ節転移陽性の胆管癌と診断されたため, PpPDを施行した.病理学的には粘膜下を中心とし神経浸潤の著明な中分化型腺癌であった.胆嚢摘出術3カ月で胆道狭窄をきたし,良悪性の判断に難渋した症例を経験した.胆道狭窄症例に直面したときには,容易に非観血的治療を選択することなく,悪性疾患の可能性も十分に考慮した適切な治療法を選択しなければならないと思われた.
  • 河野 哲夫, 日向 理, 本田 勇二, 山田 治樹, 松田 政徳
    2001 年 62 巻 12 号 p. 3030-3034
    発行日: 2001/12/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    比較的稀な胆嚢扁平上皮癌の1切除例を経験したので報告する.症例は発熱を主訴とした77歳の男性で,腹部超音波検査・腹部CT検査にて,肝右葉前区域を中心に肝外に突出する大きな腫瘍を認めた.肝臓への直接浸潤を伴う胆嚢癌と診断し,肝拡大右葉切除術を施行した.手術所見では, S0, Hinf3, H0, Binf0, P0, N(-), Stage III, Cur Aであった.病理組織学的検査では,腺癌成分は認めず,すべて扁平上皮癌であった.術後4カ月目に十二指腸の局所再発と肝転移で死亡した.
    今後予後改善のためには,胆管浸潤や遠隔転移が少なく局所浸潤傾向が強いという胆嚢扁平上皮癌の特徴から,たとえ進行癌であっても,治癒切除が可能な症例においては,積極的に拡大手術を施行することが必要であると思われた.
  • 海堀 昌樹, 高井 惣一郎, 小池 保志, 辻 勝成, 今村 敦, 川口 雄才, 權 雅憲, 上山 泰男
    2001 年 62 巻 12 号 p. 3035-3039
    発行日: 2001/12/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は59歳,女性.腰背部痛にて近医受診し,腹部エコー検査にて膵尾部に嚢胞性病変を指摘され,精査目的にて当院入院となる. ERP検査では,主乳頭からの造影で樹枝状に短く終わる腹側膵管が造影されたが,副乳頭は内視鏡的に不明であった. MRI検査では病変部にT1強調像で低信号, T2強調像で高信号として描出されたが,内部の微細な隔壁構造は描出しえなかった. MRCPでは背側膵管が末梢まで描出された. ERP, MRCP所見より,腹側および背側膵管は癒合しておらず,膵管癒合不全と診断された. EUS検査では腫瘍は蜂巣状の小嚢胞構造を呈した.膵管癒合不全を伴った膵嚢胞性腫瘍の診断で平成12年9月19日脾温存膵体尾部切除術を施行した.腫瘍は17×11mm大,割面は大小多数の嚢胞の集合像を認め,病理組織学的には漿液性嚢胞腺腫であった.文献上検索しえた限りでは膵管癒合不全と膵漿液性嚢胞腺腫との合併は本例が3例目であった.
  • 平田 稔彦, 山根 隆明, 松金 秀暢
    2001 年 62 巻 12 号 p. 3040-3044
    発行日: 2001/12/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    脾の炎症性偽腫瘍は,病理組織学的に炎症細胞浸潤と間葉組織の修復に特徴づけられる腫瘤性病変である.最近,第1例目は確定診断には至らなかったが,第2例目は初回例の経験から本症を強く疑い摘脾術を施行した脾原発炎症性偽腫瘍の2例を経験したので報告する.いずれも自覚症状はなくエコー検診で異常を指摘された.症例1: 79歳,男性.エコー, CT検査にて脾門部に5cm大の腫瘤性病変を指摘された. Gaシンチにて脾にuptakeを認めたため悪性リンパ腫を疑い脾摘術を行った.症例2: 67歳,女性. 3年間の経過観察中に増大傾向を認めたため手術目的で紹介された.エコー, CT, MRIにて脾下極に6cm大の腫瘤性病変を認めたが確診に至らず,第1例目の経験と除外診断より本症を強く疑い手術を施行した.このように本症の存在を念頭において診断を行えば,ある程度術前診断は可能であると考えられた.
  • 吉村 高尚
    2001 年 62 巻 12 号 p. 3045-3047
    発行日: 2001/12/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    今回,われわれは,転倒時にオートバイのハンドルが受傷機転となり,下腹部広範囲な腹壁損傷をもたらした1例を経験したので報告する.
    症例は, 24歳,男性.平成11年9月4日,オートバイで走行中(ヘルメット着用)に自己転倒し受傷し,当救命救急センターに搬送された.来院時,意識は清明.四肢の骨折および脊椎の損傷はなかったが,左下腹部全体に広範囲にデグロービング様の腹壁損傷がみられ,腸管の脱出を認めた.また,小腸穿孔および左腸骨骨盤骨折を認めた.本例では創の形態から,転倒時に患者が運転していたバイクのハンドルの右側のアームが,患者の右前方より左下腹部に突き刺さるような鈍的外力として働き,生じたものと推測された.
    今後,バイクのハンドルによる腹部外傷から,運転者を守る対策が必要である.
  • 藤政 篤志, 藤政 浩志, 藤政 志朗
    2001 年 62 巻 12 号 p. 3048-3053
    発行日: 2001/12/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    大網に単独で存在した成熟嚢胞性奇形腫を経験したので報告する.
    症例は74歳,女性で,右下腹部腫瘤触知にて入院.腹部X線,超音波, CT検査にて右下腹部(回盲部内側)に周囲の石灰化および内腔に充実性の部分を伴う逆飄箪型の嚢胞性腫瘤がみられた.
    手術所見としては,大網先端部に10×7×4cm(重量120g)の腫瘤がみられ,付着した大網を切離し,摘出した.その他の臓器では,子宮体部に漿膜下筋腫が2個みられた以外には卵巣,後腹膜などに腫瘤を認めなかった.
    病理組織所見としては,成熟した毛髪,骨および白体様組織がみられ,成熟嚢胞性奇形腫と診断された.
    大網の奇形腫は極めて稀であり,検索しえた範囲では,今回の症例は大網の奇形腫(類皮嚢胞腫を含む)としては,本邦文献上, 7例目であった.
  • 堀川 直樹, 東山 考一, 坂本 隆, 塚田 一博
    2001 年 62 巻 12 号 p. 3054-3058
    発行日: 2001/12/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    今回われわれは, cisplatinを主体とした抗癌剤の腹腔内反復注入により,診断後2年余の生存を得た悪性腹膜中皮腫の1例を経験したので報告する.
    症例は74歳,女性.右側腹部痛を主訴に受診し,原因不明の腹水貯留および胆嚢結石を指摘された.開腹手術を行ったところ,淡黄色透明な腹水を多量に認め,腸間膜,右横隔膜下,胆嚢漿膜面,大網など腹腔内の広い範囲に,白色米粒大の硬結が多数散在しており,その一部を切除生検した.術後,病理組織学的にびまん型悪性腹膜中皮腫(上皮型)と診断された.腹腔用リザーバーから, cisplatinを主体とする抗癌剤の腹腔内反復投与を開始し,腹水の増減, CA125の推移を効果の指標としつつ, 2年1カ月目に永眠するまで断続的に継続した.本症の予後は不良で平均生存期間は約1年とされており,自験例における同療法は予後の向上に寄与したと思われる.
  • 広瀬 敏幸, 日野 弘之, 梶川 愛一郎, 三木 啓司, 六田 暉朗
    2001 年 62 巻 12 号 p. 3059-3063
    発行日: 2001/12/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    大腿部に皮下膿瘍を形成した閉鎖孔ヘルニアの2症例を経験したので報告する.
    症例1は85歳,女性.右大腿部の発赤,腫脹および痙痛,皮下気腫を認め,大腿骨頸部骨折の診断にて当院紹介となった.レントゲン写真にて骨折の所見はなかった.経過中イレウス症状を認め,他院にて保存的治療にて軽快していた.また,右大腿部の痔痛を認めていたことより,閉鎖孔ヘルニアの小腸嵌頓,穿孔による大腿部皮下膿瘍との診断にて,同日,緊急手術を行った.開腹所見では,回腸の閉鎖孔への嵌頓を認め,小腸部分切除を行った.また,大腿部は切開排膿ドレナージを行った.症例2は83歳,女性.イレウス症状を認め,他院にて保存的に治療を行っていたが,軽快しないため当院紹介.右ソケイ部より大腿にかけて腫脹および痺痛を認め,閉鎖孔ヘルニアと診断し緊急手術を行った.開腹所見では,回腸の閉鎖孔への嵌頓を認め,小腸部分切除を行った.大腿部は切開排膿ドレナージを行った.
  • 押切 太郎, 冨所 竜也, 坂入 隆人, 近藤 哲, 加藤 紘之
    2001 年 62 巻 12 号 p. 3064-3067
    発行日: 2001/12/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    迅速な診断に超音波検査が有用であった,肝硬変に伴う腹水により発症した稀な成人臍ヘルニア嵌頓の1例を経験したので報告する.症例は57歳の男性で, B型肝炎,肝硬変にて内服治療中であった.数カ月前より腹水の増加を自覚していたものの来院せず放置していたが,腹部の腫瘤,腹痛,嘔吐を主訴に来院した.臍部に発赤を伴う有痛性腫瘤を認め,腹部単純X線写真で小腸の拡張と腫瘤部に一致したX線不透過像を認めた.超音波検査で臍部腹壁の欠損像と小腸の脱出像を認め,臍ヘルニア嵌頓と診断して緊急手術を施行した.ヘルニア内容は小腸と腹水であり,嵌頓発症から数時間以内であったため腸管を切除することなく還納し,ヘルニア門を修復した.術後経過は良好で翌日より経口摂取を開始し, 6病日に内科転科となった.肝硬変患者にとっては小腸切除といえども過大な侵襲になりうるため,超音波検査による迅速な診断,早急な手術が患者救命に重要と考えられた.
  • 原田 直樹, 斉藤 寛, 橘 史朗, 松原 正秀
    2001 年 62 巻 12 号 p. 3068-3072
    発行日: 2001/12/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    特発性血小板減少性紫斑病を合併した仙骨前部領域原発の巨大な骨髄脂肪腫の症例を経験した.症例は59歳,男性, 7歳時に特発性血小板減少性紫斑病と診断され,治療のため31年前よりステロイドによる内服加療中であった.腹部腫瘤が増大出血傾向を伴ったため,開腹腫瘍摘出術を施行した.腫瘍は境界明瞭で,仙骨前面より発生しており,摘出標本の重量は4,614gであった.組織検査では,成熟脂肪織の増生と,その間島嶼状に分布する骨髄細胞成分からなる骨髄脂肪腫であった.骨髄脂肪腫は,骨髄組織と脂肪組織より構成される比較的稀な良性腫瘍で,主に副腎に発生するが,自験例は仙骨前面より発生しており,われわれの検索しえた範囲では本邦報告例としては初めてであり,また腫瘍の大きさも4,614gと骨髄脂肪腫としては,本邦最大であった.幼少期より特発性血小板減少性紫斑病と診断され,長期に及ぶ,副腎皮質ホルモンを内服中であり,腫瘍との関連性も示唆されたため,文献的考察を加え報告する.
  • 宮田 圭悟, 藤井 宏二, 高橋 滋, 竹中 温, 李 哲柱, 竹内 義人
    2001 年 62 巻 12 号 p. 3073-3076
    発行日: 2001/12/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    右卵巣癌摘除後に発生した,左頸部転移および放射線照射後の上肢浮腫に対して,左胸肩峰動脈から鎖骨下動脈に向けて動脈注入用カテーテルを挿入し皮下リザーバーを留置,週1回4時間かけてグリセオール200mlを55回持続動脈注入したところ,左上肢は軟化し周径の縮小をみとめた.
    ハドマー,マイクロ波照射にても軽快しない難治性上腕浮腫に対して,在宅グリセリン動脈注入療法は有用であった.
feedback
Top