日本臨床外科学会雑誌
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62 巻, 4 号
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  • troponin T, creatin phosphokinase, myoglobinとの比較
    宮本 伸二, 葉玉 哲生, 重光 修, 穴井 博文, 迫 秀則, 和田 朋之, 岩田 英理子, 濱本 浩嗣
    2001 年 62 巻 4 号 p. 863-869
    発行日: 2001/04/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    Human fatty acid binding protein (HFABP)は心筋に特異的に豊富に存在し,骨格筋や多臓器での含有量は少ない.今回,このHFABPの心大血管術後の心筋障害指標としての有用性を検討した.対象は冠動脈バイパス術13例,弁置換,形成術10例,弓部もしくは上行大動脈置換術5例,肺塞栓血栓除去術1例で,術前,術直後,術後6時間,術後24時間にHFABP, troponin T, CPKMB (creatin phosphokinase MB分画), myoglobinを測定した. CPKMB, troponin Tは術直後から6時間もしくは24時間までそれぞれプラトーを呈したがHFABPは術直後に最高値を示し,その後速やかに減少した.また冠動脈バイパス術症例でHFABP, troponinT, CPKMBの最高値と大動脈遮断時間との間に有意な正の相関が見られた.HFABPは従来のマーカーより更に早期に心筋障害を評価することが可能であり,複数回の計測での持続上昇は障害の継続性を判断するよい指標となると考えられる.
  • 守本 晃冶, 佐藤 寿彦, 岩切 章太郎, 井関 一海, 佐原 寿史, 岡崎 強, 塙 健, 山下 直己, 松井 輝夫, 桑原 正喜, 松原 ...
    2001 年 62 巻 4 号 p. 870-873
    発行日: 2001/04/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    1989年~1998年の10年間に当院で施行した肺過誤腫切除例46例を対象として,その臨床的特徴について検討した.症例の内訳は男性23例,女性23例で平均年齢は57.7±12.1歳(26~77歳)であった.多発例が2例あり合計48病変にっいて検討した.腫瘍最大径の平均は12.1±6.0mm(5~32mm),発生部位は右肺が34例(上葉15例,中葉6例,下葉13例)で左肺が14例(上葉8例,下葉6例)であった.手術術式は部分切除が38例,核出術が3例,区域切除術が2例,葉切除が5例であった.術前に確定診断を得られた症例はなく全例術中迅速病理診断で肺過誤腫の診断を得た.現在,全症例で再発を認めておらず肺機能を温存した術式,特に部分切除術が妥当と考えられた.
  • 湖山 信篤, 吉田 初雄, 金沢 義一, 山下 直行, 岸本 昌浩, 左近司 光明
    2001 年 62 巻 4 号 p. 874-878
    発行日: 2001/04/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    1986年1月から1997年12月までの12年間に,根治度Aの切除を施行した428例を対象として,他臓器重複癌が,大腸癌治癒切除例の治療成績に及ぼす影響および経過観察における留意点について検討した.重複癌は, 67例 (15.6%) で,臓器別にみると,胃36例 (53.7%),肺9例 (13.4%),膵胆道系6例 (9.0%) などであった.重複の有無別治療成績は,非重複例が有意に良好であったが,多変量解析の結果,重複癌が予後に関与するリスク比は,リンパ節転移程度,壁深達度に比較し低かった.他癌死例の分析では,重複癌の中で最も高頻度の胃癌による死亡は, 3例 (8.3%) と少なく,膵胆道系 (83.3%), 肺 (44.4%) の死亡率が高かった.重複癌,特に,胃癌に対する診断治療の適切さは示唆されたが,膵胆道系,肺の治療成績は不良で,大腸癌の治療過程においても,これらの大腸癌の早期診断に留意することが重要と考えた.
  • 開腹術との比較
    久保 義郎, 栗田 啓, 棚田 稔, 高嶋 成光, 横山 伸二, 多幾山 渉
    2001 年 62 巻 4 号 p. 879-884
    発行日: 2001/04/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    1995年7月~2000年3月までに大腸癌に対し腹腔鏡補助下大腸切除術(LAC)を施行した80例を対象とし,開腹術(Open) 116例と術後経過および予後についてretrospectiveに比較した. LACでは手術時間は164±42.8分(Open;141±38.6分)と長く,出血量は95.1±122g (Open;175±204g)と少なく,術後1日目の白血球数は8,280±2.370/mm3 (Open:9,870±3,100/mm3)と少なかった(p<0.01). LACでの歩行開始は平均術後1.4日目,排ガスは2.1日目,食事開始は3.5日目で,いずれもOpenに比べて有意に早かった(p<0.01). LACの合併症は8例(10%)で, Openは16.4%で差はなかった.進行癌においてLACの3年無再発生存率は92.7%, Openは92.3%であった. LACは低侵襲で術後QOLも良好であり,術後約30カ月の平均観察期間では予後に差を認めなかった.
  • 矢形 寛, 花輪 孝雄, 鈴木 正人, 長嶋 健, 橋本 秀行, 中島 伸之
    2001 年 62 巻 4 号 p. 885-888
    発行日: 2001/04/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    乳腺ductal adenomaは主に40歳以上の女性にみられる良性疾患で,しばしば乳癌との鑑別に難渋する.われわれは若年女性で妊娠期に発見された乳腺ductal adenomaの1例を経験したので報告する.症例は29歳女性で,妊娠8カ月目に右乳房のしこりに気づき来院.右内下領域に約2cmの不整な腫瘤を触知.超音波検査にて分葉状で内部エコー不均一な低エコー域を認めた.穿刺吸引細胞診では多量の上皮細胞が採取されていた.核異型は軽度で2相性を認めたが,一部に重積性とほつれがみられ,診断のために生検を行った.組織学的に腫瘍は乳管内における小腺管の密な増生からなり,乳頭状構造はみられなかった.診断はductal adelloma, 良性とされた.乳腺ductal adenomaは臨床的にも組織学的にも癌に類似した所見を示すことがあり,注意深い診断が必要である.
  • 森岡 大介, 長堀 薫, 岩崎 博幸, 前原 孝光, 天野 富薫, 嶋田 紘
    2001 年 62 巻 4 号 p. 889-893
    発行日: 2001/04/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は73歳の女性. 1997年12月に右前腋窩部の腫瘤を自覚したが放置していた. 2000年5月になり,同部の腫瘤に疼痛を認めさらに右鎖骨上窩にも腫瘤を自覚し当科に受診した.前腋窩部腫瘤の吸引細胞診の結果class V: adenocarcinomaで,造影MRIでのみ右乳房内に腫瘤を認め潜在性乳癌と診断し定型的乳房切除術+R3リンパ節郭清を施行した。病理組織所見では,原発巣は右乳房CA領域のinvasive lobular carcinomaで一部にsignet ring cellへの脱分化が見られたが,転移巣はsignet ring cellで占められていた. signet ring cellに脱分化し悪性度の高い増殖能を獲得した腫瘍細胞が転移巣で急速に増大したものと考えられた. 2年半の間,潜在性乳癌の自然経過を観察しえた興味深い症例と考え,若干の文献的考察を加え報告した.
  • 森本 啓介, 谷口 巌, 中村 嘉伸, 佐伯 宗弘, 山家 武
    2001 年 62 巻 4 号 p. 894-898
    発行日: 2001/04/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    冠状動脈病変(CAD)を合併した腹部大動脈瘤(AAA) 3症例に対して,体外循環を用いない心拍動下(off pump)冠状動脈バイパス術(CABG)と人工血管置換術を同時に施行し,良好な結果を得たので報告する.症例1は65歳男性.冠状動脈造影(CAG)で右冠状動脈(RCA)#1の閉塞所見を認めた.手術は,腹部正中切開に胸骨下部逆L字切開を連続させ,右胃大網動脈を剥離し,これを経横隔膜的にRCA#2へ心拍動下に吻合した.次にAAAに対して人工血管置換術を施行した.症例2, 3は66歳および81歳男性. CAGで前下行枝(LAD)#7に90%狭窄を認めた.手術は胸腹部正中切開にて左内胸動脈を剥離し,これをLAD#8へ心拍動下に吻合した後,人工血管置換を施行した.いずれの症例も術後経過良好で軽快退院した. CADを合併したAAAに対して, off pumpでのCABGとの一期的手術も治療戦略の1つとして考えられる.
  • 藏井 誠, 矢満田 健, 牧内 明子, 坂井 威彦, 近藤 竜一, 天野 純
    2001 年 62 巻 4 号 p. 899-902
    発行日: 2001/04/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    鈍的胸部外傷により生じた気管.気管支損傷に対して緊急気管・気管支形成術後に縫合不全を生じた修復部の圧軽減のため呼吸器を2台使用し,左右同調による別換気にて呼吸管理を行い救命した症例を経験したので報告する.
    症例は32歳,男性.仕事中,前胸部に鈍的外傷を受け,当院に搬送された.胸部CTにて気管損傷と診断し,気管支鏡にて損傷範囲を確認後,左用のダブル・ルーメンチューブを挿管し,直ちに気管・気管支修復術を施行した.術後は動揺胸に対する内固定のため従量換気にて約2週間の人工呼吸器管理の方針とした.しかし第4病日に右胸腔ドレーンより軽度のエア・リークが認められたため縫合不全を疑い,右主気管支修復部の圧を軽減する目的で呼吸器を2台同調させ使用し,左は従量換気,右は従圧換気による呼吸管理を行った.同呼吸管理にて縫合不全も軽快し,第21病日退院した.
  • 岩切 章太郎, 岡崎 強, 塙 健, 佐藤 寿彦, 桑原 正喜, 松原 義人
    2001 年 62 巻 4 号 p. 903-906
    発行日: 2001/04/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は52歳の男性.発熱・呼吸困難を主訴に前医を受診.肺炎と診断され治療を受けたが肺炎が急速に進行,呼吸不全で当科入院となった.気管支鏡では気管分岐部のすぐ末梢,右主気管支開口部に主気管支を完全閉塞する腫瘍が認められ扁平上皮癌による閉塞性肺炎と診断した.入院後も閉塞性肺炎は急速に進行, PS3と全身状態は悪かったが,局所制御で全身状態が改善できると考え,気管支動脈内抗癌剤注入療法を施行した.右気管支動脈造影では著明な腫瘍濃染がみられ,選択的にCDDP50mgを注入した.副作用は3日間のgrade 3の発熱のみで腫瘍は著明に縮小し,閉塞性肺炎および全身状態は改善しPSOとなった. CT・MRI・骨シンチで遠隔転移を認めなかったので手術を施行,右肺摘除および気管合併切除にて完全切除した.術後経過は良好でpT4N1M0・stage IIIbと診断した.術後は補助化学療法を施行し, 7カ月の時点で再発の徴候はない.
  • 小谷 一敏, 梅森 君樹, 牧原 重喜
    2001 年 62 巻 4 号 p. 907-910
    発行日: 2001/04/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    今回われわれは保存的治療にて軽快せず,胸腔鏡下手術を施行した特発性乳び胸の1例を経験した. 76歳,女性.近医にて胸水を指摘され当院に紹介入院となった.特発性乳び胸と診断し保存的に治療するも軽快せず胸腔鏡下に手術を施行した.胸管からの乳びの漏出部位が確認できなかったため,横隔膜直上で胸管をクリッピングした.術後は胸膜癒着術を2回施行した. 13日目から経口摂取を開始したところ胸水の増加を認め絶食とした.術後29日目から再度経口摂取を開始したところ胸水の増加はなく,術後56日目に退院した.
    成人発症の特発性乳び胸は稀であり,本邦では自験例を含めて31例が報告されているのみであった.
  • 嶋岡 徹, 藤島 宣彦, 三浦 源太, 山口 方規
    2001 年 62 巻 4 号 p. 911-914
    発行日: 2001/04/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    胸腺腫が重症筋無力症を合併することは,よく知られている.今回われわれは,重症筋無力症合併胸腺腫の術前検査中に多発胃癌を認め,手術を二期的に行った症例を経験したので報告する.症例は74歳,男性.重症筋無力症で内服加療中に,胸部CTにて胸腺腫を指摘された.また,上部消化管内視鏡検査にて多発胃癌を認めた.手術は,第一期に胸腺腫・胸腺摘出術,第二期に胃全摘術を施行した.第一期術後経過は,良好で重症筋無力症の内服治療の必要がなくなるまで軽快した.第二期術後1カ月半後に感冒を契機に重症筋無力症クリーゼの状態に陥ったが,人工呼吸管理,ステロイドパルス療法にて徐々に回復した.胸腺腫は,胸腺腫以外の悪性腫瘍の合併率が高いとの報告もあり,術前および術後定期的に全身的検索の必要性が重要であると考えられた
  • 四方 裕夫, 上田 善道, 土島 秀次, 野中 利通, 松原 純一, 渡邊 洋宇
    2001 年 62 巻 4 号 p. 915-919
    発行日: 2001/04/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は21歳,男性.検診の胸部写真で異常を指摘された.次第に呼吸困難出現,酸素吸入,仰臥位不能となった.強い胸背部疼痛のため麻薬系鎮痛剤を要した.経胸壁的針生検で胸腺腫を疑った.化学療法予定であったが,急速に腫瘤が拡大,症状が増悪し,緊急手術となった.胸腔・心嚢内に多量の褐色胸水を認めた.腫瘍は右胸腔全体を占め,縦隔・心嚢に浸潤しており,病期はIIIと診断された.腫瘍の一塊切除は困難で心膜合併切除を伴う分割切除を行った.腫瘍は総重量2480gで肉眼的に完全切除した.腫瘍の主体はtype B2, 浸潤部はtype B3の胸腺腫であった.この胸腺腫gelatinase活性は極めて高く急速に拡大浸潤した原因と推察した.術前の心タンポナーデ症状は術直後より消失した.術後経過良好で,呼吸困難・疼痛の消失,食欲の出現,体重増加を得た.後療法のため術後約1カ月で呼吸器内科へ転科した.
  • 河田 光弘, 佐藤 直夫, 中山 伸一, 古川 祐介, 今西 宏明, 上妻 達也
    2001 年 62 巻 4 号 p. 920-923
    発行日: 2001/04/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    帯状疱疹後神経痛(postherpetic neuralgia: PHN)は,難治性疼痛疾患の1つとされる.われわれは,右側腹部のPHNに対して胸腔鏡下胸部交感神経節切除が著効を示した1例を経験したので報告する.症例は79歳男性.右側腹部に皮疹が出現し,近医皮膚科にて帯状庖疹と診断され治療を受けていた.右側腹部痛が増強し経口摂取も不能となり精査加療目的に当院入院した.入院時には右側Th9~Th11領域体幹に限局した褐色の皮疹あり,疼痛は同部位が限局していた. PHNと診断したが,鎮痛剤,持続硬膜外ブロックでは疼痛コントロールできず,胸腔鏡下右胸部交感神経節(Th9~Th11)切除を施行した.術直後より右側腹部痛は消失した.摘出標本では神経節細胞の破壊,神経食現象(neuronophagia),リンパ球,形質細胞の浸潤, CowdryA型核内封入体を認めvaricella-zoster virus: VZVによる交感神経節炎と診断された.
  • 長 靖, 菱山 豊平, 池田 淳一, 中村 豊, 鈴置 真人, 柴野 信夫, 加藤 紘之
    2001 年 62 巻 4 号 p. 924-928
    発行日: 2001/04/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    1984年1月から1997年12月までの14年間に外傷性横隔膜破裂症例17例を経験した.年齢は9~78歳,男性10例,女性7例.受傷原因は16例が交通事故であり,全例が合併損傷を伴っていた.破裂側は右側4例,左側13例であった. 15例は術前診断可能であったが, 2例(右側例)は術中所見にて診断された.治療は17例全例に手術を施行した.開腹11例(全て左側例),開胸3例(右2例,左1例),開胸開腹3例(右2例,左1例)であった.破裂部の修復は17例中16例は直接縫合を行い, 1例は肋骨への縫着を行った.死亡例は3例(大血管からの失血,呼吸不全,脳出血)であった.予後は合併損傷に左右されていた.外傷性横隔膜破裂症例では大血管損傷の有無,急性期か慢性期かを考慮し適切なアプローチによる手術が必要と思われた.
  • 吉田 秀明, 枝澤 寛, 野納 邦昭, 鎌田 剛, 加藤 紘之
    2001 年 62 巻 4 号 p. 929-933
    発行日: 2001/04/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    脾彎曲部結腸の完全断裂と胃穿孔をきたし,重篤な転帰をとった成人Bochdalek孔ヘルニアの1例を報告する.
    症例は61歳,女性.数年前から食道裂孔ヘルニアを指摘されていたが特に強い症状なく経過していた.しかし,今回,心窩部痛,嘔気,摂食困難を主訴に入院した.入院時の胸部X線写真で左胸腔に鏡面像を伴う巨大な異常ガス像を認めた.MRI前額断と矢状断によりヘルニア門はBochdalek孔と診断でき,また胸腔内脱出臓器は胃と結腸と考えられた.左無気肺の進行と炎症所見の急激な増悪のため入院9日目に緊急手術を施行した.手術所見では胃体部と完全離断された約30cmの結腸ループが左胸腔内に脱出していた.離断結腸切除,胃穿孔部閉鎖,結腸-結腸吻合,ヘルニア門の一次縫合閉鎖を施行した.しかし患者は敗血症状態から脱却できず術後40日目に入院死した.
  • 田中 寿明, 藤田 博正, 末吉 晋, 唐 宇飛, 山名 秀明, 白水 和雄
    2001 年 62 巻 4 号 p. 934-937
    発行日: 2001/04/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    血球貪食症候群を合併した食道癌症例を経験したので報告する.症例は57歳の男性で,前医にてMtからLtにわたる2型の進行食道癌の診断にて当科紹介入院した.精査にて肝転移ならびに頸・胸・腹部リンパ節転移を認めたため,化学放射線治療を行った.その経過中に発熱,血小板の減少を認めた.骨髄穿通刺にて血球貧食症候群の診断を得たため,ステロイド療法を施行し一旦は症状の緩解をみたが,最終的には原腫瘍の進展とともに敗血症に起因するDICにより死亡した.悪性疾患に伴う血球減少の際,鑑別診断の一つンして重要と思われた.
  • 田口 泰三, 三坂 和温, 浜島 秀樹, 武藤 邦彦, 小嶋 心一, 砂川 正勝
    2001 年 62 巻 4 号 p. 938-941
    発行日: 2001/04/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は54歳,男性.胸痛出現後1週間の経過の後,背部痛,発熱が認められ来院.胸部単純X線では縦隔の拡大,縦隔気腫を認めた.食道造影では明らかな造影剤の漏出は認めなかったが,胸部CT所見上縦隔気腫・膿瘍および膿胸を認め,特発性食道破裂と診断した.発症から1週間が経過していたこと,全身状態が比較的安定していたことから保存的治療を選択したが,再検したCTにて所見の増悪を認め,第5病日緊急手術となり,右開胸,左開胸・開腹による洗浄・ドレナージ術を施行した.さらに重症敗血症,多臓器不全に対しエンドトキシン除去療法と血液浄化法の併用療法等を施行し全身状態の改善が得られた.その後のCT所見で縦隔膿瘍,右側膿胸は軽快したが,左側膿胸および後腹膜膿瘍がドレナージしきれないと判断し,再度左開胸・開腹にて洗浄・ドレナージ手術を施行し,入院第212病日に全身状態良好で退院となった.
  • 伊志嶺 朝成, 長嶺 義哲, 古波倉 史子, 宮平 工, 新里 誠一郎, 棚田 文雄, 徳山 清之
    2001 年 62 巻 4 号 p. 942-946
    発行日: 2001/04/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    今回われわれは,ネフローゼ症候群合併胃癌に対し,アルブミン製剤, FFP (fresh frozen plasma)を補充しても血清アルブミン値の改善を認めず,全身浮腫,胸水が改善しない症例に対し,アルブミン製剤, FFPを補充しなが, ECUM (Extra Corporeal Ultrafiltrating Method), HD (Hemodialysis)を行い,血清アルブミン値を上昇させ,全身浮腫,胸水を改善し根治手術を施行した.
    症例は, 50歳男性.ネフローゼ症候群(膜性腎症)にて治療中,平成9年9月11日,上部消化管内視鏡にて胃噴門部癌(IIc-SM)を認めた.術前,アルブミン製剤, FFPを補充するも, TP3.9g/dl, Alb1.9g/dlと改善を認めなかったため透析療法を併用し, Alb3.3g/dlとし,同年12月8日,胃噴門部切除+D1リンパ郭清,食道残胃吻合術を施行した.(中分化型腺癌, IIc, T1 (sm), n0, ly0, v0, H0P0S0N0M0, stage 1)術後21日目に透析より離脱し,平成10年1月19日軽快退院(BUN15.6mg/dl, Cre1.3mg/dl)となった.
  • 道清 勉, 荻野 信夫, 長谷川 順一, 山邉 和生, 奈良 啓悟, 相馬 大人
    2001 年 62 巻 4 号 p. 947-952
    発行日: 2001/04/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    胃体部の進行癌に前庭部の絨毛腺腫内癌が合併した1例を経験したので報告する.症例は82歳男性,主訴は食欲不振.精査にて胃体部の全周性の進行胃癌と前庭部の絨毛腺腫と診断した.また,術前検査にて左腎腫瘍を認めた.両病変に対して,一期的に胃全摘術,摘脾,左腎摘出術を施行した.摘出標本で胃の病変は体上部から下部にかけて存在する5型胃癌とそれに接して前庭部から幽門輪にかけて全周性に存在する絨毛腫瘍の合併であった.病理組織学的には,体部の腫瘍は深達度seの低分化腺癌,前庭部の絨毛腫瘍は深達度mの高分化腺癌を一部に認める絨毛腺腫であったほ両腫瘍間には明かな境界が存在した.一方,腎病変は腎細胞癌,混合型であった.
  • 小野 仁志, 湯汲 俊悟, 村上 誠, 吉川 浩之, 池上 玲一, 佐藤 元通
    2001 年 62 巻 4 号 p. 953-957
    発行日: 2001/04/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    腸間膜癒着によるイレウスを伴った回腸アニサキス症を経験した.症例は,42歳男性.カツオの刺身摂取後,臍下部の腹痛が続くため,当科を受診した.腹部単純写真で小腸の拡張と鏡面像が認められた.イレウスを伴う急性腹症と診断し緊急手術を行った.回腸末端より約90cmの小腸が発赤し,約10cmにわたり腸間膜の浮腫を認め,内腔に弾性軟の隆起性病変を触知した.また,回腸末端より40cmの腸間膜に炎症性癒着を認め,癒着性腸閉塞をおこしていた.癒着剥離と小腸部分切除術を行った.切除標本では,粘膜壁が腫大し,陥凹病変の中心に粘膜に刺入する線虫を認め,回腸アニサキス症と診断した.アニサキスによるイレウス発生機序を文献から考察した.イレウスは,虫体の存在する部位の腸管浮腫および狭窄さらには腸間膜血流障害などから発生する事が多いと考えられた.
  • 野中 泰幸, 津下 宏, 湯村 正仁
    2001 年 62 巻 4 号 p. 958-961
    発行日: 2001/04/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は23歳,男性.激しい腹痛を主訴に来院.右中下腹部に筋性防御を伴う圧痛を認め,急性虫垂炎による腹膜炎の診断にて緊急手術を行った.虫垂はほぼ正常.癒着し狭窄を伴った終末回腸と,これに続く口側回腸の拡張あり,拡張腸管の腸間膜側には穿孔を認めた.穿孔部を含め回盲部より約1mの回腸を回盲部とともに切除し,一期的吻合再建を行った.切除標本では,終末回腸に縦走潰瘍と痩孔形成がみられ,回盲部より約50cmの潰瘍内に穿孔部が認められた.組織学的にはリンパ球浸潤と非乾酪性類上皮細胞肉芽腫を認め, Crohn病と診断された.穿孔原因として,遠位腸管の癒着・狭窄による腸管内圧の上昇と潰瘍性病変の急性増悪が考えられた. Crohn病は穿孔による腹膜炎で急性発症する例も少なからず認められるため,穿孔性腹膜炎の鑑別疾患の一つとして考慮すべきと考えられた.
  • 清水 哲也, 恩田 昌彦, 古川 清憲, 吉村 和泰, 源河 敦史, 内藤 善哉
    2001 年 62 巻 4 号 p. 962-966
    発行日: 2001/04/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    大量下血にて発症し緊急手術を余儀なくされた小腸gastrointestinal stromal tumor (GIST) の1例を経験したので報告する. 31歳男性,持続する大量下血による貧血にて近医より紹介となる.腹部CT検査で腹腔内に9×7cm大の経時的に移動する腫瘤があり,出血シンチグラフィーで小腸より出血が確認された.血管造影検査では明らかな造影剤の漏出像はなかったが回腸動脈の分枝より栄養される腫瘍を認めた.下血は入院後も持続し緊急手術を施行,トライツ靱帯より250cmの回腸腸間膜対側に11×8cm大の腫瘤を認め,腫瘍を含む小腸部分切除を行った.術後経過順調にて第16病日退院となった.病理・免疫組織学的所見よりGIST (uncommitted type) と診断された.
    十二指腸を除く小腸は部位的にも質的診断が困難な上,小腸出血は消化管出血の頻度としては稀であるが,下血の際には小腸GISTも念頭におき加療する必要性があることが示唆された.
  • 亀井 義明, 岡田 憲三, 岩川 和秀, 中川 博道, 角岡 信男, 高井 昭洋, 成本 勝広, 梶原 伸介
    2001 年 62 巻 4 号 p. 967-970
    発行日: 2001/04/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は61歳,男性.平成11年8月8日大量吐血し当院内科受診.食道静脈瘤破裂,肝硬変の診断にて内視鏡的静脈瘤結紮術を施行された.その後入院中であったが,平成11年8月27日朝より腹痛出現し,次第に増強しショックとなり,腹部CTにて盲腸から上行結腸にかけて高度の腸管浮腫を疑う著明な腸管の壁肥厚像を認めたため外科紹介となり緊急手術を施行した.上行結腸に虚血性変化を認めるも術中確定診断するには至らず,右結腸切除術を施行した.病理所見にて粘膜下層に著明な好中球のびまん性浸潤を認めることから蜂窩織炎性大腸炎と診断された.術後敗血症性ショック,肝,腎不全,播種性血管内凝固症候群となり集中的治療にもかかわらず術後16日目に死亡した.
    本疾患は非常に稀な疾患であるが,発症時すでに重篤で,予後不良である場合が多い.早期診断のためには,肝硬変患者における急性腹症に対して本疾患も念頭に置く必要があると思われる.
  • 市原 利晃, 三毛 牧夫, 天満 和男, 籾山 博英, 中村 政勝, 中村 正明
    2001 年 62 巻 4 号 p. 971-976
    発行日: 2001/04/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    大腸に狭窄や閉塞をきたした場合,その口側の腸管に非特異的潰瘍またはびらんが生じることがあり,この病態は閉塞性大腸炎と呼ばれている.大腸癌に合併した閉塞性大腸炎の手術例の3例を検討した.
    3例とも手術中に大腸粘膜の病変や炎症の程度を漿膜側から観察で診断することは困難だった.また,閉塞性大腸炎の粘膜病変は可逆的な病変と考えることが出来る症例を認めた.したがって,一時的に人工肛門を造設し,大腸を温存できる症例も少なくないと思われ,症例を重ねることにより,本症例の術式を十分検討していく必要があると考えられる.
  • 九野 広夫, 谷村 弘, 山本 基, 谷 眞至, 山上 裕機
    2001 年 62 巻 4 号 p. 977-982
    発行日: 2001/04/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は68歳の男性で14年前に直腸癌の診断で腹会陰式直腸切断術を受け, 1998年3月には異時性重複癌として横行結腸癌に対する横行結腸切除術および小腸部分切除術を受けた.手術所見はSi, N2 (+), P0, H0; Stage IIIbで, 3カ所で小腸への直接浸潤を認めた.術後の腹部CTで肝S6とS7にそれぞれ2.5cmのSOLを認め,同年8月肝後区域切除術を施行した. 1999年6月にはCEAが719ng/mlと高値をなし,腹部CTで残肝のS5とS8にそれぞれ1cmと5.5cmのSOLを認め,右副腎浸潤を疑わせる所見を呈した. 7月12日肝前区域切除術および右副腎切除術を施行した.
    その後,胸部CTにて右肺野および胸壁に多発性の腫瘍が見つかり, 1999年12月右胸壁部分切除術および右肺部分切除術を施行し,肉眼的にはtumor freeとした.
    その間,切除癌組織を用いて抗癌剤感受性試験を4回行い,その結果に基づいた癌化学療法をそれぞれ行った.初回手術から2年8カ月が経過した現在,再発や転移を認めていない.
  • 山中 秀高, 堀 昭彦, 平松 聖史, 北川 喜己, 河野 弘, 松浦 豊
    2001 年 62 巻 4 号 p. 983-987
    発行日: 2001/04/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    大腸脂肪腫は比較的稀で,回盲弁脂肪腫はさらに稀な疾患である.今回われわれは回盲弁脂肪腫の1例を経験したので,重複腫瘍を含め若干の文献的考察を加え報告した.
    症例は86歳,男性.腸閉塞による右下腹部痛にて発症し入院した.右下腹部に圧痛を伴う径5cm大の腫瘤を触知し,腹部造影CT,大腸造影および内視鏡検査にて,上行結腸癌への脂肪腫の腫瘍重積と呼べるような状態を認めた.回腸原発脂肪腫による腸重積を合併した上行結腸癌と診断し,回腸を5cm含め, 3群リンパ節郭清を伴う右半結腸切除術を施行した.切除標本にて脂肪腫は回盲弁上唇原発であった.病理組織学的所見にて線維性被膜と隔壁を有し,異型のない成熟脂肪細胞の増殖を認め,良性の脂肪腫と確診された.
    大腸脂肪腫は重複腫瘍が多いとされており,今回,回盲弁脂肪腫について検討し,自験例の特異性についても報告した.
  • 尾形 徹, 川本 純, 山東 敬弘, 藤本 三喜夫, 中井 志郎, 増田 哲彦, 安井 弥
    2001 年 62 巻 4 号 p. 988-991
    発行日: 2001/04/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    患者は55歳,女性.膣内部しこり感を主訴に近医受診し精査加療目的に当院入院,諸検査にて直腸Rb前右側,いわゆる直腸膣中隔に粘膜下腫瘍を認めた.経肛門的に生検を施行しgastrointestinal stromal tumor (GIST) と診断した.性,排便機能の温存を考慮し手術は経膣的に腫瘍摘出術を施行した.病理学的にはHE染色では紡錘形細胞が密に交差し増生しており,各種免疫染色にて, GIST, uncomitted type, malignantと診断した.術後10カ月現在再発の兆候はない.直腸原発GIST症例は患者のQOLを考慮した術式の選択が必要と思われ,そのためにGISTの新たな分類に基づいた臨床病理学的性格の解明が必要と考えられる.
  • 道輪 良男, 江嵐 充治, 小林 弘信, 松木 伸夫
    2001 年 62 巻 4 号 p. 992-996
    発行日: 2001/04/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は76歳,女性.下血を主訴に来院し直腸 (Rb) に3型直腸癌が認められ,D2リンパ節郭清を伴う低位前方切除術が施行された.術後3週,注腸で直腸膣瘻が認められ,注腸用チューブ,縫合閉鎖を行ったが軽快せず,術後8週経肛門的減圧チューブによる治療を開始した.挿入後5週で直腸膣瘻は軽快し, 6週で減圧チューブを抜去した.しかし抜去後3週で直腸膣瘻が再燃し,減圧チューブを再挿入し,再挿入後3週で直腸膣瘻は軽快,術後6カ月退院した.退院後1カ月直腸膣瘻が再燃し,経肛門的減圧チューブを挿入,挿入後5週で直腸膣瘻は治癒し再入院後2カ月退院した.現在術後2年4カ月直腸膣瘻の再燃および直腸癌の再発は認められない.
    低位前方切除後直腸膣瘻に対して保存的に治癒した例は本邦報告例で3例認められるが,経肛門的減圧チューブにて治癒しえた症例は本邦初と思われ報告した.
  • 神田 和亮, 入江 真, 甲斐 信博, 南 宣行
    2001 年 62 巻 4 号 p. 997-1001
    発行日: 2001/04/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    Fitz-Hugh-Curtis症候群は,性感染症が原因となって起こる肝周囲炎であり,主な起炎菌はClamydia trachomatisである. Clamydia trachomatisによるFitz-Hugh-Curtis症候群の1例を報告する.症例は19歳女性,下腹部痛に続く右季肋部痛で入院した.入院17日前に人工妊娠中絶を受けている.入院後,クラミジアRNAおよびクラミジアIgA, IgG抗体が陽性となり,臨床症状と併せてFitz-Hugh-Curtis症候群と診断した.抗生剤による保存的治療が奏功した.
    クラミジア感染症の増加が問題となっている現在,右上腹部痛を訴える女性の診療の際には当症候群の存在を念頭に置くことは重要であると思われる.
  • 真鍋 達也, 武田 成彰, 阿部 祐治, 西原 一善, 勝本 富士夫
    2001 年 62 巻 4 号 p. 1002-1006
    発行日: 2001/04/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    肝嚢胞性疾患の中で,肝嚢胞腺腫は肝嚢胞腺癌への移行が知られ,その治療法は嚢胞完全切除と非腫瘍性嚢胞と大きく異なり,両者の鑑別は非常に重要である.今回われわれは多房性嚢胞で腫瘍性嚢胞を疑い,切除した嚢胞腺腫3例を経験した. CT, USにて2例に石灰化,血管造影にて2例に実質相での濃染像を認めたが,組織学的に悪性所見はなかった. 3例とも緻密な細胞間質,いわゆるovarian-like stromaを伴わず, cystadenoma with mesenchymal stroma (CMS)とは異なるものであった.腫瘍性嚢胞が疑われる場合は嚢胞完全切除を行うべきである.
  • 坂本 一博, 諌山 冬実, 奥澤 淳司, 井上 裕文, 塚田 健次, 市川 純二, 鎌野 俊紀, 鶴丸 昌彦
    2001 年 62 巻 4 号 p. 1007-1012
    発行日: 2001/04/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    多発性肝転移を伴った大腸癌症例に対して,主病巣切除と肝転移巣に対してマイクロ波凝固療法(MCT)と肝動注化学療法(HAIT)を施行し, 2例の長期無再発生存例を経験したので報告する.
    症例1:38歳の男性. S状結腸癌(H3)の診断で, S状結腸切除・MCTを施行した.手術所見ではSS, N1, P0, H3であった.術後5-FUによるHAITを行い,腫瘍マーカーは術後4カ月で正常化した. 5-FUの総投与量は62gで,術後34カ月無再発生存中である.
    症例2:50歳の男性.直腸癌(H3)の診断で,低位前方切除・肝部分切除・MCTを施行した.手術所見ではSM, N0, P0, H3であった.術後HAITを施行し,腫瘍マーカーは術後4カ月で正常化した. 5-FUの総投与量は33.5gで,術後16カ月無再発生存中である.
    多発性肝転移に対して,マイクロ波凝固療法と肝動注化学療法を組み合わせた集学的治療は有効な治療法の1つであると考えられた.
  • 品川 裕治, 橋本 毅一郎, 和田守 憲二, 林 秀知, 清水 良一
    2001 年 62 巻 4 号 p. 1013-1016
    発行日: 2001/04/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    胆石の嵌頓が胆嚢捻転症の-要因となったと考えられる11歳の女児例を経験した.胆石を伴う急性胆嚢炎の診断で腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行した.胆嚢はGross 2型の遊走胆嚢で,頸部で時計方向に180度捻れており,暗赤色を呈していた.病理診断は,急性出血性壊死性胆嚢炎であった.
    小児の胆嚢捻転症は,極めて稀な疾患である.本邦報告例では胆石を伴ったものは見られず,無石であることが小児例の特徴との報告もあるが,有石例もあり得ることを強調したい.
  • 佐藤 正幸, 宮澤 正紹, 武藤 淳, 菅野 明弘, 蘆野 吉和, 松代 隆
    2001 年 62 巻 4 号 p. 1017-1020
    発行日: 2001/04/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    腹腔鏡下胆嚢摘出術の術中に落下した結石が原因となり腹腔内膿瘍形成後,胸腔に穿破を認めたため,手術を要した症例を経験したので報告する.
    症例は73歳女性.急性胆嚢炎,胆嚢結石症にて腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行した.術中に胆嚢損傷で結石が腹腔内に落下したが可及的に回収.術後経過は良好で退院した.
    術後9カ月後,右側腹部痛,全身倦怠感,呼吸苦,両下肢の浮腫を主訴に再入院した.右横隔膜下に結石を伴う腹腔内膿瘍を認め,さらに右胸腔内に通じる瘻孔を確認した.以上より全身麻酔下に膿瘍ドレナージ,結石摘出と瘻孔切除術を施行した.経過は良好で現在まで再発は認めていない.
    腹腔鏡下胆嚢摘出術における落下結石は稀に本症例のように膿瘍形成,胸腔への瘻孔形成することもあり,落下結石の予防は大切である.僅かな落下結石もできるだけ回収し,術後,長期に観察することが大切と思われる.
  • 中村 二郎, 吉田 経雄, 藤井 秀樹, 松本 由朗
    2001 年 62 巻 4 号 p. 1021-1024
    発行日: 2001/04/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は64歳男性. C型慢性肝炎を指摘され,インターフェロン治療後外来通院していた.臍周囲痛を主訴に外来を受診し,腹部CT検査で膵頭部腫瘤を指摘されたため入院した. ERCP, 腹部血管造影検査を施行,膵頭部非上皮性腫瘍と診断し,膵頭十二指腸切除術を施行した.病理組織検査で非ホジキンリンパ腫,びまん性,中細胞, B細胞型と診断し,術後化学療法を施行した.術後3年10カ月経過した現在,無再発生存中である.近年C型慢性肝炎と悪性リンパ腫の関係が報告されており, C型慢性肝炎の経過観察中には悪性リンパ腫の発生にも留意する必要があると考えられた.
  • 山田 治樹, 河野 哲夫, 藤井 秀樹, 本田 勇二, 飯野 弥, 松本 由朗
    2001 年 62 巻 4 号 p. 1025-1029
    発行日: 2001/04/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    無脾症は種々の他臓器の合併奇形を伴う先天奇形である.著者らは17歳の男性で,十二指腸潰瘍穿孔時に発見された,稀な無脾単独症例を経験したので報告する.平成12年2月8日発熱,咽頭痛を主訴に近医を受診し,急性上気道炎と診断された.抗生剤と解熱剤の坐剤ジクロフェナクナトリウムの投与を受けた.坐剤使用数時間後から心窩部痛,嘔気が出現し2月10日当院を受診した.体温は38.7度,白血球数は18630/μ1, CRP値は28.7mg/dlであった.右上腹部に著明な圧痛と筋性防御を認めた.腹部レントゲン検査・CT検査で上部消化管穿孔,無脾症と診断し同日緊急開腹を行った.十二指腸球部前壁に径5mmの穿孔を認め,穿孔部単純閉鎖術を施行した.脾臓は認めず,腹腔内に合併奇形は認めなかった.術後施行した心エコー検査で異常は指摘されず,脾シンチグラフィ検査で副脾も含めて脾臓への集積は認めなかった.術後経過は良好で第23病日に退院した.
  • 瀧 順一郎, 福本 晃久, 吉田 英晃
    2001 年 62 巻 4 号 p. 1030-1033
    発行日: 2001/04/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は55歳の女性.人間ドックの超音波検査にて脾動脈瘤を指摘され当院受診.腹部血管造影にて脾動脈根部に16×10mmの動脈瘤とさらに根部よりに4×1mmの動脈瘤を認めた. 動脈塞栓術は困難であると判断し,開腹下に,背膵動脈を温存し,動脈瘤の流入,流出血管の結紮術を施行することにより脾臓を温存しえた.術後経過は良好であった.
    脾動脈瘤は比較的稀な疾患であるが,破裂した場合の致死率は高い.自然経過中に増大や破裂の危険性があるため早期診断は重要である.超音波検査やCTは診断に有用であるが,多発動脈瘤,小動脈瘤の診断および,塞栓術の適応も含めた治療方針の決定には血管造影が不可欠である.未破裂症例の治療適応は, 1cm以下での破裂例もあることなどから,診断が確定すれば大きさにとらわれず積極的に治療すべきであり,非侵襲的で安全な治療法より検討していくべきであると考えられた.
  • 吉岡 宏, 宇奈手 一司, 河野 菊弘, 金山 博友, 井上 淳
    2001 年 62 巻 4 号 p. 1034-1038
    発行日: 2001/04/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は61歳,女性.平成11年12月25日,左上腹部疼痛を主訴に来院.腹部CTにて骨盤腔に及ぶ脾腫を認めた.胸・腹部CTにて脾臓以外に腫瘤は認めなかった. Gaシンチでは,脾臓のみに異常集積を認めた.末梢血では白血球増多や異型細胞は認めなかった.骨髄穿刺検査で異常所見は認めなかった.血清の可溶性IL-2R (sIL-2R)が6580U/mlと高く,リンパ球表面マーカーでは, CD19, CD20, CD21, CD22, CD43が陽性で, CD5, CD10, CD23は陰性であった.表面免疫グロブリンM, Dおよびκが増加していた.脾原発悪性リンパ腫(PSML)と診断しCHOP 1コース施行後,摘脾を行った.脾の重量は1820gで,大きさは27×17×16cmだった.CyclinD1は核内に染まり陽性でMantelcell lymphoma (MCL)と病理診断した.術後,無治療で経過観察を行っているが,術後8カ月の現在も再発徴候はない.
  • 杉山 章, 百木 義光, 浪花 宏幸
    2001 年 62 巻 4 号 p. 1039-1043
    発行日: 2001/04/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    横行結腸癌の術後2年7カ月目に,高CEA血症で発見された孤立性脾転移の1例を経験したので,報告する.症例は61歳女性で,平成5年2月2日に横行結腸癌のため横行結腸切除術を施行した.術後経過は良好であったが,平成7年9月より血清CEA値が上昇し, CT検査で脾上極に低吸収域の腫瘍陰影が認められた.他臓器には転移巣は認められず,孤立性脾転移の診断で平成9年6月7日に脾臓摘出術を行った.病理組織学的検査では,腫瘍は原発巣と同じ中分化型腺癌であった.術後はCEA値は正常域まで低下し,術後3年10カ月現在,再発転移は認められていない.
    結腸癌の異時性孤立性脾転移はきわめてまれであり,血清CEA値の上昇が認められることが多い.転移巣切除後に全身転移を来した例も報告されているが,本症例のように長期生存例も報告されており,診断がつき次第,積極的な外科治療が必要であると考えられる.
  • 井桁 千景, 伊崎 友利, 今村 智, 金子 英彰, 山田 恭司, 大矢 和光, 山口 晋
    2001 年 62 巻 4 号 p. 1044-1048
    発行日: 2001/04/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    34歳男性.主訴は腹痛,嘔吐.近医を受診し,イレウスと診断され当院へ紹介入院となった.入院後イレウス管を挿入しイレウスは翌日には改善したが,腹部CT検査で右後腹膜に充実性腫瘤を認めた.後腹膜腫瘍の診断にて手術を施行したところ,術中腫瘍剥離操作中に一過性の高血圧を認めたが,ペルジピンのみでコントロールされた.術直後,尿中ノルアドレナリン,ドーパミンはそれぞれ579, 4100μg/dayと著明に高値であったが,術後8日目には正常化した.腫瘍は3.5×2.5×2.0cmの,精巣動脈に栄養される充実性腫瘍であった.病理組織検査で,異所性褐色細胞腫と診断した.術前に麻痺性イレウスを呈する後腹膜腫瘍には,褐色細胞腫も念頭におく必要があると思われる.
  • 石山 暁, 千島 隆司, 小金井 一隆, 高橋 正純, 鬼頭 文彦, 福島 恒男
    2001 年 62 巻 4 号 p. 1049-1051
    発行日: 2001/04/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    67歳女性.左乳癌に対し胸筋温存乳房切除術を1997年3月25日に受け,Stage IIIaでリンパ節転移は陽性であった.術後1年目に肝転移をきたし,肝動注を続け (5FU1500mg48時間持続2週間毎), 8カ月後のCTで肝転移はPRとなったが,右腎転移が発見され,他に転移はなく1999年3月10日右腎摘出術を受けた.肉眼的腫瘍径は約6cmで術後病理診により乳癌腎転移と診断された.術後の経過は全身化学療法を施行したが肝転移の増悪,肺転移の出現で腎摘出後1年2カ月後に死亡した.これまでの臨床例での報告は本例を含め8例のみしか文献的に報告はなく乳癌腎転移の手術例は稀と考えられた.早期診断のために乳癌術後の経過観察には腹部CTなどの検索が重要と思われた.
  • 黒木 嘉人
    2001 年 62 巻 4 号 p. 1052-1054
    発行日: 2001/04/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    原発性会陰ヘルニアは骨盤ヘルニアの中でも稀である.症例は72歳女性.主訴は会陰部の膨隆. 1995年頃から畑仕事など腹圧の上昇時に最大でテニスボール大の左大陰唇部の膨隆が出現し,用手還納していた. 2000年1月当科に入院,会陰ヘルニアの診断にて開腹手術を施行した.左子宮広間膜を切開し,ヘルニア門となっている骨盤底筋の欠損部を確認した.直接筋肉の欠損縫合閉鎖は困難であったので,膣壁と膀胱壁を縫合し,その上にProlene Meshを膣壁,膀胱,子宮等に縫合固定した.さらに子宮広間膜と子宮を前方の壁側腹膜に固定した.術後経過順調で愁訴は消失し,術後1年現在再発は認めていない.
  • 松橋 延壽, 梅本 敬夫, 近石 登喜雄
    2001 年 62 巻 4 号 p. 1055-1058
    発行日: 2001/04/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    腹腔内ヘルニアは比較的稀な疾患であるが,中でも大網裂孔をヘルニア門とする大網裂孔ヘルニアは極めて稀な疾患である.本症は理学的所見に特有なものがなく,術前診断は極めて困難であり開腹時に診断できることが多い.今回われわれは,術前CT検査が有用であった大網裂孔ヘルニアの1例を経験したため報告する.症例は93歳女性.腰痛症にて当院整形外科に入院していた.突然嘔吐,腹痛を認めたため外科転科となり,胃管挿入にて経過観察としていたが,腹痛軽減しなかったため腹部CTを施行した.横行結腸の腹側に小腸の拡張像および腸間膜の集東像を認め,開腹既往のないことから大網裂孔ヘルニアによる絞扼性イレウスと診断し,緊急手術施行したほ開腹すると, Treitz靱帯より約50cmの空腸が直径5cmの大網裂孔に30cmの空腸が嵌入していた.嵌入した空腸は壊死していなかったため,大網裂孔を含む大網を一部切除したのみで手術終了し,術後30日目に退院した.
  • 矢野 達哉, 小野 仁志, 増田 潤, 渡部 祐司, 佐藤 元通
    2001 年 62 巻 4 号 p. 1059-1062
    発行日: 2001/04/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    今回,われわれはクッシング症候群に対する副腎摘除後に真菌性後腹膜膿瘍を合併した珍しい症例を経験したので報告する.症例は26歳の女性,腹腔鏡下左副腎摘除術後,発熱・白血球増多が持続,術後16日目に腹部CTにて後腹膜膿瘍が認められた. CTガイド下膿瘍ドレナ.ジを行い,カンジダ性膿瘍と診断, Fluconazoleの点滴静注と膿瘍腔への直接注入を行った. 3週目より解熱, 4週目にβ-D-グルカンも正常化,細菌培養でもCandidaは検出されなくなり,117日目にドレーンを抜去する事ができた.真菌性後腹膜膿瘍の治療は,適切なドレナージとともに,抗真菌剤の膿瘍腔への直接注入が副作用もなく有用であると考えられた.
  • 大澤 智徳, 石田 秀行, 猪熊 滋久, 中山 光男, 藤岡 正志, 出月 康夫
    2001 年 62 巻 4 号 p. 1063-1067
    発行日: 2001/04/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    後腹膜平滑筋肉腫は治癒切除にも高率に再発する予後不良の疾患である.今回,後腹膜平滑筋肉腫の再発により,胃・結腸間に多発性の瘻孔形成と肝転移を認めた症例に対し,再発巣の摘除後,短期間ではあるがQOLの改善が得られた1例を経験したので,若干の文献的考察を加え報告する.症例は45歳,女性.後腹膜平滑筋肉腫に対し,他院で腫瘍摘除・膵体尾部切除・脾摘・左腎および副腎摘除・結腸左半摘除術施行. 29カ月後,持続する発熱・嘔吐に対する精査・加療目的で入院.画像診断で,左後腹膜を占拠する巨大局所再発巣と結腸間に痩孔形成,胃の著明な圧排,肝外側区域の単発転移を認めた.胃・空腸・結腸・左横隔膜の一部を含めた腫瘍のen bloc摘除と肝外側区域切除を施行した.切除標本では結腸の他に胃にも多発性の痩孔を認めた.再発巣摘除後10カ月で,残肝再発巣の下大静脈進展により死亡したが,術後6カ月間は良好なQOLが得られた.
  • 榊原 年宏, 森田 誠市, 小山 眞, 塚田 一博
    2001 年 62 巻 4 号 p. 1068-1071
    発行日: 2001/04/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    右鼠径ヘルニアに虫垂.盲腸が嵌頓し鼠径・陰嚢部膿瘍をきたした1例を経験した.
    症例は72歳男性.右鼠径部から陰嚢にかけての発赤を伴う腫脹,陰嚢の皮膚壊死を主訴に来院した.全身状態は良好でイレウス症状・所見もなかった.嵌頓鼠径ヘルニアの診断で開腹すると,虫垂と盲腸の一部が鼠径窩に強固に嵌頓していた.膿が腹腔内に流入しないように鼠径部・陰嚢を切開して十分に排膿後,嵌頓した虫垂・盲腸を腹腔内へ引き戻すと周囲の高度炎症,盲腸の穿孔を認めたため,回盲部切除を行った.ヘルニアに対しては腹腔内よりメッシュによる修復術を行った.術後病理学的検討では盲腸憩室穿孔による膿瘍形成が示唆された.
    鼠径ヘルニアに虫垂が嵌頓することは稀で,盲腸嵌頓の本邦報告例はなかった.膿瘍合併例の手術では,膿の腹腔内流入を避けるため鼠径部・腹腔内両側からのアプローチが必要と思われた.
  • 石黒 成治, 森浦 滋明, 小林 一郎, 田畑 智丈, 松本 隆利, 佐藤 太一郎
    2001 年 62 巻 4 号 p. 1072-1075
    発行日: 2001/04/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は85歳男性.胃噴門部に2型進行癌を認め, Hb4.9g/dlと重症の貧血を認めたため同日より輸血を開始した.最初の輸血後16日目全身倦怠感,食欲不振を訴え,その翌日発熱,血尿,黄疸が出現してきた.検査所見では血管内溶血を示し,急性腎不全に陥った.
    輸血前には不規則抗体は陰性であったが, E抗体・c抗体, Jka抗体が陽性となっており遅発性溶血性反応による血管内溶血と診断した.ハプトグロビン投与,血液透析にて腎不全を脱し,入院60日目胃全摘,空腸間置術を施行した.
    遅発性溶血性反応とは,不規則抗体によって輸血後数日経ってから溶血を起こす反応である.この反応は現在の検査システムでは防止不可能であり,輸血を繰り返し行うわれわれ外科医は本症の存在も念頭に置いておく必要がある.
  • 田中 弓子, 横井 美樹, 岸本 圭永子, 原田 英也, 吉谷 新一郎, 上野 桂一, 斎藤 人志, 小坂 健夫, 高島 茂樹
    2001 年 62 巻 4 号 p. 1076-1081
    発行日: 2001/04/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    最近,腎癌を重複した大腸癌5症例を経験したので報告する.これらの症例はいずれも大腸癌に起因した症状を主訴に来院し,術前検査中に偶然,腎癌が診断された.大腸癌の組織型は高分化型腺癌が4例,中分化型腺癌が1例で,腎癌はいずれも腎細胞癌であり, alveolar typeが4例, tubuiar typeが1例であった.手術は大腸癌に対してはリンパ節郭清を伴った大腸切除術 (D3), 腎癌に対しては患側の腎摘出術に加え,大動脈周囲リンパ節郭清を併施した.術前より肝転移を伴った2例を除いて,他の3例は9年2カ月を最長に2年3カ月, 1年11カ月と再発徴候なく生存中である.重複癌といえども根治手術がなされていれば良好な予後が期待できるものと考えている.
  • 佐々木 剛志, 道家 充, 中村 文隆, 金古 裕之, 押切 太郎, 矢野 智之, 宮崎 恭介, 成田 吉明, 樫村 暢一, 松波 己, 加 ...
    2001 年 62 巻 4 号 p. 1082-1085
    発行日: 2001/04/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は46歳,女性. 2度の帝王切開(25歳, 31歳)の既往がある. 1998年検診にて腹部腫瘤を指摘され,精査加療のため当院入院となった.造影CTでは境界明瞭で厚い被膜を持ち被膜に接した一部に造影剤の染まりを持っており, USではheterogenousであった.血管造影では複数の血管の選択的造影により腫瘤の一部が濃染したが,栄養血管を特定することはできなかった.以上より大網または小腸原発の平滑筋肉腫と診断し開腹した.腫瘤と小腸と大網の剥離は困難で,一塊として切除した.切除標本の割面は厚い被膜に被われ内容は壊死物質であった.肉眼上線維構造を認めガーゼオーマと診断した.慢性期のガーゼオーマは炎症所見に乏しく, X線非透過物質を持たない場合術前に診断するのは困難であり,詳細な病歴の聴取が重要と思われた.
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