日本臨床外科学会雑誌
Online ISSN : 1882-5133
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63 巻, 1 号
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  • 永野 耕士, 青柳 栄一
    2002 年 63 巻 1 号 p. 1-6
    発行日: 2002/01/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    乳癌の超音波診断は,小腫瘤とか,読影不足によるのでなく,大きくても,腫瘍像描出不能で,存在確認できず,検診では見逃したり,精密検査では確診に至らない例が存在することを理解しておくことは重要である.これがどのような例にあり得るかを,超音波施行された女子乳癌手術症例741例のうち,特に最近使用中のSSD-650CL (75MHZ)になってからの291例から検討した.腫瘍像描出不能例は,組織学的腫瘍径で分けると1.0cm以上19/264例7.2%, 1.0cm未満では5/27例18.5%である.非浸潤癌3/9例33.3%,管内進展型では11/29例37.9%,進展型でない浸潤癌は9/251例3.6%に見られた. T0を除くと,それぞれ0/5 0%, 4/19 21.5%, 6/234 2.6%であった.乳頭腺管癌では18/122 14.8%, 硬癌0/120 0.0%であった.乳頭腺管癌3.0cm以上では12/48 25.0%,特に管内進展型では6/13 46.3%に見られた.管内進展型の癌では,腫瘍径が大きくても,硬結は無論のこと,腫瘤を触知できる程度でも腫瘍像を描出できないことがある(TNM分類は旧TNM分類による).
  • 長坂 不二夫, 大森 一光, 北村 一雄, 並木 義夫, 村松 高, 四万村 三恵, 長谷川 雅江, 根岸 七雄
    2002 年 63 巻 1 号 p. 7-10
    発行日: 2002/01/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    異時両側気胸について,初発気胸の経過や治療の対側気胸への影響を中心に検討した.両側気胸の頻度は15.8% (同時性2.3%,異時性13.6%)で,気胸初発時の年齢は10歳代が多かったが,対側気胸時の年齢は20歳代が多く,一般の気胸の年齢分布と同様であった. 72.3%は1回の初発気胸のみで対側気胸を発症し,初発気胸の38.3%に手術が施行された.初発気胸と対側気胸の間隔は平均58.4カ月で,初発気胸が保存的に治療された症例で対側気胸発症までの期間が短かった.初発気胸の治療法の違いによる対側気胸の発症率に差はなく,初発気胸と対側気胸の関連性は認められず,両者は独立して発症すると考えられた.両側気胸症例は破裂しやすい嚢胞を有しているといえるが,治療は同時性の場合には両側一期的手術の適応であるものの,異時両側気胸では発症している気胸についての治療で十分である.
  • 久米 修一, 木村 正美, 兼田 博, 原田 洋明, 松下 弘雄, 上村 邦紀
    2002 年 63 巻 1 号 p. 11-14
    発行日: 2002/01/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    胸腔鏡手術を行った自然気胸症例47例57回を対象とした.術後再発は, 4例6回(10.5%)であった.再発の原因として,ブラの切除が不十分と思われた症例が1例,他の5例はブラの見落としまたは新生と考えられた.自然気胸に対する胸腔鏡手術では,入念な観察と充分な切除が重要と思われ,手術症例の今後のブラ新生に関する観察,研究も必要と思われた.
  • 近松 英二, 小林 建仁
    2002 年 63 巻 1 号 p. 15-18
    発行日: 2002/01/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    1995年1月から2000年12月までの6年間に中部労災病院で手術を行った小腸穿孔20例(外傷性7例,非外傷性13例)について検討した.年齢は17から89歳,男性13例,女性7例であった.小腸穿孔の診断は難しく,術前に正診できたものはなく,強く疑ったものでさえ7例, 35%にすぎなかった.発症から手術までに要した時間はほとんどの症例で36時間以内であった.術式は縫合のみ施行したもの8例,小腸切除7例,回盲部切除4例,憩室切除1例であった.予後は比較的良好で入院死亡は20例中4例であったが,そのうち3例は術後1カ月以上経過したころ,他疾患により亡くなっており,小腸穿孔,腹膜炎が死亡原因であると考えられたものは1例のみであった.
  • 吉光 裕, 安田 雅美, 天谷 公司, 経田 淳, 森 和弘, 竹山 茂
    2002 年 63 巻 1 号 p. 19-24
    発行日: 2002/01/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    右側結腸憩室炎32例について検討した.平均年齢は42.1歳,男性23例,女性9例であった.初回憩室炎では32例全例に超音波検査, 22例にCT検査が施行され, 28例(87.5%)で憩室炎の診断が可能であった. 初回憩室炎において緊急手術が施行された症例は3例で,それらを除く29例は全例保存的に軽快した.初回憩室炎で緊急または待機的に腸管切除が行われた症例は5例で,それらを除く27例中8例(29.6%)に憩室炎の反復がみられた.憩室炎再発予防のための腸管切除は初回・反復時あわせて10例に行われ, 2例に術後合併症を認めたが保存的に軽快し,憩室炎の再発はみられなかった.右側結腸憩室炎において超音波検査とCT検査により高い診断率が得られ,不要な緊急手術の回避に有用であった.また右側憩室炎のほとんどは保存的に軽快するが,反復性憩室炎の頻度は低いとはいえず,経過観察には十分な配慮が必要と考えられた.
  • 植松 正久, 宮下 勝, 西脇 正美, 佐藤 美晴, 村尾 眞一
    2002 年 63 巻 1 号 p. 25-30
    発行日: 2002/01/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    局所再発を繰り返し,最終的に多中心性に発生したと考えられる乳腺葉状腫瘍を経験したので報告する.症例は40歳,女性,左乳房腫瘤を主訴とし,当院を受診した.病歴に, 28歳, 32歳, 38歳時,左乳房C領域の腫瘤切除の既往があり,いずれも線維腺腫/葉状腫瘍と診断されている. 39歳時の同部腫瘤切除で,良性葉状腫瘍と診断された.今回,再度,同部に腫瘤を触知し,超音波, CT検査から,多中心性に発生した葉状腫瘍と術前診断された.腫瘍組織は左乳腺をほぼ占拠しており,左乳房単純切除をすすめたが,本人の強い希望もあり,多発乳房腫瘍摘出術(wide excision)が行われた.病理学的に核異型や細胞分裂像などの悪性所見は認められず,良性の葉状腫瘍と診断された.乳腺葉状腫瘍におけるetiology, すなわち線維腺腫との関連性,葉状腫瘍の多中心性発生のmechanism,悪性化,予後などに関して,検討を加え報告する.
  • 宮田 量平, 佐藤 宏喜, 佐久間 正祥, 竹中 能文
    2002 年 63 巻 1 号 p. 31-36
    発行日: 2002/01/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    Merkel細胞癌は高齢者の顔面に好発する比較的稀な腫瘍で,局所再発やリンパ節転移の多く悪性度が高い.一方,乳腺は転移を受け難い臓器である.われわれは眼瞼原発のMerkel細胞癌が乳腺転移した稀な1例を経験したので報告する.
    症例は58歳,女性.左下眼瞼腫瘤と左耳下腺部腫脹を認め,当院耳鼻咽喉科,眼科を受診し細胞診でclassV, 両者は同一の腫瘍と診断され,左下眼瞼腫瘍摘出術,左耳下腺全摘術,左頸部リンパ節郭清を施行した.病理組織学的に下眼瞼原発Merkel細胞癌,耳下腺転移,頸部リンパ節転移と診断された.同手術の5カ月後に右乳房に1.8cm大の腫瘤を自覚,当科を受診し,穿刺吸引細胞診でclassVの診断にて,乳房円状部分切除術,腋窩リンパ節郭清を施行した.術後に化学療法と放射線療法を追加した.光顕,電顕,免疫染色上, Merkel細胞癌の乳腺転移と診断された. 4カ月後のCT上,上縦隔,膵,副腎に転移を認め,乳房手術の9カ月後に永眠された.
  • 鶴田 淳, 高嶋 一博, 山岸 久一, 伊志嶺 玄公, 天野 殖
    2002 年 63 巻 1 号 p. 37-41
    発行日: 2002/01/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は59歳,男性.右腋窩に半年前より栂指頭大の小腫瘤を自覚していたが放置していたところ,急激に増大してきたため来院.受診時,腋窩に約6cmの腫瘤を認め,同部にリンパ節腫大を触知した.確定診断のために切除生検し組織診断したところ,乳頭状汗腺腫であったが,臨床的には悪性と判断し,腋窩腫瘍の拡大切除術,腋窩リンパ節郭清を行った.摘出標本の病理組織診断では,浸潤性のアポクリン腺癌であった.術後化学療法を施行した.腋窩汗腺癌は比較的稀であり,若干の文献的考察を加えて報告する.
  • 安藤 敏典, 石井 誠一, 椎葉 健一, 溝井 賢幸, 佐々木 巌, 松野 正紀
    2002 年 63 巻 1 号 p. 42-46
    発行日: 2002/01/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    直腸癌術後に急性血栓性肺塞栓症(以下肺塞栓症)を発症し,早期診断と治療により救命しえた1例について報告する.
    症例は77歳,男性.進行直腸癌に対し低位前方切除術施行後第4病日に,突然意識が消失し,呼吸促迫,チアノーゼを呈して呼吸不全・ショック状態となった.肺塞栓症を疑い発症直後にurokinase 48万単位を静注しショックから回復した.心エコーで右室・右房の拡張と肺血管抵抗上昇, CT・肺動脈造影で左右肺動脈の多発血栓と血流途絶を認め肺塞栓症の診断が確定した.再塞栓予防のため下大静脈filterを留置し, urokinase, heparin療法を継続して呼吸状態も改善した.発症5日以降warfarin経口投与とし,経過良好で術後第21病日に退院した.術後肺塞栓症は,近年増加傾向にあり,救命には的確な診断と迅速な対応が必要である.特に高齢,肥満や悪性腫瘍の手術は危険因子であり,肺塞栓症に対する予防対策が不可欠であると考えられる.
  • 奥谷 大介, 永廣 格, 安藤 陽夫, 清水 信義
    2002 年 63 巻 1 号 p. 47-51
    発行日: 2002/01/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は59歳,男性.平成7年1月,左下腿MFH (malignant fibrous histiocytoma)に対して広範切除術と化学療法を施行した.以降,経過観察していたが,平成12年9月の胸部X線写真にて右下肺野に異常陰影を認めたため当科紹介となった.同年10月, MFHの肺転移と考えて手術を施行した.腫瘤は中葉,下葉とそれぞれ小範囲で接しており,胸腔側に向かって発育していた.中下葉をそれぞれ肺部分切除し腫瘤摘出術を行った.摘出標本の病理組織学的検査にて臓側胸膜由来の軟骨肉腫と診断された.肺原発軟骨肉腫は稀であり,われわれが検索した限りでは,本邦報告例は自験例を含めて12例であった.
  • 井上 陽一, 城戸 哲夫, 田中 康博, 小川 達司, 山本 重孝
    2002 年 63 巻 1 号 p. 52-55
    発行日: 2002/01/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    胃癌手術後に2度の結節型肺転移をきたしたが,いずれも肺切除術を施行し,長期生存を得ている早期胃癌の1例を経験したので報告する.症例は68歳(胃癌手術時),男性.胃癌術後8年目の外来検査で血中CEA値が上昇したため胸部CT検査を施行.右肺S3に3.5×3.0cmの腫瘤を認め,右肺上葉切除術を施行した.胃切除術後9年目,肺切除1年目,胸部CTで,左S4, S10にそれぞれ径5mm, 10mmの結節状陰影を認め,胸腔鏡補助下左肺部分切除術を施行した.いずれも病理組織で胃癌と同様の高分化型腺癌を認めた.患者は臨床上および画像診断上再発を認めず,胃癌術後15年,初回肺切除術後5年,生存中である.胃癌の肺転移症例は予後不良であるが,結節型肺転移は他癌の肺転移と同様に多発症例や再再発症例でも手術による完全切除で予後の改善が期待できる.
  • 長谷部 行健, 中崎 晴弘, 渡邊 正志, 大城 充, 瀧田 渉, 瀬尾 章, 下島 裕寛, 寺本 龍生, 小林 一雄, 平野 敬八郎, 野 ...
    2002 年 63 巻 1 号 p. 56-60
    発行日: 2002/01/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例1, 61歳,男性.平成6年10月,肝S3からS4のHCC, S8 HCCにて肝左葉切除術, S8エタノール局注療法を施行.平成8年4月,両側肺に多発性肺転移を認め,静脈リザーバーカテーテルを用いた化学療法を施行.右肺の転移巣は消失し,左肺の転移巣は縮小したので左肺部分切除術を施行した.症例2, 57歳,女性.平成元年4月, S8 HCCにて肝右葉切除術を施行.平成2年2月,左肺に単発性肺転移を認め,また肝S2に腫瘤性病変を認め,肝内再発および肺転移と診断.同年8月,肝外側区部分切除術,左肺上葉部分切除術を施行した.症例3, 20歳,女性.平成元年10月,右葉全体を占めるHCCにて拡大肝右葉切除術を施行.平成4年6月,右肺に単発性転移を認め,同年8月右肺部分切除術を施行した.いずれも現在無再発で生存している.肝細胞癌術後肺転移例に対し積極的な治療を行い良好な予後を得られた症例を経験したので報告する.
  • 舟橋 整, 柴田 直史, 斎藤 高明, 鈴木 一也, 真辺 忠夫
    2002 年 63 巻 1 号 p. 61-64
    発行日: 2002/01/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    無症状で発見された成人Bochdalek孔ヘルニアの1例を経験した.症例は80歳男性,躁鬱病にて精神科入院中,イレウスにて内科受診した.イレウス管造影, CT, MRIにてBochdalek孔ヘルニアを伴った左側腹部の腸重積と診断された.手術にて腸重積は空腸の生理的癒着が原因と判明し,一部壊死化していたため重積空腸を切除し,イレウスを解除した.この時,右横隔膜背側に欠損部があり,そこより結腸が胸腔内に脱出しているのを確認した.
    成人Bochdalek孔ヘルニアは比較的稀であり,無症状で経過しているもの(発見された時点でも症状のないもの)は自験例を含め3例にすぎない.これらを若干の文献的考察とともに報告する.
  • 黨 和夫, 重政 有, 羽田野 和彦, 碇 秀樹, 清水 輝久, 國崎 忠臣
    2002 年 63 巻 1 号 p. 65-70
    発行日: 2002/01/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は41歳の男性で左側胸部痛,嘔吐,呼吸困難を主訴とした.胸部X線,胸部CT,上部消化管造影検査より,全胃が胸腔内へ脱出した傍食道型裂孔ヘルニアと診断し,開腹下に根治術を施行した.また,症例は以前より皮膚の過伸展,関節の過可動性,血管の脆弱性を認め,何らかの結合織疾患を疑い,皮膚生検を行った.その結果,膠原線維の若干の細小化と弾性線維の密度の上昇および断片化を認め, Ehlers-Danlos症候群と診断した.自験例のように,比較的若年発症の食道裂孔ヘルニア症例を経験した際には,本疾患の関与も念頭に置く必要があると思われた.
  • 岡本 大輔, 浦田 尚巳, 冨吉 浩雅, 藤原 英利, 浮草 実
    2002 年 63 巻 1 号 p. 71-74
    発行日: 2002/01/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    巨大植物胃石による胃壁の圧迫が原因と考えられる潰瘍形成から穿孔に至った稀な症例を経験したので報告する.症例は67歳男性,市販の干し柿を数個摂取した翌日から嘔吐,翌々日から食欲不振が出現し,摂食から1週間後に胃透視および胃内視鏡にて巨大な胃石を指摘された.保存的治療中,穿孔をきたしたため緊急手術にて胃切除術を施行し軽快した.胃石が胃に停滞した場合は潰瘍を併存することが多く,稀に穿孔をきたす場合があり,胃石の大きさにもよるが内科的治療に抵抗性の場合はすみやかに外科的処置をとる必要があると思われた.
  • 高橋 康宏, 高橋 透, 水戸 康文, 岩井 和浩, 佐藤 幸作, 橋田 秀明
    2002 年 63 巻 1 号 p. 75-77
    発行日: 2002/01/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    家族性大腸腺腫症に対し,大腸全摘術を施行した12年後に,急速に増大傾向を示した巨大胃腺腫手術例を経験した.症例は45歳,女性.昭和60年,家族性大腸腺腫症に, S状結腸癌を合併し,大腸全摘を受けた.発症当初より,多発性胃腺腫が認められていたが,その後,胃腺腫の1個が急激な増大傾向を示したため外科的切除を施行した.本例では術中迅速病理標本にて,癌は否定されたが,家族性大腸腺腫症に合併する胃十二指腸病変の癌発生率は低くなく,長期にわたる経過観察が必要である.
  • 本田 勇二, 日向 理, 河野 哲夫
    2002 年 63 巻 1 号 p. 78-83
    発行日: 2002/01/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    Sjögren症候群に胃原発の悪性リンパ腫を合併した症例を経験したので報告する.
    症例は71歳,男性. 2年前より目および口腔内の乾燥感を認めSjögren症候群と診断された.心窩部痛および食欲不振を主訴に上部消化管内視鏡検査施行し,胃悪性リンパ腫と診断され,リンパ節郭清を伴う胃全摘術を施行した.病理組織検査ではnon-Hodgkinリンパ腫のびまん型,中細胞型の悪性リンパと診断された.術後化学療法を行い退院した.外来通院していたが,術後6カ月で急性腎不全となり死亡した.
    Sjögren症候群に合併した胃原発悪性リンパ腫は本邦報告3例目で極めて稀であると思われた.
  • 照屋 剛, 古堅 智則, 宮里 浩, 久高 学, 山城 和也, 与儀 実津夫
    2002 年 63 巻 1 号 p. 84-89
    発行日: 2002/01/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    近年,診断能の向上や高齢化により同時性や異時性の悪性腫瘍重複例を経験することが多い.胃悪性リンパ腫にS状結腸癌を合併した報告例は少なく,今回一期的に切除を行った症例を経験した.症例は68歳,男性で心窩部痛で入院し,内視鏡検査で胃前庭部に潰瘍性病変を認め, 生検にて悪性リンパ腫(diffuse B cell type)と診断された.さらに下部消化管精査にてS状結腸にapple-core signを示す狭窄を認め,内視鏡検査でS状結腸癌と診断された.手術は幽門側胃亜全摘術+S状結腸切除術およびリンパ節郭清を行った.術後にCHO療法を2クール行い退院し,これまで再発なく経過している.消化管悪性リンパ腫の診断・治療においては,別の消化管悪性腫瘍の合併を念頭におくことが大切であると考える.
  • 大宅 宗治, 宮脇 美千代, 藤吉 健児, 藤富 豊, 野口 剛
    2002 年 63 巻 1 号 p. 90-93
    発行日: 2002/01/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    十二指腸膜様狭窄は稀な先天性疾患であり,多くは幼児期に診断され,成人例は少ない.今回成人になって診断された十二指腸膜様狭窄の1例を経験したので報告する.
    症例は52歳,女性.主訴は右季肋部痛,小児期より過食後に,しばしば腹痛を認めていた. 1年前腹痛を認めたため当院を受診した.上部消化管造影および上部消化管内視鏡検査にて十二指腸下行脚に膜様狭窄を認めた. Vater乳頭は膜様部近傍の口側に存在した.十二指腸膜様狭窄による逆行性胆管炎の診断で,絶食,経静脈栄養を施行した.膜様狭窄に対して手術を勧めたが,拒否したため経過観察とした.平成12年3月始め頃より腹痛を認めたため, 3月10日,加療目的で入院した.開腹下に十二指腸下行脚を縦切開し膜様物を切開し,一部切除した.術後,狭窄は消失し,経過は良好であった.手術に際しては乳頭の位置を確認し,胆管,膵管開口部を損傷しないように留意することが重要である.
  • 坂本 英至, 寺崎 正起, 岡本 恭和, 久留宮 康浩, 浅羽 雄太郎, 夏目 誠治
    2002 年 63 巻 1 号 p. 94-98
    発行日: 2002/01/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    1989年1月から2000年7月までに当科で切除された十二指腸乳頭部癌を除く原発性十二指腸癌は6例で全消化管癌の0.43%であった.臨床症状は出血と閉塞に起因するものが大部分であった.占居部位はI部2例, II部3例, III部1例であった.肉眼型は0-I型1例, 2型5例で深い下堀れ潰瘍を特徴としていた. 6例中4例に組織学的膵浸潤を認め,リンパ管浸潤,リンパ節転移も伴っていた.半数にNo13リンパ節に転移を認めたほか, No6, No12, No14a, No17と広い範囲のリンパ節に転移を認めた.また2例に神経周囲浸潤を認め,この2例は局所再発にて早期に死亡した.リンパ節転移状況をみると球部の癌では肝十二指腸靱帯郭清を伴う胃十二指腸球部切除またはPDが,下行脚以下の癌ではSMA周囲郭清を伴うPpPDが適当と考えられた.
  • 森脇 義弘, 山崎 安信, 渡部 克也, 望月 康久, 牧野 達郎, 須田 嵩
    2002 年 63 巻 1 号 p. 99-103
    発行日: 2002/01/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    極めて稀な十二指腸球部印環細胞癌を経験した.切除不能進行癌で集学的治療を行い, CEA低下と発症後2年2カ月の生存が得られた. 58歳,男性,腹部違和感とCEA, CA19-9高値で発症.追加検査の同意が得られなかったが説得を続け,発症11カ月後入院させ治療方針決定のため試験開腹術施行,胃癌取扱い規約でH0P13T3(SE)N4,大腸癌取扱い規約でH0P1M(-)SEN4(+). 50Gyのリニアック照射とシスプラチン(CDDP) 20mg 5日間2回の化学放射線療法を行い,以降,外来でCDDP10mg+5-FU250mg 5日間5クール,フトラフール400mg 5クール, 5FU系の経口化学療法を行った.治療開始時には574ng/mlであったCEAは減少し,各種画像検査でも病変の増大や新たな病変の出現はなかった. 19カ月後にCEAが再上昇し, CDDP+5-FU 5日間と3日目の温熱療法の温熱化学療法を2クール施行したが,発症後2年2カ月,治療開始後1年1カ月で死亡した.
  • 岡田 一幸, 東野 健, 矢野 浩司, 衣田 誠克, 岡本 茂, 門田 卓士
    2002 年 63 巻 1 号 p. 104-108
    発行日: 2002/01/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は71歳,女性.糖尿病の治療にて当院内科に入院中に下血を認めた.上部・下部消化管内視鏡では出血部位は確認できず,出血シンチと血管造影を行った.出血シンチでは膀胱の右上方にhot spotと,同部と連続した血管像を認めた.上腸間膜動脈造影では回腸枝末梢部にて動脈相早期より拡張静脈が描出され,静脈相後期まで造影された.また血管造影CTでは骨盤腔内にて小腸に接する形で著明に濃染する血管の集簇像を認めた.以上より回腸動静脈奇形による下血で,病変部は拡張し,集簇した流出静脈の近傍の腸管であると診断し,手術を施行した.開腹所見では瘤状に拡張し,集簇した流出静脈を回腸間膜上に認めたため,その部を中心とした回腸部分切除術を行った.本例は高度の肝硬変症例で,門脈圧亢進症を併発しており,それによる上腸間膜静脈の鬱血が本症の成因に関与し,また著明な流出静脈の拡張を引き起こしたのではないかと考えられた.
  • 竹下 洋基, 松崎 正明, 神谷 勲, 赤座 薫, 徳永 裕, 澤木 正孝, 佐藤 成憲
    2002 年 63 巻 1 号 p. 109-112
    発行日: 2002/01/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は14歳,男性.腹痛にて近医を受診し,投薬にても改善せず,イレウス状態となり当院に紹介入院となる.臨床経過・腹部所見より手術の適応と考えられ,緊急手術を施行したところ,回腸の腸重積によるイレウスと判明.用手的整復の後も色調の改善が見られない部分に対し小腸切除術を行った.切除標本中に粘膜下腫瘤と思われる部分を認め,これが先進部となった重積と考えられた.病理組織標本では,腸間膜反対側において,小管腔を持つ腸管粘膜と平滑筋壁が腫瘤を形成している像を認めた. Mesodiverticular band等は認められず,部位が腸間膜反対側のため,卵黄腸管遺残症の一つであるenterocystomaと考えられた. Meckel憩室以外の卵黄腸管遺残症は比較的稀であり,若干の文献的考察を加え報告する.
  • 石黒 成治, 森浦 滋明, 小林 一郎, 田畑 智丈, 松本 隆利, 佐藤 太一郎
    2002 年 63 巻 1 号 p. 113-116
    発行日: 2002/01/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    患者は72歳女性で便様の帯下を主訴に来院した.子宮摘出後の膣の断端に1mmの小孔があり同部より排液を認めた.瘻孔造影にて小腸が造影され小腸膣瘻と診断し開腹術を行った. Bauhun弁より15cmの回腸が膣断端と瘻孔を形成しており,回腸10cmと膣断端を合併切除した. Treitzから小腸全体に100以上の憩室を認め,憩室炎による回腸膣瘻と診断した.
    憩室症は大腸に認められることは多いが小腸に認めることは稀である.小腸の憩室でもっとも頻度の高いのは先天性のMeckel憩室であるが,小腸憩室は後天性の仮性憩室であり,そのほとんどは十二指腸に認められ,空回腸に認めることは稀である.今回われわれは憩室炎により回腸膣瘻を形成し,手術の際空回腸にびまん性に100以上の憩室を認めた症例を経験した.小腸憩室症について文献的な考察をふまえ報告する.
  • 根塚 秀昭, 桝谷 博孝, 黒田 吉隆
    2002 年 63 巻 1 号 p. 117-121
    発行日: 2002/01/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    小腸軸捻転症は稀な疾患で,術前診断されることは少なく,発症後は急速に広範な小腸壊死を生じ致死的な経過をとることが多い.今回われわれは,特徴的なCT像より術前診断し,腸切除せずに治癒しえた成人原発性小腸軸捻転症の1例を経験したので報告する.症例は74歳,男性.朝食後より上腹部痛が出現し近医受診.腹部X線写真にてイレウスと診断され当科受診.腹部CTにて上腸間膜動脈を中心とした小腸の渦巻き状巻き込み像を認め,小腸軸捻転症と診断した.入院後,腹痛の増強や炎症反応の上昇を認めず,保存的に経過観察していたが,入院4日目に血清CPK値の上昇を認め手術施行した.小腸全体が反時計回りに180度捻転するも,腸管壊死等の血流障害の所見を認めず,整復のみでイレウスを解除した.またTreitz靱帯から45cmと100cmの2カ所の部位に空腸憩室を認めた.患者は術後30日目に退院した.
  • 嵯峨山 健, 小野山 裕彦, 橋本 可成, 安積 靖友, 高尾 信太郎, 中路 太門, 西藤 勝, 高橋 応典, 西村 公志, 裏川 公章
    2002 年 63 巻 1 号 p. 122-127
    発行日: 2002/01/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    残胃胃石によるイレウスは検索した限り自験例を含めて本邦では25例の報告例のみの極めて稀な疾患であり診断に苦慮することが多い.今回,胃潰瘍術後の残胃より発生した胃石による小腸イレウスの1手術例を経験したので報告する.
    症例は65歳,男性. 53歳時に胃潰瘍にて広範囲胃切除術, Billroth I法再建術を施行されている.平成11年3月3日イレウスの診断にて入院.イレウスチューブからの造影で楕円形の腫瘤による小腸の閉塞を認め,小腸腫瘍によるイレウスと診断し開腹手術を行った.閉塞部の小腸を切開すると黒褐色の異物を認め,小腸に落下した胃石と診断し,摘出部の小腸に潰瘍形成がみられたため小腸部分切除術を施行した.術後経過は良好で第24病日に退院した.残胃胃石イレウスは保存的治療が困難であり,全例開腹手術を行っているが,今後条件が整えば腹腔下手術も考慮したい.
  • 鷲田 昌信, 西平 友彦, 金子 猛, 石井 隆道, 岩井 輝, 井上 章
    2002 年 63 巻 1 号 p. 128-131
    発行日: 2002/01/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    78歳,男性.下腹部痛で入院した.入院中に発症した急性下肢動脈閉塞に対する抗凝固療法開始後,間歇的に下血があり精査が行われた.小腸造影とCTにより空腸と交通する空洞を有する腫瘍性病変が指摘された. 30病日より発熱が出現し,白血球数22,000/mm3, CRP25.4mg/dlと炎症反応を示した.腹膜刺激症状が出現したため緊急開腹術を施行した.開腹すると大網により被覆された腫瘍穿孔部と膿性腹水を認めたので穿孔性腹膜炎と診断した.小腸切除術を施行した.弾性硬の11×12×9cmの小腸腫瘍で,割面で広範囲に壊死を認めた.組織学的に紡錘形細胞の束状増殖が認められ,免疫組織学的検討でc-Kit陽性であったためGISTと診断した. α-smooth muscle actin陽性, neuron specific enolase陽性, s-100 protein陰性, desmin陰性, CD34は陰性だった.腹膜炎を合併した小腸GISTを報告した.
  • 田中 基文, 藤野 泰宏, 大野 伯和, 中村 毅, 具 英成, 黒田 嘉和
    2002 年 63 巻 1 号 p. 132-135
    発行日: 2002/01/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    虫垂重積症の1例を報告する.症例は88歳,女性.主訴は右下腹部痛.注腸造影および大腸内視鏡検査にて回盲部に隆起性病変を認めた.腹部超音波検査では,同部位に腫瘤像およびその内部にconcentric ring signを伴う嚢胞状エコー像を認め,回盲部腫瘍の診断にて右結腸切除術を施行した.切除標本では,虫垂開口部を中心に存在する盲腸腫瘍と,腫大して盲腸内に重積をきたした虫垂を認めた.病理組織学的検査にて,虫垂開口部付近に発生した盲腸癌と診断された.なお虫垂粘膜は炎症性変化を認めるのみであった.重積の生じた原因としては,虫垂開口部周囲に発生した盲腸癌の進展に伴い,虫垂が盲腸内に引き込まれたためと考えられた.
  • 小矢崎 直博, 道輪 良男, 大西 一朗, 竹田 利弥, 鎌田 徹, 神野 正博
    2002 年 63 巻 1 号 p. 136-142
    発行日: 2002/01/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    急性虫垂炎に盲腸癌を合併することは稀であり,術前診断は困難な場合が多い.症例1は59歳,女性で虫垂は腫大し,その根部が後腹膜に穿通し盲腸周囲膿瘍を形成していた.回盲部切除施行したが,病理診断で盲腸癌と判明し癌断端陽性により後日再手術施行した. 7年経過した現在生存中である.症例2は58歳,男性で回盲部を中心に後腹膜に広がる一塊となった膿瘍性腫瘤を認め,可及的に回盲部切除と腹膜切除を行った.症例1と同様に癌と判明し癌断端陽性により再手術施行したが,初回手術より1年2カ月後に癌死した.症例3は74歳,男性で虫垂は壊疽に陥っており,盲腸に硬い腫瘤を認め,また近傍のリンパ節腫大と多数の腹膜結節を認めた.盲腸癌の腹膜播種と診断し回盲部切除を施行したが術後7カ月後に癌死した.中高齢者で盲腸周囲膿瘍等の高度炎症を呈する虫垂炎の場合には,術前,術中の十分な検索を要すると思われた.
  • 平野 明, 岡部 聡寛, 遠藤 俊吾, 横溝 肇, 吉松 和彦, 加藤 博之, 芳賀 駿介, 梶原 哲朗
    2002 年 63 巻 1 号 p. 143-146
    発行日: 2002/01/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は70歳,男性.血便の精査目的にて当院を受診した.大腸内視鏡検査にて下行結腸に長径4cmの太い茎を有する有茎性ポリープを認めた.内視鏡的切除は困難と判断し,下行結腸部分切除術を施行した.ポリープは主として粘膜と粘膜下層から成っており,表面は一部に潰瘍形成や過形成性の変化を認めるものの,ほとんどが正常粘膜で覆われていた.また粘膜下層は線維化と血管の増生を認めるのみであった.以上よりcolonic muco-submucosal elongated polyp (CMSEP)の概念に一致するポリープと思われた.自験例では粘膜・粘膜下層のみならず,筋層の一部が茎部に向かって引き延ばされており,本疾患に対する内視鏡的治療には注意を要すると考えられる.
  • 姫野 佳久, 福澤 謙吾, 木下 忠彦, 竹中 賢治, 加島 健司
    2002 年 63 巻 1 号 p. 147-152
    発行日: 2002/01/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    予後不良とされるAFP産生大腸癌に対し放射線治療を加えた集学的治療により長期生存を得た1例を経験した.症例は54歳,女性,全身倦怠感を主訴に来院,精査にて直腸癌と診断,手術を施行した.術前血清AFP値が20,100ng/mlと高値を示したが術後は正常化した.病理組織検査にてAFP産生直腸癌と診断した.術後約1年目よりAFP値の上昇と相関し,リンパ節,肺,脳,肝にそれぞれ転移を認めたが手術,化学療法,特に放射線療法に反応し再発後も3年2カ月の長期コントロールが可能であった. AFP産生直腸癌の報告は稀であるが,化学療法に抵抗性で予後不良とされる.本症例においては再発巣に対する放射線治療がいずれも奏効しており, AFP産生直腸癌に対する治療の選択肢の一つとして放射線治療が有効である可能性を示唆する症例と考えられた.
  • 眞次 康弘, 中塚 博文, 豊田 和広, 小川 尚之, 大城 久司, 浅原 利正, 谷山 清己
    2002 年 63 巻 1 号 p. 153-156
    発行日: 2002/01/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    超音波検査(パワードプラ法)が診断に有用であった肝限局性結節性過形成(FNH)の1例を経験したので報告する.患者は36歳,男性.悪心,嘔吐を主訴として近医を受診した.腹部超音波検査で肝腫瘤を指摘され,精査目的で入院となった.腹部超音波検査, Bモード法で肝左葉外側区域にiso-echoicな腫瘤を認めた.パワードプラ法で車軸状血流シグナルを検出し肝FNHが疑われた. CT, MRIでは非特異的所見しか得られなかったが血管造影検査でSpoke-wheel appearanceを認め肝FNHと診断した.超音波検査はCT, MRI,血管造影検査と比べて,比較的自由に撮像面を設定することができる.さらにパワードプラ法を活用することによりSpoke-wheel appearanceの検出率の向上が期待できる.肝FNHの疑いがあるケースでは試みるべき検査であると考えられた.
  • 谷村 葉子, 水野 伸一, 浅野 英一, 下地 英機
    2002 年 63 巻 1 号 p. 157-160
    発行日: 2002/01/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は60歳,女性.嘔吐を主訴に当院を受診した.腹部超音波検査,腹部CT検査にて肝内胆管の拡張と肝内結石を認めた. PTBD (経皮経肝胆道ドレナージ)を施行した.胆道造影にて,患者は先天性胆道拡張症に対する肝外胆管切除,胆管空腸吻合術の術後と思われ,胆管空腸吻合部の狭窄と両葉肝内胆管内の多数の透亮像を認めた.経皮経肝胆道鏡にて両葉肝内胆管内に充満する結石を認め,電気水圧衝撃波にて切石するとともに,胆管空腸吻合部の吻合径を広げ再度胆管空腸吻合術を施行した.術後も経皮経肝胆道鏡および肝内胆管狭窄部のバルーン拡張術を行い切石した.
  • 中川 国利, 鈴木 幸正, 桃野 哲
    2002 年 63 巻 1 号 p. 161-165
    発行日: 2002/01/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    胃切除後の腹腔鏡下胆嚢摘出術で結石の遺残を認め,腹腔鏡下総胆管切石術を施行した1例を経験したので報告する.症例は71歳の男性で, 20年前に十二指腸潰瘍にて広範囲胃切除術を受けた.急性胆嚢炎にて来院し,腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行した.膀の右横にて小開腹し,直視下に最初のトラカールを挿入した.さらに他の3本のトラカールを,腹腔鏡観察下に癒着を避けて右上腹部に穿刺した.癒着剥離やCalot三角の展開を慎重に行い,腹腔鏡下胆嚢摘出術を終了した. 11カ月後黄疸にて再入院し,総胆管結石症と診断された. Billroth II法にて再建されていたため,腹腔鏡下総胆管切石術を施行した.前回の切開創にてトラカールを再挿入し,慎重に癒着を剥離した.総胆管を切開して結石を摘出し, Tチューブを留置した.術後経過は良好であった.腹腔鏡下胆嚢摘出例でも腹腔鏡下総胆管切石術が施行可能であり,侵襲が少ないことから試みる価値があると思われた.
  • 八木 真悟, 吉野 裕司, 横井 健二, 原田 猛, 森田 克哉, 山田 哲司, 車谷 宏
    2002 年 63 巻 1 号 p. 166-170
    発行日: 2002/01/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は黄疸が主訴の36歳の女性で,以前から肝機能障害を時々指摘されていた. 1999年2月に主訴にて近医を受診, ERCP検査はされなかった. 10月には主訴が増悪し, 12月22日に当院紹介入院となった.腹部超音波, CT, MRI検査にて三管合流部に嚢胞性病変が認められた. ERCPは拒否され, PTCDを行い総肝管での狭窄が判明した.血管造影検査では著変はなかった. 2000年1月18日に手術が行われた.嚢胞は三管合流部にあり,総胆管からは剥離可能であったが,胆嚢とは不能であった.嚢胞を含めて胆嚢摘出術を行った.温存総胆管を術中胆道造影で評価したところ狭窄は不変で,総肝管を切除,胆道再建術を施行した.切除標本では胆嚢管自体が嚢胞状に変化し,内部に透明のゼリー状の粘液を有していた.病理組織学的検査では,卵巣様間質を有する多胞性の嚢胞で,胆嚢管の粘液嚢胞腺腫との診断を得た.極めて稀な症例と考えられた.
  • 福浦 竜樹, 坂倉 究, 多羅尾 光, 池田 哲也, 杉平 宣仁, 増田 亨, 矢野 秀, 鈴木 宏志, 草野 五男
    2002 年 63 巻 1 号 p. 171-174
    発行日: 2002/01/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    患者は67歳,女性で食思不振を主訴に近医受診.腹部超音波検査で,膵嚢胞が疑われ,当院紹介された.腹部CT, MRI検査では,膵体部後面に,径約5cm大で,一部に隔壁様構造を有する嚢胞を認めた. ERCP検査では,総胆管,膵管とも膵内の同レベルで狭窄し,嚢胞と主膵管との交通は認めなかった.腹部血管造影検査では,嚢胞部は無血管野として認められ,脈管のencasementは認めなかった.以上より,膵嚢胞が胆管狭窄の原因とは考えにくく,他病変の存在を疑い手術を施行.術中に,膵頭部後面に,嚢胞とは明らかに違う約2cm大の固い腫瘤を触知し,術中迅速病理検査の結果,腺癌と診断され,膵頭十二指腸切除術を施行した.病理学的検査所見では,嚢胞は膵管由来と考えられる粘液嚢胞腺腫であり,癌とは相互に関係はなかった.今回われわれは,下部胆管癌に膵粘液性嚢胞腺腫を合併し,術前診断に苦慮した1例を経験したので報告した.
  • 中田 岳成, 小松 大介, 小山 洋, 熊木 俊成, 青木 孝學, 春日 好雄
    2002 年 63 巻 1 号 p. 175-179
    発行日: 2002/01/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    膵solid cystic tumorは若年女性に好発する比較的稀な疾患である.今回われわれはTurner症候群に併存した膵solid cystic tumorの1例を経験したので報告する.症例は35歳の女性で, 1999年8月健診での腹部超音波にて膵腫瘍を指摘され,当院受診.腹部CT, MRIから膵尾部solid cystic tumorと診断された.また低身長,原発性無月経があり染色体分析が行われたが46, X, i(q10)/45Xの性染色体異常を示し, Turner症候群と診断された. 2000年7月膵尾部切除が行われた.腫瘍は病理組織学的に膵solid cystic tumorであった.組織エストロゲンレセプター,プロゲステロンレセプターは陰性であり,本症例では膵solid cystic tumorの発現あるいは発育における女性ホルモンの関与は否定的であった. Turner症候群に合併する膵腫瘍は極めて稀とされるが文献的考察を加えて報告する.
  • 大村 健史, 森田 博義, 関川 敬義
    2002 年 63 巻 1 号 p. 180-184
    発行日: 2002/01/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    比較的稀な腎細胞癌の甲状腺転移の1例を経験したので報告する.症例は74歳,男性. 1984年に左腎癌にて左腎摘出術を施行され, 1997, 1998年にも右腎癌にて右腎部分切除術を施行されている. 2000年3月のCT,超音波検査にて右甲状腺内腫瘤を指摘され,さらに同年6月に穿刺吸引細胞診で腎細胞癌の転移が強く疑われた. 7月甲状腺右葉切除術を施行し,病理組織学的にも腎細胞癌の転移であることが確認された.計4回の手術材料の病理組織像は,基本的に同一であり,左腎癌を原発とする,異時性の対側腎転移および甲状腺転移と推察された.腎細胞癌の甲状腺転移は,本邦においては自験例を含めて現在まで23例報告がなされているが,左腎原発の症例が多い傾向が見られる.その理由としては,左腎静脈から椎骨静脈叢を介して頸椎まで上行する転移経路の存在が考えられた.
  • 当間 雄之, 山本 宏, 渡辺 一男, 永田 松夫, 田崎 健太郎
    2002 年 63 巻 1 号 p. 185-188
    発行日: 2002/01/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    腎細胞癌術後7年目に膵転移をきたし膵全摘術により切除しえた1例を経験した.[症例] 65歳,男性[主訴]腹部腫瘤[現病歴] 1989年11月,左腎癌の診断で左腎摘出術施行(pT2N0M0, stage II).術後5Fu内服にて経過観察中, 1993年5月左腎部・右上腕の皮下転移出現し摘出術施行.その後IFN-α 2,500万単位/2週で投与したが1996年1月背部皮下転移出現し摘出術施行.同時に腹部腫瘤認め膵腫瘍の疑いにて当科紹介となった.[経過]膵全域にわたる4個の転移と診断し同年3月膵全摘術(全胃温存)を施行した.切除標本には5.5, 2.0, 1.0, 0.8cmの4個の腫瘤が存在し組織学的に腎細胞癌の転移と診断された.術後経過良好にて退院したが膵転術後1年4カ月に多発性肝転移出現, 2000年4月に死亡した.悪性腫瘍の膵転移は稀であり予後も不良であるが腎細胞癌の転移は切除の適応となることが多く,予後も期待できると思われた.
  • 茂垣 雅俊, 柏木 慎也, 高橋 徹也, 神谷 紀之, 細井 英雄
    2002 年 63 巻 1 号 p. 189-192
    発行日: 2002/01/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    2歳7カ月女児に発症した右卵巣類皮嚢胞腫茎捻転の1例を経験した.卵巣嚢腫の茎捻転は成人女性に多くみられる疾患であるが,幼児での発症は稀である.突然の腹部疝痛や嘔吐などの消化器症状で発症する場合が多いが,腹部腫瘤の触知や画像診断により容易に他疾患と鑑別され得る.しかし,今回の症例では腫瘤が右上中腹部に位置していたため,術前診断が遅れた.幼児では卵巣が高位に位置し,周囲の支持組織も弱く,上腹部に腫瘤が触知されることがあり,局在部位のみから卵巣嚢腫を除外すべきではない.また,本疾患の診断には腹部MRIの矢状断が極めて有用であった.
  • 宮川 公治, 高橋 滋, 竹中 温, 山岸 久一
    2002 年 63 巻 1 号 p. 193-197
    発行日: 2002/01/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    子宮広間膜異常裂孔ヘルニアは稀な疾患であるが,今回われわれは腹腔鏡下にイレウス解除後,開腹にて確定診断した1症例を経験した.症例は33歳,女性.卵巣出血疑いで婦人科入院し,保存的治療を行っていたが, 2日後にイレウス症状を呈したため当科に紹介となった.小腸捻転による絞扼性イレウスを疑い緊急手術を施行した.腹腔鏡にて観察したところ,回盲部より約10cm口側の回腸にcaliber changeを認め,腹腔鏡下に嵌入腸管を引き出しイレウスを解除することができた.右骨盤底内にヘルニア門を認めたが原因検索のため開腹術へ移行した.その結果ヘルニア門が右子宮広間膜に生じた異常裂孔であったことが判明した.腸管壊死には陥っていなかったため異常裂孔を縫合閉鎖するのみで腸切除は行っていない.診断が困難であり,腸切除の頻度は高い本疾患において腹腔鏡下手術は有用であると考えられた.
  • 菊辻 徹, 石川 正志, 宮内 隆行, 西岡 将規, 柏木 豊, 三木 久嗣
    2002 年 63 巻 1 号 p. 198-201
    発行日: 2002/01/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    腹腔鏡下胆嚢摘出術(LC)後の腹腔内膿瘍形成にステープルが関与したと考えられた1例を経験した.症例は55歳の女性.高血圧症で通院中.虫垂切除術,卵管結紮術の既往あり.平成11年3月,他院にてLC施行.術後胆汁漏で1カ月間入院.平成12年7月から右上腹部痛出現し,同院での保存療法で改善しないため当科入院した.腹部単純X線で,圧痛点に一致する右上腹部に4mm大の金属片の像を多数認め,腹部CT検査で右肝下面に,金属片を含有した5cm大の低吸収領域を認めた. LC時のステープルが関与した腹腔内膿瘍と診断し,膿瘍ドレナージと膿瘍腔洗浄および抗生剤投与を行った.施行後33日で膿瘍は消退.以後,経過良好で退院した. 10カ月後の現在,再発の徴候は認めない.本症は文献上報告例がなく,非常に稀な合併症である. LC施行時には必要最小限のステープルの使用を心がけ,落下ステープルは回収を原則とするなど,本症発生も念頭に置く必要性が示唆された.
  • 小河 靖昌, 矢野 誠司, 大森 浩志, 辻 宗史, 小池 誠, 板倉 正幸, 角 昭一郎, 仁尾 義則
    2002 年 63 巻 1 号 p. 202-206
    発行日: 2002/01/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    腸間膜静脈血栓症(mesenteric venous thrombosis:以下MVT)は,非常に稀ではあるが致命率の高い疾患である.今回われわれは,真性多血症が原因で発症したと考えられたMVTの1例を経験した.症例は68歳,女性.真性多血症の経過中に腹痛,嘔吐をきたし,腹部造影CT等の画像にて腸間膜静脈内に血栓を認め, MVTと診断された.初めは,保存的に抗凝固線溶療法を行っていたが,腹膜刺激症状が出現したため緊急手術となった.手術所見では,小腸が広範囲にわたって虚血,壊死に陥っており,これを可及的に切除した.術後も抗凝固療法を行い, 1年目の現在も再発はみられていない.真性多血症では, MVTを合併することもあり,本症を発症した場合には,迅速かつ適切な診断と治療が救命につながると考えられた.
  • 藤木 健弘, 橋本 幹稔, 堺 浩太郎, 倉持 均, 永川 祐二, 山田 勝博, 平川 栄二, 渕野 泰秀
    2002 年 63 巻 1 号 p. 207-209
    発行日: 2002/01/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    大網裂孔ヘルニアの1例を経験した.症例は13歳,男性で過食後より出現した心窩部痛のため入院した.腹部CT検査では胃上部腹側に拡張小腸が存在し,小腸造影では上部空腸の狭窄像を認めた.内ヘルニアによるイレウスと診断し開腹術を施行した.術中所見では胃結腸間膜の異常裂孔から嵌入した小腸が,短縮した網嚢を通り腹腔に脱出する大網裂孔ヘルニアを認めた.手術では腸切除の必要はなく,嵌入小腸を整復し異常裂孔を閉鎖した.本症例は適切な手術時期の決定により腸切除を回避しえたと考えられた.
  • 王子 裕東, 石島 直子, 佐々木 久, 下松谷 匠, 丸橋 和弘
    2002 年 63 巻 1 号 p. 210-213
    発行日: 2002/01/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    鼠径ヘルニアが原因と考えられる大網捻転壊死の稀な症例を経験したので報告した.症例は62歳,男性で左鼠径部から左陰嚢にかけての腫大と右下腹部痛にて来院した, 38°Cの熱発と右下腹部の圧痛,筋性防御を認め,また腹部computed tomography (以下CT)で中下腹部に渦巻き状の層状構造を認め大網捻転壊死を疑い開腹手術を施行した.大網の約3/4が捻転し,出血壊死状となっており,健常部で大網を切除し,左鼠径ヘルニア根治術を併せて施行した.病理診断では悪性所見を認めなかった.自験例を含む98例について文献的考察を加え検討した.大網捻転症は術前診断が困難であるが診断にはCTが有用であった.また死亡例はなく,予後良好であった.
  • 下松谷 匠, 丸橋 和弘, 天谷 博一, 王子 裕東, 金 禹〓, 下郷 司
    2002 年 63 巻 1 号 p. 214-218
    発行日: 2002/01/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    今回Dubin-Johnson症候群に合併した後腹膜平滑筋肉腫の症例を経験したので報告する.症例は72歳の女性で,平成10年9月泌尿器科にて後腹膜腫瘍摘出術を受け,平滑筋肉腫の診断であった.平成12年5月, CT検査で後腹膜に腫瘍の再発を認め胃,膵臓および縦隔に浸潤していた. 8月より黒色便,眩暈を認め,貧血を指摘され入院となった.総ビリルビン3.2mg/dl,直接ビリルビン2.6mg/dlと直接型優位の黄疸を認めた.胃内視鏡検査で胃内に突出する易出血性の腫瘍を認め生検の結果平滑筋肉腫の診断であった.入院後も下血が続いたため手術を施行した.肝臓は黒褐色であったが大きさや形態はほぼ正常であった.後腹膜腫瘍は胃および膵体尾部とともに切除し,縦隔浸潤部も経腹的に切除した.組織学的には平滑筋肉腫と診断された.肝生検では小顆粒状の褐色の色素が肝細胞内に沈着していた.術後は最高総ビリルビン10.2mg/dlと上昇したが漸減し,肝不全の徴候もなく退院となった.
  • 宮澤 秀彰, 安藤 秀明, 伊藤 正直, 小棚木 均, 小山 研二
    2002 年 63 巻 1 号 p. 219-222
    発行日: 2002/01/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    Mesh plug法後の再発鼠径ヘルニア2例に対し,腹腔鏡補助下に腹腔内からヘルニアの状態を観察しながら,前方からのアプローチでヘルニア修復術を施行. Meshを除去することなくヘルニア門に新たなmesh plugを挿入し修復した. 2例とも術後再発はなく,経過良好である.
    成人鼠径ヘルニアに対し当科では,局所麻酔下mesh plug法によるヘルニア修復術を標準術式としているが, mesh plug法後の再発鼠径ヘルニアに対しては,腹腔鏡補助下に行うことでヘルニア嚢を容易にかつ確実に識別できる.それにより,鼠径管内の不必要な剥離を行わず,ヘルニア門にmesh plugを挿入することで最少限の侵襲で確実に施行できる.今後もmesh plug法後の再発例に対しては,腹腔鏡補助下ヘルニア修復術を行っていく方針である.
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