日本臨床外科学会雑誌
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63 巻, 7 号
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  • 栗原 英夫
    2002 年 63 巻 7 号 p. 1593-1606
    発行日: 2002/07/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    バセドウ病の外科治療は現在も1840年にKarl Adorf von Basedowが記載したMerseburgの3主徴,すなわち,甲状腺機能亢進症,突眼症,甲状腺腫の治療との闘いである.私の30年間の手術経験と症例の調査検討より,以下のような治療指針で手術を行っている. 1) 術後再燃の防止について:私の手術症例の, 1981年, 1991年, 1996年の3回(486例)の統計と,術後再燃で当院を受診した106例の調査結果より,術後再発のない術式として,甲状腺残量を2g未満にする甲状腺超亜全摘術を行っている. 2) 突眼症について:活動性バセドウ病眼症58例に甲状腺全摘を行い,甲状腺全摘は通常の亜全摘に比べ,眼症の進行に抑制的効果があることを認め,重症の眼症例には甲状腺全摘を行っている. 3) 甲状腺腫について:とくに術後再燃で巨大な結節を形成している症例では再手術が難しいため,再手術前に大量の放射性ヨードを投与し,甲状腺腫の縮小を待って手術し,良い結果を得ている.
  • 尾浦 正二, 谷野 裕一, 吉増 達也, 櫻井 照久, 粉川 庸三, 岡村 吉隆
    2002 年 63 巻 7 号 p. 1607-1611
    発行日: 2002/07/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    MRIガイド下リンパ節サンプリング(MLNS)を併用した乳癌センチネルリンパ節(SLN)生検の有用性を検討した.対象は, 2000年7月~2001年10月までにMLNSを併用してSLN生検を行った85名(87例:術前生検7例,術前化学療法4例を含む). SLN生検単独で87例中86例(99%)のSLNの同定が可能であり,同定不能の1例はMLNSで転移陽性リンパ節を同定しえた.また, SLN生検で転移陰性と判定した1例でMLNSにより転移陽性リンパ節を同定しえた.術前生検例では7例全例で,術前化学療法例では3例でSLNの同定が可能であった.今回の検討では, 27例(31%)でリンパ節転移が陽性であったが,内13例はSLNのみの転移であった.さらに13例中3例は, SLNに微小転移を認めたのみであった.以上より, MLNSを併用することで,より正確にSLN生検を施行することが可能になると思われる.
  • 谷 安弘, 南 盛一, 安達 大史, 小西 勝人, 高橋 將人, 田村 元, 荻田 征美
    2002 年 63 巻 7 号 p. 1612-1615
    発行日: 2002/07/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    進行再発乳癌20例に対しpaclitaxel 50~80mg/m2,週1回1時間投与を行った. (50mg/m2が6例, 80mg/m2が14例)6投2休を1サイクルとして3サイクルを上限として投与した.投与回数の中央値は10回,奏効率50%, time to progressionの中央値は14.5週で,薬物有害反応としては重篤な急性過敏症は認めず,白血球減少,知覚障害は軽度で,軽度の倦怠感が認められたが外来での投与が十分可能であった. Anthracycline,またはdocetaxel投与歴のある進行再発乳癌に対しても有効率は変わらず,本来QOLを重視する必要がある進行再発乳癌に対して有用であると考えられた.
  • 上原 浩文, 中村 豊, 米森 敦也, 竹本 法弘, 竹内 幹也, 平 康二, 菱山 豊平, 近藤 哲, 加藤 紘之
    2002 年 63 巻 7 号 p. 1616-1620
    発行日: 2002/07/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    当院における小腸損傷74例115病変を対象とし,日本外傷学会消化管損傷分類を用いて,本邦初となる多数例の検討を行った.損傷形態ではIIa型が45病変(39.1%)を占め最も多かった.受傷より手術までの時間を検討したところ, II型においては受傷24時間以降に症状が増悪する症例があり,小腸損傷における無症状期の存在が示唆された.またIII型においては受傷数日後に手術となっており,遅発性の消化管損傷と考えられた. II型, III型においては,受傷直後には症状を呈さない場合があり,腹部打撲歴を有する外傷患者診察の際には経時的な観察が重要であると考えられた.診断では,高速ヘリカルCTのwide windowでの画像解析による腹腔内遊離ガス像の証明が有用と考えられた.合併症としては創感染が多く,予後としては,小腸損傷のみでの死亡例は経験しておらず高率に救命されていた.
  • 抗腫瘍免疫担当細胞との関連を中心に
    大渕 康弘, 橋口 陽二郎, 望月 英隆
    2002 年 63 巻 7 号 p. 1621-1627
    発行日: 2002/07/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    大腸癌患者58例において,血管内皮細胞に発現する接着因子E-selectinの術前末梢血中濃度を測定し,予後および腫瘍組織におけるリンパ球浸潤との関連について検討した.術前末梢血中E-selectin濃度高値群(n=29)の7年無再発生存率,生存率(各々87, 87%)は低値群(n=29)(各々55, 61%)と比較し有意に良好であった.CD45RO陽性細胞浸潤がgrade 0, 1, 2と高度になるにつれ平均術前末梢血中E-selectin濃度は各々24, 29, 38ng/mlと有意に高値を示し予後は有意に良好であった. CD4陽性細胞浸潤高度群(n=39)のEsは軽度群(n=19)に対し有意に高値(36:23ng/ml, p<0.05)であった. CD8陽性細胞浸潤高度群(n=41)の術前末梢血中E-selectin濃度は軽度群(n=17)と比較して高い傾向であり(35:25ng/ml,p=0.08),その5年生存率は有意に良好(85:62%,p<0.05)であった.術前末梢血中E-selectin濃度は大腸癌の有意な予後因子で,機序としてmemory T細胞を中心とした抗腫瘍免疫への関与が示唆された.
  • 仲田 文造, 西野 裕二, 内間 恭武, 山下 好人, 山田 靖哉, 大平 雅一, 石川 哲郎, 平川 弘聖
    2002 年 63 巻 7 号 p. 1628-1632
    発行日: 2002/07/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    5年以上生存した浸潤型膵管癌切除例6例(長期生存群)の臨床病理学的特徴を5年未満で死亡した切除例48例(中・短期生存群)と比較した.長期生存群は中・短期生存群と比べて有意にts因子(腫瘍径)が小さく, stageが低く, rp因子が低かった.しかし,長期生存群の中にはstageIIIが2例, IVaが2例, cur cが2例, t3が2例あり,局所浸潤が高度でも手術により長期生存する症例があった.またリンパ節転移陽性が2例あり,いずれも1群に1~2個の転移であったが, D1+αのリンパ節郭清を行い長期生存を得た.術前のCA19-9値は長期生存群で中・短期生存群より有意に低値であった.結論として臨床病理学的因子のみでの長期生存の予測は不十分であり,分子生物学的因子による予後因子の研究が必要と思われた.
  • 2症例の治療報告
    田中 芳明, 溝手 博義, 甲斐田 徹
    2002 年 63 巻 7 号 p. 1633-1640
    発行日: 2002/07/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    褥瘡患者2症例に対して,創傷治癒促進因子である亜鉛,銅, n-3系脂肪酸高含有の経腸栄養剤を用いた栄養管理を行った.
    症例1は軟菜全粥食の摂取にもかかわらず褥瘡が改善しないため,蛋白合成,創傷治癒に必要な栄養素の投与目的で,半消化態経腸栄養剤に変更した.エネルギー,蛋白,アルギニン投与量に変化はなく, n-3系脂肪酸,亜鉛,銅の投与量が増加して第6次改定の栄養所要量の摂取基準を満たし,蛋白合成能および脂質代謝の改善に伴って,治療後8週目には褥瘡は治癒した.症例2は高度の低栄養が認められ,経腸栄養剤の投与量を増加させて,摂取基準に見合うn-3系脂肪酸,亜鉛,銅の投与が行え,蛋白合成能および脂質代謝の改善に伴って治療後10週目には褥瘡は治癒した.
    難治性の褥瘡患者の治療においては,エネルギーや蛋白の投与量のみでなく,蛋白合成能の改善や創傷治癒に必須となる栄養素の投与組成を考慮した栄養管理が重要といえる.
  • 後藤 了一, 南 盛一, 高橋 将人, 田村 元, 荻田 征美, 山城 勝重
    2002 年 63 巻 7 号 p. 1641-1644
    発行日: 2002/07/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    乳腺に発生した稀な巨大fibrous tumorの1例を報告する.症例は49歳,女性.約7年前に右乳房腫瘤を自覚,徐々に増大し右乳房全体を占めるほど大きくなってきたことから当科を受診した.穿刺吸引細胞診にて細胞は採取されず, core needle biopsyにて膠原線維の増生を主体とする組織像であった.悪性の所見は得られなかったが,巨大な腫瘍であり正常乳腺が見あたらず,葉状腫瘍の可能性を考慮して単純乳房切除術を施行した.摘出標本肉眼所見では右乳房全体を占める約15×15cm大の白色均一な腫瘍であった.病理組織学的検査で線維芽細胞と周囲に膠原線維の増生を認め,核異型,分裂像などを認めず, fibrous tumorと診断された.
  • 中村 二郎, 小河原 忠彦, 雨宮 秀武, 吉田 経雄
    2002 年 63 巻 7 号 p. 1645-1649
    発行日: 2002/07/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は77歳,女性.昭和39年に左乳癌,昭和61年に右乳癌でいずれも定型的乳房切断術を受けている.当院の定期検診で上部消化管内視鏡検査が施行され,胃幽門前庭部大彎前壁寄りにSMT様の病変が指摘された.精密検査では胃周囲の多発性腫瘤が認められたが,確定診断はえられなかった.腹腔内腫瘤の診断で開腹術を施行したところ,腹膜播種性腫瘤,胃所属リンパ節腫大と胃周囲から肝表面にかけての癌性リンパ管症様所見が認められた.可及的切除を目的として幽門側胃切除,大網切除および横行結腸部分切除術を施行した.病理組織学的検索では, 13年前に施行された右乳癌の転移と診断された.術後low-dose FP療法を繰り返し施行し, 2年経過した現在再発徴候なく健在である.乳癌の再発としては稀な腹膜播種および腹腔内リンパ節転移の1例を経験したので,文献的考察を加え報告した.
  • 桂 春作, 野村 真治, 久我 貴之, 河野 和明, 加藤 智栄, 守田 信義
    2002 年 63 巻 7 号 p. 1650-1653
    発行日: 2002/07/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    CAFおよび外科治療抵抗性進行乳癌にpaclitaxel週1回投与+5'-DFURが奏効した1例を経験したので報告する.症例は37歳,女性.右乳癌,骨転移と診断し, CAF療法3クール施行後,非定型的乳房切除術施行.術後, CAF療法を1クール行ったが,腫瘍マーカーが増加し続けるため, paclitaxel週1回投与+5'-DFURへ変更し,外来通院とした.変更後腫瘍マーカーは著明に減少し始め, 7ヵ月後には,正常値近くまで低下した.副作用もCAFと比較し軽度であった.現在この症例は,大きな副作用なく外来通院で治療を継続し,完全に社会復帰,会社勤務をしている. paclitaxel週1回投与+5'-DFUR併用療法は難治性の乳癌に対する新しい治療法になりうる可能性があると考える.
  • 井上 雅文, 加藤 保之, 小川 佳成, 石橋 里絵, 石川 哲郎, 平川 弘聖
    2002 年 63 巻 7 号 p. 1654-1657
    発行日: 2002/07/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は45歳,女性.主訴は右腋窩リンパ節腫脹. 1985年3月26日,左乳癌根治術(Br+Ax+Mj+Mi)施行.浸潤性充実腺管癌, T2a, n0, stage IIであった. 1998年9月,左乳癌の胸壁再発と診断.化学療法と放射線療法施行し,腫瘍の縮小を認めた後, 1998年12月25日,左胸壁腫瘤摘出術ならびに第5, 6肋骨部分切除,腹直筋皮弁形成術を施行. 1999年10月,超音波検査で右腋窩リンパ節腫脹を認め,穿刺吸引細胞診を行いclass Vと診断された.右乳房には腫瘍を認めず,リンパ節は径2.5cm,表面平滑で可動性は良好であった. 1999年12月10日,右腋窩リンパ節郭清施行.病理診断は転移性腺癌であった.乳癌根治術後,晩期の再々発を認めたが,内分泌・化学療法と放射線療法,手術により良好な経過を得ている1例について, 1989年から1999年までに報告のあった晩期再発例とともに,特に再発転移様式に関して文献的考察を加えた.
  • 上 奈津子, 川端 英孝, 上野 貴史, 平田 勝, 田中 潔
    2002 年 63 巻 7 号 p. 1658-1661
    発行日: 2002/07/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    癌性心嚢水の貯留による心タンポナーデは,迅速な対応を要するoncologic emergencyである.進行再発乳癌症例で,癌性心嚢水による心タンポナーデは2%と報告され稀ではなく,突然死を回避すべく常に念頭においた診療,類似した症状を呈する他の病態との的確な鑑別が要求される.エコー画像検査で診断は容易である.症状・徴候の観察や胸部レントゲン写真のみでは癌性リンパ管症・癌性胸水のみと誤診する可能性がある.初期治療は経皮的心嚢穿刺排液で,続けて癒着術および全身化学療法を行う.われわれは再発乳癌の3症例で,癌性心嚢水による心タンポナーデを経験し,心嚢穿刺排液と癒着術を行い, 2例ではその後,全身化学療法を施行し,心嚢水の制御と効果的な延命を得た.
  • 野路 武寛, 児嶋 哲文, 清水 鉄也, 北城 秀司, 飯村 泰昭, 加藤 紘之
    2002 年 63 巻 7 号 p. 1662-1665
    発行日: 2002/07/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    胸腔鏡下に切除したduplication cystの1例を経験したので報告する.症例は54歳,女性.乾性咳嗽を主訴に当院内科を受診し, CT, MRI,超音波内視鏡にて食道筋層に接し,右肺静脈,右主気管支の間に存在する先天性縦隔嚢胞と診断された.先天性縦隔嚢胞の悪性化の報告は稀であるが,圧迫症状や,肺食道縦隔内への穿破をきたすことがあり,無症状でも手術適応とされている.このため胸腔鏡下に嚢胞摘出術を行った.嚢胞は術前診断どおり,食道壁に接し,右肺静脈,右主気管支,心膜に癒着していた.このような症例に対し小開胸併用VATS,通常開胸に移行するべきであるとの意見もあるが,本症例では吸引,凝固電極鉗子などを用いた鈍的剥離と電気メスにて安全に摘出しえた.嚢胞は病理組織学的検査にてduplication cystと診断された.術後8日目に退院し,術後7カ月目の検査にて再発を認めていない.
  • 細田 裕, 砥石 政幸, 藤森 芳郎, 五十嵐 淳, 宮本 英雄, 砂盛 誠
    2002 年 63 巻 7 号 p. 1666-1669
    発行日: 2002/07/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    われわれは食道癌術後(上行結腸再建術式)の良性狭窄に対して2回のステント留置により巨大な気管-気管支食道瘻を形成した症例に対して気管-気管支の再建を行った.
    胸腔内気管膜様部の全長が欠損し,膿胸を併発さらに気管内ステント突出による気道閉塞,誤嚥性肺炎を繰り返すため,自己大腿筋膜と有茎広背筋を用いて,左主気管支および気管分岐部から,頸部気管移行部までの約13cmにわたる気管-気管支の再建を行った.大腿筋膜と広背筋により再建した気管膜様部は咳漱嗽反射にも協調し機能的にも優れていた.
  • 大平 真裕, 江藤 高陽, 山木 実, 舛本 法生, 沖山 二郎, 先本 秀人, 高橋 信
    2002 年 63 巻 7 号 p. 1670-1674
    発行日: 2002/07/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    今回Stage I肺癌治癒切除後7年半を経過して,肺・脳・骨に同時多発転移をきたした症例を経験した. 63歳,男性,平成5年11月にStage I高分化乳頭型腺癌に対し当院で左肺上葉切除術を施行し,以後経過観察していた.約7年半経過した平成13年5月右側腹部痛を主訴に来院し,精査したところ両肺に播種性小結節陰影,骨シンチ上右肋骨にuptake,脳に2箇所結節影を指摘された.内科的に原発巣を確定することができず,同年7月診断目的で胸腔鏡下肺生検を施行した.病理組織学的検査により左肺腺癌からの多発肺転移,骨転移,脳転移と診断し化学療法,γナイフ療法を開始するも同年12月死去された.Stage Iの原発性肺癌治癒切除後の再発は,そのほとんどが2年以内であり,5年以上経過してからの再発は極めて稀であるが,再発の兆候を見逃さないために長期にわたるきめ細かなfollowが必要だと思われた.
  • 松本 英男, 鈴木 宏光, 湯浅 吉夫, 有岡 一郎, 岡田 正比呂, 土肥 俊之, 平井 章三
    2002 年 63 巻 7 号 p. 1675-1678
    発行日: 2002/07/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は76歳,男性.交通事故後に救急搬入された. MRIで胃の胸腔内への脱出を認め,外傷性横隔膜ヘルニアと診断した.腹腔鏡を用いて脱出した胃と大網を整復し,破裂した横隔膜はENDOSTICH®で直接縫合した.術翌日より経口摂取を開始し離床可能であった.
    腹腔鏡下手術は低侵襲であり,腹腔内臓器の観察に加え,腹腔内も観察可能で必要に応じて開腹への移行も容易であることから,外傷性横隔膜ヘルニアに対して有効な術式であろうと思われた.
  • 馬場 將至, 桧垣 直純, 西原 政好, 石田 雅俊, 川崎 博泰, 村上 宜也, 篠山 喜昭
    2002 年 63 巻 7 号 p. 1679-1682
    発行日: 2002/07/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    多発性筋炎に合併した早期食道癌の1例を経験した.症例は73歳,男性. 2000年10月に両手の腫脹,関節痛が出現した.四肢近位筋優位の筋力低下を認め, CPKなど筋原性酵素の上昇,筋電図および筋生検所見により多発性筋炎と診断された.悪性腫瘍の検索にて,上部消化管内視鏡検査により胸部下部食道の扁平上皮癌と診断された. Prednisolone 50mg/dayを経口投与され,筋原性酵素の値は正常化し,筋力低下も改善を示したので,左開胸開腹食道下部切除術,後縦隔経路全胃再建,胸腔内吻合術を施行した.摘出標本ではLtに1.2×1.5cmの0-IIc病変を認め,病理組織学的診断はwell differentiated squamous cell carcinoma, ly0 , v 0 , pT1b, pN0, pM0, pStage Iであった.術後prednisolone 10mg/dayまで減量したが,血液検査は正常で,筋炎症状の悪化も認めず, 10ヵ月以上経過後も食道癌再発はなく健在である.稀な症例であり文献的考察を加えて報告した.
  • 高谷 義博, 清崎 浩一, 宮田 道夫, 小西 文雄
    2002 年 63 巻 7 号 p. 1683-1687
    発行日: 2002/07/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    患者は62歳,女性.嚥下困難の精査により,食道癌肉腫と診断し,右開胸開腹食道亜全摘, 3領域リンパ節郭清および胸骨後胃管再建術を施行した.腫瘍は5型病変であり,組織学的に紡錘形細胞から成る肉腫と移行部分に連続した扁平上皮癌で構成されていた.免疫染色結果と併せ,“いわゆる癌肉腫”, MtLt5s型, pT2N3M0IM0, pStage IIIと診断した.術後FP療法を1クール実施したが, 1年後,肝外側区域に径20mmの転移巣が判明し,再建胃管との位置関係より切除困難と判断し, CDDP50mg, bolus肝動(day1)および5-FU1,000mg点滴静注(day 2-6)による肝動注化学療法を3クール実施した.再発確認から7ヵ月後に, CRと判定したが,後に再々発をきたし,再発確認後23ヵ月目に癌死した.食道の“いわゆる癌肉腫”は稀な疾患で,肝転移巣に対し動注化学療法が奏効したという報告は少ない.これらの観点から貴重な症例と考え,報告する.
  • 須藤 日出男, 高木 融, 岡田 佳平, 篠原 玄夫, 原田 佳明, 立花 慎吾, 青木 達哉, 小柳 泰久
    2002 年 63 巻 7 号 p. 1688-1690
    発行日: 2002/07/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は54歳,男性.食後,嘔気ありスプーンを用い咽頭を刺激中誤って嚥下した.当院を受診し腹部レントゲン写真で胃内にスプーンを認め緊急入院となった.翌日の腹部レントゲン写真で先端が十二指腸球部まで進んでいたが固定されていたため内視鏡検査を施行した.先端は幽門輪を越え十二指腸球部に,柄側は胃体下部大彎の壁内に陥入するように固定されていた.ポリペクトミー用スネア鉗子を用いてオーバーチューブに柄を収納し体外へ摘出した.摘出したスプーンは全長18.5cm,幅4.0cmであった.胃内異物治療の第1選択は内視鏡的摘出であり種々方法が試みられているが,長径の長いものでは開腹例が多い.本症例のように長径が18cmを超える異物を内視鏡的に摘出した報告は自験例を含め2例であった.
  • 村田 賢, 立石 秀郎, 東野 健, 柴田 邦隆, 畑 泰司, 門田 卓士, 小林 哲郎
    2002 年 63 巻 7 号 p. 1691-1695
    発行日: 2002/07/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    胃癌肝転移に対する肝切除の意義については不明な点が多い.肝切除を施行した胃癌肝転移症例の中で無再発生存の得られた2例を報告し,根治的な治療法としての肝切除の意義について考察した.症例1: 72歳,男性.胃前庭部の胃癌(tub 2, SM, ly2, v0, N2)に対し幽門側胃切除を施行した, 6ヵ月後,肝S3に転移が出現しS3切除を行った.肝切後36ヵ月が経過した現在無再発生存中である.症例2: 65歳,男性.胃体下部の胃癌(pap-tub, SS, ly1, v0, N2)に対し幽門側胃切除を施行した. 18ヵ月後,肝S5に転移が出現しS5切除を行った.肝切後62ヵ月が経過した現在無再発生存中である.これら無再発生存の得られた2例はいずれも単発,異時性転移例で切除断端は10mm以上であった.他に転移巣を認めない胃癌肝転移例は肝切除の適応で,特に異時性で単発例に対しては積極的に切除に取り組むべきであることが示唆された.
  • 久田 将之, 佐嶋 健一, 花輪 聰, 青木 達哉, 小柳 〓久
    2002 年 63 巻 7 号 p. 1696-1699
    発行日: 2002/07/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は67歳,男性.平成11年2月より突発的な心窩部痛と腹部膨満感を主訴に受診,鎮痛剤にて経過観察されていた.平成11年11月心窩部痛および腸閉塞症状出現し入院となった.腹部CTではwhirl signがみられ,腹部血管造影ではbaber pole signを認めたため,小腸軸捻転症の診断にて手術を施行した.空腸は上腸間膜動脈を中心に反時計回りに180°回転しており,その腸間膜は虫垂と炎症性癒着を起こしていた.腸管壊死は認めなかったため,捻転解除術および虫垂切除術施行した.今回,われわれは約8ヵ月間の前駆症状を伴い慢性に経過した続発性小腸軸捻転症を経験したため,他の報告例と比較検討した.
  • 檜 友也, 大塩 猛人, 日野 昌雄, 大下 正晃, 開野 友佳理
    2002 年 63 巻 7 号 p. 1700-1703
    発行日: 2002/07/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    D-lactic acidosisは,通常検出されないD型乳酸の増加によりアシドーシスを惹起する疾患で,短腸症候群の患児に稀に発症する.われわれは,新生児期に回腸閉鎖のために回盲弁を含んだ小腸広範囲切除術(残存小腸75cm)を施行した患児に,代謝性アシドーシスを併発し, 2回目の発症時にD-lactic acidosisと診断した症例を経験したので報告する.本症例においては, D型乳酸の測定は行っていないが,発症時の便培養においてLactobacillus fermentumが90%以上を占めており,これが診断の根拠となった.治療法は,重曹の内服を3ヵ月間行った.治療開始以降,便の細菌叢の正常化を認め,その後同様の症状の出現を認めなかった.
  • 渡辺 敦, 竹内 賢, 太田 博彰, 井川 愛子, 山本 悟, 渋谷 智顕, 樫木 良友
    2002 年 63 巻 7 号 p. 1704-1708
    発行日: 2002/07/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    腸閉塞により発症した成人腸管逆回転症を経験した.症例は36歳,男性.大食した翌日より腹痛,嘔吐,下痢をきたし近医受診.急性胃腸炎と診断されたが,翌々日でも症状改善せず,腹部単純X線検査で拡張した腸管のガス像を認め腸閉塞症と診断され,当院へ紹介された. Long tubeの挿入は困難で,注腸造影にて上行結腸に「鳥のくちばし」状狭窄を認め,軸捻転症と診断し緊急手術を施行した.開腹所見では完全逆回転症で,後腹膜に固定されておらず回盲部の軸捻転を生じていた.捻転解除後,腸管の血行は保たれていたので回盲部の固定と虫垂切除を施行した.
  • 河島 秀昭, 石後岡 正弘, 樫山 基矢, 高梨 節二, 山崎 左雪, 細川 誉至雄
    2002 年 63 巻 7 号 p. 1709-1712
    発行日: 2002/07/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は30歳,女性.主訴は発熱,下痢. 1998年にCrohn病による大腸狭窄と瘻孔形成により腹腔鏡下に結腸部分切除+狭窄形成術を施行した. 2001年4月末より発熱と嘔吐,下痢が出現し入院. 5月8日に大量下血となり血管造影検査にて動脈性の出血を確認し手術を行った.出血源を含む回盲部切除術を施行した.術後1日目に縫合不全の診断で再手術となる.この時吻合部より口側10cmに出血を認め, 15cm追加切除を行った.約1ヵ月後再び大量下血となり再手術となった.出血点は明らかでなかったが,連続活動性潰瘍病変は前回吻合部より口側に存在し,これを含め上行結腸側10cm回腸側25cmを切除した.
  • 中村 昌樹, 諏訪 大八郎, 東 幸宏
    2002 年 63 巻 7 号 p. 1713-1718
    発行日: 2002/07/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    今回われわれは,管腔外発育をし,腹腔内に膿瘍を形成した空腸癌の1例を経験したので報告する.
    症例は62歳,女性. 17歳で急性膵炎の手術既往あり,全身倦怠感を主訴に近医受診し,貧血と低蛋白血症を指摘され当院を紹介された.入院時,左上腹部に手拳大の腫瘤を触知し, CTで胃の背側,膵の腹側の内部にガス像を含んだ広範な嚢胞性腫瘤像と,肝両葉に多発転移巣を認めた.小腸造影,内視鏡等で空腸癌に合併した腹腔内膿瘍と診断し手術を施行した.稀な発育形態を呈した小腸癌の1例を経験したので報告する.
  • 田名場 善明, 谷村 清明
    2002 年 63 巻 7 号 p. 1719-1722
    発行日: 2002/07/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    Recklinghausen病(R病)に伴う小腸悪性神経鞘腫の1例を経験したので報告する.症例は76歳,男性.生来のR病で63歳の時,下血にて緊急手術.空腸内腔に突出する腫瘍からの出血であり,腫瘍を含む空腸部分切除術施行.病理組織診は神経鞘腫であったが,悪性を否定できなかった.その後13年間経過良好であった. 76歳の時再び下血を認めた.腹部CT像にて10.5×9cmの腫瘍を認めた.小腸を含んだ充実性の腫瘍からの出血であり,既往歴から小腸神経鞘腫の悪性化との術前診断にて腫瘍摘出術を行った.病理組織診は悪性非上皮性腫瘍であり,臨床経過から悪性神経鞘腫と診断した.いったん退院したが,腹腔内局所再発にて術後4ヵ月で死亡した.
  • 植木 匡, 石塚 大, 杉本 不二雄
    2002 年 63 巻 7 号 p. 1723-1726
    発行日: 2002/07/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は61歳の男性で, 1週間前よりの右上腹部痛と食欲不振にて近医より紹介された. CT検査にて門脈ガス,門脈右枝の血栓および上腸間膜動脈に沿った後腹膜膿瘍を認めた.膿瘍の原疾患が不明で,腹膜炎症状がないため保存的治療を開始した.しかし,炎症所見が再燃したため入院後24日目に手術を施行した.虫垂炎の壊死穿孔による後腹膜膿瘍の手術所見であり,膿瘍の切開排膿術と虫垂切除術を施行した.膿培養にてBacteroides属が検出された.術後19日目に気腫性胆嚢炎を発症し,経皮的胆嚢ドレナージ術を施行した.その後経過良好にて術後45日目に退院した.虫垂炎を原疾患とした膿瘍による門脈ガス血症の報告は,本邦では2例目と稀であり報告した.
  • 古賀 裕, 中村 勝也, 田崎 哲, 堤 宣翁, 田口 健一, 寺坂 禮治
    2002 年 63 巻 7 号 p. 1727-1731
    発行日: 2002/07/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    放射線照射における腸管障害は早期と晩期障害とに大別されるが,後者は狭窄や穿孔をおこし外科的治療が必要となることがある.さらに照射後5年以上経過して悪性病変を合併しやすいとの報告がある.症例1は78歳の女性. 20年前に子宮癌治療のため骨盤に放射線照射をうけた.主訴は便秘でS状結腸の全周性狭窄に悪性病変を合併していたためS状結腸切除術を施行した.症例2は73歳の女性. 15年前に子宮癌治療のため骨盤に放射線照射をうけた.主訴は血便で小腸出血が見られたためバソプレシン動注療法を施行した.止血できたが,これが原因と思われるS状結腸の狭窄をきたし, S状結腸切除術と小腸部分切除術を施行した.悪性病変の合併はなかったが放射線腸炎の所見が認められた.放射線照射後長期経過した症例は慎重な経過観察が重要と思われた.
  • 高橋 宏明, 早川 弘輝, 冨田 隆
    2002 年 63 巻 7 号 p. 1732-1736
    発行日: 2002/07/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    患者は37歳,男性で排便時の出血ならびに発熱をきたしたため近医を受診し,当科に紹介された.下部消化管内視鏡検査にてS状結腸に2型の腫瘍性病変を認め,生検にて紡錘型の異型細胞の浸潤を認めた.また注腸造影では, S状結腸から回腸が直接造影され, S状結腸回腸瘻の存在を認めた. CTではS状結腸の腫瘍は膀胱への浸潤が疑われた.以上より広範囲に浸潤したS状結腸悪性腫瘍の診断にてS状結腸切除兼回腸ならびに膀胱部分切除を施行した.病理組織所見では腫瘍は多核巨細胞や大型不整型核を伴う紡錘型細胞の増生を認めたが,明らかな腺癌成分はなく,リンパ節転移も認めなかった.免疫染色では平滑筋アクチン, c-kit, CD34は陰性でcytokeratinが陽性であることからsarcomatoid carcinomaと診断した.一方,摘出した膀胱には粘膜内に留まる移行上皮癌を認め,その近傍まで紡錘型細胞は浸潤していた.
  • 菅原 章隆, 朝倉 武士, 石井 利昌, 今村 大朗, 小野 貴弘, 山口 晋
    2002 年 63 巻 7 号 p. 1737-1740
    発行日: 2002/07/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    われわれは高齢者にみられた稀な下部直腸(Rb)穿孔の1例を経験したので報告する.症例81歳,女性.腹痛を自覚し,腹部CTで直腸周囲に浸出液およびair fluid levelを認めた.緊急注腸造影にて下部直腸から造影剤の腸管外流出を認め,直腸穿孔と診断し,同日緊急開腹術を施行し,下部直腸の穿孔とその周囲の膿瘍形成を認めた.穿孔部に明らかな腫瘍性病変,潰瘍性病変は認めなかった. Hartmann手術を施行し,術後経過は良好であった.病理組織学的検査でも特徴的所見は認めず,特発性直腸穿孔と診断した.
  • 山田 治樹, 中島 克仁, 飯野 弥, 長谷川 博雅, 江口 英雄, 藤井 秀樹, 松本 由朗
    2002 年 63 巻 7 号 p. 1741-1746
    発行日: 2002/07/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は57歳の男性. 6年前,盲腸とS状結腸の多発癌に,胃癌を併存した重複癌に対して,結腸右半切除術, S状結腸部分切除術,胃全摘術を施行した.術後のfollow upの大腸内視鏡検査で,直腸S状部に直径20mm大の病変を指摘された.色素撒布にて,腫瘍の中央部は局面を有さない陥凹のV型pit pattern,辺縁部は花弁状のIIIL型pit patternであった.大腸側方発育型腫瘍の非顆粒型病変,深達度SM以深の浸潤癌と診断し,直腸高位前方切除術(D2)を施行した.病理組織学的には,深達度mの高分化腺癌で,腫瘍の辺縁部に,中~高度異型を伴った腺管絨毛腺腫の併存を認めた.癌抑制遺伝子p53蛋白は,癌部,腺腫部共に過剰発現を示した. Microsatellite instabilityの解析では,初回手術で切除した3臓器を含めmicrosatellite stabilityであった.
  • 星 加奈子, 瀧本 篤, 岩田 誠一郎, 深野 雅彦, 池田 義雄
    2002 年 63 巻 7 号 p. 1747-1750
    発行日: 2002/07/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は59歳,男性.平成5年7月, S状結腸癌の診断でS状結腸切除術を施行,中分化腺癌, sm, n(-), P0, H0, M(-), stage I, cur Aで,術後再発は認めなかった.平成13年2月大腸内視鏡検査で,吻合部に約4分の1周性の粘膜下腫瘍様の隆起性病変を認め,粘膜下腫瘍あるいは大腸癌粘膜下再発の診断で3月29日手術を行った.吻合部に直径2cm大で弾性硬の球形の腫瘤を触知し,吻合部を含めた結腸部分切除術を施行した.組織学的には腫瘤に悪性所見はなく,固有筋層を押し下げるように大腸粘膜により内面が覆われた嚢胞がみられ,嚢胞の内容は濃縮された粘液と少量のバリウムであった.以上によりimplantation cystと診断した.大腸吻合部に発生したimplantation cystは非常に稀で本邦報告例は本症例を含め2例であり,文献的考察を加えて報告する.
  • 石井 隆道, 西平 友彦, 鷲田 昌信, 金子 猛, 岩井 輝, 井上 章, 井出 良浩
    2002 年 63 巻 7 号 p. 1751-1754
    発行日: 2002/07/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は49歳の女性.平成13年11月15日夜,排便時に肛門より腫瘤が脱出し,出血を認めたため来院した.来院時,肛門外に直径約4cmの有茎性の大腸腫瘍を認めた.腹部単純X線像で直腸内に重積した腸管を認め,極めて特徴的な腹部単純X線所見と思われた.以上より腸重積を伴い肛門外に脱出した大腸腫瘍と診断した.腫瘍の用手的還納は不可能であり,腰椎麻酔下に経肛門的腫瘍摘出術を施行し腸重積を整復した.凍結切片にて腺癌と病理診断された. 2期的にS状結腸切除術を施行した.最終病理診断は, Ip型の深達度mの高分化型腺癌であり,リンパ節転移は認めなかった.腸重積を伴い肛門外へ脱出したS状結腸癌の症例は本邦では37例が報告されているに過ぎず,稀であると考え報告した.
  • 堀川 直樹, 増山 喜一, 島多 勝夫, 野本 一博, 田近 貞克, 辻 政彦, 塚田 一博
    2002 年 63 巻 7 号 p. 1755-1759
    発行日: 2002/07/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は78歳,男性.著明な貧血と便潜血陽性に対する精査目的で大腸内視鏡検査を行い,直腸Ra癌と診断された.診断時,イレウスを併発していたため,入院のうえ術前腸管減圧目的に経肛門的減圧チューブを挿入し,連日洗浄した.挿入後10日目に熱発と下腹部正中に限局した腹膜刺激症状が出現したが,自他覚症状の増悪を認めず,保存的に経過観察してチューブ挿入後13日目に待機的に手術を施行した.開腹所見では,腫瘍口側直腸壁にイレウス管先端の圧迫のためと考えられる前腹壁への穿通を認めた.チューブ先端が腫瘍口側腸管のある1ヵ所に接触し,その部を「外方に凸」に押し上げていたことが穿通の原因と考えられた.経肛門的減圧チューブは,その有用性が評価される一方,チューブ挿入に起因する合併症も報告されており,腹部症状の慎重な観察と適切な対処が重要と思われた.
  • 奥村 憲二, 塩飽 保博, 閑 啓太郎, 武藤 文隆, 栗岡 英明, 細川 洋平
    2002 年 63 巻 7 号 p. 1760-1763
    発行日: 2002/07/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は77歳の女性で,6年前より痔瘻,痔核を指摘されていたが放置していた.難治性痔瘻の診断にて腰椎麻酔下に痔瘻根治術を施行した.瘻孔内に粘液様物質を認め,これを迅速病理診断に提出したところ粘液癌の診断であったため,臨床的に痔瘻癌の診断にて根治術として二期的に全身麻酔下に腹会陰式直腸切断術を施行した.ところが術後病理診断にて痔瘻癌の診断(P, 5, a2, P(-), HO, n(-), M(-)stage II)とともに皮膚切除断端に悪性細胞(Paget cell)陽性であったため,皮膚科にてmappingの上,後日皮膚,皮下脂肪織追加切除を行い根治を得た.慢性炎症を伴う痔瘻は癌の合併に注意が必要である.今回,肛門周囲Paget病に関して,その拡がりの評価にmappingが有用であった.
  • 伊東 浩次, 平沼 進, 前田 学, 鈴木 恵子
    2002 年 63 巻 7 号 p. 1764-1768
    発行日: 2002/07/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例はステロイドの内服既往がある22歳,女性. 2001年4月,伝染性単核球症で内科に入院中,肝腫瘤を指摘され, 5月に当科入院.腹部超音波検査では肝外側区域と脾臓の間に8cm大のほぼ均一な等エコー腫瘤を認めた. CT検査で腫瘍はほぼ均一に造影され, MRI T1強調像でやや低信号, T2強調像で高信号を呈した. CT, MRI検査共に腫瘍中心部に瘢痕を認めた.血管造影検査で外側区域の辺縁から肝外に突出するhypervascularな腫瘍陰影を認めた. FNH (focal nodular hyperplasia)を強く疑ったが, LCA (liver cell adenoma)やHCCも完全には否定できず,肝部分切除術を施行した.肉眼的には赤褐色の充実性腫瘍で中心には線維性の瘢痕を認めた.組織学的には腫瘍内に胆管増生など認めず,過形成ではなく腫瘍であり,細胞の異型性も乏しいことからLCAと診断した.
  • 安藤 秀明, 草野 智之, 斎藤 由理, 加藤 裕治郎, 高橋 貞二, 安井 應紀, 佐藤 勤, 小山 研二
    2002 年 63 巻 7 号 p. 1769-1772
    発行日: 2002/07/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    肝切除術後胆道狭窄は3~5%合併との報告があり,その治療に難渋する場合が多い.今回,肝右葉切除後胆管狭窄症例に対し,自己拡張型金属ステント留置が良好に経過している1例を報告する.症例69歳,男性.肝細胞癌に対して肝右葉切除術施行.術後12ヵ月で肝再生に伴う肝偏位のため閉塞性黄疸をきたし, PTBD施行.胆道内瘻化したのち,胆道内外瘻チューブを留置.狭窄部位の拡張十分と判断し, 6ヵ月後にチューブを胆管狭窄部位より遠位側に留置したところ再度閉塞性黄疸となったため,自己拡張型金属ステント留置した.ステント留置後24ヵ月を経過して黄疸や胆管炎の発症なく順調に経過している.肝切除後良性胆道狭窄は治療に難渋することが多いが,自己拡張型金属ステント療法も治療手段のひとつとして有用であると考えた.
  • 畑 倫明, 村尾 佳則, 則本 和伸, 奥地 一夫
    2002 年 63 巻 7 号 p. 1773-1776
    発行日: 2002/07/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    患者は70歳の男性であり,激しい上腹部痛を主訴に近医を受診した.腹膜刺激症状が強いため汎発性腹膜炎を疑われて当院転院となる.来院時の腹部超音波検査および腹部CT検査では胆嚢周囲と右横隔膜下にごく少量の腹水を認める以外,遊離ガス像や胆石などの所見は認められなかった.診断目的に施行した緊急腹腔鏡にて,黄褐色の胆汁様腹水および胆嚢底部の穿孔を確認できたため,開腹に移行することなく一期的に腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行しえた.摘出標本には胆石を認めず,また腹水の細菌培養も陰性であることから特発性胆嚢穿孔による胆汁性腹膜炎と診断した.特発性胆嚢穿孔は術前診断が困難であり,開腹後に診断される場合が多い.この症例では,腹腔鏡の積極的な使用により,一期的な診断と治療が可能であった.
  • 河野 徳之, 味木 徹夫, 竹山 宜典, 堀内 秀樹, 黒田 嘉和, 中山 伸一
    2002 年 63 巻 7 号 p. 1777-1781
    発行日: 2002/07/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は63歳,男性.主訴は悪寒,戦慄.腹部立位単純X線写真において,右上腹部に鏡面形成を呈する異常ガス像を認めた.腹部CT検査において胆嚢内に結石像および鏡面を形成するガス像を認め,肝内外の胆管にもガス像を認めた.胆管炎を伴った気腫性胆嚢炎と診断し,入院当日直ちにENBDを留置し保存的に抗生剤投与を行った.その後,全身状態の改善がみられ, ENBD留置後4日目に待期的に開腹胆摘,総胆管切石, Tチューブドレナージを施行した.術後経過は良好で,第31病日に退院となった.一般に胆管炎を併発した気腫性胆嚢炎では緊急手術が施行されるが,本症例はENBD留置にて緊急手術を回避し,待期手術が施行できた.
  • 中川 有, 宮崎 修吉, 宮田 剛, 里見 進
    2002 年 63 巻 7 号 p. 1782-1786
    発行日: 2002/07/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は69歳,女性.嘔吐と意識障害あり他院入院,著明な高血糖から糖尿病性昏睡の診断で治療を受けた.また,左下肢の壊死が進行したため,左下肢切断術を受けた.術後,糖尿病治療を受けていたが,嘔吐が続き経口摂取できなかった.腹部単純X線写真で右上腹部に円形の石灰化像と胆道内にpneumobiliaを認めた.胃十二指腸造影と腹部CT検査では胃・十二指腸球部に結石が描出され,胃内視鏡検査では十二指腸球部に嵌頓した結石が認められた.胆石イレウスおよび胆嚢十二指腸瘻の診断にて手術を施行したところ,胆嚢体部が胃幽門前庭部前壁に穿通していた.結石は胃内にあり, 5×5×10cm, 130gと巨大で,幽門輪に嵌頓していた.検索した報告例の中では最大の結石であった.結石摘出,胆嚢摘出および瘻孔閉鎖術を一期的に行った.胆石による胃通過障害はBouveret症候群と呼ばれ,稀な疾患である.今回われわれは,胆嚢胃瘻を通過した胆石が胃幽門に嵌頓して生じた胆石イレウスの1例を経験したので,文献的考察を加えて報告する.
  • 中村 育夫, 村林 紘二, 赤坂 義和, 楠田 司, 宮原 成樹, 高橋 幸二, 小川 朋子, 臼井 正信, 永井 盛太, 堀 智英
    2002 年 63 巻 7 号 p. 1787-1792
    発行日: 2002/07/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    非常に稀な早期胆嚢・胆管癌の同時性重複癌の1例を経験したので報告する.症例は78歳,男性.心窩部痛にて当院内科を受診した.腹部CTでは,胆嚢は頸部から体部にかけて壁肥厚を認めた.また,総胆管は18mmと拡張していたが結石は認めず,膵腫瘍やリンパ節腫脹も認めなかった. ERCPでは,総胆管は拡張し総肝管に14mmの陰影欠損を認めた. EUSでは,胆嚢上皮の限局性肥厚を認めた.胆嚢腫瘍と総肝管腫瘍と診断され,当科を紹介された.上記診断にて開腹下に手術を施行した.術中所見では,胆嚢腫瘍は明らかではなかったが総肝管内に径10mmの結節性病変を認めたため胆管癌と診断し,肝外胆道切除術,総肝管空腸吻合術を施行した.病理組織学的には上部胆管癌および胆嚢癌で深達度は共にmであり,リンパ節転移や脈管浸潤は認めなかった.
  • 中村 光彦, 炭山 嘉伸, 柁原 宏久, 渡辺 学, 碓井 貞仁, 若山 恵
    2002 年 63 巻 7 号 p. 1793-1798
    発行日: 2002/07/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    膵管癒合不全(pancreas divisum)は比較的稀な疾患であり,臨床的には慢性膵炎との関連で注目されているが,膵癌との合併の報告は少ない.今回われわれは,膵管癒合不全の背側膵に膵癌を合併した1例を経験したので報告する.症例は75歳,女性.既往歴に8年前,横行結腸癌にて右半結腸切除術. 4年前, S状結腸癌にてpolypectomyが施行されている.術後の経過観察中にCEAの異常高値と2年間で約4kgの体重減少が認められ,腹部CTにて膵尾部腫瘍を指摘され当科へ紹介された.主乳頭からのERPにて腹側膵管のみが馬尾状に造影された.副乳頭造影では膵尾部で膵管の途絶がみられたが,頭部体部の膵管には異常は認められなかった.以上より,膵管癒合不全の背側膵から発生した膵尾部癌と診断し,膵体尾脾合併切除を施行した.膵管癒合不全と膵癌の合併は国内で自験例を含め36例の報告があり, 33例が背側膵癌であった.また,閉塞性黄疸をきたしにくいなどの特徴が見られた.
  • 上松 俊夫, 久保田 仁, 鈴木 秀昭, 木村 恵三, 石川 和夫, 児玉 章朗
    2002 年 63 巻 7 号 p. 1799-1803
    発行日: 2002/07/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は71歳の女性.心窩部痛と血清アミラーゼ値の上昇を認め急性膵炎と診断した.保存療法にて軽快したが,腹部USおよびCTで主膵管拡張を認めた. ERCPでは膵頭部主膵管の狭窄と狭窄部のすぐ尾側の膵管一次分枝にtapering,途絶を認めた.EUSでは内部にhigh echoic spotsを有するlow echoic massを認めた.全胃温存膵頭十二指腸切除術を施行した.病理組織学的には狭窄部近傍に,膵実質の萎縮,膵管分枝の拡張や小嚢胞を伴う限局性の線維化を認めた.同部の分枝膵管や狭窄部の主膵管の上皮に上皮内癌を認めた. pat carcinoma in situ, n(-), ly0, v0, ne0, pw0, bdw0, ew0, stage I, curAであった.
    膵上皮内癌は膵管内に限局する癌で,膵管内乳頭腺癌と異なり乳頭増殖がないか乏しい癌とされている.浸潤癌を伴わない膵上皮内癌の報告は稀であり,急性膵炎を契機に発見された膵上皮内癌の1例を報告する.
  • 中鉢 誠司, 黒川 良望, 中村 隆, 稲沢 慶太郎, 石山 智敏, 松本 秀一
    2002 年 63 巻 7 号 p. 1804-1808
    発行日: 2002/07/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    結核性脾膿瘍は稀な疾患で,現在まで本邦報告例は十数例である.今回結核性脾膿瘍に対して腹腔鏡下脾臓摘出術を施行した症例を経験した.症例は27歳,女性.平成11年1月脊椎カリエス術後,脾臓に膿瘍形成が認められた.抗結核剤の投与にて縮小傾向認められず,当科紹介された.腹部CTにて脾臓に低吸収域の腫瘤を認め, MRIではT1, T2強調とも低信号であり,真菌症や結核腫,また充実性腫瘍も疑われ腹腔鏡下脾臓摘出術を行った。脾臓に約4cmの被膜形成のみられる黄白色チーズ様内容物を有する膿瘍を認めた.抗酸菌染色では陰性であったが,乾酪壊死およびLanghans型巨細胞を認め,また結核菌に対するPCR陽性であったことから結核性膿瘍と診断した.結核性脾膿瘍に対し,診断と治療を兼ね腹腔鏡下脾臓摘出術を行った症例を経験したので文献的考察を加え報告する.
  • 田村 昌也, 品川 誠, 船木 芳則
    2002 年 63 巻 7 号 p. 1809-1812
    発行日: 2002/07/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    限局型で外科的切除可能であった悪性腹膜中皮腫の1例を報告する.症例は76歳,女性.腹部腫瘤を主訴に当科を受診した.横行結腸原発のGISTと診断し,手術を施行した.腫瘍は右側横行結腸間膜より発生し尾側に垂れ下がっており,右結腸動脈,回結腸動脈を巻き込んでいた.他臓器への直接浸潤はなく,容易に剥離できた.右半結腸切除術を施行した.病理組織学的には,多形性の強い細胞が充実性または上皮様の配列をとりながら増殖していた.また好酸性の胞体をもつrhabdoid cellも散見された.免疫組織化学的には,中皮のマーカーであるcalretinin, cytokeratin (CAM5.2), desminに陽性を示した. Rhabdoid cellは悪性中皮腫でも部分的にみられることがあり,疾患に特異的ではないとされるが,臨床的には予後不良因子の一つといわれており,自験例においても,厳重な経過観察を要する.
  • 尾形 章, 大野 一英, 升田 吉雄, 新井 竜夫, 秋草 文四郎, 野呂 昌弘
    2002 年 63 巻 7 号 p. 1813-1817
    発行日: 2002/07/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    後腹膜脂肪肉腫は稀な疾患であり,組織分類中の亜型である脱分化型脂肪肉腫の1例を経験した.症例は80歳,女性.左側腹部痛および同部の腹部腫瘍を主訴に他院を受診し,膵尾部腫瘍および膿瘍を疑い当院を紹介された.腹部CTにて膵体尾部に連続する腫瘍とその背尾側に軽度低吸収域を認め共に不均一に造影されたが,背尾側腫瘍が造影効果が少なかった.手術は後腹膜に一塊となった腫瘍を膵体尾部合併切除にて摘出した.切除標本は術前画像で指摘した2つの病変を含む3つの肉眼的に異なる腫瘍からなった.組織学的に, 1) well differentiated liposarcoma (lipoma-like), 2) myxoid malignant fibrous histiocytoma (以下myxoid MFH), 3) peomorphic MFHの3部分からなり,術前に指摘しえなかった1)を原発巣とし, 2) 3) の変化を伴った脱分化型脂肪肉腫と診断された.脱分化型脂肪肉腫は高分化型脂肪肉腫が先行し脱分化して行くが,脱分化した腫瘍が大部分を占め病理診断にも苦慮した症例を経験し,若干の文献的考察を加え報告する.
  • 森脇 菜採子, 玉内 登志雄, 竹内 英司, 岡本 哲也
    2002 年 63 巻 7 号 p. 1818-1821
    発行日: 2002/07/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は61歳,女性. 1999年3月より当院内科にて非B非C型肝硬変による腹水貯留と肝性脳症で入退院を繰り返していた. 2001年1月25日,臍部に有痛性の腫瘤が出現したため,当科を受診した.臍ヘルニア嵌頓と診断し,ただちに用手整復を施行したが,その後もヘルニア嵌頓を4回繰り返したため治療目的で入院となった.内科にて腹水コントロールを行い, 2001年4月6日に1%リドカインによる局所麻酔で手術を施行した.臍を中心に腹部正中を約10cm縦切開し,皮下を剥離し,ヘルニア門を明らかにした. PROLENE Hernia System® Mサイズを用いてヘルニア門を閉鎖した.使用した1%リドカインの総量は40mlであった.術後経過は良好で,術後6日目に退院となり, 2001年12月現在,再発を認めていない.
  • 竹内 英司, 玉内 登志雄, 岡本 哲也, 佐々木 英二, 横山 真也, 佐藤 俊充, 河合 清貴
    2002 年 63 巻 7 号 p. 1822-1825
    発行日: 2002/07/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    3例の大腿ヘルニアに対して鼠径部より開腹し腸切除後, PROLENE Hernia System®で修復術を行った.その内訳は男性が1例,女性が2例で平均年齢は74歳であった.いずれも腹部CT検査で小腸の嵌頓を伴う大腿ヘルニアと診断され,全身麻酔下に鼠径管後壁を切開し大腿ヘルニア嵌頓を確認した.続いて大腿輪を切開して臓器の絞扼を解除した後に,小腸部分切除術を施行した.修復はPHSを用いて鼠径法で行いonlay patchで大腿輪も閉鎖した.使用したPHSはLサイズが1例, extra Lサイズが2例であった.術後合併症については重篤なものはなく,全例再発を認めていない.
  • 楠本 祥子, 渡辺 明彦, 仲川 昌之, 佐道 三郎, 阪口 晃行, 山田 高嗣, 大槻 憲一, 本郷 三郎
    2002 年 63 巻 7 号 p. 1826-1830
    発行日: 2002/07/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    成人前仙骨部に発生した巨大類表皮嚢胞の1例を経験したので報告する.症例は80歳,女性. 2年前より徐々に増大する臀部腫瘤を主訴に近医を受診.腹部CT検査にて骨盤底を占拠する巨大な嚢胞性腫瘤を指摘され,精査加療目的に当科を受診した. MRI検査では,仙骨尾骨前面に巨大嚢胞状腫瘤を認めた.経仙骨的腫瘤摘出術を施行した.病理組織学的には腫瘤壁は扁平上皮で覆われ,汗腺や毛嚢を認めず,類表皮嚢胞と診断した.
  • 関根 祐樹, 鈴木 雄, 竹花 教, 遠藤 義洋, 北村 道彦, 橋爪 英二
    2002 年 63 巻 7 号 p. 1831-1833
    発行日: 2002/07/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    われわれは両側深部大腿動脈瘤の1例を経験し,両側深部大腿動脈結紮術を施行し,良好な結果が得られた.本症例は末梢動脈瘤の中でも極めて稀な深部大腿動脈瘤が両側に存在した1例である.本症はその解剖学的位置および構造から,診断および治療に関していくつか注意すべき点があるので若干の文献的考察を加えて報告する.
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