日本臨床外科学会雑誌
Online ISSN : 1882-5133
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63 巻, 8 号
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  • 最近6年間の本邦報告257例の集計検討
    河野 哲夫, 日向 理, 本田 勇二
    2002 年 63 巻 8 号 p. 1847-1852
    発行日: 2002/08/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    自験例4例を含めた最近6年間の本邦報告257例について集計検討した.年齢は56歳から99歳まで,平均年齢は81.5歳,性別は女性が248例で,高齢女性が圧倒的に多かった.左右別では右側が149例,左側が98例と右側に多かった.開腹手術歴を有するものは24.0%と少なかった. Howship-Romberg徴候の陽性率は62.1%であった.術前診断率は82.9%であった.腸管切除率は49.8%で,ほぼ半数が腸管切除を必要とした.術後合併症発生率は11.6%,死亡率は3.9%,手術死亡率は3.6%であった.
    閉鎖孔ヘルニアの診断には骨盤CTが非常に有用であった.近年本症の術前診断率や予後は向上したが,腸管切除率は依然として高率であった.今後は腸管切除を避けるためになおいっそう早期診断・早期手術を心がけることが重要であると思われた.
  • 伊藤 勅子, 小松 大介, 小山 洋, 坂井 威彦, 藤田 知之, 中田 岳成, 熊木 俊成, 青木 孝學, 春日 好雄
    2002 年 63 巻 8 号 p. 1853-1856
    発行日: 2002/08/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    甲状腺癌のほとんどを占める乳頭癌は分化度の高いものが多く,早期発見および適切な外科治療により治癒が期待できる.今回われわれは, 1997年4月から2002年3月までの5年間の当院人間ドックにおける触診での甲状腺癌検診の成績および外科治療を含めた臨床的検討を行った.発見率は総受診者25,139人中58人(0.23%)で,男性は17,443人中11人(0.06%),女性は7,696人中47人(0.61%)であった.最大腫瘍径が1cm以下のいわゆる微小癌は25例(43%)であった.組織型は乳頭癌は56例(96%)で,濾胞癌,髄様癌はそれぞれ1例(2%)であった.リンパ節転移陽性は27例(47%)に認められた.いずれも手術時合併症はなく現在再発を認めていない.人間ドックでの早期発見により侵襲,合併症が少ない治療が可能で患者のQOLは向上することが期待され,検診の意義は十分にあると考えられる.
  • 山崎 眞一, 露口 勝
    2002 年 63 巻 8 号 p. 1857-1861
    発行日: 2002/08/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    反回神経に浸潤した甲状腺乳頭癌の手術成績を検討し,反回神経への対応について考察した.対象は当科で初回治療した甲状腺乳頭癌538例中,術中所見で反回神経浸潤(EX2)を認めた27例.年齢は7歳から83歳(平均60.4歳),男性8例,女性19例.反回神経への対応は,反回神経切除・再建9例(迷走神経と吻合,端々吻合,頸神経ワナと吻合,各3例),切除・非再建13例,剥離・温存5例.再建9例中7例で音声機能の回復が認められた.気管支鏡所見は再建側声帯の可動性はないが,萎縮なく緊張良好であった.術後平均72カ月の観察期間で,局所再発は未分化転化・癌死した非再建例の1例のみ.再建例,温存例に局所再発・遠隔転移は認めず,温存例に術後反回神経麻痺は認めなかった.
    反回神経浸潤症例では,可能な限り剥離・温存を試みるべきであるが,切除が免れない症例では音声機能の回復を考慮し,再建術を施行すべきであると考えられた.
  • 患者側は満足しているか?
    田中 俊樹, 上田 和弘, 坂野 尚, 林 雅太郎, 藤田 信弘, 佐伯 浩一, 須藤 学拓, 松岡 隆久, 善甫 宣哉
    2002 年 63 巻 8 号 p. 1862-1865
    発行日: 2002/08/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    術後遠隔期におけるRavitch手術の患者評価を知るために,アンケート調査を行った. 11例より返事を得た.対象の手術時平均年齢は8歳(3~17歳),術後平均経過期間は11年(1~17年)であった.全体評価では胸郭の形態に対して満足すべき結果が得られたが,手術創に対する不満が多かった.約5cmのmedian skin incisionによりhammock support法を行った症例においても手術創に対する不満を訴えていた.今後は皮膚縫合糸や縫合方法,術後創部の管理に形成外科的手法を導入し,手術創に対するより慎重かつ繊細な意識を持っことが重要である.
  • 本告 正明, 辻仲 利政, 藤谷 和正, 平尾 素宏
    2002 年 63 巻 8 号 p. 1866-1870
    発行日: 2002/08/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    治癒切除が施行された深達度sm, mp胃癌について,再発死亡の割合と再発時期,再発形式,および再発死の危険因子について検討した. sm癌137例中6例(4.4%), mp癌48例中5例(10.4%)に再発死を認めた.再発形式としては血行性転移が最も多く(54.5%),再発死症例11例中8例(72.7%)は術後3年以内の比較的早期の再発死であったが, 2例(18.2%)は術後5年以上たってからの再発死であった.多変量解析では,リンパ節転移が唯一の有意な予後因子であった.リンパ節転移陽性症例のなかでも,胃癌取扱い規約(第13版)に基づくn2,3症例は再発死率が50%と高かった.治癒切除が施行されたsm, mp癌においては,リンパ節転移陽性症例,なかでも胃癌取扱い規約(第13版)に基づくn2,3症例は,血行性再発を念頭においた厳重なフォローアップが必要と考えられた.
  • 野口 剛, 野口 琢矢, 藤原 省三, 藤吉 健児, 菊池 隆一, 内田 雄三
    2002 年 63 巻 8 号 p. 1871-1874
    発行日: 2002/08/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は51歳,女性.主訴は右乳房腫瘤,疼痛. 2001年8月中旬に右乳房の腫瘤,u疼痛が出現し,次第に増強してきたため9月19日長門記念病院外科を受診した.初診時,右乳房外下部に皮膚陥凹を伴う可動性不良な拇指頭大,弾性硬の腫瘤を認めた.血液生化学検査ではCRPが0.8mg/dlと軽度上昇を認めた.超音波およびCT検査では右乳房に不整形腫瘤を認め乳癌と診断された.理学的所見および超音波, CT検査所見より乳癌を疑い,穿刺吸引細胞診を施行したが結果はClass IIであり確定診断が得られなかったため切除生検を施行した.病変は20×18×18mm大で割面は灰白色,内部は均一であった.病理組織検査では紡錘形の細胞からなる結節性の病変で異型細胞は認めず結節性筋膜炎と診断された.以後再発を認めていない.
  • 後藤 直大, 高尾 信太郎, 裏川 公章, 上田 惠, 枚本 卓司
    2002 年 63 巻 8 号 p. 1875-1878
    発行日: 2002/08/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    稀な疾患である乳腺間質肉腫の早期再発例に対し根治術を施行しえた1例を経験したので報告する.症例は50歳,女性. 1年半前より右乳房腫瘤を自覚,半年前より徐々に増大傾向を認め,また疼痛も伴うようになったため前医を受診した.腫瘍径は11cmで生検にて悪性葉状腫瘍あるいは間質肉腫と診断され,両胸筋合併右乳房切除術が施行された.病理組織診では間質肉腫と診断され,肋骨骨膜の一部まで浸潤し断端陽性であった.術後約3週間で右胸壁に腫瘍の再発を認めたため,放射線療法(計20Gy)が行われたが効果なく,また腫瘍よりの出血も認めたために加療目的に当科紹介となった.当科入院後,腫瘍含めた胸壁合併切除および胸壁形成術を施行した.切除断端は陰性で術後補助化学療法は施行せず術後20カ月を経過して再発は認めていない.
  • 仲田 興平, 大畑 佳裕, 佐川 庸, 牧野 一郎, 西浦 三郎, 前田 智治
    2002 年 63 巻 8 号 p. 1879-1882
    発行日: 2002/08/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    男性嚢胞内乳癌の1例を経験したので報告する.症例は71歳の男性で左胸部腫瘤の増大を主訴に来院した.左乳輪直下に径5cmの弾性硬で可動性良好な腫瘤を認めた.超音波検査で壁の一部に乳頭状の増殖を伴う径5cmの嚢胞を認めた.嚢胞内容液は血性で細胞診検査でclass V, ductal carcinomaと診断され,胸筋温存乳房切除術level IIまでの郭清を施行した.標本所見は多房性嚢胞で内腔に径2.0cm×1.5cmの充実性部分を伴い病理組織学的所見は浸潤性乳管癌乳頭増殖型であった.リンパ節転移は認めなかった.ホルモンレセプターはER, PgR共に陽性であり,術後補助療法として, Tamoxifenを経口投与し術後9カ月経過し健存している.
  • 山根 健太郎, 濱脇 正好, 橋詰 浩二
    2002 年 63 巻 8 号 p. 1883-1886
    発行日: 2002/08/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    左腎腫瘍および併存する腎動脈下腹部大動脈瘤に対し,一期的に腎部分切除術と人工血管置換術を行った.症例は58歳,男性.検診での腹部超音波検査で,腹部大動脈瘤と左腎腫瘍を指摘された.腹部CTでは左腎下極に径2.5cmの腫瘍を認め,悪性の疑いが強く左腎部分摘出術の適応となった.腹部大動脈瘤は最大径4.0cmで同時手術の適応と判断した.左傍腹直筋切開,後腹膜到達法にて腹部大動脈瘤の人工血管置換術を行い,ついで左腎部分切除術を行った.術後経過は良好で,人工血管感染などの合併症もなく退院となった.腹部大動脈瘤と腎腫瘍に対する同時手術は,重篤な合併症のない症例においては,安全で予後も良好であり,積極的に考慮すべきと考える.
  • 飯田 茂穂, 中川原 儀三, 石田 文生, 本多 桂, 太田 信次, 藤岡 重一
    2002 年 63 巻 8 号 p. 1887-1891
    発行日: 2002/08/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は69歳,女性.主訴は右下肢痛,しびれ感.心房細動,僧帽弁狭窄症で通院中であった.初診時,両側の大腿動脈は触知不能であった.動脈塞栓を疑い大動脈造影を施行した.腹部大動脈は分岐部より中枢側で閉塞途絶しており鞍状塞栓と診断した.大動脈造影後,カテーテルを血栓内に進め,ウロキナーゼの血栓内注入を施行した.大動脈分岐部が出現し,右足痛も軽減したのでウロキナーゼの持続投与に切り換えた.発症後3日の血管造影で塞栓の残存を認めたので局所麻酔下に両鼠径部を切開しFogartyカテーテルによる塞栓摘除術を施行した.術後経過は良好であった.血栓溶解療法により緩徐な血流再開が得られ,重症化することの多い鞍状塞栓症において再灌流障害の防止に血栓溶解療法は有効であると思われた.初回治療の一つとして考慮しても良いと考えられた.
  • 中村 昌樹, 諏訪 大八郎, 東 幸宏, 馬場 聡
    2002 年 63 巻 8 号 p. 1892-1896
    発行日: 2002/08/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    喀血を主訴としたSwyer-James症候群に対し,手術を行った稀な1例を経験したので報告する.
    症例は70歳,女性,喀血を主訴に当院に入院した.気管支鏡検査で左肺底区の気管支粘膜に血管瘤様の隆起性病変を認め, CTで左肺の血管影の減少を認めた.気管支動脈造影では,左気管支動脈は通常より拡張し,屈曲蛇行していた.肺血流シンチでは,左肺血流の欠損を認めた.以上よりSwyer-James症候群と診断し,喀血を予防する目的で左肺下葉切除術を施行した.病理学的には肺動脈の内膜の肥厚による狭窄が主たる所見であった.
  • 河合 俊典, 東 良平
    2002 年 63 巻 8 号 p. 1897-1900
    発行日: 2002/08/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    自然気胸に対する胸腔鏡下手術後の再発が問題となっている.その原因の一つに自動縫合器によるstaple-lineを中心としたブラの再発がある.われわれは, staple-line上にブラが新生した再発気胸の1症例を経験したので報告する.症例は30歳,男性. 15歳の時,両側異時性気胸のため,胸骨正中切開による両側ブラ切除術を受けた.その後26歳の時,左気胸再発のため,肺尖部のブラとS6のブラを胸腔鏡下に切除した. 30歳で左気胸が再発したため再手術を施行したが,前回切除した2箇所のstaple-line上に大きなブラが新生していた.この発生機序は明らかではないが縫合線上に補強処置を加える必要を痛感した.
  • 山口 智弘, 内藤 弘之, 遠藤 善裕, 来見 良誠, 花澤 一芳, 谷 徹
    2002 年 63 巻 8 号 p. 1901-1904
    発行日: 2002/08/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    傍十二指腸ヘルニアはTreitz靱帯周囲の腹部窩に腸管が入り込む内ヘルニアの一つで,本邦では約100例が報告されているにすぎない.症例は14歳の男性で, 1年前より4回の腹痛発作を繰り返していた. 4度目の腹痛発作時,腸閉塞の診断のもとイレウス管を挿入した.腸閉塞は解除されたが,腹痛発作を繰り返すため,診断治療目的で腹腔鏡補助下に手術を行った.左傍十二指腸ヘルニアが認められたため開腹し,ヘルニア内容を還納した後ヘルニア門を閉鎖した.ヘルニア門は脈管環によって締め付けられていた.術前には確定診断できなかったが,腹部CTにて下腸間膜静脈が上方に圧排され,その背側に小腸が嵌入しているなど,特徴的な小腸および血管系の走行異常が確認できた.比較的若年者で,開腹手術の既往がなく,腹痛を繰り返す症例では傍十二指腸ヘルニアの可能性を考慮する必要があり,その診断に造影CTが有効である.
  • 清水 智治, 花澤 一芳, 吉岡 豊一, 岡 浩, 梶並 稔正, 谷 徹
    2002 年 63 巻 8 号 p. 1905-1909
    発行日: 2002/08/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は29歳,男性.突然左側腹部痛が出現し救急搬入された.腹部所見では軽い腹膜刺激症状を認めた.腹部CT検査にて腸閉塞像とwhirl like patternを認め小腸軸捻転症と診断し緊急手術を施行した.腹腔鏡下に腹腔内の状態を観察した.腸管の壊死は認めずTreiz靱帯より肛門側約1.0mの部位で口径変化が観察された.腹腔鏡下での捻転整復は困難と判断されたため小開腹を行った.口径変化部より回腸末端までの腸管が反時計回りに約360°回転していた.捻転を解除すると腸管の色調も改善し手術を終了した.術後経過は良好であった.本症例では腹腔内に解剖学的な異常や奇形を認めず原発性小腸軸捻転症と診断した.本邦では原発性小腸軸捻転症は稀であり本症例を含めて40例が報告されている.腹部CTが本疾患の早期診断に有用であり,腹腔鏡使用により低侵襲な治療を行うことができる可能性が示唆された.
  • 尾形 徹, 水流 重樹, 谷本 康信
    2002 年 63 巻 8 号 p. 1910-1913
    発行日: 2002/08/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    門脈ガス血症を伴う急性上腸間膜動脈閉塞症の予後は極めて不良であるが,われわれも同様の症例を経験し救命しえたので若干の文献的考察を加えて報告する.
    症例は糖尿病の既往をもつ77歳,男性で突然発症した腹部痛を主訴に来院した.腹部CTで肝内門脈内ガス像と,小腸から上行結腸にかけ広範な腸管気腫像を認めた.発症後14時間で開腹手術を施行.手術所見は空腸から横行結腸に至る広範な腸管壊死を認め壊死部位をすべて切除し,空腸に人工肛門を造設した.残存小腸は約25cmの空腸のみであった.術後経過は比較的順調であった.
    本症は手術以外に救命手段がなく,早期診断し手術を施行することが重要である.
  • 加藤 久昌, 河島 秀昭, 原 隆志, 石後岡 正弘, 樫山 基矢, 山崎 左雪
    2002 年 63 巻 8 号 p. 1914-1918
    発行日: 2002/08/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    腹部CT検査にて上腸間膜静脈血栓症と診断し,急性期に血栓溶解療法による保存的治療を行うことにより手術を回避しえたが,その後,限局性の小腸狭窄をきたし手術的に治療せしめた症例を経験したので報告する.
    症例は48歳,男性.腹痛,嘔吐を主訴に当院受診し急性腹症の診断にて精査加療目的で入院となった.腹部CT検査にて上腸間膜静脈血栓症と診断し,上腸間膜動脈よりウロキナーゼを1日24万単位, 7日間持続動注,ヘパリンを1日1万単位, 7日間持続静注した.症状は軽快し経口摂取も可能となった.
    2ヵ月後に嘔気・嘔吐を生じ,イレウスを呈したため,手術を行った.開腹時,空腸に虚血性変化を伴った約5cmの狭窄部を認め,小腸部分切除術を施行した.術後経過は順調であった.
  • 黒阪 慶幸, 新村 康二, 藤村 隆
    2002 年 63 巻 8 号 p. 1919-1923
    発行日: 2002/08/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    腫瘍増大の経過を追えた小腸GIST, uncommitted typeの1例を経験したので報告する.
    症例は65歳の男性で,左下腹部に充実性腫瘤を指摘され入院となる. CTにて左下腹部に9cm大の境界明瞭な充実性腫瘤を認めた. 1年8ヵ月前のCTでは同部に腫瘍を認めず,ダブリングタイムは約70日と概算できた.小腸の間葉系腫瘍の診断で,腫瘍を含め空腸部分切除を行った.腫瘍細胞は紡錘形で束状配列し多数の核分裂像を認めた.免疫染色ではc-kit proteinとCD34にのみ陽性を示しGIST, uncommitted type, malignantと診断された.自験例は強い増殖能を持つ高度悪性のGISTと考えられた.
    GISTsの治療は手術が基本であるが,有効な治療薬も開発された.適切な術式や新治療薬の適応を決定するため,さらに症例を重ねGISTsの生物学的特性を明らかにしていく必要があると思われた.
  • 高林 司, 金井 歳雄, 中川 基人, 才川 義朗, 川野 幸夫, 内山 雅之
    2002 年 63 巻 8 号 p. 1924-1928
    発行日: 2002/08/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は53歳女性で,腹痛,血便を主訴に来院した.注腸造影検査で盲腸に腫瘍を認めた.大腸内視鏡,腹部CT検査の結果,終末回腸に生じた腺癌が先進部となった回腸結腸型腸重積症と診断した.開腹術を施行し,重積した腸管を用手的に整復後,回腸30cmを含む回盲部切除とリンパ節郭清を行った.回盲弁より12cm口側の回腸に8×4×1cmの側方発育型腫瘍を認め,病理組織所見は粘膜下層に浸潤する高分化腺癌であった.早期小腸癌の最近の本邦報告12例を集計し検討を加えた.
  • 伊神 剛, 長谷川 洋, 小木曽 清二, 坂本 英至, 太平 周作, 森 俊治
    2002 年 63 巻 8 号 p. 1929-1933
    発行日: 2002/08/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は72歳の男性, 10年前に胃癌による胃切除術の既往あり.下腹部痛で救急外来受診,腹部X線写真でイレウスと診断された.腹部CTでは,内部にairを混じた,渦巻き状の腸間膜の集束像を認め, S状結腸と小腸の拡張を認めた.絞扼性イレウスを疑い,緊急手術を施行した.開腹すると, ileosigmoid knotの状態で,約20cmのS状結腸と約250cmの小腸が壊死に陥っていた. S状結腸切除術および小腸切除術を施行した.経過は良好で,第19病日に退院した.
    Ileosigmoid knotは比較的稀な疾患で,術前診断は困難である.自験例の腹部CTで認めた,内部にairを混じた,渦巻き状の腸間膜の集束像は,腸管結節症の結節を描出していると考えられた.この集束像を中心として,拡張したS状結腸と小腸が互いに反対側に存在すれば, ileosigmoid knotの術前診断は可能と考えられた.
  • 栗原 毅, 山中 達彦, 池田 昌博, 池田 政宣, 安澤 紀夫, 田村 泰三
    2002 年 63 巻 8 号 p. 1934-1937
    発行日: 2002/08/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は27歳,男性.脳性麻痺による精神遅滞があり, 17歳時より呑気を認めた. 21歳時より腹部単純X線写真上巨大結腸を認め,イレウス症状を頻回に認めた. 1999年10月23日,横行結腸軸捻転をきたし,大腸内視鏡下に解除を試みたが不可能であり,翌日緊急手術を施行した.横行結腸が中結腸動脈を中心に180度回転し,横行結腸全体に虚血性変化を認めたため横行結腸切除を行い,結腸を端々吻合した.術後は高カロリー輸液,人工呼吸器管理を行い, MRSA肺炎,術後イレウス等合併症を認めたが,保存的治療にて改善し, 1999年12月13日より経口摂取可能となった.呑気症のために巨大結腸を呈し,外科的処置が必要であったという報告は稀で,われわれが調べえた範囲では,本邦過去10年間に2例にすぎない.また巨大結腸症を呈し,イレウス症状を繰り返す例には重症心身障害者とはいえ積極的に待機手術を検討すべきと思われた.
  • 礒 幸博, 下田 貢, 中野 智文, 六角 丘, 山本 悟史, 窪田 敬一
    2002 年 63 巻 8 号 p. 1938-1942
    発行日: 2002/08/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    今回われわれは,上部消化管造影後の残存バリウム巨大糞塊による虚血性S状結腸穿孔の1例を経験したので報告する.症例は68歳,女性.下腹部痛を主訴に来院した.入院時,腹部は著明な圧痛と筋性防御, Blumberg徴候を認めた.血液検査では白血球数の低下とCRPの異常高値を認めた.腹部単純X線,腹部CTにて多量の残存バリウムと横隔膜下のfree airを認め,消化管穿孔による汎発性腹膜炎と敗血症性ショックと診断し緊急手術を施行した.開腹すると,巨大バリウム糞塊の圧迫壊死によるものと思われるS状結腸間膜付着側に穿孔部位を認め, S状結腸部分切除および人工肛門造設術を施行した.術後経過は順調で, 2000年12月20日に軽快退院した.巨大バリウム糞塊の圧迫壊死による虚血性S状結腸穿孔は非常に珍しく,若干の文献的考察を加えて報告する.
  • 中川 国利, 鈴木 幸正, 桃野 哲
    2002 年 63 巻 8 号 p. 1943-1947
    発行日: 2002/08/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    過去17年間に,大腸癌を誘因とした成人腸重積症9例を経験したので報告する.年齢は平均65.4歳で,男性4例,女性5例であった.術前検査により,全例で大腸癌を誘因とした腸重積症と診断した.また術前の注腸造影検査や内視鏡検査にて, 3例で腸重積を整復した.さらに術中に5例で徒手整復し,残りの1例では脱出した腫瘍を経肛門的に切除した後に,大腸内視鏡にて腸重積を整復した.盲腸癌2例および横行結腸癌1例の計3例では結腸右半切除術を,下行結腸癌1例では結腸左半切除術を, S状結腸癌5例の内4例ではS状結腸切除術を,残りの1例は経肛門的腫瘍切除術を行った.術後に合併症は認めず,経過は良好であった.大腸癌を誘因とした腸重積例では,整復を行わずにリンパ節郭清を伴う腸切除が推奨されている.しかし種々の合併症を伴う高齢者では,全身状態の改善や手術侵襲を少なくするために,整復は有用であると思われた.
  • 中山 隆盛, 白石 好, 西海 孝男, 森 俊治, 磯部 潔, 古田 凱亮
    2002 年 63 巻 8 号 p. 1948-1952
    発行日: 2002/08/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は65歳の男性.痔瘻の病歴を有し,血便を認め,肛門部において肛門3時方向に1cmの硬結を触知した.注腸および大腸内視鏡にて,直腸(肛門縁より9cm)に長径9cmの全周性3'型の腫瘍性病変を認め,生検は高分化腺癌であった.手術所見は, H1, N4, P0であり,腹会陰式直腸切断術を施行した.直腸癌は, n4, a2, well, ly3, v2であった.さらに,痔瘻の固有筋層に高分化腺癌の浸潤が認められた.転移性痔瘻癌は稀であり,その発育形式は原発巣より痔瘻内へのimplantationと考えられている.しかし本症例は,病理組織においてリンパ行性に痔瘻転移が発生したと考えられた.痔瘻を伴う大腸癌と診断された場合に,転移性痔瘻癌を考慮にいれた治療が必要であると考えられた.
  • 坂本 和彦, 穴井 秀明, 蓮田 慶太郎, 御江 慎一郎
    2002 年 63 巻 8 号 p. 1953-1957
    発行日: 2002/08/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    繰り返す逆行性胆管炎による肝放線菌症,それに伴う肝膿瘍を経験した.症例は61歳,女性.平成2年10月に腫瘤形成性膵炎に対し,胆管空腸吻合術を受け,以後,発熱,腹痛を伴う胆管炎を繰り返していた.平成13年2月3日に同様の症状に加え胸痛,呼吸困難の症状も出現したため2月19日に当院入院となった.画像上,両側胸水,心嚢液貯留の他,肝S4およびS2に腫瘤性病変を認めた.反復する逆行性胆管炎に起因する肝膿瘍と診断し,肝左葉切除,胆管空腸Roux-Y再吻合を施行した.この際,挙上空腸脚長を15cmから40cmに延長した.病理組織学的には膿瘍腔内に壊死物質や放線菌塊を伴う炎症像を認めた.術後,胆汁瘻を生じたが保存的に治癒し, 5月21日に退院した.以後,胆管炎は発症せず元気に社会復帰している.
  • 寺石 文則, 市川 純一
    2002 年 63 巻 8 号 p. 1958-1961
    発行日: 2002/08/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は67歳,男性.イレウスの診断で保存的加療中に,持続する発熱,突然の赤血球および血小板の減少を認めたため精査を開始した.身体所見で軽度肝腫大あり,血液生化学検査で肝胆道系酵素の異常およびCRPの著明な上昇が認められ,また血清フェリチンの上昇,凝固能の低下を認めた.骨髄スメアで,血球貪食像と顆粒球の増加を認め,また全身精査目的の腹部CTで肝S4に肝膿瘍を認めたため,感染性の血球貪食症候群と診断した.診断当日よりステロイド投与を開始し,抗生剤投与も施行した.その後,速やかに解熱,末梢血液像,骨髄像は正常化し,肝膿瘍も軽快した.血球貪食症候群は比較的稀な疾患で,予後不良とされており,原因不明の発熱, 2系統以上の血球成分の減少を認め,感染症を伴っている場合,本疾患を鑑別診断として念頭に置き,早期診断,早期治療が必要であると思われた.
  • 成井 一隆, 藤井 義郎, 山崎 安信, 金谷 洋, 牧野 達郎, 須田 嵩
    2002 年 63 巻 8 号 p. 1962-1965
    発行日: 2002/08/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は67歳,男性. 1996年2月S状結腸癌に対してS状結腸切除術を施行した後, 1997年2月肝S6 (2.5cm)とS4 (1.0cm)に再発を認めた.同年3月より5-FUによる肝動注療法を施行したところ9月の腹部CTで肝転移巣は消失しCRとなった.肝動注療法は, 1998年3月まで施行し, 5-FUの総投与量は43.75gであった. 2001年1月肝S8に再々発を認め, 3月27日肝S8部分切除術を施行した.腫瘍は長径4cmで横隔膜への直接浸潤を認め一部合併切除した.患者は2002年1月現在,無再発生存中である.
    本症例では,肝動注療法に奏効した転移巣と奏効しなかった転移巣が存在し,再々発に対しては肝切除術を施行することで長期生存期間がえられている.
    大腸癌肝転移の治療戦略として肝動注後の肝切除は有効であると思われた.
  • 高橋 節, 星野 和義, 田村 英明
    2002 年 63 巻 8 号 p. 1966-1970
    発行日: 2002/08/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    肝動注化学療法が著効し長期生存が得られた結腸癌同時性多発肝転移の1例を経験したので報告した.症例は65歳,男性.主訴は便秘. S状結腸内視鏡および大腸造影検査にて,肛門縁より50cm口側のS状結腸にほぼ全周性の2型癌腫を認めた. CT, USにて肝両葉に計4個の転移巣を認めた.手術ではS状結腸切除術およびリンパ節郭清を施行した.肝転移巣は切除不能と判断された.術後総肝動脈に肝動注カテーテルを留置し,週に一度5-FU1,500mgを5時間かけて動注した.動注療法23クール終了時には肝転移巣はすべて消失した(CR).動注療法は計43クール行い, 5-FUの総投与量は69.5gであった.術後5年8カ月経過する現在も再燃の兆候は認められていない.大腸癌肝転移非切除例に対する肝動注化学療法は本症例のように著効が得られる可能性が示唆された.
  • 泉 貞言, 鈴鹿 伊智雄, 塩田 邦彦
    2002 年 63 巻 8 号 p. 1971-1975
    発行日: 2002/08/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    早期胃癌と一期的肝切除が困難な同時性多発肝転移(H3)を伴った直腸癌症例に対し,まず低位前方切除・胃局所切除および術中肝動注用リザーバ埋込み術を施行した.さらに外来で肝動注を用いての在宅化学療法を約半年施行したところ肝転移巣の著明な縮小効果が得られたため二期的に肝切除を施行した.組織学的検索では,肝病巣にviable cellは認められなかった.肝切除後約1年半の現在,無再発生存中である.一期的肝切除困難なH3症例に対しpharmacokinetic modulating chemotherapy (PMC)を中心とした集学的治療が有効であった症例について報告するとともに大腸癌肝転移症例に対する集学的治療について若干の考察を行った.
  • 長田 真二, 佐治 重豊, 国枝 克行, 杉山 保幸, 鷹尾 博司, 佐野 純
    2002 年 63 巻 8 号 p. 1976-1979
    発行日: 2002/08/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    非常に稀な胆嚢浸潤をきたした肝細胞癌を経験した.症例は70歳,男性.近医にて慢性肝炎の治療経過中に腫瘍マーカーの上昇を認め精査の結果,胆嚢浸潤を伴った肝S5およびS7の肝細胞癌と判明し,治療目的にて当科紹介された.経皮的門脈塞栓術にて左葉の増大をはかったが効果なく,胆嚢を含め肝部分切除術にて腫瘍を摘出した.病理組織検査にて,低分化型肝細胞癌が胆嚢内粘膜に露出しており胆嚢内出血を認めた.術後3カ月目に両葉多発性に再発を認め,食道静脈瘤破裂により4カ月後に死亡した.浸潤性発育を示す肝細胞癌につき文献的考察を加え報告する.
  • 住永 佳久, 吉田 卓義, 星野 徹, 宮崎 国久, 小西 文雄
    2002 年 63 巻 8 号 p. 1980-1983
    発行日: 2002/08/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    合流部結石に対する外科的治療は,局所の炎症のため困難なことが多い.術後の胆管狭窄が懸念され,その手技も難易度が高いため腹腔鏡下手術の適応でないとする意見もある.われわれは胆管結石を合併した合流部結石に対して,腹腔鏡下手術を施行した.胆嚢管から胆管にかけて弧状に切開することで除石は容易であった.また切開口と胆嚢管断端は結節縫合閉鎖することにより術後の胆管狭窄も認めなかった.胆嚢胆管瘻を合併するような高度炎症例では困難と考えられるが,症例を選択すればわれわれの手技は合流部結石に対して十分に適応できると考えたので報告する.
  • 淀縄 聡, 小川 功, 藤原 明, 平野 稔, 伊藤 吾子
    2002 年 63 巻 8 号 p. 1984-1989
    発行日: 2002/08/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例1は81歳,女性.全身倦怠感を主訴に受診,総胆管腫瘤が疑われ入院となった. ERCPで下部胆管に不整形の狭窄があり胆管癌の診断で膵頭十二指腸切除術を施行した. 2.7×2.0cmの結節浸潤型の腫瘍で,組織像では大部分は分化した扁平上皮癌でその周囲に腺癌組織がわずかに散在していた.術後1年6カ月で肝転移で死亡したが,転移巣の穿刺吸引細胞診では角化型扁平上皮癌細胞のみであった.症例2は70歳,男性.皮膚黄染のため受診,総胆管腫瘤による閉塞性黄疸のため入院となった. PTCDで減黄した後のERCPとPTCD造影では中下部胆管に腫瘤による欠損像を認めた.胆汁細胞診で腺癌細胞を認め胆管癌の診断で膵頭十二指腸切除術を施行した. 3.4×2.4cmの乳頭浸潤型の腫瘍で,組織像では豊富な間質の中に角化型扁平上皮癌および管状腺癌が混在していた.リンパ節にも腺扁平上皮癌の転移を認めた.
  • 鬼頭 靖, 神谷 里明, 小川 明男, 松永 宏之, 谷村 葉子, 松崎 安孝
    2002 年 63 巻 8 号 p. 1990-1993
    発行日: 2002/08/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    膵頭十二指腸切除後の膵液瘻はいまだに重篤な合併症である.今回,われわれは難治性膵液瘻に対し非観血的内瘻術を施行し軽快した例を経験したので報告する.症例は54歳の男性で,下部胆管癌の診断で,幽門輪温存膵頭十二指腸切除術を施行した.術後1週間目に膵胃吻合部より膵液瘻を生じた.瘻孔造影では,主膵管は描出されたが,吻合に使用した胃は造影されなかった.経皮経胃的膵瘻管ドレナージは,十分にドレナージ・チューブが膵瘻管に送り込めず,行うことができなかった.別の方法として, transjugular intrahepatic portosystemic shuntカテーテルを使用し,膵瘻管から胃壁を穿刺し,ドレナージ・チューブを膵瘻管と胃の間に留置し,内瘻化した.経過は良好で,内瘻化後より1カ月目に退院した.
  • 鈴木 大, 田中 壽一, 土屋 俊一, 海保 隆, 柳澤 真司, 竹内 修
    2002 年 63 巻 8 号 p. 1994-1998
    発行日: 2002/08/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    門脈合併膵頭十二指腸切除,左腎静脈グラフトによる門脈再建を行った膿瘍形成を伴う腫瘤形成性膵炎の1例を経験したので報告する.症例は57歳,男性.右季肋部痛にて近医受診,精査にて膵頭部の腫瘤を指摘され,当科紹介. CA19-9が380u/mlと高値を示し,各種画像検査で膵頭部に多房性の嚢胞様成分を伴う腫瘤を認めた.腹痛を伴っていること,増大傾向にあること,悪性を否定できないことから開腹手術施行.膵頭部に固い腫瘤を認め,術中迅速組織診でも悪性を否定できず,門脈への高度な癒着を認めたため,門脈合併膵頭十二指腸切除,左腎静脈グラフトによる門脈再建を施行した.術後の病理学的検索で,膿瘍形成を伴う腫瘤形成性膵炎と診断された.慢性膵炎で膿瘍形成を伴うものは比較的稀と考えられ,本症例ではこれが術前診断を困難にしたと考えられた.また,術後4日目の腹部血管造影で,再建門脈の開存と左腎静脈の側副血行路が確認された.
  • 内間 恭武, 西野 裕二, 仲田 文造, 山田 靖哉, 西原 承浩, 平川 弘聖
    2002 年 63 巻 8 号 p. 1999-2003
    発行日: 2002/08/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    多発性内分泌腺腫症(multiple endocrine neoplasia: MEN) 1型に伴う再発多発性インスリノーマ1例を経験した.症例は, 54歳,女性で,低血糖発作を主訴に入院精査を行った.術前検査としてCT, MRI,超音波内視鏡検査,経皮経肝門脈採血を施行し,画像診断および内分泌機能的診断を行い,これらの検査結果を総合しインスリノーマの術前局在診断が可能であった.また手術は術中超音波検査を併用し腫瘍の局在だけでなく膵管・脈管との位置関係を観察し,切除線を決定し膵体部切除術を施行した.術後1年経過した現在低血糖症状を認めず再発は認めていない. MIEN-1型のインスリノーマは多発性が多いが,術後長期間経過した後に残膵に発生した異時性多発インスリノーマに対して再切除が可能であった稀な症例を経験した.多発性症例に対しては長期的経過観察が必要であると思われた.
  • 横山 真也, 玉内 登志雄, 竹内 英司, 岡本 哲也, 伊藤 以知郎
    2002 年 63 巻 8 号 p. 2004-2007
    発行日: 2002/08/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は72歳,男性. 1995年3月,十二指腸副乳頭腺腫(tubulo-villous adenoma)および主乳頭腫瘍(adenomatous proliferation)にて幽門輪温存膵頭十二指腸切除術を施行した. 1999年12月腹部CT検査で残膵に径3.5cmの低吸収域を認めたため,精査目的で入院となった.内視鏡的逆行性膵管造影で膵管の狭窄と腹部血管造影で脾動脈のencasement, さらに脾静脈の途絶を認め,残膵癌の診断で, 2000年2月残膵全摘術,脾臓摘出術,左副腎摘出術を施行した.残膵に結節型の腫瘍を認め,病理組織学的には中分化型管状腺癌, s3, rp 1, pv sp 3, a sp 3, p 1 (+), ne 2, mpd(+)scirrhous type, INFβ, ly 1, v 0, n 1, conclusive stage IVaであった. 2000年5月に多発肝転移が出現し, 11月に死亡した.
  • 安川 十郎, 赤堀 宇宏, 大山 孝雄, 吉川 高志
    2002 年 63 巻 8 号 p. 2008-2011
    発行日: 2002/08/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は48歳,女性.平成12年5月24日より左側腹部痛を訴え,同月26日当院受診,腹部超音波検査にて脾腫瘍を指摘され,同日,精査目的に入院となった.その後の検索で,大腸ファイバーにて, Bauhin弁より5cm口側の小腸にポリポーシス様病変がみられたため生検を行ったところ,悪性リンパ腫が示唆された.また,小腸造影で同様の病変が,小腸ほぼ全域に存在することが確認された.その他,造影CT・Gaシンチ・MRI・血管造影など施行し,脾悪性リンパ腫小腸転移の診断のもと,開腹術を施行した.開腹時,腹腔内には血性腹水があり,腫瘍は漿膜外へ露出していた.また,肝表面に白色硬結あり,脾摘および脾門部・腸間膜リンパ節採取と共に,肝部分切除を施行した.いずれの標本からも悪性リンパ腫の診断が得られた.術後経過は特に問題なく,現在,外来通院にて化学療法 (THP-COP) 治療中である.
  • 前川 武男, 矢吹 清隆, 佐藤 浩一, 前川 博, 和田 了, 松本 道男, 河井 文健
    2002 年 63 巻 8 号 p. 2012-2016
    発行日: 2002/08/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は43歳,女性.右外陰部腫瘤を主訴として来院. CT, MRI検査で右外陰部より骨盤内に連続する腫瘍と診断し,腹会陰式腫瘤摘出術を施行した.病理組織学的検査で侵襲性血管粘液腫であった.本症は極めて稀な疾患で本邦報告例は自験例を含め16例にすぎない.自験例は30×22×8cm大で本邦報告例の中では最も巨大な腫瘍であった.本症は比較的若い女性の会陰部や外陰部に好発する.本邦報告例および自験例を含め文献的考察を加え報告する.
  • 菊池 誠, 山田 太郎, 辻田 和紀, 小林 一雄, 寺本 龍生, 平野 敬八郎
    2002 年 63 巻 8 号 p. 2017-2021
    発行日: 2002/08/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    今回われわれは,比較的稀な疾患である特発性大網捻転症を経験したので,本邦報告例59例を集計し文献的考察を加えて報告する.症例は47歳,女性.主訴は腹痛, 2日前より心窩部痛が出現,右下腹部痛も出現したため当院救急外来を受診した.右下腹部に圧痛とBlumberg徴候および筋性防御を認めた.血液生化学検査にてWBC10,000/μl, CRP5.0mg/dlと上昇しており,急性虫垂炎の疑いにて開腹術を施行した.開腹したところ,軽度の淡血性腹水と暗赤色に変色した大網を認めた.正中よりやや右側にて,単極性に時計方向,約3回捻転していた.大網を健常部にて結紮切除した.急性虫垂炎と類似した症状を呈し,消化器症状が乏しく,腹部超音波検査にて明らかな虫垂炎の所見が得られない場合には,本症も考慮に入れ腹部CT検査にて腸間膜や腹腔内脂肪組織の異常の有無を確認する必要があると思われた.
  • 川崎 健太郎, 大西 律人, 安田 貴志, 脇田 和幸, 山口 俊昌, 石田 武
    2002 年 63 巻 8 号 p. 2022-2025
    発行日: 2002/08/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は43歳,女性.嘔吐と腹痛を主訴として当院を受診した. CTにて網嚢内と思われる部位に拡張した腸管および腹水を認めたため,網嚢ヘルニアによる絞扼性イレウスとの診断にて外科へ紹介され手術となった.開腹すると菲薄化した大網の直径約10cmの裂孔より網嚢腔内に小腸が嵌入していた.さらに網嚢内より小網の裂孔を経由して小網前面に小腸が約170cm嵌入し, 270度捻転し絞扼されていた.また嵌入した小腸の一部はウインスロー孔より網嚢外へ脱出していた.手術は壊死した小腸の切除と裂孔の閉鎖を行った.術後経過は良好であった.本症例はCTにて術前に診断することができ,特異な嵌入形態を示した稀な症例である.開腹歴のないイレウス症状を示す病態の原因として大網裂孔網嚢ヘルニアのような内ヘルニアも念頭に置く必要があると思われた.
  • 遠藤 暢人, 山下 巌, 野村 直樹, 桐山 誠一, 杉山 茂樹, 塚田 一博
    2002 年 63 巻 8 号 p. 2026-2029
    発行日: 2002/08/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    大網裂孔ヘルニアが原因で,腹部所見の乏しい絞扼性イレウスの1例を経験したので報告する.症例は78歳,男性.既往に手術歴はない.持続する腹痛のため来院した,疼痛は一度軽減したが腹部膨満感は持続していた.血液ガス分析は, BEが-8.3と代謝性アシドーシスを認めた.腹部レントゲンは小腸ガスを右側にのみ認め,腹部超音波およびCTでも左側小腸の著明な拡張と,腹水の貯留を認めた.上部小腸の絞扼性イレウスと診断し,緊急手術を行った.術中所見は,小腸がTreitz靱帯から60cmの部位より,大網の裂孔を通って脱出・嵌頓しており,虚血性の変化を呈していた.大網裂孔ヘルニアによる絞扼性イレウスと診断.裂孔を開放.小腸を部分切除した.術後経過良好にて,第20日目に退院となった.手術歴のないイレウスは内ヘルニアによるものを考慮する必要がある.腹部所見に乏しい絞扼性イレウスもあり,検査所見も考慮し,緊急手術の時期を逃してはならない.
  • 木村 憲央, 森田 隆幸, 村田 暁彦, 馬場 俊明, 西村 顕正, 佐々木 睦男
    2002 年 63 巻 8 号 p. 2030-2034
    発行日: 2002/08/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    後腹膜脂肪腫の1例を経験した.症例は50歳,女性.腹部膨満感を主訴に当院を受診した. CTでは,後腹膜に脂肪組織と同吸収域,境界明瞭,内部均一, MRIではT2強調画像で高信号の巨大腫瘍が認められた.以上より後腹膜脂肪腫の診断で,腫瘍摘出術を施行した.腫瘍は後腹膜に存在し,腹腔内臓器を左方に圧排していた.栄養動脈は右卵巣動脈の分枝で,原発は右腎周囲組織と考えられた.腫瘍は被膜を有し比較的容易に摘出された.摘出標本は表面平滑,黄色,被膜で覆われ,重量は6.1kgであった.組織学的には成熟した脂肪組織からなり,脂肪腫と診断された.後腹膜に発生する腫瘍は稀な疾患であり,なかでも脂肪腫は少数である.文献的に検索しえた範囲では本邦における報告例は自験例も含め95例であり,重量平均は3.7kgであった.今回, 6.1kgの巨大後腹膜脂肪腫を経験したので若干の文献的考察を加えて報告する.
  • 長田 博光, 横尾 直樹, 北角 泰人, 白子 隆志, 浦 克明, 岡本 清尚
    2002 年 63 巻 8 号 p. 2035-2039
    発行日: 2002/08/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    悪性リンパ腫との鑑別に難渋した特発性後腹膜線維症の1例を経験したので,若干の文献的考察を加え報告する.症例は65歳,男性,主訴は左下肢腫脹であった.左下肢静脈造影では,大腿・腸骨静脈領域における閉塞・狭窄などの異常を認めなかった.骨盤CTにて,仙骨前面にサンドイッチサイン様所見を伴う腫瘤影を認めた.また,ガリウムシンチグラフィにて同部に異常集積を認め,可溶性IL-2受容体高値も伴っていたことより,悪性リンパ腫を強く疑い,全身麻酔下に開腹生検術を施行した.病理組織学的に,線維性結合織のびまん性増殖に炎症性細胞浸潤を伴う所見を認めたことより,特発性後腹膜線維症と診断した.術後にステロイド療法を開始し,著明な腫瘤縮小と左下肢腫脹消失を認めた.ステロイド中止後1年経過した現在,再発を認めていない.後腹膜腫瘍の鑑別診断に際しては,本症も念頭に置く必要があると思われ,報告した.
  • 松本 匡史, 山口 真彦, 成原 健太郎, 吉澤 康男, 真田 裕
    2002 年 63 巻 8 号 p. 2040-2045
    発行日: 2002/08/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は29歳,男性.右下腹部腫瘤を主訴に来院した.術前の腹部CTで腫瘍は外腸骨動脈を背側に圧排するように発育する径10cmの嚢胞性成分を含む腫瘤として描出された.腹部血管造影では右外腸骨動脈の分枝より造影される腫瘍濃染像を認め,腫瘍マーカーはAFPのみ異常高値を示した.以上より,後腹膜より発生した卵黄嚢腫(yolk sactumor)と診断し,腫瘍摘出術を施行した.術後の組織学的検索では,腫瘍は円形の核を有する紡錘状の細胞からなり, AFP陽性, placental alkaline phosphatase (PLAP)陽性, HCG陽性で後腹膜原発卵黄嚢腫と診断された.しかし,術後に右精巣腫瘍が顕在化し,原発巣は右睾丸と考え,右除睾術を行つた.病理診断はyolk sac tumorで精索に腫瘍細胞の遺残を認めた.残存する腫瘍に対し,末梢血幹細胞移植併用超大量化学療法を行い腫瘍マーカーの正常化を得た. 13ヵ月経過した現在,再発の徴候を認めていない.後腹膜腫瘍の質的診断には,時に腫瘍マーカーが有効で,発見されたときすでに進行した腫瘍が多いため,切除後も積極的な集学的治療を行うことが重要であると考えられる.
  • 浅野 賢道, 進藤 学, 鈴木 雅行, 橋本 正人, 加藤 紘之
    2002 年 63 巻 8 号 p. 2046-2049
    発行日: 2002/08/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    今回,われわれは後腹膜原発malignant hemangiopericytomaの1例を経験したので,若干の文献的考察を加え報告する.
    症例は70歳,女性.右乳癌に対する手術目的にて当科入院.術前精査の腹部造影CTにて左腹腔内に良好に造影される巨大な腫瘤を認めた.開腹の上切除したが,術中,腫瘍下極の腫瘍血管が腹壁と癒着しており,剥離に難渋した.病理組織学的に後腹膜原発malignant hemangiopericytomaと診断された.術後2年を経た現在,再発の兆候を認めていない.
    本疾患の診断には,造影CTや血管造影が有用とされている.これらの検査で特徴的な所見が認められた場合,本疾患を念頭に置くことが重要である.
  • 片桐 敏雄, 島田 長人, 岡本 康介, 野崎 達夫, 金子 弘真, 柴 忠明
    2002 年 63 巻 8 号 p. 2050-2053
    発行日: 2002/08/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    S状結腸癌術後に発症した稀な合併症と考えられる化膿性椎間板炎の1例を経験したので報告する.症例は56歳,女性.下血を主訴に来院し,諸検査にてS状結腸癌と診断. S状結腸切除術を施行した.術後第4病日から38°C~40°C台の発熱が持続し,第12病日から体動時の腰痛を認め感覚障害も伴い徐々に歩行困難が出現した.その間,各種検査を施行したが発熱の原因は確定できず腰椎単純X線検査においても異常所見はなかった.第20病日,腰椎MRIを施行したところL5/S1の椎間板に変性を認め,シンチグラフィーにて同部位の異常集積像があり,化膿性椎間板炎と診断した.保存的治療にて軽快し退院となった.第60病日の単純X線検査では椎間腔の狭小化および椎体の不整像が出現していた.術後に発熱,腰痛を伴う際は本症を念頭に置き,単純X線検査のみでは早期診断が困難なことからMRIなどの積極的な検査が必要である.
  • 山本 真, 平位 洋文
    2002 年 63 巻 8 号 p. 2054-2057
    発行日: 2002/08/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は44歳,女性.数年前より臍部にピンポン球大の弾性軟な腫瘤を自覚するも,特に腹痛など認めなかったので放置していた.平成12年4月14日,同部に激しい痛みを生じたため,当科受診.血液生化学検査で白血球の上昇を認めた.腹部CTにて臍部腫瘤に一致して脂肪織内に小腸と思われる腸管の脱出を認めた.以上より臍ヘルニアの嵌頓と診断し,緊急手術を施行した.ヘルニア内容は小腸であり約5cmにわたり,壁が暗褐色に変色していたが,数分経つと良好な色に戻り,腸間膜の動脈拍動も良好であったため,小腸切除は行わずヘルニア嚢の切除およびヘルニア門閉塞のみとした.術後経過は順調で9病日に退院した.
    成人臍ヘルニアは本邦では稀な疾患であり,嵌頓症例は検索しえた限りでは最近約10年間に自験例を含めて27例が報告されているに過ぎない.若干の文献的報告を加えて報告した.
  • 早馬 聡, 島崎 孝志, 大久保 哲之, 加藤 紘之
    2002 年 63 巻 8 号 p. 2058-2060
    発行日: 2002/08/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    虫垂嵌頓鼠径ヘルニアの1例を経験したので報告する.症例は77歳の男性.1週間前から右鼠径部の膨隆を自覚,その後増大傾向を認め疼痛も伴うようになってきたため,近医受診したところ右鼠径ヘルニア嵌頓が疑われ,当院紹介入院となった.転院後,嵌頓内容は断定しえなかったが,右鼠径ヘルニア嵌頓が強く疑われたため緊急手術を施行した.手術所見は右鼠径ヘルニア内に虫垂が嵌頓し先端は壊死に陥っており,ヘルニア嚢内に膿汁の貯留をきたしていた.同一創にてヘルニア根治術・虫垂切除術を施行し,残存した末梢側ヘルニア嚢内にドレーンを留置し閉創した.鼠径ヘルニア嵌頓において虫垂を内容とするものは極めて稀であるが,イレウス症状を欠き,鼠径部超音波像にて層状構造が描出された場合,本症を疑うことが可能と思われた.
  • 藤江 裕二郎, 林田 博人, 天野 正弘, 高田 俊明, 大島 進
    2002 年 63 巻 8 号 p. 2061-2065
    発行日: 2002/08/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    発症早期に診断し超音波ガイド下に整復,待機的手術を行った閉鎖孔ヘルニアの1例を経験した.症例は40歳,女性で左鼠径部痛を主訴に来院, CTで左恥骨筋と外閉鎖筋の間に円形腫瘤を認め閉鎖孔ヘルニアと診断した.超音波プローべを用い嵌頓腸管を整復した後,待機的に鼠径法で根治手術を施行した.
    閉鎖孔ヘルニアの報告は多数みられるが,本症例は若年である点と明らかなヘルニア嚢が認められない初期段階での発症である点が特徴的であった.近年ではCTを中心とした画像診断の進歩によりほとんどの例で術前診断がなされている.手術は依然として緊急開腹術が多いが,発症早期に嵌頓腸管の解除が得られればより侵襲が少ないアプローチでの待機的手術も考慮される.
  • 川崎 亮輔, 飯沼 紀, 山口 晃司, 加藤 紘之
    2002 年 63 巻 8 号 p. 2066-2069
    発行日: 2002/08/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は41歳の男性. 5年前に2型糖尿病の診断を受けていたが通院せず,放置していた.左前胸部と左腰部の疼痛・腫張を主訴に外来を受診し, CTにより同部の化膿性筋炎が疑われ,切開排膿術を施行した.インスリンによる血糖管理と抗生剤投与を開始したが炎症反応が持続するために再度CT検査を施行したところ,右腹部と右下肢にも膿瘍形成が確認された.同様に切開排膿し,症状は改善した.
    化膿性筋炎の原因として宿主免疫能低下の関わっている例が多いとされているが,特に糖尿病患者が筋肉の腫張や疼痛を訴える場合には常に本症を念頭に置く必要がある.さらに病変部が多発している可能性を考慮し,早期に全身検索を行うことが肝要と思われた.
  • 楠本 祥子, 渡辺 明彦, 仲川 昌之, 佐道 三郎, 阪口 晃行, 本郷 三郎
    2002 年 63 巻 8 号 p. 2070-2074
    発行日: 2002/08/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は72歳,女性. 50歳時,右乳癌にて手術を受けている.胃内視鏡検査で胃体下部前壁および後壁に表在性の病変を認め,胃悪性リンパ腫もしくはMALTリンパ腫と診断された.大腸内視鏡検査では, S状結腸に2型病変を認め,高分化腺癌と診断した.胃病変が悪性の可能性を考慮しS状結腸切除術と同時に胃全摘術も施行した.病理検査で,胃病変は低悪性度B細胞型MALTリンパ腫, sm, n0, stage IE, S状結腸病変は中分化腺癌, ss, n0, ly3, v1, stage IIであった. MALTリンパ腫と悪性疾患との重複は本邦では胃癌以外に報告がなく,今回胃低悪性度MALTリンパ腫とS状結腸癌の同時性重複の1例を経験したので報告する.
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