日本臨床外科学会雑誌
Online ISSN : 1882-5133
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64 巻, 11 号
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  • 三木 誓雄, 井上 靖浩, 荒木 俊光, 畑田 剛, 田中 光司, 小西 尚巳, 毛利 靖彦, 楠 正人
    2003 年 64 巻 11 号 p. 2659-2664
    発行日: 2003/11/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    周術期の同種性輸血が術後早期の腫瘍転移促進因子の産生にどのように影響を与えるか検討した.大腸癌患者120名を対象とし,周術期の循環血液中のIL-6, VEGF, HGF, ICAM-1, VCAM-1の変動を評価した.無輸血群,術前輸血群,術中輸血群で比較したところ, IL-6, VEGF, HGFはいずれも術中輸血群でのみ術後早期に著しく高値を示し, ICAM-1とVCAM-1は術前輸血群で一過性に軽度上昇するにとどまった.高度侵襲群の中で術中輸血群と無輸血群で検討したところ,輸血群ではIL-6, VEGF, HGFはさらに上昇し, ICAM-1, VCAM-1は高値が遷延した.以上より高度侵襲下に施行された同種血輸血は,腫瘍増殖因子の産生を著しく増強させ,それに対し非侵襲下の輸血が腫瘍転移促進因子の産生に及ぼす影響は軽度かつ,一過性であると考えられた.
  • 井上 暁, 梅北 信孝, 宮本 幸雄, 真栄城 剛, 田中 荘一, 大谷 泰一, 斉浦 明夫, 松尾 聰, 吉田 操, 北村 正次
    2003 年 64 巻 11 号 p. 2665-2670
    発行日: 2003/11/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    胃,十二指腸潰瘍穿孔に対する保存的治療法の適応を明確にすることを目的として,保存的治療の成功した32例をA群(胃6例,十二指腸26例),保存的治療から手術に移行した5例(胃2例,十二指腸3例)をB群としてretrospectiveに検討した. A群の特徴はB群に比し1) 若年である, 2) 初診時のCT, USにおいて左,右横隔膜下,脾腎境界,モリソン窩,肝下面,左,右傍結腸溝,ダグラス窩のうち腹水貯留部位は2カ所以内である, 3) 腹部筋性防御が初診後24時間以内に軽快する, 4) 腹水量は経時的に減少する,という点にあり,これらを満たすことが保存的治療の適応条件と考えられた.手術移行への遅延は合併症や入院期間を遷延させるため,保存的治療を行う場合には臨床所見の変化を緻密に観察し,手術に移行するタイミングを逃さないことが重要と思われた.
  • 植村 一仁, 近藤 征文, 岡田 邦明, 石津 寛之, 大沢 昌平, 益子 博幸
    2003 年 64 巻 11 号 p. 2671-2676
    発行日: 2003/11/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    胃上部進行癌の脾門リンパ節転移に関連する臨床病理学的因子を明らかにし,脾門リンパ節転移high risk群の選定と脾摘の適応について検討した.対象は1990年から1998年までに胃全摘術,脾合併切除により治癒切除が行われた胃上部進行癌99例である.脾門リンパ節転移例は16例(16.2%)に認め,リンパ節転移陰性例との間で占居部位,肉眼型,腫瘍径,深達度,総リンパ節転移個数,脈管侵襲,進行度において有意差を認めた.多変量解析における脾門リンパ節転移の危険因子は占居部位(大彎,前壁,後壁,全周),肉眼型(3型, 4型)であった.脾門リンパ節転移陽性例の5年生存率は20.8%で,陰性例と比較し有意に低率であった. 1) 占居部位が大彎,前壁,後壁,全周, 2) 肉眼型が3型, 4型の症例は脾門リンパ節転移の可能性が高く脾摘の適応であり,これ以外の症例では脾門リンパ節転移の可能性が低く,脾臓を温存できる可能性があると考えられた.
  • 高橋 周作, 佐藤 裕二, 近藤 正男, 小橋 重親, 前田 好章, 本間 重紀, 篠原 敏樹, 工藤 岳秋, 藤堂 省
    2003 年 64 巻 11 号 p. 2677-2681
    発行日: 2003/11/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    近年,各種癌における重複癌の頻度が増加している.その中で,大腸重複癌の特徴として大腸癌発症数の増加やHNPCC,大腸多発癌,女性ホルモン,放射線との関係などが明らかにされている.当科の1978年1月より2001年12月までの初発大腸癌572例中,他臓器重複癌は60例(10.4%)であった.家族歴で3親等以内に癌を有する症例は重複癌症例で高率であった.同時性28例,異時性28例,同時/異時性4例.異時性重複癌を認めた32例では,大腸癌手術の前後10年間に27例(84.3%)が他臓器癌を合併していた.臓器別頻度では胃癌が14例(21.5%)と最も多く,女性では乳癌,子宮癌が高率であった. 5年生存率は重複癌症例69%,非重複癌症例64%と有意差を認めなかった.重複癌症例の治療では,個々の癌の根治性を考慮した積極的な治療により非重複癌症例と同程度の予後が期待できると思われた.
  • 椎木 滋雄
    2003 年 64 巻 11 号 p. 2682-2685
    発行日: 2003/11/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は55歳,女性.左乳房腫瘤を主訴に来院した.マンモグラフィでは, spiculaを伴う不均一な濃度を認めた.超音波検査では,嚢胞の集簇を思わせる腫瘤像を認めた.穿刺吸引細胞診では腺癌を考える所見であり, Bt+Ax (非定型的乳房切除術)を施行した.病理組織学的には,多数の拡張した乳管内に好酸性の甲状腺コロイド様物質が含まれ,低乳頭状の上皮で構成される腫瘍であった.腫瘍細胞にはhobnail patternがみられ,一部には浸潤癌巣が存在した. ER陰性で腋窩リンパ節には転移はみられなかった.症例は3年6カ月を経過した現在,再発を認めていない.
  • 大塚 裕一, 奈良 智之, 針原 康, 古嶋 薫, 小西 敏郎, 嶋田 絋
    2003 年 64 巻 11 号 p. 2686-2690
    発行日: 2003/11/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    乳房再建にはさまざまな方法があるが,筋皮弁を用いる方法としては,広背筋皮弁を用いる方法や水平腹直筋皮弁を用いる方法が一般的である.われわれは,乳癌に対する乳房切除手術と同時に上腹壁動静脈を有茎とした片側下側方腹直筋皮弁による乳房再建を7例に施行した.うち4例に対しては下腹壁動脈や静脈にマイクロ血管吻合を付加することにより皮弁血流の安定を図った.再建のために作成した皮弁面積は55~255cm2で,この下側方腹直筋皮弁でも比較的大きな皮弁を起こすことが可能である.手術時間は乳房切除,マイクロ血管吻合を含めて平均238分だった.腹直筋欠損部も一期的に縫合閉鎖が可能であり,手技的にも比較的容易で,合併症も少なく,美容上も有利で,一般外科医にも施行可能で,有用な乳房再建方法の選択肢の一つであると考えられる.
  • 足立 洋心, 林 英一, 西村 謙吾, 廣恵 亨, 吹野 俊介, 深田 民人
    2003 年 64 巻 11 号 p. 2691-2694
    発行日: 2003/11/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    乳腺腺様嚢胞癌は極めて稀な疾患であり,本邦報告例もわれわれの検索した限りでは71例の報告があるのみである.今回われわれは乳腺腺様嚢胞癌の1例を経験した.症例は62歳の女性,平成13年9月9日右乳房の腫瘤を自覚して来院した.触診では右乳房のC領域に1cm大の可動性良好な硬い腫瘤を認めた.マンモグラフィーにてカテゴリーIII,エコーにて扁平・境界明瞭,内部エコー均一な腫瘤が認められ,細胞診ではclass III bであった.腫瘤を摘出した結果,乳腺腺様嚢胞癌との診断であったため乳房温存術+腋窩郭清を施行し,現在まで再発は認めていない.
  • 豊田 秀一, 中村 雅史, 田崎 哲, 堤 宣翁, 寺坂 禮治
    2003 年 64 巻 11 号 p. 2695-2699
    発行日: 2003/11/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    本邦では比較的稀な乳癌髄膜播種の1剖検例を経験した.症例は, 34歳,女性.呼吸苦,腰痛を主訴として来院. Gadolinium (Gd)造影MRI,骨シンチおよびその他の検査にて,髄膜を含み,その他,骨,肺,肝などに転移所見を認め,乳癌全身播種性転移の診断であった.直ちに化学療法(weekly one-hour paclitaxel injections)を行ったが,治療開始後まもなくDICを発症,化学療法継続は困難となり,全身状態は次第に悪化,髄膜播種の診断後約7週で死亡した.剖検では,化学療法による抗腫瘍効果は主病巣に対しては認められたが,脳クモ膜表面には腫瘍細胞が一面に播種したままで無効であった.乳癌髄膜播種症例の予後は極めて不良で,集学的治療を行っても6カ月以内にほとんどが死亡,生存中央期間も3~6カ月であり予後の改善が得られていないのが現状である.
  • 菅野 雅彦, 安藤 隆夫, 富田 夏実, 梶山 美明, 鎌野 俊紀, 鶴丸 昌彦
    2003 年 64 巻 11 号 p. 2700-2704
    発行日: 2003/11/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    成人の食道憩室を伴った食道気管支瘻に対し,内視鏡的治療の反復で根治せしめた1例を経験したので報告する.
    症例は44歳の女性. 1999年8月頃より胸部不快感出現し,近医にて食道気管支瘻の診断を受け,精査加療目的にて当科入院となった.食道造影にて上部食道に憩室を認め,憩室底部より気管支への造影剤の流入を認めた.外科用接着剤Histoacrylを用い内視鏡的瘻孔閉鎖術を2回施行したが,完治を得られなかった.次に,クリップと生体組織接着剤Beriplast Pを用い内視鏡的瘻孔閉鎖術を試みた.術後6カ月後,再発を認めた.再度,クリップとBeriplast Pを用いた内視鏡的瘻孔閉鎖術を施行し,術後2年7カ月の現在,良好な経過を得ている.
    内視鏡的治療は,比較的簡単な手技で安全に繰り返し施行できるため,手術を考慮する前や,全身状態の悪い症例に有用な方法と思われた.
  • 永島 明, 田嶋 裕子, 吉松 隆, 大崎 敏弘
    2003 年 64 巻 11 号 p. 2705-2708
    発行日: 2003/11/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    デスモイド腫瘍は稀な軟部腫瘍の一つであり,良性疾患ではあるが局所再発の頻度が高い腫瘍である.われわれは胸壁切除再建を行った胸壁デスモイド腫瘍の1例を経験したので報告する.症例は43歳,女性.右前胸壁のデスモイド腫瘍に対し,右第4~7肋骨,右肋骨弓,胸骨の一部を含む前胸壁を皮膚も含めてen blocに切除した.広範な欠損となったが, Marlex-resin sandwich法,さらに有茎腹直筋皮弁を用いて再建を行い,術後4年4カ月現在再発なく健在である.
  • 芦田 泰之, 殿本 詠久
    2003 年 64 巻 11 号 p. 2709-2713
    発行日: 2003/11/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    症例1は85歳,男性.ペースメーカー移植後13年を経過していた.繰り返すポケット感染に対する縮小治療の後に敗血症をきたした.そこで体外循環,心拍動下に心内膜電極を摘出した.症例2は68歳,男性.ペースメーカー植移後20年を経過.肝膿瘍と敗血症を繰り返していた.心房内電極に疣贅の付着を認めたために体外循環,心停止下に心内膜電極を摘出した.いずれの症例でも心室電極は三尖弁あるいは右心室肉柱に強固に癒着しており,鋭的な剥離が必要であった.術後は良好に経過し再発は認めていない.遠隔期の心内膜電極は心腔内での癒着が高度であるため,体外循環下での摘出が安全かつ確実である.
  • 池田 英二, 名和 清人, 古谷 四郎, 辻 尚志, 市原 周治, 野上 智弘
    2003 年 64 巻 11 号 p. 2714-2717
    発行日: 2003/11/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    超高齢者腹部大動脈瘤破裂例で心不全,腎不全に陥り,患者側の意思で自然経過に委ねた保存的治療が選択され,状態改善後に待期手術で救命した1例を経験した.患者は87歳,女性で突然の腹痛をきたしショック状態で入院した.腹部大動脈瘤破裂と診断したがショックに伴う意識障害と心不全,腎不全に陥っていた.患者側の意思で保存的治療が選択されたが,状態が改善したため約1カ月後に再検討し手術を施行した.後腹膜血腫は一部吸収・縮小するも残存血腫と仮性瘤がTreitz靱帯後方にあり,周辺の強固な癒着と肥厚もあり右側アプローチで腎動脈直下大動脈を捕捉・遮断しえた.真性瘤部を切開し,瘤内より瘤壁を切離しつつ大動脈を剥離しY字グラフトにより再建,術後は合併症なく経過した.極めて例外的とは思われるが症例によっては,待期手術による救命の可能性があることも忘れてはならない.
  • 魚本 昌志
    2003 年 64 巻 11 号 p. 2718-2722
    発行日: 2003/11/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    肺生検にて2例のtumorletを経験した.主病変は,右S3非定型抗酸菌症(MAC)および左S3腺癌(BAC)であった.
    一般的に肺tumorletは,肺内の慢性炎症性病変や線維化巣に見出される5mm以下の微小病変であり,手術標本や剖検肺に偶然発見されることが大半である.形態学的には小細胞癌やカルチノイドと鑑別することは困難とされており,その悪性度に関しては諸説あるが,概ね良性とする説が大半を占めている.細気管支との関連が密接であるため,経気管支鏡的な生検や擦過細胞診の際に異型細胞として検出される可能性があり,小細胞癌として術前診断された報告もある.
    また, tumorletを腫瘍性病変と誤診すれば,悪性疾患に準じた治療を行いかねない.
    そういう点でも,稀な疾患ではあるが本症の疾患概念に留意すべきものと考える.
  • 辻 和宏, 池田 宏国, 三谷 英信, 斉藤 誠
    2003 年 64 巻 11 号 p. 2723-2726
    発行日: 2003/11/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は51歳,女性.心窩部のつかえ感および疼痛を主訴に来院した.胸部X線写真では縦隔内に消化管ガス像を認め,上部消化管透視では,臓器軸性に捻転した全胃がいわゆるupside down stomachの像を呈し左横隔膜上に脱出していた.臓器軸性胃軸捻転症を伴った食道裂孔ヘルニアと診断し開腹術を行った.ヘルニア内容は全胃,大網,横行結腸であり腹腔内への還納は容易であった.食道裂孔は約6×4.5cmと開大していた.手術はヘルニア嚢を結紮切除した後に食道裂孔を縫縮し,さらにNissen法によるfun-doplicationを加えた.胃軸捻転症は新生児,幼児に好発し成人発症例は少ない.本症例のように胃軸捻転症を伴い全胃が脱出した成人食道裂孔ヘルニアは稀な症例と思われ報告する.
  • 堀川 雅人, 野見 武男, 杉原 誠一, 中辻 直之, 高山 智燮, 丸山 博司
    2003 年 64 巻 11 号 p. 2727-2730
    発行日: 2003/11/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    今回われわれは,苛性ソーダによる腐食性食道炎後の食道狭窄の1例を経験した.症例は31歳,男性.泥酔後に苛性ソーダを誤飲し,近医に入院した.腐食性食道炎の急性期治療および瘢痕狭窄に対して拡張術などの保存的療法を施行されるも,嚥下困難症状の改善は認めず,手術目的にて当科紹介となった.上部消化管造影検査,内視鏡検査において胸部上部食道から食道胃接合部までの著明な全周性狭窄と壁硬化像を認め,内視鏡の通過も不能であった.胸部MRI検査にても同様の所見であった.以上,食道の広範囲におよぶ全周性の瘢痕狭窄に対し,食道亜全摘術を施行し,再建臓器としては胃管を用いた.術後,嚥下困難は改善したが,晩期合併症としての残存食道の発癌の問題が残されており今後長期的な経過観察が必要と思われる.
  • 犬塚 和徳, 藤崎 真人, 高橋 孝行, 平畑 忍, 前田 大, 清水 和彦
    2003 年 64 巻 11 号 p. 2731-2735
    発行日: 2003/11/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は68歳,男性.食後つかえ感を主訴に近医受診,内視鏡にて胸部中部食道に腫瘍を認め,生検でcarcinomaであったため,当科受診となった.上部消化管内視鏡では上切歯列より25~30cmに2型腫瘍を認めた.食道造影検査では胸部中部食道前壁に4×2cmの潰瘍性病変を認めた.同病変の生検では腫瘍細胞のロゼット形成がみられ, neur-oendocrine carcinomaを疑った.その他に原発巣を疑う所見はなく,遠隔転移も認めなかったため,右開胸開腹食道亜全摘,胃管再建術を施行した.術後病理診断で3.8×2.7cmの2型腫瘍は充実性索状増殖,ロゼット形成の目立つ腫瘍で, chromogranin A染色陽性,電顕にて腫瘍細胞内に神経内分泌顆粒が散見された.本腫瘍は食道原発neuroen-docrine carcinomaと診断したが,腫瘍細胞は典型的な肺小細胞癌よりもやや大きかった.食道原発のneuroendocrine carcinomaは極めて稀である.
  • 宮本 英雄, 齋藤 学, 藤森 芳郎, 西村 博行, 田中 正英, 細田 裕
    2003 年 64 巻 11 号 p. 2736-2740
    発行日: 2003/11/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    食道癌術後の合併症により胸部食道が欠損状態になった症例に対し,前胸壁皮弁を用いた再建術を施行した.患者は59歳,男性.平成11年4月食道癌および胃癌にて手術を行った.術後合併症により再建食道を断端閉鎖し,頸部食道を前頸部に開口したため胸部食道欠損状態となった.緑膿菌肺炎をたびたび起こしており感染防御能の低下が示唆された.感染のriskが高かったため安全性を第一に考え,前胸壁皮弁による食道再建を計画した. 13年11月, 1回目の手術で空腸を腹壁に固定し,左側の皮弁を作製した. 14年4月, 2回目の手術で右側の皮弁を作製し,左右の皮弁を縫合してロール作製を行った. 9日後に植皮し再建食道を完成した.皮弁作製時には穿通血管を温存し筋膜を付けることが重要である.前胸壁皮弁の欠点はロール下部での食物の停滞であるが,術式の工夫により軽減できた.安全性を優先する場合,前胸壁皮弁による再建術は有用であると考えられた.
  • 角谷 慎一, 徳楽 正人, 原田 猛, 古川 幸夫, 牛島 聡, 中泉 治雄
    2003 年 64 巻 11 号 p. 2741-2744
    発行日: 2003/11/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は82歳,女性.上腹部痛を主訴に,当院内科受診し,上部消化管内視鏡検査を施行したところ,胃内に巨大な結石を2個認めたため入院となった.入院後,再度上部消化管内視鏡検査を施行し,スネア・バスケット鉗子やレーザー照射による結石破砕を試みたが,不成功に終わったため,手術目的に当科紹介となった.上部消化管造影では,胃内に径8×6cmと6×5cmの結石を認めた.腹部CTでは結石の内部は小さな気泡の集積を伴っていた.約2カ月前より柿をよく食する習慣があったことから,柿胃石とおもわれた.内科的治療は望めないため,腹腔鏡下に胃石摘出術を施行した.術後経過は良好であり,術後14日目に退院となった.
  • 田淵 篤, 原 史人, 為季 清和, 中嶋 健博
    2003 年 64 巻 11 号 p. 2745-2748
    発行日: 2003/11/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    88歳,女性患者は,経皮内視鏡的胃瘻造設術の4カ月後に胃瘻ボタンの交換を受け,造影で横行結腸が描出された.胃結腸瘻と診断し手術を施行,胃瘻は横行結腸を貫通し,胃体部大彎側後壁に瘻孔がみられた.瘻孔を切除,横行結腸と胃の欠損部は縫合閉鎖し,胃前壁に新たに胃瘻を造設した.術後経過は順調であった.われわれの症例は脊柱の後彎が著明で,内視鏡で胃内に送気した際に胃後壁が前面に突出し,横行結腸を貫通,誤穿刺したと考えられた.
  • 大野 隆, 大東 弘明, 宮代 勲, 石川 治, 今岡 真義, 平塚 正弘
    2003 年 64 巻 11 号 p. 2749-2753
    発行日: 2003/11/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    再発・再切除を繰り返しながら7年以上生存中のGIST症例を経験したので報告する.症例は68歳,女性.上腹部痛で受診. CTで膵尾部に9cm大の腫瘤を指摘され,胃上半部切除,膵体尾切除,脾摘,胆嚢摘出術を施行した.病理検査で胃GISTと診断された.その後7年間の経過中,腹膜転移に対しては6度の切除を,初回手術後44カ月で出現した肝転移に対しては腹腔内再発腫瘍摘出時に全身麻酔下で2度の凝固療法を施行した.現在,腹腔内多発再発をきたしたためメシル酸イマチニブの内服治療に移行し,良好に経過している.経過中,再発までの期間は漸減し多発傾向を認めるようになったが,この間の臨床的悪性度の増悪とmitotic indexの増加はよく相関した.再切除の適応やメシル酸イマチニブなどを用いた化学療法への移行時期の指標として有用と思われた.
  • 坂本 渉, 関川 浩司, 大木 進司, 小山 善久, 井上 典夫, 竹之下 誠一
    2003 年 64 巻 11 号 p. 2754-2758
    発行日: 2003/11/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は77歳,男性.平成8年よりITPにて当院内科通院し,血小板数は10万前後で内服などなしであった.平成12年よりIIPにて当院呼吸器科通院,プレドニン5 mg/day内服にてコントロールは良好であった.平成14年10月貧血精査のため,内視鏡施行し,幽門部,後壁のIIa胃癌の診断.精査の後手術となった. ITPの急性増悪の既往があることから,術前に免疫グロブリン大量療法施行.手術は幽門側胃切除術+D2+脾摘を施行し出血量は250mlであった.術後血小板数は順調に回復.呼吸に関しては,プレドニン内服開始までメチルプレドニゾロン20mg/day投与し急性増悪はみられなかった.
    ITP合併胃癌の本邦症例報告はわれわれが調べる限りで20例, IIPと胃癌の合併は4例,両者同時合併の症例報告は本邦では初である.重篤な合併症をきたしうる疾患であり,その管理に当たって,過去の経過も十分に把握し, IgG大量療法など,適切な治療が肝要である.
  • 安藤 敏典, 菊池 淳, 竹村 真一
    2003 年 64 巻 11 号 p. 2759-2762
    発行日: 2003/11/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は55歳,男性.突然,上腹部痛が出現したため来院,嘔気,嘔吐は認めず,左上腹部に小児頭大の腫瘤を触知した.腹部単純写真上,左上腹部に腫瘤陰影を,腹部超音波上,腫瘤に一致して拡張した多量の小腸像を認めた.腹部造影CT上,胃から十二指腸水平部までの著明な拡張および膵前面に小腸塊を形成していたため,左傍十二指腸ヘルニア嵌頓が疑われ,手術施行した.開腹時,左上腹部横行結腸間膜下に巨大腫瘤を形成し,小腸が上十二指腸陥凹より左側方向に約310cm嵌頓し,絞扼されていた.小腸を用手的に環納し,ヘルニア門の縫合閉鎖を行った.術前の腹部単純写真,超音波,造影CTにて,早期診断が可能であった.
  • 新美 清章, 平松 和洋, 水上 泰延, 長谷川 雅彦, 重田 英隆, 長嶋 孝昌
    2003 年 64 巻 11 号 p. 2763-2768
    発行日: 2003/11/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    患者は67歳,女性. 3年前から特発性門脈圧亢進症を指摘され外来通院中であった. 2001年5月14日突然の下血を認めたため,当科緊急入院.入院時Hgb 6.0g/dlと高度の貧血を認め,ショック状態であった.ただちに胃および大腸内視鏡検査を行ったが,いずれにおいても活動性の出血源を認めなかった.小腸出血の可能性を考え腹部血管造影を行い,上腸間膜動脈撮影門脈相で回腸内への造影剤漏出が認められ,門脈圧亢進症による側副血行路からの出血と診断した.カテーテル先端を出血部位の支配動脈に留置したまま緊急手術を施行.術中カテーテルより色素を注入し,染色された回腸末端より1m口側の約15cmの回腸を切除した.その後出血は認められず,患者は第20病日に軽快退院した.病理所見で回腸腸間膜静脈瘤よりの出血と診断した.
  • 松原 毅, 田原 英樹
    2003 年 64 巻 11 号 p. 2769-2772
    発行日: 2003/11/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は77歳,男性.十二指腸潰瘍にて幽門側胃切除術の既往がある.以前より柿の嗜好があり, 5年前にも残胃胃石による小腸閉塞に対して摘出術を受けている.今回,腹痛,嘔吐を訴えて当院受診となった.精査,既往より残胃再発胃石による小腸閉塞と診断し,開腹手術を行った. Treitzより約100cmの部位に可動性のある硬い構造物を触知し,黒褐色の異物を摘出した.大きさは5×4×3cmで成分は98%以上がタンニンであり柿胃石と診断された.
    残胃に生じた胃石による腸閉塞の報告は比較的稀であり,保存的治療は困難である.的確な画像検査にて早急に診断し手術すべきであり,術後の定期的なfollowを行うことが重要であると考えられた.
  • 松本 隆, 小林 宇季, 小澤 修太郎, 小川 展二, 篠塚 望, 小山 勇
    2003 年 64 巻 11 号 p. 2773-2778
    発行日: 2003/11/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    7例の成人腸回転異常症を検討した. nonrotationタイプが5例, malrotationタイプが1例,その他のタイプが1例であった.腸回転異常固有の症状を呈したのは, nonrotationタイプの2例で中軸捻転と十二指腸狭窄であった.ともに十二指腸,上行結腸間にpedicleが形成され, 1例はこれによって生じた腸間膜短縮部を中心に軸捻転を引き起こし,他の1例はpedicleが十二指腸空腸移行部を屈曲牽引することで十二指腸狭窄を起こしていた.腸回転異常としての症状のなかった5例にはpedicle, Ladd靱帯などの異常構造物はなかったことから,症状の発現にはこれらの構造物の関与が示唆され,手術も異常構造物のない症例にはLadd手術などの予防手術を行う必要はないと考えた.上部消化管閉塞を伴う症状発現症例の腹部単純レントゲン写真での診断は困難で,十二指腸狭窄では上部消化管造影が,軸捻転症例では超音波ドプラ法や腹部CTが有用と考えられた.
  • 稲葉 一樹, 谷口 弘毅, 藤 信明, 島田 順一, 天池 寿, 内藤 和世
    2003 年 64 巻 11 号 p. 2779-2781
    発行日: 2003/11/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    患者は36歳,男性.ヘマトクリット値が24.2%で強度の貧血のため平成13年10月24日下血を主訴に来院緊急入院した.緊急内視鏡検査,出血シンチ, Meckel憩室シンチ, CT,血管造影,小腸透視のいずれでも確定診断には至らなかった.そのため12月5日診断的開腹術を施行した.術中所見では回腸末端部より100cm口側部に存在したMeckel憩室が内翻し腸重積(小腸-小腸-小腸)を呈していた.憩室を切除し,内部を検索すると憩室より発生したと考えられるポリープを認めた.病理検査は炎症性ポリープであった.以上憩室内ポリープによる腸重積症という稀な1例を経験したので若干の文献的考察とともに報告する.
  • 水野 隆史, 長谷川 洋, 小木曽 清二, 坂本 英至, 伊神 剛, 森 俊治
    2003 年 64 巻 11 号 p. 2782-2786
    発行日: 2003/11/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    腹腔鏡下に切除しえた空腸腸間膜仮性嚢胞の1例を経験したので報告する.症例は41歳の女性,腹部腫瘤を自覚し,当院を受診した.既往はA型肝炎のみであり,明らかな腹部外傷の既往はなかった.腫瘤は腹部超音波で中~低エコーを呈し,腹部CTでは,径4cm程度で造影効果は乏しく,周囲に石灰化を認めた.腹部造影MRIで,腫瘤は, T1強調画像で筋肉とほぼ等信号, T2強調画像で筋肉よりやや高信号で造影効果はなかった. T2強調画像前額断では,腫瘤内容は二相性を持っていた.有症状の胆石症を合併していたので,腹腔鏡下腫瘍摘出術と同時に腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行した.腫瘍は空腸腸間膜内に存在する単胞性嚢胞であり,嚢胞内容物は乳び状であった.病理組織学的には上皮をもたない,腸間膜仮性嚢胞と診断した.腸間膜仮性嚢胞の本邦報告例は自験例を含めて13例であり,極めて稀な疾患と考えられた.
  • 金子 高明, 井上 育夫, 安野 憲一, 川野 裕, 田中 英穂, 長谷川 章雄, 福田 淳
    2003 年 64 巻 11 号 p. 2787-2790
    発行日: 2003/11/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    小腸gastrointestinal stromal tumor (以下GIST)は比較的稀な疾患である.今回われわれは, 4回の手術により長期生存が得られている1症例を経験したので報告する.症例は57歳,女性.当院産婦人科にて卵巣腫瘍の診断にて手術中,空腸に腫瘍を指摘され空腸部分切除を施行した.組織学的診断はGISTの診断を得た.術8, 11年後に肝転移にて肝切除を施行し,術13年後に残肝再発の増大と下大静脈浸潤を伴う後腹膜転移が認められ,下大静脈合併肝切除術を施行し良好な結果を得た. GISTは比較的局所に限局した再発形式をとる傾向があり,発育は徐々にかつ膨張発育で,全身状態の低下も比較的緩徐であるとされている.その点を考慮に入れ,たとえ体外循環を必要とする手術であっても,可及的切除は長期生存を期待する上で考慮すべき方法と考える.
  • 金澤 旭宣, 杉本 真一, 曳野 肇, 徳家 敦夫, 尾崎 信弘
    2003 年 64 巻 11 号 p. 2791-2793
    発行日: 2003/11/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は58歳,男性.検診にて便潜血陽性を指摘され精査目的にて当院紹介となった.小腸透視にて回腸末端から7cmに可動性良好な有茎性腫瘤陰影を認めたため大腸内視鏡を施行.ポリープは腺腫の診断を得たが近傍に扁平な隆起性病変を認め,内視鏡的粘膜切除が困難であったため腹腔鏡下に回腸部分切除を施行し早期回腸癌の診断を得た.術後良好に経過し退院された.早期小腸癌は稀な疾患であり治療方針も大腸癌に準じて個々の症例に対応しているのが現状である.過去の報告では内視鏡的切除や開腹術が多く行われているが今回われわれは腹腔鏡下手術を施行し症例を経験したので報告した.
  • 安藤 修久, 只腰 雅夫, 水野 豊, 安藤 秀行, 大池 恵広
    2003 年 64 巻 11 号 p. 2794-2797
    発行日: 2003/11/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    爪楊枝誤飲による消化管穿孔は稀で,患者が誤飲を自覚していないことが多く,爪楊枝がX線透過性であることから術前診断は困難とされる.今回われわれは術前診断が可能であった手術症例を経験した.患者は59歳の女性,右下腹部痛を主訴に来院した. 3日前に爪楊枝を誤飲したとの自覚があった.右下腹部に圧痛を認めたが,腹膜刺激症状は認めなかった.血液検査では軽度の炎症所見を認めるのみであった.入院時の単純X線,上部消化管内視鏡, USおよびCTでは異物を認めず,消化管穿孔の所見も明らかでなかったため,自然排泄を期待して保存療法を行った.しかし,入院6日目に再施行したUSにて爪楊枝と思われる線状の高エコー像を, CT上でも爪楊枝様の陰影を認めた.緊急手術が施行され,上行結腸から穿孔する爪楊枝を確認した.本邦では爪楊枝による消化管穿孔はこれまでに14例の報告を認めるのみである.これに自験例を加えて臨床的考察を加えた.
  • 光辻 理顕, 山本 隆久, 中井 亨, 三浦 順郎
    2003 年 64 巻 11 号 p. 2798-2801
    発行日: 2003/11/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    われわれは子宮内避妊具(intrauterine device,以下IUD)が原因と考えられる骨盤放線菌症により, S状結腸の全周性狭窄をきたした1例を経験した.症例は52歳,女性.左下腹部痛,月経過多を主訴に婦人科受診. 30歳頃より子宮内避妊具を装着.子宮筋腫を認めたが,発熱と腹痛の増強で緊急入院し,婦人科にて手術を施行.骨盤内癒着高度で試験開腹に終わる.注腸, CT検査などによりS状結腸に約8cmの全周性狭窄を認め, S状結腸癌などを強く疑い再手術施行した.子宮後面とS状結腸との癒着が高度で, S状結腸狭窄部と子宮を一塊に摘出した. S状結腸漿膜側に腫瘤を認め,病理組織学的検索にて放線菌の菌塊が証明された.
  • 内本 和晃, 福岡 敏幸, 松本 寛
    2003 年 64 巻 11 号 p. 2802-2806
    発行日: 2003/11/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    偽膜性大腸炎は保存的治療にて治癒することの多い疾患であるが,中には重症化する症例も存在する.重症偽膜性大腸炎は死亡率の高い予後不良の疾患である.ショックや多臓器不全をきたした場合には,緊急手術が必要となることもある.今回われわれは全身状態が悪化し,緊急で結腸亜全摘術を行い救命できた重症偽膜性大腸炎の1例を経験したので報告する.
    症例は73歳,男性.近医にて発熱,下痢に対してCFDN, CTMが投与された.その後腹痛増強し当院紹介され,急性腸炎の診断でFMOXを投与した.入院翌日,腹膜刺激症状を認めたため試験開腹したところ,腹水の貯留と大腸の浮腫のみであったので抗生剤治療を継続した.術後2日間にわたり集中治療を行ったが,次第に全身状態が悪化し,緊急に結腸亜全摘術を決行し全身状態が改善した.
  • 板橋 哲也, 樋口 太郎, 大塚 幸喜, 藤澤 健太郎, 旭 博史, 斉藤 和好
    2003 年 64 巻 11 号 p. 2807-2811
    発行日: 2003/11/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は21歳,男性. 18歳からの3年間で3回の結腸穿孔を認め,手術により救命しえたMarfan症候群およびEhlers-Danlos症候群の特徴を有する1例を経験したので報告する.既往歴: 1歳時左鼠径ヘルニア. 20歳時自然気胸.家族歴:特記事項なし.身体的所見:身長180.1cm,体重64.0kg, arm-span 179.5cm,細長い指趾でありMarfan症候群に認められる所見であった.切除標本の病理組織では穿孔部大腸の粘膜固有筋層の菲薄化が散見され,これはEhlers-Danlos症候群に多く認められる所見であった.本症例は多彩な臨床像を有し,先天性結合織代謝異常症として分類される前述の2症候群が考えられた.生命予後は両症候群共に比較的良好であるが,それには病変の早期発見・早期治療,日常生活指導が重要である.本症例も今後の厳重な経過観察が必要であり,若干の文献的考察を加えて報告する.
  • 上林 洋二, 長谷部 行健, 小池 淳一, 西田 祥二, 永澤 康滋, 大谷 忠久
    2003 年 64 巻 11 号 p. 2812-2815
    発行日: 2003/11/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    腸閉塞を契機に発見された高齢者Crohn病の1例を経験したので報告する.症例は74歳,女性.腹痛,下痢を主訴に外来受診,腸閉塞の診断にて入院となった.入院後イレウス管を挿入し減圧療法を開始するも改善傾向がみられず,大腸内視鏡にて横行結腸に広範囲にわたる全周性狭窄を認めたため手術を施行した.開腹所見では,横行結腸肝曲部から下行結腸脾曲部近くまでの狭窄を認めた.小腸に異常所見は認めなかった.狭窄部結腸を切除するため拡大右半結腸切除を施行した.肉眼所見では漿膜は肥厚し,粘膜に縦走潰瘍を認めた.病理所見では粘膜下層に達する潰瘍を認め,一部非乾酪性類上皮肉芽腫細胞を認め, Crohn病と診断した.高齢者に発症するCrohn病は比較的稀な疾患であるので,若干の文献的考察を加えて報告する.
  • 龍沢 泰彦, 寺田 卓郎, 石田 善敬, 清水 淳三, 川浦 幸光
    2003 年 64 巻 11 号 p. 2816-2820
    発行日: 2003/11/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は50歳の男性で,突然発症した腹痛のため当院救急外来を受診した.下腹部中心に腹膜刺激症状を認めたが,血液生化学的検査は異常なく,腹部CT上free airや腹水は認めなかった.その後も症状は軽快せず,再度施行した腹部CTにて骨盤腔内に少量の腹水を認めたため,消化管穿孔による腹膜炎の疑いにて緊急手術を施行した.少量の腹水と,直腸に全周性の腫瘍を認め, S状結腸は暗赤色に変色し,漿膜下からS状結腸間膜内に糞便が貯留していた.直腸癌による閉塞性大腸炎, S状結腸間膜内への穿通と診断し, Hartmann手術を施行した.肉眼的に5.3×3.6cmの亜全周性の2型腫瘍と,その口側に正常粘膜を介して8.0×6.5cmの穿通部を認めた.病理組織学的に主病巣は中分化腺癌であり,穿通部の漿膜下層には好中球浸潤,鬱血,出血が認められた.術後経過は良好で, 3カ月後に人工肛門閉鎖術を施行した. 3年10カ月経過した現在,再発の徴候を認めていない.
  • 馬場 將至, 西原 政好, 石田 雅俊, 金井 俊雄, 篠山 喜昭
    2003 年 64 巻 11 号 p. 2821-2824
    発行日: 2003/11/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    2年4カ月の経過で腺腫から2型進行癌類似の早期癌へと進展した直腸の側方発育型腫瘍(LST)の1例を経験した.症例は83歳,男性.糖尿病で通院中,鉄欠乏性貧血を認め便潜血検査陽性であったため, 2000年2月に大腸内視鏡検査(以下CF)を施行し,直腸(Ra) LST顆粒結節型を認めた.生検で腺腫であり経過観察した.同年8月に同部LSTに対して内視鏡的粘膜切除(EMR)を施行した. 2001年2月のCFでRaにLSTの再発を認めたが腺腫の診断で経過観察した.同年8月に同部LSTの一部が絨毛状に変化しており部分的EMRを施行した.病理検査でfocally adenocarcinoma in tubulovillous adenomaであり経過観察後, 2002年6月のCFで同部LSTの中に2型様腫瘍を認めた.直腸癌の診断にて低位前方切除術を施行した.病理組織所見はmoderately differentiated adenocarcinoma with tubulovillous adenoma. sm, n0であった. LSTから進行癌への進展を考える上で役立つ症例と思われる.
  • 福沢 太一, 北村 道彦, 遠藤 義洋, 鈴木 雄, 河合 賢朗, 高津 尚子
    2003 年 64 巻 11 号 p. 2825-2828
    発行日: 2003/11/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は74歳,女性.平成12年1月右鼠径部の腫瘤にて発症.生検にて悪性腫瘍由来と診断されたが,原発巣が同定されず経過観察となった.同年8月,直腸診で肛門管内に硬結を触知し再度精査,肛門周囲皮膚浸潤を伴う肛門管癌,肝転移と診断された.皮膚科にて肛門周囲皮膚生検を施行後,同年9月11日, Miles手術,肝部分切除を施行した.組織学的にはPagetoid spreadを伴う肛門腺より発生した肛門管腺癌であった.患者は術後1年9カ月後に再発,肝転移によって死亡した. Pagetoid spreadを伴う肛門管癌は稀であり,診断が困難なこと,予後不良であることから文献的考察を加え報告した.
  • 塩入 誠信, 鈴木 裕之, 山下 純男, 安田 典夫, 石川 文彦, 諏訪 敏一
    2003 年 64 巻 11 号 p. 2829-2833
    発行日: 2003/11/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は65歳,男性.胃癌に対し胃全摘を施行,病理組織診断は低分化腺癌であった. 3年後に全周性の直腸狭窄を認め,びまん浸潤型直腸癌を否定しえず腹会陰式直腸切断術を施行した.胃癌組織像と比較し,形態的特徴の酷似および粘膜面が正常で,かつ腫瘍占拠部位が粘膜下層を中心としているため,最終的に胃癌の直腸転移と診断した.
    胃原発びまん浸潤型転移性直腸癌の頻度は少なく,本邦では自験例を含めて15例の報告があった.診断に難渋するため集学的診断を必要とした.
    胃癌の腹膜播種による直腸転移を実証することは困難であった.このため本症例の経過を観察することは重要であると思われた.
  • 宇野 浩司
    2003 年 64 巻 11 号 p. 2834-2836
    発行日: 2003/11/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    直腸肛門部無色素性悪性黒色腫は稀で予後不良な疾患である.今回報告する症例は71歳,男性で下血を主訴として来院した.歯状線のすぐ口側にある隆起性病変は肉眼的には淡赤色であった.直腸鏡下生検では低分化型腺癌であり,腹会陰式直腸切断術を施行した.腫瘍は1型,大きさは4.5×4.2×1.0cmで組織学的進行度はmp, P0, H0, n1 (+)であった.病理組織学的にはHE染色ではメラニンの産生は明らかでなかったが, HMB-45, S-100に陽性であり,無色素性悪性黒色腫と診断された.肝転移のため術後1年10カ月に死亡した.
  • 中山 隆盛, 白石 好, 西海 孝男, 森 俊治, 磯部 潔, 古田 凱亮
    2003 年 64 巻 11 号 p. 2837-2840
    発行日: 2003/11/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は, 52歳,男性.右鼠径部腫瘤を自覚した.単なる鼠径ヘルニアではなく精索腫瘍と診断された.腫瘍は切除され,病理診断は腺癌であった.追加の精査により盲腸癌が原発巣であることが明らかとなった.右半結腸切除が施行され,病理診断はn0, ss,中分化腺癌, ly2, v0であった.大腸の術後6カ月に腹膜転移が明らかとなり,化学療法,温熱療法および放射線治療を施行するも,術後22カ月に死亡転帰となった.
    鼠径ヘルニアに対する注意深い肉眼的および病理組織学的検査は潜在癌の検診として必要かつ重要であると考えられた.
  • 鈴木 裕之, 諏訪 敏一, 山下 純男, 安田 典夫, 尾本 秀之, 石川 文彦, 瓦井 美津江
    2003 年 64 巻 11 号 p. 2841-2844
    発行日: 2003/11/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は53歳,女性,主訴は上腹部痛で,血液検査では軽度の肝機能異常を認めた.超音波では肝左葉に巨大な嚢胞性腫瘍を認め,腹部CT, MRI上も径12cmの辺縁が淡く造影される嚢胞性病変を認めた.肝嚢胞腺癌の疑いで手術を施行した.開腹所見は肝左葉から前区域にかかる厚い皮膜を伴う嚢胞性腫瘍で,肝拡大左葉切除術を施行した.組織学的には異型核を有する紡錘形細胞が増殖し,腫瘍内に胆管上皮の存在を認め,肝未分化肉腫の診断であった. 22病日退院し,外来通院中3カ月目に自宅で突然呼吸停止をきたし来院するも蘇生せず,剖検にて肺動脈起始部に約3cmの腫瘍塞栓を認め,この部が死因と判断した.組織学的にも肝未分化肉腫と同一の所見であった.成人発症の肝未分化肉腫はきわめて稀であり,その肝切除後に肺動脈腫瘍塞栓という特異的な死因で突然死した貴重な症例を経験したので,若干の文献的考察を加え報告する.
  • 大塚 由一郎, 金子 弘真, 岡本 康介, 戸倉 夏木, 伊原 文恵, 柴 忠明
    2003 年 64 巻 11 号 p. 2845-2849
    発行日: 2003/11/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は63歳,男性.総胆管結石症のため19年前に経十二指腸乳頭括約筋形成術およびTチューブドレナージ術を受けた.逆行性胆管炎を繰り返した後,腹部超音波検査にて肝左葉に径9cmの腫瘍を認めたため入院となった.血中CA19-9は1, 272.5U/mlと上昇していた.腫瘍はCTにて不規則に造影される低吸収域として,血管造影では乏血性の腫瘍としてみられた.内視鏡的逆行性胆管造影では左側肝内胆管の狭窄像を認め,肝内胆管癌を疑い肝拡大左葉+S1切除兼胆管切除,右肝管空腸吻合術を施行した.病理診断は肝内転移を有する末梢型の中分化型胆管細胞癌であった.随伴する慢性胆管炎と肝内結石は腫瘍発生の誘因として考えられた.術後経過は良好であったが, 17カ月目に再発のため死亡した.経十二指腸乳頭括約筋形成術による乳頭機能廃絶のため招来される逆行性胆管炎は胆管癌発生との関与が指摘されており,経過観察には十分な注意を要する.
  • 塚原 明弘, 小山 俊太郎, 田中 典生, 武田 信夫
    2003 年 64 巻 11 号 p. 2850-2854
    発行日: 2003/11/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は73歳の女性.右季肋部痛を主訴に近医に入院した.血液検査上,白血球増多と肝機能異常を認めた.またCTで胆嚢の腫大を認めたため,胆嚢炎の診断にて経皮経肝胆嚢ドレナージを施行.ドレナージチューブからの造影にて胆管・胆嚢管合流部に陰影欠損を示したため当院紹介となった.胆管腫瘍を疑い,胆嚢摘出術,肝外胆管切除術およびRoux-Y再建による肝管空腸吻合術を施行した.腫瘍は9×7 mmと7×7 mm大の2病変で,病理組織学的にはどちらも管状腺癌高分化型で,深達度はmであった.術後経過は特に問題なく退院となり,現在外来通院中である.
    無黄疸で診断された早期胆管癌の報告は少なく,文献的考察を加え報告する.
  • 竹中 芳治, 春日井 尚, 宮島 伸宜, 酒井 滋, 山川 達郎
    2003 年 64 巻 11 号 p. 2855-2860
    発行日: 2003/11/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は43歳の男性.心窩部痛と嘔吐を主訴として入院した.膵酵素の上昇とアルコール性膵炎の既往から慢性膵炎の急性増悪と診断し,保存的治療を開始した.腹部CTでは膵頭部外側に小嚢胞性変化を伴うlow density areaと十二指腸球部の著明な拡張を認め,腹部MRIではgroove領域に限局した小嚢胞性病変,十二指腸球後部の壁肥厚を認めた. MRCPでは総胆管膵部の壁は平滑な管状狭窄がみられたが,主膵管は正常であった.上部消化管内視鏡では十二指腸球後部での高度の狭窄を認めた.腹部血管造影では腫瘍濃染像,異常血管像を認めなかった.以上の画像診断と臨床経過から十二指腸狭窄を伴ったgroove pancreatitisを強く疑ったが,計約3カ月の保存的治療にても十二指腸狭窄は改善をみないため,全胃温存膵頭十二指腸切除術を施行した.病理学的検索では膵石や蛋白栓による副膵管閉塞を伴ったgroove pancreatitisと診断した.
  • 今里 光伸, 矢野 浩司, 衣田 誠克, 門田 卓士, 岡本 茂
    2003 年 64 巻 11 号 p. 2861-2864
    発行日: 2003/11/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    脾炎症性偽腫瘍の1例を経験したので報告する.症例は51歳の男性で,健診にて脾腫瘤を指摘され受診.脾下極に径80mmの腫瘤を認めたため,治療的診断的意義を兼ねて,用手的腹腔鏡補助下脾臓摘出術(hand-assisted laparoscopic surgery; HALS)を施行した.病理組織学的に脾炎症性偽腫瘍と診断した.脾炎症性偽腫瘍は極めて稀であり,悪性腫瘍との鑑別診断が困難である.確定診断は術後の病理組織診断によるため,脾臓摘出が治療的意義と同時に診断的意義を有し,予後も良好である.
  • 田村 光, 高塩 〓, 金井 信行
    2003 年 64 巻 11 号 p. 2865-2868
    発行日: 2003/11/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    経過中腫瘍マーカーの上昇を認め,破裂が疑われた稀な脾嚢胞の1例を経験した.症例は33歳,女性.腹部膨満感を主訴に近医受診.腹水を認め,血清CA19-9: 8,400U/ml, CA125: 570U/mlと高値を示した.悪性疾患を疑い精査したが,脾内に小嚢胞を認める以外明らかな病変を認めず,腹水消失とともにマーカー値も低下した. 8カ月後両側腹部痛で当院受診し, CTで脾内に径11cm大の嚢胞を認めた.血清CA19-9のみ61U/mlと軽度上昇していた.嚢胞の穿刺内容は漿液性で,腫瘍マーカーは, CA19-9: 10,000U/ml以上, CA125: 42,000U/mlであった.穿刺により嚢胞は一旦縮小したものの,短期間で再び増大した.症状が改善しないことに加え,悪性の疑いも否定しきれず,開腹下に脾摘術施行.摘出脾は125gで,内部に11×5cm大の嚢胞を認め,嚢胞内面を覆う上皮は,単層扁平~重層扁平上皮が基本で悪性所見は認めず,上皮性嚢胞と診断された.術後腫瘍マーカーは正常化した.
  • 重田 英隆, 長嶋 孝昌, 平松 和洋, 水上 泰延, 新美 清章
    2003 年 64 巻 11 号 p. 2869-2872
    発行日: 2003/11/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    Stamey手術後に発生した難治性骨盤内膿瘍を経験したので報告する.症例は57歳,女性.主訴は右鼠径部痛である. 1988年に腹圧性尿失禁に対しStamey手術をうけた. 1998年8月より右鼠径部痛が出現し,当科を受診した.右大腿ヘルニアの診断で手術が施行されたがヘルニア嚢はなく,メッケル憩室が膀胱背部に癒着し,その部に残糸と膿瘍を認めた.憩室切除,残糸摘出,ドレナージ術が施行された. 2000年2月骨盤内膿瘍が再燃した.経皮的膿瘍ドレナージ術が施行され軽快したが,その後も軽快再燃をくりかえしていた. 2001年1月に瘻孔切除術が施行されたが軽快しなかった. retrospectiveにみると初回CTより膿瘍深部に径5×6 mmのリング状石灰化が存在しており,この異物による骨盤内膿瘍を疑った. CTガイド下に経膣的に異物をマーキングし,除去できた.異物はStamey手術で使用された人工血管グラフトであった.以後膿瘍や尿失禁の再発を認めていない.
  • 熊谷 佑介, 岡田 稔, 岩本 明美, 栗栖 泰郎, 豊田 暢彦, 岩永 幸夫
    2003 年 64 巻 11 号 p. 2873-2878
    発行日: 2003/11/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    成人における軟部組織肉腫のなかで悪性線維性組織球腫(MFH)は最も頻度が高いが,後腹膜に原発するものは稀である.症例は53歳,男性.突然の左下肢腫脹にて当院受診.下肢静脈エコーにて大腿静脈が閉塞しており,左下肢深部静脈血栓症と診断され入院となった.腹部CTにて左骨盤後腹膜に8 cm大の腫瘍を認め,左外腸骨動静脈,尿管を巻き込んでおり,左水腎症を併発していた.臨床的に肉腫と診断し,手術を施行した.手術は外腸骨動静脈,尿管と腫瘍を一塊に切除し,左腎摘出も行った.組織診断にて悪性線維性組織球腫(通常型), stage IIIbと診断された.術後にcisplatin, doxorubicin, ifosfamide併用化学療法を1クールを終了した後, CTにて局所再発および転移を認めず退院となった.術後11カ月を経て再発を認めていない.
  • 今村 秀, 安蘇 正和, 三井 信介, 坂田 久信, 加藤 秀典
    2003 年 64 巻 11 号 p. 2879-2882
    発行日: 2003/11/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は54歳女性で,平成15年3月31日,昼頃から発熱と腹痛が出現増悪し, 39℃の高熱と嘔吐を伴うようになったため,救急車にて同日夜緊急入院となった.入院後,抗生物質投与と点滴治療を行ったが,翌日早朝,ショック状態となった.緊急開腹手術を行ったが,汚濁した腹水貯留と下部回腸の発赤腫脹があったのみで,原発性腹膜炎の所見であった.手術終了後,大量点滴と昇圧剤使用にもかかわらず,血圧の安定維持が困難となった.重症のエンドトキシンショックと判断し,大量輸液,抗生剤投与を継続しながら,深夜,輸血,エンドトキシン吸着療法を行ったところ,血圧が安定し,尿量が増加した.翌日2回目のPMX-DHPを行い,昇圧剤の減量が可能となり,ショック状態から脱した.以後順調に回復し,術後28日目に退院した.術中の腹水細菌培養検査で,激症型A群溶連菌が検出された.
  • 原田 直樹, 西尾 吉正, 豊田 紘生
    2003 年 64 巻 11 号 p. 2883-2887
    発行日: 2003/11/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    Spigelヘルニアは腹横筋が筋成分から腱膜に移行する半月線上と腹直筋外縁との間のSpigel筋膜に発生する稀な腹壁ヘルニアの1つである.今回われわれは,左右両側にSpigelヘルニアを認めた症例を経験したので報告する.症例は60歳,女性.以前より虫垂炎術後の腹壁瘢痕ヘルニアを指摘されるも放置していたが,右側の腫瘤の脱出が頻回になり嘔吐,疼痛を伴うようになり来院.来院時右下腹部を中心として臍下部にかけての小児頭大の腫瘤と左下腹部に5cm大の膨隆を認めた.手術創部近傍であり,当初腹壁瘢痕ヘルニアの診断で手術施行.手術所見では,弓状線より尾側で外腹斜筋腱膜下に左右両側に手術痕部と異なる位置に,腹膜前脂肪織を被ったヘルニア嚢が確認された.両側Spigelヘルニアと診断し,手術はヘルニア門をMarlex meshを用いて閉鎖し終了した.術後経過順調で,術後より1年の現在再発の徴候は認められていない.
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