日本臨床外科学会雑誌
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65 巻, 1 号
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  • 玉城 信光, 長嶺 信治, 宮良 球一郎
    2004 年 65 巻 1 号 p. 1-5
    発行日: 2004/01/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    I.乳癌術後の79症例に超音波検査(US)でリンパ節を認めた. USによるリンパ節像を1:円形・楕円形型, 2:ドーナツ型, 3:三日月型の3型に分類した. USによるリンパ節像と細胞診による転移検出との関係は円形・楕円形型51例中15例に転移あり,ドーナツ型24例と三日月型4例では転移を認めなかった.転移リンパ節の長径は5mmから45mmで中間値は7.4mmであった.
    II.術前にドーナツ型,三日月型のリンパ節を呈する例とUSでリンパ節の認められないとした51例に色素単独法によりセンチネルリンパ節生検を施行した. 51例中8例は迅速組織診で転移を確認し, 5例は永久標本で転移を認めた. 12例が3mm以下の微小転移で3例は複数リンパ節転移を認めた.
    USにより術前のリンパ節転移の診断と所見をもとにセンチネルリンパ節生検の適応者の選択とその転移可能性の推定を行うことは有用である.
  • 小田和 理恵, 小熊 英俊, 喜多村 陽一, 高崎 健, 板橋 正幸
    2004 年 65 巻 1 号 p. 6-9
    発行日: 2004/01/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    【目的】胃原発広義GISTの手術適応におけるKITレセプターの臨床的意義を検討した.【対象】1987年~2001年に切除した胃原発広義GIST75例.【方法】LSAB法にてα-SMA, s-100蛋白, KITレセプターの免疫染色を行った.【結果】(1) Rosai分類いずれの群にも悪性例を認めた.(2)腫瘍径4 cm未満の症例に約40%の悪性例を含む.(3)全症例の76%がKITレセプター陽性.(4) KITレセプター陰性例に悪性例なく,陽性例中63%が悪性例.(5)再発8例全例にKITレセプター陽性.【結論】広義の胃GISTは腫瘍径で手術適応を判断してきたが, KITレセプター陰性症例に悪性例を認めない結果より生検可能であればKITレセプター染色性により手術適応を判断でき,特に腫瘍径の小さい粘膜下腫瘍の手術適応の判断に有用である.
  • 宇都宮 高賢, 堀地 義広, 菊田 信一, 柴田 興彦
    2004 年 65 巻 1 号 p. 10-18
    発行日: 2004/01/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    直腸肛門周囲膿瘍を形成し来院した303例のうち根治手術を行った266例の膿瘍部位269カ所について,単純切開排膿後2カ月目の切除瘻管の組織について検討した.直腸肛門周囲膿瘍の発生は, 6時位の内外括約筋間が多く,筋間痔瘻を形成するが,一部では外括約筋を貫く症例も認められた.直腸肛門周囲膿瘍の型と痔瘻形成時の型とは有意な関係を認めたが,痔瘻形成時には筋間を貫く症例や反対に縮小する症例もあった.根治手術時の組織型は瘻管閉鎖型(28%),瘻管形成型(46%),膿瘍併存型(25%),広範囲膿瘍型(1%)に分類出来た.この際,二次口を形成した症例は71%,瘻管形成型,膿瘍併存型では二次口形成が多いが, 19%に二次口は認めなかった.以上の結果から,直腸肛門周囲膿瘍の切開排膿後痔瘻化しない症例もあり,さらに瘻管の閉鎖したと思われる症例があるものの瘻管の組織型を現時点で術前に鑑別することは臨床上困難であると思われた.
  • 田中 芳明, 溝手 博義, 中溝 博隆, 浅桐 公男, 秋吉 建二郎, 鶴 知光, 疋田 茂樹
    2004 年 65 巻 1 号 p. 19-27
    発行日: 2004/01/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    慢性肝機能障害に対するcoenzymeQ10(以下CoQ10)経口投与の治療効果を検討する目的で,胆道閉鎖症術後12例を対象にCoQ10を1.6mg/kg/day, 100日間投与した. CoQ10の投与前後に,血中superoxide dismutase (SOD)活性, manganese (Mn)-SOD濃度,尿中8-hydroxydeoxyguanosine, 8-isoprostane濃度,肝機能を測定した.また,健常小児6例,喫煙成人6例の計12例を対照に投与前値を比較した. CoQ10の投与前,全例でSOD活性は高値で, insulin-like growth factor (IGF)-1, Type IV collagen値の異常5例はSOD活性, Mn-SOD濃度が異常高値を呈した. Mn-SODが200ng/mL以上の7例は, 200以下の症例に対し尿中酸化ストレスマーカーが有意に高値を呈した. Mn-SODはALT, AST, IGF-1値と強く相関した. CoQ10投与前の酸化ストレスマーカーはすべて,対照群より有意に高値を呈した.投与後は酸化ストレスマーカー,肝機能が改善傾向を呈し, CoQ10投与は酸化ストレスによる細胞傷害の防御に有用と考えられた.
  • 藤田 武郎, 間野 正之, 大村 泰之, 西 英行
    2004 年 65 巻 1 号 p. 28-33
    発行日: 2004/01/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    1982年から2002年までに当科で経験した112例の急性期~亜急性期の深部静脈血栓症に対してカテーテル血栓溶解療法を外科的血栓摘除術,全身的血栓溶解療法と比較検討した.発症1週間以内の腸骨一大腿静脈の深部静脈血栓症に対しては1997年までは外科的血栓摘除を施行, 1998年以降は原則としてカテーテル血栓溶解療法を施行した.また発症より1週間以上経過している症例や膝窩静脈以降が病変の主体となっている症例では原則として全身的血栓溶解療法を行った.カテーテル血栓溶解療法施行群は他の治療群と比較して血栓の完全消失率に関しては有意に良好で,治療中に生じた肺塞栓症発生率も有意に低かった.治療部位の再発率は低い傾向にあったが有意差は認めなかった.今後,本治療法の長期的予後とともに施行部位,適応期間などについて更なる症例の集積による検討が必要と考えられた.
  • 関野 考史, 山田 卓也, 岩田 尚, 松尾 浩, 白橋 幸洋, 吉田 直優
    2004 年 65 巻 1 号 p. 34-37
    発行日: 2004/01/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    甲状腺癌が静脈内に腫瘍塞栓を形成することは稀である.症例は77歳,男性.胸部単純X線写真の異常を指摘され,縦隔腫瘍の疑いで,当科紹介入院となった.超音波検査, CTで甲状腺左葉下極から縦隔にかけて気管を右方に圧排する5cm大の腫瘤を認め,左内頸静脈内に血栓あるいは腫瘍塞栓の存在が疑われた. CTガイド下生検では明らかな悪性所見を認めなかったが,左内頸静脈腫瘍栓あるいは血栓を伴う縦隔内甲状腺腫瘍の術前診断で,甲状腺左葉切除術を行った.左中甲状腺静脈が拡張,緊満し,腫瘍塞栓が左中甲状腺静脈から左内頸静脈に伸展していた.同部位の左内頸静脈を合併切除した.病理組織検査で濾胞癌と診断された.甲状腺癌が中甲状腺静脈を介し,内頸静脈に腫瘍塞栓を形成することは極めて稀である.術後8カ月の現在,無再発生存中であるが,予後不良の可能性があり,注意深い経過観察が必要である.
  • 伊藤 勅子, 清水 明, 熊木 俊成, 青木 孝學, 春日 好雄, 小林 基弘
    2004 年 65 巻 1 号 p. 38-41
    発行日: 2004/01/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    甲状腺乳頭癌初回手術後35年目に上腹部皮下に単発の転移性腫瘍をきたした1例を経験したので報告する.症例は73歳の女性.甲状腺乳頭癌で35年前に甲状腺全摘術および頸部リンパ節郭清術が行われた.上腹部皮下の腫瘍は15×15mm大で,比較的軟らかく,可動性良好であった.穿刺吸引細胞診ではclass V,甲状腺乳頭癌からの転移が疑われた.頸部リンパ節,骨,肺転移を認めなかったため,腫瘍が摘出された.低分化の甲状腺乳頭癌であり,サイログロブリンの免疫染色にて陽性所見であった.甲状腺乳頭癌の血行性遠隔転移は舌,皮膚,脳などの報告が散見されるが,稀であり,本症例も血行性転移が推測された.
  • 岡本 直子, 長内 孝之, 柿本 應貴, 鳥屋 洋一, 五味 直哉, 杉原 健一
    2004 年 65 巻 1 号 p. 42-45
    発行日: 2004/01/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は25歳,女性.右乳房腫瘤と乳房痛を主訴に来院した.局所所見では,右乳房CD領域に径25mm大の弾性硬,辺縁および表面平滑,可動性良好な腫瘤を触知した.乳房レントゲン検査では,同部位にspiculationを伴う不整形の腫瘤を認めた.内部に石灰化は認めなかった.乳房超音波検査では内部比較的均一な腫瘤を認めたが,正常との境界は不明瞭であった.乳房MRI検査では, dynamic studyにて漸増パターンを示す不整形の腫瘤を認めた.術前針生検では, HE染色にてmyofibroblastomaを疑うも,特殊染色(α-SMA陽性, CD34陰性, desmin陰性)にて否定的であった.確定診断を得るため,鏡視下腫瘍切除術を施行した.病理組織学的検査では,紡錘形の細胞からなる結節性の病変で異型細胞は認めず結節性筋膜炎と診断した.
  • 成田 洋, 伊藤 誠, 杉浦 元紀, 加藤 克己, 佐野 正明, 宇佐見 詞津夫
    2004 年 65 巻 1 号 p. 46-51
    発行日: 2004/01/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は77歳,女性.既往歴として7年前に左乳癌にて胸筋温存乳房切除術を受けた.組織型は浸潤性小葉癌でStage II A (T1N1)であった.以後再発徴候はみられなかった.今回イレウス症状にて入院.原因不明の小腸イレウスとして開腹術をおこなった.手術所見では回盲弁より35cm口側の回腸に壁の肥厚,硬化を伴う全周性狭窄を認めた.摘出標本の病理所見では乳癌由来と考えられる腫瘍細胞が全層性に浸潤し, ER陽性, PgR陰性, HER2/neu (+)で乳癌の小腸転移と診断された.乳癌の小腸転移はその末期状態で生じる場合が多く,外科的治療の対象になることは少ない.因みに手術のなされた乳癌小腸転移例は本邦では14例を数えるのみであった.
  • 坂本 雅樹, 山川 洋右, 三宅 孝, 神谷 保廣, 小林 徹, 真辺 忠夫
    2004 年 65 巻 1 号 p. 52-55
    発行日: 2004/01/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は67歳の女性で,胸腺腫に対し拡大胸腺摘出術を施行した.組織学的にはWHO分類のtype ABで,臨床病期はI期であった.退院後外来にて観察していたが,術後3カ月に全身倦怠感を訴え,血液検査で貧血を認めた.骨髄検査にて赤芽球をほとんど認めず,赤芽球癆と診断された.輸血により自覚症状は消失し,確定診断後プレドニゾロンの内服を開始したが貧血は改善せず,追加の輸血を必要とした.サイクロスポリンの内服を開始したところ貧血は改善し,現在サイクロスポリン投与量を漸減しつつある.
    胸腺腫に赤芽球癆や重症筋無力症を合併することはよく知られているが,胸腺腫摘出後に赤芽球癆を発症した報告は少ない. PRCAと胸腺腫との関連につき考察を加えた.胸腺腫摘出後も赤芽球癆や重症筋無力症などの発症に注意して経過観察する必要がある.
  • 兄弟3人破裂例の1家系
    本山 博章, 増田 雄一, 野垣 晴彦, 宮本 康二, 稲田 潔
    2004 年 65 巻 1 号 p. 56-59
    発行日: 2004/01/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    患者は82歳,男性で,嘔吐,腹痛を訴え救急車で搬送されてきた.軽度の貧血,頻脈を認めたが,血圧低下はなかった.腹部には超手拳大の拍動性腫瘤を触れ,腹部CT検査にて腹部大動脈瘤と後腹膜血腫を認め,緊急開腹術を施行した.径9cmの動脈瘤を処理し, I型人工血管で修復した.家族歴で兄および弟が12年前に当院で同じ手術を受けていた.
    腹部大動脈瘤患者の一親等に関する家族内発生は,欧米の文献では10~20%の頻度と報告されているが,本邦では本症例を含め数家系が報告されているに過ぎない.家系内発生例は通常の例よりやや若年で発症し,女性例がやや多く,特に破裂の頻度が高い事が特徴とされている.予防対策として腹部大動脈瘤患者の家族について,腹部超音波検査によるスクリーニングを行う必要がある事を強調した.
  • 重松 千普, 高橋 知秀, 近藤 俊彦
    2004 年 65 巻 1 号 p. 60-63
    発行日: 2004/01/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    今回われわれは月経随伴性気胸の稀な1例を経験したので報告する.
    症例は39歳,女性.平成15年3月5日呼吸困難を訴え,右気胸の診断で近医より紹介入院した. 2月にも他院で気胸の診断をうけ,保存的に治療された. 2回とも月経周期に一致している事より月経随伴性気胸が強く疑われたが,胸部CT上右肺尖部に気腫性変化もみられたため,胸腔鏡下手術を施行した.肺尖部に黒褐色嚢胞様隆起がありこれを切除し,また横隔膜に多数の小孔を広範囲に見たため,切除は断念し縫合閉鎖した.病理組織的には子宮内膜組織はなかったが,ヘモジデリンの沈着と小出血病変がみられ,間接的に内膜組織からの出血を示唆するものと考えられた.再発予防のため酢酸ブセレリンのホルモン療法を開始した.現在のところ再発はなく,経過良好である.
  • 川上 万平, 時津 浩輔, 橋本 隆彦
    2004 年 65 巻 1 号 p. 64-67
    発行日: 2004/01/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    肺アスペルギローマは内科的治療に抵抗性を示すことも多く,大量喀血が致命的となることもあるので外科的治療の対象となる症例は少なくない.その治療成績を含め臨床的に検討した.対象は2002年12月までに手術施行した8例で,男女それぞれ4例,平均年齢は57.8歳であった. 6例が基礎疾患として肺結核症の既往歴を有していた.血痰・喀血を主訴にするものが多かった.肺癌合併例および開胸肺生検例を除く6例に術前に抗真菌剤の投与を行ったが有効性に乏しく,また副作用も出現したため外科的治療の適応となった.全例肺切除(肺葉切除6例,肺全摘除1例,肺部分切除1例)が可能であった.術後,重篤な合併症はなく社会復帰可能であった.外来加療中,輸血によると思われる劇症肝炎により1例を失った以外は,再発兆候なく順調に経過し,良好な結果が得られた.
  • 野口 忠昭, 上野 正紀, 宇田川 晴司, 福田 俊, 澤田 寿仁, 渡邊 五朗
    2004 年 65 巻 1 号 p. 68-71
    発行日: 2004/01/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    大動脈弓部への浸潤と診断された食道癌患者に対し食道大動脈瘻の危険性が高いと判断し,大動脈ステントを予防的に留置した.症例は70歳,男性.嚥下困難を主訴に入院した.化学放射線療法による治療中に大動脈浸潤と診断されたためステントを留置した.ステントは高いflexibiltyを持つMatsui-Kitamuraステント(MKステント)®を使用した.その後食道縦隔瘻からの肺炎が重篤となり死への転機をとった.病理解剖で食道大動脈瘻を認めたが,大動脈ステントで完全にカバーされており出血はなかった.大動脈浸潤食道癌に対する予防的ステント留置を試みて有効であった1例を経験したので報告する.
  • 寺田 武史, 柁原 宏久, 渡辺 学, 浅井 浩司, 片桐 美和, 炭山 嘉伸
    2004 年 65 巻 1 号 p. 72-76
    発行日: 2004/01/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    Gastrointestinal stromal tumor (GIST)に対しImatinib Mesilate (STI571)の開発により,その有効性が認められているが,劇的な効果の裏に,様々な副作用出現で,投与中止,休薬せざるを得ない結果を招いていることも事実である.今回,胃原発GISTに対しSTI571投与し,外来にて経過観察中,胃穿孔性腹膜炎を併発した症例を経験したので報告する.症例72歳,女性.平成13年10月,胃原発の平滑筋肉腫の診断で手術施行.以後多発性肝転移,腹膜播種出現.免疫染色にて, c-kit (+)であることが判明.平成14年11月よりSTI571 (400mg/day)投与を開始した.投与後1カ月でPR以上の著明な縮小を見せ,外来経過観察中であったが,投与6カ月後,急激な腹痛を主訴に来院.胃穿孔性腹膜炎であった.同薬剤の開発は画期的な進歩であるが,顕著な治療効果のあまり副作用に関しての報告は少ない.これらの観点から貴重な症例と考え報告する.
  • 堀 智英, 岡田 喜克, 町支 秀樹, 宗行 毅, 永井 盛太, 岸和田 昌之
    2004 年 65 巻 1 号 p. 77-82
    発行日: 2004/01/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    胃空腸吻合術後35年目に発生した多発胃癌の1例を経験したので報告する.症例は78歳,男性,主訴は心窩部痛. 43歳時に十二指腸潰瘍にて手術の既往(詳細不明).心窩部痛にて近医を受診.胃内視鏡検査にて前庭部小彎に2型,体下部後壁に5型の腫瘍を認め,生検にてGroup Vであったため,当科を紹介され入院.術前検査では十二指腸潰瘍の術式の情報は得られなかった.多発胃癌の診断にて手術を施行.手術所見では体下部後壁に胃空腸吻合がなされ,同部に硬い腫瘍を触知した.吻合部空腸を含めた幽門側胃切除を施行しR-Y法にて再建した.切除標本所見では前庭部小彎と体下部後壁に2型腫瘍を認め,吻合口は体下部後壁の腫瘍にて完全閉塞し空腸側に浸潤していた.病理組織学的には前庭部病変はtub1, mp,体下部病変はpor2, seでn0, fStage II,根治度Aであった.術後経過は良好で,術後5年5カ月目の現在再発の徴候を認めず建在である.
  • 毛利 紀章, 深谷 俊介, 安田 顕, 松本 幸三, 水野 勇, 品川 長夫
    2004 年 65 巻 1 号 p. 83-86
    発行日: 2004/01/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は85歳男性で肺疾患にて通院中であった.心窩部痛,嘔気・嘔吐を繰り返したため精査入院となった.入院時血液検査では低蛋白血症と腫瘍マーカーの高値を認めた.上部消化管内視鏡検査と上部消化造影検査で8×7cmの胃前庭部腫瘤の十二指腸への嵌入が認められ,腹部CTでは肝S6にLDAを認めた.以上よりAFP産生胃癌の十二指腸嵌入および肝転移と診断した. Poor risk症例であることを考慮し, #4d, 6のリンパ節郭清を伴う胃部分切除と肝楔状切除を選択した.その後は化学療法も施行せずに, 1年8カ月再発を認めていない.胃癌の十二指腸嵌入は多くは前庭部から幽門部に発生した隆起性早期胃癌であり,自験例では噴門の弛緩や十二指腸の拡張から比較的早期に嵌入し,そのまま進行癌へ発育していったとも考えられた.
  • 河野 文彰, 関屋 亮, 篠原 立大, 中平 孝明, 中島 健, 鬼塚 敏男
    2004 年 65 巻 1 号 p. 87-92
    発行日: 2004/01/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    当科で経験した胃腺扁平上皮癌6例について報告し,臨床病理学的に検討した.発生頻度は全胃癌症例652例のうち0.91%であった.平均年齢は75.7歳,男性5例,女性1例であった.腫瘍の肉眼型は3型が4例, 2型が1例, 4型が1例と潰瘍形成型が多く,腫瘍径は平均10.2cmで4例においては全周性の発育を認めた.壁深達度はT4が3例, T3が2例, T2が1例で,全例2群以上の肉眼的リンパ節転移を認めた.手術術式は5例に胃全摘術, 1例に幽門側胃切除術が施行されたが,根治度Aのものはなく, 3例においては腹膜播種,癌遺残を認め根治度Cとなった.予後は4例が術後1年3カ月以内に再発死亡しているが,他病死したものの2年4カ月無再発と比較的長期生存例もあった.病理組織学的には原発巣は混在型を呈しており,一部に中・低分化型腺癌から扁平上皮癌への移行像を認めた.腺癌の扁平上皮癌化生説を支持するものと考えられた.
  • 成清 道博, 高 済峯, 向川 智英, 青松 幸雄, 桑田 博文, 中島 祥介
    2004 年 65 巻 1 号 p. 93-97
    発行日: 2004/01/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は50歳,男性.平成7年に十二指腸に発生したgastrointestinal stromal tumor (以下GIST)に対し,十二指腸部分切除を施行した.病理学的にはGIST, uncommitted typeでlow grade malignancyと診断された.その後再発を認めなかったが平成14年3月背部痛を主訴に近医受診し超音波検査で肝S7に径6 cm大の腫瘍を指摘された.当科での精査の結果,十二指腸平滑筋肉腫の肝転移と診断され,同年5月1日,肝右葉切除術を施行した.病理組織検査で, GISTの肝転移と診断され,原発巣に比して悪性度が高まっている所見がみられた.術後経過は良好であり退院後1年の経過観察中再発なく生存中である. Low grade malignancyと診断された原発巣切除後7年を経過して肝転移をきたしており, GIST症例における長期間の慎重なfollow upの必要性が示唆された.
  • 大町 貴弘, 水崎 馨
    2004 年 65 巻 1 号 p. 98-102
    発行日: 2004/01/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    早期に肝転移を認めた十二指腸乳頭部腺扁平上皮癌の1例を経験したので若干の文献的考察を加えて報告した.症例は74歳,女性.数日間続く悪寒,嘔吐,皮膚の黄染を主訴に前医を受診.閉塞性黄疸の診断にて当院紹介となった. PTBDによる減黄の後,十二指腸乳頭部癌の診断で幽門輪温存膵頭十二指腸切除術(PPPD-IIIa)を施行した.病理組織診断は十二指腸乳頭部腺扁平上皮癌, AcAbBi, panc1 α, du1 α, n0, w0, stage IIであった.自験例は治癒切除をしたにもかかわらず,術後5ヵ月目に複数の肝転移巣を認めた.本邦報告18例による検討においても,乳頭部腺扁平上皮癌は病期にかかわらず予後不良であると推測された.
  • 椎木 滋雄
    2004 年 65 巻 1 号 p. 103-106
    発行日: 2004/01/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    進行癌との鑑別を要したPeutz-Jeghers症候群の1例を経験した.症例は25歳男性で,主訴は嘔吐と腹痛. PJ症候群との診断で21歳時に小腸ポリープ切除を受けている.小腸造影では狭窄はみられなかったが,散在するpolypの存在を認めた.イレウスの診断にて開腹手術を施行した.回腸末端より口側150cmの部に径3.5×2.5cm大で硬く,漿膜面に混濁を伴う不整な隆起性病変を認め,小腸癌の合併が否定できないため,小腸部分切除を施行した.組織学的診断は腺上皮のmisplacementで悪性所見はみられなかった.患者は術後5年を経過し現在,経過良好である.
  • 久保田 雅博, 小野 崇典, 高宮 博樹, 堀 晴子, 荒川 正博, 白水 和雄
    2004 年 65 巻 1 号 p. 107-111
    発行日: 2004/01/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    空腸起始部の狭窄をきたした腸結核の1例を経験したので報告する.症例は72歳,女性.空腸狭窄による嘔吐,脱水症および膵炎と診断され近医入院.ウリナスタチン投与とIVH管理で症状改善したため,精査目的で当院転院となる.低緊張性十二指腸造影では,十二指腸下行部の著明な拡張と水平部からTreitz靱帯にかけての粘膜不整像および空腸起始部の全周性狭窄を認めた. CT・MRI・血管造影検査では明らかな腫瘍性病変は認めず,炎症性腸疾患による空腸狭窄と診断し,空腸切除術を施行した.開腹所見は, Treitz靱帯から約6cmの空腸が全周性に狭窄し短縮していた.また,小指頭大の腫大したリンパ節を認めた.病理組織検査にて狭窄部,リンパ節ともにLanghans型巨細胞を伴う肉芽腫を認め,空腸結核と診断された.非腫瘍性の腸閉塞は,炎症性腸疾患,特に腸結核を念頭におくことが大切であると思われた.
  • 本田 晴康, 津澤 豊一, 川田 崇雄, 熊谷 嘉隆
    2004 年 65 巻 1 号 p. 112-116
    発行日: 2004/01/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は32歳,男性.突然嘔吐を伴う上腹部激痛が出現し当院救急外来受診.上腹部が軽度膨満し,圧痛著明,筋性防御を認めた.腹部X線検査で鏡面像を認め,腹部CT検査で上腸間膜動脈周囲を小腸が渦巻き状に巻き込む腫瘤像(Whirl sign)が認められた.絞扼性イレウスと診断し,発症4時間半後に緊急手術を施行した.小腸は腸間膜根部で時計回りに360°捻転しており,ほぼ全域にわたって赤褐色にうっ血していたが,壊死には陥っておらず,捻転解除のみで手術を終了した.術後2カ月で癒着性イレウスを生じ, 10日間の保存的治療を要した.本症例は癒着や異常索状物,腸回転異常などに起因せず,原発性小腸軸捻転症と診断した.本邦では成人の原発性小腸軸捻転症は稀であり,本症例を含めて46例が報告されている.診断には腹部CT検査が有用と思われる.
  • 北岡 文生, 伊藤 俊哉, 石津 要, 山家 仁, 青木 浩一
    2004 年 65 巻 1 号 p. 117-121
    発行日: 2004/01/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    腸閉塞をきたし,手術を要した小腸型Chilaiditi症候群の1例を経験した.症例は80歳,女性.腹痛にて当院受診, Chilaiditi's signを伴った腸閉塞を認め第2病日に手術を行った.開腹所見では,右肝表面と横隔膜間に一条の繊維性索状物を認め,その頭側に回腸が嵌入していた.手術では嵌入腸管を整復したが小腸切除を必要とはしなかった. Chilaiditi症候群は通常のX線撮影で発見されるのは稀で,臨床的意義も乏しい.しかし小腸型Chilaiditi症候群は絞扼性イレウスの原因となりやすいことから手術適応を考慮すべきと考えられた.
  • 吉川 幸造, 原田 雅光, 河崎 秀樹, 酒井 堅, 西浦 三郎, 喜安 佳人
    2004 年 65 巻 1 号 p. 122-125
    発行日: 2004/01/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    Ehlers-Danlos症候群(以下EDS)は皮膚の過伸展性,弛緩性,関節の過伸展性,皮膚血管の脆弱性を3主徴とする結合組織疾患である.全部で10型あるが,特にIV型では動脈破裂,動脈解離,大腸穿孔などの生命を脅かす合併症がある.われわれEDS IV型で腸間膜内に出血をきたし外科的に切除した症例を経験したので報告する.症例は29歳,女性で下腹部痛を主訴に受診となった.造影CTなどで膿瘍を疑い手術となった.開腹所見では上行結腸肝彎曲部の腸間膜側に鶏卵大の嚢胞様病変を認め,右半結腸切除を行った.切除標本では腸間膜に被胞化された血腫を認めた.組織学的には血管の平滑筋構造の消失を認め血管の脆弱性を示唆した.術後経過は良好であり現在再発などを認めていない. EDS IV型では血管脆弱性のために多くの合併症が報告されており手術の際には十分な注意が必要である.
  • 児島 祐, 松本 壮平, 瀧 順一郎, 吉田 英晃
    2004 年 65 巻 1 号 p. 126-129
    発行日: 2004/01/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は80歳,女性.排便時出血,腫瘤脱出を主訴に当科を受診した.直腸肛門指診で直腸前壁に軟腫瘤を触知した.内視鏡検査で肛門縁から5cmの下部直腸に亜全周性の隆起性病変を認めた.隆起は前壁を中心に存在し,発赤,びらんを伴っており,直腸の炎症性腫瘤と診断した.内視鏡的に経過観察を行ったところ, 6日後には腫瘤は全て消失し,全周性,帯状の浅い潰瘍に変化していた. 2週間後には潰瘍はやや縮小し, 4週間後には潰瘍瘢痕になっていた.典型的な病理組織所見は得られなかったが,症状,内視鏡所見から直腸粘膜脱症候群(mucosal prolapse symdrome: MPS,以下MPS)と診断した.急激な潰瘍形成が観察されたMPSの報告は稀であり,文献的考察を加えて報告する.
  • 本間 英之, 田中 修二, 木原 一, 広田 正樹
    2004 年 65 巻 1 号 p. 130-134
    発行日: 2004/01/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は54歳,女性.左下腹部痛を主訴に受診.発熱および腹膜刺激症状を認め,腹部骨盤腔CTで, S状結腸の著明な壁肥厚と腸管周囲の脂肪組織の高吸収域を認めた.保存的に加療後改善し,経口摂取も可能となり退院に至ったが,退院後8日目に再度発熱,腹痛出現.原因不明の骨盤内膿瘍およびS状結腸狭搾の診断にてS状結腸切除術を施行した.病理診断では結腸間膜脂肪織炎の診断であった.一般に腸間膜脂肪織炎は保存的加療に反応し,予後は良好とされているが本例の如く,再燃の後に腸管切除を要する症例の報告もあり,保存的加療後に症状の改善を見た場合でも,その後の注意深い観察が重要と思われた.
  • 竹内 正昭, 柳瀬 晃, 亀井 英樹, 牟田 文彦, 笹栗 靖之, 白水 和雄
    2004 年 65 巻 1 号 p. 135-138
    発行日: 2004/01/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は77歳の女性.右下腹部痛を主訴に受診された.右下腹部に自発痛,圧痛を伴う弾性硬の腫瘤を触知した.炎症反応の上昇を認め,腹部CT検査にて回盲部付近に7×7cm大の多房性の腫瘤影を認め周囲は被膜に覆われ,内部は隔壁様構造を呈し液性成分を有していると思われた.注腸造影検査,大腸内視鏡検査にて,盲腸を平滑に圧排する腫瘍性病変を認めた.抗生剤の点滴投与と絶食により炎症反応は改善し,腹部CT検査再検にて腫瘤は4×4cm大と縮小傾向を認めたが,腫瘤内部構造に変化はなく,虫垂粘液嚢胞腺癌の術前診断のもと右結腸切除術(D2)を施行した.摘出標本病理検査では,回盲部の黄色肉芽腫性炎であった.黄色肉芽腫性炎の消化管および虫垂での発症例は極めて稀である.本症は回盲部に発症した極めて稀な1例であり,若干の文献的考察を加え報告する.
  • 吉本 裕紀, 清水 良一, 佐伯 俊宏, 原田 俊夫, 前田 祥成
    2004 年 65 巻 1 号 p. 139-142
    発行日: 2004/01/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    術前診断できた盲腸軸捻症の1例を経験した.症例は74歳,男性.腹痛を主訴に近医を受診,イレウスの診断で治療中に腹部膨隆が著明となり紹介となった. X線検査,腹部CT検査より右側結腸軸捻転症と診断し,腹部所見が軽度であったため,まず大腸内視鏡での整復を試みた.上行結腸にて完全に閉塞しており,内視鏡より造影剤を注入するとbird's beak signが認められた.内視鏡的に整復は困難であったため,盲腸軸捻症による腸閉塞の診断で手術を施行した.開腹すると穿孔部はなく,盲腸部は腸間膜を中心に時計周りに180度捻転し小腸が盲腸の尾側より右傍結腸溝に入り込んでいた.腸管を整復,減圧したところ,腸管の色調が回復したため腸切術をせず,盲腸・上行結腸を後腹膜に固定し手術を終了した.術後問題なく退院,現在まで再発は認めていない.
  • 東 幸宏, 中村 利夫, 砂山 健一, 丸山 敬二, 今野 弘之, 中村 達
    2004 年 65 巻 1 号 p. 143-146
    発行日: 2004/01/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    潰瘍性大腸炎は,種々の全身合併症を伴うが,大腸以外の消化管に病変が併存することは稀である.われわれは,食道潰瘍を合併した潰瘍性大腸炎の1例を経験した.症例は19歳,男性.倦怠感を主訴に近医を受診した.貧血を認めたため上部消化管内視鏡を施行したところ上切歯列より25cmの食道に孤立性の浅い潰瘍を認めた.その後,腹痛,下痢が出現し徐々に増悪したため,下部消化管内視鏡検査を施行したところ全大腸に易出血性で連続性のびらんを認め,潰瘍性大腸炎と診断した. H2受容体拮抗剤およびサラゾスルファピリジンの投与にて食道病変は改善したが,大腸病変はステロイドの大量静注療法などの施行にもかかわらず増悪し,大腸全摘術を施行した.両者の関連性は明らかではないが,潰瘍性大腸炎では大腸以外の消化管のチェックも重要である.
  • 坂口 博美, 加藤 真, 青山 吉位, 飯田 有二, 窪田 智行, 渡邊 智仁
    2004 年 65 巻 1 号 p. 147-151
    発行日: 2004/01/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は66歳の女性.腹痛を主訴に当院を受診したが,ショックを認めたため緊急入院した.腹部造影CTでは左側結腸に全周性の腫瘤による狭窄とそれより口側の腸管の拡張および腹水を認めた.大腸癌イレウスによる切迫破裂を疑い緊急手術を施行, S状結腸癌イレウスに伴う閉塞性大腸炎と診断し結腸亜全摘術を施行した.術後は低血圧が遷延したため多量のカテコラミン,利尿剤を投与した.第9病日に腹腔内ドレーンより小腸内容の流出を認めたため再手術を施行した.上腸間膜動脈の拍動は触知したが小腸は散在性に腸間膜の対側が壊死していたため, nonocclusive mesenteric ischemia (NOMI)と診断し小腸広範囲切除術を施行した.術後にショックが遷延すればNOMIの合併を念頭に入れた厳重な術後管理が必要である.
  • 青山 圭, 宮崎 正二郎, 藤田 徹, 糟谷 忍, 亀岡 信悟, 古川 喜一郎
    2004 年 65 巻 1 号 p. 152-156
    発行日: 2004/01/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    症例1: 64歳,女性.検診にて便潜血陽性を指摘され,精査にて下行結腸脾彎曲部の粘膜下腫瘍と診断,下行結腸部分切除を施行した.病理結果は低悪性度のMALTリンパ腫であった.症例2: 61歳,女性.腹痛,嘔吐にて当院受診し,腸閉塞の診断にて入院.開腹にて小腸の多発性潰瘍性狭窄認められ, 3カ所の小腸部分切除を施行した.病理結果は3カ所とも低悪性度のMALTリンパ腫であった.大腸・小腸MALTリンパ腫は稀である.特徴的な病理像と免疫染色により診断されるが,病態が不明なことから厳重な経過観察が必要である.
  • 永井 哲, 田中 伸之介, 池田 丈明, 池田 靖洋, 小嶋 伸夫
    2004 年 65 巻 1 号 p. 157-160
    発行日: 2004/01/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は53歳,女性.発熱,腹痛,腹部膨満感を主訴に来院.下腹部に圧痛,腹膜刺激症状を認め,腹部US, CT, MRI検査では二個の充実性腫瘤を含む巨大な嚢胞性病変を認めた.腹膜偽粘液腫を伴う虫垂粘液嚢胞腺癌を疑い開腹した.多量の粘液貯留が予測されたが,腹腔内には膿性腹水が充満していた.腹水を除去すると白苔と粘液塊に覆われた二個の手拳大の蜂巣状腫瘍を認めた.右半結腸切除術を予定したが炎症による組織の脆弱化のため腸管吻合は危険と判断し粘液除去および腫瘍摘出術とした.病理診断は虫垂粘液嚢胞腺癌であった.術後6カ月目に手術創から粘液の漏出を認め,その後同部は直径約3cmの瘻孔を形成した.術後2年6カ月が経過した現在も粘液の漏出が持続している.膿性腹水の原因は明らかではないが,虫垂の穿孔や破裂,腫瘍の消化管浸潤によって腸内細菌が腹腔内に漏出したものと考えられた.
  • 立山 健一郎, 二村 直樹, 安村 幹央, 丸井 努, 松友 将純, 関野 考史
    2004 年 65 巻 1 号 p. 161-163
    発行日: 2004/01/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は66歳の男性. 1999年6月11日に右側横行結腸癌で結腸右半切除術を施行した.術前高かったCEAは術後1カ月で正常化した.以後, 3カ月ごとの採血および腹部USで経過観察していたが,腫瘍マーカーの上昇は認めず再発の徴候はなかった. 2000年4月に施行した腹部USおよびCT検査で,大動脈と下大静脈間に左腎静脈を巻き込むように腫瘍を認め,大動脈周囲リンパ節転移と診断した.上部下部消化管内視鏡検査で異常なく,各種画像所見で多臓器転移は認めなかった.限局した大動脈周囲リンパ節再発と診断して同年5月22日大動脈周囲リンパ節郭清術を施行し第14病日に退院した.以後良好なQOLが維持された.再手術後2年6カ月後に上腸間膜動脈根部リンパ節に再発を認めたが,初回手術から約4年経過して担癌生存中である.大腸癌の大動脈周囲リンパ節転移再発に対しての外科的切除を行い,良好なQOL維持が得られた症例を経験したので報告する.
  • 新関 浩人, 中村 文隆, 道家 充, 樫村 暢一
    2004 年 65 巻 1 号 p. 164-167
    発行日: 2004/01/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は84歳,女性.パーキンソン病のため終日臥床.開腹歴はなし.腹部膨満と嘔吐を主訴とし救急搬送され,腹部CTで小腸・大腸の拡張と門脈ガスを認めた.圧痛・筋性防御はなく麻痺性イレウスを疑った.しかし,痴呆・難聴のため意志疎通が困難であり,腸管壊死を否定するために試験開腹とした.開腹所見では腸管の虚血はなく麻痺性イレウスの所見であった.イレウス管を挿入し大量の腸液と腸管ガスを吸引し終了した.術後9日目のCTで門脈ガスは消失した.また,術中の触診で疑われたS状結腸癌を精査後, S状結腸切除術を施行し退院となった.
    門脈ガス血症は腸管壊死などに伴う予後不良の兆候とされてきたが,自験例のように腸管壊死を伴わない例の報告も増加している.その原因によっては慎重な経過観察が可能であると考えられた.
  • 中澤 秀明, 杉山 譲, 清野 景好, 馬場 俊明, 小堀 宏康, 佐々木 睦男
    2004 年 65 巻 1 号 p. 168-171
    発行日: 2004/01/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    先天性胆道拡張症(以下,本症)の手術術式は,嚢胞切除および胆道再建術が標準術式とされている.この術式は併存する膵・胆管合流異常に対する分流手術としても合目的であり,現在,最良の手術方法と考えられている.しかし術後長期経過例の増加に伴い,再手術例の報告が散見されるようになってきた.今回本症術後20年目に発生した肝内結石症の1例を経験した.患者は21歳,女性.昭和53年,生後3カ月時に本症の診断にて胆摘,総胆管切除,総肝管空腸吻合術(ρ型)を施行された.平成12年10月頃より発熱,腹痛が頻発し,精査の結果左肝内結石症と診断され,肝左葉切除, Roux-en-Y式右肝管空腸吻合術を施行した.肝内結石症の原因は,肝内胆管に明らかな狭窄がないことにより吻合部の相対的狭窄によるものと推測された.初回手術時にはこのことを念頭に入れた胆道再建術が必要と思われた.
  • 山本 和義, 清水 潤三, 桝谷 誠三, 龍田 眞行, 石田 秀之, 古河 洋
    2004 年 65 巻 1 号 p. 172-174
    発行日: 2004/01/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    中肝静脈をパッチグラフトとして使用した,下大静脈合併切除拡大肝左葉切除術を施行した症例を経験したので報告する.【症例】61歳の男性.主訴は腹部膨満感,心窩部痛.近医受診し,上行結腸癌および転移性肝癌疑いにて当科紹介受診となった.イレウス状態であり,まず回盲部切除術を施行したのち,転移性肝癌に対する精査加療目的にて再入院となった.造影CTにて, S1に約5 cm大, S5に約1.5cm大の腫瘍を認め, S1の腫瘍が下大静脈へ浸潤している可能性があった.手術は下大静脈合併切除拡大肝左葉切除術を施行した.右肝静脈流入部より尾側で下大静脈を遮断し,同部位を切除.切除肝の中肝静脈をバックテーブルにてパッチグラフトとして切除・形成し,下大静脈欠損部を修復した.術後経過は良好で,現在外来にて補助化学療法を施行中である.【結語】自己静脈をパッチグラフトとして使用し,安全に下大静脈欠損部を修復しえた.
  • 金本 秀行, 上坂 克彦, 伊在井 淳子, 前田 敦行, 江畑 智希, 古川 敬芳
    2004 年 65 巻 1 号 p. 175-179
    発行日: 2004/01/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は73歳,女性. 2000年2月に他院でS状結腸癌に対しS状結腸切除術, 2001年10月に肝S7の転移性肝癌に対し計3回のマイクロ波凝固療法を施行された.以後CT上は明らかな再発を認めず,予防的肝動注化学療法を施行していた. 2002年9月当院初診時のCTでは,腫瘍はほぼ壊死に陥っていると判断した.その一部にわずかな造影効果を示す2cm大の領域を認めたが,再発の確定診断には至らなかった. F-18-fluorodeoxyglucose positron emission tomography (FDG-PET)では同部に強い集積を認めたため(standardized uptake value: max 6.77, average 3.69),局所再発と診断し2002年11月28日肝右葉切除術を施行した.病理組織学的にもFDG-PETの集積部位に一致した局所再発を認めた.大腸癌肝転移に対する焼灼療法後の再発の評価は, CTなど従来の形態画像診断では困難な場合がある.本例においては,その診断に代謝情報に基づくFDG-PETが有用であった.
  • 松田 正裕, 漆原 貴, 山木 実, 下門 清志, 住元 一夫
    2004 年 65 巻 1 号 p. 180-184
    発行日: 2004/01/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は69歳,男性.平成11年8月より慢性腎不全にて血液透析施行. HCV抗体陽性.平成14年10月定期検査の腹部超音波検査にて肝S2にモザイクパターンを呈する19×17mm大の腫瘤を認め,腹部CT・腹部MRI・血管造影にて肝細胞癌と診断. 11月28日腹腔鏡下肝部分切除術施行した.術後経過は良好で術後1日目より歩行および食事開始し,術後14日目に退院した.
    健常者に比べ血液透析患者はHCV抗体陽性率が高く,透析療法の進歩に伴い生存期間が延び,今後肝細胞癌の発生が問題となる可能性がある.
    今回われわれは,血液透析患者に合併した肝細胞癌に対し腹腔鏡下肝部分切除術を施行し,非常に良好な経過を得た.本術式は,低侵襲であり血液透析患者に対しても安全に行える術式であると考えられる.
  • 佐々木 啓成, 和田 敏史, 森谷 雅人, 山本 啓一郎, 土田 明彦, 青木 達哉
    2004 年 65 巻 1 号 p. 185-189
    発行日: 2004/01/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    症例1は74歳,女性.腹部単純X線および腹部CTにて胆嚢内と肝内胆管にガス像を認め,肝内胆管炎を伴う急性気腫性胆嚢炎と診断し緊急手術を施行した.総胆管および胆嚢内には結石を認めず,胆汁培養にてclostridium属が検出された.
    症例2は71歳,男性.腹部単純X線にてイレウス像を呈し入院.腹部CTにて急性気腫性胆嚢炎と診断し,外科的治療を強く勧めたが,抗生剤による保存的治療にて著明に症状が改善し,保存的治療のみで急性期を離脱した.
    症例3は65歳,男性.腹部CTにて胆嚢内ガスと腹腔内に少量のfree airを認め,急性気腫性胆嚢炎および腹膜炎と診断し,緊急手術を施行した.総胆管および胆嚢内には結石を認めず,胆汁および血液培養にてclostridium属が検出された.急性気腫性胆嚢炎を3例経験したので,若干の文献的考察を加え報告する.
  • 池田 英二, 辻 尚志, 名和 清人, 古谷 四郎, 平井 隆二, 森山 重治
    2004 年 65 巻 1 号 p. 190-194
    発行日: 2004/01/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    3年前に腹腔鏡下胆摘術の既往がある54歳,女性が1カ月間の下腹部痛と発熱を主訴に来院した.婦人科的な骨盤内膿瘍と診断され開腹術を施行,術中に婦人科的異常は認めず,膿瘍は回盲部後方から骨盤腔まで手拳大腫瘤を形成していた. S状結腸,回盲部が一塊となっており,膿瘍内には2本のステープルを触知した.腸管との関係の正確な評価は炎症性変化が強いため困難で,確実な手術効果を得るため回盲部, S状結腸切除術を施行した.摘出標本では一塊となった回盲部とS状結腸に囲まれる様に膿瘍腔が存在,一部盲腸内腔と交通しており,膿瘍内にはファイアした2個のステープルを認めた.組織学的に悪性所見はなかった.胆摘後と今回術後の腹部単純X線写真像の比較で右上腹部のステープルの移動が確認された.腹腔鏡下手術の施行にあたっては異物の遺残を極力避け,必要最小限のステープルの使用を心懸け,ステープル落下の際は回収を原則とすべきである.
  • 竹中 芳治, 石山 純司, 酒井 滋, 山川 達郎
    2004 年 65 巻 1 号 p. 195-199
    発行日: 2004/01/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は57歳,女性.当院内科での腹部超音波検査にて胆嚢隆起性病変を指摘され,精査加療目的で当科紹介入院.腹部超音波検査で胆嚢内に乳頭状に発育する隆起性病変を認め,腹部CT検査にて体底部内腔のほとんどを充満し比較的均一に造影されるsoft tissue density massを認めた. ERCP検査では膵胆管に明らかな異常所見を認めず,超音波内視鏡検査にて肝床部対側を主座とし,周囲臓器への明らかな浸潤を認めない胆嚢腫瘍と判断した.以上より肝・リンパ節転移を伴わない深達度SSの胆嚢癌の術前診断にて,胆嚢摘出術+肝床切除およびD2リンパ節郭清を施行した.腫瘍は4.5×4×2.5cmの結節型腫瘤で,病理組織学的には腫瘍の大部分が紡錘形細胞を主体としながらも特定の肉腫への分化を示さない肉腫様変化を伴った高分化型腺癌であった.肉腫様部分の免疫組織化学的検索により食道癌取扱い規約の癌肉腫の分類に準ずるとして真性胆嚢癌肉腫と診断した.
  • 松原 毅, 田原 英樹
    2004 年 65 巻 1 号 p. 200-203
    発行日: 2004/01/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は79歳,男性.食後嘔吐を繰り返し,全身状態の悪化に伴い意識障害も出現したため当院入院となった.精査施行も病変は指摘されず,また全身状態も改善したため経口摂取再開した.しかし,再び症状の増悪を認め小腸造影した結果,上部小腸に辺縁平滑な閉塞像を認めたため,小腸腫瘍を考慮し腹腔鏡補助下にて手術施行した. Treitz靱帯より約30cmの部位に閉塞部を確認し,腫瘍を疑い小切開を加え所属リンパ節を含め小腸部分切除術を施行した.病理組織学的に迷入膵より発生した腺癌と診断した.われわれの調べ得た限りでは,本邦6例目であり文献的考察を加え報告する.
  • 山本 寛斉, 宇高 徹総, 徳毛 誠樹, 水田 稔, 白川 和豊, 大屋 崇
    2004 年 65 巻 1 号 p. 204-208
    発行日: 2004/01/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    今回われわれは外傷による破裂を契機に発見され,血清CA19-9およびCA125の高値を呈した小児脾類表皮嚢胞の1例を経験したので報告する.症例は15歳,男児.腹部打撲による腹痛にて来院した.腹部CTにて著明な腹腔内貯留液と破裂した巨大な脾嚢胞を認めた.脾動脈造影では明らかな血管外漏出は認めなかったため一旦保存的治療を行った.血清CA19-9, CA125はそれぞれ214.5U/ml, 221.5U/mlと高値を示し,他臓器に異常を認めなかったため脾類表皮嚢胞と術前診断し,脾臓摘出術を施行した.嚢胞内のCEA, CA19-9, CA125はそれぞれ383.9ng/ml, >5000.0U/ml, 3041.1U/mlといずれも高値であった.病理組織では嚢胞内面は重層扁平上皮により裏打ちされており,脾類表皮嚢胞と診断した.免疫特殊染色(CEA, CA19-9, CA125)では,同上皮に一致して陽性所見を認めた.術後経過は良好で,術後1カ月での血清CA19-9, CA125は正常化していた.
  • 平良 勝己, 川上 浩司, 稲嶺 進, 當山 鉄男, 永吉 盛司, 与那覇 俊美
    2004 年 65 巻 1 号 p. 209-213
    発行日: 2004/01/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は56歳,男性.排尿時痛,残尿感を主訴に近医を受診し膀胱腫瘍疑いで当院へ紹介された.腹部超音波, CTで膀胱壁は15~20mmの範囲で全周性に肥厚していた.膀胱粘膜は正常で転移性膀胱腫瘍が疑われたが消化管に異常はなかったため精査目的で入院となった.入院時の超音波で膀胱壁肥厚は完全に消失していた. CTも同様の所見であったが虫垂と膀胱に癒着があり,膀胱内に遊離ガス像を認めたことから,初診時の膀胱壁肥厚は虫垂炎穿通が原因と判断し,虫垂切除術を施行した.術後の病理学的検索で虫垂憩室穿通による膀胱壁肥厚と診断された.本邦では虫垂憩室症の治療方針に一定の見解はなく諸家により意見の分かれるところであるが,本邦報告271例の検討より穿孔率は40%と高率であり,敗血症による死亡例の報告もあることから,炎症の存在が疑われる場合はもちろんであるが無症状例に対しても予防的虫垂切除を考慮すべきである.
  • 新田 智之, 池原 康人, 吉岡 晋吾, 冨田 昌良
    2004 年 65 巻 1 号 p. 214-217
    発行日: 2004/01/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は75歳の男性.右鼠径部膨隆を主訴に当院紹介受診.右鼠径部には用手還納不能な鶏卵大の比較的柔らかい腫瘤を認めたが,疼痛や排尿障害などの症状はなかった.腹部超音波にて膀胱の脱出を疑い,腹臥位造影CTにてヘルニア内容物は膀胱の一部と診断した.ヘルニア根治術(メッシュ・プラグ法)を施行した.嵌頓した膀胱を切除することなくヘルニア嚢とともに腹腔内に還納した.膀胱ヘルニアは全鼠径ヘルニアにおいて1~4%に認められるとの報告があるが,その多くは無症状であり術中に偶然に発見されることが多い.術中の膀胱損傷や膀胱合併切除となる症例も少なくないため,本例のように腹臥位CTにて術前に診断しえることは有用であると考えられた.
  • 吉藤 竹仁, 所 忠男, 井上 潔彦, 肥田 仁一, 安富 正幸, 奥野 清隆
    2004 年 65 巻 1 号 p. 218-221
    発行日: 2004/01/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は47歳,女性.平成9年5月市民検診で便潜血反応陽性を指摘された.注腸X線造影検査にて下部直腸後壁に粘膜面不整像を認めた.大腸内視鏡検査では肛門縁より10cmの部位に壁外性圧迫,粘膜下腫瘍を認めた.生検を施行したが再生上皮に覆われたびらん状の大腸粘膜組織であった.経過観察とし2カ月後再検査を施行した.同部位に前回より増大する壁外性圧迫,粘膜下腫瘍を認めた.悪性疾患を否定できず, 11月18日直腸粘膜下腫瘍の診断で低位前方切除術+左卵巣合併切除術を施行した.病理組織学的には粘膜下層から筋層に子宮内膜間質細胞が認められた.直腸間膜リンパ節内にも子宮内膜組織を認めた.腸管子宮内膜症で所属リンパ節に病変を伴うものは極めて稀な疾患である.腸管子宮内膜症のなかには比較的短期間に腫瘤が増大し,所属リンパ節迷入をきたして,悪性腫瘍との鑑別が困難である症例が存在することを若干の文献的考察を加えて報告した.
  • 国末 浩範, 横山 伸二, 金谷 欣明, 丸山 修一郎, 曽田 益弘
    2004 年 65 巻 1 号 p. 222-225
    発行日: 2004/01/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は66歳,男性.近医で腹部腫瘤を指摘され当科を紹介された.腹部CTにて下行大動脈右側の後腹膜腔に径9cmの多房性の腫瘤を認め, MIBGシンチにて腫瘤に一致して集積を認めた.平成13年10月19日,腫瘤摘出術を施行した.病理検査で傍神経節腫と診断された.腫瘍の一部は小細胞癌様の細胞が充実性に増殖しており悪性が疑われた.術後経過は良好で外来通院していたが12月12日頃より背部痛が出現し,腹部CTにて多発肝転移を認めた.その後急速に肝転移が増悪し, DIC,多臓器不全を生じ12月27日死亡した.術後早期に再発し,急速に増大する傍神経節腫は稀であり文献的考察を加え報告する.
  • 矢島 浩, 飯野 年男, 古川 良幸, 穴澤 貞夫, 矢永 勝彦
    2004 年 65 巻 1 号 p. 226-230
    発行日: 2004/01/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は26歳,男性.検診にて便潜血反応陽性を指摘され前医を受診した.直腸指診で直腸後壁左側寄りに弾性軟,表面平滑な粘膜下腫瘍様の腫瘤を触知した.骨盤CT検査および骨盤MRI検査では前仙骨部に辺縁整,境界明瞭な単房性嚢胞状腫瘤を認めた.骨盤内嚢胞の術前診断で,経仙骨的に尾骨を切除し嚢胞内容液を吸引して腫瘤を摘出した.大きさは最大径5cmで,内腔には泥状物質が充満し毛髪を認めた.病理組織学的に嚢胞壁は重層扁平上皮で被覆され,皮脂腺,汗腺,毛髪を認め皮様嚢腫と診断した.成人前仙骨部腫瘤は稀な疾患であり,なかでも皮様嚢腫は本邦9例目であった.
  • 早稲田 正博, 保田 尚邦, 神山 陽一, 御子神 哲也, 神坂 幸次, 草野 満夫
    2004 年 65 巻 1 号 p. 231-234
    発行日: 2004/01/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    結腸癌による消化管内瘻形成のなかでも結腸結腸瘻は稀である.今回,われわれは肺癌放射線治療後3年6カ月を経過し,横行結腸と下行結腸間に瘻孔を形成した結腸癌の1例を経験したので報告する.症例は59歳,男性.左上腹部痛を主訴に来院.腹部CTにて結腸脾彎曲部に壁の肥厚認め,注腸造影検査にて横行結腸,下行結腸間に瘻孔を認めた.結腸結腸瘻を伴う結腸癌と診断し手術施行した.開腹所見では,腫瘍は脾彎曲部に手拳大の腫瘤として触れ,胃体部,後腹膜に浸潤していた.臨床的病期stage IIIaと診断し,左半結腸切除(D3),腹膜合併切除,胃部分切除を施行した.組織学的にもstage IIIaであり,根治度Aが施行された.肝転移,腹膜播種,リンパ節転移は認めず,術後経過は良好で,術後3年10カ月経過した現在,明らかな再発徴候認めず外来通院中である.結腸結腸瘻を含め消化管内瘻を呈する結腸癌においても治癒切除により良好な予後が期待できると考えられた.
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