日本臨床外科学会雑誌
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65 巻, 12 号
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  • 田中 恒夫, 真次 康弘, 松田 正裕, 石本 達郎, 香川 直樹, 中原 英樹, 石川 哲大, 福田 康彦
    2004 年 65 巻 12 号 p. 3099-3104
    発行日: 2004/12/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    【目的】高齢者における消化器手術のリスク評価法としてPOSSUM scoreの有用性について検討した.【方法】1996年から2003年までに全麻下に手術を行った80歳以上の高齢者251例を対象とした.術後合併症のあり群(n=88)となし群(n=163)に分けて,術前因子,血液データ,手術因子, POSSUMの検討を行った.【結果】0.1%以下の有意差が認められた項目は白血球数,緊急手術,腹膜炎,およびPOSSUMのphysiological score (PS), operative severity score (OS), predicted mortality rate, predicted morbidity rateの7項目であった. PS 25点以上をhigh riskとすると,術後合併症発生率はhigh risk groupでは45/64 (70%)であり, low risk group (43/187, 23%)にくらべて有意に高率であった.【結論】高齢者における消化器手術のリスク評価の指標としてPOSSUM scoreは有用である.術前のPSにより術後合併症発生率のhigh risk groupを選定できる.
  • 中村 浩志, 羽生 丕, 川端 啓介, 木田 孝志, 加藤 奨一, 山本 修, 兼信 正明
    2004 年 65 巻 12 号 p. 3105-3109
    発行日: 2004/12/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    精神障害者の一部では精神症状や向精神薬の影響で身体疾患の発見が遅れることがある.急性虫垂炎についても診断の遅れから,臨床所見も様々に修飾されて来院する場合が少なくない.今回都立松沢病院で急性虫垂炎の手術を受けた精神障害者80例を対象とし,また友愛記念病院で急性虫垂炎の手術を行った一般患者95例をコントロールとして両群の臨床像や病理所見を比較検討した.主訴は両群とも右下腹部痛が多いが,精神障害者群の方が多彩な症状を訴えていた.発症から手術までの期間は精神障害者群で長かった.精神障害者群では一般患者群に比べ,全身麻酔による手術例が多く,開腹方法をみると交差切開が少なく傍腹直筋切開や正中切開が多かった.精神障害者群では術後合併症を有する症例も多くなっており,診断の遅れから進行した症例が多いことに起因すると考えられた.早期診断には日常生活での変化に気を付け,異常を見逃さない注意が必要と思われた.
  • 宇都宮 高賢, 柴田 興彦, 菊田 信一, 堀地 義広, 川野 豊一, 八尾 隆史
    2004 年 65 巻 12 号 p. 3110-3119
    発行日: 2004/12/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    痔瘻根治手術で得られた一次口より二次口に至る組織学的所見について,広範囲膿瘍型7人,膿瘍併存型36人,瘻管形成型25人,瘻管閉鎖型21人について連続切片を作成し検索した.痔核手術で得られた組織の肛門腺19例を対照とした.瘻管内に肛門腺を認めたのは60%で肛門腺上皮には円柱上皮と,扁平上皮化生を示すものとがあった.広範囲膿瘍型,膿瘍併存型,瘻管形成型の円柱上皮肛門腺は,細胞の大きさ,腺管外径,内径とも対照と比べて有意に大きかった.扁平上皮肛門腺では広範囲膿瘍型,膿瘍併存型,瘻管形成型で腺管外径は対照と比較して有意に大きく,内腔は瘻管形成型で閉鎖箇所を認め瘻管閉鎖型で全例閉鎖していた.肛門腺由来の痔瘻形成では,肥大した円柱上皮肛門腺を通して異物が反復侵入し炎症を起こし膿瘍を形成,炎症の中で腺管は扁平上皮化生することにより管腔は閉鎖し,異物の進入をくい止め炎症は消退する.反対に脂肪組織へ炎症が波及すると膿瘍は拡大すると推察された.
  • 山元 英資, 原田 雅光, 西蔭 三郎, 中田 哲夫, 上田 重春, 佐川 庸, 大畑 佳裕, 河崎 秀樹, 酒井 堅, 西浦 三郎, 喜安 ...
    2004 年 65 巻 12 号 p. 3120-3124
    発行日: 2004/12/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    外傷性膵損傷症例の診断・治療につき検討した. 1994年から2001年までの8年間に13例を経験し,これは全腹部外傷の5.9%に相当した.原因は,鈍的外傷が12例で交通事故が9例(69.2%)と最も多かった.他臓器損傷の合併例が11例(84.6%)にみられ肝臓が7例(53.8%)と最も多かった.診断は,発症機転,腹部理学所見,血清アミラーゼ値および腹部CT検査の経時的変化で行った.診断項目では,血清アミラーゼ値の経時的上昇が補助診断に有用で,腹部CTの直接間接所見の陽性率は53.8%であった.治療は,非手術療法6例,手術療法7例で,手術に移行できなかった1例を出血性ショックで失った.術後合併症は7例中3例(42.9%)にみられ,保存的治療で軽快し手術死亡例はなかった.外傷性膵損傷症例では,正確な術前術中の損傷形態分類の把握と,全身状態,局所所見に応じた適切な術式の選択,迅速な術後管理が重要である.
  • 堀江 徹, 高木 和俊, 永田 仁, 多賀谷 信美, 窪田 敬一
    2004 年 65 巻 12 号 p. 3125-3128
    発行日: 2004/12/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    腹膜刺激症状を呈した劇症型A群溶血性連鎖球菌感染症(toxic shock like syndrome: TSLS)の1例を経験したので報告する.症例は67歳の女性.腹痛を主訴に当院救急外来を受診した.腹部全体に圧痛と筋性防御とを認め,血液生化学検査では著明なCRP値の上昇と代謝性アシドーシスを認めた.以上より汎発性腹膜炎の診断にて緊急開腹手術を施行した.黄白色の混濁した腹水を認めたが腹腔内臓器に異常を認めず,ドレナージ術のみを施行した.術後高体温,呼吸不全,腎不全を認め集中治療室にて管理した.第3病日に血液よりA群溶血性連鎖球菌が検出されTSLSと診断した.抗生剤・免疫グロブリン製剤の投与,持続的血液濾過透析,吸着療法を施行したが第11病日に多臓器不全のため死亡した. TSLSが急性腹症を呈し開腹手術となることは少なく,本邦ではこれまで4例のみの報告であり,本症例が5例目であった.
  • 杉木 孝章, 大坪 毅人, 高崎 健
    2004 年 65 巻 12 号 p. 3129-3133
    発行日: 2004/12/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は71歳,女性. 1994年右耳下腺癌(腺様嚢胞癌)の診断にて右耳下腺拡大全摘出術を受けた.局所再発を認めず経過したが1998年超音波検査にて肝右葉に10cm大の腫瘍を指摘された.超音波および腹部CT検査にて腫瘍中心部を走行する門脈枝を認め,ドップラー超音波検査にて車軸状血流を認めfocal nodular hyperplasia (以下FNH)が疑われた.腫瘍生検の結果耳下腺癌肝転移と診断され肝拡大右葉切除術が施行された.再発なく経過するも2003年12月超音波検査にて腹腔内腫瘍および肝転移を指摘された.耳下腺癌の化学療法の奏効率は低く切除を考えて開腹したが,腹膜播種の状態にて切除不能であった.本症例は原発巣術後4年で肝転移,さらに5年後に腹膜播種をきたした.長い経過で遠隔転移を呈する耳下腺癌の特徴を考慮し,長期間にわたる慎重な全身follow upの必要性が示唆された.
  • 佐伯 宗弘, 石黒 清介, 伊藤 則正, 鈴木 喜雅, 谷口 雄司, 應儀 成二
    2004 年 65 巻 12 号 p. 3134-3136
    発行日: 2004/12/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は43歳,女性.検診で前頸部腫瘤を指摘され,石灰化を伴う甲状腺腫瘤の診断で手術を行った.術中に甲状腺腫瘤より甲状軟骨下角に連続する索状物を認め咽頭梨状窩瘻と診断し,できるだけ口側で索状物を結紮切離し腫瘤とともに摘出した.術後に食道透視を行ったが,明らかな瘻孔は確認されなかった.
    咽頭梨状窩瘻は幼少期に頸部膿瘍等で発見される疾患であり,無症状のまま成人期に甲状腺腫瘤で発見された例はわれわれが検索しえた限りでは本邦初報告である.また,自験例のように甲状腺腫瘤に連続する索状物を認めた場合は本疾患の可能性を常に疑い,術後の頸部膿瘍を防ぐために瘻管の閉鎖を確実に行う必要があると考えられた.
  • 橋本 泰司, 高村 通生, 坂下 吉弘, 岩子 寛, 繁本 憲文, 金 啓志
    2004 年 65 巻 12 号 p. 3137-3142
    発行日: 2004/12/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    嚢胞内腫瘍の形態を呈し,診断に苦慮した乳腺ductal adenomaの1例を経験したので報告する.症例は66歳の女性.検診の胸部CTにて右乳房腫瘤を指摘された.右乳房CDE領域に7×5cmの硬い腫瘤を触知,マンモグラフィーで線状石灰化を伴う多形性腫瘤を認め,カテゴリー5と診断した.超音波検査では, 6.5×5cm大の境界不整な嚢胞内腫瘍を認めた.針生検で, apocrine carcinoma, HER 2 (2+/IHC), ER(+), PgR(-)と診断した.しかし,一部に筋上皮様細胞の混在を認めたため良性腫瘍の可能性も考慮しインフォームドコンセントの上,胸筋温存乳房切除術を施行した.腫瘍は,乳管内に増生する腺管と線維性間質からなり,一部に偽浸潤像を認めた.増生する腺管は腺上皮細胞と筋上皮細胞の2相性が保たれており, ductal adenomaと最終診断した.本症を念頭におくとともに,その診断,治療にあたっては慎重な対応が必要であると思われた.
  • 有賀 浩子, 田内 克典, 小池 秀夫, 千須和 寿直, 岸本 浩史, 樋口 佳代子
    2004 年 65 巻 12 号 p. 3143-3147
    発行日: 2004/12/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は56歳の女性. 2002年12月に左乳腺腫瘤に気づき急激に増大したため受診.左EAB領域に6×6 cmの分葉状で境界明瞭な固い腫瘤を触知した.マンモグラフィでは分葉状で一部境界不明瞭,内下部に粗大で不整形な石灰化を伴う高濃度腫瘤を認めた.超音波検査では内部に無エコーやacoustic shadowを伴う高輝度エコーが混在する不整形腫瘤が存在し腫瘤に接して境界明瞭な円形小腫瘤を認めた.吸引細胞診では悪性を疑い,術中迅速病理診断で軟骨化生を伴う化生癌とされ乳腺全摘術とリンパ節郭清を施行した.病理診断は乳腺原発性骨肉腫で辺縁に線維腺腫を伴っていた.術後1年経過するが現在も再発所見はみられず,極めて稀な原発性乳腺骨肉腫の1例を経験したので報告する.
  • 池田 雅彦, 紅林 淳一, 園尾 博司, 中島 一毅, 田中 克浩, 大久保 澄子
    2004 年 65 巻 12 号 p. 3148-3151
    発行日: 2004/12/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    乳房dynamic MRIにて広範な進展を予測した非浸潤性アポクリン癌を経験したので報告する.症例は47歳女性.近医で左乳房1cm大の腫瘤を摘出生検後,非浸潤性アポクリン癌と診断され紹介された.マンモグラフィ,超音波ともに特異的所見に欠けたが,乳房dynamic MRIでは広範な乳管内進展が疑われた.乳頭温存乳腺全摘術を施行し, MRIの造影部に一致して極めて広範に進展する非浸潤性アポクリン癌との最終病理診断を得た.アポクリン化生を示す非浸潤性乳管癌について乳癌取扱い規約では定義付けられていないが,現在まで本邦において自験例を含め16例が報告されている.しかし同疾患の診断に際しての乳房dynamic MRI所見に言及した報告はなく,貴重な症例と考えられた.
  • 芦田 泰之, 殿本 詠久, 白谷 卓
    2004 年 65 巻 12 号 p. 3152-3156
    発行日: 2004/12/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    被覆人工血管の有用性は誰もが認めるところであるが,時として術後に高度の炎症反応を起こす.グラフト感染との鑑別が困難であり,血漿成分の漏出,浸出液貯留による物理的影響によって術後管理に支障をきたすことがある.弓部全置換術後に被覆人工血管に起因した炎症反応によって治療に難渋した2例を経験した.症例1は77歳,女性.第15病日に発熱と炎症反応の再上昇をきたした.その後漏出液による左胸水貯留が約4週間持続し,長期のドレナージと血漿蛋白質,電解質の補充をも要した.症例2は70歳,男性. 1秒率30%の慢性肺気腫を合併していた.術後順調に経過していたが第9病日に短時間のうちに心タンポナーデに陥り,緊急手術にて救命した.慢性肺気腫によって心嚢の拡張性が制限された状況下で,少量の人工血管に起因した浸出液貯留によって急速に心タンポナーデが進行したと考えられた.
  • 永島 明, 下川 秀彦, 竹之山 光広
    2004 年 65 巻 12 号 p. 3157-3160
    発行日: 2004/12/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    外科切除を行った肺原発MALT (mucosa-associated lymphoid tissue)リンパ腫5例を経験したので,そのCT所見,予後を中心に検討し報告する.年齢は50~77歳,男性2例,女性3例で,いずれも無症状であった. CT所見は4例でair-bronchogramを伴うconsolidationを呈し,このうち2例はCT angiogram signを伴っていた. 1例は境界明瞭なhomogeneous noduleを呈した.術前の経気管支肺生検にてmalignant lymphomaを疑った症例が2例,残りの3例は術前診断が得られなかった.術式は肺葉切除が4例,肺部分切除が1例であった.全例で完全切除が可能であり,術後の補助化学療法は行わなかった. 89カ月で無再発他病死したものが1例, 3例が48カ月, 58カ月, 82カ月,それぞれ無再発生存中である. 1例が55カ月で対側肺,腹腔リンパ節に再発を認め化学療法を施行し,術後67カ月現在生存中である.
  • 田島 隆行, 向井 正哉, 檜 友也, 大谷 泰雄, 中崎 久雄, 幕内 博康
    2004 年 65 巻 12 号 p. 3161-3164
    発行日: 2004/12/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    食道癌の小腸転移は稀である.今回,食道扁平上皮癌の小腸転移により腸閉塞症をきたし手術.後日,頸胸部食道に狭窄をきたしステントインステントに治療した1例を経験したので報告する.症例は62歳の男性で,嚥下時のつかえ感で発症,胸部上部食道癌(Ut)に3型食道癌を認めた.多発性肺転移と縦隔リンパ節転移を認めstage IVbと診断し化学療法を施行した.外来経過中の4カ月後に繰り返す嘔吐にて外来受診し腸閉塞のため緊急入院.虫垂切除術の既往があるため癒着による腸閉塞と診断し,腹腔鏡下に癒着剥離を施行したところ小腸に腫瘍性病変を認め開腹小腸切除術を施行し,食道癌の小腸転移と診断された.その後おこった,頸胸部食道の狭窄に対してはステントインステントにて治療した症例を経験したので文献考察を加え報告する.
  • 櫻井 健一, 天野 定雄, 柏尾 光彦, 榎本 克久, 松尾 定憲, 根岸 七雄
    2004 年 65 巻 12 号 p. 3165-3169
    発行日: 2004/12/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は68歳,男性.貧血を主訴に当科を紹介受診した.上部消化管内視鏡検査にて,胃小彎側弯窿部に粘膜下腫瘍を認め,生検にてGISTの診断を得た. CTでは胃内部から胃壁外に張り出すようなダンベル型の腫瘍を認めた.他臓器への転移を認めなかった.経過中に血清Ca値が高いことから,精査をしたところ, CTおよび超音波検査にて右下副甲状腺の腫大を認めた.胃病変に対して胃噴門部部分切除術,噴門形成術を施行し,第14病日に一時退院した.病理はGIST (combined smooth muscule-neuroral type)であった.再入院した後,右下副甲状腺腫瘍摘出術,術中迅速診断を施行し,第5病日に退院した. GISTに副甲状腺腺腫を併発した報告例はなく,その因果関係は不明であるが,貴重な症例と考えて報告した.
  • 石井 芳正, 高橋 正泰, 吉田 清香, 鈴木 興太
    2004 年 65 巻 12 号 p. 3170-3174
    発行日: 2004/12/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は70歳の男性.上腹部痛の精査にて胃角部に広範な胃癌(O IIa)病変と胃体上部後壁に胃潰瘍(H1 stage)を認め,さらに白血球数の増多(20,500/μl, Lymph: 78%)の精査によりB細胞型慢性リンパ性白血病(CLL)と診断された. CLLは貧血や血小板数の減少がみられないことより経過観察とし,胃は潰瘍部の切除を含め胃全摘除術を施行した.切除標本にて胃癌はpor 2+sig, sm2, n0であり,体上部の潰瘍では粘膜下から漿膜下に高度のリンパ球浸潤を認め免疫染色によりCLL細胞の浸潤と診断された.
    本邦においてCLLの頻度は少ないが悪性腫瘍の合併の頻度は高いとされる. 1965年以降自験例まで38例の報告であった.合併悪性腫瘍では胃癌が最も多くCLLはB細胞型が多かった.さらにCLLの胃をはじめとした消化管浸潤例の報告は少なく自験例が9例目であった.
  • 榎戸 克年, 西尾 剛毅, 大黒 聖二, 濱中 洋平, 西尾 梨沙, 鈴木 高祐
    2004 年 65 巻 12 号 p. 3175-3179
    発行日: 2004/12/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は54歳,男性. 2001年9月頃から心窩部痛と胸やけが出現したため近医受診し,上部消化管内視鏡にて胃前庭部に腫瘍性病変を認めたため当院紹介受診した.身体所見上女性化乳房症を認め,血液検査ではHCG13,400と高値であった.上部消化管造影,上部消化管内視鏡にて胃前庭部大彎側後壁よりに大きな潰瘍を伴う腫瘍を認めた.腹部CTでは,膵頭部,十二指腸,横行結腸との直接浸潤,多発リンパ節転移,多発肝転移の所見であった.生検標本の病理組織検査にて胃原発絨毛癌と診断された.根治手術は不可能であったためTS-1を用いた化学療法を行ったが,肝転移は急速に増大し, 2002年1月5日死亡した.絨毛癌は,高HCG血症により女性化乳房症を呈することがある.予後は非常に悪く,発見時すでに治癒切除が不可能のことがある.原因不明の女性化乳房症では, HCG産生腫瘍を鑑別する必要があると考えられた.
  • 池田 貯, 唐原 和秀, 佐藤 大亮, 宮脇 美千代, 内田 雄三, 秋月 真一郎
    2004 年 65 巻 12 号 p. 3180-3184
    発行日: 2004/12/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は83歳,女性.水溶性下痢と嘔吐を主訴に来院した.胃内視鏡検査にて胃前庭部に深い潰瘍を伴ったBorrmann 2型の腫瘍性病変を認めた.同部位の生検にて低分化腺癌と診断され, D2郭清を伴った幽門側胃切除術を行った.病理組織学的には扁平上皮癌で,ほかのどの部分にも腺癌成分は認められなかった.胃原発扁平上皮癌は,極めて稀な疾患であり,文献的考察を含めて報告する.
  • 大田 浩平, 柳川 憲一, 高畑 哲也
    2004 年 65 巻 12 号 p. 3185-3188
    発行日: 2004/12/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    術前に診断しえた右傍十二指腸ヘルニアを経験したので報告する.患者は32歳男性.主訴は上腹部痛.腹部所見では上腹部に圧痛を伴う膨隆を認めた.腹膜刺激症状は認めず. 28歳時にも同様の症状を認めたが数日の入院加療で軽快している.腹部単純レントゲン検査では右側結腸内のガス像が肝下面へ圧排されていた.腹部造影CT検査にて上行結腸の内側,横行結腸の背側から尾側に径12cmの被覆化された小腸塊を認め上腸間膜動脈の背側より小腸が右側後腹膜腔に嵌入したものと考えられた.胃の拡張はなく通過障害を思わせる所見は認めなかった.以上より右傍十二指腸ヘルニアと診断し手術を施行した.空腸起始部から150cmの小腸が十二指腸上行部の尾側から右側の後腹膜腔に嵌入しており右傍十二指腸ヘルニアと診断した.嵌入小腸を用手的に整復したところ血行も改善したため腸切除は行わずヘルニア門の縫合閉鎖を行った.術後嵌入していた小腸の浮腫のためと考えられる腸管麻痺を認めたが保存的に軽快し術後48日目に退院した.傍十二指腸ヘルニアは術前診断が難しいといわれているが自験例では臨床症状やレントゲン検査により本疾患に特徴的とされる所見を認め診断が可能であった.
  • 安藤 敬, 幕内 晴朗, 菊地 慶太, 村上 浩, 千葉 清
    2004 年 65 巻 12 号 p. 3189-3193
    発行日: 2004/12/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    十二指腸閉塞によるイレウス症状で発症した腹部大動脈瘤を2例経験したので,若干の文献的考察を加えて,報告する.症例1は,異常高血圧(200/100mmHg)のため他院に緊急入院した77歳男性.腹部大動脈瘤(径80mm)を指摘され,当院入院予約中に,嘔吐が頻回となり緊急入院となった.症例2は,イレウス症状で他院に入院した77歳男性.腹部大動脈瘤(径80mm)を認め,手術目的に当院へ転院となった.いずれも経鼻カテーテル挿入にて上部消化管を減圧し,短期間中心静脈栄養を行った後,開腹人工血管置換術を施行.術後,イレウス症状の再発はなく,退院となった.腹部大動脈瘤によるイレウスはきわめて稀であるが,巨大瘤では十二指腸第3部分,第4部分を圧迫する可能性がありイレウスの鑑別診断に加える必要がある.
  • 小林 里絵, 吉松 和彦, 石橋 敬一郎, 渡邊 清, 西村 暁, 小川 健治
    2004 年 65 巻 12 号 p. 3194-3197
    発行日: 2004/12/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    血液透析患者に発症した出血性サイトメガロウイルス(CMV)感染性腸炎の1例を報告する.症例は68歳,女性.血液透析中の平成14年6月,四肢の紫斑を主訴に他院でステロイドパルス療法を施行したところ呼吸状態悪化し,当院内科に転院した. 7月,大量の下血がみられ,内視鏡検査で回腸終末部に潰瘍性病変を認めた.その後も間歇的な下血を認めたため当科転科し,緊急手術を施行した.術中内視鏡で回腸終末部にpseudo polypと浅い潰瘍を認め,回盲部切除術を施行した.病理組織所見ではすべての潰瘍にCMV核内封入体を認め, CMV抗体価64倍, CMV抗原陽性でCMV感染性腸炎による小腸潰瘍からの出血と診断した.術後経過は良好で抗ウイルス剤投与でCMV抗原は陰性化した. CMV感染症は重篤化する前の早期診断,治療が大切で,自験例のように免疫能低下をきたす可能性がある患者では,本症の危険性を常に念頭におく必要がある.
  • 鈴木 宏光, 松本 英男, 土肥 俊之
    2004 年 65 巻 12 号 p. 3198-3201
    発行日: 2004/12/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    PTP (press through package)誤飲による回腸末端部穿孔の1例を経験したので報告する.症例は68歳男性で右下腹部痛を主訴に夜間来院した.体温は37.8度で右下腹部に自発痛,圧痛を認めたが,白血球数8,550/mm3と基準範囲であり,抗生剤による保存的治療を選択した.翌日,白血球数9,520/mm3と軽度上昇し,圧痛も増強, Blumberg徴候陽性となった.腹部CTにて,回盲部後腹膜腔,および腸間膜にfree airを認めたため,緊急手術を施行した.回盲部に大網が癒着していたが,炎症所見は軽度であり回盲部切除術を施行した.回腸口側切除断端よりPTPが摘出され,切除標本において回腸末端部にPTPによると思われる穿孔を認めた. PTP異物症の症例数は年々増加傾向にあり,薬剤包装様式の工夫が必要であると思われた.
  • 安田 武生, 山本 隆久, 中井 亨, 三浦 順郎
    2004 年 65 巻 12 号 p. 3202-3205
    発行日: 2004/12/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は72歳,男性. 2002年12月3日,右下腹部痛を主訴に当科入院となった.入院時腹部レントゲン検査にてイレウス像,腹部CT検査にて回腸末端近くの炎症と異物陰影を認めたが,この時点ではPTP異物と診断不可能であった.保存的療法にて改善を認めず,再度腹部CT検査を施行したところ回腸内の異物が再現性に描出された.異物は,中心に円形の小結節,周囲にhigh densityな領域を伴う構造でありPTP異物と考え,同年12月6日緊急手術施行した.開腹所見では回腸末端から30cmの部位で回腸が炎症・癒着を起こしており,同じ部位にMeckel憩室を認めた.この部で回腸部分切除を行った.切除した回腸内にはPTP異物を認め,これがMeckel憩室開口部に穿通しており,このため炎症・癒着・イレウスを惹起したと考えられた.また, PTP異物誤飲は術前診断困難な場合が多いが,腹部CT検査は有用な診断方法であると考えられた.
  • 鳥羽 昭三, 吉田 禎宏, 今冨 亨亮, 斉藤 恒雄, 中田 昭〓
    2004 年 65 巻 12 号 p. 3206-3209
    発行日: 2004/12/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    柿石に小腸閉塞を発症することは比較的稀とされており,ここ50年間で51例の報告がある.症例は77歳女性.腹部膨満,嘔吐を主訴に外来受診した.腹部単純X線写真で小腸ガスとniveau, CT検査で小腸の拡張を認め,腸閉塞と診断され,内科入院し保存的治療が行われた.症状が改善しないため,イレウスチューブより小腸造影を行った.回腸内に多数の陰影欠損像を認め,回腸は閉塞していた.異物または腫瘍による腸閉塞の診断で外科紹介された.開腹手術を行ったところ,回腸内に異物を触知した.同部を切開したところ,大小19個の結石を認め最大径3cmであった.回腸粘膜が一部壊死様であったため,回腸部分切除を行った.成分分析でタンニンが98%以上含まれており,柿石と判明した. RetrospectiveにCT像を観察すると,柿石は複数の含気性の海綿状腫瘤として描出されていた.
  • 大久保 雅彦, 麓 祥一, 木村 茂, 加島 健司, 武野 慎祐, 野口 剛, 川原 克信
    2004 年 65 巻 12 号 p. 3210-3213
    発行日: 2004/12/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は49歳,男性.主訴は特にない. 2002年11月,高脂血症,高尿酸血症,糖尿病,肥満の診断で精査加療目的で入院.スクリーニング目的で下部消化管内視鏡検査を受けたところ,回盲弁の口側に全周性に増殖した乳頭状の腫瘍を指摘された.同腫瘍の生検で病理学的にMALTomaと診断された.注腸検査では回腸末端に腫瘍の限局性進展がみられ,腹部CT検査ではリンパ節腫脹,他臓器転移は認められなかった.手術単独で根治可能と判断し,腹腔鏡補助下に回盲部切除, D2郭清を施行した.切除標本において回盲部末端から約10cmの範囲に乳頭状に発育する腫瘍を認めた. HE染色にて胚中心に向かって浸潤し増殖するリンパ球が認められた.同細胞は,異型に乏しく,均一な細胞の集団であり,免疫組織学的にはL26, Bcl-2およびCD10染色陽性でありMALTomaと確定診断をされた.術後経過は良好で第13病日に退院した.
  • 大沼 勝, 内山 哲之, 中川 圭, 伊勢 秀雄
    2004 年 65 巻 12 号 p. 3214-3217
    発行日: 2004/12/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    成人腸重積症を発症した小腸inflammatory fibroid polyp (以下IFP)の2例を経験したので報告する.症例1は65歳女性で心窩部痛,嘔吐を主訴に入院.症例2は71歳女性, 3カ月前よりの腹痛,排便困難を主訴に入院.いずれの症例も腹部CTにて典型的な層状構造とその先端に腫瘤像を認め,小腸腫瘍を先進部とした腸重積症と診断した.緊急手術がなされ術中所見にて腫瘍を先進部とした腸重積を認め小腸部分切除術を施行し,さらに切除標本の腫瘍は,病理組織学的検索にて初めてIFPと診断されている.小腸IFPは比較的稀な疾患であるが,多くは腸重積症で発症するため重積の原因として本疾患も念頭におくべきであろう.術前CT検査などで特徴的所見が得られれば腸重積の診断は難しくはないが,先進部の質的診断は術中も含めてかなり困難であり今後の課題であると考えられた.
  • 豊田 暢彦, 野坂 仁愛, 若月 俊郎, 竹林 正孝, 鎌迫 陽, 谷田 理
    2004 年 65 巻 12 号 p. 3218-3221
    発行日: 2004/12/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    胃全摘後挙上腸管に発生した原発性小腸癌の1例を経験したので報告する.症例は81歳,男性.平成14年5月10日,胃癌にて胃全摘術が施行された.以後再発症状はなかったが,平成15年5月27日,内視鏡検査にて再建挙上小腸に腫瘤性病変を認め,生検の結果group Vと診断された. CTおよびUSでは他には転移はないと判断し, 6月18日,手術を施行した.腹腔内には転移を疑う所見はなく,年齢を考慮して可及的に挙上腸管を剥離・切離し,再度Roux-Y吻合にて再建した.病理組織学的には中分化腺癌であった.自験例の発癌様式として, (1)胃癌の組織型は低分化腺癌であったこと, (2)初回手術時の腫瘍撒布にしては距離が離れすぎていること, (3)今回の腫瘍の位置が挙上前はTreitz靱帯より50cm以内の空腸であった,すなわち小腸癌の好発部位であることを考慮し,原発性小腸癌と考えた.
  • 伊藤 達雄, 山中 英治, 今田 世紀, 小柴 孝友, 小切 匡史, 門田 永治
    2004 年 65 巻 12 号 p. 3222-3225
    発行日: 2004/12/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は57歳男性.右下腹部痛を主訴として来院し,同部に圧痛と筋性防御を認めた. CTで右下腹部に直径4 cm大の腫瘤を認め,中心に点状の高吸収域が存在したため,糞石を伴う急性虫垂炎と考え虫垂切除術を行った.摘出標本では,虫垂内腔に長さ約1cmの魚骨が刺さっており,この部位より末梢側の虫垂は著明に腫大していた.病理組織所見では虫垂壁に魚骨刺入によると思われる切れ込みを認め,その周囲に強い炎症所見を呈していた.また,急性虫垂炎の所見に加え,虫垂仮性憩室が多発しているのを認めた.魚骨刺入による急性虫垂炎,虫垂仮性憩室はともに稀な疾患であるが,本例は魚骨が虫垂内腔に刺入し,虫垂内腔が閉塞したことで発症した急性虫垂炎,虫垂仮性憩室症と考えられたので,若干の文献的考察を加え,報告する.
  • 谷口 史洋, 池田 栄人, 栗岡 英明, 相川 一郎
    2004 年 65 巻 12 号 p. 3226-3230
    発行日: 2004/12/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は62歳,女性.近医の血液検査で,貧血を認め, 2000年10月紹介となった.入院時血液検査で著明な貧血と血小板減少および血清CEAの高値を認めた.精査にて, ITPを合併したS状結腸癌と診断した.術前γ-globulin製剤,濃厚血小板を投与し, 2000年10月23日S状結腸切除,脾摘を施行した.術後血小板数は回復したが,その効果は一時的であった. 2001年6月, 2002年5月にプレドニゾロンによるパルス療法を施行したが,その効果は一時的であった.その後プレドニゾロン10mgにて維持療法を施行し,その間血小板数は2×104~6×104/μlを推移した. 2003年11月Helicobacter pyloriに対する除菌療法を施行したところ,治療2カ月後には血小板数, PA IgGは正常化し, ITPに対して除菌療法が著効を示した症例を経験した.今後, ITPを合併した消化器癌患者の治療方針を考える上で貴重な症例と考え文献的考察を加え報告する.
  • 大惠 匡俊, 山口 哲哉, 北角 泰人
    2004 年 65 巻 12 号 p. 3231-3235
    発行日: 2004/12/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は33歳,男性.右下腹部痛を主訴に来院.急性虫垂炎の診断のもと虫垂切除術を施行した.術後19日目に盲腸穿孔を起こし回盲部切除術を施行,その3日後には,中毒性巨大結腸から全結腸壊死を伴う汎発性腹膜炎に進展したため結腸全摘術を行った.摘出結腸の病理組織検査でアメーバ虫体が証明されたことから劇症型アメーバ性大腸炎と判明した.抗アメーバ剤の投与により,全身状態は劇的に改善し救命することができた.近年,本症は本邦でも海外感染例や性行為感染症として増加傾向にある.自験例の如く劇症化へと進展した場合は急激に病状が増悪し,その多くが致命的となる.術前診断困難な腹膜炎症例で外科的治療によっても効果なく,憎悪していく症例に遭遇した場合,アメーバ性大腸炎の存在をも念頭に置く必要があると考えられた.
  • 梁井 公輔, 壬生 隆一, 池永 直樹, 植木 隆, 八尾 隆史, 田中 雅夫
    2004 年 65 巻 12 号 p. 3236-3240
    発行日: 2004/12/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は16歳男性.幼少時より認めていた下痢,下血,排便時間延長の増悪のため近医を受診した.大腸内視鏡,注腸造影で下部直腸に腫瘍性病変を認め,当科紹介入院となった.当院での大腸内視鏡,注腸造影では,下部直腸に結節状,棍棒状の小隆起の集簇を全周性に認めた.生検では直腸粘膜脱症候群(MPS)の診断であった.排便造影では直腸重積と会陰下降度の増加,直腸肛門内圧検査では最大耐容量の低下を認めた.隆起型のMPSによる残便感から排便時間延長をきたしたものと考え,経肛門的腫瘤切除術を行った.術後,残便感は消失し排便障害も改善した.隆起型のMPSで,病変の存在自体が残便感の原因となっている場合は,経肛門的切除術が有効な治療法の一つと考えられた.
  • 松岡 隆久, 森景 則保, 久我 貴之, 中山 富太, 藤井 康宏
    2004 年 65 巻 12 号 p. 3241-3244
    発行日: 2004/12/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は84歳,女性.平成15年4月,上行結腸癌の診断のもと右半結腸切除術〈D2〉施行.術後病理ではmucinous adenocarcinoma, ss, n2(+), ly2, v0, P0, H0, M(-), Stage-IIIbと診断された.同年8月,外陰部の腫瘤を主訴に精査加療目的に入院.理学的所見では,左外陰部に約3 cm大の可動性を有する疼痛を伴わない弾性硬腫瘤を触知した.血液生化学的検査では軽度貧血を認める以外,腫瘍マーカーを含めて異常は認められなかった. CTでは左外陰部に造影効果のある腫瘤を認めた.以上より,外陰部腫瘤の診断のもと腫瘤切除術を施行.術後病理では転移性皮下腫瘍と診断された.術後1年経過した現在も再発の兆候を認めず,当科外来で経過観察中である.結腸癌の転移部位としては稀であるが切除により長期予後を期待できる症例もあるため積極的切除を考慮すべきと思われる.
  • 井上 潔彦, 柳 照奉, 吉藤 竹仁, 所 忠男, 奥野 清隆, 塩崎 均
    2004 年 65 巻 12 号 p. 3245-3248
    発行日: 2004/12/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は68歳男性.平成15年6月頃より会陰部痛出現し来院した.既往歴として, 52歳時に直腸癌にて低位前方切除術を施行. 54歳時に直腸癌吻合部再発にて,腹会陰式直腸切断術施行.腹部・骨盤部CT検査にて骨盤左側に直径5 cmの腫瘤を認めた.またその腫瘍に左尿管は巻き込まれ,左水腎症を呈していた.直腸癌局所再発(膀胱・尿管浸潤疑い)と診断され,腫瘍摘出術(膀胱・前立腺・尿管合併切除)・回腸導管造設術を施行した.病理検査で,直腸癌の再発像として矛盾せず,直腸癌術後16年目の局所再発と診断した.
  • 安井 祐司, 大野 伯和, 松原 正秀, 佐藤 美晴
    2004 年 65 巻 12 号 p. 3249-3252
    発行日: 2004/12/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    内分泌細胞癌は極めて予後不良な疾患である.今回われわれは術後4カ月後に多発性皮膚転移をきたした肛門管内分泌細胞癌の1例を経験したので報告する.症例は82歳,女性.肛門部の不快感を訴え当科受診.肛門外へ突出した腫瘤を認め,生検の結果内分泌細胞癌と診断.遠隔転移を認めず,肛門直腸の局所切除+人工肛門造設術を施行した.免疫染色ではCD56, CEA, chromograninA染色がいずれも陽性であった.術後4カ月後に多発性皮膚転移を認めたが,肺,肝には認めなかった.肛門管内分泌細胞癌は本邦報告例では自験例を加えてもわずか7例であり,自験例以外は全て腹会陰式直腸切断術が施行されているにもかかわらず,予後は極めて不良である.外科切除のみならず,集学的治療の開発が待たれるが,術前鑑別診断(カルチノイド腫瘍vs.内分泌細胞癌)により術式と予後が大きく異なることから,術前組織診断が重要である.
  • 川田 研郎, 松本 日洋, 鴻野 雅司, 宍倉 有里
    2004 年 65 巻 12 号 p. 3253-3256
    発行日: 2004/12/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    直腸肛門部悪性黒色腫は稀で,極めて予後不良とされる.症例は53歳女性, 2カ月前からの肛門痛,排便時出血を主訴に来院した.歯状線直上より約5 cm,弾性軟の腫瘤触知した.大腸内視鏡検査では表面が平滑で,辺縁が赤く中心が黒い平皿状の隆起性病変で,生検にて悪性黒色腫と診断された.腹会陰式直腸切断術施行したが,皮膚,膵頭部,小腸間膜,大網に転移していた.組織学的進行度はA2, ly2, v1, n2, P1, H0, M1, St IVであった.家族の希望で追加治療はせず,退院後右乳房皮下,左鼠径部などに再発,計6カ所の局麻手術をしたが,術後4カ月で腹水貯留, 6カ月で全身転移のため死亡した.
    手術による転移の助長の可能性も否定できないが,本疾患に対する集学的な治療法は確立されておらず,手術選択の妥当性や術後化学療法の必要性等の判断は困難である.
    予後の向上には早期発見が重要であり,集学的治療の更なる向上が望まれる.
  • 米村 祐輔, 島田 光生, 吉住 朋晴, 武冨 紹信, 前原 喜彦
    2004 年 65 巻 12 号 p. 3257-3262
    発行日: 2004/12/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    ウイルス性肝硬変に対する肝移植は近年増加傾向にある. C型肝硬変に対する移植の問題点は移植後のC型肝炎の再発であり,術後1年以内に50~60%が組織学的に慢性活動性肝炎を再発し,術後5年で約20%が肝硬変に進行するとされている. C型肝炎の場合,肝炎の再発はほとんどが軽度であり,緩徐な経過が特徴とされている.一方, fibrosing cholestatic hepatitis (FCH)は組織学的に胆汁うっ滞,門脈周囲の線維化,肝細胞腫大,軽度な炎症などの特徴を認め短期間で肝硬変に進行し,主にB型肝硬変における移植後の肝炎再発形式とされている.近年, C型肝硬変に対する移植後にもFCHが認められ,近年増加傾向にあるとされている.今回われわれはC型肝硬変に対する生体肝移植術後に高ビリルビン血症を認め組織学的に急速な線維化をきたし術後233日目にグラフト機能不全で死亡したFCH症例を経験したので報告する.
  • 田中 松平, 波種 年彦, 千代反田 晋
    2004 年 65 巻 12 号 p. 3263-3266
    発行日: 2004/12/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は84歳,女性.平成13年に蛔虫総胆管迷入症にて紹介入院となった.前医にて駆虫剤を投与されていて総胆管内の蛔虫は死んでいた.転院直後から腹痛が治まり,患者本人に内視鏡的乳頭切開術の理解を得られずに退院となった. 1年10カ月後,総胆管結石症にて再び紹介入院となった.内視鏡的乳頭切開術施行し, 2個の総胆管結石をバスケット鉗子で回収し,病理学組織学的に結石の中心に蛔虫を証明した.
    近年無農薬野菜の流行,海外旅行者,出張者の激増により再び報告例が増加してきたので,症例報告するとともに文献的考察を行った.
  • 清川 貴志, 吉見 富洋, 川崎 普司, 佐藤 始広, 井村 穣二
    2004 年 65 巻 12 号 p. 3267-3270
    発行日: 2004/12/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    胃全摘後の広範囲胆管癌に対してρ loopを用いて肝外胆道再建した1例を経験したので報告する.胃癌と胆管癌の合併は稀でありこの症例は異時性三重複癌でもある.
    症例は80歳女性.胃癌の既往があり胃全摘・脾摘, ρ double tract法再建を施行されていた.胸部違和感,微熱出現し精査で中部胆管に狭窄,胆汁細胞診では腺癌を認めた.手術施行し術中病理診断で胆管癌の進展を広範に認めたため肝外胆道切除,肝尾状葉切除,膵および膵管部分切除,肝管空腸吻合,膵管再建術を行った.再手術時には前回手術時の再建方法を考慮し様々な選択肢の中から再建方法を選択することが必要である.
  • 村岡 曉憲, 堀場 隆雄, 中村 司, 野々山 益雄, 永井 敏也
    2004 年 65 巻 12 号 p. 3271-3274
    発行日: 2004/12/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    われわれは胆石胆嚢炎にて内科入院し,精査中に肝円索内に巨大な血腫を形成したため,緊急手術を施行した胆嚢原発印環細胞癌を経験した.症例は72歳女性で,急性腹症にて当院救急外来に搬送.胆石胆嚢炎と診断され,内科入院となった.保存的治療にて一時軽快するも,再び上腹部激痛を訴え,再度CTを施行したところ肝臓内より表面に突出する腫瘤と中等量の腹水を認めた為,胆嚢穿孔が疑われ外科に紹介.同日緊急手術施行した.腹腔内は肝円索内に血液が約500ml貯留していた.胆嚢は周辺臓器と強固に癒着しており,鋭的に剥離後,腹腔側胆嚢壁を切除し胆石を摘出.胆嚢粘膜面は全て腫瘍状を呈し肝臓側へ浸潤していた.病理結果は印環細胞癌であった.胆嚢原発の印環細胞癌は報告例も少なく稀であり,また肝円索内血腫と合併した報告例はないことから,若干の文献的考察を加え報告する.
  • 柴田 裕, 進藤 吉明, 中川 康彦, 小玉 雅志, 南條 博
    2004 年 65 巻 12 号 p. 3275-3278
    発行日: 2004/12/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    尿膜管遺残症に対して,最近では腹腔鏡下手術の報告も散見する.今回われわれは,吊り上げ法を用いた腹腔鏡下摘出術を経験したので報告する.症例は24歳男性.臍部痛を主訴に平成16年4月19日受診した.臍瘻孔造影・CT検査で臍から膀胱への約4 cmの瘻孔を認め,尿膜管臍瘻の診断で, 5月11日,腹腔鏡下摘出術を施行した.皮下鋼線を左下腹部に2カ所刺入し,吊り上げ法を施行した.右鎖骨中線上臍高部(5 mm, scope port),右上腹部・右下腹部(5 mm)の3孔式で行った.腹壁正中に大網の癒着を認め切離した.膀胱頂部近傍の正中臍靱帯を体外結紮切離した後,切離端を把持・牽引しながら尿膜管組織を臍直下まで超音波凝固切開装置を用いて切離した.臍瘻孔周囲を切開し,尿膜管を摘出した.摘出標本は8 cmで,組織学的にも尿膜管臍瘻の感染と診断した.手術時間は85分,出血はごく少量.術後経過良好で7日目に退院した.
  • 石丸 啓, 中村 利夫, 深澤 貴子, 大場 浩次, 丸山 敬二, 今野 弘之
    2004 年 65 巻 12 号 p. 3279-3282
    発行日: 2004/12/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は35歳,女性.妊娠24週目でイレウスを発症した. MRI検査で2年前の開腹手術の癒着によるイレウスと診断し手術を施行した.開腹すると,回腸末端が子宮底部に癒着して腸管の強い屈曲を認め,イレウスの原因となっていた.腸管の狭窄が高度であったため約60cmの腸管切除術を施行した.術後経過は良好で妊娠38週目に帝王切開で健康な男児を出産した.
  • 和久 利彦, 渡辺 和彦, 冨岡 憲明, 折田 洋二郎
    2004 年 65 巻 12 号 p. 3283-3287
    発行日: 2004/12/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は78歳男性.平成14年12月16日肺炎にて入院となった.肺炎像の改善ないため, 12月21日よりニューキノロン系抗菌薬の投与を開始したところ投与8時間後より脱力,呼吸困難および尿量の減少を認め, 12月22日にはさらに尿量が減少し,急性腎不全となった. CPK 767IU/1,血清アルドラーゼ65.1IU/l/37℃,尿中ミオグロビン1,900ng/mlであり,横紋筋融解症と診断し,急性腎不全に対し同日血液透析を開始した. 3回の血液透析で血液検査値は次第に改善した.平成15年1月8日胸部X線上で両側横隔膜下に遊離ガス像を認めたが,腹膜炎の徴候を全く認めなかった.上部・下部消化管内視鏡検査を施行したが異常所見を認めなかった.その後も胸腹部に異常所見なく経過し, 1月15日の胸部X線上両側横隔膜下の遊離ガスは消失していた.成人の特発性気腹症は本邦論文報告例で19例が報告されているにすぎず稀な病態と考えられた.
  • 松田 佳也, 吉田 博希, 杉本 泰一, 田中 和幸
    2004 年 65 巻 12 号 p. 3288-3292
    発行日: 2004/12/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    腹腔内遊離ガス像を伴う腸管嚢胞様気腫症の1例を経験した.本邦では12例の報告があり,本症例は13例目となる.症例は62歳,男性.左肺癌末期状態で硫酸モルヒネ内服にて緩和治療中であったが,腹痛のため当院に救急搬送された.来院時,腹部は平坦で軟,左側腹部に圧痛を認めたが,腹部単純X線写真および腹部CT検査にて,腹腔内遊離ガス像および腸管壁・腸間膜の気腫状変化を認めた.消化管穿孔を否定できず,開腹手術を施行したが,消化管穿孔はなく,小腸壁および腸間膜に小気泡を多数認めた.腸管嚢胞様気腫症と診断し,腹腔内を洗浄後,ドレーンを留置して閉腹した.術後経過は良好で,術後16日目に軽快退院した.硫酸モルヒネおよびα-グルコシダーゼ阻害剤内服に伴う慢性的な便秘症が原因と考えられた.腹腔内遊離ガス像を認めた場合,消化管穿孔との鑑別診断が重要で,確定診断が得られない場合には試験開腹を考慮すべきである.
  • 宮澤 智徳, 植木 匡, 若桑 隆二
    2004 年 65 巻 12 号 p. 3293-3296
    発行日: 2004/12/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は52歳の男性.心房細動の治療で内科入院中に急激な腹痛と嘔吐が出現した.緊急CT検査で上腸間膜動脈本幹内に相対的陰影欠損を認め,上腸間膜動脈閉塞症と診断した.コントロール不良のうっ血性心不全を有し手術の危険が高いことと,発症より3時間の経過であることより動注による血栓溶解療法の方針とした.血管造影検査にて上腸間膜動脈分岐部より約6 cm末梢側に不完全狭窄を認めた.発症より4時間30分後にウロキナーゼ96万IUとプロスタグランジンE1 20μgの動注を施行した.血栓は溶解したが一部残存し,腹痛も軽度持続していたため,さらに48時間の持続動注を併用した.その後軽快し,動注後7日目に退院した.早期診断により血栓溶解療法の保存的治療が可能であった症例を経験したので報告する.
  • 小松 大介, 高橋 耕平, 久米田 茂喜, 小山 佳紀, 大谷 方子
    2004 年 65 巻 12 号 p. 3297-3301
    発行日: 2004/12/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    十二指腸間膜に発生した仮性嚢胞の1例を経験したので報告する.症例は16歳の男性. 2カ月前より腹痛発作があり,次第に増強するため当院を受診.明らかな腹部外傷の既往はなく,腹部CTおよびMRI検査にて腹部大動脈左側に径5.5cm大の単房性嚢胞を認めた.重複腸管嚢胞の診断にて開腹,十二指腸間膜に嚢胞を認め,摘出術を施行した.嚢胞内容物は乳糜様の液体であった.病理組織学的に内腔上皮を欠き仮性嚢胞と診断した.本症の本邦報告例は自験例を含め17例であり,極めて稀な症例と考えられた.
  • 竹林 正孝, 豊田 暢彦, 野坂 仁愛, 若月 俊郎, 鎌迫 陽, 谷田 理
    2004 年 65 巻 12 号 p. 3302-3306
    発行日: 2004/12/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は55歳,男性.主訴は腹部腫瘤であった.腹部CTでは腹部全体におよぶ充実性腫瘍で内部は嚢胞状を呈していた. MRIではT1強調像で低信号域を示し, T2強調像で高信号域を示した.腹部血管造影で左右胃大網動脈から栄養されていた.以上から大網原発悪性腫瘍として手術を施行した.腫瘍は大網から発生し,切除標本では大きさ23×21×16cmと15×9×6cmの2個の腫瘍からなり総重量2,730gであった.病理組織学的には好酸性の胞体を有する類円形ないし多角形の細胞からなり,免疫組織化学的染色でc-kit, CD34は陰性でα-SMAが陽性であることなどから類上皮性平滑筋肉腫と診断した.さらに本腫瘍は術前CA125が高値を示し, CA125染色で腫瘍細胞は強陽性を呈し,術後CA125値は低下したことから,男性に発症した極めて稀なCA125産生腫瘍と考えられた.術後1年6月経過した現在まで再発の徴候を認めていない.
  • 伊藤 浩明, 舟橋 啓臣, 酒向 猛, 大島 健司, 小西 滋, 野垣 岳志
    2004 年 65 巻 12 号 p. 3307-3311
    発行日: 2004/12/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    大網原発の巨大なGISTの2手術例を経験した.症例1は63歳男性.腹部腫瘤にて受診,入院中に腹腔内出血をきたし,緊急手術を施行した.腹腔内には播種を多数認めた.腫瘍は大網から発生し,周囲との癒着はなく,腫瘍右側に破裂部を認めた.大網を切除して腫瘍を摘出した.症例2は79歳女性.腹痛にて受診,右下腹部に腫瘤を認め,手術を施行した.大網と連続する巨大な腫瘤と,他にも小腫瘤があり,これらを摘出した.摘出標本の免疫染色では, c-kitがいずれも陽性で, GISTと診断した. Ki-67染色はいずれも陽性で,増殖力の高さをうかがわせた.実際, 2例とも開腹時に腹腔内転移を認めた. GISTの治療として,最近グリベックによる化学療法が行われるが,副作用・長期投与の点でまだ安全性が確立していない. GISTが,巨大化しても周囲への浸潤が少ない腫瘍であるため,可能であれば手術的切除が望ましいと思われる.
  • 早稲田 龍一, 魚津 幸蔵, 黒川 勝, 芝原 一繁, 八木 真悟, 長谷川 洋
    2004 年 65 巻 12 号 p. 3312-3317
    発行日: 2004/12/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は76歳,男性. 2002年6月15日より,肝膿瘍およびそれに伴う敗血症の診断にて当院内科にて入院加療中であった. 6月25日に大量の血性嘔吐を認めるも,腹痛等の訴えはなく,特記すべき腹部所見もみとめなかった.腹部CT検査を施行したところ右腎前部および十二指腸下行脚周囲に気腫を伴う後腹膜膿瘍を認めた.十二指腸後腹膜穿孔の診断にて緊急開腹術を施行した.憩室の存在を念頭においていたが十二指腸下行脚から右腎前面にかけ一塊となった膿瘍腔で,炎症所見も著明であった.膿瘍腔を開放しKocher授動術を行うと,十二指腸下行脚外側に約2×1.5cmの欠損部を認めた.欠損部が大きいこと,周囲の炎症所見が強いことより縫合閉鎖は行わず,有茎大網を充填,また術後の十二指腸狭窄を考慮し胃空腸吻合を併施した.術前より糖尿病のコントロールが悪く, poor riskな症例であったが,良好な術後経過を得たので報告する.
  • 国末 浩範, 横山 伸二, 丸山 修一郎, 金谷 欣明, 曽田 益弘
    2004 年 65 巻 12 号 p. 3318-3321
    発行日: 2004/12/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は72歳,男性.左腎癌術後で傍大動脈リンパ節転移のため平成14年6月17日,リンパ節郭清術を施行された.第13病日,腹痛が出現し,腹部X線で腸閉塞と診断された.大腸にニボー像を認めたため,大腸内視鏡検査を施行したところ下行結腸に狭窄を認めた.粘膜面には異常を認めなかった.腹部CT検査では下行結腸周囲の脂肪織の毛羽立ちをみとめたが腫瘤は認めなかった. 7月18日開腹手術を施行した.下行結腸周囲の大網,腸間膜が肥厚,硬化しその部の下行結腸が狭窄していた.腸管周囲の腸間膜,大網,後腹膜の脂肪織炎と診断した.大網の一部を切除し,横行結腸と下行結腸を側側吻合した.病理検査では脂肪織炎の像を認めた.術後の経過は順調である.腹部手術術後に脂肪織炎を生じ,腸閉塞となった症例を経験したので文献的考察を加え報告する.
  • 野村 裕紀, 水島 康博, 川本 雅樹, 檜垣 長斗, 平田 公一
    2004 年 65 巻 12 号 p. 3322-3325
    発行日: 2004/12/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は65歳,女性.身長152cm,体重125kgでbody mass index (BMI)は54と高度肥満であった. 5年前より腹部の膨隆を認めていたが無症状のため放置していた.平成15年11月健康診断で臍周囲のヘルニアを指摘され当科受診.臍ヘルニアを疑い手術を施行した.術中ヘルニア嚢を同定後,臍下方に約5 cmの白線欠損部を認め,下腹部白線ヘルニアと診断した.ヘルニア内容は横行結腸と大網で一部ヘルニア嚢と癒着していた.ヘルニア門を縫合閉鎖後, polypropylene meshで腹壁を補強した.術後6カ月を経過したが,再発を認めていない.
  • 大谷 聡, 宮澤 正紹, 武藤 淳, 蘆野 吉和, 児山 香, 佐藤 正幸
    2004 年 65 巻 12 号 p. 3326-3329
    発行日: 2004/12/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は84歳,女性.嘔吐,腰痛,左下肢痛を主訴に来院した. Howship-Romberg sign陽性であり,また骨盤部CT検査にて左閉鎖孔ヘルニアと診断し緊急手術を施行した.回腸末端より約130cmの小腸の全係蹄が左閉鎖孔へ嵌頓し,同部位の壊死を認めたため切除した.左閉鎖孔径は約10mmと大きく,縫合閉鎖は困難であると判断し,入念に腹腔内洗浄をした上で腹膜前腔にメッシュを配置して修復した.術後にメッシュ感染は認めず,経過は良好であった.閉鎖孔ヘルニアの修復法として,近年メッシュによる修復例が散見されるが, tension free,簡便,閉鎖神経や動静脈を損傷することなく広く閉鎖孔を覆うことが可能である等利点が多い反面,腸管切除を要した場合にメッシュ感染も危惧される.本症例のように入念な腹腔内洗浄を行った上でメッシュを腹膜前腔に配置すれば,メッシュ法による閉鎖孔修復も完全に行い得ると考える.
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