症例は73歳,男性.糖尿病の精査加療中にスクリーニングで残胃内視鏡を施行し,胃体部小彎にIIc病変,胃上部後壁にIIa病変が発見され紹介となった.手術は残胃全摘, D1郭清, R-Y吻合した.切除標本の病理結果で,上記病変の他にIIa近傍にIIb病変を発見され,深達度はIIcについてはsm1, IIa, IIbともにmであり,リンパ節転移n0であった.既往歴として, 43歳胆石症で胆嚢摘出術, 56歳S状結腸癌でS状結腸切除,端々吻合, 67歳十二指腸癌で膵頭十二指腸切除, child法再建, 69歳残胃癌にて胃部分切除,膀胱癌で膀胱部分切除がある. 4重複癌の報告例は現在55例と比較的稀で,残胃多発癌を合併した4重複癌の報告は本症を含め2例のみである. 4重複癌に胃癌・大腸癌を含む症例が多いことより,癌手術後の観察には消化管を中心とした重複癌を念頭に経過観察すべきと考えられた.
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