日本臨床外科学会雑誌
Online ISSN : 1882-5133
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ISSN-L : 1345-2843
65 巻, 5 号
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  • 患児にやさしい医療
    溝手 博義
    2004 年 65 巻 5 号 p. 1153-1160
    発行日: 2004/05/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
  • 古川 恵子, 秋山 太, 霞 富士雄, 田尻 孝, 坂元 吾偉
    2004 年 65 巻 5 号 p. 1161-1166
    発行日: 2004/05/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    乳癌の内分泌療法における効果予測因子は癌細胞のホルモンレセプターの有無であり,真のレセプター状況を把握し,治療の選択を決定することが必要である.今回,乳癌手術症例で生化学的方法(EIA法)および免疫組織化学染色法(IHC法)でエストロゲンレセプター(ER)状況を判定した316例を対象に, EIA法とIHC法でのER陽性率と一致率を調べ,問題点を検討した. EIA法でのER陽性率は43%, IHC法では66%で,一致率は75%であった.硬癌,粘液癌などの細胞密度の低い組織型ではEIA法では偽陰性となる可能性が示された.また, ER陽性の正常乳管上皮の影響も考えられ,顕微鏡で直接癌細胞を確認できるIHC法はEIA法よりも有用であった.今後, IHC法の判定基準の統一が必要であるが,過去にEIA法で陰性であった症例も,転移再発時には以前の手術時のパラフィン切片を用いてIHC法で再検査することによって,治療の選択肢が広がる可能性が示唆された.
  • 原田 道彦, 伊藤 勅子, 小松 大介, 小山 洋, 坂井 威彦, 藤田 知之, 清水 明, 松下 明正, 熊木 俊成, 青木 孝學, 春日 ...
    2004 年 65 巻 5 号 p. 1167-1170
    発行日: 2004/05/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    乳癌は発見時の腫瘍の大きさ,所属リンパ節転移数などにより,外科治療後の予後が大きく左右されるため,早期発見,早期治療が重要である.今回われわれは1997年4月から2003年9月までの6.5年間の当院人間ドックでの視触診による乳癌検診の成績および外科治療を含めた臨床的検討を行った.総受診者数は15,683人で,平均年齢は51.4歳であった.要精検者数は543人(3.46%),乳癌発見数は15人(0.10%),陽性反応的中率は2.76%であった.最大腫瘍径が2 cm以下の乳癌は13例(87%)であった. 15例の組織型は硬癌が7例(46%),乳頭腺管癌が3例(20%),充実腺管癌が2例(13%),粘液癌,髄様癌,小葉癌がそれぞれ1例(7%)と,低分化の硬癌が最も多かったが,リンパ節転移では12例(80%)が陰性であり,早期の乳癌が多かったことを裏づける結果であった.予後はn1βの1例が再発死亡した以外,現在無再発生存中である.発見乳癌に占める最大腫瘍径2 cm以下の乳癌の割合が87%と高率であったことは乳癌からの救命という乳癌検診の目的と合致しており,当院の乳癌検診の状況は妥当なものであると考えられた.
  • 松田 明久, 田尻 孝, 古川 清憲, 高崎 秀明, 鈴木 英之, 会田 邦晴, 菅 隼人, 鶴田 宏之, 進士 誠一, 山下 精彦
    2004 年 65 巻 5 号 p. 1171-1176
    発行日: 2004/05/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    大腸癌においてリンパ節転移程度は重要な予後因子である.今回, stage III結腸癌134例を対象とし,リンパ節転移分類法と予後との関係から最適なリンパ節転移分類法を検討した.大腸癌取扱い規約におけるリンパ節転移分類法(n1, n2+n3),転移個数による分類法(3個以下, 4個以上),転移度による分類法(25%未満, 25%以上)において5年累積生存率を算出したところ,転移個数分類でのみ有意差を認めた(p=0.0128).多変量解析では,壁深達度(se以深, ss以浅) (ハザード比2.636: 95% CI 1.295-5.367),リンパ節転移個数分類(4個以上, 3個以下) (ハザード比3.620: 95% CI 1.392-9.414)の2因子で有意差を認め,独立した予後因子であった.今回の検討より転移個数による分類は簡便で予後をよく反映し,独立した予後因子でもあることからstage III結腸癌の亜分類にリンパ節転移個数を加味するのは妥当と考えられた.
  • 星 加奈子, 大見 良裕, 稲葉 宏, 長谷川 信吾, 大見 琢磨, 城 俊明, 深野 雅彦
    2004 年 65 巻 5 号 p. 1177-1181
    発行日: 2004/05/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    【目的】近年痔核の手術は肛門機能を温存する方向に変化している.今回われわれは新たに考案したスリット付き痔核鉗子を使用することによって,簡便で,肛門管上皮を温存でき,ほとんどの大きさの内外痔核を確実に結紮し,かつ術後出血の少ない内外痔核結紮法を考案したので報告する.
    【方法】Goligher分類II度~IV度の内外痔核226例に対し行った.腫大した内外痔核をスリット付き痔核鉗子で把持し,痔核の基部を2号絹糸で2回結紮した後,鉗子のスリット部に3-0バイクリル糸を刺入し2回刺通結紮を行った.
    【結果】結紮した痔核および結紮糸は術後1~2週間で脱落した.術後の疼痛は従来のLE法と比較し軽い傾向がみられた.術後合併症は後出血が2例(0.9%),追加手術は1例であった.
    【結論】新たに考案したスリット付き痔核鉗子は内外痔核結紮術に有用で,簡便かつ確実に内外痔核が処理できることが示された.
  • 冨山 浩司, 高橋 三奈, 藤井 徹也, 国末 浩範, 金谷 欣明, 丸山 修一郎, 横山 伸二, 曽田 益弘
    2004 年 65 巻 5 号 p. 1182-1187
    発行日: 2004/05/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    原疾患を問わず難治性腹水は患者QOLを低下させる原因の一つである.難治性腹水に対するDenver peritoneovenous shunt 26例の有用性を検討した.対象は1998年5月より2002年4月までにDenver shuntを留置した26例で原疾患は肝硬変1例,癌性腹膜炎25例であった.術後生存期間は平均49.4日,閉塞は19%に認めた.合併症はDIC 7例,肺水腫3例,その他2例で,そのうち合併症によると思われる死亡は2例であった.体重,腹囲の手術前後の比較では両者とも有意な減少を認めた.術後腹水に対し他の治療を必要としなくなった症例は13例あり, 13例で外泊または退院が可能となった.内科的治療抵抗性の難治性腹水に対するDenver shuntは時に重篤な合併症を併発するが,症例を選べばQOLの改善に有用な手段であり,今後症例の蓄積を待って適応選択のさらなる検討が必要と考える.
  • 豊田 泰弘, 伊豆蔵 正明, 西嶌 準一
    2004 年 65 巻 5 号 p. 1188-1192
    発行日: 2004/05/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    甲状腺片葉欠損に腺腫様結節を合併した例を経験したので報告する.症例は52歳男性.頸部腫脹を自覚し,近医より当院に紹介された. CT,超音波検査で甲状腺左葉は描出されず,右葉に嚢胞状腫瘤が認められた.甲状腺良性腫瘍を疑い,手術を施行した.手術時に,左葉の欠損を確認した.腫瘍の部分を含めて甲状腺部分切除を行った.
    甲状腺片葉欠損は稀な奇形であり,本邦では検索した限り,自験例も含めて41例の報告がある.海外においてその頻度は0.05%から0.2%とされるが,本邦における正確な統計はいまだない.最近超音波検査の普及によって,本症が発見される機会が増えてきており,今後小児のスクリーニングや剖検などを対象にした検討が期待される.
  • 宮部 理香, 池田 佳史, 亀山 香織, 高見 博
    2004 年 65 巻 5 号 p. 1193-1196
    発行日: 2004/05/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は76歳女性.前頸部に突出する不整形腫瘤を自覚し近医受診,当院紹介され入院となった.甲状腺右葉に不整形の嚢胞を伴う腫瘍を認めた.穿刺吸引細胞診では大型で中等度の異型を呈する細胞が重責して採取されており, orange G好性の異型細胞が散在して確認された.腺内転移,頸部リンパ節転移,気管浸潤,肺転移を伴っていた.局所のコントロールのため甲状腺全摘・両側頸部郭清術を施行した.病理組織学的検査の結果により,原発性甲状腺扁平上皮癌と診断した.
    甲状腺原発の扁平上皮癌は非常に稀であり,日常診療において遭遇する機会は少ない.ときにagressiveな臨床経過をたどり予後不良であることから,未分化癌との鑑別を要し迅速な診断と適切な治療法選択が重要である.
  • 金子 耕司, 小山 諭, 神林 智寿子, 畠山 勝義
    2004 年 65 巻 5 号 p. 1197-1200
    発行日: 2004/05/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    Clear cell carcinomaは乳腺原発として稀に発生する一方,多臓器からの転移としても起こりうる.今回clear cell carcinomaと鑑別を要した乳腺腫瘤の1例を経験したので報告する.症例は41歳,女性.右乳房腫瘤を主訴に来院.右乳房A領域に1.5cm大の硬結を触知.画像検査も含め乳癌を疑いcore needle biopsyを2回施行したが,確定診断に至らなかったため,最終的に切除生検を施行した.病理所見では,主病巣はfibromatosisであったが,脂肪組織内にclear cell carcinomaも疑わせる細胞塊を認めた.連続切片にて小葉への連続性を認めたため,小葉のclear cell metaplasiaと診断することができた. Clear cell metaplasiaはその疾患概念を理解していないと,一見clear cell carcinomaと診断することもあるので注意を要するものと考えられた.
  • 富田 弘之, 田中 秀典, 津屋 洋, 宮 喜一
    2004 年 65 巻 5 号 p. 1201-1204
    発行日: 2004/05/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は72歳,女性. 2001年6月に右乳房腫瘤を主訴として当科を受診した.触診, US, MMG, MRI, ABCにて右乳癌と診断し,非定型的乳房切除術ならびに腋窩リンパ節郭清(Bt+Ax)を施行した.切除標本は30×25mm大の充実性腫瘍であり,組織学的に腫瘍部分は上皮性癌巣部分と軟骨肉腫部分が混在した.移行像を一部に認めたため,軟骨化生を伴う乳癌と診断された.また,局所転移巣も上皮性癌巣部分と軟骨肉腫部分が混在し,原発巣と同様の組織像であった.組織学的に骨・軟骨化生を伴う乳癌は浸潤癌の特殊型に属し,その発生頻度は稀である. MIB1などの免疫特殊染色を行い,過去の報告例とともに臨床的特徴や予後について検討し,報告する.
  • 廣方 玄太郎, 泉山 修
    2004 年 65 巻 5 号 p. 1205-1208
    発行日: 2004/05/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    感染性腹部大動脈瘤は,致死率21~44%と予後不良な疾患である.われわれは,不明熱を主訴に入院し, Gaシンチ,腹部CTにて発見された腹部大動脈瘤に対し,緊急手術を施行し救命しえたので報告する.症例は68歳,女性.不明熱を主訴に来院した.抗生剤にて炎症反応は一過性に沈静するも再然した. Gaシンチにて腹部大動脈より左総腸骨動脈付近に集積を認め,腹部CTより腹部大動脈瘤と診断した.前回のCTと比較し瘤径が増大し抗生剤も無効であったため,緊急手術を施行.腹部大動脈瘤は石灰色で,強固に後腹膜と癒着していた.感染巣と思われる腹部大動脈を可及的に切除しY-graft置換,ドレーンを後腹膜腔に2本留置し,手術を終えた.検体の培養よりCitrobacter amalonaticusが検出された.術後,炎症所見は漸減,ドレーン培養が陰性であることを確認し,抜去した.術後,一過性のイレウスを生じたが軽快,その後再感染の徴候はない.
  • 橋本 泰司, 坂下 吉弘, 高村 通生, 上松瀬 新, 清水 亘, 渡谷 祐介
    2004 年 65 巻 5 号 p. 1209-1213
    発行日: 2004/05/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    気管支嚢胞は胎生期の気管支原基の迷入により生じる先天性疾患で,後腹膜腔に発生するものは極めて稀である.われわれは,後腹膜腔に発生した気管支嚢胞の1例を経験したので報告する.症例は56歳男性.検診の腹部超音波検査で後腹膜腫瘤を指摘され,当科紹介となった.腹部CT, MRI検査で,左横隔膜下の後腹膜腔に石灰化を伴った9cm大の嚢胞状腫瘤を認めた. MRIより嚢胞内容の質的診断を行い,後腹膜気管支嚢胞と術前診断した.手術は腫瘤摘出術を施行した.腫瘤は,線維性被膜で覆われ浸潤像を認めず,割面は多房性嚢胞で内容は粘調な粘液であった.病理組織学的に,嚢胞壁は線毛上皮で覆われ,壁の一部には気管支腺様の腺組織,軟骨組織を認め,気管支嚢胞と確定診断した.悪性所見は認めず,術後1年経過した現在,再発を認めていない.嚢胞性病変の質的診断にはMRIが非常に有用であった.
  • 文 敏景, 河野 匡, 宮永 茂樹, 藤森 賢, 吉村 邦彦, 坪井 永保
    2004 年 65 巻 5 号 p. 1214-1217
    発行日: 2004/05/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    一側胸腔の3分の1位以上を占める巨大肺嚢胞症の手術に際しては,背景に気腫肺があるため,気道内圧を上げないなどの術中管理に注意が必要である.今回,われわれは右巨大肺嚢胞症の手術に際して,対側気胸を合併した1例を経験したので報告する.
    症例は, 57歳男性.平成11年3月に肺気腫と右巨大肺嚢胞症と診断された.その後右巨大肺嚢胞が増大し,呼吸困難感が増悪したため手術の方針となった.左側臥位にて胸腔鏡下右肺嚢胞縫縮術を施行した.手術開始から90分経過した頃に突然SaO2と血圧が低下し左呼吸音も消失した.側臥位のまま胸部レントゲン撮影をした結果,左気胸の合併と判明したため20Frトロッカーカテーテルを挿入した.バイタルサインの安定を待ち右肺縫縮術を再開した.右側終了後に体位を変換し,左側にも手術を施行した.
    巨大肺嚢胞症の手術に際しては,術中対側気胸に十分注意する必要がある.
  • 加藤 洋介, 土山 智邦, 戸川 保, 中村 康孝
    2004 年 65 巻 5 号 p. 1218-1221
    発行日: 2004/05/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は55歳,女性.胆石・胆嚢炎との診断にて開腹胆嚢摘出術を施行したが,術中解剖学的位置に胆嚢を認めなかった.術前に撮影したMDCT画像を再構成し,冠状断・矢状断像を得て再評価したところ,右横隔膜は一部欠損し,胆嚢は胸腔内に存在したため,無症状右側Bochdalek孔ヘルニアと診断した.ヘルニア門が8×8cmと大きく,肝臓のくびれに横隔膜が食い込んでおり, 1期的閉鎖が困難であったため,胆嚢摘出術を行った後,ヘルニア門の修復を行わず,手術を終了した.手術後の経過は良好で,症状の発現を認めなかった.右側であり肝によってヘルニア門が閉鎖されていたため,厳重な経過観察を行い退院となった.成人の右側Bochdalek孔ヘルニアは非常に稀な疾患で,一般に手術治療を行うが,保存的に加療した報告は1例のみであった.その取り扱いについて若干の文献的考察を加え報告する.
  • 滝沢 宏光, 沖津 宏, 日野 直樹, 原内 大作, 中園 雅彦, 廣川 満良, 佐野 壽昭
    2004 年 65 巻 5 号 p. 1222-1226
    発行日: 2004/05/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は70歳,男性.上腹部痛,嘔気,嘔吐を訴え来院し,上部消化管内視鏡検査で食道胃接合部より3cm口側の食道に,粘膜下腫瘍様の小隆起病変(0-Isep)を指摘された.生検では低分化型扁平上皮癌が疑われた. 14カ月前に受けた上部消化管内視鏡検査でも同様の所見を指摘されていた.根治術として右開胸中下部食道切除術,胸腔内胃管再建術を施行した.病理組織所見では,腫瘍部分の粘膜固有層内に大型の異型細胞からなる癌胞巣がみられたが,表層の扁平上皮に異型性は認められなかった.癌胞巣周囲にリンパ球の浸潤が顕著で,リンパ瀘胞の形成も伴っており,リンパ球は癌胞巣内にまで浸潤していた.深達度はmであり, infα, ly0, v0, n0であった.本症例は組織学的に低分化型で増殖能の高い腫瘍であると考えられたが, 14カ月の間腫瘍が増大しなかった理由として,浸潤したリンパ球により腫瘍の増大,転移が抑制されていた可能性が考えられた.
  • 原 正, 千野 修, 亀谷 武彦, 島田 英雄, 町村 貴郎, 幕内 博康
    2004 年 65 巻 5 号 p. 1227-1231
    発行日: 2004/05/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は68歳,男性.上腹部不快感にて平成12年12月に上部消化管内視鏡検査を施行した.上門歯列より37cm,下部食道右壁に粘膜下腫瘍様の隆起性病変と胃体下部小彎前壁に0-IIa+IIc型早期胃癌を認めた.胃病変に対し内視鏡的粘膜切除術を施行した後経過観察していた.食道病変は約4カ月間粘膜下腫瘍様の肉眼形態を維持しており, 2回の生検で悪性所見は得られなかった.その1カ月後に2型進行癌へと急速に発育し,生検で扁平上皮癌と診断された.同病変に対し左開胸開腹下部食道胃噴門側切除術, 2群リンパ節郭清を施行した.病理組織所見は低分化型扁平上皮癌, pT2, pN2, pStage IIIであった.術後2年5カ月現在無再発生存中である. 0-I sep型食道表在癌が5カ月間で2型進行癌に発育進展した1例を経験したので文献的考察を加えて報告した.
  • 中崎 隆行, 柴田 健一郎, 長谷場 仁俊, 谷口 英樹, 中尾 丞, 高原 耕
    2004 年 65 巻 5 号 p. 1232-1236
    発行日: 2004/05/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は69歳男性.腹部膨満感のため近医受診し腹部腫瘤を指摘され当院紹介入院となった.腹部CT検査では胃,十二指腸,横行結腸と接する約15cmの腫瘍を認めた.血管造影では右胃大網動脈,左胃動脈,右結腸動脈より栄養されるhypervascularな腫瘍であり,胃または大網由来のgastrointestinal stromal tumor (GIST)の診断にて手術を行った.腫瘍は横行結腸さらには膵への浸潤も疑われ膵頭十二指腸切除,横行結腸切除を行った.切除標本は18×16×13cmの腫瘍で総重量3250gであった.病理組織学的所見では核の偏在した細胞がびまん性に増殖し免疫染色では腫瘍細胞はIgG, kの産生を示しており形質細胞腫と診断した.術後の骨髄像では異常を認めなかった.巨大な胃形質細胞腫の1例を経験したので文献的考察を加え報告する.
  • 横山 昌樹, 星 信, 石川 惟愛
    2004 年 65 巻 5 号 p. 1237-1240
    発行日: 2004/05/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    CA19-9産生胃癌の1例を経験したので報告する.症例は51歳女性で, 2000年4月頃より心窩部痛を認め,外来で血清CA19-9の異常高値を指摘された.上部消化管透視で幽門部の狭窄を認め,胃癌疑いにて2000年6月手術施行となった.胃腫瘍は横行結腸に浸潤しており,胃全摘,結腸切除, D2リンパ節郭清術を施行した.切除標本にて低分化腺癌の診断が得られ,免疫組織学的に抗CA19-9抗体が染色された.術後血清CA19-9の低下を認めたが,次第に上昇し,血清CEAも上昇した.抗癌剤の治療を施行したが,癌性腹膜炎で2002年2月死亡した.
  • 芝原 一繁, 天谷 奨, 黒川 勝, 八木 真悟, 魚津 幸蔵, 長谷川 洋, 前田 宣延
    2004 年 65 巻 5 号 p. 1241-1244
    発行日: 2004/05/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は58歳男性.検診の胃内視鏡検査で胃体下部後壁中心のスキルス胃癌と診断された.生検結果はpor 2であった.胃全摘術を目的に入院した.術前の上部消化管造影検査,腹部造影CT検査,内視鏡検査では,腫瘍の形態変化を認め,同部位の限局性の5型進行癌と診断した.胃全摘を回避し, D2リンパ節郭清を伴う幽門側胃切除にて根治術を施行しえた.迅速診断にて切除断端陰性を確認した.病理組織学的に,腫瘍は小型の4型癌で低分化腺癌(por 1), ss, int, ly2, v0, n1, Stage IIであった.癌近傍の漿膜下層内にアニサキス幼虫を含む膿瘍の存在が証明された.本症の形態変化にアニサキス症による炎症性変化がvanishing tumorとして深く関与したものと考えられた.境界不明瞭で,スキルス胃癌が疑われる胃癌の術前診断時には,アニサキス症の合併も考慮に入れる必要があろう.
  • 盛島 裕次, 山城 和也, 羽地 周作, 深町 俊之, 久高 学, 与儀 実津夫
    2004 年 65 巻 5 号 p. 1245-1248
    発行日: 2004/05/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    術前診断が可能であった左傍十二指腸ヘルニアの1例を経験したので報告する.症例は13歳,男児.左上腹部痛,悪心,嘔吐のため来院した.入院時腹部CT検査では,左上腹部の小腸の限局性拡張像と,拡張腸管の腹側を走行する下腸間膜静脈(IMV)を認めた.上部消化管造影(UGI)では,左上腹部に円弧状の境界を持つ小腸の集塊像を認めた.以上より左傍十二指腸ヘルニアと診断し,腹腔鏡下手術を試みた.腹腔内を観察したところ, Treitz靱帯の左側の傍十二指腸窩にヘルニア門が認められた.ヘルニア内容の整復は容易であったが,ヘルニア門の閉鎖はすぐ左縁を走行するIMVの損傷の危険性を考慮し,小開腹を加えて行った.本疾患は特徴的な画像所見を有しており,腹部CT, UGIは本疾患の診断に有用である.強固な癒着,絞扼を伴わない左傍十二指腸ヘルニアは腹腔鏡下根治術が可能であると思われた.
  • 小林 平, 新原 主計, 横山 隆
    2004 年 65 巻 5 号 p. 1249-1252
    発行日: 2004/05/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は70歳女性,平成15年3月心窩部痛を主訴に来院,肝胆道系酵素の上昇を認め精査加療目的で入院となった.腹部エコー,腹部CTでは胆石,総胆管結石を認めず,絶飲食後に肝胆道系酵素の改善を認めたため経口開始するも再び心窩部痛出現,肝胆道系の酵素の上昇を認めた.このため乳頭筋機能不全や膵胆管合流異常を疑い, ERCP施行した.膵胆管合流異常なく,乳頭傍憩室を認めレンメル症候群と診断した.経口摂取開始後に痛みが再発するため総胆管空腸吻合術を施行した.術中採取した胆嚢内胆汁中のアミラーゼが18,090IUと異常高値であった.
    一般にレンメル症候群は,十二指腸憩室による胆汁・膵液のうっ滞により起こると考えられているが,本症例では痛みの発症に膵液の総胆管,胆嚢内への逆流が関与していると考えられ,若干の文献的考察を含め報告する.
  • 和田 義人, 宮崎 亮, 和田 純治, 金子 朋代, 鳥巣 要道
    2004 年 65 巻 5 号 p. 1253-1257
    発行日: 2004/05/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    83歳,女性.下血を主訴に入院となった.上部消化管内視鏡検査で十二指腸球部に出血を伴った隆起性病変を,腹部CT, MRIで十二指腸前壁に巨大な充実性腫瘤を認めた.出血性十二指腸腫瘍の診断で幽門側胃切除術を施行した.病理所見は潰瘍を伴ったブルンネル腺過誤腫であった.この腫瘍は,稀な良性腫瘍で必ずしも切除の対象とはならないが,悪性との鑑別が困難な症例,合併症を有する症例では早急な切除が望まれる.
  • 本坊 健三, 福枝 幹雄, 二渡 久智, 蓮井 和久
    2004 年 65 巻 5 号 p. 1258-1262
    発行日: 2004/05/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    好酸球性胃腸炎は消化管への好酸球浸潤により多彩な臨床症状を呈する比較的稀な疾患である.われわれは小腸穿孔を合併した好酸球性胃腸炎の1例を経験した.症例は47歳,女性で20年前に原因不明の腹水の既往があった.今回も著名な腹水と腹痛を認めたか,その原因を精査中に小腸穿孔を起こした.重篤な汎発性腹膜炎になったが,ステロイドが効果的で救命しえた.術後は現在までステロイドの内服で良好な経過をみている.文献的検索では穿孔合併の好酸球性胃腸炎は極めて稀であった.穿孔を起こせば重症化しやすく何らかの腹部症状と好酸球分画増多を認めた場合,本症を念頭において早期に検索を進めるべきと思われた.
  • 湊 栄治, 大竹 耕平, 藤野 一平, 松本 収生, 嶋 廣一
    2004 年 65 巻 5 号 p. 1263-1266
    発行日: 2004/05/25
    公開日: 2009/03/31
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    症例は83歳の女性. 1カ月前より軽い腹痛,嘔吐を時折認め近医通院中であったが, 2003年9月11日より腹痛が増強し当院を受診した.腹部は緊満するも軟であり,聴診では鼓腸音が認められた.腹部手術の既往はなかった.腹部単純写真では小腸ガス像および鏡面像がみられた.同日イレウス管の挿入を行ったところ翌日には腹部症状も改善し,イレウス管の造影で,造影剤は大腸まで流出が認められた.大腸内視鏡を施行したが特に異常は認められず,一旦イレウス管を抜去した. 9月27日に再度腸閉塞をきたし,開腹手術を施行した.臍部腹膜側から,回盲弁より80cm口側の回腸にいたる索状物が認められた.これを軸として時計回りに回腸が約360度捻転しており,臍腸管遺残に起因する小腸軸捻転と考えられた.
  • 諸原 浩二, 清水 喜徳, 中尾 健太郎, 鈴木 恵史, 角田 明良, 草野 満夫
    2004 年 65 巻 5 号 p. 1267-1272
    発行日: 2004/05/25
    公開日: 2009/03/31
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    症例は77歳,女性. 2000年9月腸結核にて当院消化器内科で保存的治療が行われていたが, 2002年6月回腸での2ヵ所の輪状潰瘍瘢痕狭窄によるイレウスを発症し,小腸部分切除と狭窄部形成術を施行した. 2003年5月1日突然の嘔吐と腹部膨満感を主訴に再入院となった.画像所見では小腸の著明な拡張とニボー像を認め,腹部所見では腹部全体が著明に膨満し圧痛を認めたが,腹膜刺激症状は認められず,絞扼を示唆する所見はなかった.同日イレウス管を挿入したが減圧不良であり,翌日,白血球数・血小板数の減少と腹膜刺激症状も認めたため,敗血症を伴う絞扼性イレウスを疑い同年5月2日緊急手術を施行した.開腹所見では,絞扼腸管は認めなかったが,前回の手術部と同一の2ヵ所に狭窄が認められ,ここを含めた回盲部切除,小腸瘻造設術を行った.切除した拡張腸管内にPTPを1個認め,これが肛門側の狭窄部を閉塞してイレウスが誘発されたと考えられた.
  • 五十嵐 直喜, 萩生田 純, 星本 相淳, 松井 英男, 小山 恭正, 宮北 誠
    2004 年 65 巻 5 号 p. 1273-1276
    発行日: 2004/05/25
    公開日: 2009/03/31
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    虚血性小腸炎は比較的稀な疾患である.その中で狭窄型を呈したものは自験例を含めて44例であった.症例は66歳,男性で臍周囲の腹痛を主訴に来院した.腹部CT,イレウスチューブ造影検査で小腸の狭窄性病変が疑われた.保存的治療施行したが改善せず,開腹手術を施行.回盲弁より140cm口側に15cmにわたり全周性の小腸の肥厚を認めた.切除標本で腸管壁の肥厚を伴った求心性管状狭窄と全周性の潰瘍を認めた.病理組織学的検索と含めて狭窄型虚血性小腸炎と診断された.本症例における虚血性小腸炎の発症には,心疾患や開腹手術の既往が関与している可能性が示唆された.また虚血性小腸炎は術前診断が困難であるが腹部CT検査,イレウスチューブ造影検査である程度の診断が可能であった.若干の文献的考察を加えて報告する.
  • 東 幸宏, 中村 利夫, 林 忠毅, 宇野 彰晋, 今野 弘之, 中村 達
    2004 年 65 巻 5 号 p. 1277-1280
    発行日: 2004/05/25
    公開日: 2009/03/31
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    症例は66歳,男性. 2002年9月より心房細動を指摘され以後,内服薬で加療されていた. 2002年11月16日より,上腹部痛を自覚し当院を受診した.腹痛は,一過性で軽快したが, 12月18日,再び激しい間歇性の腹痛を認め入院となった.精査にて遠位空腸に著しい管状狭窄像を認めた.腫瘍性病変の存在は否定的であり,狭窄型虚血性小腸炎の術前診断にて,原因の確定診断と治療を兼ね, 2003年1月22日,腹腔鏡補助下手術を施行した.病変部小腸は漿膜面の発赤,壁の硬化を認め,小切開を加え小腸部分切除を施行した.その他に異常所見はなかった.術後経過は良好で,術後7病日に退院した.虚血性小腸炎の本邦報告例において腹腔鏡補助下の手術経験は数件のみであるが,腹腔鏡補助下手術は,低侵襲であるだけでなく良好な広い視野が得られ他疾患の鑑別にも有用と考えられた.
  • 石井 要, 鎌田 徹, 千田 勝紀, 竹田 利弥, 神野 正博
    2004 年 65 巻 5 号 p. 1281-1284
    発行日: 2004/05/25
    公開日: 2009/03/31
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    Meckel憩室はその合併症で外科的治療の対象になることがある.今回,慢性的炎症が原因で発症した腸閉塞の1例を経験したので,文献的考察を加え報告する.
    症例は11歳女性で, 2年前より3回にわたり腸炎症状にて入退院を繰り返していたが,いずれも保存的に軽快していた.今回,強い右下腹部痛を主訴に受診.小腸造影にて,回腸の浮腫および狭窄を認めた.保存的治療にて改善がないことから開腹手術を施行した.回盲弁より口側約70cmの部位で回腸は炎症性肥厚,狭窄を呈しており,肛門側小腸間膜に強固に癒着していた.狭窄部の前後10cmの回腸を部分切除した.標本にて約1cm大のMeckel憩室を認めた. Meckel憩室は非穿孔性で,憩室自身の炎症の程度は軽度であった.今回はそれまで腸炎として加療されていた時より慢性的にMeckel憩室に炎症が生じ,それが波及し小腸に狭窄および亜腸閉塞を生じたものと考えられた.
  • 森 隆太郎, 三浦 勝, 高橋 徹也, 小尾 芳郎, 山中 研, 阿部 哲夫
    2004 年 65 巻 5 号 p. 1285-1289
    発行日: 2004/05/25
    公開日: 2009/03/31
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    症例は68歳の女性.下痢,腹痛,食思不振を主訴として当院救急外来を受診した.既往歴は20年前より慢性関節リウマチ, Sjögren症候群の診断でプレドニゾロン5mg/dayを内服加療中であった.腹部所見では心窩部に筋性防御および反跳痛を認め,胸腹部X線で腹腔内遊離ガスを認めた.腹部CTにより腸管嚢腫様気腫症(PCI)を考えたが,消化管穿孔の合併を否定できず緊急手術を施行した.術中所見では空腸の約40cmにわたり限局した腸管壁の発赤,浮腫,腫脹と腸管壁から腸間膜に多数の気腫を認め空腸PCIと診断し,空腸部分切除術を施行した.現在,術後約1年経過し,外来通院中であるが気腫の再発は認めていない.膠原病にPCIを合併することは比較的稀であり,さらに慢性関節リウマチ, Sjögren症候群をともに合併したPCI症例はこれまで報告されていない.その病因,診断などについて文献的考察を加え報告した.
  • 沖津 奈都, 沖津 宏, 清家 純一, 本田 純子, 梅本 淳, 門田 康正
    2004 年 65 巻 5 号 p. 1290-1296
    発行日: 2004/05/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    今回われわれは輸血を要する大量下血を呈した小腸GISTの2例を経験したので文献的考察を加え報告する.症例1は64歳,男性.ショック状態での来院時, Hb 2.1g/dlにて赤血球濃厚液20単位を輸血した. CTで右下腹部に8×6cm大の分葉状の腫瘤,肝S8に2cm大の腫瘤を認めた.肝病変の針生検ではGISTの転移であった.手術は回腸切除,播種腹膜切除,肝部分切除を行った.術後STI571を投与中で術後15カ月の現在,再発なく経過観察中である.症例2は67歳,女性. 1年前に下血による貧血にて赤血球濃厚液8単位を輸血していた.以後下腹部膨満感を認め,腹部CTにて骨盤内に10×6cm大の腫瘤を認め紹介となった。血管撮影にて回腸動脈より支配される腫瘤濃染像を認めた.小腸GIST疑いにて回腸切除を行った.病理組織所見では小腸GIST, smooth muscle typeであり,術後30カ月の現在,再発は認めていない.
  • 伊藤 裕之, 鈴木 忠
    2004 年 65 巻 5 号 p. 1297-1301
    発行日: 2004/05/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は66歳,男性.黒色便を主訴に当院外来を受診した.受診時Hb 10.6g/dlで上部消化管内視鏡検査では出血性病変は認められなかった.その後も貧血は進行し,大腸内視鏡検査で小腸からの出血が確認されたため開腹手術を行った.回腸末端から約30cmの小腸に腫瘤を認めたため小腸部分切除術を行った.術後経過は良好であったが,腹部CT検査で多発肝転移を認め,胃内視鏡検査では胃幽門部に転移と思われる潰瘍性病変が認められた.病理組織検査では免疫染色で絨毛性ゴナドトロピン(HCG)陽性であり絨毛癌と診断された.血中HCGも著明に上昇していた.子宮絨毛癌に準じた化学療法を行うこととし, methotrexate・actinomycin D・etoposide・leucovorinを使用したが1クール終了後肝不全のため永眠された.今回稀な小腸絨毛癌の症例を経験したので若干の文献的考察を加え報告する.
  • 堀 智英, 岡田 喜克, 町支 秀樹, 宗行 毅, 永井 盛太, 岸和田 昌之, 今井 裕
    2004 年 65 巻 5 号 p. 1302-1307
    発行日: 2004/05/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は56歳,女性.当院受診6カ月前から盲腸polyp病変(生検でGroup 2)にて近医で大腸内視鏡検査(以下, CF)によるfollow up中であった.腫瘍径が15mmと増大したため,精査加療を目的に当院内科へ紹介.注腸造影で盲腸に15mm大の隆起性病変を認め,虫垂は描出されなかった. CFで盲腸に15mm大の広基性,桑実状のpolyp病変を認め,生検ではGroup 2であった.形態から内視鏡的polypectomyは困難であった.悪性所見はなく生検を含むCFでのfollow upを勧めたが,外科的切除を希望され当科に紹介.手術所見で盲腸polyp病変は柔らかく触れたが,虫垂先端の壁が肥厚し硬く触れ, 201番リンパ節の腫大を認めた.虫垂癌の併存も考慮し回盲部切除術(D2)を施行.病理組織学的に盲腸虫垂開口部のpolyp病変はlymphoid hyperplasiaで,虫垂先端に高分化型の腺癌が認められた.術後5年8カ月目の現在再発を認めない.
  • 森岡 徹, 難波 康男, 藤原 久美, 藤原 恒弘
    2004 年 65 巻 5 号 p. 1308-1312
    発行日: 2004/05/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    腹部鈍的外傷によって起こる腸管損傷は破裂や断裂などの急性損傷がほとんどで遅発性の腸管狭窄は稀である.われわれは鈍的腹部外傷による遅発性の大腸閉塞症例を経験した.症例は20歳,男性.主訴は上腹部痛.軽自動車のハンドルで腹部を強打し,受傷17日目に至って食欲不振,腹痛にて入院した.注腸造影では,横行結腸に造影剤が停滞し,その口側に造影剤の通過が全く認められなかった.横行結腸閉塞によるイレウスと診断し開腹すると,横行結腸に固い腫瘤を認め,通過障害の原因と考えられ部分切除を行った.病理組織では,固有筋層の断裂があり,肉芽組織や線維組織により分断され,漿膜外側に厚い線維化が拡がり肥厚,瘢痕化していた.画像診断の発達とともに外傷による不必要な開腹症例は減少しているが,本症例のような遅発性の合併症が今後増加していくのではないかと思われ,経過観察上,注意を要すると考えられた.
  • 高橋 英治, 吉田 洋, 松尾 吉庸, 藤田 眞幸
    2004 年 65 巻 5 号 p. 1313-1317
    発行日: 2004/05/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    巨大結腸症は結腸の持続的拡張により,腹部膨満,慢性便秘などの症状を呈する疾患である.今回われわれは巨大結腸症にS状結腸軸捻転症を繰り返し,結腸全摘術を施行した1例を経験した.症例は81歳,女性.腹部膨満,嘔気,嘔吐を主訴として2001年10月2日当院内科受診し,イレウスの診断にて入院した.以前の注腸検査で巨大結腸症,とくにS状結腸の拡張を認めており, S状結腸軸捻転症を考え,大腸内視鏡検査による整復を施行した.しかし,その後もイレウスを繰り返すため,外科へ紹介された.術前合併病変として腹部CT, MRI検査にて左腎上極,左胸壁の腫瘍が指摘された. 11月13日結腸全摘術,左腎上極・左胸壁腫瘍摘出術を施行した.術後病理組織学的検査では結腸神経叢は温存されており,特発性巨大結腸症と診断された.また腫瘍は悪性線維性組織球腫と診断された.
  • 輿石 直樹, 井出澤 剛直, 井上 亜矢子, 柴 修吾, 岡崎 護, 木嶋 泰興
    2004 年 65 巻 5 号 p. 1318-1322
    発行日: 2004/05/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    直腸gastrointestinal stromal tumor (GIST)が局所再発を繰り返し,異時性に肝転移をきたした症例を経験したので報告する.症例は82歳,女性.既往歴としては, 61歳時に,直腸平滑筋肉腫のため,経仙骨的切除術施行した.その後, 18年間に4回の局所再発を認め, 79歳時に腹会陰式直腸切断術を行い,この際,直腸GISTと診断された.今回,肝腫瘍を指摘され入院した.精査にて,肝S3に3.0cm, S4に1.0cmの転移性腫瘍を認め,これら2個の転移性肝腫瘍に対し核出術を行った.病理診断は直腸GISTの肝転移で,免疫組織学的にCD34, c-kitは陽性, SMA, desmin, NSEは陰性で,直腸の原発巣と同様の所見であった.本例は初回治療から21年が経過しており,非常に緩徐な進行様式を呈するGIST悪性型と言える.この様な症例は非常に稀であり,文献的考察を加え報告する.
  • 浅海 信也, 福重 寛, 伊東 紀子, 坂本 吉隆, 永渕 幸寿
    2004 年 65 巻 5 号 p. 1323-1327
    発行日: 2004/05/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は66歳,男性.左鼠径部腫瘤および腹痛にて近医受診し,腸閉塞の診断にて紹介入院となる.精査にて左腸腰筋膿瘍を合併した下行結腸癌と診断され,腸腰筋,腸骨筋を外科的剥離面として下行結腸とともに合併切除した.術後筋力低下と大腿神経麻痺にて約8年間のリハビリを必要としたが,自立歩行可能となった.結腸癌で腸腰筋膿瘍を合併することは稀であり本邦報告例とともに若干の文献考察を加え報告する.
  • 徳岡 優佳, 池永 雅一, 三嶋 秀行, 平尾 素宏, 藤谷 和正, 辻仲 利政
    2004 年 65 巻 5 号 p. 1328-1331
    発行日: 2004/05/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は75歳,女性.主訴は血便.既往歴に1971年に,子宮体癌に対して子宮全摘術,放射線根治照射(線量不詳)を受けている. 1987年,直腸膀胱瘻のため直腸低位前方切除術,膀胱部分切除術施行された. 1990年,糞尿が出現し膀胱回腸瘻と診断し回腸導管造設術施行した. 1999年より時折下血を認め, 2001年下部内視鏡を行ったところ下部直腸に潰瘍性病変を認めた.直腸癌の診断のもと,腹会陰式直腸切断術を施行した.病理組織診断では腺扁平上皮癌, a2, ly0, v0, n0, stage IIであった.長期にわたる放射線腸炎の既往より,放射線照射後に発生した直腸腺扁平上皮癌と診断した.骨盤部に放射線照射を施行された症例では,二次癌も考慮に入れた経過観察が必要であると考えられた.
  • 谷口 正次, 古賀 和美, 山本 淳, 指宿 一彦, 後藤 崇, 中島 健
    2004 年 65 巻 5 号 p. 1332-1336
    発行日: 2004/05/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    単発の胃癌肝転移切除4例中, 3例で5年以上の無再発生存が得られた.症例1: 75歳,女性.幽門部の2型胃癌(tub2, ss, n1)に対し幽門側胃切除術を行った. 11カ月後,肝右葉の7.8×6.8cm大転移巣に対して肝S5S6S7切除を施行し, 10年後の現在無再発生存中.症例2: 69歳,男性.胃体部の5型胃癌(tub1+por1, se, n2, H1)に対し胃全摘術+膵体尾部・脾合併切除+肝S3部分切除を施行した.術後5年間UFT投与し, 9年5カ月後無再発生存中.症例3: 58歳,女性.胃体下部のAFP産生3型胃癌(tub2+pap, se, n2)に対し胃亜全摘術を施行した. 1年4カ月後に肝S6の転移巣に対して肝切除術(S6+S5一部)を行い, 5年4カ月後無再発生存中.他に非治癒因子を有さない単発の胃癌肝転移は,治癒の可能性も十分あり,積極的に切除を考慮すべきである.
  • 埜村 真也, 高島 勉, 仲田 文造, 畑間 昌博, 西野 裕二, 平川 弘聖
    2004 年 65 巻 5 号 p. 1337-1341
    発行日: 2004/05/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は54歳男性.主訴は呼吸困難.胸部単純X線写真にて右胸水の貯留を認め,腹部CTでは肝S8に低吸収域と高吸収域の混在する5cm大の占拠性病変を認めた.胸腔ドレナージ,肝膿瘍ドレナージを行った.肝膿瘍ドレーン造影では右胸腔内との交通を認め,肝膿瘍の右胸腔内穿破と診断した.排液の細菌検査で細菌は検出されず,血中アメーバ抗体は正常上限の2倍であったが,ドレーン排液,便の鏡検ではアメーバ原虫は認めなかった.メトロニダゾールを含む抗生物質の投与とドレナージを行うも軽快せず, MRI検査を行ったところ肝細胞癌が疑われ,血管造影では肝右葉前上区域枝に腫瘍濃染像を認めたため肝細胞癌による肝膿瘍と診断した.手術は肝S8部分切除,瘻孔部切除術を施行した.未治療の肝細胞癌に膿瘍を形成し,胸腔内に穿破したこの希有な症例に対し,若干の文献的考察を加えて報告する.
  • 鴨下 憲和, 堀井 吉雄, 大和田 進, 富沢 直樹, 竹吉 泉, 森下 靖雄
    2004 年 65 巻 5 号 p. 1342-1345
    発行日: 2004/05/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    肝切除後良性胆管狭窄は3~5%に伴い,治療に難渋する.今回,大腸腫瘍肝転移に対する拡大肝右葉切除後の良性胆管狭窄に自己拡張型金属ステント(EMS)留置が有効であった1例を経験した.症例は71歳,女性.直腸癌・回盲部癌・巨大肝転移のため低位前方切除・結腸右半切除・拡大肝右葉切除施行された.術前術後に総量約170gのフッ化ピリミジンを投与された.外来経過観察中,肝機能はしばしば変動していた.術後3年経過時GOT 206 (IU/L), GPT 113 (IU/L), T-bil 5.1 (mg/dl)と肝機能悪化を認めた.腹部CT・US検査で著明な肝内胆管拡張を認めたが肝転移・肝門部リンパ節転移は認めず.経皮的ドレナージ施行時に総胆管左肝内胆管移行部に強度狭窄を認めた.バルーン拡張術では一時的に改善するも再狭窄するため, EMSを留置し奏効した.
  • 竹内 麦穂, 仲原 正明, 今分 茂, 上島 成幸, 中尾 量保, 辻本 正彦
    2004 年 65 巻 5 号 p. 1346-1350
    発行日: 2004/05/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    患者は65歳,女性.乳癌および胆嚢結石症の手術既往あり.腹部CT検査にて総胆管結石,肝内結石を指摘. MRI, ERC検査にて肝内胆管B3の拡張を認めた.腹部血管造影にて悪性所見を認めず,血清CEA, CA19-9値も正常であった. 2001年2月,総胆管切石,肝外側区域切除術を施行した.術中迅速組織検査にて胆管癌で断端陽性との結果であった.肝S4区域切除およびリンパ節郭清を追加し,左肝管断端陰性を確認した.組織診断は胆管細胞癌で12aリンパ節に転移を認めた.原発性肝癌取扱い規約による組織学的所見はIg, Fc (-), S0, Vp0, B1, IM0, SM (-), NL, N1であった.術後17カ月で肝門部再発をきたし,外来にて温熱化学療法施行中である.
    肝内結石症の手術時には,術中迅速病理検査により肝内胆管癌の併存の有無を検索することが重要であると思われた.また胆管断端陰性であっても胆管切除すべきであったと考えられた.
  • 酒井 康孝, 北畠 俊顕, 行方 浩二, 三上 陽史, 松本 文夫, 津村 秀憲
    2004 年 65 巻 5 号 p. 1351-1355
    発行日: 2004/05/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    腺扁平上皮癌の組織型を呈した胆管細胞癌の1例を経験した.症例は72歳の女性.右季肋部痛,発熱あり近医にて胆石症,胆管炎疑われ当院紹介入院となる.炎症所見と胆道系酵素の上昇あり,また腹部CT検査にて肝S4~S5にかけて肝外に突出した周囲enhanceされるlow density massをみとめた.注腸造影検査では,肝弯曲部付近の結腸に浸潤が疑われた.腹部超音波検査では,肝床部に内部不均一な腫瘤像を認め,肝外に突出し結腸浸潤をきたした胆管細胞癌と診断した.開腹所見では,肝S4, S5中心に腫瘤を認め胆嚢,結腸,十二指腸へ浸潤を認めた.手術は,肝S4a, S5切除,結腸,十二指腸部分切除術施行した.病理組織学検査にて肝内胆管原発の腺扁平上皮癌と診断された.術後2カ月で残肝再発しその1カ月後に死亡した.
  • 金住 直人, 完山 泰章, 横井 一樹, 鈴木 祐一, 木村 次郎, 石井 正大
    2004 年 65 巻 5 号 p. 1356-1360
    発行日: 2004/05/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は71歳,男性.心窩部痛,全身倦怠感にて近医を受診し,黄疸と肝機能異常を指摘され当院紹介となる.腹部CT検査では,総胆管,主膵管の拡張を認めた. PTBD造影では,膵内胆管に狭窄を認め,同部位の生検はgroup Vであった. ERPで主膵管の拡張と著明に拡張した副膵管内に透亮像を認めた.また,主乳頭は腫大し,開口部は開大し粘液の排出を認めた.以上より副膵管原発膵管内腫瘍由来の浸潤癌の術前診断にて,幽門輪温存膵頭十二指腸切除術に施行した.著明に拡張した副膵管内に乳頭状に発育する腫瘍を認め,副乳頭へと浸潤していた.病理結果はpapillary differentiated adenocarcinomaであった.比較的まれな副膵管原発の膵管内腫瘍由来の浸潤癌を経験したので13例の報告例を含め,若干の文献的考察を加え報告する.
  • 田中 千恵, 野崎 英樹, 小林 裕幸, 清水 稔, 秀村 和彦, 佐々 実穂
    2004 年 65 巻 5 号 p. 1361-1365
    発行日: 2004/05/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は68歳の男性で黄疸のため入院した.腹部超音波検査にて膵頭部の腫瘤および尾側膵管の拡張を指摘された.精査の結果,通常の膵管癌とは異なる膵頭部癌の診断で膵頭十二指腸切除術を施行した.切除標本上膵頭部に7.0cmの充実性の結節型腫瘍を認めた.術後病理組織検査にて膵腺扁平上皮癌と診断した.免疫染色で腺癌部分だけでなく中~低分化の扁平上皮癌の部分もCEA, CA19-9, CA15-3で陽性に染まり,扁平上皮癌成分は腺癌の性質を有すると考えられた.発生学的機序として腺癌の直接扁平上皮化が考えられた.
  • 西岡 宏彰, 平林 邦昭, 硲野 孝治, 山口 拓也, 戸口 景介
    2004 年 65 巻 5 号 p. 1366-1370
    発行日: 2004/05/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    脾臓に多発結節性病変を認め,悪性腫瘍が疑われたため脾臓摘出術を施行したところ脾臓サルコイドーシスの病理診断を得た1例を経験した.
    症例は53歳,男性.定期健診にて腹部超音波検査上脾臓に多発性腫瘤像を指摘された. CTにても多発low density areaを,血管造影上hypovascular tumor像を認め,悪性リンパ腫を含め悪性病変を疑い,摘脾を施行した.病理組織所見にて脾臓全域に多数の非乾酪性類上皮細胞肉芽腫が認められ,それらが集合癒合して腫瘤状病変を形成しており脾サルコイドーシスと診断された.肺,肝にも生検によりサルコイドーシスを認めたが,眼球,皮膚に病変はなかった.患者は術後4年間著変なく経過している.
    脾臓の多発結節性病変では画像上脾サルコイドーシスと脾臓悪性腫瘍との鑑別は困難とされ,内外で数例,本例の如く摘脾後にサルコイドーシスの病理診断が得られた症例の報告がみられた.
  • 宇山 亮, 吉澤 康男, 笹屋 昌示, 根本 洋, 池田 忠明, 真田 裕
    2004 年 65 巻 5 号 p. 1371-1375
    発行日: 2004/05/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    尿膜管遺残症に対して腹腔鏡下に臍部の瘻孔を含め一塊に摘除し臍形成を施す術式を考案したので報告する.症例は18歳から29歳,男性3例,女性2例であった.臍炎,臍からの排膿を主訴とし外来加療されるも症状が遷延し腹部CT検査で尿膜管遺残症と診断された難治性症例に腹腔鏡下手術が行われた.手術所見では尿膜管遺残部に大網,小腸の線維性の癒着が多少とも見られた.まず癒着剥離を行い尿膜管遺残物を超音波凝固切離装置にて尾側より臍直下まで充分に遊離させた後腹腔外操作に移行し,臍を牽引反転させ外瘻孔開口部を全周性に切離し腹腔内の尿膜管と一塊にして摘除し,臍形成を付加した.術後の回復は順調で,臍部の変形はなく再発も見られていない.近年,尿膜管遺残に対する腹腔鏡下手術症例の報告が散見されるが臍部の瘻孔に対して言及したものはなく,本術式は瘻孔が完全切除でき,美容上も優れ有用な術式と考えられた.
  • 轟木 秀一, 藍澤 喜久雄, 宮下 薫, 奥村 直樹, 清永 英利, 山口 和也
    2004 年 65 巻 5 号 p. 1376-1380
    発行日: 2004/05/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    尿膜管癌は,浸潤性に発育し局在再発することが多く,手術以外に有効な治療法がない.われわれは根治切除後に局所再発を認めないまま骨転移をきたした尿膜管癌を経験した.症例は46歳,男性.排尿時痛と血尿を主訴に受診.腹部CT検査にて下腹部腹壁直下に嚢胞性と充実性部分の混在した腫瘤を認め,膀胱へ構造物が連続していた.尿膜管癌を疑い平成14年1月摘出術を施行した.腫瘍は10.5×6.5cmで内部にムチンが充満しており,病理学的検査にて尿膜管遺残に発生した腺癌と診断された.平成14年9月右第4肋骨への単発性骨転移をきたし再切除したが,その2カ月後には多発性骨転移が明らかとなった.尿膜管癌に対して稀であるが,骨転移も念頭においた定期的観察が必要と考えられた.また術式の選択,術後化学療法をいかに行うべきかについて文献的考察を加えて報告する.
  • 永井 盛太, 村林 紘二, 赤坂 義和, 楠田 司, 宮原 成樹, 高橋 幸二
    2004 年 65 巻 5 号 p. 1381-1385
    発行日: 2004/05/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    肝十二指腸間膜に発生したsolitary fibrous tumorの1例を経験したので報告する.症例は57歳男性.検診にて肝腫瘤を指摘され当科を受診した. USでは尾状葉に径6.5cmの境界が明瞭で,内部は高,低エコー域が混在し, CTでは尾状葉に径6cmの淡く造影される境界明瞭な腫瘍であった. MRIではT1強調像にてlow intensity, T2強調像にてlow~一部iso intensityを示し,腹部血管造影では尾状葉枝からの腫瘍濃染像を伴っており,肝腫瘍を疑い手術を施行した.術中所見では,腫瘍は萎縮した尾状葉に接するように肝十二指腸間膜内に位置し,尾状葉から分岐する血管が栄養血管であった.摘出標本では6×7.5×5cmの充実性腫瘍で, solitary fibrous tumorと診断した.胸膜外に発生したsolitary fibrous tumorは稀あるが,良性でも再発例が認められ,十分な経過観察が必要である.
  • 鈴木 修, 竹花 卓夫, 小林 正史, 松川 哲之助
    2004 年 65 巻 5 号 p. 1386-1391
    発行日: 2004/05/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    症例1は63歳男性で横行結腸癌にて腹腔鏡補助下横行結腸切除術を施行し,腸閉塞のため術後21日目に再手術を行った.吻合部周囲および空腸が脂肪織炎のため一塊となり切除した. 2回目手術後も空腸吻合部周囲の脂肪織炎による腸閉塞が持続し,術後67日目よりプレドニゾロン60mg/日を投与したところ症状は改善し144日目に退院した.
    症例2は86歳男性でS状結腸癌にて小開腹下S状結腸切除術を施行した.術後15日目に腸閉塞症状が出現し, CTにて吻合部周囲の脂肪織の肥厚とCT値上昇を認めた.術後17日目からプレドニゾロンを投与したところ症状は改善し術後39日目に退院した.
    腸間膜脂肪織炎の診断にはCTが有用で,他部位と異なるCT値を呈する脂肪組織の肥厚が特徴である.治療はステロイドが有効で原則的には保存治療を選択すべきである.術後早期の腸閉塞では本疾患も念頭におき無意味な手術を避けることが肝要である.
  • 太田 義人, 福長 徹, 小澤 弘侑, 木村 正幸, 菅本 祐司, 落合 武徳
    2004 年 65 巻 5 号 p. 1392-1396
    発行日: 2004/05/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    われわれは小網裂孔ヘルニアの1例を経験したので報告する.症例は76歳男性.特記すべき既往はない.心窩部痛を主訴に当院を受診し,上腹部に強い圧痛とBlumberg徴候を認めた.腹部単純X線写真で鏡面像を認め,造影CT検査では胃の背側に血行障害を伴う腸管を認めたため,絞扼性イレウスの診断で緊急手術を施行した.トライツ靱帯から約350cmの回腸が約40cmにわたって小網の異常裂孔に嵌頓し壊死していたため,小腸部分切除と異常裂孔の閉鎖を行った.小網裂孔ヘルニアは内ヘルニアのなかでも稀であり,術前診断は非常に困難である.しかし自験例で見られるような腹部単純X線や腹部CT検査での特徴的な所見があり,術前診断の一助となり得ると思われた.
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