日本臨床外科学会雑誌
Online ISSN : 1882-5133
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65 巻, 6 号
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  • 池田 宜子, 弥生 恵司, 西 敏夫, 五福 淳二, 柳生 俊夫, 川崎 勝弘, 山崎 大, 中野 芳明
    2004 年 65 巻 6 号 p. 1463-1466
    発行日: 2004/06/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    乳輪下膿瘍は非授乳期女性の炎症性疾患では最も多く,長期にわたり再燃を繰り返すため,臨床医にとり治療に難渋する疾患である.
    われわれは, 1986年より2002年までに乳輪下膿瘍48症例を経験し,うち22例にmicrodochectomyの手技を応用した独自の方法により異常乳管と膿瘍を合併切除し,良好な結果を得た.これらの症例について臨床的に検討すると共に,文献的考察を加えて報告する.
  • 桧垣 健二, 原野 雅生, 池田 義博, 佐々木 寛, 青木 秀樹, 小野田 正, 塩崎 滋弘, 大野 聡, 二宮 基樹, 高倉 範尚
    2004 年 65 巻 6 号 p. 1467-1472
    発行日: 2004/06/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    1987~2002年の間に施行された乳房温存手術584例を対象に再発形式を検討した.対象例の切除断端陽性例は74例(12.7%)であり,乳房照射は370例(63.4%)に行われた.平均観察期間は58.5カ月であり,再発は52例(8.9%)に認められ,その内訳は乳房19例(36.5%),乳房・その他3例(5.8%),局所8例(15.4%),遠隔転移22例(42.3%)であった.乳房の無再発生存率は, 5年95.7%, 10年94.0%であった.再発後の5年生存率は,乳房94.7%,局所70.0%,遠隔転移52.2%であり,乳房・その他は100%であった.乳房再発の19例の約2/3に再度乳房温存手術が施行された.予後が良好な原因としてその約半数がDCISもしくはそれに準じたものであったためと考えられることより,乳房温存手術後には可能な限り乳房再発の早期発見に努める必要がある.
  • 蛭川 浩史, 遠藤 和彦, 後藤 伸之, 佐藤 大輔, 長谷川 潤, 今井 一博, 木村 愛彦, 畠山 勝義
    2004 年 65 巻 6 号 p. 1473-1479
    発行日: 2004/06/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    胃癌術後例の血中ビタミンB1値について検討した.対象は胃癌術後3カ月以上経過した112例で,ビタミンB1値を測定し大腸癌術後症例25例のB1値と比較した.また胃癌術後例で低値を示した症例にビタミンB製剤の内服投与を行いB1値の変動を検討した.さらに胃癌術後例にアンケートを行いビタミンB1低値例の背景因子を検討した.結果,胃切除後例の血中ビタミンB1値は平均2.9μg/dl,大腸癌術後例は3.0μg/dlで両群に有意差はなかった.またビタミンB1欠乏は胃癌術後例の12例(10.7%),大腸癌術後例の1例(4%)にみられ,両群に有意差はなかった.またビタミンB製剤の内服で全例B1値が上昇した.アンケートの結果では低値例では正常例と比し体重減少率が高かった.以上からB1値の低下は胃切除術に起因したものではないが,低値を示す例があり,適切な食事指導や投薬などの細かな配慮が重要であると考えられた.
  • 胃GISTの特徴
    中山 隆盛, 白石 好, 森 俊治, 磯部 潔
    2004 年 65 巻 6 号 p. 1480-1485
    発行日: 2004/06/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    GISTの臨床病理学的特徴および予後因子を明らかにする. 1989年より2003年における全消化管GIST27例を対象とした.腫瘍部位は,胃16例,十二指腸1例,小腸6例,結腸1例および直腸3例であった.免疫染色の陽性は, c-kit; 22例, CD34; 24例, SMA; 3例, S-100; 4例, NSE; 12例であった.核分裂は, 7.9±12.9 (0-52)/50HPF (50 Hyper Field; 400倍率, 50視野)であった.リンパ節転移は, 3例に認められた.全例の観察期間69±59 (1-203)カ月における再発は3例であり,腫瘍死は5例であり, 5年生存率は88%であった.胃GISTは, CD34の発現が高率であり, neural typeが高率に認められた.腫瘍径5cm未満のGISTは予後が良好であった.腫瘍径5cm以上のGISTでも,核分裂5/50HPF未満の症例は比較的良好であった.
  • 佛坂 正幸, 自見 政一郎, 岩村 威志, 千々岩 一男
    2004 年 65 巻 6 号 p. 1486-1490
    発行日: 2004/06/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    2003年10月までに教室で腹部手術を施行したCrohn病症例は35例である.このうち8例に対して狭窄形成術(狭窄形成術のみ: 2例,その他の手術を付加: 6例)を施行した(狭窄形成群).狭窄形成術を行わなかった27例のうち,比較可能な18例を切除群とし,狭窄形成群と比較検討した.切除小腸の長さは狭窄形成群で有意(p<0.01)に短かった.全35例の非再手術率は3年: 72.9%, 5年: 63.8%, 10年: 50.1%であった.狭窄形成群の非再手術率は2年: 60.0%, 4年: 30.0%であったのに対し,腸切群では2年: 92.3%, 4年: 83.9%であり, 2群間に有意差(p<0.01)がみられた.再手術を受けた狭窄形成群の4例全例で狭窄形成部以外にも新たな病変がみられた. Crohn病における狭窄形成術では,切除小腸が少なくて済む反面,再手術までの期間が短く,狭窄形成術後も慎重な経過観察が必要と思われた.
  • 中島 誠一郎, 菱山 豊平, 平 康二, 中村 豊, 竹内 幹也, 野路 武寛
    2004 年 65 巻 6 号 p. 1491-1495
    発行日: 2004/06/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    乳腺線維腫症は稀な疾患であり本邦の症例報告数も僅かである.最近われわれは乳腺線維腫症の1例を経験したので報告する.症例は56歳,女性. 2年前から右乳房BD領域の腫瘤を自覚し増大したため来院した.腫瘤は10×3cm大で弾性硬,胸壁固定と皮膚陥凹を認めた. USでは乳腺の最深部にlow echoic massがあり辺縁は不整で, CTでは胸壁に浸潤を疑わせるlow density areaを認めた.しかし造影MRIによる血流パターンは良性パターンに一致していた.ドリル生検を行うも腫瘍成分はなく確定診断には至らなかった.乳癌を否定できず, incisional biopsyを行ったところ迅速病理診断にて悪性所見なく,腫瘤部の切除のみを行った.病理診断は乳腺線維腫症であった.乳腺線維腫症は画像上乳癌との鑑別が困難であるが, MRIの血流パターンは乳癌と乳腺線維腫症の鑑別に有用であると考えられた.
  • 岡本 康, 炭山 嘉伸, 作田 誠, 仲 威和郎, 桐林 孝治, 横内 幸
    2004 年 65 巻 6 号 p. 1496-1500
    発行日: 2004/06/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は68歳,女性.乳癌検診にて左乳房腫瘍を指摘され,当院を受診した.来院時,左乳房A領域に3×3 cmの硬い腫瘍を触知するも,所属リンパ節腫大・皮膚所見は認めなかった.精査にて乳癌と診断し,乳房円状部分切除術を行った.組織学的には,腫瘍の約40%に,血管茎を伴わない小乳頭状の癌胞巣が,細い線維性間質に境されて増殖するIMPの所見を認めた.リンパ管侵襲を伴っていたが,リンパ節転移は認めなかった. ER・PgRとも陽性であり,現在内分泌療法中である.乳腺IMPの生物学的特徴は未だ不明であり,今後の症例の集積が待たれる.
  • 前田 啓之, 豊田 暢彦, 本坊 拓也, 岩永 幸夫
    2004 年 65 巻 6 号 p. 1501-1505
    発行日: 2004/06/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    近年,乳癌における術前内分泌療法の評価が高まってきている.今回われわれはtamoxifen内服にて短期間に肺転移巣が消失し手術療法に至った進行乳癌症例を経験したので若干の文献的考察を加えて報告する.症例は64歳,女性. 2000年5月から咳嗽を自覚し2001年6月に胸部X線検査にて多発肺腫瘤を指摘された.左乳房に3 cm大の腫瘤を認め乳癌および多発肺転移と診断した.生検の結果,腫瘍はestrogen receptor強陽性であった.患者の全身状態は良好でlife threateningな状態にはなかった.インフォームドコンセントをとった結果,治療法として化学療法の前にtamoxifen単独内服を3カ月間行った.その結果,肺腫瘤がほぼ消失し原発巣の大きさも30%縮小した.患者の強い希望もあり3カ月後に非定型乳房切除術を施行した.術後補助化学療法としてCEF 3クールを施行し術後2年間無再発であった.
  • 田中 潤一, 武内 克憲, 滝川 豊, 小森 和俊, 四方 裕夫, 松原 純一
    2004 年 65 巻 6 号 p. 1506-1510
    発行日: 2004/06/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    心嚢液貯留による心タンポナーデに対して,剣状突起下心嚢穿刺や心膜切開が行われるが,再発も多く不確実である.心膜を切除する開窓術は確実性が高いが全身麻酔による開胸操作を要し,侵襲が大きい.われわれは利尿剤投与などの内科的治療に反応が乏しく,数回にわたる心嚢穿刺の施行によっても心嚢液貯留を認める高齢者の難治性心タンポナーデ症例に対して胸腔鏡下心膜開窓術を施行し良好な結果を得た.
    胸腔鏡下心膜開窓術は分離肺換気による全身麻酔を必要とするが低侵襲で患者の回復も早く,良性の心タンポナーデのみでなく,悪性心嚢液貯留による心タンポナーデの姑息的治療としても施行できる方法と思われた.
  • 濱中 一敏, 西村 秀紀, 椎名 隆之
    2004 年 65 巻 6 号 p. 1511-1514
    発行日: 2004/06/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    外傷性気胸は頻繁に経験するが,手術に至る頻度は少ない.遷延する外傷性気胸の2症例に胸腔鏡下手術(VATS)を施行したので報告する.症例1: 17歳,男性.自転車で転倒し胸背部を打撲,近医を受診し右気胸を認めたため胸腔ドレナージが施行された.気漏が続くため当院に転院し, 7日目にVATSを施行した.肺尖部に裂傷が存在し,組織学的に外傷性病変と診断された.症例2: 69歳,女性.自動車事故にて当院に搬送された.右多発肋骨骨折は認めたものの気胸はなく,腹腔内出血に対して緊急手術を行った.術後3日目に気胸,高度の皮下気腫が出現し,胸腔ドレナージを施行した.気漏が遷延するため,ドレナージ後32日目にVATSを施行した.ドレーンが接触していたと思われる上葉に瘻孔を認め,同部を切除した.自然気胸と同様に,外傷性気胸でも気漏が遷延する場合にはVATSを考慮すべきであると考えられた.
  • 住田 亙, 久保田 仁, 鈴木 秀昭, 神谷 諭, 浅羽 雄太郎, 佐藤 太一
    2004 年 65 巻 6 号 p. 1515-1519
    発行日: 2004/06/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    重症呼吸障害を伴い,間質性肺炎を疑う患者に対し,胸腔鏡下肺生検を行い組織学的診断をしえた2症例を経験したので報告する.症例1は62歳,女性.労作時呼吸困難を主訴として受診した.肺活量0.791,予測値に対する割合は32%であった.症例2は74歳,男性.呼吸困難を主訴として受診.マスクにてCPAP 10cmH2O, FiO2 0.5にて補助換気が必要であった. 2症例とも他検査で診断が確定せず,胸腔鏡下肺生検を施行し,組織学的診断を確定しえた.術後経過は良好で, 2症例とも術後7日目には内科転科となり,内科的治療が開始された.
    間質性肺炎の治療法決定のためには組織学的診断が必要となってきている.
    胸腔鏡下肺生検は重度の呼吸障害を伴う患者に対しても施行しうる有用な検査である.
  • 小橋 俊彦, 山崎 浩之, 越智 誠, 吉岡 伸吉郎, 米原 修治, 浅原 利正
    2004 年 65 巻 6 号 p. 1520-1523
    発行日: 2004/06/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は70歳,女性.全身倦怠感を主訴に来院し,胸部X線写真で左上肺野に異常陰影を指摘された.胸部CTを施行したところ,左S3に24×30mm大の腫瘍陰影を認め,確定診断は得られなかったが,画像所見より肺癌と診断し,左上葉切除術およびリンパ節郭清を施行した.切除肺にて腫瘍は臓側胸膜に露出する37×23×27mm大で,組織学的には紡錘形の腫瘍細胞が束状に配列して錯綜する像を呈しており,核分裂像を高頻度に認めた.免疫組織学的には,抗α-smooth muscle actin抗体,抗desmin抗体,抗vimentin抗体に対する免疫活性陽性所見を示し,平滑筋肉腫と診断した.全身検索を行ったが,他臓器に腫瘍性病変は指摘できず,肺原発と考えた.術後2年6カ月後に右肺転移・胸壁転移・左腎転移を認め,腎転移については腎動脈塞栓術を施行した.術後3年5カ月の現在,経過観察中である.
  • 妻鹿 成治, 細川 正夫, 西田 靖仙, 安部 達也, 久須美 貴哉
    2004 年 65 巻 6 号 p. 1524-1528
    発行日: 2004/06/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    当院で経験した4例の特発性食道破裂について検討した.年齢は35~72歳,いずれも男性.全例飲酒を契機とした嘔吐により発症し,胸部下部食道左壁の破裂を認めた.破裂長径は1.5~5.0cm (中央値3.7cm)で,全例前医にて診断を得て紹介され,入院同日に手術を行った.発症から手術開始までに要した経過時間は,順に17, 12, 48, 19時間であった.全例一期的縫合閉鎖を施行,それに加え横隔膜被覆を行ったものが1例, pericardial fat padを被覆したものが1例, fundic patch & fundoplicationを行ったものが1例であった.全例救命しえたが,術後2例に胃食道逆流症状を認めた. fundic patch & fundoplicationを行った症例は,最も経過良好であった.本疾患は,術後晩期合併症である胃食道逆流症状(gastro-esophageal reflex disease:以下GERDと略記)を訴える症例が少なからずみうけられる.このため救命はもちろん, QOLを考慮した治療法を選択しなければならない.食道裂孔付近の破裂で長径5 cm以上もしくは発症後12時間以上経過した症例などでは,縫合不全およびGERD予防の点からもfundic patchおよびfundoplicationを行うことが有効と考える.
  • 内倉 敬一郎, 柳田 茂寛, 豊山 博信, 三枝 伸二, 福元 俊孝, 愛甲 孝
    2004 年 65 巻 6 号 p. 1529-1533
    発行日: 2004/06/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は64歳,男性. 23年前,胃潰瘍にて幽門側胃切除(Billroth I)を受けている.平成14年4月頃より嚥下困難出現し当院受診.食道胃透視,内視鏡検査にてEG junctionから口側に約3cmの後壁中心1/4周,潰瘍,びらんを伴う隆起性病変を認めた.生検にて中分化および低分化型管状腺癌と診断され,左開胸開腹連続斜切開にてD2リンパ節郭清を伴う下部食道,残胃全摘術施行した.病理検査にて腫瘍の大半は高分化,中分化型管状腺癌(深達度ss)であり,腫瘍の口側2cmでは正常の食道扁平上皮とそれに連続する粘膜内扁平上皮癌が腺癌を被覆するように存在した.両者は相接して存在していたが,明らかな境界があり形態の移行像は認めなかった.以上より食道残胃衝突癌と診断した.
  • 森嶌 淳友, 高橋 裕, 山口 哲哉, 武田 亮二, 坂田 晋吾, 山本 道宏
    2004 年 65 巻 6 号 p. 1534-1538
    発行日: 2004/06/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    33歳,男性.多量飲食後車で帰宅中,酒気帯び運転にて自損事故を起こし救急搬送された.搬入時,呼吸時胸痛,腹部鈍痛を訴えたが悪心嘔吐はなかった.視診上,腹部に皮下血腫はなかった.緊急検査では左多発肋骨骨折を認め,血気胸はないが軽度呼吸困難あり呼吸器科に入院となった. 3時間後,腹部の自発痛を訴え腹部板状硬,反跳痛を認めた.腹部CTを再検したところ腹腔内遊離ガス像認め,胃小彎側から胃内容物の漏出が疑われ,外傷性胃破裂の診断にて緊急開腹術を施行した.開腹すると胃前庭部小彎前壁に1 cmの胃壁完全断裂を認め,胃内容物が漏出していた.さらに同部位から噴門側に向かって筋層,粘膜が8 cm断裂していた.他の腹腔内臓器には損傷はなかった.胃壁損傷部辺縁を切除し縫合閉鎖した.術後経過は良好で術後14日目で退院した.腹部打撲痕がなく,腹腔内の他臓器損傷も伴わない単独の外傷性胃破裂は極めて特異で稀であるため,破裂のメカニズムについて文献的考察を行い報告する.
  • 森田 康, 安積 靖友, 中本 光春
    2004 年 65 巻 6 号 p. 1539-1543
    発行日: 2004/06/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は72歳,男性.嘔吐,体重減少を主訴に来院.胃前庭部癌の診断で幽門側胃切除術を施行された.狭心症の既往歴,開腹所見で高度の動脈硬化を認めたため術後血栓症予防目的で3日間ヘパリンを投与した.第4病日より白血球, CRPの著明な上昇を認めたが原因は不明であった.第8病日に施行した腹部造影CTで左横隔膜下に腹水を認め経皮的ドレナージを行った. CT上残胃血流は維持されていた.第15病日に左横隔膜下腔より膿性排液を認め,同腔の造影を施行したところ遊離腹腔,胃内腔との交通を認めた.胃穿孔,汎発性腹膜炎と診断し緊急手術を施行した.短胃動脈の拍動は良好であったが残胃小彎側に広範壊死を認め,残胃全摘術を行った.病理診断では壁内血栓を多数伴う全層壊死であった.高度動脈硬化症例では胃切除後合併症として本疾患の発症を念頭におく必要があり,その発症は抗凝固剤の継続投与により予防できる可能性がある.
  • 田儀 知之, 植木 孝宜, 櫻井 喜代美, 小野 滋, 中路 啓介, 山岸 久一
    2004 年 65 巻 6 号 p. 1544-1547
    発行日: 2004/06/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は56歳,女性.主訴は右側腹部腫瘤.平成9年7月3日胃癌(占拠部位AM)に対し,胃全摘・脾合併切除術, D2郭清, Roux-Y再建術を施行された.病理組織所見は, signet ring cell carcinoma, m, (broad), ly0, v0, aw (-), ow (-), n0, P0, H0, M0, stage Iaであった.その後,再発なく内科外来通院中であった.平成14年8月頃より右側腹部の腫瘤を自覚するも放置していた.その後増大傾向がみられたため,平成14年9月19日に当科を受診した.摘出生検の結果,胃癌の皮膚転移と診断された.早期胃癌の中でも深達度m癌の根治術後に緩徐な経過をたどり,他臓器転移なく複数個の皮膚転移のみをきたした極めて稀な症例であると考えられた.
  • 仲本 嘉彦, 原田 武尚, 竹尾 正彦, 小縣 正明, 山本 満雄, 小西 豊
    2004 年 65 巻 6 号 p. 1548-1552
    発行日: 2004/06/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    食道癌術後の再建胃管に異時性に発生した胃癌に対して胃管部分切除術と残胃管全切除術の2回の手術を行った1例を報告する.症例は66歳の男性で, 2000年10月に胸部食道癌(中分化型扁平上皮癌, pT3, pN0, pStage II)に対して右開胸開腹食道亜全摘,胸骨前経路胃管再建術を施行した. 6カ月後に再建胃管に1型胃癌を認め,胃管部分切除術を施行した.病理組織診断は中分化型腺癌, T2, N0, Stage IB,切除断端陰性であった.その1年後定期的内視鏡検査で残胃管に再び3型様胃癌を認め,胃管全切除術および左側有茎結腸再建術を施行した.病理組織診断は高分化型腺癌, T1, N0, Stage IAであった.その後2003年10月に食道癌再発による癌性胸膜炎のため死亡した.胃管癌は食道癌術後の経過観察において注意すべき疾患の一つであり,定期的な内視鏡検査でその早期発見に努めることが重要である.
  • 小俣 秀雄, 河野 浩二, 須貝 英光, 藤井 秀樹
    2004 年 65 巻 6 号 p. 1553-1557
    発行日: 2004/06/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は58歳,男性.平成12年1月,胃癌の診断で,胃全摘,胆嚢・脾臓合併切除, D2リンパ節郭清を施行した.組織学的所見は, por 2, pType 4, pT 2 (SS), pN 0, ly 0, v 0, int, INFγ, pPM(-), pDM(-) Stage I bであった.術前化学療法が施行され,その効果判定は, Grade 2であった.平成14年2月,両側鼠径部に腫瘤が出現し再発と診断されたが,化学療法が奏効し,右尿管拡張,両側鼠径部腫瘤ともに消失した.平成14年11月,右下肢が腫脹し, CT検査にて,腰背部の最長筋の腫大を認め,穿刺針生検施行したところ,胃癌の最長筋への転移であった. S-1による化学療法にて腫瘤は消失し, 6カ月目の現在も再発はない.今回,われわれは,最長筋への転移という稀な症例を経験したので報告する.
  • 小原 弘嗣, 増田 靖彦, 丹羽 弘之, 宮永 克也, 平井 利幸
    2004 年 65 巻 6 号 p. 1558-1562
    発行日: 2004/06/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    61歳女性の胃リンパ球浸潤性髄様癌の症例を経験した.胃体上部前壁に粘膜下腫瘍様の12mm径の中心に陥凹をもつ小隆起が存在した.転移性胃癌を疑い,原発巣の検索のため,全層標本を得る目的で腹腔鏡下胃局所切除術を施行した.全層標本より,頭頸部からの転移が強く疑われたが,結局,原発巣は判明しなかった. 9年を経過した現在でも健在なことより,転移性胃癌ではなく,胃リンパ球浸潤性髄様癌と考えた.胃リンパ球浸潤性髄様癌は,比較的稀な疾患であり,かつ,粘膜下腫瘍の形態を示す事があり,診断に苦慮することが多いといわれている.なぜ,転移性胃癌という診断に至ったかという反省点も含め,若干の文献的考察を加え報告する.
  • 井口 利仁, 吉岡 孝, 五味 慎也, 中井 肇, 折田 洋二郎
    2004 年 65 巻 6 号 p. 1563-1567
    発行日: 2004/06/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は70歳の女性.上腹部痛を主訴に当院内科に入院,腹膜刺激症状を認めたため外科に紹介された.腹部CT検査にて右腎上極近傍に後腹膜気腫像を認め,大腸憩室穿孔などを念頭におき緊急手術を施行した.十二指腸下行部後腹膜に膿瘍形成を認め,術中超音波検査にて膵頭部と十二指腸間に結石影を認めた. Kocher十二指腸授動術により,十二指腸下行部の穿孔を確認した.穿孔部に結石を触知し,十二指腸に小切開を加え内腔から憩室内結石であることを確認した.結石摘除後,憩室切除は行わず,穿孔部および十二指腸切開部を縫合閉鎖し,胆道減圧術および腹腔ドレナージ術を施行した.術後は一過性に胃前庭部の変形を認めたが経時的に改善した.結石はデオキシコール酸を主成分とする胆汁酸腸石であった.十二指腸憩室内結石例の本邦報告は9例を検索しえたが,成分記載のある胆汁酸腸石による穿孔例はなく,稀な症例と考えられたので文献的考察を加え報告する.
  • 斉藤 琢巳, 稲垣 光裕, 小原 充裕, 石崎 彰, 紀野 修一, 葛西 眞一
    2004 年 65 巻 6 号 p. 1568-1573
    発行日: 2004/06/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は78歳の女性.上腹部痛と嘔吐を主訴に当院入院.腹部US・CTにて総胆管拡張と主膵管の軽度拡張を認めた. ERCPにて総胆管拡張と下部胆管の不整狭窄および主膵管開口部の狭窄所見を認めた. EUSでは乳頭部近傍に径約15mmの低エコー領域を認めた.同部の生検では悪性所見を認めなかった.乳頭炎などの良性疾患を否定できないが, EUS所見で乳頭部腫瘍を疑うこと,急性膵炎を起こしたことから切除目的に開腹術を施行した.術中胆道鏡検査にて下部胆管粘膜面の扁平隆起と血管増生を認め,腫瘍性病変と判断し幽門輪温存膵頭十二指腸切除術を施行した.病理所見では膵管周囲の線維化をともなう慢性乳頭炎で悪性所見はなかった.乳頭炎の胆管像は筆尖型,狭窄型,硬化型,結石型の4型に分類されており,本症例は狭窄型と思われた.癌との鑑別が困難であった十二指腸乳頭炎の1切除例を経験したので報告する.
  • 工藤 道也, 久保田 充, 志賀 知之
    2004 年 65 巻 6 号 p. 1574-1577
    発行日: 2004/06/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は68歳男性で,胃癌に対する幽門側胃切除術後,腸閉塞症を繰り返すため小腸癒着剥離術を施行し,減圧とステント目的でイレウス管を挿入した.術後空腸上部まで引き抜いたイレウス管からの排液が減らないため,イレウス管造影を行ったところ,空腸がトライツ靱帯から約15cm肛門側で完全に閉塞しており,再手術を施行した.その結果同部に順行性三筒性小腸腸重積症が認められた.腸重積症を起こしても腸閉塞の口側の腸管は拡張弛緩しており,嵌入部より口側の腸管がイレウス管で減圧されている場合には,嵌入腸管が虚血に陥らず,腹痛,下血などの特有な症状が認められないことがある.イレウス管を使用しているにも拘わらず,通過障害が遷延する場合には,たとえ腹痛,下血などの症状が出現しなくても腸重積症の合併も念頭におく必要があると考える.
  • 松本 敦夫, 吉松 和彦, 石橋 敬一郎, 渡邊 清, 成高 義彦, 小川 健治
    2004 年 65 巻 6 号 p. 1578-1582
    発行日: 2004/06/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は71歳女性.主訴は右下腹部痛,急性腸炎の診断で投薬を受けたが軽快せず当院受診した.胸腹部単純X線像でfree air,小腸の鏡面像を認め消化管穿孔による汎発性腹膜炎と診断,同日緊急手術を施行した.手術所見は回腸の3箇所に径約3mmの穿孔を認めBauhin弁から口側約100cmの回腸の拡張と腸管壁の肥厚を認めた.穿孔部を含め回腸を約100cm切除する回盲部切除術を施行した.病理組織学的所見は打ち抜き状の深い潰瘍が多発し,非特異的急性炎症所見が認められた.単純性潰瘍または腸型Behçet病と診断したが, Behçet病の診断基準を満たさず,最終的に単純性潰瘍と診断した.単純性小腸潰瘍の多発穿孔は稀であり,若干の文献的考察を加え報告した.
  • 大北 喜基, 山本 隆行, 梅枝 覚, 松本 好市
    2004 年 65 巻 6 号 p. 1583-1587
    発行日: 2004/06/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は31歳,男性. 22歳時に小腸型Crohn病と診断され,成分栄養療法および薬剤療法が行われていた. 30歳時に回盲部狭窄による腹痛が増悪した際,軽度の右背部痛が認められ,腹部超音波検査にて右水腎症が指摘された.成分栄養療法およびプレドニゾロン,メサラジンの投与が行われたが,腸管狭窄および水腎症は軽快せず,手術が施行された. Bauhin弁より60cm口側までの回腸は著明な炎症所見を呈し一塊となり,腹壁および後腹膜と強固に癒着していた.右尿管閉塞の原因は回盲部の炎症の波及によるものと考えられ,回盲部切除術が施行された.右尿管に対しては術直前にW-Jカテーテルが挿入されたが,術中操作は加えられなかった.術後合併症は認めず,水腎症は軽快した.
    水腎症を合併したCrohn病は本邦では20例報告されており,本症例は21例目である.
  • 有上 貴明, 川崎 雄三, 上之園 芳一, 大迫 保, 愛甲 孝
    2004 年 65 巻 6 号 p. 1588-1591
    発行日: 2004/06/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    小腸原発悪性リンパ腫は稀な疾患で,予後も不良とされている.その肉眼形態は多彩であるが,動脈瘤様の拡張を呈するものは,そのほとんどが壁肥厚を伴い,粘膜には潰瘍,隆起性病変などの所見を認める.今回,腸管壁の菲薄化により,動脈瘤様の拡張を呈し,粘膜面および漿膜面に所見が乏しい小腸原発MALTリンパ腫の1例を経験したので報告する.症例は66歳,女性.タール便にて当院入院となり,小腸X線検査で空腸に動脈瘤様拡張を認めた.開腹所見では空腸が限局性に動脈瘤様拡張を呈しており,空腸部分切除術を行った.摘出標本の腸管環周は21.5cmと著明に拡張しており,壁は菲薄化し,粘膜面は軽度のびらんを認めるのみであった.病理組織学的に小腸原発MALTリンパ腫と診断され,術後化学療法を行った. 4年経過した現在でも無再発生存中である.本症例は小腸X線検査により病変が同定され,外科的治癒切除にて長期生存が可能となった.
  • 長谷川 聡, 森 隆太郎, 簾田 康一郎, 長谷川 誠司, 江口 和哉, 仲野 明
    2004 年 65 巻 6 号 p. 1592-1595
    発行日: 2004/06/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    虫垂憩室は比較的稀な疾患である.消化管造影の際偶然発見される場合を除き術前診断は極めて困難で,術中ないし術後の検索で診断されることが多い.回盲部腫瘤を形成したため回盲部切除を施行した1例と回盲部膿瘍を合併した急性虫垂炎と術前診断した1例で経験したので症例を提示し,さらに当院過去5年間に経験した虫垂憩室症3例計5例について検討し,文献的考察を加えて報告する.頻度は手術例の0.004~2.1%であるが,虫垂憩室は一度炎症を起こすと大腸憩室炎や虫垂炎よりも穿孔率が高いので,偶然,無症状の虫垂憩室症を発見した場合,積極的に手術を施行することが推奨される.
  • 遠野 千尋, 川村 秀司
    2004 年 65 巻 6 号 p. 1596-1600
    発行日: 2004/06/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は80歳の女性.右下腹部痛を主訴に当院を受診し上行結腸の炎症性疾患の診断で保存的に治療され症状は改善した.炎症の原因は確定しなかったが,その後大腸内視鏡検査で虫垂開口部に盲腸腺腫内癌を認め,腹腔鏡補助下回盲部切除術が施行された.摘出標本では同疾患の他,虫垂粘液嚢腫を認めた.病理組織学的検査で虫垂粘液嚢胞腺腫と診断された.
    虫垂粘液嚢胞腺腫はまれな疾患であり,無症状のまま他疾患の手術の際に発見されることが多いが,しばしば右下腹部痛を引き起こすことがある.痛みの原因としては虫垂の捻転や,腫瘍による閉塞など何らかの原因から虫垂内腔が緊満し炎症を来すためと考えられる.虫垂粘液嚢腫の良悪性の鑑別は組織学的検査によるため,同疾患が疑われた場合速やかに回盲部切除術が必要であると考えられる.
  • 小川 尚之, 中塚 博文, 山口 剛, 中島 真太郎, 藤高 嗣生, 谷山 清己
    2004 年 65 巻 6 号 p. 1601-1606
    発行日: 2004/06/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は33歳,女性, 21歳の時,他施設でCrohn病と診断され,緩解と再燃を繰り返していた. 31歳時, Crohn病の増悪に伴う下行結腸穿孔にて手術施行.これまで,痔瘻の既往は認めていない.今回,再度腸穿孔を認め,回腸に人工肛門を造設した.入院中に肛門痛が出現し, Crohn病の肛門病変を疑ったが明らかな膿瘍,痔瘻は認めなかった.その後も肛門痛持続するため,肛門狭窄部の生検を行ったところ,粘液癌と診断され直腸切断術を施行した.肉眼的には肛門管主体に5型の腫瘍を認め,組織学的には粘液癌や高分化腺癌が混在していた.発症から13年目に肛門管癌を合併した小腸大腸型Crohn病の1例を報告した.また, Crohn病に合併した大腸癌の本邦報告49例についての集計し検討を加えた.
  • 佐々木 賢一, 渋谷 均, 高島 健, 井上 大成, 原田 敬介, 平田 公一
    2004 年 65 巻 6 号 p. 1607-1612
    発行日: 2004/06/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は64歳,男性.スクリーニングの大腸内視鏡検査で下行結腸およびS状結腸に隆起性病変を指摘され,診断的EMRにてMALTリンパ腫と診断された.いずれも免疫グロブリン重鎖の遺伝子再構成で単クローン性が証明され,再構成バンドのパターンから同一クローンと診断された.大腸原発のMALTリンパ腫と診断し, H. pylori除菌療法を2週間施行したが,腫瘍の縮小効果は認められず,左半結腸切除およびD2郭清を施行した.腫瘍は漿膜下層まで浸潤し, 1群リンパ節転移を認めた.術後CHOP療法を6クール施行し,初診時より4年経過した現在無再発生存中である.本症例のMALTリンパ腫は,大腸の二つの病変が遺伝子再構成検索にて同一クローンと診断されたことから,大腸原発で大腸内転移をきたしたと考えられた.
  • 小島 豊, 権田 厚文, 藤井 祐二, 関 英一郎, 櫻井 秀樹, 大坊 昌史
    2004 年 65 巻 6 号 p. 1613-1619
    発行日: 2004/06/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は76歳,男性.食欲不振と体重減少を主訴に近医受診.血液生化学検査でAFP 531ng/mlと高値を示したため,当院紹介入院となった.精査でRb~Raに2'型のほぼ全周性の直腸癌を認めた.しかしAFPが高値のことより直腸原発のAFP産生腫瘍を考慮し生検組織に対し抗AFP抗体による免疫染色を行い,腫瘍細胞の一部に陽性反応を認めた.術前,肝臓に異常所見は認められなかった.以上よりAFP産生直腸癌の診断で直腸切断術を施行.病理組織学的検査の結果,中分化腺癌と低分化腺癌の組織像を呈しており,低分化腺癌部ではhepatoid differentiationを示していた.両部位でAFP免疫染色陽性であった.術後1カ月には多発性肝転移を認め,術後3カ月で永眠された. AFP産生大腸癌は稀でわれわれが検索した限り,論文報告例は自験例を含め33例であった.
  • 広瀬 邦弘, 篠原 敏樹, 佐治 裕
    2004 年 65 巻 6 号 p. 1620-1624
    発行日: 2004/06/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    今回,われわれは直腸原発の内分泌細胞癌の1例を経験したので,自験例を含めた本邦報告56例の集計を含めて報告する.症例は63歳,女性で,肛門痛を主訴に来院した.大腸内視鏡検査で下部直腸(Rb)に2型腫瘍を認め,生検にて低分化腺癌または未分化癌と診断された.遠隔転移の所見はなく,腹会陰式直腸切断術を施行した.免疫組織学的にNSE, Grimeliusおよびsynaptophysin染色が陽性で,内分泌細胞癌と診断した.患者は大動脈周囲リンパ節転移および多発性脊椎転移のため術後5ヵ月で死亡した.本邦報告56例の集計ではリンパ節転移,脈管侵襲および肝転移を高頻度に認め,予後は極めて不良で35例(65%)が1年以内に死亡していた.予後の改善のためには手術のみだけではなく,化学療法や放射線療法を含めた集学的治療を検討すべきと考えられた.
  • 稲田 一雄, 川元 俊二, 白日 高歩
    2004 年 65 巻 6 号 p. 1625-1630
    発行日: 2004/06/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    肝癌治療中に併発した胆汁性肝嚢胞(biloma)が心嚢内穿破をきたしたまれな症例を報告する.症例は60歳,男性.原発性肝細胞癌に対して,肝拡大右葉切除術を施行した.その後,残肝再発に対して,肝動脈塞栓術(TAE)および経皮的マイクロ波凝固療法を併用し,複数回の治療を繰り返し経過した.術後8カ月目,閉塞性黄疸と胆管炎が出現した. TAE後の胆管壊死が原因と思われる,左肝管基部狭窄およびその末梢肝管の拡張認めたため,チューブステント留置にて改善した.その後,外側区にbilomaが出現するも,経過観察していたところ,術後14カ月目,突然の前胸部痛および呼吸苦が出現した.画像上, bilomaの心嚢内穿破による心タンポナーデと診断し,心嚢穿刺ドレナージ術を施行し,持続低圧吸引を続け, 3日後チューブ抜去が可であった.その後生存中,経皮的膿瘍ドレナージチューブを留置のまま,肝不全による死亡まで術後約20カ月間QOLを維持した生存期間を得た.
  • 塚本 好彦, 佐藤 美晴, 佐溝 政広, 原田 直樹, 宮下 勝
    2004 年 65 巻 6 号 p. 1631-1635
    発行日: 2004/06/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    胆管癌の疑いにて胆管切除を施行し,術後の病理組織学的検査にて,胆管に発生した肝細胞癌と診断された症例を経験した.症例は77歳男性,黄疸を主訴に来院した.血液検査で総ビリルビン11.5mg/dl, CA19-9 187U/Lで高値を示しており,閉塞性黄疸のため緊急で経皮経肝胆管ドレナージ術を施行した.減黄後の胆管造影で三管合流部に4cm大の陰影欠損があり, CTおよび超音波検査にて中部胆管領域に腫瘤陰影を認めたため,胆管腫瘍と診断し,胆管切除術を施行した.中部胆管に黒褐色の腫瘍を認め,病理組織検査では,中分化型, Edmondson3型の肝細胞癌と診断した.胆管に発生した異所性肝細胞癌の報告は本症例をふくめ, 7例の報告があるのみで極めて稀であるので,文献的考察を加え報告する.
  • 上杉 尚正, 山口 栄一郎, 中村 隆志, 橋谷田 博, 丹山 桂, 竹重 元寛
    2004 年 65 巻 6 号 p. 1636-1640
    発行日: 2004/06/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    疫学的に日本住血吸虫症患者に肝細胞癌が発生することが報告されているが,実際に経験することは稀である.今回われわれは病理組織学的に日本住血吸虫の虫卵結節を確認することのできたB型C型肝炎ウイルス感染のない肝細胞癌の1例を経験した.症例は80歳,男性.右季肋部痛を主訴に近医を受診.腹部エコーで肝腫瘍を指摘され,加療目的で紹介された.精査の結果,肝内に計5個の腫瘍を認めた.肝細胞癌の診断で肝右葉切除術,ラジオ波焼灼療法を施行した.病理組織学的に腫瘍部は中分化型肝細胞癌であった.非腫瘍部は肝硬変像を呈し,グリソン鞘内の門脈枝内に多数の虫卵結節を認めた.
  • 金澤 伸郎, 平田 友美, 山口 高史, 前田 徹, 樋口 芳樹, 黒岩 厚二郎
    2004 年 65 巻 6 号 p. 1641-1645
    発行日: 2004/06/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    胆石症の合併症としての胆石イレウスは比較的稀とされているが,その中でも十二指腸への胆石嵌頓が原因で胃内容排泄障害をきたした症例はBouveret症候群と呼ばれている.日本では未だ少数例しか報告されていない.症例は70歳,男性.悪心,嘔吐を主訴に来院した.右季肋部に軽度の圧痛を認めた. 10年前に胆石を指摘されていた.上部消化管内視鏡検査にて十二指腸下降脚部に嵌頓する結石を確認した.内視鏡下の結石除去は不能だったため外科的治療が施行された.手術は結石嵌頓部にて十二指腸切開,結石を除去し閉鎖,胆摘とともに上十二指腸角部に存在した胆嚢十二指腸瘻を一期的に閉鎖した. 2個の結石を摘出し,その最大径は25mmだった.術後,腸閉塞を併発したが保存的に軽快,術後50日で退院となった.本症は稀なBouveret症候群の1例であり,若干の文献的考察を加え報告する.
  • 渡辺 誠, 高村 光一, 後藤 学, 角田 明良, 草野 満夫
    2004 年 65 巻 6 号 p. 1646-1649
    発行日: 2004/06/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は69歳,女性.心窩部痛を主訴に当院を受診した.急性膵炎の診断で内科にて加療され,軽快したが再び心窩部痛が出現した.この際に施行した腹部超音波検査にて胆嚢壁の欠損と,胆嚢内外での腹水の移動が認められたことから胆嚢穿孔と診断され外科転科となった.反跳痛,筋性防御はなく,血液検査所見上も炎症反応は軽度であったため,待期的に腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行した.非医原性で胆石は認めず,急性胆嚢炎像を伴わなかったため,特発性胆嚢穿孔と診断した.発生の機序として,病理組織学的に穿孔部周囲の細血管内に微小血栓が認められたことより,微小血栓による虚血に起因した胆嚢壁の循環障害が考えられた.術前画像所見にて胆嚢穿孔と診断しえた例は少ない.本症例は腹部超音波検査にて胆嚢壁の欠損部が描出され,胆嚢穿孔と術前診断しえた極めて稀で貴重な症例と考えられた.
  • 新田 浩幸, 佐々木 亮孝, 真島 里絵, 藤澤 健太郎, 斎藤 和好, 上杉 憲幸
    2004 年 65 巻 6 号 p. 1650-1653
    発行日: 2004/06/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    結核性腹膜炎を伴い,胆嚢管に穿通していた結核性リンパ節炎が原因となった胆管狭窄の1例を経験したので報告する.患者は56歳の女性,右季肋部痛と肝機能障害で入院した.腹部超音波検査と腹部CTで膵頭部頭側に直径4cmの腫瘤と,肝周囲と骨盤腔に腹水を認めた. ERCでは,中部胆管に3cmの狭窄と,狭窄部位から連続して造影される円形の腫瘤を認めた.確定診断は得られなかったが,悪性疾患を否定できず,開腹手術を行った.腹膜全体に広がる粟粒状結節の術中迅速組織診で,結核が疑わしいと診断された.胆管狭窄の原因を胆管に穿通する結核性リンパ節炎と判断し,胆管切除術を行った.結核性リンパ節炎による胆管狭窄の報告は,検索しえた限りでは自験例を含め18例であった.稀ではあるが,念頭におくべき疾患と考えられた.
  • 菅 和男, 雨森 俊介, 蒔本 憲明, 千葉 憲哉, 古川 正人
    2004 年 65 巻 6 号 p. 1654-1658
    発行日: 2004/06/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    急性気腫性胆嚢炎は,ガス産成菌によって惹起される比較的稀な疾患であり胆嚢内や胆嚢壁に特徴的なガス像を呈する.われわれは,現在まで3例の急性気腫性胆嚢炎に対してPTGBDを施行後,全身状態の改善をまって腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行した.本邦における急性気腫性胆嚢炎に対する腹腔鏡下胆嚢摘出術の報告は非常に稀で,われわれの症例を含めて現在までに9例の報告をみるのみである. 3症例のうち2症例に対してPTGBDチューブよりのリアルタイムの術中透視を施行し胆嚢,胆嚢管,総胆管の位置関係を明瞭にしながら腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行した.気腫性胆嚢炎に対してPTGBDを施行後,腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行することは有用な方法と思われた.
  • 西村 淳, 河内 保之, 永橋 昌幸, 牧野 成人, 新国 恵也, 清水 武昭
    2004 年 65 巻 6 号 p. 1659-1662
    発行日: 2004/06/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は62歳の男性で,黄疸を主訴として来院.経皮経肝胆道造影検査にて上中部胆管の完全閉塞を認め,腹部CT検査で肝外胆管に直径2cmの腫瘤を認めた.胆汁細胞診で腺癌細胞が証明され,上中部胆管癌と診断.幽門輪温存膵頭十二指腸切除術, D2郭清を施行した.病理組織学的検査で, HE染色では大部分が低分化型腺癌からなり,免疫組織学的染色でchromogranin Aが約10分の1で陽性のため,胆管腺内分泌細胞癌と診断した.術後補助化学療法は施行せず.外来にて経過観察中, 5カ月目にCT検査を行ったところ,肝両葉に多発性肝転移を認めた.その後も肝転移が急速に進行し術後約7カ月で死亡した.稀な肝外胆管原発の腺内分泌細胞癌の切除例を経験したので報告する.
  • 武田 和永, 長堀 薫, 茂垣 雅俊, 福島 忠男, 細井 英雄, 中谷 行雄
    2004 年 65 巻 6 号 p. 1663-1667
    発行日: 2004/06/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は, 54歳,女性. 2002年6月初旬から黄疸,皮膚掻痒感が出現した.腹部造影CTでは,膵頭部に造影効果のある境界明瞭な5cm大の腫瘤を認め,内容は不均一であった. MRCPでは,腫瘍による総胆管,主膵管の途絶を認めた.血管造影では,腫瘍濃染像を認めたが, encasementを認めなかった.組織像では, HE染色で,腫瘍細胞の細胞質は好酸性に染色され,腺房構造と索状配列が混在していた.また, PAS反応が陽性で,免疫染色にてα1-antitrypsin, chromogranin, synaptophysinがいずれも陽性であったことから, acinar-endocrine cell carcinomaと診断した.術後補助化学療法を施行したが,術後8カ月で肝に径2cm大の単発の転移巣を認めた.これに対し,陽子線照射を施行し,照射後4カ月現在, NC (no change)の状態を保っている.
  • 王子 裕東, 北角 泰人, 桑原 道郎, 中上 美樹夫, 徳家 敦夫, 田中 明
    2004 年 65 巻 6 号 p. 1668-1671
    発行日: 2004/06/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    子宮広間膜裂孔ヘルニアは内ヘルニアの0.016%を占める稀な疾患である.今回われわれは本疾患の1例を経験したので文献的考察を加え報告する.症例は78歳の女性.主訴は左下腹部痛,嘔吐.胃切除・胆摘および子宮疾患手術の既往がある.出産歴2回.平成14年6月4日くも膜下出血で手術施行し,当院脳外科入院中. 7月9日夕方頃より左下腹部痛が出現し, 7月10日午前2時,腹痛増強,嘔吐も出現.左下腹部に圧痛・反跳痛・筋性防御を認め,腹部CT検査で骨盤内に拡張した小腸と右側へ圧排された子宮を認め,絞扼性イレウスの診断のもと緊急手術を施行.術時血性腹水と左子宮広間膜の裂孔に嵌頓した小腸を認め,嵌頓を解除し壊死小腸を切除吻合した.左子宮広間膜裂孔は盲嚢を形成しており,同盲嚢を切開開放した.術後経過良好で第7病日に脳外科転科となった.
  • 児島 祐, 松本 壮平, 上野 正義, 吉田 英晃
    2004 年 65 巻 6 号 p. 1672-1675
    発行日: 2004/06/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は74歳,男性. 2002年3月15日右下腹部痛を主訴に当科を受診した.受診時,腹部は軽度に膨隆し,右下腹部に5cm大の腫瘤を触知した.腫瘤に一致した圧痛,反兆痛を認めた.腹部X線写真でniveauを伴う小腸ガスの貯留を認め,腹部単純CTでは回盲部と思われる部位に7cm大の腫瘤を認めた.腫瘤壁には石灰化を伴い,腸管と密着していた.以上から腹腔内腫瘤による腸閉塞と診断し,同日手術を行った.開腹すると, Bauhin弁から150cm口側の回腸間膜に6.0×3.5cm大の嚢胞を認めた.嚢胞を包むように周囲の回腸が癒着していた.病理組織学的には嚢胞壁の内面に上皮細胞を認めず,線維性組織によって形成されており,小腸間膜に発生した仮性嚢胞と診断した.腸間膜の仮性嚢胞は極めて稀な疾患であり,文献的考察を加え報告する.
  • 松岡 翼, 米満 隼臣
    2004 年 65 巻 6 号 p. 1676-1680
    発行日: 2004/06/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は30歳,男性.上腹部痛を主訴に当院を受診した.理学所見上急性腹症の診断であったが単純X線写真上腹腔内遊離ガス像を認めず,腹部CTにても少量の腹水がみられるのみであったため,同日より入院,点滴加療を開始した.翌日のCTで腹水の増量が認められ,腹腔穿刺で穿刺液が血性であったため,腹腔内出血の診断にて緊急手術を施行した.開腹すると,胃体中部近傍の大網に数カ所の断裂を認め,同部に小血腫の形成がみられた.実質臓器,腸間膜に出血を認めなかった為,その部の大網を切除した.外傷の既往がなく,病理検索でも非特異的炎症のみの診断であったため,特発性大網出血と診断した.大網出血の診断は非常に困難とされる.自験例および文献的考察から,腹腔内臓器や腸間膜に異常のみられない腹腔内出血を認めた場合,本症も鑑別診断の1つに加えるべきと思われた.
  • 岡本 竜弥, 佐野 薫, 藤木 真人, 池田 博斉, 小笠原 敬三
    2004 年 65 巻 6 号 p. 1681-1684
    発行日: 2004/06/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    患児は4歳の男児.間欠的な腹部自発痛と腹部膨満,発熱を主訴に当院受診.受診時超音波検査およびCT検査にて腹腔内巨大嚢胞性疾患と診断.血液,生化学検査にて炎症所見を認めるもその他に目立った所見なく,腹部症状も軽度であることから,入院後保存的に経過観察し,炎症の消退を得た後, MRI検査にてさらに精査した.胃体下部大彎側に連続し,横行結腸を背側に圧排し,骨盤腔まで拡がる内部信号均一な巨大嚢胞性病変を認め,大網嚢腫と術前診断し,開腹手術施行.開腹時,胃壁から連続性に大網内に拡がるリンパ液の貯留した1,300gの嚢胞を認め,胃大彎側漿筋層を含めてこれを切除した.病理組織学的所見は嚢胞性リンパ管腫であった.本症の診断には超音波またはCTが有用であるとされるが,正確な嚢胞の発生部位および嚢胞内容物の性状の診断につき, MRIもまた有用な検査であると考えられた.
  • 重松 千普, 高橋 知秀, 近藤 俊彦
    2004 年 65 巻 6 号 p. 1685-1688
    発行日: 2004/06/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    われわれは虫垂周囲膿瘍の術前診断にて治療した腹部放線菌症の1例を経験したので,若干の文献的考察を加え報告する.症例は48歳男性,平成13年に右下腹部痛を認め,他院で入院加療.平成15年10月右下腹部痛持続し,当科を受診された.触診上,右下腹部に腫瘤を触知し,腹部CT検査で膿瘍形成および周囲にバリウムの散在を認めた.手術時の肉眼所見は,虫垂は萎縮し,硬結として触知,その先端は回腸末端と固着瘻孔化し,周囲にはバリウム塊が散布され,膿瘍化していた.手術は,虫垂切除,虫垂回腸瘻を切除し,膿瘍ドレナージを施行した.切除標本の病理組織学的検索にて膿瘍のバリウム塊周囲には放線菌塊を認め,腹部放線菌症と診断した.術後経過は良好で現在,再発なく外来通院にて経過観察している.慢性の経過をとる腹腔内膿瘍を認めた場合,本疾患も念頭におくべきであると考えられる.
  • 森 隆太郎, 三浦 勝, 高橋 徹也, 小尾 芳郎, 山中 研, 阿部 哲夫
    2004 年 65 巻 6 号 p. 1689-1694
    発行日: 2004/06/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    腹壁より発生した悪性線維性組織球腫の稀な1例を経験したので文献的考察を加え報告した.
    症例は51歳,男性.左側腹部腫瘤を自覚し増大傾向を認めたため,当科紹介受診し,入院となった.腹部は平坦,軟で,左肋骨弓下に弾性硬,可動性不良な径9×7cmの腫瘤を認めた.超音波検査, CTで外腹斜筋・腹横筋を内外へ圧排するように増大する内部不均一な腫瘤を認めた.その大きさと急速な増大傾向より軟部悪性腫瘍を疑い腫瘤摘出術を施行した.腫瘍は10×6×7cmの弾性軟な腫瘤で粘液腫状の部分が1/2以上を占め,表面は線維性の被膜で覆われていた.病理組織学的にmalignant fibrous histiocytoma, myxoid typeと診断した.術後合併症なく経過し,術後9日目に退院となった.
  • 高川 亮, 大島 貴, 羽鳥 慎祐, 國崎 主税, 池 秀之, 今田 敏夫, 上條 聖子
    2004 年 65 巻 6 号 p. 1695-1700
    発行日: 2004/06/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    45歳,男性.人間ドックの腹部エコー検査にて後腹膜の腫瘤を指摘され,当院を受診した.血液生化学検査では血中ノルアドレナリンとドーパミンの上昇を認めた. CTでは大動脈の左側,膵臓下縁に接する様に径約4cm大の腫瘤が認められ,膵由来の腫瘍が疑われたが,造影MRIで膵との境界が確認され否定的となった.血管造影では第12肋間動脈・第1腰動脈で腫瘍濃染像を認めた.以上の諸検査所見から神経原性腫瘍を最も強く疑い,手術を施行した.術中に著明な血圧の上昇を認め,一時手術を中断したが,降圧剤で対応し,腫瘍を摘出しえた.摘出標本は径3.8cm大の球形で線維性被膜を有し,割面は嚢胞状で一部充実性であった.病理組織学的所見では,腫瘍細胞が胞巣状に増殖しており,クロモグラニンAが陽性で, S-100陽性の特徴的な支持細胞が確認されることよりパラガングリオーマと診断した.良悪性の診断では, Ki-67陽性細胞が10%以下であることより良性と診断した.後腹膜パラガングリオーマは比較的稀な疾患であり文献的考察を加えて報告する.
  • 山田 誠, 斉藤 史朗, 安藤 公隆, 甲賀 新
    2004 年 65 巻 6 号 p. 1701-1705
    発行日: 2004/06/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は96歳,女性.悪心と頻回の嘔吐を認め当院を受診した.経過観察入院後3日目に,腹部X線写真でイレウスと診断され,イレウス管にて保存的治療を開始した.挿入5日目のイレウス管造影で左閉鎖孔近傍での小腸閉塞像を認め,直後のCTで両側の恥骨筋と外閉鎖筋の間に腸管像が確認されたため,両側閉鎖孔ヘルニア嵌頓によるイレウスの診断にて緊急開腹術を施行した.開腹すると,空腸が左閉鎖孔に,回腸が右閉鎖孔にRichter型に嵌頓しており,用手的整復・ヘルニア門閉鎖後,壊死に陥っていた回腸は楔状切除した.術後経過は良好で,術後33日目に退院した.
    両側閉鎖孔ヘルニアは,本邦では自験例を含め同時性16例(2.1%),異時性7例の計23例(3.1%)が報告されているのみである.しかし,閉鎖孔ヘルニアが疑われる症例では,稀ではあるが両側である可能性も念頭におき,術前および術中の検索を充分に行うことが重要と考えられた.
  • 川口 正春, 黒田 浩章, 福本 和彦, 谷口 正美, 山崎 将典, 松田 巌
    2004 年 65 巻 6 号 p. 1706-1710
    発行日: 2004/06/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    成人の臍ヘルニアは本邦では比較的稀な疾患とされている.われわれは2002年4月から2003年12月までの1年9カ月間に嵌頓3例,非嵌頓3例の合計6例の臍ヘルニア手術症例を経験したので報告する.年齢は58~71歳,男性1例,女性5例,全例腹圧亢進の原因となりうる既往症,合併症があった.臍ヘルニア嵌頓で2症例に対して緊急手術を施行したが,うち1例は既往に肝硬変,肝癌で10年以上通院加療歴があり,術後肝機能悪化により死亡した.非嵌頓症例3例はすべて待機的手術を施行し経過良好であった.臍ヘルニアの嵌頓を生じる様な症例では何らかの合併症を有していることが多いため,嵌頓する前にできる限り待機的に手術を施行するのが良いと思われた.高齢化社会,食生活の欧米化などにより今後症例が増える可能性があり,日常臨床において注意が必要になると考えられた.
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