日本臨床外科学会雑誌
Online ISSN : 1882-5133
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65 巻, 9 号
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  • 村上 貴志, 杭ノ瀬 昌彦, 宍戸 英俊, 稲垣 英一郎, 種本 和雄
    2004 年 65 巻 9 号 p. 2291-2293
    発行日: 2004/09/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    [目的]胸部嚢状大動脈瘤に対する瘤切除パッチ形成術は,簡便な方法として施行されてきたが,術後長期での大動脈瘤発生の問題が指摘されている.今回当院における遠隔成績を検討した.[方法]1988年8月から2001年12月までに行われた,真性胸部嚢状大動脈瘤に対するパッチ形成術8例のうち,手術生存例7例の遠隔成績を追跡した.[結果]7例中6例が追跡可能であった.大動脈瘤の再拡大は3例で確認され2例に再手術を施行した.突然死を2例で認め,術後2年目に突然死した1例は,死体解剖にて吻合部の破裂を確認した.[結論]真性胸部嚢状大動脈瘤に対するパッチ形成術後には,高率に動脈瘤の再発を認めた.非常にhigh riskな症例や動脈硬化性でないものを除いて,原則的には大動脈全置換が選択されるべきと考えられた.
  • 亀山 仁史, 梨本 篤, 藪崎 裕, 土屋 嘉昭, 瀧井 康公, 田中 乙雄
    2004 年 65 巻 9 号 p. 2294-2298
    発行日: 2004/09/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    上部胃癌に対する噴門側胃切除の再建術式を評価するため,当科で施行した空腸間置術と空腸嚢間置術を比較検討した. 1985年から2002年の間に噴門側胃切除を施行し空腸/空腸嚢を用いて再建した上部胃癌症例72例(空腸: 13例,空腸嚢: 59例)を対象とした.空腸間置術/空腸嚢間置術の手術時間,出血量,術後入院期間はそれぞれ229.5/181.6分, 157.3/124.4ml, 23.6/23.8日であり差はなかった.空腸間置術では92.3%に愁訴を認め,空腸嚢間置術の42.4%と比べて有意に多かった(P=0.0014).術後内視鏡所見では両群に差はなかったが,空腸嚢間置術群で観察が容易であった.術後体重・総蛋白値はいずれの時点でも空腸嚢間置術が良好であった.器械吻合による経済面での問題があるものの,空腸嚢間置術は優れた再建法であると思われた.
  • 伊神 剛, 長谷川 洋, 坂本 英至, 小松 俊一郎, 森 俊治, 徳丸 勝悟, 河合 清貴, 田畑 智丈, 深見 保之
    2004 年 65 巻 9 号 p. 2299-2303
    発行日: 2004/09/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    成人虫垂炎性膿瘍に対する低侵襲治療として経皮的膿瘍ドレナージ療法を7例経験し,同時期の開腹手術16例と比較検討したので報告する.経皮的膿瘍ドレナージ療法では,平均年齢は51.4歳,男性4例女性3例であった.麻酔方法は全例局所麻酔でドレナージ方法は, USガイド下経皮的ドレナージ6例,小切開経皮的ドレナージ1例であった.平均入院期間は31.1日であった.開腹手術症例では,平均年齢は56.9歳,男性9例女性7例であった.麻酔方法は全身麻酔12例,腰椎麻酔4例で,術式は,虫垂切除+ドレナージ13例,回盲部切除術2例,虫垂切除を伴わないドレナージのみ1例であった.平均入院期間は28.3日であった.いずれの方法でも治療後,虫垂皮膚瘻を形成した症例はなかった.成人虫垂炎性膿瘍に対して,経皮的膿瘍ドレナージ療法は,開腹手術と比較して,簡便,安全,低侵襲で,第一選択の治療法に成りうると考えられた.
  • 桂巻 正, 水口 徹, 大村 東生, 中村 幸雄, 木村 康利, 本間 敏男, 古畑 智久, 向谷 充宏, 佐々木 一晃, 平田 公一
    2004 年 65 巻 9 号 p. 2304-2308
    発行日: 2004/09/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    過去7年間で当科で経験した乳癌肝転移8例に対して肝切除術を施行し,肝切除の意義について検討した.乳癌肝転移8例の平均年齢は48.5歳で,腫瘍個数は単発例3例,多発例(3個以上) 5例,平均最大腫瘍径は3.6cmであった.術式は部分切除が4例,左葉切除が2例,右葉部分切除を伴った左葉切除,拡大S5亜区域切除がそれぞれ1例で,全例が重篤な術後合併症なく約2週間で退院した.肝切除後の1年生存率は87.5%, 3年生存率は33.3%で,腫瘍個数別の3年生存率は単発例が66.7%,多発例が0%で,単発例の生存率は有意に良好であった.残肝再発を3例に,他臓器再発を5例に認め,残肝再発症例の予後は不良であった.乳癌肝転移例においては単発例であれば長期生存例が期待できるので,切除可能であれば肝切除を施行すべきであるが,多発例では肝切除のみでは肝転移は制御できないと考えられた.
  • 諏訪 裕文, 馬場 信雄, 雑賀 興慶, 上村 良, 森村 絵里, 大越 香江, 今村 卓司, 石上 俊一, 田村 淳, 花房 徹兒, 小川 ...
    2004 年 65 巻 9 号 p. 2309-2314
    発行日: 2004/09/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    近年,腹部画像診断は進歩したが,腫瘍径が2 cm以下の小膵癌の発見は容易ではない.最近12年間に,当院で8例の小膵癌の切除例を経験した. 5例は心窩部痛または背部痛で発症したが,他の3例は症状がなく検診ドックでのUSの施行,または糖尿病の精査が発見の契機となった. USでは,全例で主膵管の拡張および腫瘤を描出できた. ERCPでも全例で膵管の狭窄,途絶像が認められたが, CTでは腫瘤像の描出は不良であった. 8例中5例で組織学的リンパ節転移陽性で,うち1例は肝転移陽性, 1例は門脈浸潤陽性であった. 5年生存率は43%であり, 2 cmを越える膵癌切除症例42例と比較して予後良好であった(p<0.01).術後のQOLを加味すると,小膵癌に対する根治手術は,第2群までのリンパ節郭清と部分的な膵外神経叢切除を伴う膵切除で十分であると思われる.
  • 川口 康夫, 杉野 圭三, 西原 雅浩, 矢野 将嗣, 新原 亮, 浅原 利正
    2004 年 65 巻 9 号 p. 2315-2318
    発行日: 2004/09/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    初回手術時に反回神経切除施行した症例に対して,再手術時に反回神経再建術を行った.症例は72歳,女性.初回手術は甲状腺左葉原発乳頭癌(Ex 2)に対して甲状腺左葉切除,左反回神経切除, D2b郭清を施行された. 5年後に再発甲状腺乳頭癌と診断され手術を行った.術中所見は気管左側の食道入口部に3 cmの再発腫瘍を認め,摘出術を行った.左反回神経は前回手術で合併切除されていたが,下咽頭収縮筋を切開して左反回神経断端を露出した.患側の左頸神経わなも前回手術で切断されていたため,右頸神経わなを用いて右頸神経わな一左反回神経吻合術を行った.術後2-3カ月より自覚的に嗄声が改善し,最長発声時間も経時的に延長した.過去に反回神経切断を行った症例では,再手術時に反回神経を同定することは難しく,神経再建は容易ではない.しかし,下咽頭収縮筋内での吻合方法や対側頸神経わなの利用で再建可能な症例もあり,発声機能改善を目指して試みる価値のある術式と考える.
  • 足立 広幸, 土田 知史, 韓 仁燮, 藤井 慶太, 鹿原 健, 岩崎 博幸
    2004 年 65 巻 9 号 p. 2319-2324
    発行日: 2004/09/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    甲状腺全摘後もhyperthyroidismが継続し,バセドウ病抗体(TRAb)が陽性であった甲状腺濾胞癌骨転移の1例を経験したので報告する.症例は58歳女性,左肩甲骨腫瘤と左上肢挙上困難を自覚し当院を受診した.既往で20歳代より甲状腺腫を指摘されていたが放置していた.病理学的検査で甲状腺濾胞癌骨転移と診断し甲状腺全摘術を施行.術後の131Iシンチグラフィーでは右肋骨,腸骨,腰椎に集積を認めたが肩甲骨部の集積はわずかであった.退院時, Levothyroxine投与中でありfT 3, fT 4ともわずかに上昇していたがその後も上昇を続け, TRAb・TSAbともに陽性のためバセドウ病による甲状腺機能亢進症と判断. Levothyroxine減量・Thiamazole投与を開始し甲状腺機能は正常範囲となった.肩甲骨転移腫瘍には増大傾向は見られず, CT上1 cm程度の縮小も見られた.甲状腺全摘後バセドウ病は自験例も含め7例であり,極めて稀な疾患と考えられた.
  • 奥田 勝裕, 佐野 正明, 中村 明茂, 成田 洋, 宇佐見 詞津夫
    2004 年 65 巻 9 号 p. 2325-2328
    発行日: 2004/09/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は67歳,男性.食道癌にて食道亜全摘術の既往歴がある.咳嗽・呼吸困難を主訴に来院し,胸部単純レントゲン写真上左緊張性気胸を認め,入院となった.来院時腹部単純レントゲン写真上著明な気腹を認めた.腹痛などの症状は乏しかったため,左胸腔内に胸腔ドレーンを挿入,腹腔内ガスに対しては,試験穿刺のみを行った.胸腔ドレーン挿入後,再膨張性肺水腫を認めたが,徐々に症状は軽快した.その後も胸腔ドレーンからの脱気が継続したため,胸腔鏡下肺部分切除術を施行した.術中食道亜全摘術時の手術操作によると考えられる,腹腔と左胸腔内との交通を確認することができた.食道癌術後自然気胸に伴う著明な気腹を認めたとの報告は稀であり,若干の文献的考察を加えて報告する.
  • 柿下 大一, 河合 後典, 東 良平
    2004 年 65 巻 9 号 p. 2329-2332
    発行日: 2004/09/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は47歳の女性.咳嗽と左側胸部痛を主訴に近医を受診し,左胸水を指摘されて当院に入院した.胸腔穿刺にて,約200mlの血性排液を認めた.また,胸部単純X線およびCTにて,左胸壁の背側に胸腔内へ突出する鋭利な異物を確認した. 8カ月前に,転倒時に同部位にガラス片が刺さり,近医で創部の縫合処置を受けた既往があったことから,胸壁に遺残したガラス片による遅発性外傷性血胸と診断した.治療は,胸腔鏡下に胸腔内の凝血塊を除去し,胸腔内にわずかに突出したガラス片を確認し,背部からのアプローチで除去した.通常,外傷性血胸は受傷直後より発症する場合が多い.遅発性に出現するのは助骨骨折の場合などで報告されているが,受傷から発症までの期間はせいぜい1カ月までであった.本症例のように8カ月を経過して発症することは稀であるため,若干の文献的考察を加えて報告する.
  • 浅岡 忠史, 東野 健, 中野 芳明, 加納 寿之, 矢野 浩司, 門田 卓士
    2004 年 65 巻 9 号 p. 2333-2337
    発行日: 2004/09/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は65歳男性.膵癌術後にgemcitabinを用いた補助化学療法を施行した. Gemcitabine 1,000mg/m2を週1回3週連続で投与し1週休薬するスケジュールで3クール施行し,総投与量は8,500mgに達した. 7回目の投与終了8日後より,発熱,呼吸困難,咳嗽,倦怠感を認め, Grade 4の呼吸器障害が出現.血液ガス検査ではPaO2 45mmHg, PaCO2 39mmHgと低酸素血症を呈し,胸部単純写真とCTでは両側下肺野を中心に間質性陰影を認めた. Gemcitabineに起因した薬剤性間質性肺炎と診断し,入院の上プレドニン60mg/日の静注を開始し,その後減量していった.治療開始1週間後には低酸素血症は改善し,画像上も著明な改善が得られ2週間後に退院となった.膵癌に対するgemcitabine長期投与例での間質性肺炎の合併例は稀であるが,重篤な副作用として注意が必要であると思われたので報告する.
  • 魚本 昌志, 蜂須賀 康己
    2004 年 65 巻 9 号 p. 2338-2341
    発行日: 2004/09/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    多巣性微小結節性II型肺細胞過形成(multifocal micronodular pneumocyte hyperplasia: MMPH)は,結節性硬化症(tuberous sclerosis: TS)に稀に認められる肺病変である.今回われわれは, TS疑診例において, MMPH症例を経験したので報告する.症例は22歳,女性.職場検診にて左肺異常影を指摘され,精査目的に受診した.胸部HRCT上,左S1+2cに約10mmの不整形スリガラス状影,左S8に約20mmの不整形浸潤影を認め,両肺に5 mm以下の多発結節影を認めた.左S8のTBLB標本では,非特異的炎症の結果であった.何らかの,炎症性疾患に伴う肺病変と考え,約1年のfollowを行ったがCT上変化を認めなかったため胸腔鏡下に左S1+2および左S8の生検を施行した.病理診断は, 2病変ともに肺リンパ脈管筋腫症(lymphangioleiomyomatosis: LAM)様病変をわずかに伴ったMMPHであった.稀な疾患ではあるが,肺内スリガラス状影・浸潤影における鑑別診断の一つとして考慮すべきものとして報告する.
  • 山本 正樹, 松崎 圭祐, 岡本 史樹, 川野 豊一, 三浦 修
    2004 年 65 巻 9 号 p. 2342-2346
    発行日: 2004/09/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    自殺目的に苛性ソーダ飲用後の腐蝕性食道炎による食道狭窄をきたした症例に対し,手術拒否という背景の中,拡張術を施行するも長期的な改善が得られず食道ステントの留置にて狭窄改善を目指した. non covered stent留置を行うもmesh間隙より肉芽増生を認め再狭窄をきたした為, covered stentの追加留置を行い良好な経過が得られた.特にアルカリ性薬物飲用による腐蝕性食道炎は遅発性に深層への炎症波及を来たす為,中等度以上の症例には外科的治療が選択されるべきである.しかし,外科的治療を行うことができず慢性期に食道狭窄をきたした症例にはステント留置も有用な治療法であると思われる.
  • 天野 晃滋, 福島 幸男, 柴田 信博
    2004 年 65 巻 9 号 p. 2347-2351
    発行日: 2004/09/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    進行胃癌を伴った食道破裂の1例を経験した.症例は57歳男性.昼食後に嘔吐し,急激に右胸部痛,上腹部痛が出現し,発症から約4時間後に当院救急外来を受診した.胸腹部所見,胸部単純レントゲン,胸腹部CT,食道造影により胸部下部食道破裂,幽門狭窄と診断し緊急手術となった.上腹部正中切開による経食道裂孔アプローチにて一期的単純縫合閉鎖術,有茎大網被覆術,縦隔ドレナージ術,胃空腸バイパス術を施行した.胃癌による幽門狭窄のうえ,出血が催吐因子となって発症した,と考えられた.
    胃癌に伴った食道破裂は自験例を含め本邦9例目であったが,同時に診断されたのは5例であった.また進行胃癌に伴ったものは4例であった.食道破裂は早期診断,治療をしないと死亡率が高く,併存疾患がある場合の診断はより困難である.まず食道破裂の存在を念頭におき,催吐因子として併存疾患の検索も重要であると考えられた.
  • 橋本 謙, 井上 光昭, 犬塚 清久, 白水 玄山, 平木 幹久
    2004 年 65 巻 9 号 p. 2352-2355
    発行日: 2004/09/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    胃切除後21年目に発症した空腸残胃腸重積症の1例を経験したので報告する.症例は71歳,男性,コーヒー残渣様嘔吐のため当院紹介,入院となった.既往歴は50歳時に胃潰瘍のため胃切除術を施行されていた.現症は腹部は平坦で上腹部に軽い疼痛と腹膜刺激症状を認めた.血液検査では特記すべき異常所見は認めなかった. X線透視では残胃内に陰影欠損像がみられ, CTでは上腹部に重層構造を示す腸管像を認めた.内視鏡では残胃内に暗赤色蛇腹様腫瘍所見を認めた.
    以上より空腸残胃重積症と診断,手術を施行した.開腹すると初回手術はビルロートII法で行われており残胃内への輸出脚小腸の重積と,さらにその小腸内にも小腸の重積があり三筒性の腸重積であった.用手整復後,壊死腸管を切除,ブラウン吻合,腸間膜への輸出脚固定を付加し手術を終了した.術後5年経過後の現在,再発所見はなく良好である.
  • 安村 友敬, 野方 尚, 矢川 彰治, 小澤 俊総
    2004 年 65 巻 9 号 p. 2356-2361
    発行日: 2004/09/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    今回われわれは十二指腸乳頭部原発の印環細胞癌という稀な1例を経験したので報告する.症例は64歳,男性.平成12年9月25日上腹部痛を主訴に当科入院となった.超音波検査で胆道拡張が認められ,血液生化学検査より閉塞性胆管炎を生じていた.腹部CT検査を施行したところ総胆管末端に腫瘍の存在が疑われた.内視鏡検査にて十二指腸乳頭部に腫瘤潰瘍型の腫瘍が確認され生検の結果,印環細胞癌と診断された. 10月11日全胃幽門輪温存膵頭十二指腸切除を施行, 10×10×8mmの小さな病変であったがすでに膵浸潤,リンパ節転移を伴っていた.退院後も補助化療を継続したが術後23カ月目にCEA値が上昇,骨シンチで多発骨転移が認められ,術後31カ月目に播種性血管内凝固症候群を生じ死亡した.
  • 山崎 良定, 山岡 啓信, 西川 宏信, 高田 昌彦, 中島 幸一
    2004 年 65 巻 9 号 p. 2362-2367
    発行日: 2004/09/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    過去10年間で餠による食餌性イレウスを2例経験した.自験例を含む1982年以降の本邦報告28例の文献的考察を加えた.
    症例1は68歳,男性.嘔吐・突然の上腹部痛,腹部CTにて小腸の拡張・鏡面像を認め,またhigh densityな物質を腸管内に認めた.絞扼性イレウスとして緊急開腹したが,小腸切開にて嵌頓餠を摘出した.症例2は65歳,女性.間欠的腹痛・嘔吐,腹部CTでhigh densityな物質を腸管内に認め,餠イレウスと診断,緊急開腹・小腸切開で嵌頓餠を摘出した. 2例とも胃切の既往はなく,食事歴で餠を摂取していた.
    餠嵌頓イレウスは一度経験すれば,次回より腹部CTで容易に診断できる.しかし腹膜刺激症状が強いため,腹部症状に応じて保存的治療よりも緊急手術のタイミングをはかる必要がある.
  • 野中 健太郎, 岩瀬 和裕, 山東 勤弥, 位藤 俊一, 三方 彰喜, 水島 恒和
    2004 年 65 巻 9 号 p. 2368-2373
    発行日: 2004/09/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    真性腸石の本邦報告例は41例に過ぎない.多発性小腸狭窄に合併した真性腸石の1例を報告した.症例は55歳男性,主訴は腹痛.約10年前より腹痛及び腸管蠕動不全を繰り返したが,その都度保存的に軽快した.近医にて胆石症を指摘され当科紹介となった.腹部CTにて,小腸結石を2個認めた.手術当日再度CTを施行し,回腸末端部に1個の結石を確認した.胆石症および小腸結石の術前診断にて腹腔鏡補助下手術を行った.腹腔内に多発する小腸狭窄を認め,回盲部より約160cmの回腸狭窄部に腸石の嵌頓を認めた.消化管に瘻孔は認めなかった.腸石摘出後,胆嚢摘出術を施行した.腸石は最大径4cm,重量10gで,結石分析の結果から胆汁酸を主成分とする真性腸石と判断した.真性腸石過去報告例では,腸内容うっ滞を伴う憩室・狭窄・盲嚢の併存例が多く,自験例も多発する小腸狭窄が原因と考えられた.
  • 安藤 秀明, 明石 建, 津田 聡子, 鈴木 敏文, 岩崎 渉, 花岡 農夫
    2004 年 65 巻 9 号 p. 2374-2378
    発行日: 2004/09/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は70歳,男性.発熱,嘔吐,心窩部痛を主訴に救急搬送.来院時,心窩部に圧痛を認め,腹部は軽度膨隆していた.血液所見でBUN 41.2mg/dl, Cr 2.7mg/dlと腎障害・脱水があり,また, CPK 9418IU/l, BE-1.2と代謝性アシドーシスを呈しており腸管虚血を疑った.腹部単純CT検査では,門脈左枝領域に門脈ガス血症を認めた.以上より上腸間膜動脈血栓症と診断し,上腸間膜動脈造影を施行.末梢動脈の造影不良と動脈の狭小化と拡張を交互に認め,非閉塞性小腸虚血と判断し,血管拡張薬動注したが血行改善ないため,緊急手術施行.空腸は非連続性広範に壊死していた.術中小腸内視鏡を行い切除範囲決定し,空腸125cmを切除した.術後肝不全を呈したが術後1カ月退院した.腸管壊死を伴う非閉塞性腸管虚血症を経験したので報告した.切除範囲決定には術中小腸内視鏡検査が有用であった.
  • 池田 宏国, 辻 和宏, 三谷 英信, 斉藤 誠, 安藤 隆史, 羽場 礼次
    2004 年 65 巻 9 号 p. 2379-2382
    発行日: 2004/09/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    腸管嚢腫様気腫症は,確定診断が出来れば重篤な臨床症状がない限り,保存的治療が可能な疾患である.今回われわれは,消化管穿孔として開腹術を行った腸管嚢腫様気腫症の1例を経験したので報告する.症例は80歳,女性.右下腹部痛を主訴に当院内科を受診した.胸部・腹部X線写真では異常所見を認めなかった.腹部CT,超音波検査にて,肝表面に腹腔内遊離ガス像と,盲腸から上行結腸にかけて腸管壁の肥厚を認めた.以上から,結腸憩室穿孔または虫垂穿孔による腹膜炎を疑い,緊急開腹手術を行った.消化管に明らかな穿孔部は認めなかったが,回腸末端から約90cm口側の回腸漿膜下および腸間膜に,多数の気腫性変化と散在する粘膜下腫瘍様の硬結を触知した.手術は約25cmの回腸を切除した.病理組織学的検査では,粘膜下層に嚢胞状病変を認め,腸管嚢胞様気腫症と診断した.術後経過は良好で,現在,術後約8カ月を経過したが,再発は認めていない.
  • 渡辺 敦, 田中 秀典, 田中 善宏, 竹内 賢, 山本 悟, 渋谷 智顕
    2004 年 65 巻 9 号 p. 2383-2387
    発行日: 2004/09/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    腸結核により小腸穿孔をきたした1例を経験したので報告する.症例は65歳の女性.約10年前より脳梗塞による左半身麻痺を認めた.腹痛を訴え近医受診し,入院加療を受けていた.入院後3日目,筋性防御を認めたため当院紹介受診となった.胸部X線写真で右上肺野を中心に浸潤影を認め,右横隔膜下に遊離ガス像を認めた.腹部CT上遊離ガス像を認め,消化管穿孔の診断にて緊急手術施行した.右下腹部を中心とした膿性腹水があり,回盲部より20cm口側に全周性輪状潰瘍を認め,同部位が穿孔していた.小腸穿孔による汎発性腹膜炎と診断し,穿孔部腸管を部分切除した.病理組織学的所見では, Langhans型巨細胞.類上皮細胞.リンパ球よりなる腸結核の像であった.喀痰培養検査およびPCRにて結核菌と診断し,抗結核療法を開始したが,エンドトキシン・ショックによるDICの状態からMOFへ移行し,第12病日に死亡した.
  • 藤本 大裕, 田口 誠一, 太田 信次, 足立 巌, 飯田 茂穂, 中川原 儀三
    2004 年 65 巻 9 号 p. 2388-2391
    発行日: 2004/09/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は81歳,女性.腹痛,嘔吐を主訴に当院受診した.腹部エコー, CT検査にて骨盤腔内にターゲットサインを認め,またそれより口側の小腸の拡張を認めた.小腸重積による腸閉塞と診断,緊急手術を施行した.回腸末端部より60cm口側の回腸がおよそ28cmにわたって重積を起こしており,回腸部分切除を施行した.切除標本では腸重積の先進部となった径2.5×2×1cm大の粘膜下腫瘍を認めた.病理組織学的検査において粘膜下組織内に導管構造と腺葉を認め,迷入膵Heinrich分類II型と診断した.迷入膵は胃,十二指腸などの膵臓の近傍に好発する疾患で,回腸に発生することは比較的稀である.回腸迷入膵は腸重積や腸閉塞といった合併症を発症して小腸切除されてから診断されることが多く,術前診断が困難な症例が多い.
  • 牧 孝将, 松尾 勝一, 池原 康人, 吉岡 晋吾, 大石 純, 冨田 昌良
    2004 年 65 巻 9 号 p. 2392-2395
    発行日: 2004/09/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    胃切除後15年目に発症したBraun吻合部空腸重積症を経験したので報告する.
    症例は80歳,女性. 15年前に他院で胃切除術(詳細は不明)を受けている.夜間,突然の腹痛,嘔吐を主訴に紹介入院.腹部超音波検査にてtarget sign,腹部CT検査ではmultiple concentric ringを認めたため腸重積症と診断にて手術を施行した.開腹すると血性腹水を中等度認めた.前回の手術再建はBillroth II法(結腸前, Braun吻合付加)が行われていた. Braun吻合部から約20cmの輸出脚空腸が逆行性に重積し,先端部は輸入脚に到達していた.重積空腸を用手的に整復したが循環障害が高度で,一部,穿孔していたため空腸部分切除を付加した.術後は順調に経過し約3年間無再発で経過している.胃切除後の腸重積症は稀な疾患であるが,上部消化管閉塞症状の鑑別診断には本症も念頭におき早期診断を行うことが肝要であると考えられた.
  • 伊藤 勝彦, 山下 純男, 鈴木 裕之, 尾本 秀之, 石川 文彦, 諏訪 敏一
    2004 年 65 巻 9 号 p. 2396-2399
    発行日: 2004/09/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    イレウス術後にイレウス管留置が誘因と考えられた腸重積を2例経験した.症例1は72歳の男性,症例2は75歳の男性,ともに癒着性イレウスにてイレウス管を留置するも改善せず,癒着剥離術・小腸―小腸吻合術を施行し,イレウス管は回盲部にバルーンを拡張した上で留置した.症例1では術後10日目(イレウス管抜去後5日目),症例2では術後31日目(イレウス管抜去後21日目)に嘔気と腹痛を認め,小腸造影・腹部CTにて腸重積と診断し開腹術を施行した.症例1では空腸に順行性の重積を認め腸切除を施行,症例2では回腸に逆行性の重積を認め整復術を施行した.イレウス術後に留置したイレウス管は文献的には腸蠕動が回復する際に腸重積をおこしやすいとされるため,できるだけ早期に抜去し,その前後においては腸重積の合併に十分注意する必要があると考えられた.
  • 若原 正幸, 安江 幸洋, 安江 紀裕
    2004 年 65 巻 9 号 p. 2400-2404
    発行日: 2004/09/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は59歳の女性.突然の腹痛にて1996年7月26日受診,腹部単純X線写真にて,小腸ガス, niveauを認め緊急入院した.血液検査にて白血球数10,100/mm3と軽度上昇を認めた以外異常は認めなかった. 7月27日腹膜刺激症状を認めたため,開腹術を施行した.腹腔内には少量の血性腹水が存在し,回盲部は固定されておらず捻転を認め,腸間膜に小出血斑を認めた.さらにTreitz靱帯より80cm肛門側の小腸に腸管浮腫を伴った腫瘍を認めたため,小腸部分切除術を施行した.切除標本より腫瘍は粘膜下に存在し, 2.0cm大であった.病理組織検査にて腺腔を形成しつつ増殖する立方ないし円柱上皮とともにその周囲に平滑筋の増生を認め, adenomyomaと診断された.異型細胞,核分裂像は認められなかった.術後経過は良好であり,現在のところ再発は認めていない.
  • 篠原 敏樹, 広瀬 邦弘, 佐治 裕, 高橋 周作
    2004 年 65 巻 9 号 p. 2405-2408
    発行日: 2004/09/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    Meckel憩室は多くの場合無症状で経過する.時に腸閉塞,憩室炎,出血などをおこし外科治療を有するが,異物による穿孔は極めて稀である.今回,われわれは魚骨によるMeckel憩室穿孔の1例を経験したので,文献的考察を加え報告する.症例は68歳,男性.右下腹部を中心とした腹痛を主訴に受診された.虫垂切除の既往歴があり憩室もしくは潰瘍穿孔による汎発性腹膜炎を疑い臨時手術を施行した. Meckel憩室に2.5cmの魚骨が突出しており,魚骨によるMeckel憩室穿孔と診断し,憩室切除を施行した.術前CTをretrospectiveに検討すると魚骨と一致して拡張した小腸壁に向かったhigh densityの線状陰影が認められた.魚骨によるMeckel憩室穿孔は本邦では文献的に11例しか報告がなく稀な症例である.小さな魚骨でも腹膜炎型をとり急性虫垂炎と診断され手術されることが多く,術前に魚骨を同定しえた症例はない.
  • 小橋 俊彦, 山崎 浩之, 越智 誠, 浅原 利正
    2004 年 65 巻 9 号 p. 2409-2412
    発行日: 2004/09/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は67歳男性.イレウスにて発症し,腹部CTおよびイレウス管造影により小腸に腫瘍性病変を認めた.手術時,空腸に壁外性に発育する約4cm大の腫瘍を認め,空腸部分切除術を施行した.病理組織学的にはGISTの像で,高度の核分裂像を認め,腸間膜リンパ節転移も認めた.免疫組織学的検索ではc-kit陽性, CD34陰性, α-SMAとdesminは陰性, S-100 protein陽性であった.以上より,リンパ節転移を伴ったGIST neural typeと診断した.術後6カ月目に肝S3に約2cm大の肝転移を, 1年8カ月目に肝S6に3cm大の肝転移を認め,いずれも肝部分切除術を施行した.また,初回手術より3年8カ月後に腹腔内再発腫瘤に対して切除術を施行した.最終手術後からimatinib mesylateの内服を継続している.初回手術より4年が経過した現在,新たな再発・転移の所見は認めていない.
  • 久下 博之, 吉村 淳, 豊川 元邦
    2004 年 65 巻 9 号 p. 2413-2416
    発行日: 2004/09/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    魚骨による虫垂穿孔の1例を経験したので報告する.症例は43歳,男性.下腹部痛を主訴に来院した.腹部所見と腹部CT検査所見から糞石を伴う急性虫垂炎と術前診断し,手術を施行した.開腹すると虫垂体部に魚骨様異物による穿孔を認めた.虫垂穿孔部以外の炎症は軽度であり,順行性虫垂切除術を行った.元素分析とその形態から異物は魚骨であると判明した.病理学的検査で虫垂穿孔部以外の粘膜は炎症を認めないことから穿孔性虫垂炎ではなく,魚骨による虫垂穿孔と診断した.魚骨による虫垂穿孔は稀であり,本例は病理学的に虫垂穿孔であることを確認できた興味深い症例であると思われた.
  • 塚本 俊輔, 山本 哲久, 石沢 武彰, 薬丸 一洋, 関川 敬義
    2004 年 65 巻 9 号 p. 2417-2420
    発行日: 2004/09/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    憩室炎が原因によるS状結腸膀胱瘻の2症例を経験し,病悩期間と手術適応について考察した.症例1は69歳,男性.気尿,糞尿,下痢が出現してから10年間放置していた.糞尿が増悪,排尿時痛も出現したため当科入院となった.術前精査にてS状結腸膀胱瘻と診断しS状結腸部分切除・膀胱部分切除・膀胱瘻切除術を行った.病理所見でもS状結腸から膀胱にかけて瘻孔が確認された.症例2は70歳,男性.下腹部痛が出現し,その後に結腸狭窄症状と糞尿が出現した. S状結腸憩室炎に伴う結腸膀胱瘻および結腸狭窄と診断し,糞尿出現後21日目に直腸S状結腸部分切除術を施行した.手術所見,病理所見にて瘻孔を確認できなかった. 2症例とも,術後再発を認めず外来通院中である.症例1では病悩期間が10年と長期であった.症例2では病悩期間が21日と短く,瘻孔の自然閉鎖が考えられた.
  • 木村 文彦, 三好 秀幸, 国府 育央, 山本 正之, 矢野 外喜治, 平塚 正弘
    2004 年 65 巻 9 号 p. 2421-2426
    発行日: 2004/09/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は59歳,女性. 2002年12月13日に下血をきたし,翌日に当院を受診した.直腸診では, 9時を中心に径4 cmの硬結を触知した.骨盤部MRIでは,直腸下部右側に径7.5cmの腫瘤を認めた.大腸内視鏡検査では,歯状線より口側に径4 cmの粘膜下腫瘍を認め,粘膜の頂部に出血を伴う潰瘍を認めた.粘膜下腫瘍の診断のために経肛門的針生検を施行した. HE染色では紡錘形の腫瘍細胞の束状増殖を認め,免疫組織染色ではc-kit, CD34とも陽性であった.以上より,直腸GISTと診断し,手術は開腹にて腫瘍に接した一部の直腸の全層切除を伴う腫瘍摘出術を行なった.摘出標本の病理は術前同様GISTであった.術前に直腸GISTと診断すれば,リンパ節郭清は省略でき,可及的に機能温存手術を目指すことができると考えられる.本疾患が疑われたときには積極的に免疫学的検索を行う必要があると思われた.
  • 菅江 貞亨, 永野 靖彦, 小金井 一隆, 高橋 正純, 鬼頭 文彦, 福島 恒男
    2004 年 65 巻 9 号 p. 2427-2430
    発行日: 2004/09/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    26歳の女性,便秘,腹痛を主訴に近医を受診.注腸で全周性狭窄と腸管外への造影剤漏出あり. Crohn病による狭窄,瘻孔が疑われ当院を紹介受診した.大腸内視鏡で不整な全周性狭窄があり中分化腺癌を認めた.びまん浸潤型S状結腸癌の診断で, S状結腸切除術を施行した.切除標本では8 cmにわたる全層性の著明な壁の肥厚を伴う狭窄を認めた.中央に2 cmの隆起性病変を伴っており4型に1型を伴った5型大腸癌と診断した.また隆起病変基部から腸管外の膿瘍に瘻孔を形成していた.病理所見では隆起性病変内に中分化腺癌の認めたが,周囲の壁の肥厚は全層性の非特異的炎症性変化で癌の浸潤は認めなかった.最終診断は1型, 2×2 cm, mp, n1(+), stage IIIa, cur Aで,化学療法施行し術後23カ月間無再発生存中である.炎症性変化のため肉眼的にびまん浸潤型を呈した分化型腺癌の報告は検索しえた限り本邦で8例のみであった.
  • 今野 理, 山本 哲久, 川西 輝貴, 森田 博義, 関川 敬義
    2004 年 65 巻 9 号 p. 2431-2434
    発行日: 2004/09/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    78歳,女性.主訴は下腹部痛・下血.直腸診で肛門縁から約4 cmに直腸粘膜反転とその先端に硬い腫瘍を触知し,腹部CT上の所見と併せ, S状結腸癌の下部直腸内重積によるイレウスと診断した.経肛門的減圧を行ったが症状増悪し,重積が解除されないため手術を施行した.直腸Rs部にS状結腸が重積しており,先進部は肛門管直上にあった.肛門から用指的に重積部位を腹腔内へ押し戻しながらHutchinson手技にて重積を整復したがS状結腸に全層性裂創を認めたため, Hartmann手術を施行した.裂創部筋層には虚血性変化を示唆する菲薄化を認めた.成人の腸重積は比較的稀な疾患であり,術中整復に関して若干の文献的考察を加え報告する.
  • 新国 恵也, 岩谷 昭, 角田 和彦, 西村 淳, 河内 保之, 清水 武昭
    2004 年 65 巻 9 号 p. 2435-2439
    発行日: 2004/09/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は33歳男性.発熱と右季肋部痛を主訴に来院し,肝膿瘍の診断で入院となった.入院時CT検査にて肝内側区域に径12cm大の膿瘍を認めた.原因菌検索と治療目的に超音波下に膿瘍穿刺ドレナージ術を行った.暗赤色膿汁が吸引されたため数回の細菌培養およびアメーバ原虫の検鏡を行ったがいずれも陰性であった.抗生剤を投与したが解熱せず,入院20日目に肝膿瘍が十二指腸に穿孔し吐下血をきたしショックとなった.緊急手術により止血,ドレナージを行った.術中肝壊死組織の検鏡により栄養型アメーバ赤痢が観察され,アメーバ性肝膿瘍と診断した.術後dehydroemetineとmetronidazoleの投与を行い膿瘍は完治した.アメーバ性肝膿瘍が十二指腸に穿孔することは稀であり文献的考察を加え報告した.
  • 都志見 貴明, 松井 則親, 岡 一斉, 西 健太郎, 守田 知明, 石黒 公雄
    2004 年 65 巻 9 号 p. 2440-2444
    発行日: 2004/09/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は73歳女性.十二指腸乳頭部癌に対し平成11年1月幽門輪温存膵頭十二指腸切除, PD-II (Child法)再建施行された.平成14年9月より腹痛,発熱,食欲不振出現し当院入院となった.精査施行し肝内胆管癌が疑われ肝左葉切除を行った.摘出標本では白色充実性の腫瘤を認めた.病理診断の結果肝炎症性偽腫瘍と診断された.膵頭十二指腸切除後の肝炎症性偽腫瘍の原因として術後の胆管炎が考えられた.文献上,膵頭十二指腸切除後の肝炎症性偽腫瘍の報告は本症例を含め3例でありいずれも肝切除が施行されていた.過大な侵襲を避けるためにも肝炎症性偽腫瘍を念頭に置き症状,血液検査,画像検査,病理検査を充分に考慮し的確な診断を行うことが重要と思われた.
  • 種村 宏之, 江口 環禧, 高田 将司, 渡辺 正志, 野中 博子
    2004 年 65 巻 9 号 p. 2445-2449
    発行日: 2004/09/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    S状結腸癌の手術前検索にて偶然発見されたvon Meyenburg complexの1例を経験したので,これを報告する.症例は70歳男性. S状結腸癌手術前検索で肝臓の両葉にわたり多発する小さな腫瘤性病変を認めた. MRIにて嚢胞性疾患が疑われたが,腹部超音波検査では多彩なエコーレベルを呈する小結節性陰影として描出された.病理組織学的には嚢胞状に拡張した胆管を認め,これらは既存の胆管との交通を認めずvon Meyenburg complexと診断された.
    von Meyenburg complexは胆管過誤腫性病変といわれている.臨床症状は特に無いので,日常診療で経験されることは稀であるが,今後画像診断の向上とともに遭遇する機会が増えてくるものと思われる.転移性肝腫瘍との鑑別診断にはMRIが有用であると思われた.
  • 秋田 裕史, 大東 弘明, 江口 英利, 佐々木 洋, 石川 治, 今岡 真義
    2004 年 65 巻 9 号 p. 2450-2453
    発行日: 2004/09/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    胆嚢原発の小細胞癌は極めて予後不良であるが,長期間の化学療法によって3年以上無再発生存しえた1自験例を報告する.症例: 55歳女性.胆嚢癌に対し拡大胆嚢摘出術,胆管合併切除を施行した.病理組織で胆嚢粘膜に腺癌を,筋層内に小細胞癌の結節を認め, pT1N2H0P0M0のstage IIIであった.術直後から,肝転移予防を目指して肝動脈から5-fluorouracilを持続投与し,その後は外来にてTegafur・uracil (UFT) 300mg/dayを34カ月間投与した.その間再発兆候なく経過したが,投与中止後4カ月後(術後39カ月目),広範にわたる傍大動脈リンパ節が急速に腫大したので,化学療法(UFT, 5-FU, Cisplatin (CDDP), Etoposide)を再開したが奏効せず,術後44カ月目に死亡した.胆嚢原発小細胞癌の手術成績は極めて不良であるが,最近では化学療法の併用により長期生存例の報告も散見され,本症例では術後長期間の化学療法が長期無再発生存に寄与した可能性が考えられた.
  • 藤田 正太郎, 隈元 謙介, 五十嵐 渉, 菅野 浩樹, 星野 正美, 竹之下 誠一
    2004 年 65 巻 9 号 p. 2454-2458
    発行日: 2004/09/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    胆管原発の腺扁平上皮癌は非常に稀な疾患であり,われわれは下部胆管に発生した腺扁平上皮癌の1例を経験したので報告する.症例は55歳,男性.近医で肝機能異常と閉塞性黄疸を指摘され,精査加療目的に当院紹介入院となった.入院時T-bil 12.19mg/dlと高値であり,腹部超音波検査,腹部CTにて総胆管の拡張が認められたため,直ちに経皮経肝胆道ドレナージ(PTBD)施行した. PTBD造影や超音波内視鏡検査にてVater乳頭近傍に狭窄を認めた.下部胆管癌の診断にて膵頭十二指腸切除術を施行した.病理組織診断の結果,癌は粘膜層から筋層では高~中分化型腺癌の像を呈しており,筋層から膵実質までは充実性の胞巣を形成する部位が多く,その胞巣内には角化や細胞間橋が明瞭な扁平上皮癌が認められたため,腺扁平上皮癌と診断された.現在術後8カ月経過し,再発の兆候はない.
  • 吉田 誠, 多保 孝典, 林 秀樹, 小野寺 久, 今村 好章
    2004 年 65 巻 9 号 p. 2459-2463
    発行日: 2004/09/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は78歳女性.主訴は右季肋部痛で,画像検査で肝門部に手拳大の腫瘍を認め,肝への直接浸潤を伴った胆嚢癌と術前診断された.血液検査では白血球が高値を示した.肝部分切除を伴う胆嚢摘出術が施行され,扁平上皮癌と病理診断された.術後9カ月目に肝転移をきたしたのと同時に白血球が再上昇したため, G-CSF産生腫瘍を疑い血中G-CSF値測定,および抗G-CSF抗体による腫瘍組織の免疫染色を行った.血中G-CSF値は正常の約3倍と高値で,かつ腫瘍細胞の細胞質に陽性所見を認めたことからG-CSF産生胆嚢癌と診断した.経過中白血球数, G-CSF値は病状進行とともに上昇した.追加した化学療法が奏効せず術後12カ月で死亡した.胆嚢G-CSF産生扁平上皮癌は稀であり,文献的考察を加え報告した.
  • 遠藤 健, 松山 秀樹, 上野 貴史, 内田 靖之, 高橋 豊
    2004 年 65 巻 9 号 p. 2464-2467
    発行日: 2004/09/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は63歳女性. 1997年5月に下行結腸癌(高~中分化型腺癌,深達度ss, n0, ly(+), v(+))にて左半結腸切除術を受けた.その後2000年7月に右肺に転移を認め,胸腔鏡下右肺上葉切除術を施行された.以降の経過中CEA上昇(612ng/ml)を機に,膵尾部に腫瘍を診断された.内視鏡的逆行性膵管造影では膵尾部にて主膵管の途絶を認めた.腹部CTでは膵尾部に辺縁不規則な3cm大の腫瘍を認め,造影CTでは濃染されなかった. CA19-9, DUPAN-2は正常であり,転移性膵癌と診断し,膵体尾部切除術を施行した.病理組織学的には原発巣と同様の組織型を呈し,下行結腸癌の膵転移と診断された.本症例は肺転移後の膵転移であり,全身血行性転移の一部分症と推察されたが,限局性転移巣であるため,切除の適応があり,長期的予後も期待し得ると考えられた.
  • 中島 紳太郎, 櫻井 みのり, 石井 雄二, 山崎 洋次, 矢永 勝彦, 河上 牧夫
    2004 年 65 巻 9 号 p. 2468-2472
    発行日: 2004/09/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    脾血管腫は脾原発の良性腫瘍のうち高頻度であるが,なかでも線維化や硝子化など硬化性の二次性変化を伴うsplenic sclerosing hemangioma (SSH)は極めて稀である.われわれはSSHの1例を経験したのでここに文献的考察を含め報告する.
    症例は45歳男性で,健診で発見された脾腫瘤の精査で当科を受診した.同腫瘤は腹部超音波検査で中程度の血流増加を伴い,造影CTにおいて遅延相で増強効果を伴っていた.患者の希望と確定診断の目的で摘脾を施行し,病理学的検査で, SSHと診断した.脾腫瘤の鑑別疾患には悪性リンパ腫や転移性脾腫などがあげられるが,その術前診断は困難で,摘脾の合併症発生率が低いこともあり,診断的治療目的で摘脾が行われる場合が多い.しかし,同腫瘍は過去に悪性化や破裂の報告は見られないため,今後,症例の蓄積で術前診断が容易となれば経過観察の対象となり得ると考えられる.
  • 門川 佳央, 田野 龍介, 金井 陸行, 水本 明良, 木下 浩一, 高林 有道
    2004 年 65 巻 9 号 p. 2473-2477
    発行日: 2004/09/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は45歳,男性.高血圧および中心性肥満が認められ,血液検査などからCushing症候群と診断した.さらにCTなどの画像にて右副腎に径8cm腫瘤が認められ,原発性副腎癌と考えられた.腫瘍は被膜に覆われているものの,腎,肝,下大静脈と接しており,腫瘍の増殖能が盛んであることを考慮すると手術による完全摘除は困難と判断し,まず術前化学療法としてミトタン連日投与およびエトポシド投与を4クール行った.画像検査上,腫瘍の軽度縮小および内部の壊死を認めた時点で,副腎腫瘍摘出術,右腎合併切除,肝部分切除を行い,病理組織所見からも腎や肝への浸潤も認められず,完全摘除しえた.術前化学療法としての投与薬剤の種類および投与期間については,定まったプロトコールはない.今回はCTにて変化を認めた時点で手術を行うこととしたが,今後,プロトコールを定めていく必要があると考えられた.
  • 本田 晴康, 津澤 豊一, 川田 崇雄, 熊谷 嘉隆
    2004 年 65 巻 9 号 p. 2478-2481
    発行日: 2004/09/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    炎症性偽腫瘍は肺や肝などに発生する原因不明の非腫瘍性腫瘤性病変だが,腸間膜発生例の報告は稀である.今回,原因不明の腸間膜腫瘤として術前診断に苦慮し,摘出標本で炎症性偽腫瘍と診断された症例を経験したので若干の文献的考察を加え報告する.症例は43歳男性.腫瘤形成性膵炎の既往があるが,開腹歴はない. 2003年5月20日頃から腹痛出現し, 37℃台の発熱を伴った.臍右横に可動性のない手拳大の硬い有痛性腫瘤を触知した.腹部CT検査で同部に3.5×4.0cm大の造影効果のある不均一な腫瘤があり, 7日後には4.0×5.0cm大に増大した.抗生剤を1週間投与したが,腹痛および発熱が続き,腫瘤の増大が認められたため, 6月18日手術を行った.回腸腸間膜根部に硬い腫瘤があり,回腸が数カ所でこの腫瘤に強固に癒着していた.周囲の硬化肥厚した腸間膜を含めて腫瘍を切除したが,回腸を約55cm合併切除せざるを得なかった.術後経過は良好である.
  • 齋藤 心, 小林 伸久, 仁平 芳人, 横山 卓, 昌子 正實, 安田 是和
    2004 年 65 巻 9 号 p. 2482-2487
    発行日: 2004/09/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は22歳の男性. 1999年2月と8月に特発性後腹膜血腫にて開腹術施行,その後の精査でも原因は不明のままであった. 2002年6月,自然気胸にて入院. 2002年9月腹痛のため当科受診,腹部造影CTおよび血管造影にて後腹膜血腫と診断,緊急手術を施行した.下行結腸内側に巨大な血腫が認められ,出血点は辺縁動脈からと判断した.色調の悪い下行結腸を切除したが,腸管が通常より明らかに脆弱であったため,吻合は行わず人工肛門を造設した.術後経過は良好であった.
    後腹膜血腫の原因としては,姉が冠動脈瘤にて心臓バイパス術を受けており,これまでの経過・身体所見より動脈性出血や消化管穿孔を起こすことで知られるEhlers-Danlos症候群IV型に起因すると診断した.
    原因のはっきりしない腹腔内・後腹膜血腫や消化管穿孔では,稀ではあるが本疾患を念頭におく必要があると考えられた.
  • 平能 康充, 龍沢 泰彦, 木下 静一, 清水 淳三, 川浦 幸光
    2004 年 65 巻 9 号 p. 2488-2490
    発行日: 2004/09/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は69歳,男性.右大腿部痛,発熱を認めたため当院を受診した.腹部CT検査で回盲部背側の後腹膜腔に膿瘍を認めた.膿瘍が限局されていたため,炎症の強い急性期の一期的な手術を避けまず保存的に経皮的ドレナージを施行し,炎症の落ち着いた時期に虫垂切除を行うinterval appendectomyを施行した.術中所見では虫垂先端のみが腫大し後腹膜と癒着しており,癒着部を剥離し虫垂切除を施行した.病理組織学的に虫垂先端の近傍の固有筋層を欠く仮性憩室とその周囲の炎症を認め虫垂憩室炎の後腹膜穿孔による後腹膜膿瘍と診断された.本症は急性虫垂炎と鑑別を要する比較的稀な疾患であり,穿孔率が高いため臨床上問題となることが多い.後腹膜膿瘍を形成することは稀で,自験例が本邦3例目の報告であるが,限局した膿瘍を形成した症例ではinterval appendectomyも治療法の選択肢の一つとなりうると考えられた.
  • 末永 洋右, 冨岡 一幸, 横山 武史, 武谷 洋介, 小張 淑男
    2004 年 65 巻 9 号 p. 2491-2494
    発行日: 2004/09/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    Continuous ambulatory peritoneal dialysis (CAPD)患者には,鼠径ヘルニアの発生頻度が高くなることはよく知られている.今回われわれはCAPDの導入によって鼠径ヘルニアが出現した3例に対してmesh plug法による修復術を行ったので報告する.症例1: 84歳男性.慢性腎不全にて平成13年9月CAPDを導入.平成14年6月,両側鼠径ヘルニアが出現.同年9月18日,両側外鼠径ヘルニアに対してmesh plug法による修復術施行.症例2: 70歳男性.慢性腎不全にて平成14年1月CAPD導入.平成14年8月,右鼠径ヘルニアが出現.同年9月9日mesh plug法による修復術施行.症例3: 69歳男性.平成13年1月CAPD導入.平成14年8月右鼠径ヘルニアが出現し,その後両側鼠径ヘルニアとなった.平成15年1月20日mesh plug法による修復術施行.以上3例とも平成15年9月現在再発や合併症は見られていない.
  • 小泉 大, 井寺 奈美, 笹沼 英紀, 関口 忠司
    2004 年 65 巻 9 号 p. 2495-2498
    発行日: 2004/09/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は83歳,女性. 79歳時に右閉鎖孔ヘルニアで手術を受けた.初回手術のヘルニア門の修復は腹膜縫縮と卵巣縫着が施行された.術後3年を経過した平成15年3月,腹痛で発症し,腸閉塞と診断された.腹部CT検査で右閉鎖孔ヘルニアの再発を認めた.緊急手術施行時に,ヘルニア嚢内に同時に嵌頓した小腸と卵巣とを認めた.腸切除は行わず,メッシュを使用し,ヘルニア門を閉鎖した.閉鎖孔ヘルニアの修復に卵巣など骨盤内臓器を用いることは,修復としては不十分である可能性が考えられた.本邦の術後再発症例15例の文献的検討でも卵巣や卵管の縫着後の再発が認められている.近年の閉鎖孔ヘルニアの報告では,ヘルニア門の修復にメッシュ使用が増加している.ヘルニア門の確実な修復のために可能な限り,メッシュの使用を検討すべきと考えられた.
  • 三田 篤義, 川手 裕義
    2004 年 65 巻 9 号 p. 2499-2501
    発行日: 2004/09/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    閉鎖孔ヘルニア嵌頓2例に対し非観血的整復術を行い,長期経過観察あるいは待期手術を行った.その経過と手技の詳細について報告する.症例1は84歳,女性で,右鼠径部・大腿部痛を主訴に来院した.骨盤部CTにより右閉鎖孔ヘルニア嵌頓と診断されたが,嵌頓は自然整復された.本人の希望により手術を行わず経過観察したが, 8回再発を認め,その都度非観血的整復術を行った.発症より2年11カ月後にうっ血性心不全のため死亡した.症例2は73歳,女性で,腹痛・左鼠径部痛を主訴に来院した.左大腿部内側皮下に腫瘤を触知したため,骨盤部CTを施行し,左閉鎖孔ヘルニア嵌頓と診断した.非観血的整復術により症状の改善を認め,待期的手術を行った.術後経過良好で,無再発生存中である.閉鎖孔ヘルニア嵌頓に対する非観血的整復術は疼痛の緩和,緊急手術の回避に有用であるが,整復後も嵌頓を繰り返すことが多いため,手術による根治が望ましいと考えられた.
  • 堀 晴子, 小野 崇典, 久保田 雅博, 藤野 隆之, 久下 亨, 白水 和雄
    2004 年 65 巻 9 号 p. 2502-2505
    発行日: 2004/09/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は50歳,女性.鶏卵大の右臀部腫瘤を自覚.皮膚科を受診しMRI検査で骨盤内腫瘍と診断され当科紹介入院となった.
    大腸内視鏡,注腸造影検査, CT検査で腹膜翻転部付近の直腸右側に8×5×8 cmの腫瘍を認めた.術前診断として脂肪腫,脂肪肉腫,平滑筋肉腫などを考え開腹術を施行した.腫瘍は腹膜翻転部より下方,直腸の右側を中心に存在し比較的容易に切除できた.腫瘍は白色調,弾性硬の球状腫瘤で,病理組織像では線維芽細胞と膠原繊維が主体でありデスモイド腫瘍と診断された.デスモイド腫瘍が直腸近傍に発生し粘膜下腫瘍の形態を呈した症例はわれわれが検索したかぎりではなかった.
  • 宮田 一志, 弥政 晋輔, 藤本 克博, 三宅 秀夫, 葛谷 明彦, 松田 眞佐男
    2004 年 65 巻 9 号 p. 2506-2509
    発行日: 2004/09/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は73歳女性. 8年前より右手掌のしこりに気づくが放置していた.徐々に増大してきたため当院外科を受診.超音波検査,血管造影にて右第1指固有指動脈の起始部の動脈瘤と診断した.治療は外科的切除を選択し,局所麻酔下に結紮切除術を施行した.病理組織学検索では真性動脈瘤と診断された.手掌の動脈瘤は稀な疾患でありその発生原因として慢性刺激並びに鈍的外傷が最も多いが今回われわれが経験したものは特にそのような既往がない特発性であった.治療は外科的切除が第一選択と考えられ,側副血行に特に問題がない限り結紮切除のみで十分と考えられる.
  • 中村 浩志, 井上 芳徳, 広川 雅之, 菅野 範英, 岩井 武尚, 柳下 和慶
    2004 年 65 巻 9 号 p. 2510-2514
    発行日: 2004/09/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    尖足の病因としては外傷性・習慣性・神経性などがあげられている.最近,外傷や神経麻痺を認めない後天性尖足を経験した. 14歳より時折左下腿痛が出現し,徐々に労作時の痛みが進行して尖足となった.下肢動脈撮影により著名な血管攣縮を認めたため,腰部交感神経遮断術を行った後にアキレス腱延長術を施行した.術後動脈撮影では血管攣縮が消失しており,下腿痛,感覚異常,麻痺などを残さず良好に経過した.尖足は後天性の病因不明症例も報告されており,整形外科手術のみでは満足する結果が得られない症例が約15%あると報告されている.血管攣縮による尖足はいまだ報告例はないが,本症例では他に明らかな病因が認められず,後天性で疼痛を伴い明らかな誘因のない尖足の中に血管攣縮が一因となる症例が潜在化していると判断した.確実な交感神経遮断術と整形外科的治療を組み合わせることが血管攣縮が関与している尖足に対しては有効と考えられた.
  • 2004 年 65 巻 9 号 p. 2532-2542
    発行日: 2004/09/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
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