日本臨床外科学会雑誌
Online ISSN : 1882-5133
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66 巻, 12 号
選択された号の論文の45件中1~45を表示しています
  • 尾崎 岳, 里井 壮平, 末平 智子, 由井 倫太郎, 井上 健太郎, 岩本 慈能, 山田 斉, 高井 惣一郎, 浅井 晃, 山道 啓吾, ...
    2005 年 66 巻 12 号 p. 2893-2898
    発行日: 2005/12/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    ‹目的›術後離開創に対する創傷被覆材の有用性を検討すること.‹方法›術後離開創に対し,生理食塩水による洗浄後,ハイドロファイバーを用いて被覆した群(アクアセル群) 11例とガーゼを用いて被覆したコントロール群(ガーゼ群) 17例とに無作為に振り分け,創部が上皮化した時点を治癒と判断しそれぞれの治癒期間を評価した.‹結果›両群間で背景因子,創の最大径や治癒日数に差はなかった.創1cmあたりの治癒日数を比較すると,アクアセル群ではガーゼ群と比較して有意に短縮していた.創培養陽性症例を抽出し両群間を比較したとき,背景因子,創の最大径,創1cmあたりの治癒日数に差は認めなかった.‹結論›臓器・腹腔内感染を伴わない術後離開創に対して,ハイドロファイバーを使用することにより創傷治癒日数が短縮する可能性が示唆された.
  • 大西 新介, 高橋 將人, 田口 和典, 高橋 弘昌, 伊藤 智雄, 藤堂 省
    2005 年 66 巻 12 号 p. 2899-2903
    発行日: 2005/12/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    1997年から2004年7月までに当科で手術を施行した乳腺アポクリン癌5例の免疫組織学的特徴を検討した. ER, PgR, HER2, GCDFP-15, CEA, p53の陽性率は順に0%, 20%, 0%, 100%, 60%, 80%であった.通常型乳癌と比較すると, ER, PgR, HER2は陽性率が低く, p53陽性率が高かった.通常型乳癌に比しER, PgR, HER2の陽性率が低く,術後療法の選択においてもこのことを十分考慮する必要がある.
  • 上島 康生, 栗岡 英明, 門谷 弥生, 池田 純, 山下 哲郎, 小出 一真, 小野 滋, 谷口 史洋, 塩飽 保博, 李 哲柱, 濱島 ...
    2005 年 66 巻 12 号 p. 2904-2908
    発行日: 2005/12/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    目的)膿胸に対する有茎性大網法につき,有用性,限界を検討する.方法)閉鎖困難な有瘻性症例,大きな腔を有するが十分な筋肉弁を作成困難な症例,菌陰性化しない症例,胸郭成形術を避けたい症例を有茎性大網法の適応とし,有茎性大網法を行った膿胸10例につき,背景因子,術式,術式選択理由,治療成績,腹部合併症を検討した.結果)全例一度治癒退院したが,醸膿胸膜が遺残した2例が,晩期再発した.有瘻性症例,菌陰性化しない症例,腔遺残した症例,一期的手術も成功率が高かった.腹部合併症は軽度であった.結論)瘻孔閉鎖が成功しやすい,非耐性菌であれば菌陰性化を要さない,腔遺残しても治癒率が高いなどの利点から膿胸治療上有茎大網法は成功率が高く有用である.一方,膿胸壁残存症例で晩期再発を認めた.限界を理解した上で適応,治療手順を考え,有茎性大網法を施行することが重要である.
  • 清地 秀典, 梶原 伸介, 岩川 和秀, 岡田 憲三, 飯森 俊介, 杉下 博基, 井上 仁, 加洲 保明, 松本 康志, 坂尾 寿彦
    2005 年 66 巻 12 号 p. 2909-2914
    発行日: 2005/12/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    当科にて早期胃癌症例に対して行われた63例の腹腔鏡補助下幽門側胃切除術(LADG)を分析し検討した.またretrospectiveな比較として, LADG症例および同時期の開腹幽門側胃切除症例から, D1+αの郭清, B-I法再建がなされた各々49例と48例を検討した. LADG症例の手術時間はBMI値の上昇に伴い長くなった(p<0.01).縫合不全のあった症例のBMI値は有意に高かった(p<0.05).開腹症例との比較ではLADG症例は手術時間が長かった(p<0.01)が,イレウスの発生率は低かった(p<0.01).さらに周術期合併症がなくBMI値がnormal rangeの各々25例と20例に絞り込んで比較すると初回排ガスまでの期間,術後在院日数がLADG症例で短かった(p<0.05, p<0.05).当科でのLADGは特に肥満患者において手技的な課題があるものの術後イレウスが少なく,完成度を高めてゆけば周術期QOLの改善に有用な方法になりうることが示唆された.
  • 後藤 順一, 北 健吾, 藤好 真人, 廣方 玄太郎, 今井 浩二, 河合 朋昭, 柳田 尚之, 赤羽 弘充, 中野 詩朗, 高橋 昌宏
    2005 年 66 巻 12 号 p. 2915-2920
    発行日: 2005/12/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    1995年から2004年まで過去10年間の大腸癌切除例1,091例のうち,印環細胞癌症例7例 (0.64%) を臨床病理学的に検討した.同時期の高,中分化腺癌症例(以下分化型腺癌)941例についても検討した.印環細胞癌の男女比は1:1.33,平均年齢は72.6歳.腫瘍占拠部位,肉眼型,大きさなどに傾向性はなかった.印環細胞癌は全例ss以深であり,リンパ管侵襲も全例にみられた.リンパ節転移は5例 (71.4%) にみられ,多い傾向だったが有意差はなかった.腹膜播種は2例 (28.6%) にみられ有意差を持って分化型腺癌より多かったが,肝転移はみられなかった.印環細胞癌の3年, 5年生存率は21.4%, 0%であり印環細胞癌の予後は分化型腺癌に比べ有意差を持って不良であった.大腸印環細胞癌は組織浸潤傾向が強く,極めて予後不良であるが可能な限り治癒切除を目指すことが肝要であると考えられる.また,今後抗癌剤治療について検討が必要であると考えられた.
  • 荒居 琢磨, 松下 明正, 久保 周, 熊木 俊成, 春日 好雄, 上原 剛
    2005 年 66 巻 12 号 p. 2921-2925
    発行日: 2005/12/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    甲状腺びまん性硬化型乳頭癌は,乳頭癌の特殊型に分類される本邦では極めて稀な疾患である.今回,われわれは26歳,男性に発生した甲状腺びまん性硬化型乳頭癌の1例を経験したので報告する.症例は,前頸部腫瘤を主訴に2005年5月初旬に紹介受診となった.初診時甲状腺は両葉ともびまん性に腫大していた.超音波検査所見上,甲状腺両葉に微細な石灰化を認めたが,明らかな腫瘤形成は認められなかった.穿刺吸引細胞診検査でclass V,甲状腺乳頭癌の診断であったため,びまん性硬化型乳頭癌が強く疑われた.外科治療は,甲状腺全摘術および両側頸部リンパ節郭清術が施行された.病理組織学的検査では多数の砂粒腫小体を認め,甲状腺びまん性硬化型乳頭癌と診断された.また,両側頸部リンパ節に多数の転移を認めた.本症例は,病変が明らかな腫瘤として認知されないため,慢性甲状腺炎との鑑別が若年者の場合特に重要と考えられた.
  • 川邉 正和, 佐々木 正人, 打波 大, 井隼 彰夫, 田中 國義
    2005 年 66 巻 12 号 p. 2926-2929
    発行日: 2005/12/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    縦隔腫瘍の中で稀な疾患である縦隔海綿状リンパ管腫の1例を経験した.症例は26歳,女性. 1998年,健康診断の胸部X線で胸部異常影を指摘され,後縦隔腫瘍と診断され,外来経過観察されていた. 2004年6月頃より胸部違和感が出現し,胸部CTにて辺縁に石灰化巣を伴う径50×40mmの境界明瞭で分葉状の腫瘤を認めた.胸部MRIでは, T1強調画像で低信号, T2強調画像で高信号で内部に低信号の隔壁様構造を認め,造影効果は認めなかった.リンパ管腫を疑い,側方切開にて腫瘍摘出術を施行した.病理組織学検査にて海綿状リンパ管腫と診断された.本邦において自験例が10例目で,術前に診断が付いたものは稀である.治療法は外科的切除が一般的で,部分切除例にて再発の報告があり,全摘除が望ましいと考えられる.
  • 田中 寿明, 末吉 晋, 笹原 弘子, 田中 優一, 白水 和雄, 藤田 博正
    2005 年 66 巻 12 号 p. 2930-2933
    発行日: 2005/12/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は75歳の女性.嚥下障害,繰り返す肺炎・腸閉塞症状を主訴に入院となった. 7年前より食道裂孔ヘルニア,逆流性食道炎の診断にて他医にて加療を受けていた.今回,精査により食道裂孔ヘルニアに伴って胸腔内に脱出した胃および横行結腸による食道圧排を原因とする嚥下障害と誤嚥性肺炎ならびに脱出した横行結腸の閉塞と診断され入院した.手術は腹腔鏡下に行った.まずヘルニア嚢を可及的口側まで切除し,胃および横行結腸を腹腔内に還納した.食道裂孔を縫縮した後, Nissen法による噴門形成術を施行した.その際,胃底部はスリップ防止のため横隔膜および脚に縫合固定した.術後経過は良好で,食事も十分に摂取でき,胃・横行結腸が腹腔内に位置することを確認し術後12日目に退院した.胃・横行結腸の胸腔内脱出を伴った巨大食道裂孔ヘルニアに対し,腹腔鏡下食道裂孔縫縮術,噴門形成術を施行し,良好な経過をとった1例を経験したので報告する.
  • 後藤 了一, 長佐古 良英, 高橋 雅俊
    2005 年 66 巻 12 号 p. 2934-2937
    発行日: 2005/12/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は65歳,男性.既往歴に脳梗塞があり,療養型病院に入院中であった.繰り返す誤嚥性肺炎のため当院紹介となり,平成16年6月11日内視鏡的胃瘻造設術 (PEG) を施行した.術後,自己抜去,出血,バンパーの逸脱が生じ,その都度PEGを再施行した. 11月19日カテーテル交換時に横行結腸への瘻孔が明らかとなり, 11月30日手術施行,皮膚横行結腸瘻,横行結腸胃瘻の形成を確認し閉鎖し,同時に開腹下に胃瘻を造設した.術後経過は良好であり,第16病日に転院となった.胃結腸瘻はPEGの稀な合併症であるが, PEGの再施行を繰り返す症例はリスクが高いと考えられ,十分な術前検査を施行する必要がある.
  • 清水 広久, 鈴木 敬二, 田村 和彦, 片柳 創, 高木 融, 青木 達哉
    2005 年 66 巻 12 号 p. 2938-2942
    発行日: 2005/12/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    胃軸捻転症の成人発症例は稀である.今回,われわれは成人の横隔膜弛緩症が誘因となった胃軸捻転症を合併した胃癌に対し,外科的治療を行った1例を経験したので報告する.症例は69歳,男性,健診にて施行した上部消化管造影にて異常陰影を指摘され,当院を受診した.胃内視鏡検査にて胃癌と診断され当院入院となった.胸部単純X線写真,上部消化管造影にて横隔膜弛緩症を伴う胃軸捻転症(間膜軸性)と診断,開腹手術を施行した.手術は幽門側胃切除, D-2郭清, Billroth-I法再建および横隔膜縫縮術(重層形成法)を行った.術後5年を経過したが再発を認めず,経過良好である.
  • 大城 幸雄, 文 由美, 山本 祐二, 相田 久美
    2005 年 66 巻 12 号 p. 2943-2947
    発行日: 2005/12/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は75歳,男性.蓐瘡にて入院したが貧血を認め,精査にて胃に巨大な隆起性病変を認めた.生検では悪性細胞を認めなかったため確定診断には至らなかったが,悪性腫瘍を疑い噴門側胃切除術を施行した.外科的切除後に,切除標本の病理組織学的検査および免疫組織化学検査で胃原発の悪性線維性組織球腫 (malignant fibrous his-tiocytoma:以下MFH) と診断された.術後3カ月に再発,転移をきたし,化学療法 (TS-1100mg/day) を施行したが,効果なくまもなく死亡した. MFHの胃原発例は本症例を含めて12例にすぎず,極めて稀な疾患であり予後不良とされている.報告された11例を含めた文献的考察を加え報告する.
  • 野尻 卓也, 柏木 秀幸, 遠山 洋一, 柳澤 暁, 矢永 勝彦
    2005 年 66 巻 12 号 p. 2948-2952
    発行日: 2005/12/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は52歳,男性. 2001年9月に直径4cm大の胃粘膜下腫瘍に対し,腹腔鏡下胃部分切除術を施行し, gastrointestinal stromal tumor (以下GIST) と診断した. 2003年10月の腹部CT検査で胃局所再発と単発肝転移を認め,イニチニブの投与を開始した.奏効度はCRであったが,全身浮腫,肝障害の副作用のため同治療の継続が困難となり,再手術を施行した.術後の病理組織学的検討の結果ではviable cellは認めなかった.現在再手術後1年6カ月を経過するが,イマチニブ非投与下でも再発は認めていない.イマチニブは70~80%程度の高い奏効率を示すが,早期耐性の報告や,休薬後の腫瘍増大の報告があり,長期効果も明らかではない.本症例のごとく再発例にイマチニブ投与を行い,早期に再切除した報告は非常に少なく, GIST再発例に対する外科治療の有用性を示唆する症例であると考えられた.
  • 小向 慎太郎, 廣田 正樹, 黒崎 亮
    2005 年 66 巻 12 号 p. 2953-2956
    発行日: 2005/12/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    今回われわれは同時性多発肝転移をきたした早期胃原発性絨毛癌の1例を経験したので報告する.症例は83歳,女性.出血性胃腫瘍の診断にて緊急手術を施行した.術中所見にて胃癌と転移性多発肝転移の診断にて幽門側胃切除術を施行した.病理組織診断では出血性腫瘍は深達度sm2の絨毛癌であった.絨毛癌は深達度mの高分化型腺癌に囲まれていた.またやや離れて肛門側に深達度sm1の高分化型腺癌も認め多発胃癌であった.一方肝腫瘍は絨毛癌の転移であった.術後は経口摂取可能にて退院したが次第に全身状態が悪化したため再入院し術後49日目に永眠された.胃原発性絨毛癌の早期癌の報告はほとんどない.胃原発性絨毛癌は早期癌のうちから多臓器転移をきたすことが判明した稀な1例であった.
  • 山寺 仁, 若菜 洋一, 森下 浩靖
    2005 年 66 巻 12 号 p. 2957-2961
    発行日: 2005/12/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    患者は76歳,男性. 1カ月前から食思不振と胸やけがあり,近医で治療を受けていたが改善せず,体重減少をきたしたため受診した.上部消化管内視鏡で,胃体部大彎を基部とした有茎性腫瘍が十二指腸に嵌頓しており, ball valve syndrome (以下本症)と診断した.血液生化学的に肝障害と胆管炎を併発しており,腹部CTで膵管および胆管の拡張を認めた.内視鏡的に嵌頓を解除できず,緊急開腹術を行った.全身麻酔下に胃切開を行い,十二指腸へ嵌頓した胃腫瘍を胃内に環納し切除した.術後経過は良好で,肝障害はすみやかに改善し,術後8日目に軽快退院した.病理組織学的にはI型早期胃癌であった.検索したかぎり本症による膵胆管拡張を画像上とらえられた報告はなく,稀な症例と考えられた.
  • 西田 尚弘, 柴田 邦隆, 福崎 孝幸, 富永 修盛, 立石 秀郎, 小林 哲郎
    2005 年 66 巻 12 号 p. 2962-2966
    発行日: 2005/12/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は65歳,男性, 3カ月間続く全身倦怠感と体重減少を主訴に来院,診察で臍右側に鶏卵大腫瘤を触知した.血液検査では胆道系酵素の上昇があり,腹部造影CT検査で下部胆管から十二指腸内腔にかけて連続する腫瘤像を認めた.十二指腸内の腫瘤の生検から高度異型性を示す腺腫が検出されたため,下部胆管癌,十二指腸乳頭部癌を強く疑い,根治目的の膵頭十二指腸切除術を施行した.摘出標本では,十二指腸乳頭から胆管内に進展する腫瘤と十二指腸内に乳頭状に隆起する腫瘤が連続する,特異な発育形態を示す十二指腸乳頭部癌が確認された.また病理組織学的に腫瘍は高度異型を伴った腺腫成分を背景に部分的に高分化型腺癌の像がみられ,腺腫発生の癌である可能性が考えられた.
    十二指腸内腔と胆管内の両方向に乳頭状発育を示した稀な形態の十二指腸乳頭部癌の1例を経験したので,文献的考察を加え報告する.
  • 住吉 辰朗, 三好 信和, 前田 佳之, 布袋 裕士, 田原 浩, 茶谷 成
    2005 年 66 巻 12 号 p. 2967-2970
    発行日: 2005/12/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は57歳,女性.腹痛,嘔吐を主訴に当院来院しCT検査にてイレウスと診断された.開腹歴はなかったが, CTにて糞便様の腫瘤を認め,身体所見にて歯牙の欠損を認めたためイレウスの原因として食餌性も考えられた.よって詳しく問診を行ったが,誘因となるような食餌の摂取歴はなかった.入院にて保存的治療を開始したが,翌日腹部症状の増悪,アシドーシスの進行を認めたため緊急開腹術施行し,蓮根による食餌性イレウスと診断された.蓮根によるイレウスは,本症例が初の報告であり,非常に稀であると考えられた.腸管に器質的変化がなく現在までに食餌性イレウスの誘因として報告された食餌でなくても,歯牙欠損,咀嚼不十分,消化不良の食餌摂取といった条件がそろえば食餌性イレウスは発症しうると考えられた.術前画像診断で食餌性イレウスが疑われた場合は,このことを念頭においた歯牙の観察,詳細な食餌内容や食餌習慣の問診が重要と考えられた.
  • 石丸 哲也, 金森 豊, 杉山 正彦, 朝長 哲弥, 橋都 浩平
    2005 年 66 巻 12 号 p. 2971-2975
    発行日: 2005/12/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は1歳8カ月の女児.突然の咳漱と啼泣のため近医を受診し,腹部単純撮影にて8個の磁気治療器(商品名:ピップェレキバン®)を認め,誤飲の診断で入院した.全身状態良好のため退院し,誤飲後11日に当科を初診した.当科外来通院中に磁気治療器の移動がなく手術を予定したが,症状がなかったため家族の理解が得られず,以後外来通院も途絶えた.誤飲4カ月後に腸閉塞を発症し,依然排泄されない磁気治療器が原因と考えて緊急手術を施行した.磁気治療器により形成された小腸小腸瘻と腸間膜の間隙に小腸ループが嵌入して絞扼されていた.瘻管切除異物摘出・腸閉塞解除術を施行し,術後経過は良好であった.複数個の磁気治療器誤飲では,数日で腸閉塞や穿孔,内瘻形成などの合併症を生じることがある.経過観察中に磁気治療器の腸管内移動が止まった場合は自然排泄に固執せず,無症状であっても2, 3日以内に摘出術を行うべきである.
  • 山本 竜義, 浅野 昌彦, 水野 鉄也, 成田 裕司, 松下 昌裕, 池澤 輝男
    2005 年 66 巻 12 号 p. 2976-2979
    発行日: 2005/12/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は80歳,女性で, 40年前に子宮内避妊具 (IUD: intrauterine device) を留置されていた.下腹部痛および嘔吐を主訴に入院し,イレウスの診断にて,保存的治療が開始された.第2病日の腹部CT検査にて,絞掘性イレウスと診断し緊急手術を施行した.開腹したところ,子宮底部から穿孔したIUD (太田リング)が一部腹腔内へ脱出していた.索状物が子宮底部のIUDとS状結腸壁の間に形成され,回腸を絞扼していた.壊死部をふくむ約60cmの回腸を切除し,吻合した.術後19日目に軽快退院した.
    IUDが絞掘性イレウスの原因となった本邦報告1例目と思われる稀な症例を経験したので文献的考察を加え報告する.
  • 坂本 渉, 安藤 善郎, 佐藤 尚紀, 竹之下 誠一
    2005 年 66 巻 12 号 p. 2980-2983
    発行日: 2005/12/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    胃全摘術後,胃切除後の輸入脚の絞扼性イレウスは非常に稀であり,本邦ではわれわれの検索しうる限りいまだ報告がみられていない.今回われわれは,胃全摘術後3年で発症した輸入脚絞扼性イレウスを経験したので報告する.症例は78歳,女性. 2002年に胃体上部胃癌のため胃全摘, Roux-en Y再建術を施行されている. 2005年1月,腹痛にて発症し,当院救急外来受診.画像検査上,イレウス所見あるものの,排便も順調であり,入院にて経過観察とした.翌日筋性防御出現,採血検査で炎症反応, CKの上昇みられ, CT検査上,輸入脚のみの拡張と腹水貯留の所見があり,同日緊急手術を施行した. Treitz靱帯から空腸・空腸吻合部まで腸間膜が約270度回転しており,壊死に陥っていた.壊死腸管を切除し, Treitzから約5cmの空腸で,再度空腸・空腸吻合を行った. Roux-en Y再建後の腹痛の場合,本症例のような病態の存在も考慮すべきである.
  • 大日方 一夫, 佐藤 洋樹, 篠川 主, 吉田 奎介, 篠川 真由美, 岩渕 三哉
    2005 年 66 巻 12 号 p. 2984-2987
    発行日: 2005/12/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は50歳の男性.腹痛,嘔吐を主訴に来院し,イレウスの診断で入院となった.イレウスチューブを挿入して保存的に経過観察したが,改善傾向がみられないため開腹手術を施行した. Treitz靱帯から約300cm, Bauhin弁まで約250cmの部位に異所性膵があり,その先端部分が終末回腸の腸間膜に癒着したために起こった空腸の絞扼性イレウスであった.異所性膵と絞扼による狭窄部分を含めた約10cmの回腸を切除,吻合した.病理組織所見では異所膵は膵管,膵腺房細胞,ランゲルハンス島を含んでおり,急性・慢性膵炎の所見はなかった.また,異所膵先端と腸間膜との癒着部分も非特異的な所見のみであった.症状を呈した回腸異所膵の報告例は小児,成人とも腸重積を引き起こしたものがほとんどであり,検索し得る限りでは,先端部分の癒着が絞扼性イレウスの原因になったという報告は本症例が初めてである.
  • 佐々木 剛志, 道家 充, 中村 文隆, 宮崎 恭介, 樫村 暢一, 松波 己
    2005 年 66 巻 12 号 p. 2988-2991
    発行日: 2005/12/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は52歳,男性.イレウスの原因精査のため入院した.イレウス管からのチューブ造影により, Treitz靱帯から約45cmの部分に全周性の狭窄を認め,確定診断を得ないまま腹腔鏡下手術を施行し術中所見から小腸腫瘍と診断された.原発性小腸癌は比較的稀な疾患であり,小腸の解剖学的特性により術前の内視鏡による観察や,病理組織診などの確定診断が不可能な場合が多い.このような症例において腹腔鏡が診断,治療においてきわめて重要な役割を果たすことが最近報告されるようになっており,若干の考察を加えて報告する.
  • 大倉 康生, 佐々木 英人, 上原 伸一, 谷川 寛自, 下村 誠
    2005 年 66 巻 12 号 p. 2992-2996
    発行日: 2005/12/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は74歳,男性.平成11年に当院泌尿器科にて骨転移を伴う右腎細胞癌 (clear cell type, G2, v(-), ly(-), pTlb N0 M1 stage IV) にて術前放射線療法および右腎摘出術が施行され,術後外来にてインターフェロン療法が施行されていた.平成14年4月,下血を認め入院,諸検査にて出血部位を同定できなかったため,経過観察としていた.しかし,その後も下血が続き,そのつど輸血が行われていた.その後に施行した出血シンチグラフィー,小腸透視にて腎癌の小腸転移の疑いで,平成16年1月22日手術を施行した.開腹すると8カ所に径0.5~2cm大の硬結を認め, 3カ所で小腸の部分切除を施行した.摘出標本は内部に潰瘍を認める隆起性病変で,組織学的には腎癌小腸転移と診断された.術後21日目退院,術後1年4カ月の現在骨転移の増悪を認めるも下血はなく,生存中である.
  • 矢内 勢司, 肥田 侯矢, 清水 謙司, 山本 秀和, 小西 靖彦, 武田 惇
    2005 年 66 巻 12 号 p. 2997-3000
    発行日: 2005/12/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は32歳,男性.呼吸困難,胸部痛,右腹部痛を主訴に,当科受診した.右腹部に自発痛,圧痛および腹膜刺激症状を認め、腹部CTでは右腎周囲にair像,液体貯留を認めたため,右腎周囲膿瘍の診断で即日緊急手術を施行した.開腹すると,虫垂穿孔がみられ,回盲部および右腎周囲に膿瘍形成を認めたため,穿孔性虫垂炎による右腎周囲膿瘍と判断し,虫垂切除術,腹腔内・右後腹膜腔洗浄ドレナージ術を施行した.しかし,術後も解熱傾向なかったため,第4病日に腹部CTを施行したところ,右腹壁の筋肉間に不連続に2カ所の膿瘍を認めた.右側腹部からアプローチし,腹壁を筋肉含めて大きくT字型に切開して洗浄ドレナージしたことで,解熱,状態改善し,救命しえた.腹腔内膿瘍から不連続性に腹壁膿瘍をきたした例は極めて稀なため,報告する.
  • 狩野 孝, 高橋 剛, 打越 史洋, 長谷川 順一, 西田 俊朗, 松田 暉
    2005 年 66 巻 12 号 p. 3001-3005
    発行日: 2005/12/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は67歳,女性.卵巣癌術後の化学療法施行中,高CEA血症ならびに便潜血陽性を指摘され,精査目的での注腸検査を施行した.直後の排便後より頸背部痛を訴え,単純レントゲン検査にて頸部皮下気腫および気縦隔・気後腹膜を認めたため当科紹介となった.医原性大腸穿孔と診断し緊急手術を施行した.開腹したところ,横行結腸中央部付近で腸間膜の対側が小腸腸間膜と癒着しており,同部で腸間膜内に穿孔,バリウムの漏出を認めた.さらに腸間膜より,後腹膜腔さらに縦隔につながるairの噴出があったと考えられた.結腸部分切除のうえ,双孔式人工肛門造設術を施行した.術後経過は良好で,人工肛門閉鎖後40日目に退院となった.注腸検査に合併した後腹膜腔気腫は稀であり,報告例は検索し得る限りでは12例のみであった.われわれは,術後の癒着のため,本来遊離腸管である横行結腸より後腹膜腔に気腫を生じた極めて稀な症例を経験したため,これを報告する.
  • 三井 一浩, 並木 健二, 松本 宏, 今野 文博, 武山 大輔, 野津田 泰嗣
    2005 年 66 巻 12 号 p. 3006-3010
    発行日: 2005/12/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は, 33歳の女性で左下腹部痛を主訴に紹介され,イレウスの診断にて入院となった.開腹手術および腹部外傷の既往はなかった.腹部CTでは, S状結腸間膜背側に嵌頓した小腸塊を認めた.イレウス管留置による保存的治療にてイレウスの改善なく,小腸造影にて左下腹部に閉塞部位が確認された.入院10日目,内ヘルニアの診断にて腹腔鏡下手術を施行した. S状結腸間膜左葉に小欠損を認め,そこに小腸が約15cm嵌頓していた.腹腔鏡下に嵌頓小腸を整復し, S状結腸間膜内ヘルニアであることを確認し,間膜を縫合閉鎖した.腸管切除は不要であった.術後経過は良好で6病日に退院となった.
    S状結腸間膜内ヘルニアは,極めて稀な疾患で,本邦報告例では38例目である. S状結腸間膜に起因するヘルニアの検討とともにS状結腸間膜内ヘルニアのCT診断の有用性について報告する.
  • 市之川 正臣, 中村 豊, 前山 義博, 真名瀬 博人, 平 康二, 菱山 豊平
    2005 年 66 巻 12 号 p. 3011-3014
    発行日: 2005/12/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は57歳女性.平成13年7月,直腸癌Rbの診断で腹会陰式直腸切断術D3 (両側側方郭清,両側神経温存)を施行した.病理診断はカルチノイド35×20mm大,中心陥凹 (+), mp, ly1, v1, n0であった.術後経過観察中,平成15年末頃より坐骨部の違和感を自覚するようになり,平成16年1月に施行したCTにて右骨盤底に25mm大の腫瘤影を認めた.当初局所再発と考え, CPT-11+1-LV+5-FUによる全身化学療法を開始した. 2クール終了時で腫瘍長径70%の縮小 (PR) およびCEAの低下を認めたが, 3クール終了時でも他に転移病変を認めなかったことから局所切除の治療方針を検討し,平成16年7月に経仙骨的腫瘍摘出術を施行した.病理診断はカルチノイド,側方リンパ節転移再発であった.術後8カ月の現在, CEAは正常化し再発を認めていないが,今後もCEAの推移をみつつ慎重に経過観察中である.
  • 川瀬 寛, 川村 健, 中久保 善敬, 奥芝 知郎, 直江 和彦, 近藤 哲
    2005 年 66 巻 12 号 p. 3015-3018
    発行日: 2005/12/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    子宮内膜癌の消化管転移は比較的稀であり,なかでも大腸転移の本邦報告例は極めて少ない.今回われわれは,子宮内膜癌術後に直腸転移をきたした1例を経験したので報告する.症例は77歳,女性,平成12年4月に子宮内膜癌の診断で子宮全摘両付属器切除術を施行した.外来フォロー中, 2年7カ月後に近医で右胸部異常陰影,便潜血陽性を指摘され当院を紹介された.精査の結果,原発性直腸癌と診断し,胸部異常陰影は直腸癌の肺転移を疑ったが確診には至らず, 3カ月経過観察した後に直腸切断術を施行した.術後病理所見にて直腸の病変は主座が粘膜下層から固有筋層に存在し,組織像が平成12年時の子宮内膜癌の所見に酷似しており,子宮内膜癌の直腸転移と診断した.術後外来にてMPA (酢酸メドロキシプロゲステロン)内服で経過観察中であったが,直腸術後11カ月で他病死した.
  • 久米 修一, 田上 弘文, 犬塚 貴雄, 宮村 俊一
    2005 年 66 巻 12 号 p. 3019-3023
    発行日: 2005/12/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    患者は53歳の男性.発熱,上腹部痛,背部痛,体重減少のため,当院を受診し,肝膿瘍の診断で入院した.穿刺ドレナージした膿瘍液の一般細菌培養は陰性だったが,赤痢アメーバ抗体が高値だったため,メトロニダゾールによる治療を開始した.経過中,気管支瘻を認めたが,徐々に解熱し,膿瘍も縮小して,軽快退院した.気管支瘻を合併したアメーバ性肝膿瘍について,文献的考察を加え報告する.
  • 牧本 伸一郎, 冨田 雅史, 坂本 一喜, 新保 雅也, 林部 章, 仲本 剛
    2005 年 66 巻 12 号 p. 3024-3028
    発行日: 2005/12/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は35歳,女性.腹部膨満および腹痛にて紹介来院となった.腹部超音波, CT, MRI検査にて肝内から肝外に著明に発育した最大径21cmの巨大な多房性の嚢胞性腫瘍が認められた.肝動脈造影にて一部に濃染像を認め,腫瘍マーカーではCA19-9が247U/mlと高値を示していた.肝嚢胞腺腫あるいは腺癌の診断にて手術を施行した.嚢胞は肝内の中央2区域から肝外に著明に発育しており嚢胞全体を含む肝部分切除術を施行した.摘出標本では多房性嚢胞で明らかな充実性部分は認めなかった.組織学的には嚢胞壁は一層の粘液産生を示す円柱上皮で被覆され,上皮下の間質には卵巣間質類似の紡錘形細胞を認めた.悪性所見はなく,卵巣様間質を伴った肝嚢胞腺腫と診断した.術後CA19-9は正常化した.肝嚢胞腺腫は比較的稀な疾患で術前に肝嚢胞腺癌と鑑別するのは困難とされ,また悪性化の可能性もあり完全な嚢胞切除が必要である.
  • 森本 芳和, 藤井 眞, 三方 彰喜, 西川 和宏, 齊藤 哲也, 田中 康博
    2005 年 66 巻 12 号 p. 3029-3033
    発行日: 2005/12/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    閉塞性黄疸を伴った肝細胞癌は,進行症例が多く予後不良である.今回われわれは,本疾患に対し拡大肝切除を施行し,長期生存が得られた症例を経験したので報告する.症例は57歳,男性.肝機能異常ならびに黄疸のため,当センター入院となる. CT検査にて,肝門部に径4cm大の腫瘤像と,肝左葉の萎縮および肝内胆管拡張を認めた.右肝管枝 (B6) より経皮的経肝管ドレナージ術を施行した結果,胆道造影にて総胆管および左肝管は描出されず,尾状葉枝は右肝管に流入していた.肝動脈造影検査では腫瘍濃染像を認め,門脈造影では門脈左枝の本幹が完全閉塞していた.閉塞性黄疸を伴った肝細胞癌あるいは肝門部胆管癌を疑い,尾状葉切除を含む拡大肝左葉切除,肝外胆管切除ならびに肝十二指腸間膜リンパ節郭清を施行した.切除標本では肝S4に存在する4×4×2cmの肝細胞癌であり,腫瘍は肝外胆管内ヘポリープ状に発育し,グリソン鞘を外部より圧排していた.現在,術後5年が経過し,再発兆候は認めていない.
  • 牧野 成人, 海部 勉, 大竹 雅広, 須田 武保, 本間 英之, 畠山 勝義
    2005 年 66 巻 12 号 p. 3034-3038
    発行日: 2005/12/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は50歳,男性. 30歳代より無症候性胆石を指摘されていた.食後に上腹部痛を自覚,近医で黄疸および肝機能障害を指摘され当科紹介受診.腹部単純X線検査,腹部CT検査で胆道造影様の陰影を認め総胆管内に流出した石灰乳胆汁と診断した. ERC検査で総胆管結石は指摘できなかったが入院後も黄疸は進行した.胆石を合併した胆嚢内および総胆管内石灰乳胆汁による閉塞性黄疸の診断で,開腹による胆嚢摘出術および総胆管切開術を施行した.総胆管内および十二指腸内のファーター乳頭部周囲に白色微細顆粒状の胆泥を認めるも結石は認めなかった.切除標本では胆嚢底部に白色JSD顆粒塊の付着を認め,ほぼ同様の性状と思われるもろい結石を胆嚢内に認めた.術後経過は良好であったが,黄疸は約1カ月遷延した.総胆管結石を伴わずに総胆管内に流出した石灰乳胆汁が原因となり閉塞性黄疸をきたした稀な症状と考えられた.
  • 森本 修邦, 石井 孝明, 篠崎 幸司, 川崎 靖仁, 大鶴 実, 安田 青兒
    2005 年 66 巻 12 号 p. 3039-3043
    発行日: 2005/12/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は37歳,男性.心窩部痛,嘔吐を主訴に当院受診.血液検査にてAmy 558IU/l, T-Bil 1.6mg/dlと上昇を認めたため,閉塞性黄疸,急性膵炎の診断にて入院となる. MRCPでは膵頭部を左側に認め,膵管,総胆管,胆嚢管が左から右へと通常とは逆に走行しているように思われた.胆嚢は屈曲しており底部に小結石を認めたが,総胆管内に異常は認めなかった.以上より腸管回転異常症を伴う胆嚢結石症と診断され,第19病日に開腹胆嚢摘出術を施行した.肝右葉の足側に異所性肝臓を認め,その背側に胆嚢が付着していた.胆嚢管を2本認めたため,胆道造影を施行したどころ,胆嚢管はそれぞれ独立して総胆管に合流していた.摘出した胆嚢は外見上,正常であったが,切開したところ,胆嚢内腔には隔壁があり,頸部まで完全に2つに分かれており,それぞれ胆嚢管を有していたため,隔壁型二葉胆嚢に重複胆嚢管を合併したものと考えられた.
  • 宇治 祥隆, 草野 敏臣, 高尾 貴史
    2005 年 66 巻 12 号 p. 3044-3048
    発行日: 2005/12/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は76歳,男性.近医で閉塞性黄疸を指摘され,総胆管結石疑いで当院紹介入院となった.腹部超音波,内視鏡的逆行性膵胆管造影で, 3つの腫瘤性病変が指摘され,胆道ドレナージ後,術前画像診断より乳頭型胆管癌と診断したので,膵頭十二指腸切除術 (PD-II) および第2群リンパ節郭清を施行した.摘出標本所見では中部胆管に1つ,下部胆管に2つの計3つの隆起性病変が存在し,中部胆管腫瘤は中分化型管状腺癌であり,表層拡大進展と壁内進展を呈する稀な発育形式で,深達度はssで,リンパ節転移は第2群 (12b, 13番)まで認めた.下部胆管腫瘤は共に高分化型管状腺癌で表層拡大進展のみの早期癌であった.胆管のみに同時に3っの隆起成分を認める胆管癌は珍しく,乳頭型胆管癌といえどもリンパ節転移を考慮し,十分なリンパ節郭清を必要とする.
  • 本間 直健, 鈴木 康弘, 高橋 基夫, 狭間 一明, 蔵前 太郎, 松村 祥幸
    2005 年 66 巻 12 号 p. 3049-3052
    発行日: 2005/12/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    異所性膵は粘膜下腫瘤の形態をとることが多いが,壁外性に発育することは稀である.今回われわれは壁外性に発育した成人回腸異所性膵の1例を経験したので報告する.症例は59歳,男性.主訴は上腹部痛,嘔吐であった.腹部単純写真にて小腸ガスおよびニポーを認め,イレウスの診断で入院となった.保存的治療で軽快したが,原因検索を目的とした血管造影にて回腸末端枝の偏位を認め,腸捻転あるいは内ヘルニアによるイレウスの可能性が示唆された.試験開腹手術を施行したところ,回腸末端から150cm口側で回腸腸間膜対側に壁外性に突出する約2.5cmの腫瘤を認め,また,腫瘤口側の腸管拡張がみられた.同腫瘤を含む回腸部分切除,端々吻合術を施行した.病理組織所見にて腫瘤は粘膜下層に主座をおき,壁外性に発育した異所性膵 (Heinrich I型)と診断された.術後経過良好で,その後約1年経過し,再発徴候は認められていない.
  • 杉本 誠一郎, 村上 正和, 太田 徹哉, 市原 周治, 内藤 稔, 清水 信義
    2005 年 66 巻 12 号 p. 3053-3057
    発行日: 2005/12/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は65歳,男性.飲酒歴:日本酒2合/日. 5カ月前に近医で膵尾部の仮性嚢胞を指摘された.上腹部痛のため近医を受診し,腹腔内出血と診断され当院に紹介された.腹部CTで肝脾周囲の血性腹水,胃体部大彎・後壁~膵尾部の血腫,慢性膵炎による膵臓の石灰化を認めた.血管造影では仮性動脈瘤や造影剤の血管外漏出を認めなかった.腹腔穿刺で血性腹水を確認し,慢性膵炎に合併した膵仮性嚢胞の破裂による腹腔内出血と診断し緊急開腹術を施行した.開腹時,約900mlの腹腔内出血が存在し,膵尾部~胃体部大彎・後壁~脾臓~横行結腸間膜の間に血腫と嚢胞を認め,癒着のため一塊になっていた.膵尾部の嚢胞壁から出血を認めたため,膵尾部切除・脾摘術を施行した.術後経過は良好で術後36日目に退院した.膵仮性嚢胞内出血の破裂による腹腔内出血は非常に稀であり,本例を含めた本邦報告例17例を検討し報告する.
  • 中嶋 潤, 佐々木 章, 旭 博史, 川村 英伸, 大渕 徹, 若林 剛
    2005 年 66 巻 12 号 p. 3058-3062
    発行日: 2005/12/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    脾動脈瘤破裂の死亡率は高く,未破裂例に対しても積極的な治療が必要と考えられる.今回IVRで治療が困難であった多発性または紡錘型脾動脈瘤に対して腹腔鏡下脾臓摘出術を施行した4例を報告する.平均年齢58歳,女性4例.脾動脈瘤は単発性3例,多発性1例であった. 4例中3例は脾動脈瘤の中枢側で,自動縫合器により脾動静脈を一括切離できた. 1例は脾動脈瘤周囲の炎症所見が強く,膵尾部との癒着が強固のため,脾動脈瘤の中枢側で脾動静脈を切離後,自動縫合器で脾臓膵体尾部切除を行った.脾動脈瘤に対する腹腔鏡下手術は安全に実施でき,開腹移行例,合併症は認めず,良好な成績であった.本術式は, IVR治療による塞栓術が困難で,破裂の危険がある脾動脈瘤に対して考慮してよい術式である.
  • 鹿野 敏雄, 越川 克己, 桐山 幸三, 和田 応樹, 谷口 健次, 末永 裕之
    2005 年 66 巻 12 号 p. 3063-3067
    発行日: 2005/12/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    Billroth I法再建後の早期残胃癌に対して2004年4月残胃全摘Roux-Y再建を施行した.術後18日目,十二指腸断端の縫合不全から腹腔内膿瘍を形成,エコーガイド下穿刺ドレナージ(以下, US下ドレナージと略記)を施行し速やかに軽快,胃切除後45日目に退院した.同年7月下旬に熱発で来院, CT検査で孤立性脾膿瘍と診断した.脾膿瘍に対してUS下ドレナージを施行,速やかに解熱および炎症所見の消退, CT検査でも膿瘍の縮小を認めた. US下ドレナージ後19日目にドレナージチューブを抜去した.脾膿瘍は先行感染の消退後,数カ月してから発症することもあり,患者が一旦回復した後の熱発や腹痛に際しては脾膿瘍を念頭に置いて診療に当たることが重要である.
  • 中野 浩一郎, 山崎 雅彦, 深尾 俊一, 呉原 裕樹, 片岡 誠, 池上 雅博
    2005 年 66 巻 12 号 p. 3068-3071
    発行日: 2005/12/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    われわれは外傷性脾破裂を契機に発見された脾原発血管肉腫の1手術例を経験した.症例は60歳,男性.主訴は下腹部痛,冷汗,めまい.搬入時の血液検査で貧血を認め,腹部CTでは大量の腹水と脾臓の被膜下血腫を認めた.入院2日前に作業中クレーンのフックが左側背部に当たっていたことが判明.入院翌日貧血が著明に進行していたため外傷性脾破裂の診断にて緊急手術を施行した.摘出標本の免疫組織染色でCD31陽性, CD34陽性,第VIII因子関連抗原陽性, ulex europaeus agglitinin (UEA) -1陽性であり,脾原発血管肉腫と診断された.脾原発血管肉腫の腹腔内出血例の予後は非常に悪く,この症例も肝転移, DICをきたし術後3カ月で死亡した.われわれが調べ得たかぎり,外傷性脾破裂を契機に発見された脾原発血管肉腫の報告例はない.
  • 松本 晶, 大平 寛典, 松平 秀樹, 鈴木 英之, 羽生 信義, 岩渕 秀一
    2005 年 66 巻 12 号 p. 3072-3075
    発行日: 2005/12/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    子宮広間膜ヘルニアに対し緊急手術を施行した2症例を経験したので報告する.症例1: 48歳,女性.腹部膨満を主訴に当院の内科を受診し,腸閉塞の診断でイレウス管を挿入したが軽快せず,入院3日目に手術となった.右子宮広間膜の約3cmの欠損部位に嵌入した小腸を還納し,間膜を縫合閉鎖し,手術を終了した.症例2: 51歳,女性. 1カ月前から間歇的な腹痛があり,腸閉塞の診断で当院の内科に入院した.イレウス管の挿入で症状は軽快したが下部小腸に完全狭窄が認められ,入院後約3週間で手術を行った.左子宮広間膜の約2cmの欠損部位に嵌入した小腸を還納し,間膜を縫合閉鎖し,手術を終了した. 2名とも術後経過は良好で特に合併症なく退院となった.本疾患は手術が必要なことが多いため,女性の腸閉塞で鑑別診断の一つとして考えておく必要がある.また,その診断に関してCTが有用であると考えられた.
  • 七部 幸宏, 冨田 雅史, 坂本 一喜, 新保 雅也, 林部 章, 牧本 伸一郎
    2005 年 66 巻 12 号 p. 3076-3079
    発行日: 2005/12/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    32歳,女性.左下腹部痛自覚し当院受診.腹部CTにて約10cm大の腹腔内腫瘤認めた. 5日後腹部症状増悪したため,腫瘤破裂疑いにて緊急開腹術となった.
    腹水多量にみられ,腫瘤は横行結腸を巻き込んでいた.また,一部壊死しており,それに伴う腹腔内穿破を認めた.これに対して,腫瘤を含めて横行結腸切除術施行.組織診断の結果は,腸間膜線維腫症(デスモイド腫瘍)であった.
    われわれは,腸間膜デスモイド腫瘍の腹腔内穿破という極めて稀な症例を経験した.若干の文献的考察を加えて,ここに報告する.
  • 服部 憲史, 越川 克己, 桐山 幸三, 和田 応樹, 谷口 健次, 末永 裕之
    2005 年 66 巻 12 号 p. 3080-3084
    発行日: 2005/12/25
    公開日: 2009/01/07
    ジャーナル フリー
    症例は68歳,男性,左側腹部腫瘤を主訴に当院を受診した.腹部CT, MRIにて異なる2種類の成分からなる後腹膜脂肪肉腫と診断し,開腹手術を施行した.腫瘍は腎周囲の腫瘍と, S状結腸に接する巨大な腫瘍から形成されており,互いの連続性は認められなかった.病理組織検査では分化型脂肪肉腫(硬化型)と多形型脂肪肉腫であった.その後, 2度の再発を認め腫瘍摘出術を施行した.初回手術から2年8カ月経過した現在,新たな再発なく生存中である.本症の治療は外科的切除が原則であり,術後再発を認めた場合には,積極的に再切除が行われるべきであると考えられた.本邦における多中心性に発生した後腹膜脂肪肉腫の報告は自験例を含め5例と稀であり,文献的考察を加え報告する.
  • 中木村 繁, 石津 寛之, 近藤 征文, 川村 秀樹
    2005 年 66 巻 12 号 p. 3085-3089
    発行日: 2005/12/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は37歳,男性. 1986年より当院消化器科でCrohn病のため外来通院中であった.経過中に腸閉塞を繰り返し,また慢性腎不全と甲状腺腫を合併していた. 2002年7月に腸管穿孔による急性腹膜炎の診断で手術を施行した.開腹時,腹腔内に大量の膿汁が貯留していた.腸管などが癒着し一塊となっており臓器の同定が困難で,また明らかな腸管の穿孔部位は認めなかった.腹腔内洗浄し,ドレーンを留置して手術を終了した.術後,肺水腫,肺炎,下痢,肝不全,腎不全のため治療は難渋し,約2カ月後に死亡した.病理解剖で小腸・大腸型のCrohn病とともに回腸粘膜下膿瘍,腹膜炎,両側腎膿瘍,膀胱潰瘍を伴う全身性アミロイドーシスを認めた.
  • 星野 敏彦, 遠藤 正人, 榎本 和夫, 岩崎 好太郎, 落合 武徳
    2005 年 66 巻 12 号 p. 3090-3094
    発行日: 2005/12/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は87歳の女性で,下血で当院に紹介受診となった.下部消化器内視鏡では,肛門縁より7cmの直腸に約5cmの全周性の2型の腫瘍を認め,生検でGroup Vで直腸癌の診断となった.手術は低位前方切除が行われたが,術中小腸を検索すると回盲部付近の回腸の隆起性病変を触れ,あらためて注腸造影を確認すると同部と一致する場所に0-IIa様の病変が描出されていた.悪性の可能性も否定できないため,回盲部切除を追加した.病理では直腸はmoderately differenciated adenocarcinoma Type 2 ss INF βly1 v0 n0, 回腸はwell differenciated adenocarcinoma Type 0-Is sm2 INF βly0 v0であった.術後縫合不全をおこし第199病日に退院した.現在特に再発はない.とくに,空回腸大腸同時性重複癌はまれで本邦で12例である.本症例では幸運にも早期の段階で発見され根治切除が行われたが,術前術中は小腸癌の合併も留意した対策をとらなければならない.
  • 塚本 俊輔, 山本 哲久, 大澤 俊也, 森田 博義, 岸田 由起子, 薬丸 一洋, 関川 敬義
    2005 年 66 巻 12 号 p. 3095-3098
    発行日: 2005/12/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    近年,重複癌の報告は増加傾向にあり,診断技術の進歩や癌の予後改善によるものと考えられている.しかし,カルチノイドに重複癌が同時に発生した症例は未だ少ない.今回,直腸カルチノイドにS状結腸癌,胃癌,前立腺癌の同時性3重複癌が併存した症例を経験した. 67歳,男性,平成14年7月に内痔核の術前精査中,直腸カルチノイドが判明し内視鏡的切除術を施行した.同時にS状結腸癌を認めたためさらに全身精査を行ったところ胃癌も認めた.平成14年10月にS状結腸切除術,幽門側胃切除術を施行した.術後経過観察中にPSAの上昇を認め,平成15年2月に前立腺針生検にて前立腺癌を認めた.前立腺癌に対しては現在ホルモン療法中である.カルチノイドに3重複癌が併存した症例は極めて稀であるため報告する.
  • 三宅 泰裕, 黒川 英司, 飯島 正平, 半田 理雄, 加藤 健志, 吉川 宣輝
    2005 年 66 巻 12 号 p. 3099-3102
    発行日: 2005/12/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は76歳,女性.既往歴に1960年子宮癌に対して子宮全摘術,放射線治療を受けていた. 1989年膀胱癌にて膀胱全摘術を施行された. 1990年排便困難を認め, 1991年2月放射線大腸炎を伴う直腸癌にて腹会陰式直腸切断術を受けた.その後, 1995年盲腸癌のため結腸右半切除術を施行され,さらに2005年2月ごろより人工肛門部に発生した早期S状結腸癌を認めたため,同年5月人工肛門周囲から結腸を剥離しS状結腸を切除した.同部位に人工肛門を再度作成し,病理診断では早期の高分化型腺癌であった. 1989年膀胱癌発症以来16年間にわたって,放射線の被照射範囲内の骨盤内臓器に異時性に3度の大腸癌を経験したが,手術により現在無再発の状態で外来通院中である.骨盤部に放射線照射を施行された症例では多重癌の可能性があるが,適切な処置により,本症例のように長期にわたる生存が可能であると考えられた.
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