日本臨床外科学会雑誌
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66 巻, 11 号
選択された号の論文の51件中1~50を表示しています
  • 山下 芳典, 向田 秀則, 桑原 正樹, 坂部 龍太郎, 亀岡 稔, 佐藤 幸雄, 久松 和史, 平林 直樹, 多幾山 渉
    2005 年 66 巻 11 号 p. 2627-2632
    発行日: 2005/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    目的.最近の医療を取り巻く社会的背景から,医療の質を保ちつつ医療経済を考慮した診療が求められている.具体的には医療の標準化の確立とともに医療費の抑制や入院期間の短縮を図るため,検査,投薬,処置などの必要最小限度の合理化の必要性がある.そこで原発性肺癌に対する肺葉切除術に対してクリニカルパス (CP) の運用を試みた.方法.対象は原発性肺癌にて肺葉切除術および縦隔リンパ節郭清術を施行した症例で, CPに基づいて周術期管理がなされた2000年5月から2004年2月までの74症例をP群とし,導入前の連続した77症例の同様な手術が施行されたC群と比較検討した.結果. P群では,胸腔ドレーン挿入期間は有意に短縮し,抗生物質の投与,血液生化学検査,胸部単純X線写真の回数は有意に減ったが,逆に血液ガス分析検査の回数は有意に増加した.術後入院期間,入院中の総医療費(保険点数)に関して, C群とP群の比較では, 20.0vs 15.4日 (p<0.0001), 163,908vs151,010点 (p=0.008) であった. P群におけるバリアンスは20例 (27%) に発生した.結論. CPを用いることにより入院期間の短縮と医療費の抑制効果を認め有用性を確認した.また従来の周術期管理と比較して合併症の増加はなく,安全性については問題ないものと考えられた.
  • 唐沢 洋一, 唐沢 学洋, 神谷 和則, 熊谷 一秀
    2005 年 66 巻 11 号 p. 2633-2638
    発行日: 2005/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    1964年1月から1993年12月の30年間に当院で診断,治療された切除胃癌803例(外科的切除778例,内視鏡的粘膜切除25例)を対象とし,前期 (1964~1973年),中期 (1974~1983年),後期 (1984~1993年)と3期に分け臨床病理学的変遷について検討した.高齢化社会を反映して胃癌も高齢化現象が進み,早期癌, stageI癌の著明な増加とともに早期癌はより小型の癌および粘膜癌の頻度が上昇した.時代とともに予後は向上し,各stage別の5生率も向上がみられ胃癌の診断学の進歩とともにD2郭清の標準化,積極的胃全摘手術の導入など安全性を背景とした外科治療の進歩が認められた.後期にはEMRの導入など胃癌の個別化治療が始まり今後の方向性を窺わせた.
  • 久保 義郎, 栗田 啓, 野崎 功雄, 棚田 稔, 高嶋 成光, 横山 伸二, 多幾山 渉
    2005 年 66 巻 11 号 p. 2639-2644
    発行日: 2005/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    早期胃癌に対する腹腔鏡下胃局所切除術の治療成績について検討した. 1994年4月より1998年12月までに,腹腔鏡下胃局所切除術を行った早期胃癌43例を対象とした.男性30例,女性13例.年齢は64±12 (40~91)歳,占居部位はU領域: 5例, M領域27例,L領域: 11例で,手術時間は154±65 (60~315)分,出血量は98±139 (10~530)gであった.病巣の長径は平均2.1±1.6 (0.5~6.0)cmで,深達度はM:32例, SM1:7例, SM2:4例であった.術後合併症を6例(14%)に認め,創感染2例,胃内容排出遅延4例であった.切除断端陽性は4例(9.3%)で,そのうち3例に断端再発がみられた.平均観察期間は82±14 (8~122)カ月で原病死を1例,異時性多発胃癌を5例認めた.体上部~体下部の小弩~後壁の病変では手技が難しく,また前庭部では術後通過障害をきたすことがあり,術式の工夫が必要と思われた.本術式は切除断端陰性であれば根治性が確保でき良好な予後が期待できるが,局所再発と異時性多発胃癌を考慮した術後の経過観察が必要である
  • 秋吉 高志, 中塚 昭男, 徳永 正則, 森田 真, 山本 一治, 脇山 茂樹, 池部 正彦, 中西 浩三, 橋本 光孝, 豊増 泰介, 長 ...
    2005 年 66 巻 11 号 p. 2645-2650
    発行日: 2005/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    目的:大腸穿孔症例の予後予測におけるPOSSUM scoreの有用性を検討した.方法: 1992年から11年間に当科で手術を施行した大腸穿孔73例を生存例 (n=55) と死亡例 (n=18) に分けPOSSUM scoreを比較検討した.また, 73例のうちエンドトキシン吸着療法 (PMX-DHP) を施行した12例のPOSSUM scoreを救命例と非救命例で比較検討した.結果: POSSUMの予測死亡率は生存例で34.0±25.3%,死亡例で68.4±23.3%と死亡例で有意に高値であった (p<0.0001). PMX-DHP施行症例の死亡率 (42%) はPOSSUMの予測死亡率70%以上の症例では100% (5/5) であり,予測死亡率50~70%の症例の0% (0/7) に比べて有意に不良であった (p=0.0013). 結論: POSSUM scoreは大腸穿孔症例の予後予測に有用であることが示唆された. PMX-DHPはPOSSUMの予測死亡率50~70%の症例において成績良好であったが,予測死亡率70%を超えるような超重症例の救命率向上には寄与しなかった.
  • 石井 正之, 山口 茂樹, 森田 浩文, 大田 貢由, 長田 俊一, 上坂 克彦, 前田 敦行, 坂東 悦郎
    2005 年 66 巻 11 号 p. 2651-2655
    発行日: 2005/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    【目的】人工肛門造設あるいはバイパス手術を行った切除不能消化器癌による消化管閉塞(悪性消化管閉塞)症例を対象とし,手術により経口摂取が可能となったかを調査し,その成否を分ける要因に関して検討した.【方法】悪性消化管閉塞に対して人工肛門造設あるいはバイパス手術を行った60例を術後経口摂取の成否で2群に分類し,原疾患,狭窄部位,術中所見での腹水の有無,腹膜播種結節の有無,遠隔転移の有無,術式,術前化学療法の有無,術前の血清アルブミン値,術前パフォーマンス・ステータス各々の因子が経口摂取の成否に及ぼす影響を検討した.【結果】術後経口摂取が1カ月以上可能となった症例は34例であった.原疾患が膵癌,血清アルブミン値3.0g/dl以下および腹水の存在する場合に術後経口摂取状況は有意に不良であった.【結論】原疾患,腹水の存在,血清アルブミン値は,術後経口摂取の成否を推測する因子となる可能性がある.
  • 大城 泰平, 森浦 滋明, 小林 一郎, 服部 弘太郎, 川原 真理, 松本 隆利
    2005 年 66 巻 11 号 p. 2656-2660
    発行日: 2005/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は58歳,男性. 2000年2月糖尿病精査中に右腎癌,多発性膵腫瘍と診断され,原発巣の切除が行われた.膵腫瘍は腎癌の転移と診断され,術後にインターフェロン治療を受けた. 2001年5月転移性膵腫瘍の増大が認められたため,膵全摘を受けた. 2002年5月甲状腺多発転移にて再発.甲状腺右葉切除と左葉腫瘤核出術が行われた.原発巣の切除から5年6カ月,再発甲状腺腫瘍切除から3年が経過し生存中である.
    本邦において,腎癌の膵転移に関する切除例は140例あまりの報告があり,甲状腺転移の切除例は本症例を含め28例報告されている.患者はその後,胸膜再発がみられたが,胸膜,肋骨の部分切除により治療された.膵転移,甲状腺転移の両方を切除し長期生存を得た症例の報告はなく,貴重な症例であるため報告する.
  • 衣笠 和洋, 大久保 琢郎, 神村 和仁
    2005 年 66 巻 11 号 p. 2661-2665
    発行日: 2005/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は66歳,男性.左肩甲骨下部腫瘤と発作性の背部痛を訴え来院した. 8cm大で弾性硬の腫瘤が上肢挙上時に現れ,下垂時に消失した.胸部MRIでT1強調像, T2強調像ともに辺縁が不明瞭で高信号域と低信号域が混在する腫瘤像がみられた.背部弾性線維腫と診断し,腫瘤摘出術を施行した.腫瘤は広背筋,大菱形筋の下に存在し,筋肉との癒着はなかったが,肋骨骨膜および肋間筋筋膜に線維性に強く結合していた.摘出した腫瘤は大きさ8×4.5×4cmで被膜はなく,割面は白色調で脂肪組織が島状に散在していた.病理組織学的には膠原線維の増生が主で, elastica van Gieson染色で黒褐色に染まる弾性線維を多数認めたことから,弾性線維腫と診断した.背部痛は消失し,術後1年の現在まで再発はない.本症の特徴的な臨床所見とMRI所見を認識していれば臨床診断は比較的容易であり,無症状例に対する過剰な手術を回避することも可能である.
  • 北島 晃, 天野 定雄, 堀 眞輔, 櫻井 健一, 根岸 七雄, 根本 則道
    2005 年 66 巻 11 号 p. 2666-2669
    発行日: 2005/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は44歳,女性.左乳房腫瘤触知を主訴に当院紹介受診となった.左乳房CD領域に6×5cm,球状で境界明瞭な腫瘤を触知した.所属リンパ節腫脹は認めなかった.マンモグラフィ検査では左乳房外側上方に辺縁平滑,明瞭,高濃度な腫瘤として描出され,カテゴリー3と評価した.超音波検査では形状整で内部エコーが不均一な腫瘤として描出された.造影MRI検査ではT1強調像で境界明瞭な腫瘤として描出され, timeinten-sitycurveではearly peak plateau patternを示したため,悪性も否定できなかった.悪性葉状腫瘍の診断で腫瘍摘出術を施行した.病理組織所見では紡錘形細胞を伴ったスリット状・血管様の間隙構造が不規則にみられた.免疫組織学的染色ではVimentin強陽性, α-SMA陽性, Desmin弱陽性, CD34弱陽性であり, PASH (pseudoangiomatous stromal hyperplasia) と診断された.
  • 荒居 琢磨, 松下 明正, 久保 周, 熊木 俊成, 春日 好雄, 成家 庄二
    2005 年 66 巻 11 号 p. 2670-2674
    発行日: 2005/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    乳腺葉状腫瘍は全乳腺腫瘍中0.3~0.9%とされるが,悪性葉状腫瘍は乳腺悪性腫瘍の中の0.24%と比較的稀とされる.今回,われわれは再発を繰り返すうちに悪性化したと考えられた巨大乳腺葉状腫瘍の1例を経験したので報告する.症例は56歳,女性. 1983~2002年までの19年間に,いずれも同側の乳腺線維腺腫の診断で腫瘍摘出術が3回行われていた. 2005年4月に同側の巨大乳腺腫瘍を主訴に来院した.腫瘍は大きさ12×10cmであり,右乳腺全体を占めるほどであった.穿刺吸引細胞診にてclass III, 乳腺線維腺腫の疑いであったが悪性腫瘍の合併も否定できなかったため,非定型的乳房切除術が施行された.病理組織学的所見での診断はlow grade malignantの乳腺葉状腫瘍であったが,リンパ節転移は認めなかった.本疾患は,線維腺腫との鑑別診断が穿刺吸引細胞診,病理組織診断でも難しい場合がある.本症例も線維腺腫の診断で核出術を施行したが,結果的には葉状腫瘍が再発を繰り返すうちに悪性化したと考えられ,診断・治療が難しかった1例であった.
  • 吉田 直, 白田 保夫, 鈴木 武樹, 谷 眞弓
    2005 年 66 巻 11 号 p. 2675-2679
    発行日: 2005/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    同側同時性に紡錘細胞癌と非浸潤性乳管癌を併発した症例を経験したので報告する.症例は54歳,女性で左乳房腫瘤を主訴に来院した.左乳房に径2.5cmの無痛性の腫瘤を触知した.マンモグラフィでも同部に径3.4cmの境界明瞭平滑な腫瘤を認め,同時にB領域にも径1.1cmの淡い石灰化を伴う境界不明瞭な腫瘤を認めた.乳房超音波検査やダイナミックMRIでも両腫瘍の性格は明らかに異なっており,穿刺吸引細胞診では主病巣であるCA領域がclass IIIb, B領域がclass Vであった.同時性多発乳癌と診断し,胸筋温存乳房切除術 (Bt+Ax) を施行した.病理学的にはCA領域の腫瘍が紡錘細胞癌でB領域の腫瘍が非浸潤性乳管癌であった.特殊型の浸潤癌でも多発乳癌の可能性を念頭に置く必要があると考えられた.
  • 村上 英介, 藤崎 成至, 新宅 究典, 白神 利明, 加藤 尚志, 西亀 正之
    2005 年 66 巻 11 号 p. 2680-2684
    発行日: 2005/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    急性咽頭炎を初発とし頸部と縦隔に広範な進展を示した降下性壊死性縦隔炎の1例を経験した.症例は71歳の女性,主訴は咽頭痛と頸部腫脹であった.頸部CTで皮下,気管周囲,甲状腺周囲の膿瘍形成を確認し緊急の頸部開放ドレナージ術施行した. 5日後に胸部造影CTにて縦隔内,胸腔内に広範な膿瘍形成を認め,降下性壊死性縦隔炎と診断し開胸縦隔ドレナージ術を行った.術後の各種合併症に対して集中治療を行い救命しえた.降下性壊死性縦隔炎の治療に関して,若干の文献考察を加えて報告した.
  • 粉川 庸三, 尾浦 正二, 平井 一成, 吉増 達也, 岡村 吉隆, 木下 貴裕
    2005 年 66 巻 11 号 p. 2685-2688
    発行日: 2005/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は36歳,女性.胸部異常陰影の精査目的で来院.胸部CTにて左右前上縦隔から心嚢周囲に至る境界明瞭,辺縁整の造影効果を受けない腫瘤陰影を認めた. MRIではT1強調画像で低信号, T2強調画像で高信号の多房性の腫瘤を認めた.以上より縦隔リンパ管腫と診断した.外科的切除による合併症を危惧し, OK-432を用いた硬化療法を行った.経時的に腫瘤陰影は縮小していった.巨大縦隔リンパ管腫に対するOK-432を用いた硬化療法は有効な治療選択肢になりうると考える.
  • 西川 武司, 田中 信孝, 永井 元樹, 古屋 隆俊, 野村 幸博, 京田 有介
    2005 年 66 巻 11 号 p. 2689-2692
    発行日: 2005/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    腹部超音波,腹部CTにて術前に診断しえた爪楊枝による胃穿通の1例を報告する.症例は51歳,男性.主訴は臍上部腫瘤. 2004年9月爪楊枝を誤飲してしまった. 2004年9月, 11月と胃部不快感あり,近医に入院して精査するも原因不明.徐々に臍上部腫瘤が大きくなり,痛みがでてきたため2005年2月7日当院内科受診.腹部超音波,腹部CTにて爪楊枝の描出をえて,騰上部腫瘤は爪楊枝が原因の炎症性腫瘤と診断した. 3月3日手術施行.爪楊枝は胃壁を貫き,腹壁腫瘤に連なっていた.爪楊枝のような先端の尖った異物誤飲の既往がある場合は,異物の消化管外への迷入の可能性を念頭においた精査が有用である.
  • 宇野 雄祐, 水谷 哲之, 赤羽 和久, 岡本 好史, 小木曽 清二, 小林 建仁
    2005 年 66 巻 11 号 p. 2693-2697
    発行日: 2005/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    Leser-Trélat徴候(以下, LT徴候)は,脂漏性角化症が短期間に出現して急速に増加,増大をきたした場合,内臓悪性腫瘍が存在する可能性がある,というものである.今回,われわれはLT徴候を契機に発見された進行胃癌の1例を経験したので報告する.症例は74歳,男性.体幹中心の脂漏性角化症を自覚していたが,皮疹の増加・増大と掻痒感の出現を認めたため,近医皮膚科を受診した.臨床所見からLT徴候と診断され,全身の検索を受けたところ,上部消化管内視鏡検査で胃癌と診断された.腹部CT検査では,領域リンパ節腫大を認めた.当院へ転院の後,幽門側胃切除術を施行した.病理組織学的検査で,漿膜下層まで浸潤する低分化型管状腺癌と診断された.本症例のように,脂漏性角化症が急速な増加・増大をきたした場合や,掻痒感を伴うようになった場合には, LT徴候の可能性を考慮し,積極的に内臓悪性腫瘍の検索を行うべきである.
  • 住本 洋之, 柳生 隆一郎, 小石 健二, 藤本 泰久, 一井 重利, 山村 武平
    2005 年 66 巻 11 号 p. 2698-2701
    発行日: 2005/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は55歳,女性.一昨年より左乳房に腫瘤認めるも放置していた.昨年秋頃より心窩部痛出現し本年1月近医受診, 4型胃癌,低分化型腺癌の診断にて,当院紹介受診した.来院時,左乳房EC領域に5.0×4.5cmの腫瘤が触知され針生検にて浸潤性小葉癌の診断を得た.免疫組織染色ではestrogen receptor (ER) (+), progesterone receptor (PgR) (-), HER2 (2+) であった.上部消化管内視鏡時の生検にて乳癌の胃転移と診断された. Epirubicin+Cyclophosphamide (EC), Paclitaxel (TXL), Anastrozole (AI) による内分泌・化学療法を開始し,原発巣および転移巣の著明な縮小をみた.
    今回,乳癌の胃転移に対し内分泌・化学療法が奏効した1例を経験したので報告する.
  • 隈元 雄介, 栗原 直人, 菊池 潔, 露木 晃
    2005 年 66 巻 11 号 p. 2702-2706
    発行日: 2005/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は70歳,男性.食欲不振で近医受診し残胃癌と診断され,当院紹介入院となった.来院時,身長159cm,体重38kgと低栄養状態であり,精査の結果,食道浸潤を伴う進行癌で多発肝転移を認めたため根治術不可能と判断, IVHにて栄養管理をしながらTS-1 (80mg) の投与 (4週投与2週休薬),およびDocetaxel (TXT) 30mgを週1回5回連続投与の併用療法を開始した.化療開始後2カ月目には,食道浸潤の消失,多発肝転移の消退,残胃癌の著明な縮小に伴い,胃の伸展が良好となり,食事摂取量も増加・栄養状態も改善したため退院した.その後, TS-1 (80mg) を2週投与1週休薬, TXT 40mgを3週に1回で維持療法を行っており,開始6カ月目には肝転移が消失,現在まで重篤な有害事象は認めておらず,本療法開始後1年を経過して,肝転移はCR, 原発巣はPRの状態であり,良好なQOLを維持している.
  • 錦織 直人, 青松 幸雄, 藤本 平祐, 井上 隆, 桑田 博文, 中島 祥介
    2005 年 66 巻 11 号 p. 2707-2711
    発行日: 2005/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は62歳の男性で, 40歳時に十二指腸潰瘍穿孔に対し幽門側胃切除術 (Billroth II再建)の既往がある. 2002年10月に突然の腹痛が出現し,その後下痢と体重減少を認めた.注腸・上部消化管内視鏡・CTの諸検査にて吻合部潰瘍による胃空腸結腸瘻と診断し, 2003年11月下旬胃空腸部分切除術, Roux-enY吻合,横行結腸瘻孔部単純縫合閉鎖術を施行した.経過は良好で消化吸収機能が改善し,術後3カ月で6kgの体重増加を認めた.術後2カ月目の経過観察目的の上部消化管内視鏡検査にて吻合部潰瘍再発が認められ,胃液検査で空腹時胃酸濃度は116mEq/lと高酸度であった.再発病変はプロトンポンプ阻害剤(以下, PPI) 内服にて改善し,維持療法にて増悪は認めていない.高酸分泌状態を背景に発症する吻合部潰瘍は再発を繰り返す病態を有しており,新たなる吻合部潰瘍の再発を確実に防ぐ術式選択が必要である.
  • 繁本 憲文, 坂下 吉弘, 高村 通生, 小倉 良夫, 近藤 成, 金 啓志
    2005 年 66 巻 11 号 p. 2712-2715
    発行日: 2005/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    椎茸による食餌性イレウスを経験したので報告する.症例は73歳,女性.急性虫垂炎にて虫垂切除術の既往がある.平成16年7月5日頃より眩量,悪心,嘔吐を主訴に外来にて輸液加療されていた. 7月9日より腹痛を伴うようになり,イレウスの診断にて外科紹介となった.腹部CTにて胃,小腸の拡張を認め,拡張した小腸の先端にairとfatの濃度が混在した塊状物を認めた.消化管異物あるいは小腸腫瘍性病変の嵌頓によるイレウスと診断し,ロングチューブを挿入し保存的治療を開始した.しかし,翌日も症状がほとんど改善しないため,開腹手術を施行した. Treitz靱帯より130cmの回腸に嵌頓した椎茸の笠を摘出した.文献的に種々の食物が原因となりイレウスを引き起こすことが知られているが,椎茸が原因となってイレウスをひきおこした例は,本例以外に過去9例が報告されるのみである.文献的考察を含めて報告する.
  • 藤原 理朗, 中林 愛晶, 前田 肇
    2005 年 66 巻 11 号 p. 2716-2720
    発行日: 2005/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は93歳の女性で,下腹部痛が出現し,精査加療目的で当院を受診した.腹部X線,腹部CTでは著明な小腸ガス像,肝臓周囲の腹水,腸管の拡張,腸管壁の肥厚を認め,さらに上腹部のfreeairを認めた.検査結果より上部消化管穿孔による汎発性腹膜炎を疑い緊急手術を施行した.開腹所見では多量の膿性腹水を認めた.腸管は癒着し, Treitz靱帯から約60cmの空腸に穿孔部を認めた.近傍の腸管内に異物を触知した.空腸は穿孔部を切除し端々吻合で再建した.摘出標本内にpress-through-package (PTP) 包装を認め,穿孔部の粘膜面に線状潰瘍も認めたため,この薬剤包装誤飲による空腸穿孔性腹膜炎と診断した.術後経過は良好で術後18日目に退院した. PTP包装誤飲による消化管穿孔の中で小腸穿孔は比較的稀で,本邦報告例は29例である.今後は薬剤包装の改良や1回量を分包化するなどの予防策が重要と考えられた.
  • 野田 英児, 澤田 隆吾, 雪本 清隆, 鬼頭 秀樹, 阪本 一次, 山下 隆史, 田中 勲
    2005 年 66 巻 11 号 p. 2721-2724
    発行日: 2005/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は, 23歳,女性.平成11年,十二指腸潰瘍穿通にて広範囲胃切除術施行された.同年,癒着性イレウスの診断にて,癒着剥離術を施行した.この際,回腸末端部より約80cm付近に8カ所の輪状の壁肥厚を認めたため一部を切除した.肥厚部にはびらんを認め,病理学的には非特異的炎症所見のみであった.平成14年8月,突然の下腹部痛が出現し,外来を受診した.受診時,下腹部に強い圧痛を認めたが腹膜刺激症状は認めなかった.腹部CTで小腸の拡張とTargetsign様の所見を認めたため,腸重積を疑い緊急手術を施行した.回腸末端部に8カ所の壁肥厚を認め,それより口側の腸管の拡張を認めたため同部を切除した.切除標本では輪状の潰瘍瘢痕様の病変を8カ所に認め,病理学的には浅い潰瘍形成と粘膜下層の非特異的炎症像が認められ非特異的多発性小腸潰瘍症と診断した.
  • 佐々木 貴浩, 竹中 能文, 内田 智夫, 佐藤 宏喜, 古内 孝幸, 佐久間 正祥, 堀 眞佐男
    2005 年 66 巻 11 号 p. 2725-2729
    発行日: 2005/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は82歳,男性.主訴は黒色便,貧血. 2年前,肝細胞癌の診断で前区域切除,横隔膜合併切除術を施行した既往がある.今回,黒色便とヘモグロビン5.89/dlまで低下する貧血を認め,輸血目的で入院をした.上部,下部内視鏡で異常所見を認めなかった. CT所見で右下腹部に内部不均一で造影効果のある充実性腫瘍を認め,残存肝に腫瘤性病変は認めなかった.出血シンチグラムで,同部位に集積を認め,手術を施行した.腫瘍はTreitz靱帯より30cm肛門側で小腸間膜側より発生しており, 6.0×6.0×6.0cmの軟性な腫瘍であった.小腸部分切除術を施行した.病理ではmetastatic hepatocellular carcinoma in the small intestineで小腸筋層直下より発生しており,肝細胞癌からの小腸転移と診断した.術後経過は良好で術後15カ月を経過した現在,再発の所見認めず外来通院中である.
  • 山下 久幾, 勝部 隆男, 今野 宗一, 成高 義彦, 小川 健治, 上野 恵子
    2005 年 66 巻 11 号 p. 2730-2733
    発行日: 2005/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は71歳,男性. 2003年9月腹痛,嘔吐で近医を受診.イレウスの診断で入院し,イレウス管挿入による減圧処置を受けたが改善なく,発症第15病日に精査加療目的で当科に転院した.転院時,腹部の膨隆や柊痛はなく,腹部単純X線検査で鏡面像もなかったが,イレウス管造影でイレウス管先進部の肛門側に拡張腸管を認めた.さらに腹部超音波, CT検査で回盲部近傍に拡張した腸管を認めたため,盲腸周囲ヘルニアの診断で発症第22病日,開腹した.回腸盲腸ひだをヘルニア門とし,回腸が後腹膜に約10cm嵌入した下回盲窩ヘルニアであった.用手的に整復したが,嵌入腸管に器質化した狭窄を認めたため小腸部分切除術を施行した.手術所見とマルチスライスCTによる多断面再構成 (multi-planar reformation: MPR) 画像はほぼ一致していた.下回盲窩ヘルニアは稀な疾患であるが,術前診断にMPR面像が有用と考えられた.
  • 福島 正之, 坂本 吉隆, 長尾 祐一, 佐藤 永洋
    2005 年 66 巻 11 号 p. 2734-2739
    発行日: 2005/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    消化管MALTリンパ腫は胃に発生が多く,小腸原発は比較的稀である.今回,腸重積を繰り返した回盲部MALTリンパ腫の1例を経験したので報告する.症例は, 33歳の男性.心窩部痛あり,近医にて入院加療歴があった.再度同様の症状を認め当院受診.筋性防御を認め,腹部CT検査にて回盲部の腸重積・腹水を認めた.緊急手術を施行した.開腹すると腹腔内に中等量の腹水を認め,回腸が上行結腸に重積していた.用手的に還納できた.壁肥厚,漿膜の発赤を認めたため,回盲部切除を施行した.回腸末端部の粘膜面は,粗槌であった.病理の結果は,免疫染色にてCD79a, CD20のB-cell markerに陽性であり,回盲部MALTリンパ腫と診断した.リンパ節転移を認めなかった.術後経過良好で全身検索にてリンパ節腫大認めず, Gaシンチで異常集積像なく,骨髄生検にて異常を認めなかった.化学療法施行せず,外来経過観察中である.回盲部MALTリンパ腫は,比較的稀な疾患であり,時に腸重積の原因となることがある.
  • 梅岡 達生, 酒井 邦彦, 磯崎 博司, 村上 茂樹, 庄 達夫, 山本 泰久
    2005 年 66 巻 11 号 p. 2740-2743
    発行日: 2005/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は85歳,女性,右鼠径部の腫瘤および痛みを主訴に来院した.腹部エコーでは腹腔内に連続するヘルニア嚢を認めた.腫瘤の還納は不可能であった.大腿ヘルニア嵌頓の診断のもとに,緊急手術を施行した.手術所見では大腿動静脈内側にヘルニア嚢を認め,内容は壊死を起こし穿孔した虫垂を認めた.虫垂切除ならびにMcVay法を施行した.術後創感染を合併したが治癒した.
    大腿ヘルニア虫垂嵌頓は極めて稀であり,これまでの報告例は検索範囲では24例であった.若干の文献的考察を加え報告する.
  • 山川 俊紀, 小野田 裕士, 大橋 龍一郎, 泉 貞言, 鈴鹿 伊智雄, 塩田 邦彦
    2005 年 66 巻 11 号 p. 2744-2747
    発行日: 2005/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    今回われわれはmultiplanar reformation (MPR) で術前診断しえた,超高齢者に生じた盲腸軸捻転の1例を経験した.症例は89歳,男性. 3日間継続していた腹痛が急激に増強し近医受診し,腹部単純X線写真にて鏡面像を有する拡張腸管を認め当科に紹介された.腹部CTにて遊離ガスならびに鏡面像を有する拡張腸管とmultiplanar refor-mation (MPR) 像にてbird's beak signを認め,回盲部軸捻転症も含めた絞扼性イレウスに伴う汎発性腹膜炎と診断し,緊急手術を施行した.盲腸は後腹膜との固定性がなく,腸間膜を軸として時計方向に180度捻転し,菲薄化した盲腸壁の一部が穿孔していたため,結腸右半切除を施行した.緊急手術を要する盲腸軸捻転症を疑った際に, MPRは簡便かつ容易に施行でき,有益な情報を得るのに役立つ検査法であると思われた.
  • 本田 晴康, 津澤 豊一, 川田 崇雄, 熊谷 嘉隆
    2005 年 66 巻 11 号 p. 2748-2752
    発行日: 2005/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は85歳,女性. 80歳時に下行結腸穿孔を生じ穿孔部外置術を受けた.今回横行結腸脾曲寄りに35mm大の腹腔内遊離穿孔を生じ,発症6時間後にHartmann手術を施行,病理検査で特発性大腸穿孔と診断された. MOFに陥り集中治療にて急性期は脱したが誤嚥性肺炎で141日目に在院死した.最近6年間に当院で経験した特発性大腸穿孔は9例で平均年齢80歳.男2例,女7例.常習便秘4例,基礎疾患7例,腹膜刺激症状を全例に認めた.排便時・涜腸後などの誘因はないが突然の激痛のため全例でほぼ正確な発症時刻が特定でき,手術までの平均時間は11時間であった.再発例を除く全例がS状結腸穿孔で,穿孔径は平均30mm,穿孔方向は後腹膜1例,腸間膜内2例,腹腔内6例であった.術式はHartmann手術6例,穿孔部外置術3例で,転帰は3例が術死,再発例が急性期後に在院死,5例が全治退院した.人工呼吸,血液濾過透析, PMXなどの治療が行われたが,基礎疾患を有する高齢者が多く,術死率は33%と高かった.
  • 伊藤 浩明, 舟橋 啓臣, 酒向 猛, 大島 健司, 小西 滋, 野垣 岳志
    2005 年 66 巻 11 号 p. 2753-2757
    発行日: 2005/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は74歳の女性.慢性関節リウマチにてステロイドを内服中であり,両側変形性膝関節症にて人工膝関節置換術を施行し,リハビリ通院中であった.平成15年4月に左鼠径部痛が出現し,外科を受診した.左鼠径部に膿瘍を認めたが,炎症所見は軽度であり,化膿性リンパ節炎として切開排膿と抗生剤を使用し,外来で経過観察していた.しかし改善を認めないため, 11月に精査を施行したところ,皮膚からS状結腸への瘻孔形成と, S状結腸から下行結腸にかけて多発する憩室を認めた.本人の自覚症状が全くないこと,入院によるリハビリの遅れへの懸念などから手術に対するインフォームドコンセントが得られず,外来での経過観察を続けていたが,受診後1年以上経過しても瘻孔は閉鎖しなかったため,平成16年9月に結腸左半切除術を施行した.術後の経過は良好であった.手術の既往のない結腸皮膚瘻は稀であるため,若干の文献的考察を含めて報告する.
  • 平塚 研之, 角田 明良, 中尾 健太郎, 山崎 勝雄, 鈴木 直人, 草野 満夫
    2005 年 66 巻 11 号 p. 2758-2762
    発行日: 2005/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は59歳,女性.子宮体癌の診断で子宮全摘手術施行の1年後に結腸膣瘻を認めた.結腸憩室炎が関与した痕孔と判断し,結腸部分切除,瘻孔痕痕切除を行った.しかし,術後の病理所見上憩室の存在は確認されず,明らかな瘻孔も残存していなかった.
    結腸膣瘻は1991年から9例の報告がある.多くは子宮切除後で憩室炎が先行しており,明らかな憩室炎の既往のない症例での発生は比較的稀であり,文献的考察を加え検討する.
  • 斉藤 典才, 三上 和久, 中村 崇
    2005 年 66 巻 11 号 p. 2763-2766
    発行日: 2005/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は84歳,男性.両下肢の浮腫と貧血の精査のため当院へ入院した.初回の下部大腸内視鏡検査で直腸S状部に1/3周の2型大腸癌を認め,手術を前提とした全身精査を行っていた.しかし入院後第13病日に高度の腹痛とショック状態を呈し大腸内視鏡検査を再検したところ,既知の病変より口側5cmの部位に全周性の2型大腸癌が発見され,さらにその口側に閉塞性大腸炎の合併がみられた.盲腸瘻を造設し全身状態の改善を図った後,結腸左半切除術を施行した.本症例は3多発進行大腸癌に合併した閉塞性大腸炎で,多発の可能性を念頭に入れた術前内視鏡あるいは注腸造影検査を行っていれば閉塞性大腸炎の発生を防げたと考えられた.
  • 香山 茂平, 竹末 芳生, 大毛 宏喜, 坂下 充, 村上 義昭, 末田 泰二郎
    2005 年 66 巻 11 号 p. 2767-2771
    発行日: 2005/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    卵巣癌術後の転移性大腸腫瘍が腸重積にて発症した症例を経験したので報告する.症例は52歳,女性.進行卵巣癌に対し手術を施行後,術後補助化学療法が施行されていた.術後6年目に化学療法目的にて入院中,右側腹部痛をきたし精査したところCTでは上行結腸内に1型の隆起性病変を認め,腸重積を呈している所見を認めた.下部消化管内視鏡では上行結腸の病変の他にもS状結腸にIIc病変を認め,これらの病変に対し手術を施行した.術中所見では大腸の病変部の漿膜面には小結節を認めたが,それ以外には腹膜播種性の病変は認めず,それぞれの病変に対しD2郭清を伴う結腸右半切除術, S状結腸切除術を施行した.手術後病理検査にて卵巣の漿液性乳頭状腺癌の大腸転移であると診断され,大腸の病変部の所属リンパ節には広範に転移が認められた.術後化学療法を施行し,手術後1年5カ月経過時点で再発兆候なく外来通院中である.
  • 田野島 玲大, 齊藤 修治, 辰巳 健志, 成井 一隆, 池 秀之, 今田 敏夫
    2005 年 66 巻 11 号 p. 2772-2777
    発行日: 2005/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は66歳,女性. 1977年7月に特発性血小板減少性紫斑病 (ITP) と診断され脾臓摘出術を施行するも軽快せず,プレドニゾロン内服を継続していた. 2004年3月下血精査の大腸内視鏡検査で多発大腸ポリープと診断.免疫グロブリン大量投与,ステロイド大量投与で血小板数上昇せず,免疫グロブリン大量先行投与と濃厚血小板輸血後にポリペクトミーを予定した.しかし上行結腸とS状結腸の計3個のポリープは内視鏡的切除は不可能と判断し,さらに免疫グロブリン投与後濃厚血小板輸血を行い,開腹術を施行した. S状結腸ポリープは術後病理診断で深達度smの高分化腺癌と診断した.術後第1, 2病日に免疫グロブリン大量投与と濃厚血小板輸血を行い,血小板数は最高11.9万/μlまで上昇し,術後の経過は良好で第12病日に軽快退院した.免疫グロブリン大量投与とステロイド大量投与が無効であったITP合併S状結腸癌症例に対して,免疫グロブリン大量先行投与と濃厚血小板輸血を行い,安全に手術を施行しえた1例を経験したので報告する.
  • 濱野 美枝, 松山 秀樹, 増田 浩
    2005 年 66 巻 11 号 p. 2778-2781
    発行日: 2005/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は71歳,男性. 2001年12月31日より,排便なく,腹痛が出現してきたため2002年1月3日,当院救急外来受診.当日は保存的加療を行い,翌日外来紹介となった.転科時,腹部は全体に膨隆し,自発痛を認め,特に右下腹部に圧痛および強い反跳痛を認めた.腹部単純X線では,拡張した小腸ガス像を認めた.腹部造影CTにて,肝S3に門脈ガス像を認めたが, freeair,膿瘍および腸管壊死を疑わせる所見は認められなかった.しかし,麻痺性イレウスの状態であり痛みも強く,また門脈ガス血症がみられることから,腹膜炎と判断し,緊急手術施行した.開腹すると,腹腔内に汚染された腹水を認め,穿孔性虫垂炎に伴う汎発性腹膜炎であった.虫垂切除を行い,腹腔内洗浄後手術を終了した.術後経過は良好で第17病日に退院となった.本症例のように虫垂炎による腹膜炎が原因の門脈ガス血症の報告は自験例を含めて3例しか報告がなく貴重な症例と考えられた.また,門脈ガス像が診断および治療方針決定に有用であった.
  • 高橋 保正, 長田 明, 大河内 信弘
    2005 年 66 巻 11 号 p. 2782-2786
    発行日: 2005/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は74歳,女性.糖尿病と心房細動の既往あり. 2003年6月25日下腹部痛で内科を受診した.腹部CT上,小腸の著明な拡張を認めイレウスと診断され,イレウス管を挿入された. 2時間後,腹痛の急性増悪を認め外科へ紹介され,再度腹部CTを施行された.門脈ガス血症および上腸間膜動脈の閉塞が認められた.上腸間膜動脈閉塞症による汎発性腹膜炎と診断し緊急手術が施行された.小腸は全体に血流障害があり壊死した小腸を切除した. 2回目の腹部CTの約6時間後, 3回目のCTを行ったところ門脈ガスは消失していた.門脈ガス血症を伴う上腸間膜動脈閉塞症はきわめて予後不良であり,早期診断および手術が予後を規定する上で重要である.また,門脈ガス血症の経時的変化についての報告は稀であり文献的考察を含めて報告する.
  • 牛田 進一郎, 日比 優一, 町田 浩道, 戸田 央
    2005 年 66 巻 11 号 p. 2787-2791
    発行日: 2005/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は57歳,男性,腹痛を主訴に来院.腹膜炎の診断で入院となる.腹膜刺激症状を認め,画像上肝膿瘍,膿瘍内ガス像,腹腔内遊離ガス像を認め,ガス産生肝膿瘍破裂による腹膜炎と診断し,手術施行した.肝S8に膿瘍の破裂部を確認した.膿瘍内容の培養ではKlebsiella pneumoniaeを検出した.術後,膿瘍の再発を繰り返し数回のドレナージを必要とした.ドレナージにより膿瘍は消失し軽快退院した.自験例ではコントロール不良の糖尿病の存在が肝膿瘍の発生,再発に関与していたと考えられる.
  • 後藤 崇, 谷口 正次, 山本 淳, 中島 健, 指宿 一彦, 古賀 和美
    2005 年 66 巻 11 号 p. 2792-2796
    発行日: 2005/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は66歳,女性.多発肝転移を伴う胃原発gastrointestinal stromal tumor (GIST) の診断で2003年1月胃部分切除術施行.術後Imatinib Mesilate (STI571) を400mg/日にて投与開始した.投与開始後5週目のCTでは肝転移巣は縮小傾向で全体的に嚢胞状変化を認めた.副作用が強く一旦休薬すると,その後の腹部CTでは肝転移巣に再燃像がみられた.副作用消退後にSTI571再投与したが,再び副作用発現のため休薬.再休薬に併せてCT上では同様の変化を繰り返した.同年5月からは1日投与量を一旦200mgに減量,副作用の発現を観察しながら400mgまで漸増したが,休薬に至るような有害事象の発現はなく,術後2年6カ月経過した現在も健在で肝転移巣も増大傾向を認めていない.本例でみられた経時的変化は,治療効果が認められた症例においても,潜在的な活動性の存在を意味するものであり, STI571の継続投与の必要性を示しているものと考えられた.
  • 石曽根 聡, 千須和 寿直, 清水 文彰, 土屋 拓司, 岡本 講平
    2005 年 66 巻 11 号 p. 2797-2801
    発行日: 2005/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    脾嚢胞は画像診断の進歩に伴い,さほど稀な疾患ではなくなりつつある.今回われわれは5年間の経時的変化を追ったCAI9-9産生巨大脾嚢胞の1例を経験したので報告する.
    症例は44歳,女性,左季肋部痛を主訴に来院した.初診時の腹部CT上で直径10cm大の脾嚢胞を認めた.嚢胞は年々増大したが手術を拒否していたため,そのまま経過観察していた.嚢胞容積はCT volumetoryにてほぼ直線的な増加を示し,5年後には嚢胞は最大径28cmと巨大なものになった.血清CEAは0.6ng/mlと正常であったがCA19-9は1,759U/mlと高値を示していた.持続的な腹痛も伴うようになったため脾摘出術施行となった.
    嚢胞内容液は約6,000ml,嚢胞内CEAは125.9ng/ml, CA19-9は1.7×105U/mlと高値を示した.組織学的には真性嚢胞と診断され,免疫染色ではCEA, CA19-9とも嚢胞内上皮に陽性所見を認めた.摘出後の血中CA19-9は正常に復した.
  • 徳田 恵美, 板東 隆文, 永岡 栄, 杉崎 勝好, 正木 幸善, 武村 民子
    2005 年 66 巻 11 号 p. 2802-2806
    発行日: 2005/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は56歳,男性.平成13年9月,直腸癌に対し高位前方切除術,リンパ節郭清術を施行,中分化腺癌,深達度ss, リンパ節転移を認めずstage IIと診断した.その後外来経過観察中の平成14年10月,腫瘍マーカーは正常であったが,腹部CT検査で右副腎に25mmの鵬を認めた.平成15年1月CEAの上昇と腹部CT検査での副腎鵬の増大を認め,直腸癌の転移性副腎腫瘍を疑い平成15年2月右副腎腫瘍摘出術を行った.病理組織学的に,副腎髄質を主体に原発巣に類似した高分化から中分化腺癌像を認め,他に転移がみられないため直腸癌の右副腎転移と診断した.転移巣切除後13カ月経過し再発の徴候は認めない.
    転移性副腎腫瘍は特徴的な臨床所見が少なく,早期に診断され治療される症例は少なく.血中CEAおよびCT検査を定期的に行うことで早期に発見でき,切除しえた直腸癌術後の孤立性副腎腫瘍について報告した.
  • 名知 祥, 日野 晃紹, 岩田 尚, 関野 考史
    2005 年 66 巻 11 号 p. 2807-2811
    発行日: 2005/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は62歳の男性. 2004年3月17日より突然腹痛が出現し, 3月18日に近医を受診した.内服薬の処方を受けたが症状軽快せず,また腹部X線でイレウスと診断されたため, 3月23日に当院を紹介受診し入院となった.入院後,イレウス管を留置し保存的療法を行ったが症状の軽快を認めず,イレウス管からの小腸造影検査では左下腹部に先細り状の小腸閉塞を認めた.このため何らかの内ヘルニアによるイレウスと診断し, 4月12日に開腹手術を施行した.手術所見ではS状結腸間膜右葉に径2.5cm大の欠損を認め,回盲部から約200cm口側の小腸が約10cm嵌入していた.嵌入した小腸を用手的に整復して内ヘルニアを解除し,S状結腸間膜の欠損部を縫合閉鎖して手術を終了した.術後経過は良好で術後11日目に退院した. S状結腸間膜内ヘルニアは稀な疾患であり,若干の文献的考察を加えて報告する.
  • 大塚 眞哉, 吉田 亮介, 三好 和也, 稲垣 優, 淵本 定儀, 湯村 正仁
    2005 年 66 巻 11 号 p. 2812-2815
    発行日: 2005/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は81歳,女性,直腸癌にて腹会陰式直腸切断術の既往あり.血便を主訴にて紹介され,横行結腸と盲腸の多重癌の診断にて,横行結腸切除術および回盲部切除術を施行した.術後2日目より頻回な嘔吐出現し,上部消化管造影にて十二指腸水平部に辺縁明瞭な狭窄像を認めた.また腹部CTにて上腸間膜動脈の右側に造影剤の溜まりを認め,上腸間膜動脈と大動脈による十二指腸水平部の圧迫を認めた. SMA症候群と診断して十二指腸授動術とTreitz靱帯切離術を施行した.消化管再建に伴う上腸間膜根部の過進展と小骨盤内への小腸の癒着による腸間膜の牽引が原因であった.術後胃内容停滞を認め,胃内減圧と消化管運動賦活剤の投与を行ったが,改善せず,モチリン受容体のアゴニストであるエリスロマイシン500mg×2回/日を再手術後22日目より5日間投与して軽快した.術後にSMA症候群をきたした症例であるが,手術を中心にした集学的治療が有効であった.
  • 米山 公康, 大山 廉平
    2005 年 66 巻 11 号 p. 2816-2821
    発行日: 2005/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は44歳,男性.食欲不振と全身倦怠感を主訴に来院した.血液検査ではCRP 8.4mg/dl, ガンマグロブリン1,890mg/dlの上昇を認めた.腹部超音波検査では上腹部に約5cm径の腫瘤を認めたが,腸管との明らかな連続性は認められなかった.腹部CTスキャンでは上腹部に境界明瞭な腫瘤性病変を認めた.内部は比較的均一で造影剤で濃染される腫瘤であった.画像所見より横行結腸に壁外性に発生,発育したGISTをもっとも疑い開腹手術を施行した.横行結腸間膜やや脾轡曲部寄りに径約5cm大の腫瘤を認め,横行結腸とともに一塊として切除した.肉眼では4.2×3.5×5.0cm径の境界明瞭な腫瘍であった.病理組織検査によりhyalin-vascular typeのCastleman病と診断された.現在術後2年2カ月が経過しているが,再発の微候なく健存である.
  • 中村 博志, 岩崎 維和夫, 渡邊 聖, 白坂 健太郎, 徳山 美香, 石川 由起雄
    2005 年 66 巻 11 号 p. 2822-2827
    発行日: 2005/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    比較的稀な小腸リンパ管腫を伴う腸間膜リンパ管腫の小児例を経験したので報告する.症例は8歳,男児.平成16年1月17日より嘔吐・下痢が出現,その後38°C台の発熱があり,腹部腫瘤の指摘を受け緊急入院となった.腹部全体に圧痛のある硬い可動性のない腫瘤を触知し,白血球・CRPの上昇と貧血,腫瘍マーカーのCA125, S-IL2Rの上昇を認めた.腹部画像検査で上腹部より骨盤腔に拡がる充実性部分の多い腫瘤を認めた.悪性を否定できず,生検にてリンパ管腫の結果をえた.消化管造影, multi-slice CT検査を追加施行し,開腹手術を施行した.回腸腸間膜に約35cm×30cm×10cm大の腫瘤を認め,回腸を合併切除し3,830gの腫瘤を全摘出した.病理組織診断は腸間膜および小腸の海綿状リンパ管腫であった.
  • 田島 正晃, 上村 哲郎, 當寺ヶ盛 学, 猪股 雅史, 白石 憲男, 北野 正剛
    2005 年 66 巻 11 号 p. 2828-2831
    発行日: 2005/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    患者は53歳,男性.平成5年の健診時に腹部腫瘤を初めて指摘された.無症状であり放置して平成16年に尿管結石に対する検査の際に再度腹部腫瘤を指摘され,精査加療目的にて当科入院となった,腹部超音波検査にて腹部正中に多房性の嚢胞性腫瘤を認めた. CT, MRIにて大網リンパ管腫と診断し,手術を施行した.腫瘍は大網原発であり,大きさ21×13cmの充実性,嚢胞性腫瘍の混合型腫瘍であった.病理組織検査にてリンパ管腫と診断した.
    リンパ管腫は小児の代表的な先天性良性腫瘍の一つであり,なかでも腹腔内に発生するリンパ管腫は稀である.本症例は稀な大網原発巨大リンパ管腫の1成人例であり,文献的考察を加え報告した.
  • 奥川 郁, 中村 憲司, 中野 且敬, 大坂 芳夫, 土屋 邦之, 迫 裕孝
    2005 年 66 巻 11 号 p. 2832-2835
    発行日: 2005/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は77歳,女性.左の非還納性鼠径ヘルニアにて当科受診した.腸閉塞の所見なく,腹部CTにて他の悪性腫瘍を示唆するものがないことを確認後,手術となった.ヘルニア内容は左の卵巣と卵管であり,切除後,鼠径ヘルニア根治術を施行した.腹膜には無数の粟粒大の結節を認めた.病理診断にて卵巣の乾酪壊死を認め,結核性肉芽腫および結核性腹膜炎の診断を得た.結核の全身検索にて性器結核も認められた.現在,抗結核剤の投与を行っている.結核性腹膜炎は,稀な疾患であるが,粟粒大の腹膜結節を認めた場合は,念頭に置くべき疾患と考えられた.
  • 佐々木 剛志, 平 康二, 中村 豊, 福田 直也, 竹内 幹也, 菱山 豊平
    2005 年 66 巻 11 号 p. 2836-2840
    発行日: 2005/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は79歳,女性.左側腹部痛にて当院を受診.精査の結果,左側結腸憩室炎穿通による後腹膜膿瘍と診断した.炎症は保存的治療にて軽快したが, 4カ月後に再燃,また同時に下行結腸狭窄を併発したため,回腸瘻を造設した.さらに4カ月後,再び炎症の再燃を認めたため,左側結腸切除,膿瘍ドレナージを施行した.術中,術後の膿瘍腔,およびドレーン排液からの細菌培養は陰性であった. 3度目の再燃時には,膿瘍形成部に一致して,左尿管の狭窄を認め,尿管ステントを留置した.さらに4度目の再燃を認めたため,膿瘍壁を可及的に切除,掻爬し,そのまま開放ドレナージとした.病理所見にて放線菌塊 (Druse) を認めたため後腹膜放線菌症と診断した.以後約半年間のAMPC内服にて, 1年半経過した現在まで再発を認めていない.憩室炎穿通による放線菌の腸内から後腹膜腔への伝播が原因と考えられた.
  • 森村 玲, 松村 篤, 海老原 良昌, 増山 守, 渡辺 信介
    2005 年 66 巻 11 号 p. 2841-2844
    発行日: 2005/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は50歳,女性. 5年前の子宮癌検診時に超音波上子宮左側に腫瘤を認め,卵巣嚢腫疑いにて超音波でフォローアップされていた.腫瘤径の軽度の増大を認めたためMRIを施行したところ,左骨盤底に腫瘤を認めたため精査加療目的に当院を受診した.精査したが確定診断に至らず,手術を施行した.腫瘍は骨盤底後腹膜に存在しており,線維性の癒着は認めたが比較的容易に剥離可能で腫瘍摘出術を施行した.病理組織学的にhyaline vascular typeのCastleman's lymphomaと診断した.
    今回われわれは,検診にて偶然発見された後腹膜原発のCastleman's lymphomaの1例を経験したので報告する.
  • 森田 克彦, 三瓶 訓子, 平木 桜夫, 工藤 明敏, 福田 進太郎
    2005 年 66 巻 11 号 p. 2845-2850
    発行日: 2005/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は53歳,女性.身長150cm,体重73kg. 2001年8月頃,腹部膨満が出現,次第に増悪し,食欲不振,体重減少,呼吸困難感も出現してきたため, 2002年11月5日精査加療目的で当科紹介入院。腹部は蛙腹様に膨満し,仰臥位では喘鳴が聴取された.腹部CTでは腹腔内の大半を占める低吸収性の巨大腫瘤があり,横隔膜を上方に,全結腸を右側に,膀胱を骨盤底右側に圧排偏位させていた. MRI, 血管造影などの精査後,左側骨盤腔原発の脂肪肉腫を疑い,手術を施行した.麻酔時には, head up体位にて縦隔の圧排を少なくし,また,IVCへ腫瘍重量がかかるのを防止し,循環動態に注意しつつ,切除をすすめた.摘出標本は18kg.病理組織学的には高分化型脂肪肉腫であった.術後2年6カ月経過した現在も再発を認めず,経過良好である.巨大脂肪肉腫を安全に切除できたので,文献的考察も含めて報告する.
  • 久保 陽司, 二宮 基樹, 佐々木 寛, 大野 聡, 桧垣 健二, 高倉 範尚
    2005 年 66 巻 11 号 p. 2851-2856
    発行日: 2005/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は63歳,女性,下腹部腫瘤を主訴に来院.左下腹部に表面平滑で,可動性の乏しい手拳大の腫瘤を触知した.血液生化学検査でCA19-9が890U/mlと高値を示した.腹部CT, MRIにおいて同部位に6.5×6cm大の嚢胞性病変を認め,左腎静脈上下の大動脈周囲に横径1~1.5cm大の腫脹リンパ節を認めた.注腸検査でも横行から下行結腸間で圧排所見を認めた.血管造影ではileolumbar arteryが栄養血管と診断された.以上より後腹膜領域に発生した嚢胞と診断し手術を施行.後腹膜腫瘍摘出術および大動脈周囲リンパ節郭清を行った.病理組織診断では後腹膜原発のmucinous cystadenocarcinoma of ovarian typeと判明した.術後早期に肺門リンパ節,多発性骨転移を認めた. 4年前より経過観察がなされていたが診断後早期の摘出術が望ましかったと考えられた.
  • 星野 敏彦, 遠藤 正人, 外浦 功, 吉永 有信, 落合 武徳
    2005 年 66 巻 11 号 p. 2857-2861
    発行日: 2005/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    高齢化に伴い症例が増加している. Poorriskの症例が多いため,腸管が嵌頓し致死的になる場合もある.原則的に手術が選択されるが,比較的高侵襲な手術になることも多い.今回われわれはKugel法に準じた低侵襲な修復術を施行しえたので若干の文献的考察とともに報告する.
    症例は75歳女性.吐き気を主訴に来院し,腹部レントゲン単純撮影,CTなどから,閉鎖孔ヘルニアの診断となった.腰椎麻酔下にKugel法に準じた修復術を施行した.術後特に問題なく第9病日に退院した.
    閉鎖孔ヘルニアに対する修復術は,以前は全麻下に開腹で行われる傾向にあったが,昨今になりapproachや使用するメッシュの工夫により腰椎麻酔下でより低侵襲な手術が行われるケースが増えている. Kugel法による修復は低侵襲で有用であった.
  • 小林 慎, 目黒 英二, 早川 善郎, 入野田 崇, 野田 芳範, 貝塚 広史
    2005 年 66 巻 11 号 p. 2862-2865
    発行日: 2005/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    無喉頭の早期胃癌患者に対して,胃癌根治術と同時に遊離回盲部パッチを用いた二期的音声再建の本邦2例目に成功した.症例は65歳,女性. 2年前に喉頭浸潤甲状腺癌にて甲状腺全摘と喉頭全摘が他施設で施行され,食道発声法の習得ができず,全く発声不能の状況であった.今回,幽門部の早期癌で根治手術が可能と判断され入院.胃癌に対しては幽門側胃切除を行い, Billroth I法で再建した.次に,回盲部を遊離グラフトとして切除し,頸部にて顕微鏡下で血行再建を施行.咽頭前面を露出し縦切開をおき,ここに回盲部パッチを充てた.発声のための回腸導管は永久気管と端側吻合した.本法は,二期的音声再建に遊離腸管を応用できる唯一の術式であるが,開腹による腸管切除を必要とする欠点があった.今回は胃癌手術と同時に音声再建術を受けることで同意を得られ,これにより,胃癌の根治に加え,失われていた声が甦った.
  • 杉下 博基, 岩川 和秀, 坂尾 寿彦, 加洲 保明, 岡田 憲三, 梶原 伸介
    2005 年 66 巻 11 号 p. 2866-2869
    発行日: 2005/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    腹部大動脈瘤と下部消化管の悪性腫瘍を併存した場合,一期的に手術するか,二期的に手術するかコンセンサスは得られていない.今回われわれは両疾患の合併例で一期的手術を選択し経過良好であった1例を経験したので報告する.
    症例は75歳,男性.冠動脈疾患術後の経過観察中に便潜血陽性をきっかけに直腸癌 (Rs) と診断され,腹部CT検査で6cmの腹部大動脈瘤が発見された.本症例は高度の肥満を伴い,直腸癌も進行癌であること,さらに冠動脈疾患の既往を有することから,二期的手術は困難と判断し,一期的治療を選択した.まず腹部大動脈瘤に対してYグラフト置換術を先行し瘤壁,後腹膜を閉鎖後,直腸癌に対して低位前方切除術を行い,回腸末端から20cmの部位で一時的に人工肛門を造設した.術後縫合不全や,人工血管感染を起こすことなく順調に経過した.今回の経験から両疾患の併存例では,症例によっては一期的手術も可能であると考えられた.
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