日本臨床外科学会雑誌
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66 巻, 4 号
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  • 平田 健, 加藤 智栄, 八木 隆治, 林 雅太郎, 河野 和明, 瀬山 厚司, 久我 貴之
    2005 年 66 巻 4 号 p. 805-809
    発行日: 2005/04/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    目的)手術切開創の創傷処置に閉鎖環境,消毒不要などの概念が導入され創傷処置が変わりつつある.当科ではフィルムドレッシングを導入し,従来のガーゼ処置と比較検討した.方法)胸腹部待機手術症例を対象とし,フィルム群 (F群)とガーゼ群 (G群)へ最小化法により振り分け,前向き研究を行った. F群では縫合直後にフィルムドレッシング材を貼付し抜糸まで交換せず経過観察した.創感染,コストなどについて検討した.結果) F群49症例,G群51症例.手術部位,手術時間,切開創の長さ,抜糸までの日数には差はなかった.切開創感染はF群で3例 (6.1%), G群で2例 (3.9%) で差はなかった (p=0.92). コストはF群 (255円)で, G群 (605円)に比し有意に低かった (p<0.001). 結論)フィルムドレッシングは切開創の管理,観察が容易で,創感染を増加せず,低コストであり,従来のカーゼ処置より有効であった.
  • 堤 謙二, 宇田川 晴司, 木ノ下 義宏, 上野 正紀, 峯 真司, 江原 一尚
    2005 年 66 巻 4 号 p. 810-816
    発行日: 2005/04/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    切除不能・再発にてS-1を投与した進行胃癌80例の問題点につきretrospectiveに検討した. S-1単独31例: median survival time (以下MST) 472日, response rate (以下RR) 25.0%, S-1+cisplatin (18例: MST393日, RR61.1%) でS-1+cisplatinは高いRRであるものの生存期間に有意差は認めなかった.前治療なし (31例, MST472日, RR25.0%), 前治療あり (28例, 285日, 13.0%) とMSTでは有意な差を認めなかった. S-1治療耐性後の新規抗癌剤による治療の有無では施行群は (MST261日)非施行群 (110日)に比し良好であった. S-1はIst-lineでも2nd-lineでも有効であるが,高い奏効率が必ずしも生存期間延長に寄与するとはいえなかった.更なる生存期間の延長には新規抗がん剤の追加: multi-lines chemotherapyによる治療が重要と考えられた.
  • 森岡 伸浩, 宮下 薫, 藍澤 喜久雄, 奥村 直樹, 清永 英利
    2005 年 66 巻 4 号 p. 817-821
    発行日: 2005/04/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は80歳,女性.進行大腸癌で手術目的に入院.病歴,身体所見に心疾患を疑わせる所見は認めなかった.術前心電図検査も正常範囲内であった.全身麻酔下(完全静脈麻酔+硬膜外麻酔)で結腸右半切除術を施行した.手術終了後,抜管前に心電図上VPC二段脈が出現,さらにV3-V5にST上昇を認めた.心臓超音波検査で左心室中隔から前壁にかけて壁運動の低下を認めた.急性心筋梗塞疑いで不整脈出現1時間30分後に緊急心臓カテーテル検査施行した.心臓カテーテル検査では冠動脈に有意な狭窄を認めなかった.その後CKの上昇も認められず, 2週間後の左心室壁運動はほぼ正常まで改善したため“たこつぼ型”心筋症と診断した.術後経過は良好であった.各種の外科的処置に関連して発症することがあり,外科医も認知すべき疾患であると思われたので報告した.
  • 金 啓和, 榊 雅之, 流郷 昌裕, 井上 陽一, 大竹 重彰
    2005 年 66 巻 4 号 p. 822-826
    発行日: 2005/04/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は68歳,女性. 2001年肝機能障害,胸部X線上心拡大を認め,近医受診.その際,心臓カテーテル検査にて僧帽弁閉鎖不全および心電図上,完全房室ブロックを認めたため, DDD型ペースメーカー植え込み術を施行した. 2003年8月心不全症状の増悪を認め僧帽弁閉鎖不全症の加療目的にて当院紹介入院.理学所見上,心尖部に全収縮期雑音を認めた.胸部X線上両側肺門部リンパ節腫脹は認めなかった.心エコー検査にて駆出率32%と著明な心機能低下,左室拡張終期径75mm, 収縮終期径62mmと心拡大およびIV度の僧帽弁逆流を認めたため,僧帽弁置換術を施行した.術中の乳頭筋生検にて心サルコイドーシスと診断した.われわれは拡張型心筋症様病態を呈した僧帽弁閉鎖不全症に対し,僧帽弁置換術を施行し,その際の乳頭筋生検により初めてのサルコイドーシス症と診断された症例を経験したので,文献的考察を加え報告した.
  • 小林 成行, 木下 茂喜
    2005 年 66 巻 4 号 p. 827-831
    発行日: 2005/04/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    胃軸捻転症は比較的稀な良性疾患であるが,症例によっては手術療法が必要となる.今回われわれは,胃軸捻転症に対して腹腔鏡下胃固定術を行い良好な結果を得たので,文献的考察を加えて報告する.症例は86歳,女性. 5年前に肺癌にて左上葉切除の既往があった.他病にて当院整形外科に入院中,嘔吐,上腹部不快感が認められた.腹部単純X線写真で左横隔膜の挙上と二重胃泡が認められ,胃管留置にて症状は消失した.腹部CT, 上部消化管造影にて間膜軸性胃軸捻転症と診断された.内視鏡的に整復するもその後再発をきたしたため,腹腔鏡下胃固定術を施行.捻転の先進部と考えられた胃体部前壁と腹壁を2-0バイクリルで3針縫合固定した.術後経過は良好で,再発は認められていない.
  • 金澤 寛之, 本坊 健三, 二渡 久智
    2005 年 66 巻 4 号 p. 832-836
    発行日: 2005/04/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    患者は73歳女性.心窩部痛を主訴に当院入院となった.腹部造影CTで胃穹窿部後壁大彎側寄りに直径5cm大の腫瘤性病変を認めた.胃間葉系腫瘍が最も疑われ, FDG-PETではSUV (standardized uptake value) 最大値が9.9と高値を示した.悪性度が高い間葉系腫瘍の診断で胃楔状切除術を行った.摘出標本は55×50×45mmの内部充実性の腫瘍で内部に壊死巣は認めなかった.病理所見では,紡錘形の細胞で構成され,核異型が強く細胞密度は中等度であった. KIT, CD34, S-100 proteinが陽性. SMA, desmin, HHF35は陰性であった. Ki-67indexは10%と高値を示した.病理所見においてもFDG-PETによる術前評価と同様に高悪性度のGISTと診断された. FDG-PETは術前に非侵襲的な方法でGISTの悪性度を推察し得る検査法であり,治療戦略を考える上で有用な情報を提供し得ることが示唆された.
  • 菅野 明弘, 内藤 広郎, 高橋 道長, 上野 達也, 吉田 寛
    2005 年 66 巻 4 号 p. 837-841
    発行日: 2005/04/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    術前血清CA19-9値が4,600U/mlと異常高値を示したCA19-9産生胃粘液癌の1例を経験した.症例は72歳,女性.心窩部痛にて発症し,精査の結果,胃癌と診断された.平成14年10月7日膵頭十二指腸切除術(PD-IIA)を施行した.切除標本では胃幽門部大彎側を中心とし十二指腸球部にまで浸潤する45×40mm大の5型腫瘍であった.術後総合診断はpT3 (se), pN3, sH0, pP1, CYX, f Stage IVであった.免疫染色では癌細胞の細胞質および粘液にCA19-9の局在が証明された.血清CA19-9値は術後一旦540U/mlまで急激に低下したが,その後再上昇した.画像検査では癌の再発は不明であったが血清CA19-9値を再発の指標として抗癌化学療法を行った.しかし,術後10カ月で癌性腹膜炎のため永眠された. CA19-9産生胃癌はこれまで本邦では16症例が論文報告されているだけであり,稀であると考え若干の文献的考察を加えて報告した.
  • 本田 晴康, 津澤 豊一, 川田 崇雄, 熊谷 嘉隆
    2005 年 66 巻 4 号 p. 842-847
    発行日: 2005/04/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は71歳,男性.主訴は上腹部膨満とコーヒー残渣様嘔吐.過去に同様のエピソードが6回あり,他院での保存的治療で軽快していた. 2003年10月6日大量のコーヒー残渣様嘔吐を生じ当院初診入院,誤嚥性肺炎を生じショックに至ったが回復した.腹部CT検査でSMA症候群が疑われたが, SMAの分岐角は33°とやや小さい程度であった.経過良好で食後の体位変換を指導し32病日退院したが, 11日目に再び同症状出現し入院した.今回は4日間の保存的治療で軽快したが,短期間に再発し8回目であること,前回誤嚥性肺炎を生じたことより手術適応と判断し, 2003年12月16日十二指腸空腸側々吻合術を行った.術後経過良好で体重が11kg増加した.再発を繰り返す例や重篤な合併症を併発した例は手術の適応であり,十二指腸空腸吻合術は低侵襲で有効性の高い術式と思われた.また高齢者では若年者に比し保存的治療が無効の場合が多く,手術を要することが多い.
  • 松岡 永, 畠山 茂毅, 原 真也, 宮下 澄人, 津田 洋, 佐尾山 信夫
    2005 年 66 巻 4 号 p. 848-852
    発行日: 2005/04/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    消化管に発生する間葉系腫瘍(gastrointestinal mesenchymal tumor; GIMT)は大別すると筋原性腫瘍,神経原性腫瘍およびどちらにも分化しない消化管間質性腫瘍(gastrointestinal stromal tumor: GIST)に分類される.今回われわれは下大静脈の高度圧排をきたした巨大GISTの1例を経験したので報告する.
    症例は78歳男性.平成15年5月右腹部に腫瘤を自覚し近医受診. CT上腫瘍は18×14×11cmと右腹部全体を占めた.下大静脈は腫瘍により高度に圧排され描出されていなかった.エコーガイド下に生検し「いわゆる GIST」 と診断され,当科紹介となった.同8月20日十二指腸楔状切除・右腎合併切除で腫瘍を摘出し胃切除後Billroth II法で再建した.下大静脈は腫瘍と剥離可能であり合併切除を要さず腫瘍摘出可能であった.
  • 岡田 健一, 貞廣 荘太郎, 石川 健二, 鈴木 俊之, 幕内 博康
    2005 年 66 巻 4 号 p. 853-856
    発行日: 2005/04/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    続発性小腸軸捻転症の報告は稀で,その原因の大部分は腸回転異常症と癒着・索状物である.今回われわれは腸間膜嚢胞が誘発したと考えられた小腸軸捻転症の1例を経験したので報告する.症例は67歳,女性で腹痛を主訴に来院した.腹部全体に著明な圧痛と筋性防御を認めた. CTで上腸間膜動脈を中心にwhirl sign を,尾側に手拳大の嚢胞性腫瘤を認めた.症状増悪したため,小腸軸捻転症に伴う絞扼性腸閉塞と診断し,緊急手術を施行した.小腸が時計回りに捻転し,虚血性変化は認めなかった.捻転部の尾側に手拳大の腸間膜嚢胞を認め,これが捻転を誘発したものと考えられた.捻転解除・腸間膜嚢胞摘出し,腸切除は行わなかった.腫瘤は95×75mm大,単胞性の嚢胞で,病理組織検査で腸間膜嚢胞と診断された.術後8日目に退院し,術後9カ月現在再発を認めず健在である.
  • 加藤 秀明, 薮野 太一, 宮永 太門, 渡邊 透, 山脇 優, 佐藤 博文
    2005 年 66 巻 4 号 p. 857-860
    発行日: 2005/04/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は77歳,女性.患者は胆摘,臍部ヘルニア手術のあと近医で経過観察されていたが,腹痛を頻回に起こすようになり当院救急外来を受診した.腹部CT検査,小腸造影検査で第5腰椎付近の小腸に径3cmほどの憩室と小腸軸捻転症を認めた.入院後は腹痛発作は認めず,小腸憩室を伴った腸軸捻転症の診断で手術を行った.手術所見では,小腸は上腸間膜動・静脈を中心に反時計回りに捻転し,その軸の背側に小腸が嵌入していた.その嵌入した小腸を引き出すとTreiz靱帯から約50cmの空腸に径3cmほどの単発性憩室を認めた.手術は癒着剥離および小腸軸捻転解除,憩室楔状切除術を施行した.病理学的には憩室は真性憩室であった.術後経過は良好で第12病日に退院した.空腸憩室に伴う腸軸捻転症の症例は本邦で3例のみの報告がある稀な疾患であり,文献的考察を加えて報告した.
  • 森田 美佳, 中野 雅貴, 米倉 康博, 岩本 慈能, 吉岡 和彦, 中根 恭司
    2005 年 66 巻 4 号 p. 861-865
    発行日: 2005/04/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は82歳,女性.平成13年2月より時々タール便を認めていたが,平成13年12月よりタール便の頻度が月1回となり,近医受診,当院内科紹介入院となる.血液生化学検査にて,強度の貧血,低蛋白血症が認められた. Tc-RBCシンチで, Treitz靱帯直下空腸近位からの出血を認めた.血管造影下に塞栓術を2回施行するもタール便持続する為,外科転科,手術施行した.術中内視鏡検査にてTreitz靱帯よりわずかに肛門側よりに発赤部を認めた為,同部を含め約30cmの近位空腸を切除した.病理組織学的所見は血管異形成であった.
  • 鳥海 久乃, 田代 健一, 二村 聡, 矢永 勝彦
    2005 年 66 巻 4 号 p. 866-870
    発行日: 2005/04/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    非外傷性小腸穿孔の発生頻度は低い.今回われわれは,小腸穿孔をきたしたびまん性大細胞型B細胞性リンパ腫の1例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.
    症例は70歳,女性. 2003年6月26日夕方より腹痛出現し, 2日後に近医を受診.腹部CT検査上, free air を認めたため,手術目的に同日当院に紹介受診となった.既往歴に高血圧症,慢性関節リウマチがあり,左頸部リンパ節腫脹にて他院にて精査中であった.来院時,体温38.1度.腹部は硬く,全体に腹痛,圧痛,反跳痛,筋性防御を認めた.白血球4,700/μl, CRP 39.9mg/dl. 腹部CT検査上,多量の腹水およびfree airを認め,消化管穿孔の診断にて緊急手術となった.開腹時, Treitz靱帯より約70cmの空腸に穿孔部を認め,小腸部分切除術,開腹ドレナージ術,腸間膜リンパ節生検を施行した.組織学的検索の結果,びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫と診断された.
  • 神藤 理, 金 義哲, 高塚 聡, 由井 三郎, 池原 照幸
    2005 年 66 巻 4 号 p. 871-875
    発行日: 2005/04/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は96歳の男性.開腹の既往歴はない.心窩部痛を主訴に来院し,腹部単純X線と腹部CT検査で小腸の拡張を認めイレウスの診断で入院となる.イレウス管を留置し,保存的治療を行うも症状が改善しないため入院9日目に開腹術を施行した. S状結腸間膜左葉に直径2cmの欠損を認め,回盲部より約40cm口側の回腸がRichter型に嵌頓していた.用手的に嵌頓を解除し,嵌頓部の腸管は損傷を認めず切除を要しなかった.ヘルニア門は切開開放とし手術を終了した.
    S状結腸間膜内ヘルニアは腹腔内ヘルニアのなかでも稀で,その本邦報告例は自験例を含め22例であった.入院から手術までの期間は平均9.39日であり,術前に診断し得たのは1例のみであった. S状結腸間膜内ヘルニアを含む内ヘルニアの診断は極めて困難であり,原因不明のイレウスでは可及的早期の手術を考慮する必要があると考えられた.
  • 田中 俊樹, 竹中 博昭, 林 雅規, 小野田 雅彦, 守田 信義, 濱野 公一
    2005 年 66 巻 4 号 p. 876-879
    発行日: 2005/04/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は32歳,男性.突然の下腹部痛にて発症し次第に増悪したため,約5時間後に当院救急外来を受診した.理学所見では,眼瞼結膜に貧血を認め,腹部は緊満しており筋性防御を認めた.腹部CTでは,腹腔内に血液と思われるeffusionを多量に認めた.以上より腹腔内出血を疑い緊急手術を行った.開腹すると多量の凝血塊を認めた.腹腔内を検索すると,直腸Ra前壁から動脈性の出血を認めた.出血点周囲の直腸壁は肥厚していた.腫瘍性病変も考慮し,出血源を含めて直腸高位前方切除術を行った.病理所見では,線維化巣とそれに巻き込まれた小動脈の破綻を認めたが,明らかな腫瘍性病変や動脈瘤はなかった.術後経過は良好で, 15PODに退院した.明らかな原因は不明であるが,手術所見,病理所見より,何らかの原因で直腸壁の癒着が外れ,その際に出血したと考えられた.本症例は検索しえた限りでは国内外に報告はなく,非常に稀であると考えられた.
  • 大場 大, 伏田 幸夫, 西村 元一, 藤村 隆, 太田 哲生, 三輪 晃一
    2005 年 66 巻 4 号 p. 880-885
    発行日: 2005/04/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は67歳,女性.主訴は下血,性器出血.平成10年11月に進行胃癌,盲腸癌および腹膜播種P2に対し幽門側胃切除術 (D3), 拡大右半結腸切除術 (D3) および播種巣切除,腹腔内抗癌剤投与を施行.胃癌: A, Gre, type2, pap, ssβ, ly1, v1, n1, H0CYIM0, 盲腸癌; C, type2, tubl, ss, ly1, v1, n(-), H0M(-), 播種巣の組織像は両者に類似していた.術後補助化学療法として,平成14年5月までの期間MTX/5-FU/LV療法を計37回施行.術後5年目で子宮頸部,直腸粘膜に露出したDouglas窩転移再発をきたし,直腸・子宮一括切除により完全切除しえた.初回手術時の播種巣ならびにDouglas窩腫瘍は腸型の転移性腺癌で, CK7/CK20免染にて盲腸癌由来 (CK7-/CK20+) と判明. MUC, CD10発現はMUC5AC(-), MUC1(-), MUC2(+), CD10(-). 積極的な手術治療を含めた集学的治療によって,初回手術より73カ月経過した現在再発兆候なく,癌の形質発現の観点からも良好な予後が示唆された.
  • 藤井 眞, 吉川 澄, 根津 理一郎, 藤川 正博, 甲斐 康之, 仲 至永
    2005 年 66 巻 4 号 p. 886-892
    発行日: 2005/04/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は34歳,男性.主訴は血便.直腸癌の診断にて腹会陰式直腸切断術を施行した.高分化腺癌, a2, n1(+), ly2, v2で, stage IIIaであった.術後1年目肝S1に腫瘤が認められ, S1部分切除術を施行した.さらに2年6カ月後肝S2と右側腹壁に腫瘤が認められ,肝外側区域切除+腹壁腫瘤摘出術を施行した.腹壁腫瘤は,前回肝切除術時のdrain瘢痕部に発生していた. 1年6カ月後膵頭後部リンパ節転移が認められ,放射線療法 (50Gy) を施行し,一旦CRとなった.その後膵頭後部リンパ節転移は再び増大し,多発性肝転移が認められ,初回手術より6年5カ月で肝不全のため死亡した.摘出腫瘤はすべて組織学的に直腸癌からの転移であった.再発形式について検討した結果,肝転移は血行性転移,腹壁転移はdrain瘢痕部へのimplantation, 膵頭後部リンパ節転移は肝転移巣からのリンパ行性転移と考えられた.
  • 本田 勇二, 石井 健一, 萩原 英之, 江口 英雄
    2005 年 66 巻 4 号 p. 893-898
    発行日: 2005/04/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    肛門縁から18cm口側の直腸癌に対して高位前方切除術を行った10カ月後に,肛門管内に壁内転移を認めた稀な症例を経験したので報告する.症例は64歳,男性.平成15年2月13日,直腸癌の診断にて高位前方切除術を施行した(中分化腺癌, Rs, 2型, 50×60mm, 全周性, se, P0, H0, M(-), ly1, v0, n(-), D3, aw(-), ow(-), ew(-), CurA, Stage II).術後10カ月目の大腸内視鏡検査で,腫瘍下縁が歯状線上にある中心に潰瘍を形成した大きさ20mmの粘膜下腫瘍を認めた.生検検査結果は腺癌で,肛門管癌と診断した.平成16年1月14日,腹会陰式直腸切断術を施行した.切除標本において,肛門管後壁の腫瘍の大きさは25×20mm, 肛門縁より11cm口側の吻合部の腫瘍は15×7mmで,いずれの病変も中分化腺癌であった.この2つの病変には連続性がなく,原発直腸癌と同様の組織像であった.以上より吻合部近くの病変は局所再発,肛門管の病変は壁内転移と判断した.
  • 横田 健太郎, 石津 寛之, 近藤 征文, 岡田 邦明, 益子 博幸, 横田 良一
    2005 年 66 巻 4 号 p. 899-903
    発行日: 2005/04/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は48歳女性. C型肝硬変,肝細胞癌(HCC),脾腫による汎血球減少の診断で腫瘍切除および血小板増加を目的とした脾摘を企図した.肝S3の部分切除および脾摘を施行したが,術後6日目のCT検査で門脈内に血栓を認めた.同日よりダナパロイドナトリウムを投与したところ投与開始後12日目で血栓は消失した.ダナパロイドナトリウムはヘパリンナトリウムに比べ,出血傾向などの副作用を生じにくい新しい抗凝固剤である.本邦では播種性血管内凝固症候群のみが適応となっているが,欧米では肺血栓塞栓症など深部静脈血栓症に対しても広く適応とされ本症例においてもその有効性が示された.
  • 原田 昌和, 花田 明香, 白澤 文吾, 味生 俊, 森重 一郎, 濱野 公一
    2005 年 66 巻 4 号 p. 904-908
    発行日: 2005/04/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例1: 75歳,女性.腹痛にて近医で加療中であったが,イレウス症状が強くなったため当科に紹介された. CTにて門脈ガス(PVG)血症・著明な腸管ガス像,血液検査にてCRP 36.81mg/dl・CPK 1,4571U/Lと上昇しており急性腸間膜動脈閉塞を疑い緊急手術を行った.回腸末端130cmおよび上行結腸10cmまで腸管壊死を認め切除・小腸痩を造設した.術後ICU管理を必要としたが125日目に軽快・転院となった.
    症例2: 66歳,男性.嘔吐・腹痛を主訴に当科紹介となる. CTにてPVGを認めるもCRP 5.23mg/dl,筋性防御・反跳痛は認められず保存的治療を施行した.入院後,大量の便とともに症状は消失し20日目に退院した.
    症例3: 66歳,男性.急激な腹痛・嘔吐にて当院受診した. CTにて門脈ガス血症を認めるもCRP5.34mg/dl,筋性防御・反跳痛は認められず保存的治療を施行した. DMのためα-グルコシダーゼ阻害剤内服中でありこれに起因する腸管内圧上昇によるPVGと考えられた.
  • 土川 貴裕, 市村 龍之助, 阿部島 滋樹, 小西 和哉, 長谷川 直人, 川端 真
    2005 年 66 巻 4 号 p. 909-912
    発行日: 2005/04/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    今回われわれは,非アルコール性脂肪性肝炎 (NASH) に発生した肝細胞腺腫の1切除例を経験したので報告する.症例は36歳,男性.主訴は倦怠感.平成13年11月人間ドックを受診し,腹部超音波検査上,肝内側区に径約9cm大のSOLを指摘された.ウィルスマーカーは陰性.画像上腫瘍はhypervascularで,造影CTでは動脈優位相から平衡相まで持続する濃染像を示し内部に壊死部分を有していた.平成14年1月15日肝内側区域切除術を施行した.病理組織学的には, NASHによる慢性肝炎像を背景に,異型の乏しい肝細胞の増殖する肝細胞腺腫の像を認めた.術後2年9カ月現在再発兆候なく通院中である.
  • 若原 智之, 塚本 忠司, 加地 政秀, 大西 律人, 濱辺 豊, 寺村 一裕
    2005 年 66 巻 4 号 p. 913-916
    発行日: 2005/04/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    肺癌の肝転移は,その予後が不良であることから通常手術適応とならない.今回われわれは,肺癌からの孤立性肝転移に対し肝切除を行った1例を経験したので報告する.症例は76歳,女性.喀血を主訴に近医受診し,胸部X線検査で右肺中葉に腫瘤陰影を指摘され当院紹介受診.気管支鏡検査による擦過細胞診で腺癌と診断された.腹部画像検査上肝S4に腫瘤陰影が認められ, T2N0M1 Stage IVの非小細胞肺癌の診断のもとcarboplatinおよびpaclitaxelによる抗癌化学療法が施行された.原発巣である肺癌は化学療法でコントロールされていたが,肝病変は増大傾向が認められたため肝腫瘍に対して拡大肝内側域切除術が施行された.切除標本の病理組織学的検査および免疫組織化学検査では肺癌からの肝転移と診断された.術後1年の現在,他に転移巣を認めず原発巣の切除も考慮にいれつつ経過観察中である.
  • 吉田 雅, 神山 俊哉, 伊藤 智雄, 高橋 周作, 松下 通明, 藤堂 省
    2005 年 66 巻 4 号 p. 917-920
    発行日: 2005/04/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は79歳男性.心窩部痛を主訴に近医受診.食道胃接合部癌の診断で近医入院となった.胃全摘+下部食道・脾臓合併切除+D2郭清を施行した.病理組織学検査では,食道胃接合部の高分化~低分化型腺扁平上皮癌, sm2, INFα, ly0, v0, n0であった.術後13カ月目の腹部CTで肝尾状葉に腫瘍像を認め,手術目的に当科入院となり,肝拡大左葉切除術を施行した.病理組織学的検査では,腺扁平上皮癌の組織型を呈し,転移性肝癌として矛盾しない所見であった.術後は,テガフール300mg/日内服+シスプラチン10mg/週点滴静注による化学療法を開始したが,食欲不振があり中止した.現在,術後12カ月経過したが無再発生存中である.早期食道胃接合部癌の肝転移巣に根治的肝切除した報告例は無く,積極的な肝切除が予後の延長に寄与しうる貴重な症例と考えられたので報告する.
  • 山田 豪, 金子 哲也, 杉本 博行, 野本 周嗣, 中尾 昭公
    2005 年 66 巻 4 号 p. 921-925
    発行日: 2005/04/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は64歳,男性.黄疸を主訴に近医受診し,腹部CTにて肝内胆管拡張を認めPTBDを留置し,肝門部胆管癌の疑いで当院紹介となった.入院後減黄不良のため十分なドレナージを行い,あわせて胆管生検を施行した.生検の結果は血管炎のみで悪性所見は認めなかった.血液検査上,著明な好酸球, IgE上昇を認め,また既往歴に喘息発作があることよりChurg-Strauss症候群を疑い,胆管狭窄はその随伴病変と考えられた.しかし肝門部胆管癌は否定できず手術も考慮したが,肺炎,胆管炎による高熱のため全身状態が悪化し内科的治療とした.ステロイドの開始により胆管狭窄は徐々に改善され,ドレナージチューブも抜去でき,ステロイドを斬減した. Churg-Strauss症候群により胆管狭窄をきたした報告はなく,若干の文献的考察を加えて報告する.
  • 佐々木 貴浩, 佐藤 宏喜, 古内 孝幸, 竹中 能文, 佐久間 正祥, 堀 眞佐男
    2005 年 66 巻 4 号 p. 926-930
    発行日: 2005/04/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    乳癌胆管転移の1例を経験した.症例は56歳,女性.平成9年左乳癌(TlN0M0)で乳房部分切除,腋窩郭清を施行.病理診断は浸潤性乳管癌 硬癌,リンパ節転移陰性,切除断端癌陰性で残存乳房照射50Gyとtamoxifen 20mg 5年間の補助療法を行った.乳癌術後5年5カ月,肝機能障害発症,画像診断上,中下部胆管が著明な狭窄を呈し,胆管癌の診断で膵頭十二指腸切除術を施行した.病理組織学的には粘膜直下より漿膜,膵に浸潤した腺癌が認められ,既往の乳癌の組織像に類似しているところから乳癌の胆管転移と診断した.乳癌の転移による胆管狭窄は肝十二指腸間膜リンパ節転移による報告例が散見される程度で本症例の如き胆管転移は極めて稀である.
  • 平木 将紹, 大塚 隆生, 北原 賢二, 田村 智章, 本山 健太郎, 宮崎 耕治
    2005 年 66 巻 4 号 p. 931-934
    発行日: 2005/04/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は66歳,男性.全身倦怠感,肝機能障害の検査目的に行われたCTで膵頭部に40×35mmの嚢胞性病変を指摘され,当科へ紹介された.精査の結果,輪状膵に伴うIPMTと診断し,膵頭十二指腸切除術を施行した.輪状膵に伴ったIPMTの報告例はなく,非常に稀な症例と思われた.輪状膵とIPMTの因果関係および手術適応につき文献的考察を加え報告する.
  • 河野 正寛, 藤田 徹, 宮崎 正二郎, 平山 芳文, 糟谷 忍, 亀岡 信悟
    2005 年 66 巻 4 号 p. 935-939
    発行日: 2005/04/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は72歳男性.心窩部痛および黄疸を主訴に当院受診となった.腹部超音波検査および腹部CTにて,膵頭部に多房性の嚢胞性病変,著明な主膵管の拡張と軽度の胆管の拡張を認めた.また, PTCD造影で膵胆管瘻形成が疑われた.総胆管への穿破を伴う粘液高産生性膵管内乳頭粘液性腺癌と診断し,膵頭十二指腸切除術を施行した.病理学的には,微小浸潤を伴う乳頭腺癌が主膵管から分枝膵管まで進展しており,膵胆管瘻周囲には腫瘍細胞を認めなかった.本症例は粘液貯留により引き起こされた嚢胞壁の圧上昇に伴う自潰により瘻孔を形成し,粘液により閉塞性黄疸をきたした,と考えられた.
  • 田中 千恵, 野崎 英樹, 小林 裕幸, 清水 稔, 秀村 和彦, 佐々 実穂
    2005 年 66 巻 4 号 p. 940-944
    発行日: 2005/04/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は60歳,男性で検診の腹部超音波検査で多発性脾腫瘤を指摘され,当院紹介された.単純CT上軽度脾腫を認めたが腫瘍は不明であった.造影CTでは造影効果のない低吸収性腫瘤が多発していた. MRI上はT2強調画像では低信号を示していた. FDG-PET検査では脾臓のみに集積を認めた.以上より悪性リンパ腫を第一に考え,腹腔鏡補助下脾臓摘出術を施行した.病理組織検査上脾サルコイドーシス症と診断した. 5カ月後皮膚に再発をきたしたが,外用ステロイド治療で軽快している.
  • 中村 雅憲, 小野田 尚佳, 渋谷 雅常, 山片 重人, 山枡 誠一, 西尾 順子, 田原 英樹, 石村 栄治, 石川 哲郎, 平川 弘聖
    2005 年 66 巻 4 号 p. 945-949
    発行日: 2005/04/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    38歳女性.平成14年4月妊婦検診にて高血圧を指摘された.精査にて左腎門部に腫瘤を認め,血中,尿中のカテコラミンが高値を示したため,褐色細胞腫と診断された.診断時妊娠23週であり,ラベタロール150mg/日,ドキサゾシン2mg/日にて血圧をコントロールできたため,妊娠28週にて待機手術を施行した.全身麻酔下に,帝王切開術を施行後,開腹下に左副腎腫瘍摘出術を施行した.術後経過は母児共に良好であった.妊娠に合併した褐色細胞腫の本邦報告例は47例に過ぎず,過去の検討では母児ともに高い死亡率を示していた.しかし,最近の症例では十分な術前管理により良好な成績が得られている.治療においては,手術時期を十分に考慮しなければならないが,降圧薬によるコントロールが良好であれば,妊娠第28週以降に一期的な手術が安全に施行し得ると考えられた.
  • 大河内 治, 金子 哲也, 阪井 満, 越川 克己, 中尾 昭公
    2005 年 66 巻 4 号 p. 950-954
    発行日: 2005/04/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は42歳,男性で主訴は特になし.腹部超音波検査およびCT検査にて膵鉤部に4cm大の嚢胞性病変を認めた.血管造影検査およびMRCPでは明らかな所見を認めなかった.膵のsolid-pseudopapillary tumorあるいは後腹膜腫瘍を疑い手術を施行した.手術所見で腫瘍は上腸間膜動脈周囲神経叢と連続しており,神経原性腫瘍を疑い摘出術を施行した.病理組織学的にAntoniB型優位の神経鞘腫と診断された.神経鞘腫は末梢神経のSchwann細胞に由来する腫瘍で,主に四肢および頭頸部に好発するが,時として後腹膜にも発生することが報告されている.その中でも上腸間膜動脈周囲神経叢に発生する神経鞘腫は稀であり,その解剖学的な位置関係のために膵腫瘍との鑑別が問題となる.膵鉤部に認める嚢胞性腫瘍では本疾患の存在も念頭に置く必要があると思われる.
  • 竹内 正昭, 柳瀬 晃, 亀井 英樹, 牟田 文彦, 鹿毛 政義, 白水 和雄
    2005 年 66 巻 4 号 p. 955-958
    発行日: 2005/04/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は62歳の男性.下痢,下腹部痛を主訴に受診された.下腹部に圧痛を認めるも腫瘤は触知しなかった.腹部超音波検査にて臍右側に41×40×34mm大の充実性の腫瘤影を,腹部CT検査にて骨盤内に35mm大の比較的強く造影される境界明瞭な腫瘤影を認めた.腹部MRI検査にて骨盤内に40mm大の境界明瞭な腫瘤影を認め, T1強調画像にて筋肉とisoilltensity, T2強調画像にて不均一なhigh intensity, dynamicにて強く造影されていた.血管造影検査にて回腸動脈末梢側に境界明瞭なhyper vascular massを認め,全体的に均一な腫瘍濃染像を呈していた.開腹するに小腸間膜腫瘍であり,血管腫を疑い腫瘍摘出術施行するも摘出標本病理組織結果は淡明細胞肉腫であり,後日,小腸部分切除術を施行した.淡明細胞肉腫の小腸間膜での発症例は著者の検索した限り本邦では報告がない.若干の文献的考察を加え報告する.
  • 荻野 利達, 齋村 道代, 甲斐 昌也, 井上 重隆, 堤 宣翁, 寺坂 禮治, 小田 義直
    2005 年 66 巻 4 号 p. 959-962
    発行日: 2005/04/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は77歳,女性,腹部腫瘤を主訴に当院を受診した.腹部超音波, CT,低緊張性十二指腸造影,血管造影, Gaシンチで十二指腸水平脚から空腸起始部の腸間膜に存在する悪性腫瘍と診断し,腫瘍切除を行った.病理組織診断は,悪性リンパ腫,非ホジキンリンパ腫,びまん性大細胞型Bリンパ腫であった.免疫組織学的にはBCL-2陰性で,染色体/遺伝子異常としてt (8; 22) (q24; q11) 染色体転座が認められたが, C-MYCの遺伝子再構成,増幅はみられなかった.以上の結果をふまえて,術後追加治療は行わず経過観察中であるが,半年を経た現在無再発である.腸間膜悪性リンパ腫は術前に確定診断を得ることがむずかしいため,診断的治療として腫瘍切除が有用であり,腫瘍の予後因子の検索を行うことにより,適切な治療法の選択が可能になると思われた.
  • 加藤 雅也, 李 哲柱, 栗岡 英明, 岡 隆宏
    2005 年 66 巻 4 号 p. 963-967
    発行日: 2005/04/25
    公開日: 2009/01/22
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    今回われわれは, von Recklinghausen病(以下, R病)に乳癌と褐色細胞腫を合併した1例を経験した.症例は63歳,女性.左乳房のしこりを自覚し近医受診,当院紹介となった.精査の結果,乳癌と診断し手術を予定したが,術前に行った腹部超音波検査で右副腎に腫瘤を認め,また全身の皮膚にcafé au lait spotと軟らかい多発性の腫瘤を認めた.精査の結果, R病に合併した左乳癌と右副腎褐色細胞腫と診断した.褐色細胞腫に起因する高血圧による術中,術後管理のリスクを考慮し,まず褐色細胞腫に対し腹腔鏡下右副腎摘出術を施行後,乳癌に対し左乳房部分切除術を行った.病理組織学的には浸潤性乳管癌でt2n1 (2/8) m0 stage IIB, ER(-), PR(-)であった. R病は悪性腫瘍をしばしば合併するが,上皮性の腫瘍は比較的少ない.文献的考察を加え報告する.
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